JP6606001B2 - Sn被覆材 - Google Patents

Sn被覆材 Download PDF

Info

Publication number
JP6606001B2
JP6606001B2 JP2016067780A JP2016067780A JP6606001B2 JP 6606001 B2 JP6606001 B2 JP 6606001B2 JP 2016067780 A JP2016067780 A JP 2016067780A JP 2016067780 A JP2016067780 A JP 2016067780A JP 6606001 B2 JP6606001 B2 JP 6606001B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
sno
coating material
coating
plating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016067780A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017181254A (ja
Inventor
紳悟 川田
昭頼 橘
良和 奥野
恵人 藤井
達也 中津川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD.
Original Assignee
THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD. filed Critical THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD.
Priority to JP2016067780A priority Critical patent/JP6606001B2/ja
Publication of JP2017181254A publication Critical patent/JP2017181254A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6606001B2 publication Critical patent/JP6606001B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)

Description

本発明は、車載部品や電気電子部品、特にリードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット等の電気接点に好適なSn被覆材に関するものである。
電気接点材としては、低コストで安定した接触抵抗および耐食性が得られる点でSnめっきを施したSn被覆材が広く用いられている。また、このような電気接点材では、近年、更なる特性の向上が望まれており、特に、高温環境下における接触抵抗の更なる低減および意匠性の観点から耐変色性の更なる向上が求められている。
例えば、自動車のエンジンルーム内で用いられる端子用接点材料等では、180℃以上といった、Snめっきには非常に過酷な高温環境下での使用の可能性が高まってきており、このような高温使用環境下での更なる耐熱性が求められている。つまり、このような高温の使用環境でも、接触抵抗が低く、外観の劣化を生じないめっき材が必要とされている。
また、このような端子用接点材料では、端子挿入時の低挿入力が求められ、表面の摩擦係数が小さい材料で、さらに繰り返し挿抜しても被覆はがれが生じにくい、被覆材が必要とされる。
特許文献1〜3では、高温環境下(例えば、120℃〜180℃)で、耐熱性を向上した(例えば接触抵抗値の上昇や変色の発生を抑制した)Sn被覆材や、摩擦係数が小さいSn被覆材などが提案されている。
特開2010−215979号公報 特開2011−12350号公報 特開2011−80117号公報
しかし、特許文献1〜3に記載の発明では、めっき材の表層にあるSnめっき層の構成については、何ら考慮されていない。そのため、これらのめっき材は、180℃以上の環境に長時間曝された場合には、接触抵抗の上昇や、外観の変色が見られ、未だ十分な耐熱性が得られていなかった。また、摩擦係数の観点でも未だ十分な低減が図れていなかった。
本発明は、高温環境(例えば、180℃以上)に長時間曝された場合でも、接触抵抗値の上昇や変色の発生を抑制でき、耐熱性に優れ、かつ摩擦係数が小さく、被覆はがれが生じにくいSn被覆材を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、Sn被覆材の表層におけるSnの酸化状態を所定の関係に制御することにより、高温環境(例えば、180℃以上)に長時間曝された場合でも、接触抵抗値の上昇や変色の発生を抑制でき、耐熱性に優れ、かつ摩擦係数が小さく、被覆はがれが生じにくいSn被覆材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] Cu系材料からなる基材と、該基材の表面側に、最表層としてSn酸化物被膜をもつSn層とを備えるSn被覆材であって、
