JP6604351B2 - 鋼材の安定性の評価方法 - Google Patents

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本発明は、鋼材中の残留オーステナイトの安定性を評価する鋼材の評価方法に関するものであり、特に、高強度および高延性に優れたTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼の評価方法に関するものである。
近年、自動車材料の軽量化のために、材料の特性向上が要求されており、引張強度が1270MPa級といった極めて高い強度の高強度鋼板の適用が要求されている。この高強度材料の一つとして、TRIP鋼の適用が検討されている。TRIP鋼は、残留オーステナイトが歪によりマルテンサイトへ変態する現象(歪誘起変態)を利用した、延性および成形性に優れた鋼板である。
TRIP鋼は残留オーステナイトの加工によるマルテンサイトへの誘起変態を利用しているため、その特性は、残留オーステナイトがマルテンサイトに変態しやすいかどうか、すなわち残留オーステナイトの安定性に大きく影響される。残留オーステナイトの安定性が低いと、変形時に容易にマルテンサイト変態するために、材料の硬化が早く伸びが低下する。このため、変形に対してマルテンサイト変態しにくい残留オーステナイトが鋼材中に存在することが必要である。したがって、より一層の材料特性の向上と制御のためには、変態しにくい残留オーステナイトの評価や解析が重要である。
従来から、残留オーステナイトの評価は、走査型電子顕微鏡(SEM)−後方散乱電子回折(EBSD)を用いた形態解析や、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた元素分配挙動の解析などにより行われている。
また、残留オーステナイト量を測定する方法として、特許文献1には、渦電流方式の測定装置を用いた方法が記載されている。また、非特許文献1には、X線回折を用いた解析手法が記載されている。
特開2012−122993号公報
鉄と鋼 第78年(1992)第9号 P1480〜1487
特許文献1や非特許文献1に示す分析手法を用いて、鋼材の変形前後における残留オーステナイトの体積率を測定し比較することで、巨視的な観点から残留オーステナイトの安定性とTRIP現象との関連性についてある程度議論することは可能である。しかしながら、特許文献1や非特許文献1では、組織の情報が得られないため、変態しにくい残留オーステナイト組織の微視的な特徴、すなわち組成、結晶粒径や分散密度、結晶方位関係等を確認することはできない。一方、変態しにくい残留オーステナイトの微視的な特徴を評価する方法として、SEM−EBSD法により同一領域の引張変形前後の組織を観察する方法がある。しかしながら、引張変形するためにSEMから試料を取り出して再セットする必要があり、同一視野探しが煩雑で労力を要する、引張変形による試料の汚染や表面性状変化が測定結果に影響を及ぼすなど問題があった。この問題を解消するために、上記SEMの試料台に引張変形装置を組込んで、引張変形前後の組織変化をEBSD法で追跡する方法もある。しかしながら、SEMのチャンバー内に引張装置を設置するので試料サイズに制約がある、専用のミニ引張試験片の加工が煩雑である、残留オーステナイト粒内や粒界近傍など特定部位をねらって引張変形前後の変化を測定することが困難である、といった課題がある。
本発明は、上記実情に鑑み、変態しにくい残留オーステナイトの存在に基づいて残留オーステナイトの安定性を簡便に評価する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、試料に対して、集束イオンビーム(FIB)を用いたイオン照射を行うことで、歪に対して変態しやすい残留オーステナイトが、オーステナイト−マルテンサイト変態を引き起こすことを見出した。そして、FIBを用いたイオン照射前後の残留オーステナイトを観察することで、変態しにくい残留オーステナイトを確認し、この変態しにくい残留オーステナイトの存在に基づいて残留オーステナイトの安定性を簡便に評価できることを見出した。また、本発明の評価方法を鋼材(特にTRIP鋼)の材料特性(延性等)の評価指標として利用することができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。本発明の要旨は次のとおりである。
