以下、本発明の実施の形態に係る小型油圧ショベルについて、図1ないし図14を参照しつつ詳細に説明する。
図1において、小型油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とを備えている。上部旋回体4の前側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式のフロント装置5が設けられている。このフロント装置5は、後述する旋回フレーム6の前端に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト5Aと、スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられたブーム5Bと、ブーム5Bの先端に回動可能に取付けられたアーム5Cと、アーム5Cの先端に回動可能に取付けられたバケット5Dとを含んで構成されている。ここで、小型油圧ショベル1は、小型のトラックに積載されて作業現場に搬送され、市街地での掘削作業、建物の内部の解体作業等の狭隘な作業現場で用いられるため、例えば総重量が0.7〜8トン程度までに抑えられている。
上部旋回体4は、後述の旋回フレーム6、カウンタウエイト7、エンジン8、サポート部材9、運転席台座10、キャブ12、外装カバー13を含んで構成されている。ここで、小型油圧ショベル1は、例えば市街地や建物の内部といった狭い作業現場に適用するため、上部旋回体4が小さく形成されている。このため、小型油圧ショベル1は、旋回フレーム6上に各種の搭載機器を配置するためのスペースが狭く、キャブ12の後部位置は、エンジン8の上側に配置されている。
旋回フレーム6は、旋回装置3を介して下部走行体2上に旋回可能に設けられている。旋回フレーム6は支持構造体をなし、上部旋回体4のベースを構成している。図5に示すように、旋回フレーム6は、厚肉な鋼板等を用いて前,後方向に延びる長方形状に形成された底板6Aと、底板6A上に前,後方向に延びるように立設された左縦板6B,右縦板6Cとを含んで構成されている。
左縦板6Bおよび右縦板6Cの前端部には、ポストブラケット6Dが設けられ、このポストブラケット6Dは、フロント装置5の基端に設けられたスイングポスト5Aを左,右方向に揺動可能に支持している。左縦板6Bおよび右縦板6Cの後端部には、左後ブラケット6E,右後ブラケット6Fが設けられている。これら左後ブラケット6Eおよび右後ブラケット6Fには、カウンタウエイト7が取付けられると共に、サポート部材9の左後脚部9C,右後脚部9Dが取付けられている。
底板6Aの前,後方向の中間部には、左縦板6Bの前,後方向の中間部を横切って左,右方向に延びる横板6Gが立設されている。横板6Gは、右縦板6Cから左縦板6Bを超えて底板6Aの左端縁部まで延在している。横板6Gの左端部には、サポート部材9の左前脚部9Aが取付けられている。底板6Aのうち横板6Gの延長線上に位置する右端部には、底板6Aから上方に立上がるサポート支持ブラケット6Hが設けられている。このサポート支持ブラケット6Hには、サポート部材9の右前脚部9Bが取付けられている。
横板6Gよりも前側に位置する底板6Aの左端部には、逆J字型に折曲げられた板体からなる左前台座支持部材6Jが、底板6Aから上方に延びて設けられている。左縦板6Bの外側面のうち左前台座支持部材6Jと左,右方向で対向する部位には、上,下方向に延びる棒状体からなる右前台座支持部材6Kが設けられている。これら左前台座支持部材6Jと右前台座支持部材6Kは、後述する運転席台座10の前側を支持するものである。底板6Aの左前側の角部には、後述するキャブ12の左前側を支持する左前キャブ支持板6Lが立設され、底板6Aの右前側の角部には、キャブ12の右前側を支持する右前キャブ支持板6Mが立設されている。
カウンタウエイト7は、旋回フレーム6の後端に設けられている。カウンタウエイト7は、フロント装置5との重量バランスをとるもので、凸湾曲形状の重量物として形成されている。カウンタウエイト7は、旋回フレーム6の左後ブラケット6Eおよび右後ブラケット6Fに、それぞれボルト7Aを用いて取付けられている。ここで、カウンタウエイト7の左角部および右角部は、それぞれ角張らないように円弧状に面取りされている。これにより、カウンタウエイト7は、上部旋回体4の旋回動作時における周囲の障害物との干渉を回避できる構成となっている。
