(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、以下の実施形態によって限定されるわけではない。
図1は、本発明の実施形態に係る輸送機器(車両)1の主要構成を示す図である。本発明の実施形態の車両は、車輪80を駆動するトルクを発生する駆動源として機能する内燃機関(エンジン)10と、内燃機関10が発生するトルクを摩擦により車輪80の側に伝達するクラッチ機構20と内燃機関10のトルクを増幅するトルクコンバータ(不図示)を備えている。車両は、更に、クラッチ機構20と車輪80との間におけるトルクの伝達経路に変速機構40(T/M)を備えている。変速機構40の出力50は、ディファレンシャルギアボックス60および駆動軸70を介して車輪80に伝達される。
車両はまた、輸送機器(車両)1を制御する制御部(ECU:Engine Control Unit)100を備えている。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶部、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶部にはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。制御部100はプロセッサ、記憶部およびインタフェース等を複数備えていてもよい。
制御部100は、例えば、アクセルペダル(不図示)を介して与えられる運転者からの要求トルクに応じて、内燃機関10に発生させるべきトルクの指令値である指令値を決定する。制御部100は、指令値に従って内燃機関10を制御する。内燃機関10の制御は、例えば、内燃機関10に対する燃料供給や内燃機関10のプラグの点火タイミングを含みうる。
制御部100には、輸送機器(車両)1の車速を検出する車速センサ140と、運転者によるキックダウンアクセル操作を検出するキックダウン検出部150と、車輪80がロックされたことを検出する車輪ロック検出部160と、が接続されている。車速センサ140、キックダウン検出部150および車輪ロック検出部160の検出結果はそれぞれ制御部100に入力される。
また、制御部100は、輸送機器(車両)1が走行する道路に関する地図情報を取得するナビゲーション装置110と接続されている。ナビゲーション装置110は、外部のネットワークと通信可能な無線通信ユニットを有しており、無線通信ユニットは、グローバルポジショニングシステム(GPS)を利用して人工衛星からの電波(GPS信号)を無線通信ユニットのアンテナを介して受信することが可能である。
ナビゲーション装置110は、無線通信ユニットが受信したGPS信号に基づいて、車両の現在位置を算出することが可能であり、ナビゲーション装置110は、車両の走行位置を取得する位置情報取得部として機能する。
また、ナビゲーション装置110は、ネットワークを介して、車両が走行する地図情報(道路形状やコーナの半径などの情報)を取得する地図情報取得部(MPU)として機能することが可能である。ナビゲーション装置110は、地図情報と輸送機器(車両)1の位置情報とを組わせた情報を生成し、生成した情報を制御部100に出力する。制御部100は、ナビゲーション装置110から取得した情報に基づいて、輸送機器(車両)1が走行している道路形状に即した制御信号を出力することが可能である。なお、ナビゲーション装置110には、ユーザーが操作するもの他に、ユーザーが直接操作できない地図情報を格納した地図情報ユニットも含まれる。制御部100は、地図情報ユニットに格納されている地図情報に基づいて道路形状に即した制御信号を出力することも可能である。
また、制御部100は、輸送機器(車両)1の運転レンジ(シフト)を選択する運転レンジ選択部120と接続されている。運転レンジ選択部120は、例えば、運転レンジポジションとして、「P」、「R」、「N」、「D」、「S」、「B」へ手動操作されるように構成されている。Pレンジ(パーキングレンジ)は、車両の駐車時に選択するレンジである。Pレンジ(パーキングレンジ)は、変速機構40内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし、且つ、パーキング機構によって機械的に車輪80の回転を阻止(ロック)するための駐車レンジである。Rレンジ(リバースレンジ)は、変速機構40を後進ギヤ段として車両を後進走行させるときに選択するレンジである。Nレンジ(ニュートラルレンジ)は、内燃機関10(駆動原)の駆動力を変速機構40に伝達しないようにするときに選択するレンジである。
Dレンジ(ドライブレンジ)は、車両を前進させるときに選択するレンジであり、Dレンジ(ドライブレンジ)は変速機構40の全ての前進ギヤ段を用いて変速制御を行う自動変速モードを成立させる前進走行レンジである。Sレンジは、パドルやレバー等で任意にギヤ段を操作すればマニュアルシフトレンジであり、ギヤ段を操作しなければスポーツシフトレンジである。変速機構40の変速において、マニュアルライクな走行を可能にする前進走行レンジである。Bレンジは、Dレンジ(ドライブレンジ)よりもアクセルオフ時の制動力が大きい制動用レンジである。
運転者が、運転レンジ選択部120を操作して、いずれかの運転レンジを選択すると、運転レンジ検出部(不図示)は選択された運転レンジを検出し、検出結果を制御部100に出力する。制御部100は、運転レンジ選択部120により選択された運転レンジに対応した制御信号を出力する。
また、制御部100は、輸送機器(車両)1の走行を制御するための手動要求操作部130が接続されている。本実施形態において、手動要求操作部130は、運転レンジ選択部120により、変速機構40の変速比を自動で変速して輸送機器を前進させる前進レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、変速機構40の変速比を固定した変速比に設定する変速比設定部(パドル)として機能する。運転者により、手動要求操作部130(変速比設定部)が操作されると、操作入力は、制御部100に入力される。制御部100は、前進レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、手動要求操作部130(変速比設定部)からの操作入力が入力されると、変速機構40の変速モードを、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードからマニュアルシフトモード(固定変速モード)に変更(遷移)する。固定変速モードでは、制御部100は、手動要求操作部130(変速比設定部)の操作入力に基づいた手動変速により、変速機構40の前進ギヤ段の変速範囲を切り換えることが可能である。
