JP6605007B2 - 電流検出器 - Google Patents
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Description
しかしながら、先行技術の電流センサは磁性体コアを厚み方向に曲げ加工して形成しているため、磁束の通過方向でみた断面積が小さく、磁束密度をあまり大きくできない。
また、先行技術の電流センサはプローブコイルを実装面とは逆側(下面を実装面とした場合の上側)に配置した構造としているが、磁性体コアの構造を変更した場合に当該配置が最適であるかは未知数である。
電流センサ10は、磁性体コア20を備えており、磁性体コア20は被検出電流の貫通方向(図1では水平方向)に対して垂直方向に沿う矩形状の磁気回路を構成している。磁性体コア20は、複数の板状をなす磁性体コア部材22,23を重ね合わせて(被検出電流の貫通方向に積層して)構成されており、磁性体コア部材22,23は、互いに対をなして対称となる形状を有する。なお、磁性体コア部材22,23についてはさらに別の図面を参照しながら後述する。
電流センサ10は、2つのボビンユニット60,70を備えており、各ボビンユニット60,70は、内側に磁性体コア20(磁性体コア部材22,23)を収容するとともに、外側に二次巻線60a,70aを保持している。図1,図2に示される状態では、一方のボビンユニット60が上方に位置し、他方のボビンユニット70が下方に位置している。図示されていないが、各ボビンユニット60,70は上記の二次巻線30a,40aを有する他、複数のリード端子を有することができる。電流センサ10は、これらリード端子を介して回路基板に実装したり、他の電子機器に接続したりすることができる。なお、ボビンユニット60,70の他にも図示しないボビンユニットが配置される構成であってもよい。
図2に示されているように(図1では省略)、電流センサ10は、プローブコイルユニット50を備えており、プローブコイルユニット50は、下方のボビンユニット70の内側に収容されている。より詳しくは、2つの磁性体コア部材22,23がボビンユニット70の内部で収容部(符号なし)を構成しており、その収容部内にプローブコイルユニット50が配置された状態でボビンユニット70の内側に収容されている。また、プローブコイルユニット50は図示されていないプローブコイル(フィールドプローブ)を有しており、電流センサ10の組み立て状態において、プローブコイルは磁気回路上(磁性体コア20のエアギャップ内)に配置されている。プローブコイルユニット50もまた、図示しない複数のリード端子を有することができ、これらリード端子を通じてプローブコイルに対する接続が可能となる。
電流センサ10は、例えば2本の一次導体30を備えている。これら一次導体30は磁気回路の内側を貫通して配置されており、電流センサ10の使用時において被検出電流は2本の一次導体30を導通する。図1、図2に示される状態では、ちょうど磁気回路が直立した姿勢にあるため、2本の一次導体30は磁気回路の内側を水平方向に貫通している。また、これら一次導体30は、磁気回路を貫通した両側でいずれも一方向(図1,図2では下方向)に屈曲され、それぞれの両端部が同一方向に延びて全体として逆U字形状をなしている。このような一次導体30は、被検出電流の導通に際し、磁気回路の内側を貫通しつつ、プローブコイルユニット50の外側を取り囲んで延びる形態の導通経路を形成する。なお、2本の一次導体30は筐体40に支持された状態で磁気回路の内側に配置されており、筐体40には上記の貫通路に通じた保持溝が形成されており、一次導体30の折り曲げられた両端部は保持溝内にて保持されている。また、一次導体30の数は2本に限定されるものではなく、1本でもよいし3本以上でもよい。
プローブコイルユニット50には回路基板(図示されていない)が接続されており、この回路基板上に信号出力IC(同じく図示されていない)が実装されている。電流センサ10の使用時において、被検出電流の導通により一次導体30の周囲(磁気回路)で磁界が発生すると、信号出力ICは二次電流(帰還電流)を二次巻線60a,70aに出力して逆方向の磁界を発生させ、プローブコイルの出力電流を消失させる制御を行う。このとき、信号出力ICは二次電流をシャント抵抗で電圧信号に変換し、被検出電流に応じた検出信号として出力する。
図6は、電流センサ10の回路構成を概略的に示すブロック図である。プローブコイル50aは信号出力IC80に接続されており、信号出力IC80には図示しないパルス電源回路が内蔵されている。プローブコイル50aはフラックスゲートコア50cに巻かれており、パルス電源回路から高周波矩形波電流がプローブコイル50aに供給されると、フラックスゲートコア50c内の磁束密度が周期的に飽和する。そのため、一次導体30を流れる被検出電流Ipによって磁気回路(磁性体コア20)内に磁界が発生すると、プローブコイル50aに印加される電圧の波形には、磁気回路内に発生した磁界により歪みが生じることになる。
以上のような本実施形態の電流センサ10の優位性について、比較例との対比をもって検証する。
図7は、比較例となる電流センサ200の構成を概略的に示す斜視図である。比較例の電流センサ200は、一次導体30がプローブコイルユニット50とは逆向きに屈曲されている点、言い換えれば、図1に示す電流センサ10とは磁性体コア20及びその付属物を全体的に磁気回路の周方向に半回転させた位置関係としている点で本実施形態とは異なっている。その他の構成については本実施形態と共通であり、そのような共通する構成については図示を含めて同じ参照符号を付し、重複した説明を省略する。