原動機としてのエンジン8は、旋回フレーム6の横板6Gよりも後側に搭載されている。エンジン8は、クランク軸(図示せず)が左,右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム6に配置されている。エンジン8の左側には油圧ポンプ(図示せず)が設けられ、エンジン8の右側には熱交換装置(図示せず)が設けられている。
サポート部材9は、旋回フレーム6の横板6Gよりも後側に配置され、エンジン8を跨ぐように旋回フレーム6に取付けられている。サポート部材9は、後述する運転席台座10が取付けられると共に、キャブ12の後側を支持するものである。図5および図6に示すように、サポート部材9は、左前脚部9Aと、右前脚部9Bと、左後脚部9Cと、右後脚部9Dと、これら各脚部9A,9B,9C,9Dの上端に取付けられた支持ベース9Eとを含んで構成されている。
左前脚部9Aの下端は、旋回フレーム6を構成する横板6Gの左端部にボルト締めされている。左前脚部9Aの上端は、後方に向けて斜めに傾斜している。右前脚部9Bの下端は、旋回フレーム6のサポート支持ブラケット6Hにボルト締めされている。右前脚部9Bの上端は、後方に向けて斜めに傾斜している。一方、左後脚部9Cの下端は、旋回フレーム6の左後ブラケット6Eにボルト締めされている。右後脚部9Dの下端は、旋回フレーム6の右後ブラケット6Fにボルト締めされている。
サポート部材9の支持ベース9Eは、左前脚部9A、右前脚部9B、左後脚部9C、右後脚部9Dの上端に固定されている。支持ベース9Eは、旋回フレーム6の左,右方向の幅寸法とほぼ等しい長さ寸法を有し、各脚部9A,9B,9C,9Dの上端を互いに連結している。支持ベース9Eは、エンジン8の上方を左,右方向に延在し、エンジン8の上側でキャブ12の後側を支持するものである。図7に示すように、左前脚部9Aの上側には、前方に向けて突出する左後台座支持部材9Fが設けられ、右前脚部9Bの上側には、左方に向けて突出する右後台座支持部材9Gが設けられている。これら左後台座支持部材9Fと右後台座支持部材9Gとは、運転席台座10の後側を支持するものである。
運転席台座10は、エンジン8の上側を覆ってサポート部材9に支持されている。運転席台座10は、旋回フレーム6の底板6Aとほぼ等しい左,右方向の幅寸法を有する長方形状の上板10Aと、上板10Aの前端側から下方に垂下し左,右方向に延びる前板10Bと、前板10Bの左端側から後方へと延び上板10Aの前,後方向の中間部位まで延在した左側板10Cとを含んで構成されている。前板10Bの下端には、前方に向けて張出す前フランジ板10Dが設けられ、左側板10Cの下端には、前方に向けて張出す左前フランジ板10Eが設けられている。
運転席台座10の前側は、旋回フレーム6の左前台座支持部材6Jと右前台座支持部材6Kとにボルト10Fを用いて固定され、運転席台座10の後側は、サポート部材9の左後台座支持部材9Fと右後台座支持部材9Gとにボルト10Gを用いて固定されている。これにより、運転席台座10は、エンジン8の上側を覆った状態でサポート部材9に支持され、運転席台座10の上板10Aの中央部には、オペレータが着席する運転席(図示せず)が配置される構成となっている。
原動機室11は、運転席台座10の下側に設けられている。この原動機室11は、旋回フレーム6と、運転席台座10の上板10Aと、後述する外装カバー13とによって覆われた空間として形成され、エンジン8、油圧ポンプ、熱交換装置等(いずれも図示せず)の搭載機器を収容するものである。
キャブ12は、前端が旋回フレーム6の前側に支持されると共に後側がサポート部材9に支持されている。キャブ12は、旋回フレーム6をほぼ全域に亘って上側から覆う状態で旋回フレーム6に搭載され、運転室を画成している。ここで、キャブ12は、上部旋回体4の前,後方向の長さ寸法に対し、例えば70%〜90%以上の前,後方向の長さ寸法を有している。これにより、小型油圧ショベル1は、キャブ12内の居住性が高められている。
図1ないし図4に示すように、キャブ12は、前面部12Aと、前面部12Aと前,後方向で対面する後面部12Bと、前面部12Aおよび後面部12Bを挟んで左,右方向で対面する左側面部12C,右側面部12Dと、前面部12A、後面部12B、左側面部12C,右側面部12Dの上端を閉塞する上面部12Eとによって囲まれたボックス状に形成されている。さらに、キャブ12を構成する左,右の側面部12C,12Dの後部下側には、上方および前方に向けて窪んだ凹窪部12F(右側面部12D側のみ図示)が設けられ、キャブ12は、全体として段付きのボックス状に形成されている。
