JP6604590B2 - ユーグレナ及びその培養方法並びにパラミロン及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なユーグレナ及びその培養方法並びにパラミロン及びその製造方法に関する。
微細藻類は、陸生動物よりも光合成の効率が高いために、食糧、バイオマス、燃料生産物質として期待が持たれている。
ユーグレナ属も、産業利用のための研究が行われているが、現在、産業利用が達成されているユーグレナ種は、Euglena gracilisだけである(例えば非特許文献1)。
これは、Euglena gracilisが比較的高温(〜29℃)で良好な増殖を示し、pH3.5ぐらいの低いpHで増殖可能であることが大きく寄与している。それに加え、古くからモデル生物として利用されてきたことによる部分も大きく、先人たちの長年にわたる培養条件の最適化と知識の蓄積が基礎となっている。
Euglena gracilisが、培養温度やpHにおいて強い環境耐性があり、増殖が速いなどの産業利用に適した特性を持つ一方、他の各種ユーグレナもそれぞれ固有の特徴を持っており、産業への適性を持つ可能性もある。各種ユーグレナは顕微鏡観察から、高付加価値を持つパラミロンを粒子として細胞内に蓄積することが確認されており、Euglena gracilis以外も、大量培養が成功すればパラミロン産生等に利用できる可能性がある。
しかし、Euglena gracilis以外のユーグレナ種は、これまで大量培養が検討された例がなく、Euglena gracilis以外に、大量培養が可能なユーグレナの種は知られていない。
一方、β−グルカンは、霊芝、シイタケ、アガリクス等の茸や、酵母の細胞壁等に含まれ、古くから、免疫賦活物質として、健康食品や化粧品に用いられている。しかし、β−グルカンは、溶液状態では凝集体を形成して、粒子径が数百μmにも達する場合があり、腸管粘膜等の生体組織に取り込まれにくく、免疫賦活等の効果が十分発揮されにくいことが知られている。
そのままでは機能が発現されないβ−グルカンであっても、低分子量化やアルカリ、酵素処理等によって、生体で機能が発現可能になる場合がある。しかし、逆に、これらの処理により立体構造が崩れてβ−グルカン本来の活性が失われてしまうこともある。化学的、物理的な処理を施さずに、微生物や植物、茸等から分離しただけの完全グルカンにおいて、直径2.8μmより小さいβ−グルカンは知られていない。
Euglena gracilis由来のβ−グルカンであるパラミロンは、粒子径が、3〜5μm程度と小さく、その免疫賦活効果も、本発明者らによって実証されており(例えば、PCT/JP2015/061043)、パラミロンにおける粒径の小ささと免疫賦活効果を利用した健康食品や化粧品が提供されている。
しかし、化粧品においては、肌へののり易さや馴染み易さの点から、Euglena gracilis由来のパラミロンの粒子径3〜5μm程度よりも更に微粒のパラミロンの開発が望まれている。また、他の物質の吸着効果を更に向上させるためにも、更に微粒のパラミロンが求められている。
低分子量化やアルカリ処理、酵素処理等を経ていないパラミロンであって、Euglena gracilis由来のパラミロンよりも微粒のものは知られていなかった。
鷲見 芳彦、"微細藻類(マイクロアルジェ)が開く未来 ─有用性とその利用─、"[online]、2009年9月号、科学技術動向、[平成25年5月28日検索]、インターネット(URL:http://data.nistep.go.jp/dspace/bitstream/11035/2073/1/NISTEP-STT102-11.pdf)
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、大量培養が可能で、新規な有用性を有するユーグレナ及びその培養方法並びにパラミロン及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、従来のパラミロンよりも微粒のパラミロン及びその製造方法と、新規な微粒パラミロンを含有するユーグレナ及びその培養方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、新規な微粒パラミロンを蓄積するユーグレナを、培養後に培養液から容易に分離可能なユーグレナ及びその培養方法を提供することにある。
本発明者らは、各種ユーグレナの増殖速度、培養条件等を鋭意検討したところ、Euglena anabaena種に属するユーグレナが、産業利用可能な程度に増殖が速く、従来公知のパラミロンよりも微粒のパラミロンを蓄積することを見出して、本発明を完成させた。
つまり、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種に属し、細胞内に含まれるパラミロンの長径の平均が2.8μmより小さく、前記パラミロンをユーグレナの乾燥藻体に対して20重量%以上含み、Euglena anabaena var. minor EU044株(受託番号:FERM P-22287)であることを特徴とするユーグレナにより解決される。
細胞内に含まれるパラミロンの長径の平均が2.8μmより小さいため、粒子径が小さく生体組織に取り込まれ易いパラミロンを得ることが可能となる。また、化粧品に使用した場合に、肌へののり易さや馴染み易さを向上でき、他の物質の吸着効果も向上できる。
また、パラミロンをユーグレナの乾燥藻体に対して20重量%以上含むため、ユーグレナの量に対する有効成分パラミロンの収量が充分確保され、ユーグレナを、パラミロンの供給源として産業上利用可能である。
このとき、培養液にて撹拌培養後、6.5cmの水深において、撹拌を停止してから60分以内に、前記培養液中の前記ユーグレナの細胞のうち50%以上が沈降する性質を有すると好適である。
本発明のユーグレナは、このような性質を有するため、培養後、撹拌を停止してユーグレナを沈降させるだけで、ユーグレナを培養液から分離回収することができ、分離回収のために、遠心分離処理や、凝集剤の投入処理を行う必要がない。
また、前記パラミロンの長径の平均が、1.0μm以上であって、前記パラミロンの前記長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であると好適である。
パラミロンの長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であるため、粒径のばらつきが少なく、比較的均一な粒径のパラミロンを得ることができ、取り扱いの容易な素材が得られる。化粧品等の素材として用いる場合にも、篩別等による分級をせずに使用可能となる。
このとき、前記ユーグレナを培養液中で培養する培養工程と、前記ユーグレナを含む前記培養液を静置することにより、前記ユーグレナを前記培養液中で沈降させてユーグレナ沈降物を得る沈降工程と、該沈降工程で得た前記ユーグレナ沈降物を回収するユーグレナ回収工程と、を行うと好適である。
このように構成しているため、培養後、撹拌を停止してユーグレナを沈降させるだけで、ユーグレナを培養液から分離回収することができ、分離回収のために、遠心分離処理や、凝集剤の投入処理を行う必要がない。
このとき、前記培養工程では、前記培養液を撹拌しながら、前記ユーグレナを培養し、前記沈降工程では、前記ユーグレナを含む前記培養液の前記撹拌を停止して、前記培養液を静置し、前記ユーグレナ回収工程の後で、前記ユーグレナ沈降物を回収して残った上澄を用いて、再度前記培養工程を行い、その後、前記沈降工程、前記ユーグレナ回収工程を再度行うと好適である。
このように構成しているため、培養後、撹拌を停止してユーグレナを沈降させるだけで、ユーグレナを培養液から分離回収することができると共に、上澄に残ったユーグレナをそのまま次回の培養に用いて続行することができ、ユーグレナの培養を、簡易かつ効率的に行うことができる。その結果、ユーグレナの大量培養が可能となる。
