以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)1の正面図である。プリンタ1は、インクジェット式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット式」とは、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む手法によるインクジェット式のことをいう。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ1を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味する。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。右方Rは本発明における第一方向に相当し、左方Lは本発明における第二方向に相当する。主走査方向Yは、後述のインクヘッドユニット30の移動方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは、記録媒体8の搬送方向である。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で直角に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。また、高さ方向Zは上下方向である。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ1の設置態様を何ら限定するものではない。
図1に示すように、プリンタ1は、記録媒体8に対して印刷を行うものである。プリンタ1は、本体2と、脚4と、ガイドレール10と、インクタンク21と、キャップユニット40と、フラッシングユニット60と、制御装置100(図8参照)と、を備えている。本体2は、脚4に支持されている。脚4は、本体2の下面に設けられている。本体2の前方にはプラテン6が設けられている。プラテン6には、記録媒体8が載置される。
本実施形態では、記録媒体8はロール状の記録紙であり、いわゆる、ロール紙である。しかしながら、記録媒体8は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば、記録媒体8は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステル等の樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布等の布帛、その他の媒体であってもよい。本実施形態では、記録媒体8を形成する材料は特に限定されない。
図1に示すように、プリンタ1は、記録媒体8が載置されるプラテン6を備えている。プラテン6には、移動機構として、円筒状のグリットローラ16が設けられている。グリットローラ16は、その上面を露出させた状態でプラテン6に埋設されている。グリットローラ16は、フィードモータ(図示せず)によって駆動される。
図1に示すように、プラテン6の上方には、ガイドレール10が配置されている。ガイドレール10は、プラテン6と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール10の下方には、複数のピンチローラ18が略等間隔に配置されている。ピンチローラ18は、グリットローラ16に対向している。ピンチローラ18は、記録媒体8の厚さに応じて上下方向の位置を設定可能に構成されている。記録媒体8は、ピンチローラ18とグリットローラ16との対の間に挟まれる。フィードモータによってグリットローラ16を回転駆動させることで、グリットローラ16およびピンチローラ18は、記録媒体8を挟持しながら記録媒体8を副走査方向Xに搬送可能に構成されている。グリットローラ16、ピンチローラ18およびフィードモータは、記録媒体8と後述のインクヘッドユニット30とを相対的に副走査方向Xに移動させる移動機構の一例である。
プリンタ1は、インクヘッドユニット30を備えている。図2に示すように、インクヘッドユニット30は、インクヘッド32と、ケース34と、ヘッドプレート36ととを備えている。インクヘッドユニット30は、キャリッジ31(図1参照)に搭載されている。インクヘッドユニット30に備えられるインクヘッド32の数は、一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。近年、プリンタ1には高速で高画質の印刷を行うことが求められ、プリンタ1が備えるインクヘッド32の数が増えている。インクヘッド32は、インクヘッド32A、インクヘッド32B、インクヘッド32C、インクヘッド32D、インクヘッド32E、インクヘッド32F、インクヘッド32G、およびインクヘッド32Hの合計8つのインクヘッドが備えられている。ヘッドプレート36は、インクヘッド32A〜32Hを保持している。ヘッドプレート36は、キャリッジ31に固定されている。また、ヘッドプレート36の上方および複数のインクヘッド32A〜32Hは、ケース34に覆われている。ケース34は、キャリッジ31に設置されている。キャリッジ31の右方Rの端部には、後述のキャップユニット40と係合する係合部31Aが備えられている。キャリッジ31の後部背面には、前向きに凹んだ凹部31B(図1参照)が形成されている。