キャブ12は、後側がサポート部材9の支持ベース9Eに支持され、前側が旋回フレーム6の左前キャブ支持板6Lおよび右前キャブ支持板6Mに支持されることにより、旋回フレーム6上に搭載されている。キャブ12内には、オペレータが着席する運転席、フロント装置5等を制御する左,右の操作レバー装置、下部走行体2の走行を制御する走行用レバー・ペダル等(いずれも図示せず)が収容されている。
ここで、キャブ12が旋回フレーム6に搭載された状態で、キャブ12の後側に形成された凹窪部12Fは、原動機室11内に配置されたエンジン8等の搭載機器を上側から覆っている。これにより、キャブ12は、旋回フレーム6をほぼ全域に亘って上側から覆った状態で旋回フレーム6に搭載され、キャブ12内の居住スペースは可及的に大きく確保されている。
外装カバー13は、旋回フレーム6の周囲に設けられ、エンジン8等の搭載機器を覆うものである。外装カバー13は、キャブ12の前下側部分の周囲を前方および左,右の側方から覆う前カバー14と、左側面カバー15と、右側面カバー16と、原動機カバー18とにより構成されている。
左側面カバー15は、キャブ12の左側面部12Cのうち凹窪部12Fに対応する位置に配置されている。左側面カバー15は、底板6Aの左端部および後端部に沿ってL型に屈曲して形成され、例えばサポート部材9に設けられたブラケット(図示せず)に取付けられている。左側面カバー15は、原動機室11内に収容されたエンジン8等の搭載機器を左側方から覆っている。
右側面カバー16は、キャブ12の右側面部12Dのうち凹窪部12Fに対応する位置に配置されている。右側面カバー16は、底板6Aの右端部および後端部に沿ってL型に屈曲して形成されている。右側面カバー16は、サポート部材9の右前脚部9Bにヒンジ機構(図示せず)を用いて前,後方向に開閉可能に取付けられている。右側面カバー16は、原動機室11内に収容されたエンジン8等の搭載機器を右側方から覆っている。
ここで、図3に示すように、左側面カバー15と右側面カバー16との間には、カウンタウエイト7の上側に位置して点検用開口17が形成されている。点検用開口17は、エンジン8等の搭載機器に対する点検作業を行うための開口であり、原動機カバー18によって開閉されるものである。
原動機カバー18は、後述するカバー開閉機構21、支持ブラケット32等を介してサポート部材9に取付けられている。原動機カバー18は、図2、図10および図11に示すように点検用開口17を閉塞する閉位置と、図3、図12および図13に示すように点検用開口17を開放する開位置との間で上,下方向に移動するものである。
図4および図9に示すように、原動機カバー18のうち原動機室11側に位置する内側面18Aには、左,右方向に離間して2個の取付台座18Bが固着して設けられている。これら各取付台座18Bは、U字状に屈曲した板体からなり、後述するカバー開閉機構21のカバー側基板23に取付けられるものである。また、原動機カバー18の下側にはロック機構19が設けられている。
ロック機構19は、原動機カバー18の下側に取付けられたケーシング19Aと、ケーシング19Aから原動機室11側に突出した爪部材19Bと、爪部材19Bのロック状態を解除する鍵部材19Cとを含んで構成されている。一方、図3および図4に示すように、旋回フレーム6の後側には逆U字型の固定フック20が固定して設けられている。ロック機構19の爪部材19Bは、原動機カバー18が閉位置(図2の位置)となったときに固定フック20に係合する。これにより、原動機カバー18が閉位置に保持され、原動機カバー18の外側からロック機構19の鍵部材19Cを操作することにより、爪部材19Bと固定フック20との係合が解除される。
次に、原動機カバー18を閉位置と開位置との間で移動させる左,右のカバー開閉機構21について説明する。
左,右のカバー開閉機構21は、後述する支持ブラケット32と原動機カバー18との間に設けられ、原動機カバー18を閉位置と開位置との間で上,下方向に平行移動(スライド)させるものである。図8および図9に示すように、左,右のカバー開閉機構21は、後述するブラケット側基板22、カバー側基板23、第1リンク部材24、第2リンク部材25、引張りばね27等を含んで構成されている。ここで、左,右のカバー開閉機構21は、ほぼ同一の構成を有しているので、以下、左側のカバー開閉機構21について説明し、右側のカバー開閉機構21についての説明は省略するものとする。