前記最表層について、X線光電子分光法(XPS)による分光分析を下記に示す2つの検出角度で行って、それぞれ得られたSn(3d5/2)XPSスペクトルのピークから、Sn、SnOおよびSnOの各割合(Sn、SnOおよびSnOの割合の合計を100%として)を算出したとき、
検出角度45°にて、SnOの割合が80%以上96%以下であり、SnOの割合が3%以上20%未満であり、かつ、
検出角度75°にて、SnOの割合が45%以上80%未満およびSnOの割合が20%以上54%以下であることを特徴とする、Sn被覆材。
[2] 前記基材の表面上に、Ni層、Cu層、Cu−Sn層および前記Sn層の複層構造を有する、上記[1]に記載のSn被覆材。
[3] 前記複層構造を構成する各層の平均膜厚は、前記Ni層が0.1〜2.0μm、前記Cu層が0.001〜1.0μm、前記Cu−Sn層が0.1〜2.0μmであり、かつ、前記Sn層(前記Sn酸化物被膜を含む)が0.1〜2.0μmである、上記[2]に記載のSn被覆材。
[4] 前記基材が、板材である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のSn被覆材。
[5] 前記基材が、線材である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のSn被覆材。
本発明により、高温環境下(例えば、180℃以上)に長時間曝された場合でも、接触抵抗値の上昇や変色の発生を抑制でき、耐熱性に優れ、かつ摩擦係数が小さく、被覆はがれが生じにくいSn被覆材を提供することに成功した。
図1は、本発明に従う代表的なSn被覆材の断面概略図である。 図2は、図1で一点破線の枠領域で囲んだSn層を拡大して示した断面概略図である。 図3は、実施例において、接触抵抗値の測定を行った際の試料および機器の配置図である。
本発明に従うSn被覆材の実施形態について、以下で詳細に説明する。
本発明に従うSn(スズ)被覆材は、Cu(銅)系材料からなる基材と、該基材の表面側に、最表層としてSn酸化物被膜をもつSn層とを備えるSn被覆材であることを特徴とする。ここで、Cu系材料とは純銅、銅合金のことをいう。
図1は、本発明に従うSn被覆材の一実施形態したものであって、図1中、符号1はSn被覆材、1AはSn被覆材1の表面、10は基材、10Aは基材10の表面、20はSn層である。また、図2は、図1で一点破線の枠領域で囲んだSn層を拡大して示したものであって、図2中、21はSn酸化物被膜である。
本実施形態に係るSn被覆材1は、図1および図2に示されるように、基材10の表面10A側に、Sn被覆材1のSn酸化物被膜21をもつSn層20を有している。したがって、Sn被覆材1の表面1Aは、Sn酸化物被膜21の表面である。
本発明は、表層のSn層20の表面に生じるSn酸化物被膜21の組成を、所定の範囲に制御することによって、長時間の高温環境下での使用においても、低い接触抵抗値を維持することができ、変色の発生を抑制できる、耐熱性の高いSn被覆材1が得られることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明のSn被覆材1は、その最表層について、X線光電子分光法(XPS)による分光分析を下記に示す2つの検出角度で行って、それぞれ得られたSn(3d5/2)XPSスペクトルのピークから、Sn、SnOおよびSnOの各割合(Sn、SnOおよびSnOの割合の合計を100%として)を算出したとき、検出角度45°にて、SnOの割合が80%以上96%以下であり、SnOの割合が3%以上20%未満であり、かつ、検出角度75°にて、SnOの割合が45%以上80%未満およびSnOの割合が20%以上54%以下である。
ここで、X線光電子分光法(XPS)は、特性X線を被測定対象である固体試料の表面(ここではSn被覆材1の表面1A)に照射し、光電効果によって発生する光電子を検出する分析手法である。特に、角度分解測定を行うことにより、被測定対象における光電子を発生する元素の深さ方向分布を評価することができる。
XPSによる分光分析では、Sn被覆材1の最表層に位置するSn酸化物被膜21の組成を確認することができる。特に、図2に示されるように、検出角度45°での測定では、表面1Aに近い比較的浅い領域21aの情報が得られ、検出角度75°での測定では、45°の測定領域21aと、更にその下側(基材10側)の領域21bの情報が得られる。したがって、検出角度75°の分析結果と、45°の分析結果の差分が、45°の測定領域21aの下側(基材10側)の領域21bの情報といえる。
なお、本発明に係る、XPSによる分光分析に関する、具体的な測定方法および解析方法は、後述する実施例にて説明する。
