以下、発明を実施するための形態について説明する。
実施例で用いる運用モードとは、装置に搬入された検体ラック等の搬送対象に対する制御のさせ方、ある条件を満たしたときの表示のさせ方、又は、装置とホストの通信の有無などの様々なモードのことを言う。運用モードには、ある条件を満たしたときに装置が所定の制御(制御には、検体ラックの搬送制御、通知制御、表示制御などが含まれる)を自動で実行したりしなかったりするモード、又は、実行はするもののある条件を満たしたときとは異なる制御を自動で実行したりするモードがある。
また、運用モード切り換え用ラックは、一般検体のラックとは異なり一般検体を載せることは想定していないため一般検体を載せられない形状や構造であってもよいが本明細書では便宜的にラックと称する。
また、運用モード切り換え用ラックは、装置に運用モードの切り替えを知らせるための部材であり、装置に搬入できる構造であればよい。装置に搬入できる構造であるために、運用モード切り換え用ラックは、少なくとも一般検体ラックと底面の縦横の長さが同じ部材である。
運用モード切り換え用ラックで運用モードを切り換える例を第1の実施形態で説明する。ここでの運用モードの例は自動再検モードである。第1の実施形態について、実施例を示す図1〜図8を引用して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態である自動分析装置の全体概略構成図である。
本実施形態による自動分析システム(自動分析装置)は、検体ラック投入部1と、ID読取部2と、搬送ライン3と、検体ラック待機部4と、分析モジュール5,6,7と、検体ラック回収部8と、全体管理用コンピュータ9を備えている。
検体ラック投入部1は、それぞれ複数個の検体(試料)を保持する複数個の検体ラックを投入する部分である。分析モジュール5,6,7は、搬送ライン3に沿って配置されているとともに、搬送ライン3に取り外し可能な接続になっている。これらの分析モジュールの数は任意に設定でき、本実施形態では、モジュール数3個の場合を示している。
搬送ライン3は、検体ラック投入部1から検体ラックを、分析依頼に従って分析モジュール5,6,7への搬送、または、分析モジュール5,6,7での分析が終了した検体を保持する検体ラック待機部4へ搬送、もしくは分析依頼がなかった検体ラックを、検体ラック回収部8に搬送する。
また、検体ラック投入部1,ID読取部2,搬送ライン3,検体ラック待機部4および検体ラック回収部8内の必要な制御を行う全体管理用コンピュータ9を備えている。全体管理用コンピュータ9には、更に必要な情報を入力する操作部10および分析結果を表示する表示部11が接続されている。また、全体管理用コンピュータ9には、自動分析装置の運用モードを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された運用モードに基づき装置を制御する制御部が備わっている。また、制御部は運用モードを切り換えることができ、切り換えた運用モードを装置に適用することができる。
検体ラックによって保持された検体には、検体に関する属性情報(受付番号,患者氏名,依頼分析項目等)を示す検体IDを有し、さらに、検体ラックには、ラック番号等のラック識別情報を示すラックIDを有する。ここで、ラックIDとは、個々のラックをユニークに識別する識別子を意味し、代表的な識別子としてバーコード、RFIDが挙げられる。また、ラックにラック識別用の孔を設けて、孔の有る無し情報からラックを一義的に決定することもできる。孔の有る無しは透過型・又は反射型センサなどで識別できこの孔も識別子に該当する。例えば、孔の有る無しの2値の組合せを使うことで、装置は、2値化した数字又は10進数に変換して、ラック番号等のラック識別情報として認識することができる。
検体ラック投入部1に置かれた検体ラックは、搬送ライン3によって搬送されるが、検体ラックが搬送ライン3に移った際に、検体IDや検体ラックIDが、ID読取部2で読み取られ、全体管理用コンピュータ9に送られる。全体管理用コンピュータ9は、その属性情報に基づいて、依頼された分析項目からどの分析モジュールで実施するかを決定する。
次に、分析モジュール5,6,7について、図14を用いて説明する。図14は、分析モジュールの全体構成を示す斜視図である。一例として生化学自動分析装置を示す。