ブラケット側基板22は、支持ブラケット32に固定されている。ブラケット側基板22は、上,下方向に延びる矩形の板体からなり、支持ブラケット32の後述する左基板取付面32Bに2個のボルト22Aを用いて固定されている。なお、右側のカバー開閉機構21のブラケット側基板22は、支持ブラケット32の後述する右基板取付面32Dに2個のボルト22Aを用いて固定されている。ブラケット側基板22の後端は、支持ブラケット32から離間する方向(後方)に突出し、このブラケット側基板22の後端には、後述する第1リンク部材24の固定端と第2リンク部材25の固定端とが、それぞれ回動可能にピン結合されている。
カバー側基板23は、原動機カバー18に設けられている。カバー側基板23は、鋼板等を用いてL字状に屈曲した板体として形成され、原動機カバー18の内側面18Aに設けられた取付台座18Bに2個のボルト23Aを用いて固定されている。カバー側基板23のうち取付台座18Bから前方に突出する突出端には、第1リンク部材24の自由端と第2リンク部材25の自由端とが、それぞれ回動可能にピン結合されている。
第1リンク部材24は、ブラケット側基板22とカバー側基板23との間に設けられている。第1リンク部材24は、直線状をなす細長い板体として形成されている。第1リンク部材24の長さ方向の一端は固定端となり、この固定端はブラケット側基板22にピン24Aを用いて回動可能にピン結合されている。一方、第1リンク部材24の長さ方向の他端は自由端となり、この自由端はカバー側基板23にピン24Bを用いて回動可能にピン結合されている。
第2リンク部材25は、ブラケット側基板22とカバー側基板23との間に設けられ、第1リンク部材24と共に平行リンクを構成している。第2リンク部材25は、直線状をなす細長い板体として形成されている。第2リンク部材25の長さ方向の一端は固定端となり、この固定端はブラケット側基板22のうち上述のピン24Aから下方に離間した位置にピン25Aを用いて回動可能にピン結合されている。一方、第2リンク部材25の長さ方向の他端は自由端となり、この自由端はカバー側基板23のうち上述のピン24Bから下方に離間した位置にピン25Bを用いて回動可能にピン結合されている。
ここで、左側のカバー開閉機構21を構成する第1リンク部材24と、右側のカバー開閉機構21を構成する第1リンク部材24との間は、左,右方向に延びる連結ロッド26によって連結されている。これにより、左,右のカバー開閉機構21の第1リンク部材24と第2リンク部材25とは連動し、図10ないし図13に示すように、支持ブラケット32に対して原動機カバー18が上,下方向にスライドすることにより、原動機カバー18は、点検用開口17を閉塞する閉位置(下限位置)と、点検用開口17を開放する開位置(上限位置)との間で移動する構成となっている。
引張りばね27は、コイルばねにより形成され、ブラケット側基板22と第1リンク部材24との間に設けられている。引張りばね27の一端は、ブラケット側基板22に突設された一端側係止ピン28に掛止めされ、引張りばね27の他端は、第1リンク部材24の長さ方向の中間部位に突設された他端側係止ピン29に掛止めされている。ここで、引張りばね27は、原動機カバー18が上,下方向に移動するときに、この移動経路の中間位置において最大に伸長する。
従って、原動機カバー18が閉位置から開位置に向けて移動するときに移動経路の中間位置を超えると、引張りばね27は縮小し、原動機カバー18は、引張りばね27のばね力によって開位置に向けて付勢される。一方、原動機カバー18が開位置から閉位置に向けて移動するときに移動経路の中間位置を超えると、引張りばね27は縮小し、原動機カバー18は、引張りばね27のばね力によって閉位置に向けて付勢される。これにより、作業者による原動機カバー18の開閉操作を、引張りばね27のばね力によって補助する構成となっている。
原動機カバー18が図11に示す閉位置に移動したときには、原動機カバー18に設けられたロック機構19の爪部材19Bが、旋回フレーム6の後側に設けられた固定フック20に係合し、原動機カバー18が閉位置に保持される。一方、ロック機構19の爪部材19Bは、原動機カバー18の外側から鍵部材19Cを操作することにより、固定フック20から離脱する。これにより、原動機カバー18は、カバー開閉機構21によって閉位置から開位置へと移動することができる。