本発明に係るSn被覆材1は、XPSによる分光分析および解析から求められる各成分の割合が、45°の検出角度にて、SnOが80%以上96%以下であり、SnOが3%以上20%未満であり、かつ、75°の検出角度にて、SnOが45%以上80%未満およびSnOが20%以上54%以下である。すなわち、このようなSn被覆材1は、その最表層のSn酸化物被膜21が、大きく2つの組成領域を有し、Sn被覆材の表面1A側に近い第1の領域21a(検出角度45°の観測領域に対応)では、SnOの割合が高く、この第1の領域21aの下側(基材10側)に形成される第2の領域21b(検出角度75°の観測領域から、検出角度45°の観測領域を除いた領域に対応)では、第1の領域21aに比べてSnOの割合が高く制御されているといえる。
通常、Snが4価の状態のSnOは、Snが2価の状態のSnOに比べて、化学的に安定で耐変色性に優れ、電気伝導性も良好である。そのため、Sn被覆材1の表面1A側の第1の領域21aにおいてSnOの割合を高めることにより、耐熱性が向上すると考えられる。したがって、45°の検出角度に対応する領域21aにおいて、SnOの割合は80%以上であり、好ましくは85%以上であり、またSnOの割合は20%未満であり、好ましくは15%以下である。
また、Sn被覆材1を高温環境下に長時間曝すと、基材10側からCu原子が拡散し、Sn被覆材表面1Aに、CuOやCuOが形成されることがある。このようなCuOやCuOは、接触抵抗値の上昇や、変色による劣化を招く。
これに対し、SnOは、SnOにはない特性として、Cuやその他の物質と結合する能力が高いという特性がある。そのため、より基材10側の第2の領域21bにおいて、SnOの割合を高めることにより、基材10側から拡散してきたCu原子に対して、Cu−Sn複合酸化物を形成し、Cu原子をトラップする効果が期待でき、これによりSn被覆材表面1AにおいてCu酸化物が生成されることを抑制できると考えられる。したがって、75°の検出角度に対応する領域21a,21bにおいて、SnOの割合は20%以上であり、好ましくは25%以上であり、またSnOの割合は80%未満であり、好ましくは70%以下である。
なお、75°の検出角度に対応する領域は、45°の検出角度に対応する領域の領域(第1の領域21a)と、その下側(基材10側)の領域(第2の領域21b)とを含む広い領域である。したがって、第1の領域21aと第2の領域21bの成分比率が同じであれば、45°の検出角度にて求めた各成分の割合と、75°の検出角度にて求めた各成分の割合とは同じとなる。
しかし、本発明に係るSn被覆材1では、75°の検出角度にて求めたSnO割合が、45°の検出角度にて求めたSnO割合よりも、小さい。これは、第2の領域21bでは、第1の領域21aに比べて、SnOの割合が低いことを意味する。同様に、75°の検出角度にて求めたSnO割合が、45°の検出角度にて求めたSnO割合よりも、大きい。これは、第2の領域21bでは、第1の領域21aに比べて、SnOの割合が高いことを意味している。
このように本発明は、表層に配置されたSn層20の表面に生じるSn酸化物被膜21の組成を、Sn被覆材の表面1A側ではSnOの割合が高く、基材10側ではSnOの割合が高くなるように制御することによって、長時間の高温環境下での使用においても、低い接触抵抗値を維持することができ、変色の発生を抑制できる、耐熱性の高いSn被覆材1を提供するものである。また、Sn被覆材の表面1Aに結合状態が安定なSnOを有することで、表面1Aにおいて、金属同士の摩擦による凝着が生じにくくなり、なおかつ、その下に準安定なSnOを多く配置することで、酸化物皮膜層とSn金属層の密着性を高めることができると考えられる。このような凝着が生じにくく、被膜密着性の高いSn被覆材1は、端子として使用した場合には、複数回の抜き差し時の摩擦係数を小さくする効果が期待できる。
基材10は、Cu系材料からなる。Cu系材料としては、Cuの単体や、Cuを含む合金が挙げられる。Cuを含む合金は、特に限定されないが、Cu−Zn、Cu−Ni−Si、Cu−Sn−Ni、Cu−Ni−Si−Zn−Sn−Mg等が挙げられる。また、基材の形状は、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは板材であり、線材とすることもできる。
図1に示されるように、基材10はその表面10A側に、Sn被覆材1の最表層として所定のSn酸化物被膜21をもつSn層20を有する。このようなSn層20は、基材10の表面10A上に形成されていればよく、基材表面10Aの全面に形成されていてもよいし、基材の表面10Aの少なくとも一部に形成されていてもよい。
基材10が板材である場合には、主表面10A(表面および裏面)の少なくとも一方に本発明に係るSn層20を有していればよく、好ましくは両方に有することが望ましい。また、そのようなSn層20は、基材10である板材の、主表面10Aの少なくとも一部に形成されていればよく、好ましくは全面に形成されていることが望ましい。
また、本発明に係るSn層20は、基材10の表面10A上に、直接形成されていてもよいが、必要に応じて、基材10の表面10A上に形成された別の層を介して、形成されていてもよい。別な層としては、Ni層、Cu層、Cu−Sn層、Pd層、Co層、Cr層等が挙げられる。上記のような層を介することにより、Cuに由来する特性劣化を防止できる。