前記沈降工程では、前記ユーグレナを、凝集剤を含有しない前記培養液中に入れて静置すると好適である。
このように、ユーグレナを、凝集剤を投入することなく分離回収できるため、凝集剤等による不純物のユーグレナへの混入を抑制でき、より純粋なユーグレナ藻体を得ることができる。
前記課題は、本発明によれば、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種であるEuglena anabaena var. minor EU044株(受託番号:FERM P-22287)に由来し、長径の平均が、1.0μm以上で、2.8μmより小さく、前記長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であることを特徴とするパラミロンにより解決される。
このように、本発明のパラミロンが、長径の平均が1.0μm以上で2.8μmより小さい微粒子であるため、生体の各組織に取り込まれ易く、パラミロンの生体に対する有効な機能が、より発揮され易くなる。その結果、健康食品、医薬品、化粧品等としての利用の幅が広がる。
パラミロンの長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であるため、粒径のばらつきが少なく、比較的均一な粒径のパラミロンを得ることができ、取り扱いの容易な素材が得られる。化粧品等の素材として用いる場合にも、篩別等による分級をせずに使用可能となる。
このとき、パラミロンが、実質的に水に不溶又は難溶であると好適である。
このように、可溶化処理等が行われていない実質的に水に不溶又は難溶の状態で、長径の平均が1.0μm以上で、2.8μmより小さいため、顆粒状又は粉末状で、取扱い性のよい医薬品、健康食品、化粧品用素材とすることができる。
前記課題は、本発明によれば、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種に属するEuglena anabaena var. minor EU044株(受託番号:FERM P-22287)であるユーグレナを培養液にて培養する培養工程と、前記ユーグレナを含む前記培養液を静置することにより、前記ユーグレナを前記培養液中で沈降させてユーグレナ沈降物を得る沈降工程と、該沈降工程で得た前記ユーグレナ沈降物を回収するユーグレナ回収工程と、回収した前記ユーグレナ沈降物から、パラミロンを分離するパラミロン分離工程と、を行うことにより、長径の平均が1.0μm以上で、2.8μmより小さく、前記長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であるパラミロンを製造することにより解決される。
本発明のパラミロンが、長径の平均が1.0μm以上で2.8μmより小さい微粒子であるため、生体の各組織に取り込まれ易く、パラミロンの生体に対する有効な機能が、より発揮され易くなる。その結果、健康食品、医薬品、化粧品等としての利用の幅が広がる。
可溶化処理等が行われていない実質的に水に不溶又は難溶の状態で、長径の平均が2.8μmより小さいため、顆粒状又は粉末状で、取扱い性のよい医薬品、健康食品、化粧品用素材とすることができる。
また、パラミロンをユーグレナの乾燥藻体に対して20重量%以上含むため、ユーグレナの量に対する有効成分パラミロンの収量が充分確保され、ユーグレナを、パラミロンの供給源として産業上利用可能である。
本発明のユーグレナは、培養後、撹拌を停止してユーグレナを沈降させるだけで、ユーグレナを培養液から分離回収することができ、分離回収のために、遠心分離処理や、凝集剤の投入処理を行う必要がない。
既知のユーグレナ属微生物と実施例1のユーグレナ属微生物との関係を示した系統樹である。 試験例1において、7種のユーグレナ株を観察撮影した顕微鏡像である。 試験例1において、7種のユーグレナ株培養試験の結果を示すグラフである。 試験例2において、実施例1のEuglena anabaenaの培養試験の結果を示す。 試験例2において、実施例1のEuglena anabaenaを、C培地、TAP培地、C&TAP培地で1週間静置培養後の細胞を観察撮影した顕微鏡像である。 試験例3において、実施例1のEuglena anabaenaの培養の至適温度の検討試験の結果を示すグラフである。 試験例3において、実施例1のEuglena anabaenaの培地の検討試験の結果を示すグラフである。 試験例4において、実施例1のEuglena anabaena及びEuglena gracilisを培養後、0分、10分、30分、60分静置後の培養液の状態を撮影した写真である。 試験例4において、Euglena gracilis及び実施例1のEuglena anabaenaの沈降対比試験の結果を示すグラフである。 試験例4において、実施例1のEuglena anabaenaを培養後、カバーグラスの重みで潰れた細胞を観察撮影した顕微鏡像である。 試験例4において、各培地で培養した実施例1のEuglena anabaenaとEuglena gracilisの炭水化物含量測定結果を示すグラフである。 試験例4において(A)は、Euglena gracilisから分離したパラミロンの顕微鏡写真、(B)は、Euglena anabaenaから分離したパラミロンの顕微鏡写真である。 試験例4において、Euglena gracilis及び実施例1のEuglena anabaenaのパラミロンの長径測定結果のヒストグラムである。 試験例5において、培養開始から180時間後までの藻体重量の変化を示すグラフである。 試験例5において、培養開始から180時間後までの藻体重量増加量の変化を示すグラフである。 試験例5において、培養開始から180時間後までの細胞数の変化を示すグラフである。 試験例5において、培養後の実施例1のEuglena anabaenaの藻体と雑菌の顕微鏡写真である。 試験例6において、(A)は、実施例1のEuglena anabaenaの嫌気前後のパラミロン含有量、(B)は、実施例1のEuglena anabaenaの嫌気前後の油脂含有量を示すグラフである。
<ユーグレナ>
本発明のユーグレナは、例えば、ユーグレナ属のEuglena anabaena種である。
本発明のユーグレナは、天然の池や沼などの淡水中、例えば、日本の神奈川県等の野池等から採取し、分離して使用してもよいし、各国のカルチャーコレクションから取得したもの、又は、公知の育種方法(例えば、突然変異誘導法、細胞融合法等)によって作出したユーグレナについてスクリーニングを行い、下記(a)〜(e)の特性を有するものを選択することにより取得することができる。
このようなユーグレナとしては、Euglena anabaena種であればよく、Euglena anabaena種の亜種、変種、品種も含み、例えば、Euglena anabaenaの変種であるEuglena anabaena var. anabaena、Euglena anabaena var. minima、Euglena anabaena var. minor等が挙げられる。
「変種」(variety)とは、分類学上の階級で、種より下で、品種より上に位置する。変種は、形態学的類似性をもとに命名されることが多い。異なる分類学者によって、変種、亜種、品種の階級が同等に扱われることがある。「亜種」(subspecies)とは、種内の下位の分類単位で、一般に広域に分布する種がしばしば地理的、生態的に分化した変異を示す集団をいう。これに対しある特異的形質の変異個体を「品種」(form)という(分子細胞生物学辞典第2版 東京化学同人)。