[1]鋼材表面に対して垂直に集束イオンビームを照射するイオン照射を行い、イオン照射前後の残留オーステナイトを観察し、イオン照射前後の残留オーステナイトの変化に基づいて、鋼材中の残留オーステナイトの安定性を評価することを特徴とする鋼材の評価方法。
[2]SEM−EBSD法を用いて、イオン照射前後の前記残留オーステナイトを観察することを特徴とする[1]に記載の鋼材の評価方法。
[3]前記鋼材は、引張強度(TS)が1200MPa以上であり、かつTSと全伸び(El)との積であるTS×Elが24000MPa・%以上であり、前記イオン照射は、加速電圧は3kV以上、8kV以下とし、かつ下記式(1)を満たすイオンdose量を照射したとき、イオン照射後の残留オーステナイトの面積率が、イオン照射前と比べて40%以上残存する場合、鋼材中の残留オーステナイトが安定であると評価することを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼材の評価方法。
b=30−10×ln(a)・・・(1)
ここで、
a:イオンの加速電圧(kV)
b:イオンdose量(pC/(μm)
である。
[4]前記鋼材が、質量%で、C:0.20〜0.40%、Si:1.0〜2.0%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の鋼材の評価方法。
本発明によれば、鋼材中(特にTRIP鋼中)の変態しにくい残留オーステナイトに基づいて、残留オーステナイトの安定性を簡便に評価することが可能になる。
図1は、イオン照射前後の残留オーステナイトの変化を示す組織写真である。 図2は、イオン照射前後の残留オーステナイトの変化を示す組織写真である。
まず、本発明者らは、残留オーステナイトの安定性を評価するための、イオン照射条件について検討すべく、質量%で、C:0.31%、Si:1.50%、Mn:2.0%、P:0.004%、S:0.001%、Al:0.017%、N:0.0017%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するTRIP鋼の試料を採取して、照射条件を変えてイオン照射を行った。同一視野においてイオン照射前と後のEBSDによる組織写真を取得し、イオン照射による変化から残留オーステナイトの安定性を評価した。
図1は、加速電圧:30kV、イオンdose量:20pC/(μm)でイオン照射を行った場合のイオン照射前後の残留オーステナイトの、SEM−EBSDで測定した組織写真である。また、図2は、加速電圧:5kV、イオンdose量:10pC/(μm)でイオン照射を行った場合のイオン照射前後の残留オーステナイトの、SEM−EBSDで測定した組織写真である。
図1から、高加速電圧かつ高イオンdose量でイオン照射すると、オーステナイト(γ)がマルテンサイト(α)変態していることがわかる。一方、図2は、図1のイオン照射条件よりも弱い照射条件でイオン照射を行っているため、イオン照射しても変態せずにオーステナイト(γ)が残り、変態しにくい残留オーステナイト(γ)が存在することがわかる。
図1、2の結果から、以下のことを知見した。
(1)従来の手法のように試料調整を行うことなく、任意の箇所をイオン照射するだけで、変態しにくい残留オーステナイトを簡便に判別することができる。
(2)適正なイオン照射条件であれば、TRIP現象に関連性のある変態しにくいオーステナイトを判別することができ、残留オーステナイトの安定性を評価することができる。
これらの知見から、本発明者らがさらに検討した結果、鋼材、特にTRIP鋼中の残留オーステナイトの安定性を評価できる適正なイオン照射条件を見出した。
以下、本発明の内容について具体的に説明する。
集束イオンビームは、鋼材表面に対して垂直に照射する。これは、垂直に照射することで試料内でのイオンの飛程が大きくなり、結晶内部に効率的に歪を導入し歪誘起マルテンサイト変態を生じさせやすくするためである。
イオン照射前後の残留オーステナイトを観察することで、オーステナイトーマルテンサイト変態した残留オーステナイトと、変態しなかった残留オーステナイト(イオン照射を施しても変態しにくい残留オーステナイト)とを判別することができる。
したがって、本発明によれば、イオン照射を用いることにより、マルテンサイト変態しにくい残留オーステナイトの存在、すなわち残留オーステナイトの安定性を評価することができる。