図1に示すように、ガイドレール10の上部には、主走査方向Yに延びるタイミングベルト12が支持されている。タイミングベルト12は、環状の無端ベルトである。タイミングベルト12は、ガイドレール10の左右の端部に設置された図示しないタイミングプーリーと従動プーリーとに回しかけられている。タイミングプーリーはスキャンモータ(図示せず)に接続されている。スキャンモータが回転駆動することにより、タイミングプーリーと従動プーリーとの周りをタイミングベルト12が周回する。ガイドレール10は、前方に突出した係合部14を有している。ガイドレール10の係合部14とキャリッジ31の凹部31Bとは、互いに摺動自在に係合している。タイミングベルト12が走行すると、キャリッジ31はガイドレール10に沿って主走査方向Yに移動する。このことにより、インクヘッドユニット30は、キャリッジ31を介してガイドレール10に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。また、インクヘッドユニット30は、キャリッジ31を介して、プラテン6よりも上方に配置される。キャリッジ31、ガイドレール10、タイミングベルト12、タイミングプーリー、従動プーリー、およびスキャンモータは、記録媒体8に対してインクヘッドユニット30を相対的に主走査方向Yに移動させる移動機構の一例である。
インクヘッド32A〜32Hは、前後方向の長さが左右方向の長さよりも長い直方体形状を有する。インクヘッド32A〜32Hは、それぞれが同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。図2に示すように、ヘッドプレート36には、各インクヘッド32を位置決めして固定するための貫通穴36aが設けられている。貫通穴36aは、各インクヘッド32の配列に応じて設けられる。複数のインクヘッド32A〜32Hは、ヘッドプレート36に配列して設置されている。本実施形態において、インクヘッド32A〜32Hは、短時間で高精細な印刷を実現するために、二つの同じ構成のインクヘッド32を前後方向にずらして配置し、副走査方向Xに2倍の印刷幅で印刷するようにしている。インクヘッド32A〜32Hのうち、インクヘッド32A、32B、インクヘッド32C、32D、インクヘッド32E、32F、インクヘッド32G、32Hは、それぞれ対を為している。インクヘッド32A、32C、32E、32Gは、主走査方向Yに直線状に配列するように、ヘッドプレート36に備えられている。インクヘッド32B、32D、32F、32Hは、主走査方向Yに直線状に配列するように、ヘッドプレート36に備えられている。インクヘッド32A、32C、32E、32Gは相対的に前方Fに、インクヘッド32B、32D、32F、32Hは相対的に後方Rrに、前後方向Xで配置がずらされている。インクヘッド32A〜32Hの構成は、基本的に同じである。また、一対のインクヘッド32A、32Bと、インクヘッド32C、32Dと、インクヘッド32E、32Fと、インクヘッド32G、32Hとの構成は、基本的に同じである。したがって、以下、これらを区別する必要がない場合は、一対のインクヘッド32A、32Bについての説明のみを行う。また、インクヘッド32A、32Bを区別する必要がない場合は、インクヘッド32についての説明のみを行う。
以下、一対のインクヘッド32A、32Bを例にして、インクヘッド32の構成とインク供給機構について簡単に説明する。図3は、ヘッドプレート36に固定されたインクヘッド32A、32Bの下面図である。インクヘッド32A、32Bの下面であるノズル面33Dには、多数のノズル33が設けられている。ノズル33は、記録媒体8にインクを吐出する。複数のノズル33が主走査方向Yに配列されて、第1ノズル列33aを形成している。複数のノズル33が主走査方向Yに配列されて、第2ノズル列33bを形成している。第1ノズル列33aおよび第2ノズル列33bは、それぞれ、1インチ当たり360個のノズル33を含む。第1ノズル列33aおよび第2ノズル列33bは、副走査方向Xで配列している。第1ノズル列33aおよび第2ノズル列33bは、ヘッドプレート36の貫通穴36aを介して外部に露出している。図2に示すように、ノズル面33Dは、ヘッドプレート36よりの下面よりも、下方に位置する。
