JP6607284B2 - 車両用シートフレーム - Google Patents
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Description
こうした高張力鋼板を用いる場合においても、特許文献1に記載の発明のように、強度が必要なフレームメンバー、又はシートフレーム全体に対して熱処理を施す場合には、熱処理による歪が大きくなり製品精度が低下する虞がある。
また、特許文献2に記載の発明のように、薄肉鋼に補強部を設ける場合には、補強部の分重量が増加してしまうため、軽量化の点で問題がある。
また、上記課題は、本発明に係る車両用シートフレームによれば、高張力鋼板を用いて成形されたフレーム部材を備える車両用シートフレームであって、前記フレーム部材は、溶接により組み付けられた複数のフレームと、前記複数のフレームが組み付けられた状態で強度向上用の熱処理により形成され、前記強度向上用の熱処理が施されない箇所よりも強度が高い高強度部と、を有し、前記高強度部は、前記複数のフレームに形成された溶接痕の少なくとも一部と重なる箇所に形成されることにより解決される。
上記構成によれば、車両用シートフレームにおいて熱処理した部分の強度を熱処理しない部分の強度よりも高くすることができる。すなわち、上記構成によれば、フレーム部材において所定の条件で熱処理した箇所の変形を抑制することができる。
上記構成によれば、フレーム部材において所定の条件で加熱後に急冷した部分の強度を、それ以外の部分に比べて高くすることができる。すなわち、上記構成によれば、フレーム部材の一部に対する熱処理時の冷却速度を制御することで、フレーム部材に部分的に強度の高い部分を設けることができる。
上記構成によれば、フレーム部材に金属組織が硬度の高いマルテンサイトである箇所を部分的に設けることができる。これにより、フレーム部材に部分的に強度の高い箇所を設けることができる。
上記構成によれば、車両衝突時に応力が集中し易いシートバックフレームの上部フレーム及びサイドフレームの溶接周辺部や、シートバックフレームの下部フレーム及びサイドフレームの溶接周辺部の剛性を高めることができる。これにより、車両用シートフレームの変形を抑制できる。
上記構成によれば、車両用シートフレームを構成するフレーム部材について形状や材料を変更せずに、フレーム部材に部分的に強度の低い箇所を設けることができる。これにより、フレーム部材において所定の条件で熱処理した箇所の変形を促進させることができる。
上記構成によれば、車両用シートフレームを構成するフレーム部材の一部を所定の条件で加熱後に徐冷した部分の強度を、それ以外の部分に比べて弱くすることができる。このように、フレーム部材の熱処理における冷却速度を制御することで、フレーム部材に部分的に強度の低い部分を設けることができる。
上記構成によれば、フレーム部材に金属組織が硬度の低いパーライトを含む箇所を部分的に設けることで、フレーム部材に部分的に強度の低い箇所を設けることができる。
上記構成によれば、低強度部が脆弱部として機能することで車両衝突時のエネルギーを効率良く吸収させることができる。
上記構成によれば、組み付け前に熱処理する場合に比べて、熱処理により発生する歪の大きさを抑制できる。
上記構成によれば、シート後方に掛かる力に対しシートバックフレームの強度を向上させることができる。
上記構成によれば、シート前後方向に掛かる力に対してシートバックフレームのサイドフレームの強度を向上させることができる。これにより、シートバックフレームのサイドフレームの変形を抑制できる。
上記構成によれば、シートバックフレームのサイドフレームについて、シート側面の広い範囲で強度を向上させることができる。
上記構成によれば、シートバックフレームのサイドフレームについて、シート上下方向の広い範囲で強度を向上させることができる。
上記構成によれば、シートバックフレームの上部フレームとサイドフレームの接合部分の強度を向上させることができる。
本発明によれば、車両用シートフレームにおいて所定の条件で熱処理した箇所の変形を抑制することができる。
本発明によれば、車両用シートフレームの一部に対する熱処理時の冷却速度を制御することで、車両用シートフレームに部分的に強度の高い部分を設けることができる。
本発明によれば、車両用シートフレームに金属組織が硬度の高いマルテンサイトである箇所を部分的に設けることで、車両用シートフレームに部分的に強度の高い箇所を設けることができる。
本発明によれば、車両衝突時に応力が集中し易いシートバックフレームの上部フレーム及びサイドフレームの溶接周辺部や、シートバックフレームの下部フレーム及びサイドフレームの溶接周辺部の剛性を高め、車両用シートフレームの変形を抑制できる。