例えば、運転者により、手動要求操作部130(変速比設定部)がアップシフト位置「+」側に操作されると、操作毎に手動要求操作部130の操作入力は制御部100に入力され、制御部100は、高速ギヤに変速(シフトアップ)するように変速機構40を制御する。一方、運転者により、手動要求操作部130(変速比設定部)がダウンシフト位置「−」側に操作されると、操作毎に手動要求操作部130の操作入力は制御部100に入力され、制御部100は、低速ギヤに変速(シフトダウン)するように変速機構40を制御する。
制御部100は、時間を計測するタイマー(不図示)を有しており、手動要求操作部130からの操作入力(第1の操作入力)が入力されると、タイマーが時間の計測を開始する。操作入力(第1の操作入力)が入力されてから所定時間の経過のタイミングで、手動要求操作部130(変速比設定部)からの操作入力(第2の操作入力)の有無を判定する。制御部100は、変速比設定部からの操作入力(第2の操作入力)が無い場合、車速の変化が少ない場合、またはアクセルペダルの操作量変化が少ない場合、クルーズ状態と判定して、変速機構40の変速モードを、マニュアルシフトモード(固定変速モード)から前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードへ変更(自動復帰)する。
制御部100は、運転レンジ選択部120により前進レンジ(Dレンジ)が選択されたときに、変速機構40を自動で変速して輸送機器を前進させる。制御部100は、前進レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、手動要求操作部130(変速比設定部)により変速比が固定された場合、固定された変速比で輸送機器を走行させる。そして、制御部100は、変速比が固定された後に、輸送機器が予め定められた走行状態になった場合、地図情報に基づいて、変速比の固定解除のタイミングを制御する。
予め定められた走行状態とは、前述のクルーズ状態と判断された状態である。制御部100は、手動要求操作部130(変速比設定部)により設定された変速比が小さいほど、設定時間を長く設定し、記憶部のデータテーブル(例えば、図5)に記憶することが可能である。制御部100は、ナビゲーション装置110(取得部)から取得した地図情報と輸送機器の位置情報との組み合せに基づいて、地図情報において輸送機器が現在位置から次コーナまで走行する到達時間を算出する。そして、制御部100は、設定された変速比に対応する設定時間と、到達時間との比較に基づいて、変速比の固定解除のタイミングを制御する。ここで、制御部100は、地図情報に基づいて次コーナの半径の情報を取得し、半径に対応する設定時間(例えば、図6)と到達時間との比較に基づいて、固定解除のタイミングを制御することが可能である。以下、具体的に制御部100の処理を説明する。
(自動変速モードから固定変速モードへの遷移)
次に、図2を参照して、自動変速モードからマニュアルシフトモード(固定変速モード)へのモード遷移の流れを説明する。図2は、自動変速モードからマニュアルシフトモード(固定変速モード)に遷移する処理の流れを説明するフローチャートである。
まず、図2のステップS11において、制御部100は、運転レンジ選択部120により選択された運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)であるか否かを判定する。運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)でない場合(S11−No)、本処理は終了となる。
一方、ステップS11の判定において、運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)である場合(S11−Yes)、制御部100は処理をステップS12に進める。
ステップS12において、制御部100は、手動要求操作部130(変速比設定部)からの操作入力の有無を判定する。手動要求操作部130(変速比設定部)からの操作入力が無い場合(S12−No)、本処理は終了となる。一方、ステップS12の判定において、手動要求操作部130(変速比設定部)からの操作入力が有る場合(S12−Yes)、制御部100は処理をステップS13に進める。
ステップS13において、制御部100は、車輪ロック検出部160の検出結果に基づいて、車輪ロックの有無を判定する。車輪ロックが有る場合(S13−No)、本処理は終了となる。一方、ステップS13の判定において、車輪ロックが無い場合(S13−Yes)、制御部100は、処理をステップS14に進める。
ステップS14において、制御部100は、キックダウン検出部150の検出結果に基づいて、運転者によるキックダウンアクセル操作の有無を判定する。キックダウンアクセル操作が有る場合(S14−No)、本処理は終了となる。一方、ステップS14の判定において、キックダウンアクセル操作が無い場合(S14−Yes)、制御部100は、処理をステップS15に進める。
そして、ステップS15において、制御部100は、変速機構40の変速モードを、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードからマニュアルシフトモード(固定変速モード)に変更(遷移)する。ここで、図2のフローチャートは、例示的なものであり、少なくともステップS11およびS12の判定結果に基づいて、変速モードを変更(遷移)するようにしてもよい。
(固定変速モードから自動変速モードへの自動復帰)
次に、図3を参照して、マニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへの自動復帰の流れを説明する。図3は、マニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードに自動復帰する処理の流れを説明するフローチャートである。
まず、図3のステップS21において、制御部100は、運転レンジ選択部120により選択された運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)以外であるか否かを判定する。運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)以外である場合(S21−Yes)、ステップS27において、制御部100は、変速機構40の変速モードをマニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS21の判定で、運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)である場合(S21−No)、制御部100は、処理をステップS22に進める。