反応ディスク101には血液又は尿などの検体(試料)と試薬とを混合する複数の反応容器102が円周上に並んでいる。試薬ディスク109の中には複数の試薬ボトル110が円周上に載置可能である。反応ディスク101の近くに試験管などの試料が収容された検体容器115を載せた検体ラック116を移動する搬送ライン117が設置されている。反応ディスク101と試薬ディスク109の間には回転及び上下動可能な試薬分注機構107,108が設置されており、試薬プローブ107aを備えている。試薬プローブ107aには試薬用シリンジ118が接続されている。反応ディスク101と搬送ライン117の間には、回転及び上下動可能なサンプル分注機構111が設置されており、サンプルプローブ111aを備えている。サンプルプローブ111aには試料用シリンジ119が接続されている。サンプルプローブ111aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して検体容器115から反応容器102への検体の吸引吐出を行う。
反応ディスク101の周囲には、洗浄機構103、光源、分光光度計104、撹拌機構105,106、試薬ディスク109、搬送ライン117が配置され、洗浄機構103には洗浄用ポンプ120が接続されている。試薬分注機構107,108、サンプル分注機構111、撹拌機構105,106の動作範囲上に洗浄槽113,130,131,132,133がそれぞれ設置されている。検体容器115には検体が含まれ、検体容器115は検体ラック116に載せられて搬送ライン117によって運ばれる。
また、各機構はコントローラ121に接続されており、当該コントローラ121は各機構を制御している。
光源から照射された光は、反応容器102内で混合された検体と試薬の混合液に照射される。照射された光は分光光度計104により受光され、コントローラ121は、この光量(混合液の透過光や散乱光の光量)から検体に含まれる所定成分の濃度を算出する。なお、分析項目によって試薬が異なる。このようにして生化学自動分析が行われる。
図2は、検体ラックIDを設定する画面である。
検体種別設定201は、血清、尿など5種別に対する検体測定用のラックIDの範囲を設定するエリアである。本例では一般検体用ラックと緊急検体用ラックでそれぞれ種別ごとに設定でき、一般検体用ラックはラックIDが50000番台、緊急用ラックは40000番台を使用し、この範囲の中で、検体種別ごとに使用するラックIDの範囲を設定する。
自動再検モードONラック202は、自動再検を有効にするラックIDを定義するエリアであり、自動再検モードOFFラック203は、自動再検を無効にするラックIDを定義するエリアである。それぞれ最大4ラック分設定できるようになっている。これら各ラックIDは重複しないようにオペレータが設定を行う。オペレータが登録ボタン204を押下することにより設定したラックIDを全体管理コンピュータ9の記憶部に記憶する。なお、キャンセルボタン205を押下することによりラック設定を中断することができオペレータは当該画面から抜け出すことができる。
このようにして、自動再検を有効にするラックIDと無効にするラックIDを装置に記憶させ、設定されたラックIDを有する検体ラックは、運用モード切り換え用ラックとなる。従い、オペレータは任意の検体ラックを運用モード切り換え用ラックとして設定できる。
なお、自動再検とは、所定の測定項目の測定結果が基準値外であることを装置が自動検知して、再度その測定項目の分析を行うことである。
図3は、ラック投入部1に設置された検体ラックの設置例である。
本例では1検体ラック当たり最大5検体まで検体容器を設置することができる。ラック投入部1には、検体を設置したラックを測定したい順に設置する。自動再検モードで測定する複数の検体ラック302と、自動再検モードで測りたくない検体ラック304が有った場合の例である。
通常、自動再検モードで運用する場合、検体ラック投入部1に自動再検モードONラック301、次に自動再検モードで測定する複数の検体ラック302を設置し、次に自動再検モードOFFラック303、次に自動再検で測りたくない検体ラック304、次に自動再検モードONラック305の順にラックを設置する。