また、イオン照射前後の残留オーステナイトの測定は、観察視野において、電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて同定すればよい(SEM−EBSD法)。この時、残留オーステナイトを認識するために、十分なバックグラウンド除去および結晶構造が認識できる測定時間で行えばよい。また、微細な残留オーステナイトの認識が重要となるため、測定ステップは50nm以下で行えばよい。また、EBSD測定における加速電圧は5kV以上で行うことが好ましく、15kV以上であることがより好ましい。電流量は1.0nA以上が好ましく、3.0nAがより好ましい。また、必要に応じて、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた元素濃度を測定し、残留オーステナイトの元素濃度を測定してもよい。
図1、2の結果から明らかなように、イオン照射条件次第で、変態しにくい残留オーステナイトを正しく評価することができないと考えられる。そこで本発明者らは、変態しにくい残留オーステナイトを評価するための、適正なイオン照射条件についてさらに検討した。
上述したように、引張強度(TS)が1200MPa以上であり、かつTSと全伸び(El)との積であるTS×Elが24000MPa・%以上であるような、優れた材料特性を有する鋼材(TRIP鋼)においては、マルテンサイト変態しにくい残留オーステナイトの存在が材料特性に影響を及ぼす。すなわち、材料特性と変態しにくい残留オーステナイトの存在量との間には相関関係があり、優れた材料特性を有する条件として、残留オーステナイトが安定であることが必要である。そこで、イオン照射条件、イオン照射後の残留オーステナイトの残存量および材料特性との関係について検討した。その結果、イオン照射は、加速電圧は3kV以上、8kV以下とし、かつ下記式(1)を満たすイオンdose量を照射したとき、イオン照射後の残留オーステナイトの面積率が、イオン照射前と比べて40%以上残存すれば、残留オーステナイトが安定であると評価することができることがわかった。
b=30−10×ln(a)・・・(1)
ここで、
a:イオンの加速電圧(kV)
b:イオンdose量(pC/(μm)
である。
イオンの加速電圧は8kV以下とすることが好ましい。8kV超では、照射するイオンのエネルギーが高すぎるため、変態しにくい残留オーステナイトもマルテンサイト変態してしまい、変態しにくい残留オーステナイトを評価することが困難になる。また、電流量が高いと照射フラックスによる影響のため、低加速でも変態しにくい残留オーステナイトのマルテンサイト変態が発生する。このため、イオンの加速電圧は8kV以下とすることが好ましい。下限値については、3kV以上とすることが好ましい。3kV未満では、照射するイオンのエネルギーが低すぎるため、マルテンサイト変態しにくくなり、変態しにくい残留オーステナイトを評価することが困難になる。
また、一次イオンビーム電流は1.0nA以下であることが好ましく、一次イオンビーム電流の上限値は0.03nA以上であることが好ましい。また、一次イオンビームのイオン種は、試料と化学反応しないイオンであれば特に限定しないが、スパッタレートの比較的大きいGaイオン(Ga)が好適である。
本発明では、FIBを用いたイオン照射において、下記式(1)に記載のイオンdose量を照射することが好ましい。
b=30−10×ln(a)・・・(1)
ここで、
a:加速電圧(kV)
b:イオンdose量(pC/(μm)
である。
なお、イオン照射を行う試料については、通常の機械研磨を行い、試料表面を鏡面にした後、電解研磨を行う。その後、対象領域についてSEM観察を行って観察視野を決定すればよい。イオン照射の照射領域は、10×10μm以上が好ましく、20×20μm以上がより好ましい。
上記のイオン照射条件で鋼材にイオン照射を行い、イオン照射前後の残留オーステナイト量を比較し、イオン照射前の残留オーステナイトと比べて面積率で40%以上の残留オーステナイトがイオン照射後に残存する場合、残留オーステナイトが安定であると評価する。マルテンサイト変態しにくい残留オーステナイトの存在(残留オーステナイトの安定性)は、変形時のTRIP効果による延性向上を検討するうえで重要である。残留オーステナイトの安定性が低いと、変形時に容易にマルテンサイト変態するために、材料の硬化が早く伸びが低減する。このため、イオン照射前後の残留オーステナイト量を測定して比較することにより、残留オーステナイトの安定性を把握することができ、材料設計に活かすことができる。