ステップS22において、制御部100は、車輪ロック検出部160の検出結果に基づいて、車輪ロックの有無を判定する。車輪ロックが有る場合(S22−Yes)、ステップS27において、制御部100は、変速機構40の変速モードをマニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS22の判定で、車輪ロックが無い場合(S22−No)、制御部100は、処理をステップS23に進める。
ステップS23において、制御部100は、キックダウン検出部150の検出結果に基づいて、運転者によるキックダウンアクセル操作の有無を判定する。キックダウンアクセル操作が有る場合(S23−Yes)、ステップS27において、制御部100は、変速機構40の変速モードをマニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS23の判定で、キックダウンアクセル操作が無い場合(S23−No)、制御部100は、処理をステップS24に進める。
ステップS24において、制御部100は、強制解除操作の入力の有無を判定する。手動要求操作部130(変速比設定部)から強制解除操作が入力されている場合(S24−Yes)、制御部100は、処理をステップS27へ進める。ステップS27において、制御部100は、変速機構40の変速モードをマニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS24の判定で、強制解除操作が入力されていない場合(S24−No)、制御部100は、処理をステップS25に進める。
ステップS25において、制御部100は、輸送機器(車両)1の速度が一定であるクルーズ状態であるか否かを判定する。クルーズ操作機構(不図示)によってクルーズ状態(定速走行状態)が設定されると、制御部100は、クルーズ状態を示すフラグの値を変更する。制御部100は、設定されているフラグの値を参照することにより、クルーズ状態であるか否かを判定することができる。ステップS25の判定により、クルーズ状態である場合(S25−Yes)、制御部100は処理をステップ26に進める。一方、ステップS25の判定で、クルーズ状態でない場合(S25−No)、制御部100は、マニュアルシフトモード(固定変速モード)を継続する。
ステップS26において、制御部100は、ナビゲーション装置110から、地図情報と輸送機器(車両)1の位置情報とを組わせた情報を取得する。ここで、地図情報には、車両が走行する道路に関する情報、例えば、道路形状やコーナの半径などの情報が含まれている。更に、制御部100は、車速センサ140の検出結果を取得し、現在の車速で走行した場合、輸送機器(車両)1が現在位置から次コーナまで走行する到達時間を算出する。そして、制御部100は、算出した到達時間と、予め設定されている設定時間とを比較する。ここで設定時間とは、判定の基準となる時間であり、例えば、変速機構40における現在の変速段に応じて設定されている時間である。
図5は、制御部100の記憶部が記憶しているデータテーブルを例示する図であり、現在の変速段(変速比)と、次コーナに到達するまでの基準となる設定時間とが対応付けられている。例えば、変速機構40における現在の変速段が低速段である場合、設定時間はT3秒である。変速機構40における現在の変速段が中速段である場合、設定時間はT4秒(>T3秒)であり、現在の変速段が高速段である場合、設定時間はT5秒(>T4秒)である。低速段(高い変速比)の設定時間T3に比べて、高速段(低い変速比)の設定時間は長く設定されている。
低速段を維持しすぎると内燃機関(エンジン)10のエンジン回転数が高くなりNV性能が低減する場合が生じ得るため、変速機構40における現在の変速段が低速段である場合には、早目に自動変速モードに自動復帰するように、設定時間は中速段および高速段の設定時間に比べて短く設定されている。
一方、変速機構40における現在の変速段が高速段である場合には、エンジン回転数が低速段の場合に比べて高くならず、運転者に与える減速感(制動感)や加速感(駆動感)の変化を抑制することができるため、設定時間は低速段および中速段の設定時間に比べて長く設定されている。制御部100は、変速比設定部により設定された変速比と算出した到達時間とに対応する設定時間をデータテーブルから取得して、取得した設定時間と到達時間との比較に基づいて、変速比の固定解除のタイミングを制御する。
ステップS26において、制御部100は、算出した到達時間と、設定時間(図5)とを比較し、算出した到達時間が設定時間を超える場合(S26−Yes)、処理をステップS27に進める。ステップS27において、制御部100は、変速機構40の変速モードをマニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。
一方、ステップS26の判定で、算出した到達時間が設定時間(図5)以下となる場合(S26−No)、制御部100は、変速機構40における変速モードとして、マニュアルシフトモード(固定変速モード)の設定を維持し、本処理を終了する。ここで、図3のフローチャートは、例示的なものであり、少なくともステップS21およびS26の判定結果に基づいて、マニュアルシフトモード(固定変速モード)から自動変速モードへ自動復帰するようにしてもよい。
ステップS26の判定処理では、設定時間が、変速機構40における現在の変速段(低速段、中速段、高速段)に対応する構成を説明したが(図5)、本発明の実施形態の趣旨はこの例に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、データテーブルにおける設定時間は、次コーナの半径の大きさにより異なる値が設定されるようにしてもよい。現在の変速段(低速段、中速段、高速段)と、次コーナの半径R(R小、R中、R大)とに対応付けて、設定時間を定めてもよい。
図6は、制御部100の記憶部が記憶しているデータテーブルを例示する図であり、現在の変速段(低速段、中速段、高速段)と、次コーナの半径R(R小、R中、R大)とに、設定時間が対応付けられている。例えば、次コーナの半径が小さい場合(R小)であり、現在の変速段が低速段(高い変速比)である場合、設定時間はT3秒となる。また、次コーナの半径が小さい場合(R小)であり、現在の変速段が高速段(低い変速比)である場合、設定時間はT5秒となる。
同様に、次コーナの半径が大きい場合(R大)であり、現在の変速段が低速段(高い変速比)である場合、設定時間は、半径が小さい場合(R小)の設定時間(T3)よりも短い、T1秒となる。また、次コーナの半径が大きい場合(R大)であり、現在の変速段が高速段(低い変速比)である場合、設定時間は、半径が小さい場合(R小)の設定時間(T5)よりも短い、T3秒となる。
図6では、次コーナの半径が小さい場合(R小の場合)は、コーナ進入時の変速比を維持し続けたいため、設定時間を、半径が大きい場合(R大の場合)に比べて長く設定している。一方、次コーナの半径が大きい場合は、輸送機器(車両)1の走行速度が、半径(R小、R中)の場合に比べて高くなり得るため、変速比を維持する基準となる設定時間を短く設定している。