このとき、より好ましくは自動再検モードONラック301、303、自動再検モードOFFラック302には、測定用の検体ラック(302、304)と区別するための目印を付けておけば、ラックを装置投入前に自動再検モードのラックを確認しやすく、誤操作を防ぐことができる。
投入部にラックを設置完了後、操作部10の操作画面より測定スタートを起動すると、装置状態はスタンバイ状態から測定状態に移行し、ラック投入部1に設置したラックは、ラック301、302、303、304、305の順番に搬送ライン3搬送され、ID読取部2で読み取られラックID及びラックに設置した検体の検体IDを認識する。なお、予めスタンバイ状態で初期状態を自動再検有効と設定していれば、自動再検モードONラック301は不要である。
ID読取部2でラック301が読み取られることにより、装置はこれ以降に搬入されるラックに対し、自動再検モードが有効なラックであることを装置は認識し、自動再検有効モードを適用する。暫くして、ID読取部2でラック303が読み取られることにより、装置はこれ以降に搬入されるラックに対し、自動再検モードが無効なラックであることを装置は認識し、自動再検無効モードを適用する。また暫くして、ID読取部2でラック305が読み取られることにより、装置はこれ以降に搬入されるラックに対し、自動再検モードが有効なラックであることを装置は認識し、上記同様、装置は自動再検有効モードを適用する。このようにして、ラック304のみ自動再検無効モードを適用することができる。
図4は、自動再検切り換え用ラックのラックIDの認識処理フローを示す図である。
ステップ401で、ID読取部2は搬送されてきたラックIDを読み取る。ステップ402で、読み取ったラックIDと図2のラック設定画面で設定したラックID情報から制御部はラックの種類を判定する。
ラックIDが自動再検モードONラックであるとき、ステップ403で制御部は自動再検モードをONに設定する。その後ステップ405で、前記ラックはラック回収部へ搬送される。
ラックIDが自動再検モードOFFラックであるとき、ステップ404で制御部は自動再検モードをOFFに設定する。その後ステップ405で、前記ラックはラック回収部へ搬送される。
ステップ402で、ラックIDが一般検体用ラックまたは緊急検体用ラックであるとき、図5の初回測定ラックの処理を行う。
なお、前記ラックは測定対象となる検体容器が搭載されていないので分析モジュール5,6,7のいずれに立ち寄ることなくラック回収部へ搬送される。
図5は、初回測定時のラック処理フローを示す図である。
ステップ502で、認識した検体ラック単位に図4にて判定した自動再検モードを制御部は確認する。
自動再検モードがONの場合、ステップ511で、制御部は測定ラックを管理するためのラック測定管理情報中に当ラックのラック自動再検が有効であることを記憶部に記憶する。本実施例では、ラック単位に記憶するが、ラックに設置された検体単位に管理される検体管理情報にて自動再検情報を記憶してもよい。
自動再検モードがOFFの場合、ステップ512で、制御部は当ラックのラック自動再検が無効であることを記憶部に記憶する。
ステップ503で当検体ラックに設置した全検体に対して、測定依頼項目が有るか判定する。
当検体ラックに対して依頼項目有りの場合、ステップ504で依頼項目に基づき当検体ラックをどの分析モジュールへどのような順番で搬送させるかを決めるラック搬送スケジュールを作成する。ステップ505でラック搬送スケジュールに基づき、必要な分析モジュールへ順番に搬送する。各分析モジュールへ搬送された検体ラックの検体は当分析モジュールで必要な依頼項目に対して測定する。
測定に必要な全分析モジュールへ搬送終了後、ステップ506で、制御部は、当検体ラックの自動再検情報を確認する。自動再検がONの場合、ステップ507で、制御部は、搬送ラインを介してラック待機部へ当該ラックを搬送し、初回測定結果が出力されるまでラック待機部で待機させる。
自動再検情報がOFFの場合、ステップ508で、制御部は、ラック待機部で待機させることなく、ラック回収部へ当該ラックを搬送する。ラック回収部へ搬送されたラックは、オペレータにより装置から取り出すことができる。
図6は、再検測定時のラック処理フローを示す図である。
1検体分の測定結果が出力されると、ステップ602で測定結果に基づき再検依頼の作成を行う。