次に、後述する支持ブラケット32を取付けるためにサポート部材9に設けられたブラケット取付部材30とブラケット保持部材31について、図5および図6を参照して説明する。
ブラケット取付部材30は、サポート部材9の左後脚部9Cよりも左側に位置して支持ベース9Eの後側に設けられている。このブラケット取付部材30は、サポート部材9の一部を構成し、後述するヒンジ機構33を介して支持ブラケット32が取付けられるものである。ここで、ブラケット取付部材30は、L字型に屈曲した板体により形成され、前,後方向に延びる固定部30Aと、固定部30Aの後端から右側に屈曲した取付面30Bとを有している。ブラケット取付部材30の固定部30Aは、サポート部材9の支持ベース9Eの下面に溶接等の手段を用いて固定され、取付面30Bは支持ベース9Eから後方に突出している。
ブラケット保持部材31は、サポート部材9の左後脚部9Cと右後脚部9Dとの間に位置して支持ベース9Eの後側に設けられ、サポート部材9の一部を構成している。このブラケット保持部材31は、L字型に屈曲した板体からなる取付板31Aと、取付板31Aよりも厚肉な板体からなり取付板31Aの後端に一体的に固着された保持突起31Bとを有している。保持突起31Bの突出端(後端)には上,下方向に貫通するピン挿通孔31Cが形成されている。ブラケット保持部材31の取付板31Aは、サポート部材9の支持ベース9Eの下面に溶接等の手段を用いて固定され、保持突起31Bは、支持ベース9Eから斜め後方に突出している。ブラケット保持部材31の保持突起31Bは、後述する支持ブラケット32の突起挿嵌孔32Fに挿嵌されることにより、支持ブラケット32の右側を保持する。
次に、左,右のカバー開閉機構21を原動機カバー18と共に支持する支持ブラケット32について説明する。
支持ブラケット32は、サポート部材9の後側に位置して配置され、サポート部材9を構成する支持ベース9Eの下側を、支持ベース9Eに沿って左,右方向に延びている。この支持ブラケット32は、サポート部材9のブラケット取付部材30に後述のヒンジ機構33を介して左,右方向(水平方向)に回動可能に取付けられ、左,右のカバー開閉機構21を原動機カバー18と共に支持するものである。
ここで、支持ブラケット32は、長さ方向の途中部位に曲げ加工が施された帯状の板体により形成され、サポート部材9の支持ベース9Eに沿って左,右方向に延びている。支持ブラケット32の左,右方向の一側となる左端は、斜め後方に突出したヒンジ取付面32Aとなり、このヒンジ取付面32Aにはヒンジ機構33が取付けられている。支持ブラケット32の左端側には、ヒンジ取付面32Aに隣接して左基板取付面32Bが設けられている。左基板取付面32Bは、上,下方向に延びる矩形の板体からなり、溶接等の手段を用いて支持ブラケット32の後面32Cに固定されている。左基板取付面32Bには、左側のカバー開閉機構21を構成するブラケット側基板22がボルト22Aを用いて固定されている。
一方、支持ブラケット32の左,右方向の他側となる右端には、後方に向けて突出した右基板取付面32Dが設けられている。右基板取付面32Dは、支持ブラケット32の右端側を後方に屈曲させることにより形成され、この右基板取付面32Dには、右側のカバー開閉機構21を構成するブラケット側基板22がボルト22Aを用いて固定されている。
支持ブラケット32の左,右方向の中間部位には、後方に向けて突出する山形の湾曲部32Eが設けられている。この湾曲部32Eは、支持ブラケット32をサポート部材9に取付けたときに、支持ブラケット32と原動機室11内に収容された搭載機器との干渉を避けると共に、支持ブラケット32の強度を高めるものである。また、湾曲部32Eのうち右基板取付面32D側に寄った部位には、前,後方向に貫通すると共に左,右方向に延在する長方形状の突起挿嵌孔32Fが形成されている。この突起挿嵌孔32Fは、サポート部材9に設けられたブラケット保持部材31の保持突起31Bが挿嵌されるものである。
ヒンジ機構33は、支持ブラケット32とサポート部材9のブラケット取付部材30との間に設けられている。このヒンジ機構33は、支持ブラケット32をブラケット取付部材30に対して左,右方向(水平方向)に回動可能に支持するものである。ここで、ヒンジ機構33は、上,下方向に延びる軸を介して相対回動可能に連結された一側回動板33Aと他側回動板33Bとを備えている。ヒンジ機構33の一側回動板33Aは、ブラケット取付部材30の取付面30Bにボルト33Cを用いて固定されている。一方、ヒンジ機構33の他側回動板33Bは、支持ブラケット32のヒンジ取付面32Aに溶接等の手段を用いて固定されている。