制御部100は、半径Rの情報をナビゲーション装置110から取得した地図情報に基づいて取得することが可能である。制御部100は、現在の変速段(低速段、中速段、高速段)の設定と、地図情報に基づいて取得したコーナの半径Rと、に基づいて、判定の基準となる設定時間を定めることができる(図6)。
尚、地図情報から半径の情報が直接的に取得できない場合、制御部100は、例えば、輸送機器(車両)1が走行している道路形状を構成する複数のノード点の位置の変化に基づいて、コーナの半径Rを算出することが可能である。地図情報から半径の情報を直接的に取得できない場合であっても、制御部100は、道路形状の情報に基づいてコーナの半径Rを間接的に取得することができる。
図4は、制御部100による変速比(変速段)の制御を例示的に示す図である。図4では、輸送機器(車両)1が道路401を走行している状態を例示しており、道路401には、第1のコーナC1と、第1のコーナC1の次に輸送機器(車両)1が走行する第2のコーナC2とが含まれている。道路401に対して、左側は、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御を例示している。道路401に対して、右側は、本実施形態における制御部100の制御に対応するものであり、地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御を例示している。
道路401の位置402において、運転者が手動要求操作部130(変速比設定部)を操作すると、変速機構40の変速モードは、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードからマニュアルシフトモード(固定変速モード)の5速段に遷移する。
位置402から第1のコーナC1を走行し、位置403まで走行する間、MPU協調無しの場合およびMPU協調有りの場合、いずれの場合も5速段の固定変速モードは維持される。
位置403を超えた地点で、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御では、クルーズ状態の判断等により、マニュアルシフトモード(固定変速モード)の5速段から前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードに自動復帰する。
一方、地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御では、次コーナまでの到達時間(図4では、第2のコーナC2までの到達時間)と、設定時間(例えば、図5)との比較により、到達時間が設定時間以下となる場合、制御部100は、変速機構40における変速モードとして、マニュアルシフトモード(固定変速モード)の設定(5速段の設定)を維持する。
ここで、制御部100は、地図情報に基づいて取得した第2のコーナC2の半径Rの情報を加味して基準となる設定時間(例えば、図6)を求めることも可能である。
位置404において、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御では、運転者が手動要求操作部130(変速比設定部)を再び操作すると、変速機構40の変速モードは、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードからマニュアルシフトモード(固定変速モード)の5速段に遷移する。一方、地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御では、5速段の設定が維持されているため、運転者による手動要求操作部130(変速比設定部)の操作は不要となる。
位置404から第2のコーナC2を走行し、位置405まで走行する間、MPU協調無しの場合およびMPU協調有りの場合、いずれの場合も5速段の固定変速モードは維持される。
位置405を超えた地点で、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御では、クルーズ状態の判断等により、マニュアルシフトモード(固定変速モード)の5速段から前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードに自動復帰する。
地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御では、制御部100は、次コーナまでの到達時間と、設定時間との比較の条件を更に加味した判定を行い、到達時間が設定時間を超える場合、マニュアルシフトモード(固定変速モード)の5速段から前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードに自動復帰する。
本実施形態によれば、輸送機器を自動で前進させる前進レンジが選択されているときに固定した変速比の設定を、地図情報に基づいて、解除するタイミングを制御することができる。
(第2実施形態)
本実施形態における輸送機器(車両)1の構成を説明する。基本的な構成は第1実施形態で説明した図1の構成と同様であるが、本実施形態では、手動要求操作部130の構成が異なる点で第1実施形態と相違する。制御部100は、輸送機器(車両)1の走行を制御するための手動要求操作部130が接続されている。本実施形態において、手動要求操作部130は、運転レンジ選択部120により、輸送機器を前進させる前進レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、輸送機器の減速度を固定した減速度に設定する減速度設定部(減速セレクター)として機能する。運転者により、手動要求操作部130(減速度設定部)が操作されると、操作入力は、制御部100に入力される。制御部100は、前進レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、手動要求操作部130(減速度設定部)からの操作入力が入力されると、輸送機器(車両)1の減速度を固定した減速度に設定する(減速度固定モード)。
減速度固定モードでは、制御部100は、手動要求操作部130(減速度設定部)の操作入力に基づいて、輸送機器(車両)1の減速度を手動設定することが可能である。
例えば、運転者により、手動要求操作部130(減速度設定部)が減速度ダウンの位置「+」側に操作されると、操作毎に手動要求操作部130の操作入力は制御部100に入力され、制御部100は、減速度を小さくする(減速の強さが弱くなる)ように内燃機関10を制御する。一方、運転者により、手動要求操作部130(減速度設定部)が減速度アップの位置「−」側に操作されると、操作毎に手動要求操作部130の操作入力は制御部100に入力され、制御部100は、減速度を大きくする(減速の強さが強くなる)ように内燃機関10を制御する。減速度は、例えば、減速の強さが最も弱い減速度レベル1(減1)、減速度レベル1よりも減速の強さが強い減速度レベル2(減2)、減速度レベル2よりも減速の強さが強い減速度レベル3(減3)、減速度レベル3よりも更に減速の強さが強い減速度レベル4(減4)等、複数の減速度のレベルが設定されており、手動要求操作部130(減速度設定部)の操作により、操作毎に減速度の設定を切替えることが可能である。