ステップ603で、当検体のラック自動再検がOFFの場合、すでに当ラックが回収されているため何もせず処理を終了する(ステップ604)。
ラック自動再検がONの場合、ステップ605で、制御部は、当ラックに搭載された検体が全て測定結果の出力済みか(または測定終了済みか)を判定する。
当ラックの検体が全ての測定結果を出力済みでない場合、ステップ605で当ラックはラック待機部で待機を継続する。
当ラックの検体が全ての測定結果を出力済みの場合、制御部は、ステップ607で当ラックの全検体に対して再検依頼が有るか判定する。ここで、制御部は各項目の測定結果が基準値内にあるかを確認し、1項目でも基準値外であると判定した場合には、再検依頼が有ると判定する。
再検依頼無しの場合、ステップ610でラック待機部からラック回収部へ搬送される。再検依頼有りの場合、ステップ608で再検依頼項目に基づき当検体ラックをどの分析モジュールへどのような順番で搬送させるかを決めるラック搬送スケジュールを作成する。
ステップ609でラック搬送スケジュールに基づき、必要な分析モジュールへ順番に搬送する。各分析モジュールへ搬送された検体ラックの検体は当分析モジュールで必要な依頼項目を測定する。
図7は、表示部に表示される自動再検の状態表示画面を示す図である。
701は自動再検モード表示であり、制御部は、装置状態や時計表示のように常時表示されるエリアに自動再検の状態を出力する。
自動再検モード表示は、自動再検ONラックを認識すると自動再検ON表示となり、自動再検OFFラックを認識すると自動再検OFF表示となる。これによりオペレータは次に投入する検体ラックの自動再検モードを事前に確認できる。この表示は測定状態で運用モード切り換え用ラックの検知毎に切り換わるためリアルタイムで現在の自動再検モードを確認できる。なお、初期設定としてスタンバイ状態で自動再検ONやOFFが設定できる構成であれば、運用モード切り換え用ラックの認識の有無に係わらず、その初期設定を自動再検の状態として表示してもよい。
702は測定中のラックに搭載された検体毎の自動再検の有効/無効状態を表示する。これら有効無効状態はラック自動再検情報に基づき表示する。検体ID又はラックIDと自動再検の有無が対応付けられて表示されていることにより、当検体又は当ラックが分析モジュール搬送後即時検体を取り出せるか否かを確認することができる。つまり、自動再検が無効の表示がされていれば、対応する検体又はラックは即時取り出せるものであることがオペレータは認識することができる。
ここまでで説明したように、運用モード切り換え用ラックは、自動再検が有効な場合に前記検体ラックは分析モジュールでの測定結果が出力するまで検体ラック待機部で待機するモードと、自動再検が無効な場合に検体ラックは検体ラック待機部で待機することなく検体ラック回収部に回収されるモードとを切り換えることができる。
以上、第1の実施形態について説明した。検体ラックを運用切り換え用ラックとして定義し、従来からあるID読取部を用いて、運用切り換え用ラックにより運用切り換えのタイミングを装置に知らせることができるので、従来のように測定状態からスタンバイ状態に戻すことなく、測定状態のままで自動再検モードの有効と無効を切り換えることができる。また、検体種別毎にラックIDを設定する構成の装置においては、検体種別と自動再検有無を掛け合わせたラックIDの範囲設定をする必要がないためラックIDの範囲設定の複雑化を原因としたオペレータの検体の置き間違いが生じない。また、運用切り換え用ラックにより運用が動的に切り換わるものの、表示部に現在の運用モードが表示されるためにオペレータは運用モードを間違いなく所望の検体ラックに対し適用させることができる。
第2の実施形態について説明する。ここでの運用モードはデータ異常値チェックである。ここで、データ異常値チェックとは、分析モジュールでの測定結果出力時に、測定結果が異常値であるか否かをチェックすることである。
例えば、透析患者検体などのように常にデータ異常値となる検体に対しては、データ異常値チェックしないことにより、無駄な自動再検測定を防ぎ、時間短縮、検体無駄遣いを防ぐことができる。このため、ラックに応じてデータ異常チェックをしない方が有益な場合がある。このような場合における実施形態を説明する。