従って、支持ブラケット32は、左,右のカバー開閉機構21および原動機カバー18を支持した状態でヒンジ機構33を中心として左,右方向に回動し、図3および図13等に示す固定位置と、図4および図14等に示す回動位置との間で変位する。ここで、支持ブラケット32が回動位置にあるときには、支持ブラケット32のヒンジ取付面32Aが、ヒンジ機構33を介してブラケット取付部材30に支持され、支持ブラケット32はサポート部材9に対し、ヒンジ機構33によって片持ち支持される。一方、支持ブラケット32が固定位置にあるときには、サポート部材9に設けられたブラケット保持部材31の保持突起31Bが、支持ブラケット32の突起挿嵌孔32Fに挿嵌され、支持ブラケット32の右側は保持突起31Bによって支持される。従って、支持ブラケット32が固定位置を保持しているときには、支持ブラケット32はサポート部材9に対し、ヒンジ機構33と保持突起31Bとによって両持ち支持される構成となっている。
回動規制部材34は、支持ブラケット32の右側部位とサポート部材9に設けられたブラケット保持部材31の保持突起31Bとの間に設けられている。この回動規制部材34は、ヒンジ機構33を中心とした支持ブラケット32の回動動作を規制するものである。ここで、回動規制部材34は、保持突起31Bに穿設されたピン挿通孔31Cと、後述の規制ピン35とにより構成されている。
規制ピン35は、図8に示すように、上,下方向に延びる円柱状の軸体からなり、支持ブラケット32の後面32Cのうち突起挿嵌孔32Fの下側に、後述する上ピン保持板36、下ピン保持板37、圧縮ばね38等を用いて上,下方向に移動可能に設けられている。規制ピン35の上側には、規制ピン35よりも大きな外径寸法を有する円板状のストッパ35Aが、止め輪等(図示せず)を用いて取付けられている。規制ピン35の下端側には、作業者等が把持する環状の把手35Bが設けられている。
上ピン保持板36と下ピン保持板37とは、それぞれ四角形状をなす板体からなり、支持ブラケット32の後面32Cに溶接等の手段を用いて固定されることにより、突起挿嵌孔32Fの下側に上,下方向に間隔をもって配置されている。上,下のピン保持板36,37の中央部には、規制ピン35の外径よりも大きくストッパ35Aの外径よりも小さな孔径を有するピン挿通孔が同心上に穿設されている。上ピン保持板36および下ピン保持板37のピン挿通孔には、規制ピン35が上,下方向に移動可能に挿通されている。この場合、規制ピン35のストッパ35Aは、上ピン保持板36と下ピン保持板37との間に配置され、規制ピン35の把手35Bは、下ピン保持板37の下側に配置されている。
圧縮ばね38は、規制ピン35のストッパ35Aと下ピン保持板37との間に設けられている。圧縮ばね38は、規制ピン35のストッパ35Aを上向きに付勢し、ストッパ35Aは、上ピン保持板36の下面に当接している。この状態では、規制ピン35の上端は上ピン保持板36から上方に突出する。従って、支持ブラケット32が図13に示す固定位置にあるときには、規制ピン35の上端は、ブラケット保持部材31の保持突起31Bに形成されたピン挿通孔31Cに下方から挿通される。これにより、ヒンジ機構33を中心とした支持ブラケット32の回動動作が規制(禁止)され、支持ブラケット32は、固定位置を保持することができる。
一方、支持ブラケット32を固定位置から図14に示す回動位置へと移動させる場合には、原動機カバー18を開位置とした状態で、規制ピン35の下端側に設けられた把手35Bを下方に引下げる。これにより、規制ピン35は圧縮ばね38に抗して下方に移動し、規制ピン35の上端は、ブラケット保持部材31のピン挿通孔31Cから離脱する。これにより、支持ブラケット32は、カバー開閉機構21および原動機カバー18と共に、ヒンジ機構33を中心として図14に示す回動位置へと移動することができる。
なお、原動機カバー18がロック機構19によって閉位置(図2の位置)を保持しているときには、支持ブラケット32、回動規制部材34等は原動機カバー18によって覆い隠されている。従って、原動機カバー18を開位置(図3の位置)に移動させない限りは、規制ピン35の把手35Bを操作することはできない。
本実施の形態による小型油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下、その作動について説明する。
