以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、無機充填材と、硬化剤とを含む。本発明に係る樹脂材料では、上記硬化剤は、下記式(1)で表される第1の硬化剤を含み、上記硬化剤の合計100重量%中、上記硬化剤(1)の含有量が、40重量%以下である。
上記式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ、芳香族骨格を有する有機基を表し、上記式(1)において、エステル結合の数は3個以下である。
本発明では、上記の構成が備えられているので、アンジュレーションの発生を抑えることができる。その結果、配線形成性を良好にすることができる。
従来の樹脂材料では、アンジュレーションの発生を抑えることが困難である。その結果、従来の樹脂材料では、配線形成性が劣ることがある。特に、無機充填材の配合量が少ない場合には、アンジュレーションの発生を抑えることができたとしても、無機充填材の配合量が多い場合には、アンジュレーションの発生を抑えることが困難である。これに対して、本発明では、無機充填材の配合量が多くても、アンジュレーションの発生を抑えることができ、配線形成性を良好にすることができる。
また、本発明では、上記の構成が備えられているので、エッチング後に、エッチング部分において、金属(銅など)の残存を抑えることができる。
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、誘電正接を低くすることができる。
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
[エポキシ化合物]
上記樹脂材料は、エポキシ化合物を含む。上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ化合物を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン環を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
アンジュレーションの発生をより一層抑え、かつ誘電正接をより一層低くする観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。
アンジュレーションの発生をより一層抑え、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)、及び誘電正接等の物性を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物と、25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
上記エポキシ化合物の粘度を測定する際には、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR−100」)等が用いられる。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂組成物の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、アンジュレーションの発生をより一層抑えることができる。
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
[無機充填材]
上記樹脂材料は、無機充填材を含む。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。また、無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。さらに、無機充填材の使用により、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.3μm以下、更に好ましくは1.0μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、アンジュレーションの発生をより一層抑え、配線形成性をより一層良好にできる。また、上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材はそれぞれ、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材がそれぞれ球状である場合には、上記無機充填材それぞれのアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量部%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは63重量%以上、最も好ましくは65重量%以上である。樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量部%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは85重量%以下、より好ましくは83重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは78重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、アンジュレーションの発生をより一層抑えることができる。また、上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、この無機充填材量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、エッチング後の金属の残存をより一層抑えることができる。
[硬化剤]
上記樹脂材料では、上記硬化剤は、上記式(1)で表される第1の硬化剤を含む。上記樹脂材料は、硬化剤を含む。上記樹脂材料は、上記硬化剤として、上記式(1)で表される第1の硬化剤を含む。上記第1の硬化剤は、3個以下のエステル基を有する。上記第1の硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第1の硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
上記第1の硬化剤は、エステル結合を、1個、2個又は3個有する。アンジュレーションの発生をより一層抑え、また、エッチング後に金属の残存をより一層抑える観点から、上記式(1)において、エステル結合の数は2個以下であることが好ましい。
上記式(1)中、R1及びR3は、それぞれ同一の芳香族骨格を有する有機基であってもよく、異なる芳香族骨格を有する有機基であってもよい。上記式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ同一の芳香族骨格を有していてもよく、異なる芳香族骨格を有していてもよい。また、上記R1、上記R2、及び上記R3の内の2つが同一の芳香族骨格を有する有機基であってもよい。上記R1、及び上記R3が同一の芳香族骨格を有する有機基であってもよい。