図8から図10は、運用モード切り換え用ラックを、データ異常値チェック有無の切り換えに使用する実施形態である。
図8は、データ異常値チェックの切り換え用ラックのラックIDを設定する画面の要部である。図2の自動再検モードの設定箇所を図8に置き換えたものがラック設定画面として表示される。
データ異常値チェックONラック801は、データ異常値チェックを有効にするラックIDを定義するエリアであり、データ異常値チェックOFFラック802は、自動再検を無効にするラックIDを定義するエリアである。それぞれ最大4ラック分設定できるようになっている。これら各ラックIDは重複しないようにオペレータが設定を行う。オペレータが登録ボタン204を押下することにより設定したラックIDを全体管理コンピュータ9の記憶部に記憶する。
データ異常値チェック有りで測定する場合、データ異常値チェックONラックの後ろにデータ異常値チェック有りで測定したい検体のラックを並べて順に装置に投入する。
データ異常値チェック無しで測定する場合、データ異常値チェックOFFラックの後ろにデータ異常値チェック無しで測定する検体のラックを並べて順に装置に投入する。
図9は、データ異常値チェックの切り換え用ラックのラックIDの認識処理フローを示す図である。
ステップ811で、ID読取部2で搬送されてきたラックIDを読み取る。ステップ812で、読み取ったラックIDと図8のラック設定画面で設定したラックID情報から制御部はラックの種類を判定する。
ラックIDがデータ異常値チェックONラックであるとき、ステップ813で制御部は異常値チェックモードをONに設定する。その後ステップ815で、前記ラックはラック回収部へ搬送される。
ラックIDがデータ異常値チェックOFFラックであるとき、ステップ814で制御部は異常値チェックモードをOFFに設定する。その後ステップ815で、前記ラックはラック回収部へ搬送される。
なお、前記ラックは測定対象となる検体容器が搭載されていないので分析モジュール5,6,7のいずれに立ち寄ることなくラック回収部へ搬送される。
ステップ812で、ラックIDが一般検体用ラックまたは緊急検体用ラックであるとき、ステップ816で、制御部は、認識した検体ラック単位にデータ異常値チェックモードを判定する。
データ異常値チェックモードがONの場合、ステップ817で、制御部は測定ラックを管理するためのラック測定管理情報中に当ラックのラック異常値チェックが有効であることを記憶部に記憶する。本実施例では、ラック単位に記憶するが、ラックに設置された検体単位に管理される検体管理情報にて異常値チェックの有効又は無効を記憶してもよい。
データ異常値チェックモードがOFFの場合、ステップ818で、ラック異常値チェックが無効であることを記憶部に記憶する。
図10は、測定結果出力時のデータ異常値チェックの処理フローを示す図である。
当ラックの検体の1項目測定結果出力時(ステップ851)、ステップ852で、ラック異常値チェックが有効か無効かを判定する。
ラック異常値チェックが無効ならば、制御部は、データ異常値チェックを実施しない。つまり、所定の項目の測定結果が基準値外であったとしてもデータ異常のアラームを表示せずに測定結果を出力する。
ラック異常値チェックが有効ならば、制御部は、ステップ853でデータ異常値チェックを実施する。出力した測定結果に対してデータ異常値チェックで異常(基準値外)と判断した場合、当測定結果にデータ異常を示すデータアラームが測定結果に付加される。そして、ステップ854で、測定結果が登録され、自動再検モードが有効であれば再検依頼が登録される。自動再検モードが有効な場合には、データ異常を示すデータアラームに基づき再検依頼が登録されるためである。
なお、ラック異常値チェックが無効ならば、データ異常を示すデータアラームが付されることがないので、再検依頼が登録されることはない。このデータアラームに基づき再検依頼が登録されるためである。
当検体ラックの全測定完了後、当ラックの検体のうち一項目以上前記再検依頼が登録されていれば自動再検測定を実施する。再検依頼が一つも登録されていなければ自動再検を実施せず、ラックは回収される。
ここまでで説明したように、運用モード切り換え用ラックは、データ異常値チェックが有効な場合に分析モジュールでの測定結果が異常な場合にデータアラームを測定結果に付加するモードと、データ異常チェックが無効な場合に分析モジュールでの測定結果が異常な場合にデータアラームを測定結果に付加しないモードとを切り換えることができる。