Euglena anabaena種は、自然条件において紡錘形で、8つのクロロプラスト及びピレノイドが、皿形のパラミロン鞘に囲まれており、細胞の大きさによって3つの変種が記載されている。Euglena anabaena var. minor(Mainx F. Beitrage zur Morphologie und Physiolkogie der Eugleninen. Arch. Protisk. 1927;60:305-354.)は細胞のサイズが、長さ36-43μm、幅9-12μmであり、他に細胞のサイズが、長さ88-94μm、幅20-25μmであるEuglena anabaena var. anabaena、細胞のサイズが、長さ26-30μm、幅9-12μmであるEuglena anabaena var. minima等が知られている。
本発明のユーグレナとして、Euglena anabaena var. minorを好適に用いることができる。本発明の一実施例であるEuglena anabaena var. minor EU044株は、本発明者らによって、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に寄託済みである(受託番号:FERM P-22287)。この株は、培地によって細胞のサイズ及び形態が変化するが、後述するAF6培地で培養したときの細胞のサイズが、長さ35-46μm、幅10-14μmであり、対数増殖期では、5−8のクロロプラストを備えている。
本発明のユーグレナは、Euglena anabaena種の全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え,形質導入,形質転換等により得られたものも含有される。
本発明のユーグレナは、以下の(a)〜(e)の特性を有するものであればよい。
(a)細胞内に含まれるパラミロンの長径の平均が1.0μm以上で、2.8μmより小さく、長径の標準偏差が、長径の平均の1/2以下、好適には、1/3以下である。
従来の唯一の量産ユーグレナ種であるEuglena gracilisに含まれるパラミロンの平均長径は約2.9μmであるのに対し、本発明のユーグレナでは、細胞に含まれるパラミロンは、平均長径が2.8μmより小さい、好適には2.6μmより小さい、より好適には、2μm以下の微粒子である。
本発明のユーグレナでは、界面活性剤を添加した微粒化処理や、可溶化処理、粉砕処理等を施すことなく、ユーグレナから分離するだけで、平均長径が2.8μmより小さい微粒子のパラミロンを得ることができる。従って、界面活性剤等の添加物を含まない、ユーグレナ微生物から分離して精製しただけの純粋な完全パラミロンを、微粒子の形態で得ることができる。
本発明のユーグレナの細胞に含まれるパラミロンは、平均長径が、1.0μm以上、好適には、1.2μm以上、更に好適には、1.37μm以上である。
本発明のパラミロンの長径の平均は、本発明のユーグレナから分離したパラミロンの顕微鏡写真より、ランダムに所定数のパラミロンを選択して長径を測定し、測定した長径の値の平均を算出することにより、確認することができる。
(b)酢酸を含む培養液中において、細胞が、長径の平均が30μm以下の球形である。
ユーグレナ細胞の形状及び大きさは、培地の組成によって変わるが、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地(C培地とTAP培地の等量混合培地)等の酢酸を含む培養液中において、本発明のユーグレナは、大部分の個体が、直径30μm以下の球形であり、概ね直径20μmである。
ここで、TAP培地の作製方法を、表1に示す。
また、TAP培地は、Euglena gracilisの増殖に必須なビタミンB1,B12が含まれないため、TAP培地に、これらのビタミンを、後述のAF6培地と同じ濃度になるように添加したTAP培地を、「TAP培地(+ビタミン)」と称する。
C&TAP培地とは、C培地とTAP培地の等量混合培地である。C培地の作製方法を、表2に示す。
(c)酢酸を含む培養液での開放系培養により増殖できる。
本発明のユーグレナは、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液で、培養することにより増殖できる。なお、培養は、培養の条件によっては、開放系培養により行うこともできる。
開放系培養とは、外界との接触面積が大きい開放系の培養容器や培養槽で行う培養をいう。例えば、屋外のオープンポンド培養槽で行う培養や、蓋を有する培養容器を用いて、蓋を開けた状態で、又は操作の度に蓋を開閉しながら、行う培養等が該当する。
開放系培養は、開閉が容易ではなく外界との接触面積の小さい閉鎖系の培養容器や装置(例えばカートリッジ型培養容器、フォトバイオリアクター等)で培養する閉鎖系培養に相対する概念である。
酢酸を含む培養液での培養により増殖できることは、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等に本発明のユーグレナを接種し、20〜32℃で1〜7日間培養することにより確認できる。
(d)パラミロンを細胞内に20重量%以上、好ましくは、30重量%以上、更に好ましくは、40重量%以上含む。
本発明のユーグレナは、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液で、開放系培養したときに、パラミロンを細胞内に20重量%以上、好ましくは、30重量%以上、更に好ましくは、40重量%以上含む。
Euglena gracilisは、窒素源が枯渇しない状態で独立培養をすると、パラミロンが増加せず、培養後の細胞内のパラミロン含量は、元の藻体の乾燥重量に対して1重量%程度である。一方でグルコースやフルクトースを用いた従属培養を行うとパラミロン含量は高くなるが、雑菌のコンタミネーションにより開放系培養は困難である。このため、開放系培養においてEuglena gracilisのパラミロン含量を増加させるためには、開放系で独立培養を行った後で培地から窒素源を除いた窒素欠乏培地での培養を行う必要がある。
それに対し、本発明のユーグレナでは、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液を用いた開放系培養によって、ユーグレナの増殖とパラミロン含量の増加が併せて達成される。
TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液で、開放系培養したときに、パラミロンを細胞内に20重量%以上、好ましくは、30重量%以上、更に好ましくは、40重量%以上含むことは、C&TAP培地に本発明のユーグレナを接種し、29℃で1週間培養し、藻体を凍結乾燥して定量した後、乾燥藻体にアセトンを加えて破砕、SDS水溶液と水で洗浄し、得られた沈殿をフェノール硫酸法で定量して、元の乾燥藻体との重量比を計算することにより確認できる。
本発明のユーグレナは、酢酸を炭素源として資化することができ、実質的に唯一の炭素源として酢酸を含む培養液中で、ユーグレナを培養することも可能である。酢酸を含む培養液中で培養する場合、酢酸の抗菌作用により、培養中に多少のコンタミネーションがあっても、ユーグレナが増殖できる。従って、オープンポンド等、屋外での大型培養槽でも、厳密なコンタミネーション抑制のための管理を行うことなく、開放系培養が可能である。
(e)培養液にて撹拌培養後、10cmの水深において、撹拌を停止してから60分以内に、前記培養液中の前記ユーグレナの細胞にうち少なくとも一部、例えば、50%以上,好ましくは、55%以上,更に好ましくは、60%以上が沈降する。
本発明のユーグレナは、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液にて撹拌又は曝気培養後、撹拌,曝気を停止してから10分以内に、ユーグレナの沈降物が得られ、撹拌,曝気停止後30分,60分後には、更に多くのユーグレナ沈降物が得られる。