特に、図1に示されるように、本発明に係るSn被覆材1は、基材10の表面10A上に、Ni層30、Cu層31、Cu−Sn層32および所定のSn層20の複層構造を有することが好ましい。また、このような複層構造を構成する各層の平均膜厚は、Ni層が0.1〜2.0μm、Cu層が0.001〜1.0μm、Cu−Sn層が0.1〜2.0μmであり、かつ、所定のSn層(所定のSn酸化物被膜を含む)が0.1〜2.0μmであることが好ましい。このような複層構造を有することにより、Cu系材料からなる基材10から拡散してくるCu原子が、Sn被覆材1の表面1Aにまで到達することを抑制でき、Cuに由来する特性劣化を防止できる。特に、Ni層、Cu層、Cu−Sn層の厚さが上記範囲にあれば、変色の防止、抵抗の上昇を抑制できる。加えて、Sn層の厚さが上記範囲にあれば、Sn被覆材の摩擦係数の上昇を防止できる。
低摩擦係数を達成するには、表面の凝着防止と下層の硬さの関係が重要であり、また繰り返し挿抜への耐久性は、被覆間の結合状態が重要であると考える。
まず、Sn被覆材1の表面1A側から見て、Sn層20の下に、硬質なCu−Sn層32を配置することは、Sn層20の強度を補う点で好適である。しかし、熱に対する耐久性を勘案すると、基材10の表面10A上に直接Cu−Sn層32を形成することは好ましくない。そのため、Cu−Sn層32の下に、Ni層30や、Pd層、Co層、Cr層といった融点がCuよりも高い層を配置することが望ましい。
しかし、Co層やCr層といった、Cuと2相分離する金属元素の層を基材表面10A上に配置した場合には、それぞれの金属元素とCuとの結合のし易さの違いから、Sn被覆材表面1A上を擦っている際に、剥離を生じる可能性がある。そのため、Ni層30やPd層といった、Cuと全率固溶するような金属元素あるいはCuと化合物を形成するような金属元素の層を、基材表面10A上に配置することが好ましい。
また、特に、層間剥離に対しては、基材表面10A上のNi層30やPd層と、さらにその上層に配置されるCu−Sn層32との関係性も重要となる。一般に、隣接する層から相互に元素が拡散し交じり合うことで生じる拡散結合は、層間の強度を向上させると考えられる。しかし、NiやPd、Cu−Snは、いずれも硬質であり、Ni層30やPd層と、Cu−Sn層32との間に拡散結合を生じさる場合には、比較的高温でかつ長時間の熱処理が必要となる。したがって、通常の熱処理状態では、Ni層30やPd層と、Cu−Sn層32と間に拡散結合は生じておらず、層間剥離を抑制できない。そこで、両者に対して親和性が高く、比較的軟質な層を、中間層として設けることが有効となる。このような中間層としては、原料コストの観点から、Cu層が好ましい。
このように上記4層の複層構成の被覆と、上述の酸化物被膜とを組み合わせることで、端子として使用した場合に、複数回の抜き差し時の摩擦係数を小さくすることができ、また、界面が強固であることから被覆はがれ(基材表面10A上に形成された被膜が剥がれ、基材表面10Aが露出する現象)を防止することが可能と考える。
次に、本実施形態に係るSn被覆材1の製造方法の一例を説明する。
本実施形態に係るSn被覆材の製造方法は、Cu系材料からなる基材表面に、Snめっき層を最表層とするめっき層を形成するめっき工程と、前記めっき層が形成された前記基材を熱処理して、最表層としてSn酸化被膜をもつSn層を形成する工程とを有することが好ましい。
めっき工程は、最表層としてSnめっき層を形成する工程であればよく、さらに他のめっき層を形成してもよい。好ましくは、基材上に、Niめっき層、Cuめっき層およびSnめっき層の順に、複層構造のめっき層を形成することが望ましい。
各めっき層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば電解めっきや無電解めっきのような湿式めっき、蒸着やスパッタのような乾式めっき等が挙げられる。中でも、湿式めっきが好ましく、特に電解めっきがより好ましい。
各めっき層を形成する際のめっき処理の条件は、めっき方法や、めっき層の種類やその厚さ、その後の熱処理の温度や保持時間等に応じて適宜調整すればよい。
また、各めっき層の平均膜厚は、熱処理後の被覆層に求める厚さ等に応じて適宜調整することが好ましいが、例えば、Niめっき層は好ましくは0.1〜2.0μm、Cuめっき層は好ましくは0.002〜2.0μm、Snめっき層は好ましくは0.2〜4.0μmである。それぞれ上記範囲とすることにより、目的の構成を得ることができる。
熱処理工程は、めっき層が形成された基材を加熱処理する工程であればよいが、好ましくは2段階の熱処理工程により行うことが望ましい。このとき第1工程は、第2工程よりも高温で行うことが好ましい。具体的には以下の条件がより好ましい。
熱処理の第1工程は、処理温度が好ましくは500℃以上、より好ましくは500〜650℃であり、保持時間が好ましくは1〜30秒間、より好ましくは1〜25秒間である。上記範囲とすることにより、Snめっき層においてSnOが多く生成すると考えられる。