以上、第2の実施形態について説明した。検体ラックを運用切り換え用ラックとして定義し、従来からあるID読取部を用いて、運用切り換え用ラックにより運用切り換えのタイミングを装置に知らせることができるので、測定状態のままでデータ異常値チェックの有効と無効とを切り換えることができる。これにより、自動再検モードが有効の運用モードだとしてもデータ異常値チェックを無効としておくことにより、透析患者検体などのように常にデータ異常値となる検体に対し、無駄な自動再検査を防ぎ、時間短縮、検体無駄遣いを防ぐことができる。
自動再検を防ぐ点で第1の実施形態と同じ効果が得られるが、第2の実施形態の場合には、データアラームが付されないので、オペレータがアラームに沿って誤って手動での装置再投入による再検等をしてしまうことを防ぐことができる。
なお、説明が重複するため省略するが、本実施形態においても図7のように、リアルタイムでの現在のデータ異常値チェックの有効又は無効表示や、検体ID又はラックIDとデータ異常値チェックの有無が対応付けられた表示を適用することが望ましい。
第3の実施形態について説明する。ここでの運用モードは装置が上位ホストと測定依頼項目の問合せを実施するモードである。例えば、装置内であらかじめ定義した依頼項目で測定したい検体と、上位ホストからネットワーク経由で依頼項目を受信して測定したい検体が混在する場合において、検体ラックに応じてホスト依頼の問い合わせ有無を切り換えたい場合がある。この場合、装置内で定義した依頼項目で測定する検体に対して、無駄なホスト問合せやホストからの応答の処理時間を省くことができ、測定のスループットを向上させることができる。装置からの依頼問い合わせに対して、ホスト内に対応する検体情報が無い場合、ホストは装置へ応答を返さない場合があり、装置は受信タイムアウトとなるまで測定が待たされてしまう。このような場合に効果的である。
図11から図13は、運用モード切り換え用ラックを、上位ホスト依頼問い合わせ有無の切り換えに使用した実施形態である。
全体管理用コンピュータ9は上位ホストシステム(以下、単にホストとも言う)とネットワークで接続されており、装置が認識した検体に対して上位ホストシステムへ依頼項目を問合せ、上位ホストシステムから装置へ測定依頼項目を受信して測定するシステム構成である。
図11は、ホスト依頼問合せの切り換え用ラックのラックIDを設定する画面の要部である。図2の自動再検モードの設定箇所を図11に置き換えたものがラック設定画面として表示される。
ホスト依頼問合せONラック901は、ホストへの依頼問い合わせを有効にするラックIDを定義するエリアであり、ホスト依頼問合せOFFラック902は、ホストへの依頼問い合わせを無効にするラックIDを定義するエリアである。それぞれ最大4ラック分設定できるようになっている。これら各ラックIDは重複しないようにオペレータが設定を行う。オペレータが登録ボタン204を押下することにより設定したラックIDを全体管理コンピュータ9の記憶部に記憶する。
ホストから指定した依頼項目で測定したい検体の場合、ホスト問合せONラックの後ろに前記ホストから指定した依頼項目で測定したい検体のラックを並べて順に装置に投入する。
ホストからの依頼でなく、装置内で登録した依頼項目で測定したい検体の場合、ホスト問合せOFFラックの後ろに前記装置内で登録した依頼項目で測定したいラックを並べて順に装置に投入する。
図12はホスト依頼問合せの切り換え用ラックのラックIDの認識処理フローを示す図である。
ステップ911で、ID読取部2で搬送されてきたラックIDを読み取る。ステップ912で、読み取ったラックIDと図11のラック設定画面で設定したラックID情報から制御部はラックの種類を判定する。
ラックIDがホスト依頼問合せONラックであるとき、ステップ913で制御部はホスト問合せモードをONに設定する。その後ステップ915で、前記ラックはラック回収部へ搬送される。
ラックIDがホスト依頼問合せOFFラックであるとき、ステップ914でホスト問合せモードをOFFに設定する。その後ステップ915で、前記ラックはラック回収部へ搬送される。