制御部100は、時間を計測するタイマー(不図示)を有しており、手動要求操作部130からの操作入力(第1の操作入力)が入力されると、タイマーが時間の計測を開始する。操作入力(第1の操作入力)が入力されてから所定時間の経過のタイミングで、手動要求操作部130(減速度設定部)からの操作入力(第2の操作入力)の有無を判定する。制御部100は、減速度設定部からの操作入力(第2の操作入力)が無い場合、クルーズ状態と判定して、減速度の固定を自動解除する。
制御部100は、運転レンジ選択部120により前進レンジ(Dレンジ)が選択されたときに、輸送機器を前進させる。そして、制御部100は、前進レンジ(Dレンジ)が選択されているときに、手動要求操作部130(減速度設定部)により減速度が固定された場合、固定された減速度で輸送機器を走行させる。そして、制御部100は、減速度が固定された後に、輸送機器が予め定められた走行状態になった場合、地図情報に基づいて減速度の固定解除のタイミングを制御する。
ここで、予め定められた走行状態とは、減速度の設定が、予め定められた設定時間以上、手動要求操作部130(減速度設定部)により行われていない状態である。制御部100は、手動要求操作部130(減速度設定部)により設定された減速度が小さいほど、設定時間を長く設定し、記憶部のデータテーブル(例えば、図10)に記憶することが可能である。制御部100は、ナビゲーション装置110(取得部)から取得した地図情報と輸送機器の位置情報との組み合せに基づいて、地図情報において輸送機器が現在位置から次コーナまで走行する到達時間を算出する。そして、制御部100は、設定された減速度に対応する設定時間と、到達時間との比較に基づいて、減速度の固定解除のタイミングを制御する。ここで、制御部100は、地図情報に基づいて次コーナの半径の情報を取得し、半径に対応する設定時間(例えば、図11)と到達時間との比較に基づいて、固定解除のタイミングを制御することが可能である。以下、具体的に制御部100の処理を説明する。
(自動変速モードから減速度固定モードへの遷移)
次に、図7を参照して、自動変速モードから減速度固定モードへのモード遷移の流れを説明する。図7は、自動変速モードから減速度固定モードに遷移する処理の流れを説明するフローチャートである。
まず、図7のステップS31において、制御部100は、運転レンジ選択部120により選択された運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)または制動用レンジ(Bレンジ)であるか否かを判定する。運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)または制動用レンジ(Bレンジ)でない場合(S31−No)、本処理は終了となる。
一方、ステップS31の判定において、運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)または制動用レンジ(Bレンジ)である場合(S31−Yes)、制御部100は処理をステップS32に進める。
ステップS32において、制御部100は、手動要求操作部130(減速度設定部)からの操作入力の有無を判定する。手動要求操作部130(減速度設定部)からの操作入力が無い場合(S32−No)、本処理は終了となる。一方、ステップS32の判定において、手動要求操作部130(減速度設定部)からの操作入力が有る場合(S32−Yes)、制御部100は処理をステップS33に進める。
ステップS33において、制御部100は、車輪ロック検出部160の検出結果に基づいて、車輪ロックの有無を判定する。車輪ロックが有る場合(S33−No)、本処理は終了となる。一方、ステップS33の判定において、車輪ロックが無い場合(S33−Yes)、制御部100は、処理をステップS34に進める。
そして、ステップS34において、制御部100は、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードから輸送機器(車両)1の減速度を固定した減速度固定モードに変更(遷移)する。ここで、図7のフローチャートは、例示的なものであり、少なくともステップS31およびS34の判定結果に基づいて、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードから減速度固定モードに変更(遷移)するようにしてもよい。ここで、図7のフローチャートは、例示的なものであり、少なくともステップS31およびS32の判定結果に基づいて、自動変速モードから減速度固定モードへ変更(遷移)するようにしてもよい。
(減速度固定モードの解除)
次に、図8を参照して、減速度固定モードの解除、すなわち、減速度固定モードから自動変速モードへの自動復帰の流れを説明する。図8は、減速度固定モードから自動変速モードへの自動復帰の流れを説明するフローチャートである。
まず、図8のステップS41において、制御部100は、運転レンジ選択部120により選択された運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)または制動用レンジ(Bレンジ)以外であるか否かを判定する。運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)または制動用レンジ(Bレンジ)以外である場合(S41−Yes)、ステップS47において、制御部100は、減速度固定モードを解除して、減速度固定モードから自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS41の判定で、運転レンジが前進レンジ(Dレンジ)または制動用レンジ(Bレンジ)である場合(S41−No)、制御部100は、処理をステップS42に進める。
ステップS42において、制御部100は、車輪ロック検出部160の検出結果に基づいて、車輪ロックの有無を判定する。車輪ロックが有る場合(S42−Yes)、ステップS47において、制御部100は、減速度固定モードを解除して、減速度固定モードから自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS42の判定で、車輪ロックが無い場合(S42−No)、制御部100は、処理をステップS43に進める。