また、本発明における残留オーステナイトの面積率の求め方については、上述したSEM−EBSD法により求めることができる。残留オーステナイトの分布が均一であれば、XRD、飽和磁化法といった、従来の残留オーステナイトの測定方法により求めてもよい。
本発明の評価方法において、評価対象とする鋼材は、特に制限されないが、残留オーステナイトの歪誘起変態を利用したTRIP鋼であることが好ましく、例えば、質量%で、C:0.20〜0.40%、Si:1.0〜2.0%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましい。
以下に、組成限定理由について説明する。なお、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.20〜0.40%
炭素は材料の強度とともに、残留オーステナイトの安定化のために必要な元素である。Cが低いと、引張強度1200MPa以上の実現や安定した残留オーステナイトの形成が出来ないため、0.20%以上含有する。また、炭素量が高くなると、実材料として溶接性に問題があるため、炭素の上限を0.40%とした。好ましくは、0.25〜0.34%である。
Si:1.0〜2.0%
Siは、フェライト中で高い固溶強化能を有し、鋼板強度の増加に寄与するとともに、炭化物(セメンタイト)の生成を抑制し、残留オーステナイトの安定化に寄与するため必要である。また、Siは、フェライト相中のC(固溶)をオーステナイトへ排出させ、フェライト相を清浄化し、鋼板延性の向上に寄与する作用を有する。このような効果を得るためには、1.0%以上の含有を必要とする。一方、Siが2.0%を超えると、残留オーステナイトの生成が阻害されるため、1.0〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは、1.2〜1.8%である。
Mn:1.5〜2.5%
Mnは、固溶強化あるいは焼入れ性向上を介して鋼板の強度増加に有効に寄与するとともに、オーステナイト安定化元素であり、所望の残留オーステナイトの確保に必要不可欠な元素である。このような効果を得るために、1.5%以上の含有を必要とする。一方、2.5%を超えて過剰に含有すると、所望の残留オーステナイトを得ることが困難になる。このようなことから、Mnは1.5〜2.5%に限定した。なお、好ましくは1.8〜2.2%である。
P:0.025%以下
Pは、固溶強化により強度の上昇に寄与する。しかしながら、溶接性に悪影響を及ぼすため、Pは0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。
S:0.004%以下
Sは、Mnと結合することによりMnSを形成し介在物割れの起点となるため、S量は極力少ないほうが好ましい。そこで、Sは0.004%以下とする。好ましくは0.002%以下である。
N:0.01%以下
Nは、時効性に影響を及ぼす元素であり、時効効果により伸びが低下する。そのためN量は低いほうが好ましく、0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Al:0.1%以下
Alは、フェライト生成元素であり、強度と延性のバランス(強度延性バランス)を向上させる元素である。しかし、0.1%を超えて含有すると、表層部の介在物が増加し延性が低下する。このため、Alは0.1%以下とする。なお、鋼の脱酸剤としての点から0.01%以上含有することが好ましい。
上記した成分が基本の成分である。なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
なお、本発明の評価対象とする鋼材において、さらに表面に、耐食性向上のために、めっき層を有していてもよい。めっき層としては、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、あるいは電気亜鉛めっき層のいずれかとすることが好ましい。溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層は、公知の溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層がいずれも好適である。