更に詳細には、撹拌又は曝気培養後、10cmの深さの培養液で静置したときに、60%以上の細胞が沈降物として得られる。
また、本発明のユーグレナは深さ6.5cmのTAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液にて静置すると、静置後10分で25%以上、好ましくは30%以上,静置後20分で40%以上、好ましくは45%以上、静置後30分で50%以上、好ましくは60%以上、静置後60分で50%以上、好ましくは60%以上、更に好ましくは75%以上、更に好ましくは90%以上が沈降する。
Euglena gracilisは、撹拌又は曝気培養後、撹拌,曝気を停止して培地ごと60分間静置しても、細胞が50%も沈降しないため、藻体を回収するために、遠心分離や凝集剤を投入して凝集させる手順が必要であるが、本発明のユーグレナは、撹拌又は曝気を停止するだけで沈降するため、遠心分離や凝集剤の添加処理が不要となる。
「曝気」とは、液中に空気を吹き込むことをいう。「撹拌」には、曝気によって培養液が撹拌される場合も含む。
本発明のユーグレナ細胞の培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行ってもよい。
また、本発明のユーグレナ細胞の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養,回分培養法,半回分培養法(流加培養法),連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行ってもよい。
培養は、オープンポンド型,レースウェイ型,チューブ型等の公知の培養装置や、坂口フラスコ、三角フラスコ、試薬ビンなどの実験用の培養容器を用いて行うことができる。
ユーグレナは、光照射下で培養(明培養)されてもよく、光照射下で培養する明培養と無照射で培養する暗培養とを交互に行ってもよい。
<パラミロンの製造方法>
本発明のパラミロンの製造方法は、次の通りである。
まず、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種に属するユーグレナを、培養液中で、撹拌しながらユーグレナを培養する培養工程を行う。
培養工程は、開放系培養であってもよく、屋外のオープンポンド型,レースウェイ型等の公知の培養槽や、室内用の開放系培養槽のほか、坂口フラスコ、三角フラスコ、試薬ビンなどの実験用の培養容器を用いて行うことができる。
培養液としては、TAP培地,TAP培地(+ビタミン),C&TAP培地等の酢酸を含む培養液を用いることができる。
培養液は、実質的に唯一の炭素源として酢酸を含むものであってもよく、培養工程で、グルコース、フルクトース等の糖類や二酸化炭素等の炭素源は供給せず、酢酸を実質的に唯一の炭素源としてもよい。なおこの場合、グルコース、フルクトース等の糖類や二酸化炭素等の炭素源が添加又は通気されてもよい。
培養液の撹拌は、公知のスターラー,撹拌翼により行ってもよいし、培養液中に空気又は酸素,二酸化炭素等を供給して曝気することにより行ってもよい。また、レースウェイポンド型培養槽において、パドル等で培養路に沿って培養液を流動させることにより撹拌してもよい。
次いで、培養液の撹拌を停止して、ユーグレナを含む培養液を静置することにより、ユーグレナを培養液中で沈降させてユーグレナ沈降物を得る沈降工程を行う。
培養液にて撹拌培養後、撹拌を停止してから60分以内,好適には30分以内,より好適には10分以内に、培養液中のユーグレナの細胞のうち少なくとも一部、具体的には、50%以上が沈降する。本発明のユーグレナでは、撹拌停止後60分間静置した後に、深さ10cmの培養液において、培養液中のユーグレナ細胞のうち60%以上の細胞が沈降する。
次いで、沈降工程で得たユーグレナ沈降物を回収するユーグレナ回収工程を行う。
この工程では、培養槽の底部に沈降したユーグレナの沈降物を、培養槽底部に設けられた排出口やパイプから抜き取る。
次いで、回収したユーグレナ沈降物から、公知の方法でパラミロンを分離するパラミロン分離工程を行う。パラミロンは、例えば、ユーグレナ細胞を破砕することにより簡単に取り出すことができると共に、アルコールやトルエン処理により精製することができる。
また、ユーグレナ回収工程の後で、培養槽の底部からユーグレナ沈降物を回収して残った上澄を用いて、再度培養工程を行い、その後、沈降工程、ユーグレナ回収工程を再度行うことにより、培養工程、沈降工程、ユーグレナ回収工程、パラミロン分離工程を、繰返し行う。
沈降工程及びユーグレナ回収工程では、培養液の撹拌を停止して静置し、培養槽の底部からユーグレナの沈降物を抜き取るだけでユーグレナを回収でき、ユーグレナ分離のために、遠心分離装置に移したり、凝集剤を添加したりする必要がないため、培養工程からユーグレナ回収工程、パラミロン分離工程までの処理を連続的に繰返し行うことが可能である。
なお、培養工程、沈降工程を行った後、沈降工程で沈降したユーグレナの沈降物と少量の培養液とを、嫌気状態に置く嫌気工程を行うことにより、ユーグレナ含有のパラミロンが、油脂であるワックスエステルに転換される。
従って、本発明のユーグレナに由来するワックスエステル製造方法として、本発明のユーグレナを用いて培養工程、沈降工程、嫌気工程を行うことにより、本発明のユーグレナに由来するワックスエステルを製造することができる。
<パラミロン>
本発明のパラミロン製造方法で得たパラミロンは、本発明のユーグレナから分離されたものであり、長径の平均が2.8μmより小さい、好適には、2.6μmより小さい、より好適には、2μm以下の微粒子である。
本発明のパラミロンの長径の標準偏差は、長径の平均の1/2以下、好ましくは、1/3以下である。
また、本発明のパラミロンの長径の平均は、1.0μm以上、好適には、1.2μm以上、更に好適には、1.37μm以上である。
パラミロン(paramylon)とは、ユーグレナが含有する貯蔵多糖で、グルコースが、β−1,3−結合により重合した高分子体であり、ユーグレナ由来のβ−グルカンをいう。パラミロンは、水に不溶性又は難溶性の顆粒状の粒子である。
本発明のパラミロンは、Euglena gracilisのパラミロンよりも、平均粒径が小さい微粒である。
Euglena gracilisと比較して本発明のEuglena anabaenaを産業利用する利点は、以下の通りである。
まず、細胞のサイズがEuglena gracilisが50μm程度であるのに対し、Euglena anabaenaが20μm程度と小さい。Euglena gracilisは培養液の撹拌により生じるせん断力に弱いという弱点があるが、Euglena anabaenaは比較的小さいため、せん断力の影響を受けにくい。
次に、培養液中で沈みやすいため、撹拌と通気を止めることにより容易に藻体の回収ができる。
更に、Euglena gracilisを利用してパラミロンを作らせる場合には窒素制限培養など、ひと手間多くかける必要があるが、Euglena anabaenaをパラミロン生産に用いる場合にはそのプロセスが簡略化でき効率が良い。
そして、本発明のEuglena anabaenaは、培養液や培養条件を適切に選択することにより、産業利用可能な程度の増殖速度を得ることができ、種々の製品向けの大量培養が可能である。
以下、具体的実施例により、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明は、実施例の記載により限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例では、Euglena anabaena種の変種であるEuglena anabaena var. minorを用いた。
本発明の実施例1に係るEuglena anabaena var. minor EU044株(以下、「実施例1のEuglena anabaena」と称する。)は、日本の神奈川県の野池から採取された株である。