ステップS43において、制御部100は、強制解除操作の入力の有無を判定する。手動要求操作部130(減速度設定部)から強制解除操作が入力されている場合(S43−Yes)、ステップS47において、制御部100は、減速度固定モードを解除して、減速度固定モードから自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS43の判定で、強制解除操作が入力されていない場合(S43−No)、制御部100は、処理をステップS44に進める。
ステップS44において、制御部100は、輸送機器(車両)1の駆動源である内燃機関10の出力調整等を行うことにより、輸送機器(車両)1の速度を一定に制御するクルーズ状態であるか否かを判定する。クルーズ操作機構によってクルーズ状態(定速走行状態)が設定されると、制御部100は、クルーズ状態を示すフラグの値を変更する。制御部100は、設定されているフラグの値を参照することにより、クルーズ状態であるか否かを判定することができる。ステップS44の判定により、クルーズ状態である場合(S44−Yes)、ステップS47において、制御部100は、減速度固定モードを解除して、減速度固定モードから自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS44の判定で、クルーズ状態でない場合(S44−No)、制御部100は、処理をステップS45に進める。
ステップS45において、制御部100は、ナビゲーション装置110から、地図情報と輸送機器(車両)1の位置情報とを組わせた情報を取得する。ここで、地図情報には、車両が走行する道路に関する情報、例えば、道路形状やコーナの半径などの情報が含まれている。更に、制御部100は、車速センサ140の検出結果を取得し、現在の車速で走行した場合、輸送機器(車両)1が現在位置から次コーナまで走行する到達時間を算出する。そして、制御部100は、算出した到達時間と、予め設定されている設定時間とを比較する。ここで設定時間とは、判定の基準となる時間であり、例えば、輸送機器(車両)1における現在の減速度に応じて設定されている時間である。
図10は、制御部100の記憶部が記憶しているデータテーブルを例示する図であり、現在の減速度と、次コーナに到達するまでの基準となる設定時間とが対応付けられている。例えば、輸送機器(車両)1における現在の減速度が大減速である場合、設定時間はT3秒である。輸送機器(車両)1における現在の減速度が中減速である場合、設定時間はT4秒(>T3秒)であり、輸送機器(車両)1における現在の減速度が小減速である場合、設定時間はT5秒(>T4秒)である。大減速度を維持しすぎると輸送機器(車両)1の車速が低下しすぎる可能が生じ得るため、輸送機器(車両)1における現在の減速度が大減速である場合には、早目に減速度固定モードを解除して、自動変速モードに自動復帰するように、設定時間は中減速および小減速の設定時間に比べて短く設定されている。
一方、輸送機器(車両)1における現在の減速度が小減速度である場合には、輸送機器(車両)1の車速が低下しすぎることは少なく、運転者に与える減速感(制動感)や加速感(駆動感)の変化を抑制することができるため、設定時間は大減速度および中減速度の設定時間に比べて長く設定されている。制御部100は、輸送機器(車両)1における現在の減速度に対応する設定時間を図10のテーブルから取得する。制御部100は、減速度設定部により設定された減速度と算出した到達時間とに対応する設定時間をデータテーブルから取得して、取得した設定時間と到達時間との比較に基づいて、減速度の固定解除のタイミングを制御する。
ステップS45において、制御部100は、算出した到達時間と、設定時間(図10)とを比較し、算出した到達時間が設定時間を超える場合(S45−Yes)、処理をステップS47に進める。ステップS47において、制御部100は、減速度固定モードを解除して、減速度固定モードから自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。
一方、ステップS45の判定で、算出した到達時間が設定時間(図10)以下となる場合(S45−No)、制御部100は、処理をステップS46に進める。
ステップS46において、制御部100は、車速センサ140の検出結果に基づいて、輸送機器(車両)1の速度がクリープ速度以下であるか否かを判定する。輸送機器(車両)1の速度がクリープ速度以下である場合(S46−Yes)、ステップS47において、制御部100は、減速度固定モードを解除して、減速度固定モードから自動変速モードへ自動復帰するように制御し、本処理を終了する。一方、ステップS46の判定で、輸送機器(車両)1の速度がクリープ速度を超える場合(S46−No)、制御部100は、輸送機器の減速度を固定した減速度に設定する減速度固定モードの設定を維持し、本処理を終了する。ここで、図8のフローチャートは、例示的なものであり、少なくともステップS41およびS45の判定結果に基づいて、減速度固定モードを解除して自動変速モードへ自動復帰するようにしてもよい。
ステップS45の判定処理では、設定時間が、輸送機器(車両)1における現在の減速度(大減速度、中減速度、小減速度)に対応する構成を説明したが(図10)、本発明の実施形態の趣旨はこの例に限定されるものではない。例えば、図11に示すように、データテーブルにおける設定時間は、次コーナの半径の大きさにより異なる値が設定されるようにしてもよい。現在の減速度(大減速度、中減速度、小減速度)と、次コーナの半径R(R小、R中、R大)とに対応付けて、設定時間を定めてもよい。
図11は、御部100の記憶部が記憶しているデータテーブルを例示する図であり、現在の減速度(大減速度、中減速度、小減速度)と、次コーナの半径R(R小、R中、R大)とに、設定時間が対応付けられている。例えば、次コーナの半径が小さい場合(R小)であり、現在の減速度が大減速度である場合、設定時間はT3秒となる。また、次コーナの半径が小さい場合(R小)であり、現在の減速度が小減速度である場合、設定時間はT5秒となる。
同様に、次コーナの半径が大きい場合(R大)であり、現在の減速度が大減速度である場合、設定時間は、半径が小さい場合(R小)の設定時間(T3)よりも短い、T1秒となる。また、次コーナの半径が大きい場合(R大)であり、現在の減速度が小減速度である場合、設定時間は、半径が小さい場合(R小)の設定時間(T5)よりも短い、T3秒となる。
図11では、次コーナの半径が小さい場合(R小の場合)は、コーナ進入時の減速度を維持し続けるため、設定時間を、半径が大きい場合(R大の場合)に比べて長く設定している。一方、次コーナの半径が大きい場合(R大の場合)は、輸送機器(車両)1の走行速度が、半径(R小、R中)の場合に比べて高くなり得るため、減速度を維持する基準となる設定時間を短く設定している。