熱処理の第2工程は、処理温度が好ましくは200〜300℃以上、より好ましくは230〜270℃であり、保持時間が好ましくは1〜30秒間、より好ましくは1〜20秒間である。上記範囲とすることにより、上記SnOの表層にSnOが効率よく生成すると考えられる。
上記のような2段階の熱処理を経ることにより、Sn被覆材の最表層として、Sn酸化物の組成分布が所定の関係で制御されたSn酸化物被膜をもつSn層を形成できる。
上記のような熱処理を行う装置としては、バーナー、バッチ炉、通電アニール等を用いることができる。
また、熱処理工程は、更に、熱処理後のSn被覆材を冷却する冷却工程を含むことが好ましい。冷却工程の条件は、必要に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは、熱処理の第2工程の直後から15秒以内に、10〜70℃の水で冷却することが好ましい。このような処理を経ることにより、SnOがSnOになることを防止できる。
また、上記のような製造方法では、従前の生産設備を用いることができるため、新たな設備投資や、試薬購入や液管理を行う必要がないため、生産コストや生産効率の面でメリットが大きい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜8および比較例1〜3)
基材として、圧延により製造された厚さ0.25mmのCu合金板(FAS−680:古河電気工業株式会社製。合金組成は、Niが2.0〜2.8質量%、Siが0.45〜0.6質量%、Znが0.4〜0.55質量%、Snが0.1〜0.25質量%、およびMgが0.05〜0.2質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物。)を用い、これに、以下のめっき条件で、Ni、CuおよびSnの各めっき処理を順次行い、熱処理後の各層の膜厚が所望の厚さとなるように各めっき層を形成し、その後、以下の熱処理工程で熱処理を施した。
[Niめっき条件]
Niめっきは、Ni(NHSO・4HO 500g/リットル、NiCl・6HO 30g/リットル、HBO 30g/リットルで調整されためっき液を用い、浴温50℃、陰極電流密度10A/dmにて行った。ここで、Niめっき層は、上記基材の全面に形成した。
[Cuめっき条件]
Cuめっきは、CuSO・5HO 180g/リットル、HSO 80g/リットルで調整されためっき液を用い、浴温40℃、陰極電流密度6A/dmにて行った。ここで、Cuめっき層は、上記Niめっきを施した基材の全面に形成した。
[Snめっき条件]
Snめっきは、SnSO 80g/リットル、HSO 80g/リットルで調整されためっき液を用い、浴温20℃、陰極電流密度2A/dmにて行った。ここで、Snめっき層は、上記NiめっきおよびCuめっきを施した基材の全面に形成した。
[熱処理工程]
熱処理としては、上記めっき条件で各種めっき層が形成された基材に対して、プロパンガスを用いたバーナー方式を用いて、表1に示す加熱温度および保持時間で2段階の熱処理工程(第1および第2工程)を行った。その後、第2工程直後から15秒以内に、およそ20〜45℃の水にて冷却し、Sn被覆材を得た。
Figure 0006606001
(評価)
上記実施例および比較例に係るSn被覆材について、下記に示す測定および評価を行った。各評価条件は下記の通りである。結果を表2に示す。
[X線光電子分光分析(XPS)]
(1)Sn被覆材の表面を、XPS測定装置ESCA5400MC(アルバック・ファイ株式会社製)を使用し、XPSスペクトルを測定した。測定は、X線種単色化Al−kα線源、出力300W、検出面積1.1mmφ、検出角度(試料と検出器のなす角)45°にて行った。
(2)次に、上記(1)で得られた測定スペクトルデータから、結合エネルギー485〜487eVの範囲に現れるSn(3d5/2)軌道を解析し、ピークを構成するSn、SnOおよびSnOの各成分の比率を求め、これらの合計比率に対する各成分比率の割合から、Sn、SnOおよびSnOの各割合(Sn、SnOおよびSnOの割合の合計を100%として)を算出した。
解析は、解析ソフトMultiPak(アルバック・ファイ株式会社製)を用い、ピークフィッティング解析により行った。解析において、C(炭素)1sのピークトップは、284.80eVと規定した。バックグラウンドの除去は、Shirley(ピーク強度に比例した曲線を除去するMethod)を選択した。また、ピークの同定は、ピークトップの値(結合エネルギー)を、Snは485.1eV、SnOは486.1eV、SnOは486.8eVに、それぞれ固定して行った。フィッティング関数は、Gaussian関数とLorentzian関数の混合関数を用い、関数全体に占めるGaussian関数の混合比を80%で固定した。
(3)上記(1)および(2)の分析と解析を、Sn被覆材の表面の中央近傍の任意の5か所で同様に行い、各成分の割合をそれぞれ平均し(N=5)、45°の検出角度における各成分の割合(%)とした。