図4は、プリンタ1のインク排出経路と、供給経路の一部とを模式的に説明する図である。図4中のインクヘッド32A、32Bよりも上側に、インクの供給経路を示している。図4中のキャップ42よりも下側に、インクの排出経路を示している。プリンタ1は、インク供給機構を有している。インク供給機構は、具体的には図示しないが、インクタンク21(図1参照)から、インクヘッド32に配列されたノズル33に向かってインクを供給するシステムである。以下の説明において、排出経路および供給経路におけるインクタンク21の側を上流側と称し、インクヘッド32の側を下流側と称する。プリンタ1全体におけるインクタンク21、および、インクヘッド32の数はそれぞれ「8」である。ただし、インクタンク21の数、および、インクヘッド32の数は特に限定されない。なお、インクヘッド32と同様に、各インクタンク21からインクヘッド32へ繋がる供給経路の構成はほぼ同じである。以下では、2つのインクタンク21、21から2つのインクヘッド32A、32Bに送液するインク供給経路の構成について簡単に説明する。
インク供給機構は、インクタンク21、21と、インクヘッド32A、32Bと、図示しない圧力制御弁と、供給ポンプと、図4に示すインク流路23aa、23ab、23ba、23bbと、ダンパ26aa、26ab、26ba、26bbと、センサ27aa、27ab、27ba、27bbとを備えている。
インクタンク21、21は、インクを貯留する部材である。本実施形態では、インクタンク21、21の数は、インクヘッド32A、32Bの数と同じである。本実施形態のインクタンク21、21は、それぞれが2つのインクヘッド32A、32Bに接続されている。インクヘッド32A、32Bには、それぞれ一対の第1ノズル列33aおよび第2ノズル列33bが設けられている。第1のインクタンク21に貯留されたインクは、2つのインクヘッド32A、32Bに設けられた第1ノズル列33aにそれぞれ供給される。第2のインクタンク21に貯留されたインクは、2つのインクヘッド32A、32Bに設けられた第2ノズル列33bにそれぞれ供給される。複数のインクタンク21には、通常、それぞれ異なる色のインクが貯留されている。インクタンク21aにはイエローインクが貯留され、インクタンク21bにはブラックインクが貯留されている。ただし、複数のインクタンク21のうち一部は、同じ色のインクであってもよい。各インクタンク21に貯留されているインクの色の種類は特に限定されない。例えば、各インクタンク21に貯留されているインクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、および、ライトブラックインクなどのプロセスカラーインクと、ホワイトインク、メタリックインク、および、クリアインクなどの特色インクのうちの何れかのインクである。
インク流路23aa、23ab、23ba、23bbとは、第1および第2のインクタンク21、21に貯留されたインクをインクヘッド32A、32Bに供給するための流路である。より具体的には、インクをインクヘッド32A、32Bのノズル33に供給する流路である。これらのインク流路の種類および材質は特に限定されず、例えば、可撓性を有するシリコンチューブである。インク流路23aa、23abは、第1のインクタンク21に接続されている。そしてインク流路23aaは、インクヘッド32Aの第1ノズル列33aに接続され、インク流路23abは、インクヘッド32Bの第1ノズル列33aに接続されている。インク流路23ba、23bbは、第2のインクタンク21に接続されている。インク流路23baは、インクヘッド32Aの第2ノズル列33bに接続され、インク流路23bbは、インクヘッド32Bの第2ノズル列33bに接続される。このように、インクヘッド32A、32Bには、インクタンク21、21から異なる2種のインクが供給される。なお、インク流路23aa、23abは、上流側で一つの流路にまとめられていてもよい。インク流路23ba、23bbは、上流側で一つの流路にまとめられていてもよい。換言すると、インク流路23aa、23abおよびインク流路23ba、23bbは、インクタンク21、21にそれぞれ接続された一つの流路が分岐されることで構成されていてもよい。
インク流路23aa、23ab、23ba、23bbの途中には、供給ポンプが設けられている。供給ポンプは、インク流路内のインク等の流体を、上流側から下流側へと送る装置である。供給ポンプは、動作時には、インクタンク21、21側からインクヘッド32A、32B側に向かってインクを送液する。供給ポンプの種類は特に限定されず、供給ポンプの種類は、例えば、チューブポンプである。チューブポンプは、内部に内部チューブとローラーとを備え、ローラーで内部チューブを押し潰しながらローラーを遊星回転させることによって、ローラーの進行方向にインクを送液する。なお、供給ポンプは、ローラーを逆方向に遊星回転させることにより、インクを下流側から上流側に向けて送ることもできる。