実施例1のEuglena anabaenaは、Mainx F. Beitrage zur Morphologie und Physiokogie der Eugleninen. Arch. Protisk. 1927;60:305-354の記述との一致性において同定された。
つまり、この記述には、Euglena anabaena var. minorが、自然条件下において細胞は紡錘形であり、細胞の長さ36-43μm、幅9-12μmであって、8つのクロロプラスト及びピレノイドが、皿形のパラミロン鞘に囲まれていると記載されているところ、実施例1のEuglena anabaenaは、長さ35-46μm、幅10-14μmであり、対数増殖期では、5−8のクロロプラストを備えている。
また、他のEuglena anabaenaの変種は、細胞サイズにより区別できる。Euglena anabaena var. anabaenaは、自然条件下において長さ88-94μm、幅20-25μmであり、Euglena anabaena var. minimaは、自然条件下において長さ26-30μm、幅9-12μmである。
既知のユーグレナ属微生物と実施例1のEuglena anabaenaとの関係を示した系統樹を、図1に示す。図1は、Eutreptia viridisをアウトグループとした有根系統樹である。
図1の分岐点に示された数値は、ブートストラップ値(%,反復回数1000)であり、スケールバーは、置換数/サイトを示す。
図1の系統樹に示すように、それぞれ配列番号1及び2に示す実施例1のEuglena anabaenaの16SrDNA及び18SrDNA配列によっても、実施例1のEuglena anabaenaが、他のEuglena anabaena株と近い関係にあることが確認できた。実施例1のEuglena anabaenaの16SrDNA及び18SrDNA配列を、それぞれ、配列表の配列番号1,2に示す。
<試験例1 増殖速度の評価>
本試験例では、Euglena gracilis以外のユーグレナ種において、実施例1のEuglena anabaenaの増殖速度が他のユーグレナ種よりも速いことを確認する試験を行った。
Euglena gracilisの株としては、Euglena gracilis(日本国 国立環境研究所保存株:NIES-48)を用いた。
Euglena gracilis 以外の種の株として、実施例1のEuglena anabaena var. minor 、Euglena clara、Euglena deses、Euglena granulate、Euglena schmitzii、Euglena stellata(本発明者らの保存する株)の6種のユーグレナ種の株を準備した。Euglena clara、Euglena deses、Euglena granulate、Euglena schmitzii、Euglena stellataの5種の株は、日本国内の池や川から採取し単離されたものであり、それぞれ形態観察、粘液体染色、もしくは16s, 18s rDNAの配列解析により種を同定済みであった。
この5種の株及び実施例1のEuglena anabaenaは、微細藻類用汎用培地である表3のAF6培地(S. Kato, 1982)を用い、23℃、50μmol/m2sの光量で明期14時間、暗期10時間の明暗周期で維持継代されていたものである。
本試験例で扱う上記7種のユーグレナ株を、40倍の対物レンズを使用し顕微鏡(LeicaDM2500)にて観察撮影した顕微鏡像を、図2に示す。図2において、スケールバーは20μmを示す。
また、本試験例で扱う上記7種のユーグレナ株について培養試験を行い、各株の増殖速度を比較した。
培養は、24穴プレート(TPP社)で1mLの培地を使用して3回ずつ行った。各株の初期濃度は約0.01(OD680)とし、培養は23℃のインキュベーター内で静置して行い、50μmol/m2sの光量で明期14時間、暗期10時間の明暗周期で培養を行った。
7種の株のうち、Euglena gracilisには、表3に示すCM培地を用いた。
また、7種の株のうち、Euglena gracilis以外の株には、表2に示すC培地を用いた。
各株の培養試験における培養0,2,4,6,8,10,12,14日後の濃度を測定した。各経過日数での藻体量は、680nmでの吸光度(OD680)をプレートリーダー(SH1200コロナ電気)により測定し評価した。
図3に、7種の株の培養試験の結果を示す。図3は、実施例1のEuglena anabaena、Euglena clara、Euglena deses、Euglena granulata、Euglena schmitzii、Euglena stellata のC培地での増殖曲線とEuglena gracilisのCM培地(pH 3.5)での増殖曲線を示している。エラーバーは3ウェルの結果のSEM(平均値の標準誤差:standard error of the mean)を示す。
図3の結果より、Euglena gracilisの増殖が圧倒的に速かったが、それ以外の種では実施例1のEuglena anabenaの増殖が比較的速いことが分かった。
<試験例2 実施例1のEuglena anabaenaの培地の検討>
実施例1のEuglena anabaenaを、各種培地(AF6、BG-11、C、TAP、mAC、CM、KH)を用い、試験例1と同様の条件で静置培養した。
AF培地の作製方法を、表4に示す。
BG-11培地の作製方法を、表5に示す。
mAC培地の作製方法を、表6に示す。
KH培地の作製方法を、表7に示す。
また、各種培地(AF6、BG-11、C、TAP、mAC、CM、KH)の成分を表8に示す。
図4に、実施例1のEuglena anabaenaの培養試験の結果を示す。
実施例1のEuglena anabaenaは、TAP培地で最も増殖が良かった。また、C培地とTAP培地で特殊な表現型を示した。それぞれC培地では比較的素早く泳ぎ回り、TAP培地では形態が太く、黒っぽい色となった。
実施例1のEuglena anabaenaの培地の相違による表現型を確認するために、C培地、TAP培地、C&TAP培地を用い、実施例1のEuglena anabaenaを23℃で1週間静置培養した。
1週間静置培養後のそれぞれの細胞を、40倍の対物レンズを使用し顕微鏡(LeicaDM2500)にて観察撮影した顕微鏡像を、図5に示す。図5において、スケールバーは10μmを示す。
以上のように、本試験例において、Euglena gracilis特異的に増殖を強く促進するCM培地、KH培地では、実施例1のEuglena anabaenaはあまり増殖しなかった。これはCM培地とKH培地がEuglena gracilisのために開発された経緯から予想される結果ではあったが、Euglena gracilisと実施例1のEuglena anabaenaでは培地に要求する条件が大きく異なることが示唆された。そのことを支持する事実として、実施例1のEuglena anabaenaはアンモニア態窒素を含まないC培地で増殖することも挙げられる。これはEuglena gracilisが硝酸態窒素をほとんど資化できないことと対照的である(M. Cramer et al., 1952)。
実施例1のEuglena anabaenaはTAP培地で最もよい増殖を示したが、同時に、図5のように、太く、黒っぽくなるという表現型も示した。これはTAP培地のみに含まれない、もしくはTAP培地のみに含まれる成分に由来することが予想された。表8において、培地に含まれる成分を比較するとTAP培地のみに含まれない、もしくは含まれる成分は存在しない。