上記芳香族骨格を有する有機基としては、置換基を有しない芳香族環基、及び置換基を有する芳香族環基等が挙げられる。上記芳香族骨格を有する有機基が、置換基を有する芳香族環である場合、上記置換基としては、アルキル基、ハロゲノ基、及びアルコキシ基等が挙げられる。
上記式(1)中、R1はフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表すことが好ましい。上記式(1)中、R2はフェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基を表すことが好ましい。上記式(1)中、R3はフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表すことが好ましい。
上記第1の硬化剤は、3個以下のエステル基を有する。上記第1の硬化剤は、2個のエステル基を有することが好ましい。
上記第1の硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂組成物の未硬化物又はBステージ化物を基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができ、アンジュレーションの発生をより一層抑えることができる。
上記第1の硬化剤の分子量は、上記第1の硬化剤が重合体ではない場合、及び上記第1の硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記第1の硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
上記樹脂材料では、上記硬化剤は、下記式(X)で表される硬化剤とは異なる第2の硬化剤を含む。上記樹脂材料は、上記硬化剤として、下記式(X)で表される硬化剤とは異なる第2の硬化剤を含む。上記第2の硬化剤は、下記式(X)で表される硬化剤に相当しないため、上記式(1)で表される第1の硬化剤にも相当しない。上記第2の硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記式(X)中、R11、R12及びR13はそれぞれ、芳香族骨格を有する有機基を表し、上記式(X)において、エステル結合の数は3個以下である。
上記第2の硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。上記第2の硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
絶縁層を低誘電正接化する観点から、上記第2の硬化剤は、活性エステル化合物を含むことが好ましい。活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物の好ましい例としては、下記式(11)で表される化合物が挙げられる。
上記式(11)中、X1及びX2はそれぞれ、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
X1及びX2の組み合わせとしては、以下の組み合わせが挙げられる。置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ。置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせ。置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせ。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000−65T」、「EXB−9416−70BK」及び「EXB8100−65T」等が挙げられる。
上記硬化剤の合計100重量%中、上記第1の硬化剤の含有量は、40重量%以下である。上記硬化剤の合計100重量%中、上記第1の硬化剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上、特に好ましくは2.5重量%以上、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下である。上記第1の硬化剤の含有量が40重量%を超えると、アンジュレーションが発生しやすく、また、エッチング後に金属が残存しやすい。上記第1の硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、アンジュレーションの発生をより一層抑えることができ、また、エッチング後に金属の残存をより一層抑えることができる。
上記硬化剤の合計100重量%中、上記第2の硬化剤の含有量は、60重量%以上である。上記硬化剤の合計100重量%中、上記第2の硬化剤の有量は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは75重量%以上、好ましくは99.5重量%以下、より好ましくは99重量%以下、更に好ましくは98重量%以下、特に好ましくは97.5重量%以下である。上記第2の硬化剤の含有量が60重量%未満であると、アンジュレーションが発生しやすく、また、エッチング後に金属が残存しやすい。上記第2の硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、アンジュレーションの発生をより一層抑えることができ、また、エッチング後に金属の残存をより一層抑えることができる。
上記硬化剤の合計100重量%は、式(1)で表される第1の硬化剤と、式(X)で表される硬化剤とは異なる第2の硬化剤との合計の含有量である。
上記硬化剤の合計の含有量の、上記エポキシ化合物の含有量に対する重量比(硬化剤の合計の含有量/エポキシ化合物の含有量)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、好ましくは2以下、より好ましくは1.75以下、更に好ましくは1.5以下である。上記重量比(硬化剤の合計の含有量/エポキシ化合物の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、硬化不良によるアンジュレーションの発生をより一層抑制できる。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
上記樹脂材料に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
保存安定性により一層優れた樹脂材料を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(上記熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である場合にはフェノキシ樹脂の含有量)は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂材料の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50〜150℃で1〜10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材と、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、及びポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