インクタンク21、21と供給ポンプの間のインク流路には、圧力制御弁が設けられている。圧力制御弁は、インクを吐出していないときに、インクヘッド32A、32Bのノズル33内を負圧(外圧(典型的には大気圧)よりも低い圧力)に保つ部材である。インクヘッド32A、32B内が負圧に保たれることによって、インクヘッド32A、32B内のインクがノズルから外部に垂れ落ちることを抑制できる。圧力制御弁によって、インクヘッド32A、32Bにおけるノズル33内のインクは凡そ−1kPa程度に維持されている。圧力制御弁は、インクが流れる流路と、流路を開閉する弁機構とを備えている。弁機構は、弁機構よりも下流側の液圧に応じて開閉するようになっている。弁機構には、弁機構よりも上流側のインクの液圧と、弁機構よりも下流側のインクの液圧と、弁機構を閉塞しようとする機械的な力と、弁機構を開放しようとする機械的な力が加えられており、プリンタ不使用時には、これらの力が釣り合っている。この釣り合った状態においては、弁機構は流路を封止している。このときのインクの液圧が、約−1kPaに維持された、静止時のインクの液圧である。弁機構を閉塞または開放しようとする機械的な力は、例えば、スプリングの復元力である。吸引ポンプ46が稼働し、弁機構より下流側からインクが吸い出されると、下流側のインクの液圧が減少して釣り合いが崩れ、弁機構は開放方向に動く。弁機構が開放されると、流路が開放され、下流方向に向かってインクが供給される。上記のような機構により、圧力制御弁は、不使用時にはインクを負圧に保ちながら、使用時にはインクをインクヘッド32A、32B方向に送り出す。
また、図4に示すように、インク流路23aa、23ab、23ba、23bbの途中には、それぞれダンパ26aa、26ab、26ba、26bbが設けられている。ダンパ26aa、26ab、26ba、26bbは、インクヘッド32A、32Bのすぐ上流に設けられている。ダンパ26aa、26ab、26ba、26bbは、インクヘッド32に送るインクを貯留することでインクの圧力変動を緩和し、インクヘッド32の吐出動作を安定させる部材である。本実施形態に係るダンパ26aa、26ab、26ba、26bbは、それぞれ、インクを貯留する貯留室と、貯留室に貯留されているインクの圧力を検出するセンサ27aa、27ab、27ba、27bbとを備えている。インクの圧力は、ノズル33内の圧力にほぼ等しい。センサ27aa、27ab、27ba、27bbは、ノズル33内の圧力を検知する手段の一例である。印刷時、ダンパ26aa、26ab、26ba、26bbは、貯留室に貯留されるインクの圧力を一定範囲に保つことで、インクの圧力変動を緩和する。貯留室に貯留されるインクの圧力は、センサ27aa、27ab、27ba、27bbが検知している。センサ27aa、27ab、27ba、27bbは、例えば、位置検出用のフォトセンサである。貯留室は、壁面の一つが伸縮する膜になっており、貯留室に貯留されているインクの圧力に応じて、膜が凹凸する。センサ27aa、27ab、27ba、27bbは、膜の凹凸位置によって、貯留室内のインクの圧力を検出する。センサ27aa、27ab、27ba、27bbは、膜が一定の位置を超えて膨張すると、制御装置100に上限信号を送信する。また、センサ27aa、27ab、27ba、27bbは、膜が一定の位置以下に収縮すると、制御装置100に下限信号を送信する。制御装置100は、上限信号および下限信号を受信すると、供給ポンプ25a、25bを順方向または逆方向に回転させてインクを供給したり、インクの供給を停止したりする。もちろん、上記ダンパの圧力検出機構は一実施形態によるものであって、貯留室内のインクの圧力を検出する手段は、上記機構に限定されない。
図1に示すように、プリンタ1は、キャップユニット40を備えている。キャップユニット40は、印刷を行わないときに、インクヘッド32A〜32Hをインクの乾燥やゴミの付着から守る機構である。また、キャップユニット40は、インクヘッド32A〜32Hの吸引クリーニングを行う機構でもある。キャップユニット40は、プラテン6の右方に位置する側方部材15に配置されている。キャップユニット40は、インクヘッドユニット30より下方に配置されている。図2および図4に示すように、キャップユニット40は、移動テーブル41と、複数のキャップ42と、流路44と、キャップバルブ45と、吸引ポンプ46と、廃液ボトル49と、ガイド機構50と、を備えている。
図5に示すように、キャップ42は、キャップ42A、キャップ42B、キャップ42C、キャップ42D、キャップ42E、キャップ42F、キャップ42G、キャップ42Hの合計8つである。キャップ42A〜42Hの構成は、基本的に同じである。したがって、以下、キャップ42A〜42Hを区別する必要がない場合は、キャップ42についての説明のみを行う。また、流路44、キャップバルブ45および吸引ポンプ46は、各キャップ42A〜42Hと廃液ボトル49との間にそれぞれ一組ずつ設けられている。各キャップ42A〜42Hと廃液ボトル49との間の構成は概ね同一である。したがって、説明を簡略化するために、各キャップ42と廃液ボトル49との間に設けられる流路44、キャップバルブ45および吸引ポンプ46の構成要素についても、同一構成要素は同じ符号を用いて示す。
