JP6601057B2 - n型シリコン単結晶インゴットの製造方法、および、n型シリコンウェーハの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、面方位が(111)面のn型シリコンウェーハは、面内抵抗分布を均一にすることが困難であるいう問題がある。
そこで、結晶方位が<100>のシリコン単結晶インゴットの技術を、<111>のシリコン単結晶インゴットの引き上げに適用して面内抵抗ばらつきの改善を図ることが考えられる。
しかし、結晶方位が<111>のシリコン単結晶インゴットの引き上げ時に、結晶回転数を通常よりも高回転とすることで、面内抵抗ばらつきを一定の水準で改善することはできるが、半導体デバイスメーカからの要望水準を満たすレベルの面内抵抗ばらつきを達成することはできない。
半導体デバイスメーカからの要望水準を満たすためには、結晶回転数をより高回転にする必要があるが、製造装置の仕様を超えるため、製造装置の改造が必要となる。また、結晶回転数を通常よりもより高回転すると、シリコン単結晶インゴットの引き上げ中に結晶変形(結晶の真円性が失われ、花びら状に変形する)が生じてしまい、高品質のシリコン単結晶インゴットの製造ができないという問題も生じる。
特許文献1の方法では、<111>結晶軸に対して中心軸が1〜6°傾斜したシリコン単結晶インゴットを育成し、このシリコン単結晶インゴットからシリコンウェーハの切り出す際に、上記傾斜角度に対応する角度で切断することで、シリコンウェーハの面内抵抗ばらつきの改善を図っている。
この面内抵抗のばらつきを抑制できるメカニズムは、明らかでないが、以下のように推測できる。
(1)結晶方位が<111>のn型シリコン単結晶インゴットでは、単結晶(シリコンウェーハ)の中心でファセット成長が起こるため、ドーパントが多く取り込まれて抵抗率が下がる。
(2)チョクラルスキー法によるシリコン単結晶インゴットの引き上げでは、固液界面を下凸形状にすると、単結晶の中心の抵抗率が上がり、特に磁場をかけない場合に抵抗率が上がる傾向がある。
以上のことから、結晶方位が<111>のn型シリコン単結晶インゴットを引き上げるときに、固液界面を下凸形状にすることで、(1)、(2)に示す作用が相殺され、n型シリコン単結晶インゴットの面内抵抗のばらつきを抑制できると推測できる。
したがって、上記特性を有するn型シリコン単結晶インゴットを、その中心軸に対して直交する方向に切断することで、面内抵抗のばらつきが小さくかつ面方位が(111)面のn型シリコンウェーハを得ることができる上、特許文献1に記載の方法と比べて1本のn型シリコン単結晶インゴットから得られるn型シリコンウェーハの枚数を多くすることができる。
また、本発明によれば、上記特性を有するn型シリコン単結晶インゴットから切り出されたn型シリコンウェーハを、ツェナーダイオードの製造に使用することで、ツェナーダイオードの品質のばらつきを抑制できる。
なお、面内抵抗のばらつき評価には、RRG(Radial Resistivity Gradient)が主に用いられる。RRGとは、一枚のシリコンウェーハ面内の任意の位置で測定した抵抗率の中の最大値と最小値の差を、最小値で除した値を百分率で表したものである。すなわち、抵抗率の最大値をρmax、最小値をρminとすると、RRGは、下記式(1)で表される。
RRG=(ρmax−ρmin)/ρmin×100(%)…(1)
この発明によれば、固液界面中央の高さが上記範囲内を満たす下凸形状となるように引き上げ工程を制御することで、n型シリコン単結晶インゴットにおける径方向の面内抵抗のばらつきをより抑制できる。その結果、面内抵抗のばらつきがより小さいn型シリコンウェーハを得ることができる。
この発明によれば、引き上げ中のn型シリコン単結晶インゴットを水冷体により冷却するだけの簡単な方法で、n型シリコン単結晶インゴットの引き上げ方向の温度勾配が大きくなり、固液界面を下凸形状に制御することができる。
この発明によれば、少量のドーパント添加融液からn型シリコン単結晶インゴットを引き上げることで、固液界面が下凸形状を形成し易い対流を引き上げ中のドーパント添加融液に形成することができる。したがって、ドーパント添加融液の収容量を調整するだけの簡単な方法で、固液界面を下凸形状に制御することができる。
〔単結晶引き上げ装置の構成〕