総重量が0.7〜8トン程度の小型油圧ショベル1は、トラックの荷台に積載された状態で作業現場まで搬送される。小型油圧ショベル1が作業現場に搬送されると、オペレータはキャブ12内に乗込み、キャブ12内に配置された走行用レバー・ペダル、作業用操作レバー(いずれも図示せず)を操作する。これにより、小型油圧ショベル1は、所望の作業場所まで自走した後、上部旋回体4を旋回させつつ、フロント装置5を用いて建物内部の解体作業、狭い市街地等での側溝掘り作業や土砂の掘削作業を行う。
ここで、狭隘な作業現場で作業を行う小型油圧ショベル1の周囲には、壁、立木等の障害物が存在する。このため、本実施の形態による小型油圧ショベル1は、狭隘な作業現場でエンジン8等の搭載機器に対するメンテナンス作業を行うときには、原動機カバー18を図2に示す閉位置から図3に示す開位置へと上方にスライドさせることにより、原動機カバー18を左,右方向に回動させるスペースが確保できない場合でも、点検用開口17を開放することができる。
即ち、原動機カバー18を閉位置から開位置へと移動させる場合には、作業者は、原動機カバー18の外側からロック機構19の鍵部材19Cを操作し、旋回フレーム6の後側に取付けられた固定フック20から爪部材19Bを離脱させた状態で、原動機カバー18を上方に持上げる。
これにより、原動機カバー18は、サポート部材9に取付けられた支持ブラケット32に対し、カバー開閉機構21によって上方へとスライドし、図3に示す開位置に達する。この結果、左側面カバー15と右側面カバー16との間に形成された点検用開口17が開放され、この点検用開口17を通じて、エンジン8等の搭載機器に対するメンテナンス作業を行うことができる。
ここで、原動機カバー18を上方にスライドさせた場合、原動機カバー18は点検用開口17の上方に配置されるので、開位置となった原動機カバー18が、メンテナンス作業を行う作業者の目線を遮ることがある。このため、小型油圧ショベル1の周囲に大きな作業空間を確保できる広い作業現場においても、作業者は、開位置となった原動機カバー18を避けるために屈んだ窮屈な姿勢でメンテナンス作業を行うことになり、メンテナンス作業の作業性が低下してしまう。
これに対し、本実施の形態による小型油圧ショベル1は、原動機カバー18を支持する支持ブラケット32を、サポート部材9に対してヒンジ機構33を中心として左,右方向に回動させることにより、支持ブラケット32に支持された原動機カバー18を、点検用開口17の上方から左方に移動させることができるようになっている。そこで、支持ブラケット32を、図3に示す固定位置から図4に示す回動位置に移動させる操作について説明する。
まず、原動機カバー18を開位置にスライドさせた状態では、支持ブラケット32は、図3に示す固定位置を保持している。即ち、図13に示すように、サポート部材9に固定されたブラケット保持部材31の保持突起31Bが、支持ブラケット32の突起挿嵌孔32Fに挿嵌され、突起挿嵌孔32Fの下側に配置された規制ピン35の上端は、保持突起31Bのピン挿通孔31Cに挿通されている。このため、ヒンジ機構33を中心とした支持ブラケット32の回動動作が規制され、支持ブラケット32は固定位置を保持している。なお、支持ブラケット32が固定位置を保持しているときには、支持ブラケット32の突起挿嵌孔32Fにブラケット保持部材31の保持突起31Bが挿嵌されており、支持ブラケット32は、ヒンジ機構33と保持突起31Bとによって両持ち支持されている。
次に、規制ピン35の下端側に設けられた把手35Bを下方に引下げる。これにより、規制ピン35は圧縮ばね38に抗して下方に移動し、規制ピン35の上端は、ブラケット保持部材31のピン挿通孔31Cから離脱する。これにより、支持ブラケット32を、カバー開閉機構21および原動機カバー18と共に、ヒンジ機構33を中心として図14に示す回動位置へと移動させることができる。
この結果、図4に示すように、原動機カバー18を点検用開口17の上方から左側方に変位させ、点検用開口17の周囲を大きく開放することができる。この結果、作業者は原動機カバー18や支持ブラケット32によって目線を遮られることがなく、楽な作業姿勢を保持したまま、点検用開口17を通じてエンジン8等の搭載機器にアクセスすることができ、搭載機器に対するメンテナンス時の作業性を高めることができる。