キャップ42A〜42Hは、インクヘッド32A〜32Hのノズル面33Dをそれぞれ覆うことができるように、インクヘッド32A〜32Hに対して着脱可能に形成されている。なお、「ノズル面33Dを覆う」とは、ノズル面33Dの全体が覆われる場合に限られず、少なくとも第1ノズル列33aおよび第2ノズル列33bの全体が覆われる場合を含む。キャップ42A〜42Hは、移動テーブル41に備えられている。キャップ42A〜42Hは、それぞれ移動テーブル41に形成された開口41aに取り付けられている。移動テーブル41は一枚の鋼板から構成されており、開口41aは打ち抜き加工によって形成されている。移動テーブル41の開口41aは、キャップ42A〜42Hの位置が、ヘッドプレート36に設置されたインクヘッド32A〜32Hの配列に対応するように、所定の位置に形成されている。すなわち、具体的には、8つのキャップ42A〜42Hのうちの4つ42A、42C、42E、42Gは、主走査方向Yに等間隔で配列し、移動テーブル41の相対的に前方Fに設置されている。8つのキャップ42のうちの残りの4つ42B、42D、42F、42Hは、主走査方向Yに等間隔で配列し、移動テーブル41の相対的に後方Rrに設置されている。相対的に前方Fに配置されたキャップ42A、42C、42E、42Gと、相対的に後方Rrに配置されたキャップ42B、42D、42F、42Hとは、隣り合うキャップ同士で一対の組を為している。
移動テーブル41の右方Rの端部には、図12に示すように、テーブル壁部41bが備えられている。テーブル壁部41bは、移動テーブル41を構成する鋼板の右端を上方Uに曲げ加工(板金加工)することによって形成されている(図5参照)。移動テーブル41の右方Rであって、後方Rrの端部には、係止部41cが備えられている。係止部41cは、主走査方向Yに移動するキャリッジ31の係合部31A(図2参照)と係合する部材である。係止部41cは、ここに開示される係合部材の一例である。係止部41cの下端は、移動テーブル41を構成する鋼板の上面に接合されている。また、移動テーブル41の前方Fの側面には、右方Rと左方Lとにガイドピン48a、48bがそれぞれ設けられている。移動テーブル41の後方Rrの側面には、右方Rと左方Lとにガイドピン48c、48dがそれぞれ設けられている。このガイドピン48a、48b、48c、48dによって、移動テーブル41はガイド機構50に支持される。
図6に示すように、キャップ42は、本体ケース43aと、リップ部43dと、吸収体43hとを備えている。キャップ42は、ノズル面33D(図3参照)を覆うようにインクヘッド32に着脱可能に形成されている。キャップ42がインクヘッド32に取り付けられたときに、キャップ42とノズル面33Dとの間に密閉空間Sが形成される。
本体ケース43aは、底部と側壁とを有し、上方に開口を有する箱状を呈している。本体ケース43aは、底部と側壁とによって形成される凹部を有している。この凹部には、吸収体43hが収容されている。本体ケース43aの側壁は、ノズル面33D(図3参照)に対応した形状(例えば、平面視で長円形)であり、ノズル面33Dを嵌入できるように構成されている。本体ケース43aの底部には、上方に向けて突出する突出孔43bと、貫通孔43cとが設けられている。突出孔43bおよび貫通孔43cの下端は、流路44(44a、44b)との接続が可能なように、底部から下方Dに突出部が形成されている。突出孔43bおよび貫通孔43cの下端は、移動テーブル41の下方Dに突出している。突出孔43bには、後述の開閉流路44aが接続されている。突出孔43bの上端は、吸収体43hの上面と同じ高さか、吸収体43hの上面よりも上方に位置している。突出孔43bの上端は、リップ部43dの上端よりも下方に位置する。突出孔43bの上端は、キャップ42がインクヘッド32に装着されたときに、吸収体43hの上面とノズル面33Dとの間の密閉空間Sに位置する。貫通孔43cの下端には、後述の吸引流路44bが接続されている。突出孔43bおよび貫通孔43cは、それぞれ、第1流路および第2流路としての機能を有する。
リップ部43dは、本体ケース43aの開口の内部に収容されている。リップ部43dは、底部と側壁とを有し、上方に向けて開口している。リップ部43dの側壁の上端は、上方に向かうほど厚み(幅寸法)が小さくなるように形成されている。リップ部43dは、弾性変形可能な材料から形成されている。リップ部43dは、例えばゴムによって形成されている。リップ部43dは、ノズル面33Dに弾性的に接触可能に本体ケース43aに設けられている。リップ部43dがノズル面33Dに接触することにより、密閉空間Sが形成される。リップ部43dの底部には、貫通孔43g、43fが形成されている。貫通孔43gには、突出孔43bが貫通している。貫通孔43fは、貫通孔43cおよび吸引流路44bと連通している。リップ部43dの底部の上面には、下方Dに凹む溝部43eが形成されている。溝部43eは、貫通孔43fに連通している。溝部43eは、リップ部43dの底部の全面に亘るように形成されている。
吸収体43hは、リップ部43dの開口の内部(凹部)に収容されている。吸収体43hは、インクを吸収可能でかつ通気性を備える多孔質の材料により構成されている。多孔質の材料としては、例えば、スポンジ、織布、不織布等である。吸収体43hは、貫通孔43iを備えている。貫通孔43iには、突出孔43bが貫通している。吸収体43hの上面は、リップ部43dの上端よりも下方に位置する。吸収体43hの上面は、突出孔43bの上端よりも下方に位置する。