まず、単結晶引き上げ装置の構成について説明する。
単結晶引き上げ装置1は、図1に示すように、単結晶引き上げ装置本体3と、図示しないドーピング装置と、図示しない制御部とを備える。
単結晶引き上げ装置本体3は、チャンバ30と、このチャンバ30内に配置された坩堝31と、この坩堝31に熱を放射して加熱する加熱部32と、引き上げ部としての引き上げケーブル33と、断熱筒34と、シールド36と備える。
加熱部32は、坩堝31の外側に配置されており、坩堝31を加熱して、坩堝31内のシリコンを融解する。
引き上げケーブル33は、例えば坩堝31上部に配置された図示しない引き上げ駆動部に、一端が接続されている。また、引き上げケーブル33は、他端に、種子結晶を保持するシードホルダ38、または、図示しないドーピング装置が適宜取り付けられる。引き上げケーブル33は、引き上げ駆動部の駆動により回転可能に構成されている。この引き上げケーブル33は、制御部による引き上げ駆動部の制御により、所定の引き上げ速度で上昇する。
断熱筒34は、坩堝31および加熱部32の周囲を取り囲むように配置されている。
シールド36は、加熱部32から上方に向かって放射される輻射熱を遮断する熱遮蔽用シールドである。このシールド36は、シリコン融液4の表面を覆うように設置されている。このシールド36は、下端側の開口部が上端側の開口部より小さくなった円錐形状となっている。
制御部は、作業者の設定入力に基づいて、チャンバ30内のガス流量、炉内圧力、引き上げケーブル33の引き上げ速度を適宜制御して、n型シリコン単結晶インゴット6製造時の制御をする。
次に、単結晶引き上げ装置1を用いて、面方位が(111)面のn型シリコンウェーハを製造する方法について説明する。
n型シリコンウェーハの製造工程は、チョクラルスキー法により結晶方位が<111>のn型シリコン単結晶インゴットを引き上げる引き上げ工程と、n型シリコン単結晶インゴットをその中心軸に対して直交する方向に切断することで、面方位が(111)面のn型シリコンウェーハを切り出すスライス工程とを備える。
以下、各工程について詳細に説明する。
先ず、単結晶引き上げ装置1のチャンバ30内にポリシリコン素材を入れた石英坩堝311を設置する。その後、制御部の制御により、ポリシリコン素材を加熱して融解させた後、チャンバ30内のガス流量および炉内圧力を所定の状態にして、シリコン融液4にn型ドーパントとしての赤リンを添加して、シリコン融液4に赤リンを含有させる。これにより、ドーパント添加融液41が生成される。このとき赤リンの添加量は、n型シリコン単結晶インゴット6から切り出したn型シリコンウェーハの抵抗率が、0.001Ω・cm以上3.5Ω・cm以下となるような量である。
次に、図示しないワイヤソーを用いて、n型シリコン単結晶インゴットから面方位が(111)面のn型シリコンウェーハを切り出す。
この切り出しの際、n型シリコン単結晶インゴットを、その中心軸に対して直交する方向に切断する。これにより、RRGが8%以下と小さくかつ面方位が(111)面のn型シリコンウェーハを得ることができる。また、この面方位が(111)面のn型シリコンウェーハは、中心を0%の位置、外縁を100%の位置とした場合に、0%の位置から20%の位置までの領域を第1領域、20%の位置から80%の位置までの領域を第2領域、60%の位置から100%の位置までの領域を第3領域として、第3領域の抵抗率の平均値が、第2領域の抵抗率の最大値より小さく、かつ、第1領域の抵抗率の最小値より大きい特性を有している。
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
上記実施形態では、引き上げ速度を遅くすることで固液界面が下凸形状となるように制御したが、これに限定されない。
例えば、引き上げ中のn型シリコン単結晶インゴット6を、図1に二点鎖線で示すように、これを囲繞するように配置された水冷体50により冷却することで、固液界面Sを下凸形状に制御してもよい。
また、いわゆるマルチ引き上げ法によってn型シリコン単結晶インゴット6を引き上げることで、固液界面Sを下凸形状となるように制御してもよい。具体的には、図1に二点鎖線で示すように、ドーパント添加融液41の液面41Aの位置における坩堝31の内径をA、液面41Aからの坩堝31の深さをBとして、B/Aが0.5以下となる量のドーパント添加融液41を収容し、このドーパント添加融液41からn型シリコン単結晶インゴット6を引き上げてもよい。その後、1本のn型シリコン単結晶インゴット6を製造する毎に坩堝31にシリコン多結晶原料とドーパントとを追加して、次のn型シリコン単結晶インゴット6を製造してもよい。