制御部100は、半径Rの情報をナビゲーション装置110から取得した地図情報に基づいて取得することが可能である。制御部100は、現在の変速段(低速段、中速段、高速段)の設定と、地図情報に基づいて取得したコーナの半径Rと、に基づいて、判定の基準となる設定時間を定めることができる(図11)。尚、地図情報から半径の情報を直接的に取得できない場合であっても、制御部100は、第1実施形態と同様に、道路形状の情報に基づいてコーナの半径Rを間接的に取得することができる。
図9は、制御部100による減速度の制御を例示的に示す図である。図9では、輸送機器(車両)1が道路901を走行している状態を例示しており、道路901には、第1のコーナC1と、第1のコーナC1の次に輸送機器(車両)1が走行する第2のコーナC2とが含まれている。道路901に対して、左側は、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御を例示している。道路901に対して、右側は、本実施形態における制御部100の制御に対応するものであり、地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御を例示している。
手動要求操作部130(減速度設定部)の操作により、操作毎に減速度の設定を切替えることが可能である。道路901の位置902において、運転者が手動要求操作部130(減速度設定部)を操作すると、輸送機器(車両)1の減速度は、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードから減速度固定モード(例えば、減速度レベル3(減3))に遷移する。
位置902から第1のコーナC1を走行し、位置903まで走行する間、MPU協調無しの場合およびMPU協調有りの場合、いずれの場合も減速度は、減速度レベル3(減3)の状態に維持される。
位置903を超えた地点で、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御では、クルーズ状態の判断等により、減速度レベル3(減3)から前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードに自動復帰(自動解除)する。
一方、地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御では、次コーナまでの到達時間(図9では、第2のコーナC2までの到達時間)と、設定時間(例えば、図10)との比較により、到達時間が設定時間以下となる場合、制御部100は、輸送機器(車両)1における減速度を減速度レベル3(減3)に維持する。
ここで、制御部100は、地図情報に基づいて取得した第2のコーナC2の半径Rの情報を加味して基準となる設定時間(例えば、図11)を求めることも可能である。
位置904において、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御では、運転者が手動要求操作部130(減速度設定部)を再び操作すると、前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードから減速度固定モード(例えば、減速度レベル3(減3))に遷移する。一方、地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御では、減速度を固定した減速度レベル3(減3)の設定が維持されているため、運転者による手動要求操作部130(減速度設定部)の操作は不要となる。
位置904から第2のコーナC2を走行し、位置905まで走行する間、MPU協調無しの場合およびMPU協調有りの場合、いずれの場合も減速度レベル3(減3)の設定は維持される。
位置905を超えた地点で、地図情報を用いない場合(MPU協調無しの場合)の制御では、クルーズ状態の判断等により、減速度レベル3(減3)の設定から前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードに自動復帰する。
地図情報を用いた場合(MPU協調有りの場合)の制御では、制御部100は、次コーナまでの到達時間と、設定時間との比較の条件を更に加味した判定を行い、到達時間が設定時間を超える場合、減速度レベル3(減3)の固定減速度モードから前進レンジ(Dレンジ)の自動変速モードに自動復帰する。
本実施形態によれば、輸送機器を自動で前進させる前進レンジが選択されているときに固定した減速度の設定を、地図情報に基づいて、解除するタイミングを制御することができる。
(その他の実施形態)
以上、いくつかの好適な態様を例示したが、本発明はこれらの例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その一部が変更されてもよい。例えば、各実施形態の内容に、目的、用途等に応じて他の要素を組み合わせることも可能であるし、或る実施形態の内容に他の実施形態の内容の一部を組み合わせることも可能である。また、本明細書に記載された個々の用語は、本発明を説明する目的で用いられたものに過ぎず、本発明は、その用語の厳密な意味に限定されるものでないことは言うまでもなく、その均等物をも含みうる。
<実施形態のまとめ>
構成1.上記実施形態の輸送機器は、駆動源(例えば、10)と、変速機(例えば、40)と、前記駆動源および前記変速機の制御を行う制御装置(例えば、100)と、を備える輸送機器(例えば、1)であって、前記制御装置は、
前記輸送機器の運転レンジを選択する運転レンジ選択手段(例えば、120)と、
前記運転レンジ選択手段により、前記変速機の変速比を自動で変速して前記輸送機器を前進させる前進レンジ(例えば、Dレンジ)が選択されているときに、前記変速機の変速比を固定した変速比に設定する変速比設定手段(例えば、130)と、
前記輸送機器が走行する道路に関する地図情報を取得する取得手段(例えば、110)と、に接続され、
前記制御装置は、
前記運転レンジ選択手段により前記前進レンジが選択されたときに、前記変速機を自動で変速して前記輸送機器を前進させ、
前記前進レンジが選択されているときに、前記変速比設定手段により前記変速比が固定された場合、当該固定された変速比で前記輸送機器を走行させ、
前記変速比が固定された後に、前記輸送機器が予め定められた走行状態になった場合、前記地図情報に基づいて、前記変速比の固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
構成1の実施形態によれば、輸送機器を自動で前進させる前進レンジが選択されているときに固定した変速比の設定を、地図情報に基づいて、解除するタイミングを制御することができる。
また、構成1の実施形態によれば、地図情報に基づいて、変速比の設定を固定した状態から自動変速状態への復帰時間を変更するため、輸送機器が走行する道路の地形や周辺環境に合った変速制御を行うことが可能となり、ドライバビリティを、より良好にすることが可能になる。