なお、前記ラックは測定対象となる検体容器が搭載されていないので分析モジュール5,6,7のいずれに立ち寄ることなくラック回収部へ搬送される。
ステップ912で、ラックIDが一般検体用ラックまたは緊急検体用ラックであるとき、ステップ916で、制御部は、認識した検体ラック単位にホスト問合せモードを判定する。
ホスト問合せモードONの場合、ステップ917で、制御部は測定ラックを管理するためのラック測定管理情報中に当ラックのホスト問合せが有効(実施)であることを記憶する。本実施例では、ラック単位に記憶するが、ラックに設置された検体単位に管理される検体管理情報にてホスト問合せの有効又は無効を記憶してもよい。
ホスト問合せモードがOFFの場合、ステップ918で、ホスト問合せが無効であることを記憶部に記憶する。
図13はラック単位でのホスト依頼問合せの処理フローを示す図である。
投入されたラックが一般ラックまたは緊急ラックの場合(ステップ951)、ラック内に搭載された検体数分に対して依頼項目を適用する処理を行う(ステップ952)。
ステップ953で、当ラックのホスト問合せ情報が無効の場合、ホストへの測定依頼項目の問合わせを実施しない。つまり、装置内で登録した依頼項目で測定が実行される。
当ラックのラックホスト問合せが有効の場合、ステップ954で、当検体に対してホストへの依頼問合わせを行い、ステップ955でホストから受信した依頼項目を適用し、当該依頼項目で測定が実施される。
ステップ956で、当検体に対して、あらかじめ装置画面などから登録した依頼情報を適用する。この時、ステップ954でホストからの依頼項目を適用している場合は、両方の依頼情報が適用される。これのフローを対象ラックに搭載されているすべての検体に対して行う(ステップ958)。 その後、適用した依頼情報に基づき、ラック搬送スケジュールを作成し、目的の分析モジュールへ搬送する。
また、初回の測定結果出力後の再検作成処理(ステップ602)においても、図13の依頼項目の適用処理により再検依頼を作成する。例えば、ホストへの依頼問合せにより追加された測定依頼項目があれば、再検依頼においても追加された測定依頼項目を基準として再検依頼が作成される。
ここまでで説明したように、さらに装置とネットワークで接続された上位ホストシステムを備え、自動分析装置は、上位ホストシステムへ検体容器に対応する測定依頼項目を問合せ、上位ホストシステムから対応する測定依頼項目を受信して、分析モジュールで測定依頼項目を測定する。そして、運用モードは、上位ホストシステムへ測定依頼項目の問合せを実施するか不実施とするかのモードであって、運用モード切り換え用ラックは、上位ホストシステムへ測定依頼項目の問合せを実施又は不実施に切り換えるラックである。
また、運用モード切り換え用ラックは、上位ホストシステムへ問合せを実施するモードと、上位ホストシステムへ問合せすることなく自動分析装置で登録された測定依頼項目を分析モジュールで測定するモードとを切り換えることができる。
以上、第3の実施形態について説明した。検体ラックを運用切り換え用ラックとして定義し、従来からあるID読取部を用いて、運用切り換え用ラックにより運用切り換えのタイミングを装置に知らせることができるので、測定状態のままでホストへの測定項目の依頼問合せの有効と無効とを切り換えることができる。これにより、装置内であらかじめ定義した依頼項目と、上位ホストからネットワーク経由で依頼項目を受信して測定したい検体が混在する場合において、検体ラックに応じてホスト依頼の問合わせ有無を切り換えて運用でき、測定状態のままで状況に応じた測定項目の依頼を行うことができる。
以上、第1〜3の実施形態について説明した。上記実施形態で説明したように、本発明は、投入部に投入された運用モード切り換え用ラックを検知する検知部と、検知部の該運用モード切り換え用ラックの検知に基づき、記憶部に記憶された該運用モードを切り換える制御部と、を備え、制御部は、投入部から搬送ラインに、該運用モード切り換え用ラックの後に搬送された検体ラックに対し、切り換えた運用モードを適用するものである。