図4に示すように、流路44は、開閉流路44aと、吸引流路44bとを含む。開閉流路44aおよび吸引流路44bの上流側は、上述のように、キャップ42の突出孔43bと貫通孔43cとにそれぞれ接続されている。開閉流路44aは、キャップ42と後述のキャップバルブ45とを接続する第1流路の一例である。開閉流路44aの下流側の端部は、廃液ボトル49に挿入されている。吸引流路44bは、キャップ42と後述の吸引ポンプ46とを接続する第2流路の一例である。流路44は、可撓性を備えるチューブ(例えばシリコンチューブ)により構成されている。
キャップバルブ45は、開閉流路44aの途中または端部に設けられている。キャップバルブ45は、開閉流路44aを介してキャップ42に接続されている。キャップバルブ45は、開閉流路44aを開閉する。具体的には、キャップバルブ45は、開閉流路44aの内部と外部とを連通(開放)する開状態と、開閉流路44aの内部と外部とを遮断(閉鎖)する閉状態とを切り替える部材である。キャップバルブ45は、開状態と閉状態とを動的に切り替える限りにおいて、その構成や操作機構は特に制限されない。キャップバルブ45は、例えば、バルブの開閉の切り替えを、別供給の水(蒸気)、空気、電気、磁気、油圧等の少なくとも1つを利用して行う、いわゆるコントロールバルブであってもよいし、機械的操作によって行うものであってもよい。本実施形態におけるキャップバルブ45は、例えば、機械的操作によってもたらされる少ない作動力での開閉制御が可能なピストンバルブである。ピストンバルブは、ピストン弁体を供えている。なお、ここでいう「機械的操作」とは、バルブの切替動力源から、ピストン弁体に対して、機械的な接点を介して切り替えのための作動力が伝達される構成をいう。この作動力は、典型的には、ピストン弁体の三次元での位置を変化させる。したがって、「機械的操作」は、例えば、ピストン弁体に対して切替動力源から機械的な接点を介さずに電気的あるいは磁気的な力が作用して切り替えが行われる構成(例えば、電磁弁)とは区別することができる。また、本実施形態におけるキャップバルブ45は、図5に示すように、2つのキャップバルブ45が一体的に形成された複合キャップバルブ47である。キャップユニット40は、4つの複合キャップバルブ47を備えている。
図10は複合キャップバルブ47の正面図であり、図11Aおよび図11Bは複合キャップバルブ47の断面図である。複合キャップバルブ47は、一つの複合バルブケース47a内に、図中にAとBとで示したように、2つのキャップバルブ45の構成要素が収容されている。複合キャップバルブ47は、複合バルブケース47aと、ピストン弁体45f、47fと、バネ体45j、47jとを備えている。複合バルブケース47aは、導入口45c、47cと排出口45d、47dと開口45e、47eとを備えている。複合バルブケース47aは、内部に導入口45c、47cと排出口45d、47dとを繋ぐ内部流路45b、47bを有している。導入口45c、47cは、複合バルブケース47aの下面から上下方向の下方Dに向かって突出している。排出口45d、47dは、複合バルブケース47aの背面から後方に向かって突出している。複合バルブケース47aの正面には、上下方向に長い開口45e、47eが備えられている。
ピストン弁体45f、47fは、その大部分が複合バルブケース47aに収容されている。ピストン弁体45f、47fは、複合バルブケース47a内を上下方向Zに移動することができる。ピストン弁体45f、47fが最も下方Dの閉鎖位置に存在するときに、ピストン弁体45f、47fは内部流路45b、47bを閉鎖する(図11A参照)。ピストン弁体45f、47fの閉鎖位置は、ピストン弁体45f、47fの下端が、内部流路45b、47bを横切って遮断する位置である。ピストン弁体45f、47fの下端には、閉鎖位置において内部流路45b、47bの緊密な封鎖を実現するためのパッキン45g、47gが備えられている。ピストン弁体45f、47fが閉鎖位置よりも上方Uに位置するときに、ピストン弁体45f、47fは内部流路45b、47bを開放する(図11B参照)。ピストン弁体45f、47fが閉鎖位置よりも上方Uに位置するとき、ピストン弁体45f、47fの上端は、複合バルブケース47aの外部に突出する。バネ体45j、47jは、複合バルブケース47aの内部に収容されている。バネ体45j、47jは、一端を複合バルブケース47aの内壁に固定された圧縮コイルバネである。ピストン弁体45f、47fは、バネ体45j、47jのコイル内に配置されている。ピストン弁体45f、47fは、重力とバネ体45j、47jとによって、通常時には閉鎖位置に位置するように付勢されている。バネ体45j、47jは、ピストン弁体45f、47fを閉鎖位置に付勢するとともに、ピストン弁体45f、47fの上下方向の移動をガイドする。