本発明によれば、車両用シートフレームを構成するフレーム部材について形状や材料を変更せずに、フレーム部材に部分的に強度の低い箇所を設けることができる。
本発明によれば、フレーム部材の熱処理における冷却速度を制御することで、フレーム部材に部分的に強度の低い部分を設けることができる。
本発明によれば、フレーム部材に金属組織が硬度の低いパーライトを含む箇所を部分的に設けることで、フレーム部材に部分的に強度の低い箇所を設けることができる。
本発明によれば、車両衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができる。
本発明によれば、組み付け前に熱処理する場合に比べて、熱処理により発生する歪の大きさを抑制できる。
本発明によれば、シート後方に掛かる力に対しシートバックフレームの強度を向上させることができる。
本発明によれば、シート前後方向に掛かる力に対してシートバックフレームのサイドフレームの強度を向上させることができる。
本発明によれば、シートバックフレームのサイドフレームについて、シート側面の広い範囲で強度を向上させることができる。
本発明によれば、シートバックフレームのサイドフレームについて、シート上下方向の広い範囲で強度を向上させることができる。
本発明によれば、シートバックフレームの上部フレームとサイドフレームの接合部分の強度を向上させることができる。
クッションフレーム10は、左右側方に配置されるクッションサイドフレーム11と、各クッションサイドフレーム11の前方部分を連結するプレート状のパンフレーム12と、各クッションサイドフレーム11の後方部分を連結するパイプ状の後方連結フレーム13とを備える。
また、クッションフレーム10は、パンフレーム12及び後方連結フレーム13に掛け止めされ、蛇状に延びている3つの弾性バネ14と、パンフレーム12の下方に配置され、各クッションサイドフレーム11を連結するサブマリンパイプと、を備える。
図2に示されるように、シートバックフレーム30は、上側に略逆U字形状に形成された中空円筒体の上部フレーム31と、上部フレーム31左右の端部とそれぞれと連結して配設される左右のサイドフレーム32と、左右のサイドフレーム32の下端部に架設される下部フレーム33とを備える。
また、シートバックフレーム30は、左右のサイドフレーム32の内側面に架設される弾性バネ34と、上部フレーム31の湾曲部の内側面に架設される上部クロスフレーム36と、を備える。
サイドフレーム32には、エアバッグユニットを取り付けるための穴であるエアバッグ取付穴82a、エアバッグ取付穴82b、貫通穴82cが形成される。エアバッグユニットには、エアバッグ本体、エアバッグの展開方向を案内する力布、エアバッグ取付用のプレート等を含むこととする。例えば、エアバッグ取付穴82a及びエアバッグ取付穴82bは、エアバッグの力布を取り付ける箇所であり、貫通穴82cはエアバッグのモジュールから延出するボルトが挿通される箇所である。
また、貫通穴82cの周囲にはビード部が形成されている。特に、貫通穴82cのシート前方において、エアバッグ取付穴82aとエアバッグ取付穴82bとの間には、略U字状のビード部83が形成されている。
同様に、左のサイドフレーム32の上方端部の内側側面と、上部フレーム31の左側端部とが当接するように配置される。そして、左のサイドフレーム32の上方端部と、上部フレーム31の左側端部とが溶接固定される。
なお、溶接にはレーザー溶接、アーク溶接等の各種の溶接を用いることとしてよい。
同様に、下部フレーム33の左側端部の内側面は、左のサイドフレーム32と当接するように配置される。そして、左のサイドフレーム32の下方端部と、下部フレーム33の左側端部とが溶接固定されている。
また、連結シャフト35は、リクライニング機構20によりシートバックフレーム30が回動する際の回転軸となっている。
本実施形態では、上記の熱処理をレーザーによる加熱処理と、加熱部分の冷却処理により行うこととするが、これに限定されるものではない。
また、上記のフレーム部材とは、シートフレームを構成する要素である。例えばシートバックフレーム30を構成する各部材、クッションフレーム10を構成する各部材、シートバックフレーム30とクッションフレーム10を連結するブラケット等が、上記のフレーム部材の一例に相当する。
以下、熱処理の条件と鋼の組織変化との関係について説明する。
例えばドライミストによる冷却工程においては、冷却エアーに微量の水分を含ませた低温ドライミストを利用することとしてよい。この際、ミストの粒径は例えば30μm程度とすると好適である。