構成2.上記実施形態の輸送機器は、駆動源(例えば、10)と、前記駆動源の制御を行う制御装置(例えば、100)と、を備える輸送機器(例えば、1)であって、前記制御装置は、
前記輸送機器の運転レンジを選択する運転レンジ選択手段(例えば、120)と、
前記運転レンジ選択手段により、前記輸送機器を自動で前進させる前進レンジが選択されているときに、前記輸送機器の減速度を固定した減速度に設定する減速度設定手段(例えば、130)と、
前記輸送機器が走行する道路に関する地図情報を取得する取得手段(例えば、110)と、に接続され、
前記制御装置は、
前記運転レンジ選択手段により前記前進レンジが選択されたときに、前記輸送機器を前進させ、
前記前進レンジが選択されているときに、前記減速度設定手段により前記減速度が固定された場合、当該固定された減速度で前記輸送機器を走行させ、
前記減速度が固定された後に、前記輸送機器が予め定められた走行状態になった場合、前記地図情報に基づいて前記減速度の固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
構成2の実施形態によれば、輸送機器を自動で前進させる前進レンジが選択されているときに固定した減速度の設定を、地図情報に基づいて、解除するタイミングを制御することができる。
また、構成2の実施形態によれば、地図情報に基づいて、減速度の設定を固定した状態から通常の走行状態への復帰時間を変更するため、輸送機器が走行する道路の地形や周辺環境に合った減速度制御を行うことが可能となり、ドライバビリティを、より良好にすることが可能になる。
構成3.上記実施形態の輸送機器であって、前記走行状態とは、前記変速比の設定が、予め定められた設定時間以上、前記変速比設定手段(130)により行われていない状態であり、
前記制御装置(100)は、
前記変速比設定手段(130)により設定された変速比が小さいほど、設定時間を長く設定し、
前記取得手段(110)から取得した前記地図情報と前記輸送機器の位置情報との組み合せに基づいて、前記地図情報において前記輸送機器が現在位置から次コーナまで走行する到達時間を算出し、
前記設定された変速比に対応する設定時間と、前記到達時間との比較に基づいて、前記変速比の固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
変速比によらずに変速比の固定が解除されてしまうと、より高速段で走行しているときほど、コーナごとに変速比の設定操作が必要となりドライバビリティが低下する場合が生じ得る。構成3の実施形態によれば、設定された変速比に対応する設定時間と、次コーナまで走行する到達時間との比較に基づいて固定解除のタイミングを制御することで、変速比の設定操作の煩雑さを低減することが可能であり、ドライバビリティを、より良好にすることが可能になる。
構成4.上記実施形態の輸送機器であって、前記走行状態とは、前記減速度の設定が、予め定められた設定時間以上、前記減速度設定手段(130)により行われていない状態であり、
前記制御装置(100)は、
前記減速度設定手段(130)により設定された減速度が小さいほど、設定時間を長く設定し、
前記取得手段(110)から取得した前記地図情報と前記輸送機器の位置情報との組み合せに基づいて、前記地図情報において前記輸送機器が現在位置から次コーナまで走行する到達時間を算出し、
前記設定された減速度に対応する設定時間と、前記到達時間との比較に基づいて、前記減速度の固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
コーナ間の距離で減速度の固定が解除されてしまうと、より高速段で走行しているときほど、コーナごとに減速度の設定操作が必要となりドライバビリティが低下する場合が生じ得る。構成4の実施形態によれば、設定された減速度に対応する設定時間と、次コーナまで走行する到達時間との比較に基づいて固定解除のタイミングを制御することで、減速度の設定操作の煩雑さを低減することが可能であり、ドライバビリティを、より良好にすることが可能になる。
構成5.上記実施形態の輸送機器であって、前記制御装置(100)は、
前記地図情報に基づいて前記次コーナの半径の情報を取得し、
前記半径に対応する設定時間と前記到達時間との比較に基づいて、前記固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
構成6.上記実施形態の輸送機器であって、前記制御装置(100)は、前記次コーナの半径が小さいほど前記設定時間を長く設定することを特徴とする。
次コーナの半径が小さいほど減速度を大きくして走行した方がドライバビリティはよいが、減速度(減速比)が大きい状態が長く続くと,運転者の快適性を損なう場合が生じ得る。構成5および構成6の実施形態によれば、次コーナの半径も考慮して、設定した変速比(変速段)や減速度(減速比)の固定解除のタイミングを制御することで、ドライバビリティを、より良好にすることが可能になる。
構成7.上記実施形態の輸送機器であって、前記制御装置(100)は、前記変速比と、前記次コーナに到達するまでの基準となる設定時間とを対応付けたデータテーブル(例えば、図5、図6)を記憶する記憶手段を備え、前記制御装置(100)は、
前記変速比設定手段(130)により設定された変速比と前記算出した到達時間とに対応する設定時間を前記データテーブルから取得して、前記取得した設定時間と前記到達時間との比較に基づいて、前記変速比の固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
構成8.上記実施形態の輸送機器であって、前記制御装置(100)は、前記減速度と、前記次コーナに到達するまでの基準となる設定時間とを対応付けたデータテーブル(例えば、図10、図11)を記憶する記憶手段を備え、前記制御装置(100)は、
前記減速度設定手段(130)により設定された減速度と前記算出した到達時間とに対応する設定時間を前記データテーブルから取得して、前記取得した設定時間と前記到達時間との比較に基づいて、前記減速度の固定解除のタイミングを制御することを特徴とする。
構成9.上記実施形態の輸送機器であって、前記データテーブルにおける前記設定時間は、前記次コーナの半径の大きさにより異なる値が設定されることを特徴とする。
構成7および9の実施形態によれば、データテーブルに記憶されているデータを参照することで、設定されている変速比に対応した設定時間を取得することが可能になり、取得した設定時間と、到達時間との比較に基づいて、設定されている変速比の固定解除のタイミングを制御することが可能になる。
また、構成8および9の実施形態によれば、データテーブルに記憶されているデータを参照することで、設定されている減速度に対応した設定時間を取得することが可能になり、取得した設定時間と、到達時間との比較に基づいて、設定されている減速度の固定解除のタイミングを制御することが可能になる。