TAP培地を大きく特徴づける成分としては酢酸(0.1%)が挙げられ、mAC培地が同様に酢酸ナトリウム由来の酢酸を含むが、その量はTAP培地の方が多い。そのため、太く、黒っぽくなる表現型は酢酸に由来する可能性が予想されたが、C培地に酢酸(0.1%)のみを加えた場合には実施例1のEuglena anabaenaは致死であった。TAP培地を作製する際、酢酸を加えた後にオートクレーブ滅菌するため、揮発によりTAP培地中に含まれる酢酸濃度は0.1%より少なくなっている可能性が考えられる。一方で、さらに少量の酢酸をC培地に加えることも試したが、生存可能な酢酸濃度(〜0.01%)では効果は現れなかった。
以上のことから、TAP培地に含まれる酢酸が、実施例1のEuglena anabaenaの形態変化の原因であるとしても、それ以外の成分のバランス等も影響していると考えられる。例えば、ホウ酸もTAP培地には他の培地より多く含まれているので、これも要因の一つとなっている可能性が考えられた。
<試験例3 実施例1のEuglena anabaenaの培養特性の評価>
試験例2において調べた各種ユーグレナ種のうち、Euglena gracilis以外では実施例1のEuglena anabaenaの増殖が格段に速かった。その際に培養は、1mLの容量で比較的低温(23℃)、低光量(50μmol/m2s)で行った。
経験上、培養の規模は増殖の良し悪しに影響を与えることが多いため、本試験例3では、通常の試験管培養試験で用いる40mLほどの容量で同様に増殖可能であるかを検討した。また、より高温で培養することによって増殖が速くなる可能性が考えられたため、実施例1のEuglena anabaenaの培養に適した温度条件を検討した。さらに至適温度、最適培地で培養した際にEuglena gracilisとの増殖の速さの比較を行った。
培養の至適温度の検討では、100mL試験管を用い、40mLのAF6培地で実験を行った。実験開始時の藻体量は、OD680 = 0.03程度に合わせ、試験管を3本ずつ用い、20℃、23℃、26℃、29℃、32℃の5種類の温度に設定した水槽中でそれぞれ実験を行った。実験の際の光照射は150μmol/m2sの恒常光で行い、5% CO2を含む空気を40mL/min. 通気して培養した。藻体濃度は吸光光度計(島津、UVmini-1240)にてOD680を各日測定し評価した。
一方、至適培養条件でのEuglena gracilisとの増殖比較試験では、至適温度の検討の実験と同様の方法で、実施例1のEuglena anabaenaの培養を行った。ただし、温度は29℃とし、培地は、TAP培地(+ビタミン)、C培地、C培地とTAP培地(+ビタミン)の等量混合培地(C&TAP)を用いた。対照実験でのEuglena gracilisの培養は同様の条件で行い、培地はCM培地(pH3.5)を用いた。
本試験例3における培養の至適温度の検討試験の結果を、図6に示す。図6のエラーバーはSEMを示す。
AF6培地を用いた40mL容量での培養でも、図6に示すように、実施例1のEuglena anabaenaの増殖を確認することができた。24穴プレートでの培養実験で設定した23℃での増殖と比較して、26℃、29℃と温度が高くなるほど増殖が速くなった。一方で、32℃まで温度を上げるとほとんど増殖しなくなり、大部分が死滅、もしくはシスト化した。
「シスト化」とは、細胞が、動かない球形の形態であるシスト形態になることをいう。
一方、本試験例3における至適培養条件での増殖試験の結果を、図7に示す。図7のエラーバーはSEMを示す。
TAP培地、C培地、C&TAP培地を用い、同様に40mLの容量、29℃で増殖を調べた結果、図7に示すように、TAP培地とC&TAPで増殖が速く、6日目までに6〜7倍に増加した。これは同様の条件でCM培地(pH3.5)を使い培養したEuglena gracilisの半分程度の増殖の速さであった。
以上より、実施例1のEuglena anabaenaの増殖はEuglena gracilisと同様に29℃が一番よく、より速い増殖を得るために必要な温度条件が明らかになったのと同時に、ある程度の高温に対する耐性を持っていることが示された。
TAP培地、及びC&TAP混合培地を用いた培養では、それぞれでEuglena gracilisをCM培地(pH3.5)で培養した際の半分程度の増殖速度を示した。TAP培地はクラミドモナスなどの培養で広く使われる培地であるが、この培地を基としてさらなる改良を行うことによって実施例1のEuglena anabaenaの増殖により適した培地を作製できる余地があることが分かった。なお、TAP培地とC&TAP混合培地では同じぐらいの増殖の速さを示したが、C&TAP混合培地中での細胞形態はTAP培地で培養した場合と同様に、太く、黒っぽい形態となった。このことは、試験例2で考察した形態の表現型を引き起こすTAP培地の成分について、TAP培地に少ない成分ではなく、TAP培地に多く含まれる成分(0.1%酢酸)が影響していることを再度示唆する結果であった。
<試験例4 実施例1のEuglena anabaenaのパラミロン含量及びその特性の評価>
ユーグレナ類を産業利用する際の目的産物の一つに、ユーグレナが特異的に産生するβ−1,3グルカンであるパラミロンが挙げられる。培養する過程で実施例1のEuglena anabaenaでは、藻体が試験管の底にすぐに沈降してしまう様子が観察された。パラミロンは比重が高い(〜1.5)物質であるため(R. H. Marchessault et al., 1979, Carbohydr. Res., 75, 231-242)、よく沈降する性質はパラミロンを多く蓄積していることを示唆している。実施例1のEuglena anabaenaは40mLの容量でも一定の増殖を示し、炭水化物含量を測定するのに十分な量の藻体を集めることができたため、以下の通り、その含量を定量した。
Euglena gracilisはCM培地(pH3.5)、実施例1のEuglena anabaenaはTAP培地(+ビタミン)でそれぞれ1週間培養し、培養液を大試験管内にOD680 = 0.38となるように希釈調整し静置した。10分後、30分後、60分後の沈降の経時変化を撮影記録した。60分後には沈降の具合を良く確認するために底面の様子の写真も撮影した。撮影した写真を、図8に示す。図8において、grとanはそれぞれEuglena gracilisと実施例1のEuglena anabaenaを示す。
図8に示すように、培養液の藻体濃度を揃え静置すると、実施例1のEuglena anabaenaでは一時間後にはその大部分が沈殿し、Euglena gracilisの細胞はあまり沈殿しない様子が観察された。
実施例1のEuglena anabaenaについて、沈降試験を行った。実施例1のEuglena anabaenaは、試験管内で、10cm深さの培養液を静置したところ、静置開始から60分後に、沈殿として元の藻体量の64.0%が回収された。
また、Euglena gracilisと実施例1のEuglena anabaenaについて、対比沈降試験を行った。
それぞれEuglena gracilisはCM培地(pH3.5)、実施例1のEuglena anabaenaは、TAP培地に懸濁し、それぞれOD680 = 0.473, 0.478となる濃度に調整した。
その後、これらを20mL容量の試験管それぞれ5本に10mL(水深約6.5cm)入れ、静置し、それぞれ、5分後、10分後、20分後、30分後、60分後に上清を捨てた。それぞれの試験管に元と同じ水深に戻るまでそれぞれの培地を足し、藻体を浮遊させてOD680を測定した。測定値を、元の濃度と比較して、回収率を計算した。算出した計算結果を、図9のグラフに示す。
図9に示すように、Euglena gracilisでは、5分後、10分後、20分後、30分後、60分後の回収率が、それぞれ、15.6%,11.8%,15.4%,20.9%,42.2%であったのに対し、実施例1のEuglena anabaenaでは、5分後、10分後、20分後、30分後、60分後の回収率が、それぞれ、19.8%,34.1%,49.0%,63.1%,93.3%であり、60分後には、9割以上が回収された。