(4)上記(1)〜(3)を、検出角度75°についても同様に行い、75°の検出角度における各成分の割合(%)を求めた。
[めっき層の平均膜厚]
各めっき層の平均膜厚は、JIS H8501:1999に準拠した電解式試験法によって、電解式膜厚計(株式会社電測製、CT−4)を用い、上記実施例および比較例に係るSn被覆材の中央部1cmの領域(任意の5箇所)について、各めっき層の厚さをそれぞれ測定し、平均値(n=5)を算出した。
なお、電解式試験法による各層の測定で用いた電解液は、Sn層およびCu−Sn層は株式会社電測製K44、Cu層は同社製K52、Ni層は同社製K54とした。
[接触抵抗値]
上記実施例および比較例に係るSn被覆材の接触抵抗値は、図3に示す装置を用い、Sn被覆材と張り出し材とが接触した界面に生じる電気抵抗を、四端子法により測定して求めた。ここで図3中、符号1は、上記Sn被覆材であり、40は、張り出し材(表層に膜厚0.5μmのSn層を有するFAS680、張り出し部の曲率半径が1mm)であり、40aは、張り出し材40の張り出し部であり、43は、DC電流源(株式会社TFF ケースレーインスツルメンツ社製 6220型DC電流ソース)であり、45は、電流測定器(同社製 2182A型ナノボルトメータ)である。
なお、測定は、Sn被覆材を、大気雰囲気中、180℃、1000時間放置する、高温長時間処理の前後において行った。具体的には、高温長時間処理の前のSn被覆材1と、高温長時間処理の後のSn被覆材1のそれぞれについて、各々任意の5箇所における接触抵抗値を測定し、各々平均値(N=5)を算出した。
また、本実施例では、高温長時間処理の前の値を初期の値とし、接触抵抗値が1.0mΩ未満を合格とした。さらに、高温長時間処理の経過後の値については、初期の値と比較して、変化量(抵抗上昇)3.0mΩ未満を合格レベルとし、1.0mΩ未満である場合を更に良好と評価した。
[変色の有無]
変色の有無は、初期(加熱前)の表面の色合いと、大気雰囲気下、180℃で1000時間保持した後の表面の色合いとを目視にて観察し、初期の色合いに対して、加熱後の色合いが著しく変色したものを「×」とし、著しい変色のないものを「○」として評価した。なお、ここで変色とは、Sn被覆材の表面の色合いが、光沢のある銀色(初期の色合い)から、加熱後に、茶褐色あるいは黒色に変化する現象である。本実施例では、変色がないもの「○」を合格レベルとした。
[摩擦係数]
上記実施例および比較例に係るSn被覆材の摩擦係数は、表面性測定機(新東科学株式会社製、TYPE:14)を用い、張り出し材(表層に膜厚0.5μmのSn層を有するFAS680、張り出し部の曲率半径が1mm)に対し、移動速度100mm/min、摺動距離10mm、接触荷重を5Nで、Sn被覆材を5回摺動させ、5回目の摺動時の数値を摩耗係数として測定した。本実施例では0.30以下を合格レベルとした。
[被覆はがれの有無]
被覆剥がれの有無は、摩耗係数の測定と同様の摺動を50回繰り返し、摺動後のSn被覆材の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 VHX−2000)を用いて、200倍で観察し、基材の銅合金が露出して見えたものを「×」とし、見えなかったものを「○」として評価した。本実施例では、基材の銅合金の露出が見えなかったもの「○」を合格レベルとした。
Figure 0006606001
表2に示されるように、XPSによる分析・解析の結果、表層のSn層の酸化状態(表面に生じるSn酸化物被膜の組成)が所定の範囲に制御された実施例1〜8に係るSn被覆材は、180℃の高温に長時間曝された後であっても、接触抵抗値の上昇と変色の発生が抑制され、摩擦係数も小さく、被覆はがれも生じないことが確認された。
これに対し、XPSによる解析の結果、Sn層の酸化状態が所定の範囲に制御されていない比較例1〜3に係るSn被覆材では、180℃の高温に長時間曝された結果、接触抵抗値の著しい上昇およびSn被覆材表面の著しい変色の一方または両方が発生することが確認された。また、これらのSn被覆材は、本発明の実施例1〜8に係るSn被覆材に比べて、摩耗係数が大きいことが確認された。
また、表2に示されるように、Ni層、Cu層、Cu−Sn層およびSn層の複層構造を構成する各層の平均膜厚が、Ni層が0.1〜2.0μm、Cu層が0.001〜1.0μm、Cu−Sn層が0.1〜2.0μm、Sn層(Sn酸化物被膜を含む)が0.1〜2.0μmである実施例1〜4に係るSn被覆材は、各層の平均膜厚が上記所定の範囲にない実施例5〜8に係るSn被覆材に比べて、さらに優れた耐熱性および摩擦係数を有することが確認された。
本発明に係るSn被覆材は、高温放置後にも優れた電気接続信頼性を有することから、例えば、自動車用コネクタとして好適に用いることができる。
1 Sn被覆材
10 基材
20 Sn層
21 Sn酸化物被膜
30 Ni層
31 Cu層
32 Cu−Sn層
40 張り出し材
43 DC電流源
45 電流測定器