以上より、本発明によれば、所定のFIB条件でイオン照射を行い、イオン照射前後の残留オーステナイトを観察し、イオン照射前後の残留オーステナイトの変化に基づいて、残留オーステナイトの安定性を簡便に評価できる。なお、回折パターンのみから残留オーステナイトを識別するXRDとは異なり、本発明は組織観察に基づいた測定であるため、残留オーステナイトの形態やサイズについても解析することができる。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す成分組成を有する鋼素材を用いて、熱間圧延および冷間圧延を施し、材料特性(引張強度(TS)、全伸び(El))の異なる、1.6mm厚の冷延鋼板を作製した。なお、引張強度(TS)が1200MPa以上であり、かつTSと全伸び(El)との積であるTS(MPa)×El(%)が、24000MPa・%以上である材料は、強度および延性に優れた鋼板である。
得られた鋼板について、表1に記載の条件でイオン照射を行い、照射前後の残留オーステナイト量を測定した。測定方法は以下のとおりである。
鋼板の板幅方向の中央部の位置において、10mm×15mmの試験片を採取した。得られた試料について、FIBによるイオン照射とSEM−EBSD測定の両方を行うことができる、FIB−SEM−EBSD複合装置(FEI製:Scios)を用いて、FIBを用いてイオン照射を行うとともに、イオン照射前後の試料について、SEM−EBSD測定を行った。
EBSD測定の条件については、加速電圧:15kV、電流量:6.4nA、測定ステップ:50nm、測定領域:試料における任意の15×15μmの領域とした。また、FIBよるイオン照射の条件は、表2に示す条件とした。
EBSD測定により得られた結果から、イオン照射後の残留オーステナイトの残存率(%)を導き出した。
なお、イオン照射後の残留オーステナイトの残存率(変態しにくい残留オーステナイトの残存量)は、
イオン照射後の残留オーステナイトの残存率(%)=(イオン照射後の残留オーステナイト量/イオン照射前の残留オーステナイト量)×100
から計算し求めた。
引張強度(TS)が1200MPa以上であり、かつTSと全伸び(El)との積であるTS(MPa)×El(%)が、24000MPa・%以上であり、かつ、残存率が40%以上(イオン照射後の残留オーステナイトの面積率が、イオン照射前と比べて40%以上残存)の場合、残留オーステナイトが安定であると評価した。
表2の結果から、適正なイオン照射条件で照射すれば、変態しにくい残留オーステナイトの存在を確認することができる。また、引張強度(TS)が1200MPa以上であり、かつTSと全伸び(El)との積であるTS(MPa)×El(%)が、24000MPa・%以上である、強度および延性に優れた鋼板はいずれも、40%以上の変態しにくい残留オーステナイトを有しており、適正なイオン照射条件でイオン照射前後の残留オーステナイトを観察すれば、鋼材の残留オーステナイトの安定性を評価することができる。

Claims (4)

  1. 鋼材表面に対して垂直に集束イオンビームを照射するイオン照射を行い、イオン照射前後の残留オーステナイトを観察し、イオン照射前後の残留オーステナイトの変化に基づいて、鋼材中の残留オーステナイトの安定性を評価することを特徴とする鋼材の評価方法。
  2. SEM−EBSD法を用いて、イオン照射前後の前記残留オーステナイトを観察することを特徴とする請求項1に記載の鋼材の評価方法。
  3. 前記鋼材は、引張強度(TS)が1200MPa以上であり、かつTSと全伸び(El)との積であるTS×Elが24000MPa・%以上であり、前記イオン照射は、加速電圧は3kV以上、8kV以下とし、かつ下記式(1)を満たすイオンdose量を照射したとき、イオン照射後の残留オーステナイトの面積率が、イオン照射前と比べて40%以上残存する場合、鋼材中の残留オーステナイトが安定であると評価することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材の評価方法。
    b=30−10×ln(a)・・・(1)
    ここで、
    a:イオンの加速電圧(kV)
    b:イオンdose量(pC/(μm)
    である。
  4. 前記鋼材が、質量%で、C:0.20〜0.40%、Si:1.0〜2.0%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材の評価方法。
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