また、パラミロン粒子の詳細な観察のため、実施例1のEuglena anabaenaを培養した後、一部の細胞を採取してカバーグラスを載せた後に5分程度放置した。カバーグラスの重みで潰れた細胞を、顕微鏡(LeicaDM2500)で観察し、40倍対物レンズを利用し写真を撮影した。撮影した写真を、図10に示す。図10のように、各細胞には40-70個のパラミロン粒子が確認できた。スケールバーは10μmを示す。
実施例1のEuglena anabaenaを各種培地で育てた細胞を観察すると予想通り多くのパラミロン粒子が観察された。さらにカバーグラスの重みでつぶれた細胞を観察すると、多いものは一細胞あたり数十個ものパラミロン粒子が含まれることが確認できた。
更に、100mL試験管を用い1週間培養した実施例1のEuglena anabaenaとEuglena gracilisの炭水化物含量を測定した。
Euglena gracilisはCM培地、もしくは窒素源を抜いたCM培地(以下、「CM(-N)培地」と称する。)を用いて培養した。実施例1のEuglena anabaenaはC培地、TAP培地、C&TAP混合培地のそれぞれを用いて培養した。
各細胞の含有炭水化物量は、藻体を凍結乾燥機(FDV-1200, EYLA)により乾燥させた後、10 mg程度を利用し定量した。乾燥操体に10mLのアセトンを加え、超音波破砕機(UD-201, TOMY)により細胞を破砕し、遠心により回収した沈殿をSDS水溶液(10%,1%)と水を利用して3回洗浄した。その後、得られたパラミロンを含む沈殿をフェノール硫酸法により定量し、元の藻体の乾燥重量と比較して、含有率を計算した。
Euglena gracilisと実施例1のEuglena anabaenaの細胞の炭水化物含有率を、図11に示す。
実施例1のEuglena anabaenaの藻体に含まれるパラミロンを定量すると、図11に示すように、最大で乾燥重量の45%程度含むことが明らかとなった。Euglena gracilisも窒素制限などのストレスにより40%程度のパラミロンを蓄積したが、CM培地で独立培養した状態ではほとんどパラミロンの蓄積は確認できなかった。
実施例1のEuglena anabaenaはTAP培地で培養することにより、増殖期であっても乾燥重量の45%程度のパラミロンを蓄積し、Euglena gracilisに匹敵する量のパラミロンを蓄積することが明らかになった。
また、本試験例において、CM培地で培養した後に窒素制限を行ったEuglena gracilisと、TAP培地で培養した実施例1のEuglena anabaenaから分離したパラミロンの長径を測定した。パラミロンの長径の測定は、それぞれの顕微鏡写真から、画像処理ソフトであるImageJを用いて、100個のパラミロンをランダムに選択して長径を測定することにより行った。
Euglena gracilis及び実施例1のEuglena anabaenaのパラミロンの長径測定に用いたパラミロンの顕微鏡写真を図12に、長径の測定値のヒストグラムを図13に示す。
図12に示すように、目視において、実施例1のEuglena anabaenaの粒径がEuglena gracilisよりも小さい傾向があることが確認できた。
図13より、Euglena gracilisのパラミロンの長径の平均値は2.91μm、標準誤差0.06μm、標準偏差0.61μm、実施例1のEuglena anabaenaの長径のパラミロンの平均値は1.94μm、標準誤差0.06μm、標準偏差0.57μmであり、実施例1のEuglena anabaenaのパラミロンの長径の平均値がEuglena gracilisのパラミロンよりも小さいことが確認できた。
Euglena anabaenaの長径の標準偏差0.57μmは、長径の平均値1.94の半分以下であり、より具体的には、1/3よりも若干小さい値であることが分かった。
Euglena anabaenaの長径の平均値は1.94μm、標準偏差は0.57μmであることから、平均値±標準偏差の範囲である長径1.37〜2.51μmの範囲に、68.27%(約2/3)のEuglena anabaenaが含まれ、平均値±(2×標準偏差)の範囲である長径0.8〜3.08μmの範囲に、95.45%(約19/20)のEuglena anabaenaが含まれるといえることが分かった。
また、図13に示すように、実施例1のEuglena anabaenaのパラミロンの長径の最頻値は、1.6〜1.8μmの範囲内であるのに対し、Euglena gracilisのパラミロンの長径の最頻値は、2.6〜2.8μmの範囲内であり、長径の最頻値についても、実施例1のEuglena anabaenaのパラミロンが、Euglena gracilisのパラミロンよりも大きいことが確認できた。なお、最頻値とは、度数分布において、度数が最も多く現れる値をいい、モード、並数ともいう。
図13に示すように、ランダムに選択された100個のEuglena anabaenaの細胞においては、最も小さい細胞の長径は、1.0〜1.2μmの範囲内であった。
<試験例5 2Lスケールでの開放系培養試験>
本試験例では、実施例1のEuglena anabaenaを用いて、2Lスケールでの開放系培養試験を行った。
底面10cm x 10cmの直方体型の培養槽の側面をアルミホイルで遮光し、TAP培地+ vitamine(ビタミンB1:10μg/L,ビタミンB12:1μg/L)培地と、実施例1のEuglena anabaenaを、水量2L(水深20cm)となるように投入し、実施例1のEuglena anabaenaの培養を行った。
実施例1のEuglena anabaenaは、TAP培地を用いて前培養したものを用い、培養開始時の濃度を、5×105細胞/mL, 100g/m2の濃度とした。
培養中において、培養槽の上面は蓋をせず開放し、メタルハライドランプを使用して、光量を800μmol photons/m2s,明暗周期をL(明期)14h:D(暗期)10hとした。培養温度29℃、CO210mL/minを含むよう、200mL/minで曝気し、培地を、底面からスターラーにより100rpmで撹拌した。
本試験例の培養開始から180時間後までの藻体重量、藻体重量増加量、細胞数の変化を示すグラフを、図14〜図16に示す。
培養を1週間(168時間)行った結果、図14に示すように、乾燥藻体重量は、250g/m2程度増加した。また、図15に示すように、1日あたり藻体重量増加平均は30g/m2を超えていた。
1週間培養後の藻体と雑菌を、顕微鏡で40倍対物レンズで撮影した写真を、図17(A)に、100倍対物レンズで撮影した写真であって、図17(A)の写真を2.5倍に拡大した写真を、図17(B)に、示す。
図17(B)の矢印で示すように、実施例1のEuglena anabaenaと共に、Euglena anabaenaよりも小粒の雑菌が観察され、培養液では雑菌の増殖も見られたが、Euglena anabaenaも順調に増殖した。
本試験例より、少なくとも屋内で培養する限りにおいては、上面に蓋をせず開放した状態でEuglena anabaenaを培養することができることを確認した。培地は炭素源として酢酸を含むが、これがある程度の抗菌作用を示し、雑菌の増殖を抑制していることが予想される。
本試験例における20cm水深の角形培養槽は、屋外の20cm水深のプールの一部を切り取った状態を模している。本試験例で高い増殖を示したことから、屋外でも同様にEuglena anabaenaを培養できることが分かった。
ただし、本試験例の結果が、閉鎖系のバイオリアクター等によるEuglena anabaenaの高効率の増殖を否定するものではない。