図8は、本実施形態の電流センサ10で被検出電流Ipがステップ状に変化した場合に得られる出力電圧Voutの応答特性を示す波形図である。これに対する図9は、比較例の電流センサ200で同じく被検出電流Ipがステップ状に変化した場合に得られる出力電圧Voutの応答特性を示す波形図である。以下、比較例と対比しつつ本実施形態実施形態の優位性について具体的に説明する。
図8中(A):ある時刻t1において、被検出電流Ipの波形がステップ状に変化(上昇)している。このようなステップ状の波形変化は、例えば、電流センサ10を適用されている対象機器が電源投入により起動(あるいはPWM電流を出力)したことにより、被検出電流Ipが急峻に立ち上がった場合等に起こり得る。
〔比較例〕
図9中(A):比較例においても、本実施形態と同じ条件で被検出電流Ipの波形がステップ状に変化する。
図8中(B):本実施形態の場合、時刻t1から電流センサ10の出力電圧Voutの波形もステップ状に応答する。なお、時刻t1の直後においては、応答波形に一時的な高下は見られるものの、総じて安定的なステップ応答波形が現れていることが確認できる。
〔比較例〕
図9中(B):対する比較例の方は、時刻t1から出力電圧Voutの波形が変化するも、本実施形態のようなステップ状の応答特性は示しておらず、激しく高下した波形の乱れが現れている。
本発明の発明者は、図6に示す回路構成においては、Ic1−Ic2端子間電圧の変化が出力電圧Voutの変化に関係していることに着目し、以下の検証を行っている。
図8中(C):すなわち、本実施形態では、時刻t1で被検出電流Ipがステップ状に変化すると、これに追随してIc1−Ic2端子間電圧の波形は短時間で立ち上がり、その後も時刻t2までIc1−Ic2端子間電圧が長い期間Tfにわたり維持されている。また、時刻t2以後もIc1−Ic2端子間電圧の変化は緩やかである。
〔比較例〕
図9中(C):対する比較例においては、時刻t1で被検出電流Ipが上昇しているのに反してIc1−Ic2端子間電圧が一旦は下降に転じ、そこから時間をかけて立ち上がってはいるものの、Ic1−Ic2端子間電圧を高いレベルに維持できている期間Tfが本実施形態よりも極端に短いことが分かる。また、時刻t2以降でもIc1−Ic2端子間電圧の変化は本実施形態に比較すると急激である。
図8中(A),(B):その結果、本実施形態においては、被検出電流Ipがステップ状に変化している期間全体にわたり、概ね出力電圧Voutが良好なステップ応答特性を示していることが分かる。
〔比較例〕
図9中(A),(B):これに対する比較例では、被検出電流Ipがステップ状に変化した直後で出力電圧Voutの波形に激しい乱れが生じており、全体として好ましくないステップ応答特性を示すことが分かる。
(1)磁性体コア20を複数の板状の磁性体コア部材22,23を積層した構成としているため、板材料を曲げた形態に比較して断面積を大きくし、磁束密度を高めることができる。
(2)また、一次導体30がプローブコイルユニット50を巻き込む配置としているため、複数の板状の磁性体コア部材22,23を積層した構造に対するプローブコイルユニット50の配置を最適化し、出力電圧Voutの応答特性を改善することができる。
(3)加えて、磁気回路の内側以外の領域では磁性体コア部材22,23がプローブコイルユニット50と一次導体30との間を遮蔽することなく開放しているため、磁性体コア部材22,23に対するプローブコイル50aの配置の最適化をさらに向上して出力電圧Voutの応答特性を一層改善することができる。
(4)特に、被検出電流Ipがステップ状に変化した場合でも、良好で安定的な出力電圧Voutの応答特性を得ることができる。
20 磁性体コア
22,23 磁性体コア部材
22b,23b 長脚部
22c,23c 上短脚部
22d,23d 下短脚部
30 一次導体
40 筐体
50 プローブコイルユニット
50a プローブコイル
60,70 ボビンユニット
60a,70a 二次巻線
Claims (2)
- 被検出電流の導通により生じる磁界を収束させる矩形状の磁気回路を構成し、前記磁気回路の一方の長辺に沿う位置では互いに対向して延びる板状の長脚部同士が厚み方向に重なり合い、他方の長辺に沿う位置では互いに対向して延びる板状の短脚部同士が先端間に空隙を開けて突き合わせとなる状態で被検出電流の導通方向に積層された複数の板状の磁性体コア部材と、
前記磁気回路上で他方の長辺に沿う位置に配置されたプローブコイルと、
被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線と、
前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路と、
被検出電流の導通に際し、前記磁気回路の内側を貫通しつつ前記プローブコイルの外側を取り囲んで延びる形態の導通経路を形成する一次導体とを備え、
前記複数の板状の磁性体コア部材は、
前記磁気回路の一方の長辺に沿う位置の厚みに比較して他方の長辺に沿う位置の厚みが薄く形成されており、
前記他方の長辺に沿う位置で前記磁気回路に囲まれる部分を除く前記プローブコイルの周囲は、全域にわたって前記一次導体との間を磁気的に遮蔽されることなく開放されていることを特徴とする電流検出器。 - 請求項1に記載の電流検出器において、
前記磁性体コア部材は、
前記磁気回路の内側を除く前記プローブコイルの周囲では、前記一次導体と前記プローブコイルとの間を遮蔽することなく前記プローブコイルを開放していることを特徴とする電流検出器。
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