かくして、本実施の形態による小型油圧ショベル1は、左側面カバー15と右側面カバー16との間に、原動機室11内に収容されたエンジン8等の搭載機器に対するメンテナンス作業を行うための点検用開口17が設けられ、この点検用開口17を開閉可能に覆う原動機カバー18を備えている。原動機カバー18は、カバー開閉機構21によって点検用開口17を閉塞する閉位置と点検用開口17を開放する開位置との間で上,下方向に平行移動する。一方、旋回フレーム6に設けられたサポート部材9の後側には、カバー開閉機構21を介して原動機カバー18を支持する支持ブラケット32が配置され、この支持ブラケット32は、サポート部材9の後側に設けられたブラケット取付部材30に、ヒンジ機構33を用いて左,右方向に回動可能に支持されている。
従って、カバー開閉機構21によって原動機カバー18を図3に示す開位置に移動させ、点検用開口17を開放した状態で、原動機カバー18を支持する支持ブラケット32をヒンジ機構33を中心として、図4に示す如く左側方に回動させることができる。これにより、原動機カバー18が点検用開口17の上方から左側方に移動するので、点検用開口17の周囲を大きく開放することができる。この結果、作業者は原動機カバー18によって目線を遮られることがないので、楽な作業姿勢を保持したまま、点検用開口17を通じて搭載機器に対するメンテナンス作業を行うことができ、その作業性を高めることができる。
また、支持ブラケット32の左,右方向の左側にはヒンジ機構33が取付けられ、支持ブラケット32の左,右方向の右側とサポート部材9との間には、サポート部材9に対し支持ブラケット32がヒンジ機構33を中心として左,右方向に回動するのを規制する回動規制部材34が設けられている。
これにより、回動規制部材34が、ヒンジ機構33を中心とした支持ブラケット32の回動動作を規制することにより、支持ブラケット32が原動機カバー18と共にが不用意に左,右方向に回動するのを防止することができる。従って、小型油圧ショベル1の周囲に障害物が存在しない広い作業現場においては、原動機カバー18を点検用開口17の上方から側方に開くことにより、点検用開口17の周囲に大きな作業スペースを確保することができる。一方、小型油圧ショベル1の周囲に障害物が存在する狭隘な作業現場においては、原動機カバー18を点検用開口17の上方に開いた状態で、回動規制部材34によって支持ブラケット32の回動を規制することにより、原動機カバー18が障害物と干渉しない範囲で点検用開口17の周囲に充分な作業スペースを確保することができる。
この場合、回動規制部材34は、サポート部材9に設けられたブラケット保持部材31のピン挿通孔31Cと、支持ブラケット32に設けられピン挿通孔31Cに対して抜差し可能な規制ピン35とを含んで構成されている。従って、支持ブラケット32に設けられた規制ピン35が、サポート部材9側のピン挿通孔31Cに差込まれることにより、ヒンジ機構33を中心とした支持ブラケット32の回動動作を規制することができる。一方、規制ピン35をピン挿通孔31Cから抜取ることにより、ヒンジ機構33を中心として支持ブラケット32を回動させることができる。
さらに、サポート部材9は、旋回フレーム6に立設された左前脚部9A、右前脚部9B、左後脚部9C、右後脚部9Dと、各脚部9A,9B,9C,9Dの上端に配置されて左,右方向に延びる支持ベース9Eとを有し、支持ブラケット32は、支持ベース9Eの下側に位置し、かつ支持ベース9Eに沿って左,右方向に延びる板体により構成されている。従って、支持ベース9Eに沿って左,右方向に延びる支持ブラケット32を、ヒンジ機構33を中心として左,右方向に回動させることにより、カバー開閉機構21を介して支持ブラケット32に支持された原動機カバー18を、点検用開口17の上方から左,右方向に移動させ、点検用開口17の周囲を大きく開放することができる。
なお、実施の形態では、支持ブラケット32の左側にヒンジ機構33を設け、このヒンジ機構33を中心として支持ブラケット32の右側を左側方に回動させる構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば支持ブラケット32の右側にヒンジ機構を設け、このヒンジ機構を中心として支持ブラケット32の左側を右側方に回動させる構成としてもよい。
また、実施の形態では、原動機としてエンジン8を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば電動モータを原動機として用いてもよく、さらにエンジンと電動モータを併用したハイブリッド式の原動機を用いてもよい。