焼入れの急冷工程において、上記の低温ドライミストを使用することで、冷却に使用する水分量を少なくしつつ、効果的な冷却を行うことができる。これにより、電子機器等の水による故障が懸念される部品の周辺においても、焼入れを行うことができる。また、冷却に用いる水分の量を低減でき、大掛かりな防水機構を採用しなくともよいため、焼入れ工程のコストを削減できる。
なお、780材(引張強度が780MPa)以上の高張力鋼板を用いた場合においては、上記の強度低下用の熱処理により、低強度部54の硬度が、強度向上用の熱処理を施した部位や熱処理を施していない他の部位の金属組織に比べて低くなるため、連結ブラケット50の強度を部分的に低くすることができる。車両衝突時には脆弱部となる低強度部54が変形することにより、シートバックフレーム30への応力集中を低減することができる。すなわち、低強度部54が脆弱部として機能することにより、車両衝突時の衝撃を効率良く吸収することができる。
また、上記の実施形態に係る車両用シートフレームでは、車両用シートフレームを構成するフレーム部材を溶接等により組み付けた状態で、強度を調整する対象部分に対し(すなわちフレームコンプ品における強度調整部分に対し)、加熱処理後の冷却速度を制御することで対象部分の強度を調整することができる。
本発明に係る車両用シートフレームは、前席のみならず後席のシートフレームに対しても同様に適用することができる。
シートバックフレームの横方向の骨格を担う骨格フレーム(例えば骨格フレーム101)と、シートバックフレームの縦方向の骨格を担う骨格フレーム(例えば骨格フレーム102,103)とは、溶接されている。
図10に示す例では、フレームをレーザー溶接しているが、フレームをアーク溶接等の他の溶接により接合してもよい。
図11に示されるように、骨格フレーム101と骨格フレーム103のフランジ部103aは溶接部110aで溶接される。骨格フレーム101と骨格フレーム103のフランジ部103bは溶接部110bで溶接される。骨格フレーム101と骨格フレーム103の凹部103cとは溶接部110cで溶接される。
これにより、高強度部120の硬度が、強度低下用の熱処理を施した部位や熱処理を施していない他の部位の金属組織に比べて高くなる。そのため、骨格フレーム103の強度を向上させることができる。
また、骨格フレーム103以外の骨格フレームやパンフレームについても強度向上用の熱処理や、強度低下用の熱処理により部分的に強度を調整してもよい。
次に、図12〜図15に基づいて、本発明の変形例に係る車両用シートフレームF1について説明する。車両用シートフレームF1は、車両用シートフレームFに対し、サイドフレーム32の構成及び熱処理箇所の点で主に相違する。以下では、車両用シートフレームF1について、主に車両用シートフレームFからの相違点について説明する。
溶接部80は、サイドフレーム32の上端部に2箇所設けられた略U字状の溶接部である。溶接部80は、サイドフレーム32の上端部と上部フレーム31を接合する。
また、溶接部81は溶接部80よりも下方に設けられた直線状の溶接部である。溶接部81は、上部フレーム31の下端部とサイドフレーム32を接合する。
なお、車両用シートフレームF1では、上部フレーム31、サイドフレーム32、下部フレーム33の溶接には、レーザー溶接を用いた例を示しているが、アーク溶接等の他の溶接方法を用いてもよい。
ここで、高強度部84dは、接続部32cの上部であって、溶接部81と対向する位置に形成される。例えば、高強度部84dは、エアバッグ取付穴82aよりも上に形成される。
また、高強度部84eは、接続部32cの下部であって、溶接部85aと少なくとも一部が重なる位置に形成される。例えば、高強度部84eは、エアバッグ取付穴82bよりも下に形成される。
このように、サイドフレーム32に高強度部84d及び高強度部84eを形成することにより、シート後方に掛かる力に対しサイドフレーム32の強度を向上させることができる。
なお、車両用シートフレームF1では、高強度部84dと高強度部84eとを離間して形成したが、両者を繋げて1つにしてもよい。
また、車両用シートフレームF1では、エアバッグ取付穴82a及び貫通穴82cの間において、高強度部84cの近傍からシート前方に延出する領域に強度向上用の焼入れを行うことにより、エアバッグ取付穴82b(第2領域に相当)が形成される。
このように、サイドフレーム32に高強度部84a及び高強度部84bを形成することにより、シート前後方向に掛かる力に対してサイドフレーム32の強度を向上させることができる。これにより、サイドフレーム32の変形を抑制できる。
このように、異なる方向に焼入れをすることで、サイドフレーム32のシート側面32aの広い範囲でバランス良く強度を向上させることができる。