<試験例6 Euglena anabaenaにおけるパラミロンの油脂変換>
本試験例では、実施例1のEuglena anabaenaが嫌気状態においてパラミロンから油脂への変換を行うかの検討を行った。
メタルハライドランプ下、2Lスケールでの開放培養を7日間行った。培養は、光量800μmol photons/m2sにて、明期14h, 暗期10hの周期とし、CO2 5%を含む空気を200mL/minで曝気し、スターラーにて100rpmで撹拌した。
開放培養により一定量の藻体が集まったので、これを回収して嫌気発酵を行い油脂合成の可否を試験した。
つまり、2LにEuglena anabaenaの乾燥藻体をおよそ3.6g含む培養液から、一部(2.5g相当)のEuglena anabaena藻体を80mLに遠心濃縮した。
そのうちの50mLを使用し、100% N2での曝気を行い嫌気状態にした。残り30mL分は冷凍保存した。
嫌気状態の濃縮液を密閉し、2日間29℃にて遮光保存した。また、嫌気前後の藻体をEYELA FDV-1200で凍結乾燥した。
乾燥藻体のそれぞれ10 mg程度を利用し、パラミロンの定量を行った。
パラミロンの定量は、次の方法により行った。乾燥藻体をアセトン10mLに懸濁し、90秒超音波破砕(TOMY, UD-201)を行った。800g, 5分遠心により沈殿を回収し、再びアセトン10mLを加え、再度超音波破砕を行った。800g, 5分遠心により沈殿を回収し、1% SDSを20mL加え撹拌し、30分湯浴した。800g, 5分遠心により沈殿を回収し、0.1% SDSを10mL加え、よく撹拌した。800g, 5分遠心により沈殿を回収し、イオン交換水20mLを加え洗浄した。800g, 5分遠心により沈殿を回収し、0.5 N NaOHに定容して、フェノール硫酸法にて糖定量した。
また、乾燥藻体のそれぞれ100 mg程度を利用し、含有油脂量の定量を行った。
含有油脂量の定量は、次の方法により行った。乾燥藻体を20mLヘキサンに懸濁し、90秒超音波破砕(TOMY, UD-201)を行った。ろ紙にて残渣を吸引濾過し、さらにヘキサンで残渣を洗浄しつつ油脂を含むヘキサンを全量回収した。回収したヘキサンを、乾燥重量を測定した50mL容ナスフラスコに移した。ロータリーエバポレーター(EYELA, NVC-2100 N-1100)を用いてヘキサンを留去した。ナスフラスコの乾燥重量を測定し、回収した油脂重量を計算した。
パラミロンの定量結果を図18(A)に、油脂含有量の定量結果を図18(B)に示す。
嫌気後には、ほぼ全ての藻体が死んでしまっていた。嫌気発酵が途中で止まり、不十分だった可能性がある。
図18(A)に示すように、定量したパラミロン量は、嫌気発酵前で乾燥藻体重量の14%程度であった。これは、試験例4の結果より少ない値であった。原因としては、増殖を促進する目的で培養途中に硫安を大量に添加したためと考えられ、Euglena gracilisがアンモニア量依存でパラミロン蓄積量が変化するのと同様の現象が現れている可能性が考えられた。ただ、Euglena gracilisが増殖期でほとんどパラミロンを蓄積しないのと比較して、実施例1のEuglena anabaenaでは、依然としてパラミロンの蓄積は多かった。
嫌気発酵前後で藻体重量はおよそ37%減少した。この藻体重量の減少分を考慮して、図18(A)(B)において、パラミロン含量と油脂含量は、嫌気発酵前の藻体重量を基準とした割合で表している。
図18(A)において、嫌気発酵前後でパラミロン含量が減少しているのに対し、図18(B)において、油脂含量は増加がみられた。以上のことから実施例1のEuglena anabaenaも、Euglena gracilisと同様に、嫌気状態においてパラミロンを消費してエネルギーを獲得し、同時に油脂生産を行っていることがわかった。
以上より、実施例1のEuglena anabaenaの培養を行った後、実施例1のEuglena anabaenaの濃縮液を作製し、この濃縮液を嫌気状態におくことにより、パラミロンが油脂に変換され、実施例1のEuglena anabaena由来の油脂が生成できることが分かった。

Claims (9)

  1. ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種に属し、
    細胞内に含まれるパラミロンの長径の平均が2.8μmより小さく、
    前記パラミロンを、ユーグレナの乾燥藻体に対して20重量%以上含み、
    Euglena anabaena var. minor EU044株(受託番号:FERM P-22287)であることを特徴とするユーグレナ。
  2. 培養液にて撹拌培養後、6.5cmの水深において、撹拌を停止してから60分以内に、前記培養液中の前記ユーグレナの細胞のうち50%以上が沈降する性質を有することを特徴とする請求項1記載のユーグレナ。
  3. 前記パラミロンの長径の平均が、1.0μm以上であって、
    前記パラミロンの前記長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のユーグレナ。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載のユーグレナを培養液中で培養する培養工程と、
    前記ユーグレナを含む前記培養液を静置することにより、前記ユーグレナを前記培養液中で沈降させてユーグレナ沈降物を得る沈降工程と、
    該沈降工程で得た前記ユーグレナ沈降物を回収するユーグレナ回収工程と、を行うことを特徴とするユーグレナの培養方法。
  5. 前記培養工程では、前記培養液を撹拌しながら、前記ユーグレナを培養し、
    前記沈降工程では、前記ユーグレナを含む前記培養液の前記撹拌を停止して、前記培養液を静置し、
    前記ユーグレナ回収工程の後で、前記ユーグレナ沈降物を回収して残った上澄を用いて、再度前記培養工程を行い、
    その後、前記沈降工程、前記ユーグレナ回収工程を再度行うことを特徴とする請求項4記載のユーグレナの培養方法。
  6. 前記沈降工程では、前記ユーグレナを、凝集剤を含有しない前記培養液中に入れて静置することを特徴とする請求項4又は5記載のユーグレナの培養方法。
  7. ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種であるEuglena anabaena var. minor EU044株(受託番号:FERM P-22287)に由来し、
    長径の平均が、1.0μm以上で、2.8μmより小さく、
    前記長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であることを特徴とするパラミロン。
  8. 実質的に水に不溶又は難溶であることを特徴とする請求項7記載のパラミロン。
  9. ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)種に属するEuglena anabaena var. minor EU044株(受託番号:FERM P-22287)であるユーグレナを培養液にて培養する培養工程と、
    前記ユーグレナを含む前記培養液を静置することにより、前記ユーグレナを前記培養液中で沈降させてユーグレナ沈降物を得る沈降工程と、
    該沈降工程で得た前記ユーグレナ沈降物を回収するユーグレナ回収工程と、
    回収した前記ユーグレナ沈降物から、パラミロンを分離するパラミロン分離工程と、を行うことにより、
    長径の平均が1.0μm以上で、2.8μmより小さく、前記長径の標準偏差が、前記長径の平均の1/2以下であるパラミロンを製造することを特徴とするパラミロンの製造方法。
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