また、上記の方法を組み合わせることで、固液界面Sが下凸形状となるように制御してもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な手順、及び構造等は本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
まず、チョクラルスキー法により、肩部、直胴部、テール部を有するシリコン単結晶インゴットを製造した。
この製造に際し、図3に示すように、引き上げ速度を直胴部の位置に応じて制御した。この制御では、直胴部の0mm(直胴部上端)の位置から200mmの位置にかけては、引き上げ速度をほぼ直線的に遅くし、200mmの位置から直胴部下端の位置にかけては、引き上げ速度を一般的な速度よりも遅い0.4mm/minで一定にした。このように制御した理由は、引き上げ速度を変化させることで、ドーパント添加融液の対流が変化し、固液界面の形状を制御できると考えたからである。
なお、他の製造条件は以下の通りである。
ドーパント :赤リン
赤リン濃度 :インゴットから切り出したシリコンウェーハの抵抗率が
0.7mΩ・cm以上2.0mΩ・cm以下となる濃度
インゴット直径:150mm
直胴部の長さ :1000mm
磁場の印加 :なし
図4に示すように、固液界面の形状は、直胴部の400mmの位置では水平(高さ0mm)であり、400mmより上端側では上凸形状であり、400mmより下端側では下凸形状であった。
このことから、引き上げ速度を遅くすることで、固液界面の形状を下凸形状に制御できることが確認できた。
図4に示すように、固液界面が下凸形状の場合のRRGは、上凸形状の場合のRRGよりも小さいことがわかった。
また、図4に示す結果を用いて、固液界面の凸形状高さとRRGとの相関を調べたところ、図5に示す結果が得られた。この図5の結果から、固液界面の下凸形状の高さを、−4mm以下にすることで、RRGが8%以下になることがわかる。
以上のことから、直径が150mmのシリコン単結晶インゴットを製造する場合、固液界面の下凸形状の高さを、−14mm以上−4mm以下にすることで、RRGが8%以下になることが確認できた。
したがって、シリコン単結晶インゴットの直径がDmmの場合、固液界面の下凸形状の高さを、−0.0933D(−14mm/150mm)以上−0.02D(−4mm/150mm)以下にすることで、RRGが8%以下になると考えられる。
まず、表1に示す条件で、実験例1のシリコン単結晶インゴットを製造した。この製造に際し、直胴部の上端領域、中央領域、下端領域における固液界面の形状が表1に示す形状になるように、引き上げ速度を制御した。また、ドーパントとして赤リンを添加し、磁場の印加は行わなかった。
そして、上端領域、中央領域、下端領域における固液界面の中央の高さ、固液界面の形状、凸形状比率、RRGを上記実施例1と同様の方法で調べた。
その結果を表1に示す。
なお、表1中、「直胴部の上端領域」とは、直胴部の上端を0%、下端を100%の位置とした場合、5%以上30%未満の領域である。また、「中央領域」、「下端領域」とは、それぞれ30%以上60%未満の領域、60%以上90%未満の領域である。また、「凸形状比率」とは、固液界面中央の高さHを直胴部の直径Dで除した値である。
表1に示すように、直胴部上端の抵抗率が0.02Ω・cm(2mΩ・cm)以上4Ω・cm以下の範囲では、抵抗率が変わっても、凸形状比率とRRGとの相関は実施例1の結果と同様であった。また、この結果から、直胴部上端の抵抗率が2mΩ・cm未満、あるいは4Ω・cmを超える場合でも、同様の結果が得られると推測できる。
表1に示すように、直胴部の長さが変わっても、凸形状比率とRRGとの相関は実施例1の結果と同様であった。また、この結果から、直胴部の長さが600mm未満、あるいは1000mmを超える場合でも、同様の結果が得られると推測できる。