なお、車両用シートフレームFでは、貫通穴82cの前方にビード部83を設けることで、貫通穴82cの周囲の剛性を高めている。一方、車両用シートフレームF1では、貫通穴82cの前方に高強度部84a、高強度部84b、高強度部84cからなる略U字状の焼入れ箇所を設けることで、ビード部83と同様に貫通穴82cの周囲の剛性を高めることができる。
このように、接続部32cに沿った高強度部84d及び高強度部84eを形成することにより、サイドフレーム32の上部から下部に渡る広い範囲の強度を向上させることができる。
1a,2a クッションパッド
1b,2b 表皮材
2 シートバック
10 クッションフレーム
11 クッションサイドフレーム
12 パンフレーム
13 後方連結フレーム
14,34 弾性バネ
20 リクライニング機構
21 ハイトリンク機構
30 シートバックフレーム
31 上部フレーム
32 サイドフレーム
32a シート側面
32b シート後面
32c 接続部
33 下部フレーム
35 連結シャフト
36 上部クロスフレーム
40 レール機構
41 ロアレール
42 アッパレール
45 レール連結ブラケット
50 連結ブラケット
51 シャフト貫通孔
52,53 ボルト締結用孔
61,61a,71,120 高強度部
54,72,73 低強度部
60a,60b,60c,70,110a,110b,110c 溶接部
80 溶接部
81 溶接部
82a エアバッグ取付穴
82b エアバッグ取付穴
82c 貫通穴
83 ビード部
84a 高強度部(第2領域)
84b 高強度部(第2領域)
84c 高強度部(第3領域)
84d 高強度部(第1領域)
84e 高強度部(第1領域)
85a 溶接部
85b 溶接部
85c 溶接部
85d 溶接部
100 リアバックフレーム
101,102,103 骨格フレーム
103a,103b フランジ部
103c 凹部
105 リアパンフレーム
C1,C2,C3 冷却曲線
F 車両用シートフレーム
F1 車両用シートフレーム
S 車両用シート
Claims (10)
- 高張力鋼板を用いて成形されたフレーム部材を備える車両用シートフレームであって、
前記フレーム部材は、
強度調整用の熱処理が施されない非熱処理部と、
強度向上用の熱処理が施され、前記非熱処理部よりも強度が高い高強度部と、
強度低下用の熱処理が施され、前記非熱処理部よりも強度が低い低強度部と、を有し、
前記低強度部は、シートバックフレームとシートクッションフレームとの接続部において、シャフト貫通孔とボルト締結用孔との間に設けられることを特徴とする車両用シートフレーム。 - 前記高強度部は、所定の温度以上に加熱された後に、所定の冷却速度以上で冷却された部分であることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートフレーム。
- 前記高強度部の金属組織は、マルテンサイトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シートフレーム。
- 前記低強度部は、所定の温度以上に加熱された後に、所定の冷却速度未満で冷却された部分であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用シートフレーム。
- 前記低強度部の金属組織は、パーライトを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用シートフレーム。
- 前記低強度部は、前記接続部の後端部の一辺からシート前方に延出するように設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用シートフレーム。
- 前記高強度部は、前記シートバックフレームを構成するサイドフレームにおける、シート側面とシート後面との接続部に沿って設けられることを特徴とする請求項6に記載の車両用シートフレーム。
- 前記シートバックフレームを構成するサイドフレームは、エアバッグ取付用の複数の穴が形成され、
前記高強度部は、前記複数の穴の間において、シート前後方向に延出するように設けられることを特徴とする請求項6に記載の車両用シートフレーム。 - 前記高強度部は、
前記シートバックフレームの前記サイドフレームにおける、シート側面とシート後面との接続部に沿って設けられる第1領域と、
前記複数の穴の間において、シート前後方向に延出するように設けられる複数の第2領域と、を有することを特徴とする請求項8に記載の車両用シートフレーム。 - 前記熱処理は、前記フレーム部材を組み付けた状態で行われることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用シートフレーム。
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