ピストン弁体45f、47fは、主走査方向Yに突出する棒部材45h、47hを備えている。棒部材45h、47は、ここに開示される切替部材の一例である。棒部材45h、47hは一端がピストン弁体45f、47fに固定されている。棒部材45h、47hの一端はピストン弁体45f、47fの下端近傍に固定されている。棒部材45h、47hは開口45e、47eを通じて、他端が複合バルブケース47aの外部に延出されている。棒部材45h、47hの他端は、先端に向かうにつれて下面が上面に近づくように傾斜された傾斜面45i、47iを備えている。棒部材45h、47hの他端は、下面が斜め右上方向けて傾斜する傾斜面45i、47iによって、先細り形状に形成されている。ピストン弁体45f、47fはバネ体45j、47jによって常時閉鎖位置に配置されており、ピストン弁体45f、47fは下方Dで開口45e、47eに挿通されている。棒部材45h、47hを上方Uに押し上げることで、棒部材45h、47hは開口45e、47e内を上方Uに移動する。これに伴い、ピストン弁体45f、47fもバネ体45j、47jの弾性力に抗って上方Uに移動する。これによって、複合キャップバルブ47が開放される。棒部材45hと棒部材47hとは、互いに独立して、あるいは連動して、押し上げ可能に構成されている。したがって、2つのキャップバルブ45も独立して、あるいは、連動して、開閉が可能に構成されている。
なお、複合バルブケース47aは、内部流路45b、ピストン弁体45f、棒部材45hおよびバネ体45jが備えられた第1キャップバルブエリアAと、内部流路47b、ピストン弁体47f、棒部材47hおよびバネ体47jが備えられた第2キャップバルブエリアBとに区分することができる。第1キャップバルブエリアAは一つのキャップバルブ45として機能している。第2キャップバルブエリアBは一つのキャップバルブ45として機能している。複合バルブケース47aは、第1キャップバルブエリアAと第2キャップバルブエリアBとの間に、上下方向に貫通する貫通穴47kを備えている。
図5に示すように、4つの複合キャップバルブ47は、テーブル壁部41bの右方Rの面に配置されている。キャップバルブ45は、その正面が右方Rに向くように設置されている。棒部材45h、47hは、右方Rに向かって突出するように配置されている。テーブル壁部41bには、キャップバルブ45の取付け位置に貫通孔が設けられ、この貫通孔にキャップバルブ45の排出口45d、47dが挿入されている(図7A〜7C参照)。また、図12にも示すように、4つの複合キャップバルブ47のうち、2つの複合キャップバルブ47は、テーブル壁部41bの相対的に上方Uに前後方向Xに並んで配置されている。4つの複合キャップバルブ47のうち、残りの2つの複合キャップバルブ47は、テーブル壁部41bの相対的に下方Dに前後方向Xに並んで配置されている。上方Uに配置された2つの複合キャップバルブ47と、下方Dに配置された2つの複合キャップバルブ47とでは、前後方向Xの配置が、第1キャップバルブエリアAまたは第2キャップバルブエリアBの前後方向Xの寸法の半分だけずれている。このことにより、上方Uに配置された2つの複合キャップバルブ47の導入口45c、47cは、下方Dに配置された2つの複合キャップバルブ47の貫通穴47kにそれぞれ挿入されている。また、具体的には図示しないが、導入口45c、47cに接続された開閉流路44aも、貫通穴47kにそれぞれ挿入される。導入口45c、47cの平面視における寸法(例えば外径)は、貫通穴47kの平面視における寸法(例えば内径)よりも小さい。貫通穴47kの平面視における寸法は、導入口45c、47cの平面視における寸法よりも大きい。このことにより、4つの複合キャップバルブ47は、いわゆる千鳥格子状に配置されている。なお、本願でいう「千鳥格子状」とは、例えば複合キャップバルブ47が互い違いに配置された様子を表し、ギンガムチェック状、ジグザグ配列、スタッガ配列などの意味を包含する用語である。
一方、キャップ42に接続された開閉流路44aは、移動テーブル41の下方Dから、テーブル壁部41bの右方Rに送られている。一対の開閉流路44aの両端は、一対のキャップ42と複合キャップバルブ47の排出口45d、47dとに接続されている。図2に示すように、キャップバルブ45の下流側接続部と開閉流路44aとは、キャップバルブ45の下方で接続されている。複合キャップバルブ47の排出口45d、47dは、例えば、開閉流路44aを介して上記の隣り合う一対のキャップ42に接続される。
吸引ポンプ46は、上流側に導入部、下流側に排出部を備えている。吸引ポンプ46は、上流側に接続された吸引流路44bの内部の流体(例えば、空気等の気体やインク等の液体)を、導入部から吸引し、排出部に排出する。これにより、上流の導入部側に接続された吸引流路44bの内部を減圧する。したがって、キャップ42がインクヘッド32に装着された状態で吸引ポンプ46が駆動することで、吸引ポンプ46は、密閉空間Sを減圧するとともに、密閉空間S内の流体を吸引する。吸引ポンプ46は、吸引した流体を下流側の吸引流路44bに送る。吸引ポンプ46の構成は特に制限されず、例えば、シリンダ型の吸引ポンプである。吸引ポンプ46は、吸引装置の一例である。廃液ボトル49は、吸引ポンプ46が下流側に排出したインク等の液体を収容するための容器である。廃液ボトル49については、例えば、側方部材15の下方に着脱可能に設置されていてもよい。