表1に示すように、直胴部の直径にかかわらず、凸形状比率とRRGとの相関は実施例1の結果と同様であった。また、この結果から、直胴部の直径が100mm未満、あるいは200mmを超える場合でも、同様の結果が得られると推測できる。
実施例1のRRG評価に用いたシリコンウェーハのうち、固液界面が上凸形状(凸形状高さが5mm)の部分から切り出したシリコンウェーハ(実験例10)、および、下凸形状(凸形状高さが−5mm)の部分から切り出したシリコンウェーハ(実験例11)の抵抗分布を図6に示す。以下において、シリコンウェーハの中心を0%の位置、外縁を100%の位置とした場合における、0%の位置から20%の位置までの領域を第1領域、20%の位置から80%の位置までの領域を第2領域、60%の位置から100%の位置までの領域を第3領域と称して説明する。
一方、下凸形状部分から得られた実験例11では、第3領域の平均値が、第2領域の最大値より小さく、かつ、第1領域の最小値より大きいという特徴的な抵抗分布を有していることがわかった。
以上のように、実験例11に示される特徴的な抵抗分布がRRGに良好な結果をもたらし、RRGを8%以下とすることができることがわかった。すなわち、結晶方位が<111>であること、直径Dに対する固液界面中央の高さHが一定以上の大きさを持つ下凸形状であることが複合的に作用して、特徴的な面内抵抗率分布を形成し、その結果、RRGを8%以下にすることができることがわかった。
Claims (5)
- チョクラルスキー法により、シリコン融液にドーパントを添加したドーパント添加融液から結晶方位が<111>のn型シリコン単結晶インゴットを引き上げる引き上げ工程を備え、
前記引き上げ工程は、引き上げ中の前記n型シリコン単結晶インゴットと前記ドーパント添加融液との固液界面が下凸形状となるように、かつ、
前記n型シリコン単結晶インゴットの径方向における面内抵抗のばらつきΔρが8%以下となるように、かつ、
前記n型シリコン単結晶インゴットの中心軸に対して直交する方向に切断することで切り出される面方位が(111)面のn型シリコンウェーハが、
中心を0%の位置、外縁を100%の位置とした場合に、
0%の位置から20%の位置までの領域を第1領域、
20%の位置から80%の位置までの領域を第2領域、
60%の位置から100%の位置までの領域を第3領域として、
前記第3領域の抵抗率の平均値が、前記第2領域の抵抗率の最大値より小さく、かつ、前記第1領域の抵抗率の最小値より大きくなるように、前記n型シリコン単結晶インゴットを引き上げることを特徴とするn型シリコン単結晶インゴットの製造方法。 - 請求項1に記載のn型シリコン単結晶インゴットの製造方法において、
前記引き上げ工程は、
前記n型シリコン単結晶インゴットの直胴部の直径をD、
前記固液界面の外縁の位置を0、
引き上げ方向を正方向として、
前記固液界面中央の高さHが−0.0933D以上−0.02D以下の下凸形状となるように、前記n型シリコン単結晶インゴットを引き上げることを特徴とするn型シリコン単結晶インゴットの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のn型シリコン単結晶インゴットの製造方法において、
前記引き上げ工程は、引き上げ中の前記n型シリコン単結晶インゴットを囲繞するように配置された水冷体により、前記n型シリコン単結晶インゴットを冷却することを特徴とするn型シリコン単結晶インゴットの製造方法。 - 請求項1に記載のn型シリコン単結晶インゴットの製造方法において、
前記引き上げ工程は、
前記ドーパント添加融液の液面位置における坩堝の内径をA、
前記液面からの前記坩堝の深さをBとして、
B/Aが0.5以下となる量の前記ドーパント添加融液を前記坩堝に収容し、前記ドーパント添加融液から前記n型シリコン単結晶インゴットを引き上げることを特徴とするn型シリコン単結晶インゴットの製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のn型シリコン単結晶インゴットの製造方法で製造されたn型シリコン単結晶インゴットを、その中心軸に対して直交する方向に切断することで、面方位が(111)面のn型シリコンウェーハを切り出すスライス工程を備えることを特徴とするn型シリコンウェーハの製造方法。
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