(半導体装置、プリント配線板、銅張積層板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために用いられる。
上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂材料を加熱加圧成形することにより得られる。
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記樹脂フィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを金属箔に積層可能である。
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板が挙げられる。
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。
上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂材料により形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
多層基板のうち多層プリント配線板においては、低い誘電正接が求められ、絶縁層による高い絶縁信頼性が求められる。本発明に係る樹脂材料では、誘電正接を低くし、かつ曲げられた樹脂材料のひび又は割れの発生を防ぐことによって絶縁信頼性を効果的に高めることができる。従って、本発明に係る樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料の硬化物である。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13〜16が積層されている。絶縁層13〜16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13〜16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層プリント配線板11では、絶縁層13〜16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13〜16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。
(デスミア処理)
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、CO2レーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(エポキシ化合物)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850−S」、エポキシ当量187)
エステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX−721P」、エポキシ当量150)
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC−3000」、エポキシ当量275)
(無機充填材)
シリカ(アドマテックス社製「C4 シリカ」、平均粒径1μm、固形分75重量%)
(第1の硬化剤)
下記式(1A)で表される化合物1A(分子量320、エステル結合の数2個)
下記式(1B)で表される化合物1B(分子量473、エステル結合の数2個)
下記式(1C)で表される化合物1C(分子量418、エステル結合の数2個)
下記式(1D)で表される化合物1D(分子量381、エステル結合の数2個)
なお、化合物1A〜1Dは以下のように合成した。
(化合物1Aの合成方法)
窒素気流下で、三つ口フラスコにフェノール9.4g、テトラヒドロフラン(THF)350g及びトリエチルアミン12.1gを加え、均一になるまで撹拌した。次いで、三つ口フラスコを氷浴下で冷却しながら、イソフタロイルクロリド9.1gをゆっくりと滴下した。滴下後、室温で1時間撹拌し、反応を進行させた。反応後、反応液に酢酸エチルを加え、1Mの硝酸水溶液で洗浄後、水でさらに洗浄した。洗浄後の有機層を、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、溶液を減圧留去することにより、化合物1Aを得た。
(化合物1Bの合成方法)
フェノール9.4gを3−フェニルフェノール17.0gに変えたこと以外は上記化合物1Aの合成方法と同様にして、化合物1Bを得た。
(化合物1Cの合成方法)
フェノール9.4gを1−ナフトール14.4gに変えたこと以外は上記化合物1Aの合成方法と同様にして、化合物1Cを得た。
(化合物1Dの合成方法)
フェノール9.4gを3−メトキシフェノール12.4gに変えたこと以外は上記化合物1Aの合成方法と同様にして、化合物1Dを得た。
(第2の硬化剤)
活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」)
活性エステル硬化剤(DIC社製「EXB−9416−70BK」)
下記式(2A)で表される化合物2A(第1の硬化剤に類似する硬化剤、分子量561、エステル結合の数4個)
下記式(2B)で表される化合物2B(第1の硬化剤に類似する硬化剤、分子量326、エステル結合の数2個)
なお、化合物2A、2Bは以下のように合成した。
(化合物2Aの合成方法)
フェノール9.4gを安息香酸3−ヒドロキシフェノール21.4gに変えたこと以外は上記化合物1Aの合成方法と同様にして、化合物2Aを得た。
(化合物2Bの合成方法)
窒素気流下で、三つ口フラスコに、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸17.2g、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)130g及びジクロロメタン385gを加えて均一になるまで攪拌した後、さらに攪拌しながら溶液の温度を昇温させ還流させた。次いで、三つ口フラスコに、塩化チオニル35.6gを少しずつ滴下した。滴下後、3時間還流下で反応を進行させた。反応後、反応液を氷水で洗浄し、得られた有機層を、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、溶液を減圧留去することにより化合物(2B1)を得た。
イソフタロイルクロリド9.1gを化合物(2B1)8.9gに変えたこと以外は上記化合物1Aの合成方法と同様にして、化合物2Bを得た。
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」)
(実施例1〜7、比較例1〜4)