上記実施形態では、検知部としてID読取部を例にして説明したが、装置が運用モード切り換え用ラックであることを認識できれば検知部はID読取部に限られるものではない。例えば、運用モード切り換え用ラックを通常の検体ラックと形状又は色を異ならせ、運用モード切り換え用ラックであることを検知する形状又は色センサを用いることもできる。形状センサであれば、例えば、運用モード切り換え用ラックの高さを通常の検体ラックよりも高く又は低くし、その高さにより運用モード切り換え用ラックであることを装置に認識させることができる。例えば、このようなセンサとして、垂直方向に複数の光源と受光部を持つ高さセンサが挙げられる。運用モード切り換え用ラックのONとOFFに関しては2段階の高さにより区別することができる。また、色センサであれば、運用モード切り換え用ラックの色を通常の検体ラックと異なる色とし、その色により運用モード切り換え用ラックであることを装置に認識させることができる。運用モード切り換え用ラックのONとOFFに関しては2色の色により区別することができる。このような形状又は色センサを用いる場合には、ラック設定画面に高さや色を設定できるようなエリアを設ければID読取部と同様の制御を行うことができる。
また、検知部は、ラックに付されたラックIDではなく、検体ラックに搭載された容器に付された運用モード切り換え用IDを読み取ることで、制御部が記憶部に記憶された運用モードを切り換えてもよい。この運用モード切り換え用IDは、例えば運用モード切り換え用のユニークな数字が記憶されたバーコードやRFIDなどの識別子である。この場合には、運用モード切り換え用ラックは、運用モード切り換え用IDが付された容器が搭載された検体ラックであり、運用オード切り換え用ラックを検知する検知部は、運用モード切り換え用IDを検知する検知部と考えることができる。すなわち、本明細書で、運用モード切り換え用ラックを検知するという場合には、実際のラックを検知する場合以外にもこのようなラックに搭載された容器のIDを検知する場合も含まれる。
但し、ラックIDを用いることで、形状又は色センサを新たに設けることなく、簡便な方法で運用モード切り換えを行うことができる点で有益である。
また、上記実施形態では、運用モード切り換え用ラックが、運用モードを有効又は無効にするラックであることを説明した。しかし、有効又は無効の二者択一に限られるものではない。例えば、再検の場合に、初回の分析モジュールと同じ分析モジュールで再検するモードと異なる分析モジュールで再検するモードとを切り換えるラックであってもよい。
また、制御部は、検知部の運用モード切り換え用ラックの検知に基づき、表示部に表示された運用モードの表示を切り換えることが望ましい。オペレータが現在の運用モードを確認しながら作業することができるためである。
また、制御部は、切り換えた運用モードを、運用モード切り換え用ラックの後に搬送された検体ラックに対し、検体ラック毎または検体ラックに搭載された検体容器毎に、記憶部に記憶させることが望ましい。これにより、検体ラック毎又は検体容器毎に適用した運用モードを表示することができる。
また、運用モードは、自動再検モード、測定結果が異常値であるか否かをチェックするモード、上位ホストシステムがある場合に上位ホストシステムへ測定依頼項目の問合せを実施するか不実施とするかのモードの3種類で説明したが、これに限られるものではない。様々な応用が可能である。
また、上記実施形態では、運用モード切り換え用ラックを一般検体用ラックと緊急検体用ラックを区別しない例で説明したが、一般検体用ラックに対する運用モード切り換え用ラックと、緊急検体用ラックに対する運用モード切り換え用ラックの2種類を用いてもよい。
また、上記実施形態では、ONラックとOFFラックとして説明したが、単に切り換え用ラックとして装置に登録し、ONからOFF、OFFからONにモードを反転させるラックして登録させてもよい。
また、上記実施形態では、複数の分析モジュールを備える自動分析装置を例にして説明したが、単数の分析モジュールを備える自動分析装置に対しても適用できる。
また、分析モジュールが生化学自動分析装置を例にして説明したが、免疫自動分析装置や凝固自動分析装置が分析モジュールであっても適用できる。
また、複数の検体容器を搭載可能なラックを例にして説明したが、1つの検体容器を搭載するラックであっても適用できる。
また、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の思想を逸脱しない限り様々な実施形態が含まれる。