Claims (5)

  1. Cu系材料からなる基材と、該基材の表面側に、最表層としてSn酸化物被膜をもつSn層とを備えるSn被覆材であって、
    前記最表層について、X線光電子分光法(XPS)による分光分析を下記に示す2つの検出角度で行って、それぞれ得られたSn(3d5/2)XPSスペクトルのピークから、Sn、SnOおよびSnOの各割合(Sn、SnOおよびSnOの割合の合計を100%として)を算出したとき、
    検出角度45°にて、SnOの割合が80%以上96%以下であり、SnOの割合が3%以上20%未満であり、かつ、
    検出角度75°にて、SnOの割合が45%以上80%未満およびSnOの割合が20%以上54%以下であることを特徴とする、Sn被覆材。
  2. 前記基材の表面上に、Ni層、Cu層、Cu−Sn層および前記Sn層の複層構造を有する、請求項1に記載のSn被覆材。
  3. 前記複層構造を構成する各層の平均膜厚は、前記Ni層が0.1〜2.0μm、前記Cu層が0.001〜1.0μm、前記Cu−Sn層が0.1〜2.0μmであり、かつ、前記Sn層(前記Sn酸化物被膜を含む)が0.1〜2.0μmである、請求項2に記載のSn被覆材。
  4. 前記基材が、板材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のSn被覆材。
  5. 前記基材が、線材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のSn被覆材。
JP2016067780A 2016-03-30 2016-03-30 Sn被覆材 Active JP6606001B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016067780A JP6606001B2 (ja) 2016-03-30 2016-03-30 Sn被覆材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016067780A JP6606001B2 (ja) 2016-03-30 2016-03-30 Sn被覆材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017181254A JP2017181254A (ja) 2017-10-05
JP6606001B2 true JP6606001B2 (ja) 2019-11-13