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量で配合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物を得た。
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂組成物を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で3分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
積層工程(積層サンプルAの作製):
銅張積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ35μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが2mm/2mm及び長さが5cmである銅パターンを10本作製し、アンジュレーション評価用基板を作製した。
得られたアンジュレーション評価用基板の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ−8100」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。
得られたシート状の樹脂フィルムを、アンジュレーション評価用基板の粗化処理した銅表面上に重ねて、真空加圧式ラミネーター機(名機製作所社製「MVLP−500」)を用いて、ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度100℃で40秒間ラミネートし、更にプレス圧力1.0MPa及びプレス温度100℃で40秒間プレスした。このようにして、アンジュレーション評価用基板上に樹脂フィルムが積層されている積層体を作製した。得られた積層体において、PETフィルムを剥がした後、180℃で30分間硬化させ、樹脂材料(樹脂フィルム)の未硬化物を硬化させて、絶縁層を形成した。このようにして、アンジュレーション評価用基板上に樹脂材料(樹脂フィルム)の硬化物が積層された積層サンプルAを作製した。
次に、得られた積層サンプルAについて、以下の配線形成処理を行った。
膨潤工程:
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」と和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」とを含む水溶液)に、上記積層サンプルAを入れて、膨潤温度60℃で20分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
粗化処理(過マンガン酸塩処理):
80℃の過マンガン酸ナトリウム粗化水溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」)に、上記膨潤処理された積層サンプルAを入れて、粗化温度80℃で20分間揺動させた。その後、40℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」、和光純薬工業社製「硫酸」)により10分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。このようにして、エッチングにより内層回路を形成したガラスエポキシ基板上に、粗化処理された硬化物を形成した。
無電解めっき工程:
上記粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
次に、上記硬化物を化学銅液(全てアトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK−DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理した。無電解めっきの工程までの全ての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
DFR(ドライフィルムレジスト)積層工程:
無電解銅めっき層上に、支持体であるPETフィルム上のアルカリ溶解型DFR(日立化成社製「RY−3525」)を、ロールラミネーター(大成ラミネーター社製「VA−700SH」)を用いて、温度100℃、圧力0.4MPa及び速度1.5m/sの条件にてラミネートして、積層構造体を得た。
露光及び現像工程:
得られた積層構造体を用いて、UV露光機(オーク製作所社製「EXA−1201」)にて、L/Sが2mm/2mm及び長さが5cmであるパターンを10本、アンジュレーション基板の銅パターンとは垂直に配置したパターンマスクを介して、照射条件100mJ/cm2で、DFRにUV照射を行った。その後、25℃にて60分間保持した後で、DFRの支持体であるPETフィルムを剥離した。DFRの表面に、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃にて、スプレー圧1.0kg/cm2で20秒間スプレーし、現像を行い、未露光部を除去した。その後、20℃で、スプレー圧1.0kg/cm2にて20秒間水洗を行い、乾燥することでDFRによるネガパターンを形成した。
電解銅めっき工程:
DFRの配線形成された後、めっき厚さが25μmとなるまで、電解銅めっきを実施し、電解銅めっき層を形成した。電解銅めっきとして硫酸銅水溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cm2の電流を流した。
DFR剥離及びクイックエッチング:
40℃の苛性ソーダ水溶液中に、電解銅めっき後の積層構造体を浸漬することにより、銅めっき配線間に残っているDFRを剥離した。さらに、DFRの下部の絶縁層の表面において、微細粗化孔に残留する無電解めっきを、過酸化水素水−硫酸系のクイックエッチング液(JCU社製「SAC」)で除去した。
本硬化工程:
クイックエッチング後の積層構造体を、180℃のギヤオーブンで60分間加熱し、本硬化させることで、積層体サンプルBを作製した。
(評価)
(1)アンジュレーション
得られた積層サンプルAにおいて、Veeco社製「WYKO」を用いて、硬化物のアンジュレーション評価用基板とは反対側の表面を観察することにより、アンジュレーションの値を測定した。具体的には、硬化物表面の凹凸の隣り合う凹部部分と凸部部分との高低差の最大値をアンジュレーションの値として採用した。アンジュレーションを下記の基準で判定した。
[アンジュレーションの判定基準]
○○:アンジュレーションの値が1.5μm以下
○:アンジュレーションの値が1.5μmを超え、2.0μm以下
×:アンジュレーションの値が2.0μmを超える
(2)銅残り
得られた積層体サンプルBにおいて、顕微鏡(オリンパス社製「SZ61」)を用いて、表面観察することで、銅層(銅配線)間の硬化物上の銅残りを評価した。銅残りを以下の基準で判定した。なお、銅残りは配線から5μm以上、銅が飛び出ているもののみをカウントした。
[銅残りの判定基準]
○○:銅残りが発生していない
○:銅残りが1個以上、3個以下で発生している
×:銅残りが4個以上で発生している
組成及び結果を下記の表1に示す。