Family

ID=60006906

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016067780A Active JP6606001B2 (ja) 2016-03-30 2016-03-30 Sn被覆材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6606001B2 (ja)

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5816095A (ja) * 1981-07-23 1983-01-29 Kawasaki Steel Corp 耐アイホ−ル性の優れた錫めつき鋼板の製造方法
ITTO20030027A1 (it) * 2003-01-21 2004-07-22 Europa Metalli Spa Metodo per formare uno strato di passivazione su un articolo presentante almeno una superficie stagnata.
KR20050043257A (ko) * 2003-11-05 2005-05-11 삼성전자주식회사 3차원 표면 분석 방법
JP2007301761A (ja) * 2006-05-09 2007-11-22 Kobe Steel Ltd 光情報記録媒体用記録層および光情報記録媒体
JP4660626B2 (ja) * 2009-02-04 2011-03-30 新日本製鐵株式会社 レトルト後塗膜密着性に優れたスズめっき鋼板及びその製造方法
JP5464876B2 (ja) * 2009-03-17 2014-04-09 Dowaメタルテック株式会社 Sn被覆銅又は銅合金及びその製造方法
JP5442385B2 (ja) * 2009-10-07 2014-03-12 三菱伸銅株式会社 導電部材及びその製造方法
JP6136847B2 (ja) * 2013-10-22 2017-05-31 富士通株式会社 分析方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017181254A (ja) 2017-10-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2620275B1 (en) Tin-plated copper-alloy material for terminal and method for producing the same
JP5789207B2 (ja) 嵌合型接続端子用Sn被覆層付き銅合金板及び嵌合型接続端子
EP2743381B1 (en) Tin-plated copper alloy terminal member with outstanding insertion and removal characteristics
EP3187627B1 (en) Conductive material for connection parts which has excellent fretting wear resistance
KR101827195B1 (ko) 내열성이 우수한 표면 피복층 부착 구리 합금 판조
JP2007063624A (ja) 挿抜性及び耐熱性に優れる銅合金すずめっき条
CN110997985A (zh) 附银皮膜端子材及附银皮膜端子
JP2005350774A (ja) 皮膜、その製造方法および電気電子部品
JP4522970B2 (ja) ウィスカーが抑制されたCu−Zn合金耐熱Snめっき条
JP2013231223A (ja) めっき材およびその製造方法
JP4489738B2 (ja) Cu−Ni−Si−Zn系合金すずめっき条
JP7335679B2 (ja) 導電材
JP4247256B2 (ja) Cu−Zn−Sn系合金すずめっき条
JP2005251762A (ja) 錫被覆電気コネクタ
JP6606001B2 (ja) Sn被覆材
JP2011012350A (ja) 皮膜および電気電子部品
JP5226032B2 (ja) ウィスカーが抑制されたCu−Zn合金耐熱Snめっき条
US11761109B2 (en) Terminal material for connector
JP7281971B2 (ja) 電気接点用材料およびその製造方法、コネクタ端子、コネクタならびに電子部品
JP7302248B2 (ja) コネクタ用端子材及びコネクタ用端子
JP6743998B1 (ja) コネクタ用端子材及びコネクタ用端子
JP7306879B2 (ja) 電気接点用材料およびその製造方法、コネクタ端子、コネクタならびに電子部品
JP7281970B2 (ja) 電気接点用材料およびその製造方法、コネクタ端子、コネクタならびに電子部品
JP2021147673A (ja) Cu−Ni−Si系銅合金板、めっき皮膜付Cu−Ni−Si系銅合金板及びこれらの製造方法
TWI840541B (zh) 銅合金板、附鍍敷被膜銅合金板及此等之製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190110

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190925

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190930

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191017

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6606001

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350