図2に示すように、ガイド機構50は、移動テーブル41の移動経路を規制する機構である。ガイド機構50は、ベース部51と、右側壁部52と、ガイド壁部53と、バネ部55と、を備えている。
ベース部51は、ガイド機構50全体の土台となる部材である。右側壁部52は、ベース部51の右方Rの端部において上下方向Zに立設されている。右側壁部52の上端は、左下方に向けて傾斜下降する押上部52Aを備えている。換言すると、押上部52Aは、右斜め上方に傾斜する傾斜面を備えている。押上部52Aは、上述のキャップバルブ45の棒部材45h、47hを押し上げるための部材である。押上部52Aは、ここに開示される開弁部材の一例である。押上部52Aは、一枚の鋼材からなる右側壁部52の上端を曲げ加工(板金加工)することにより形成されている。
本実施形態において、押上部52Aは、キャップバルブ45の棒部材45h、47hに対向するように、右側壁部52の左方Lの面に配置されている。4つの複合キャップバルブ47が千鳥格子状に配置されていることにより、棒部材45h、47hも千鳥格子状に配置されている。このことから、本実施形態の押上部52Aも、鳥格子状に配置されている。具体的には、右側壁部52は、第1右側壁部52dと第2右側壁部52uとを備えている。第1右側壁部52dは、4つの複合キャップバルブ47のうち、相対的に下方Dに配置された2つの複合キャップバルブ47の閉状態にある棒部材45h、47hに相当する高さよりも下方Dで、右側壁部52を構成している。第2右側壁部52uは、4つの複合キャップバルブ47のうち、相対的に下方Dに配置された2つの複合キャップバルブ47の閉状態にある棒部材45h、47hに相当する高さよりも上方Uで、右側壁部52を構成している。
第1右側壁部52dは、ベース部51に接続された一枚の鋼材からなる。第1右側壁部52dの上端には、鋼材の端部を複合キャップバルブ47の側(左方L)に向けて曲げ加工(板金加工)することにより、第1押上部52A1が形成されている。第1押上部52A1は、第1右側壁部52dの棒部材45h、47hに対向する部位に設けられているが、棒部材45h、47hに対向しない部位には設けられていない。なお、棒部材45h、47hに「対向する部位」と「対向しない部位」とは、主走査方向Yで棒部材45h、47hに厳密に対向しているか否かによって規定されるものに限られず、例えばその判断基準はある程度緩和され得る。例えば、第1右側壁部52dの棒部材45h、47hに対向する高さであって、かつ、前後方向Xに沿う位置について棒部材45h、47hからの距離を測定したとき、最も近い距離となる地点Q1と、最も遠い距離となる地点Q2との中間地点Qmを境に、地点Q1側の領域を「対向する部位」、地点Q2側の領域を「対向しない部位」とするなどしてもよい。これにより、第1押上部52A1は、平面視で凸部と凹部とが交互に繰り返す鋸歯形状の凸部を構成する。
また、第1押上部52A1の上方Uには、一枚の鋼材からなる第2右側壁部52uが接続されている。第1右側壁部52dと第2右側壁部52uとは、概ね面一となるように構成されている。第2右側壁部52uの上端には、鋼材の端部を複合キャップバルブ47の側(左方L)に向けて曲げ加工(板金加工)することにより、第2押上部52A2が形成されている。第2押上部52A2は、第2押上部52A2の棒部材45h、47hに対向する部位に設けられているが、棒部材45h、47hに対向しない部位には設けられていない。なお、棒部材45h、47hに「対向する部位」と「対向しない部位」とは、第1押上部52A1と同様に決定することができる。これにより、第2押上部52A2は、平面視で凸部と凹部とが交互に繰り返す鋸歯形状の凸部を構成する。
上述のように、棒部材45h、47hも千鳥格子状に配置されている。このことから、第1押上部52A1および第2押上部52A2も、格子状に配置される。例えば、第1押上部52A1および第2押上部52A2は、平面視で、第2押上部52A2の間に、第1押上部52A1が配置されている。また、平面視で、右側壁部52から突出する第2押上部52A2の間に、相対的に下方Dに配置された2つの複合キャップバルブ47の棒部材45h、47hが配置される。
ガイド壁部53は、主走査方向Yに沿ってベース部51に立設されている。ガイド壁部53は、ベース部51の前方Fに配置されたガイド壁部53aと、ガイド壁部53bと、ベース部51の後方Rrに配置された、ガイド壁部53cと、ガイド壁部53dと、を備えている。ガイド壁部53aおよびガイド壁部53cと、ガイド壁部53bおよびガイド壁部53dは、ベース部51を挟んで対向するように配置されている。これら4つのガイド壁部53の形状は同じである。これら4つのガイド壁部53には、ガイド穴54が設けられている。ガイド穴54は、図7A〜7Cに示すように、左下方の位置P1から右上方の位置P2に向けて斜めに上昇し、位置P2からさらに右方Rの位置P3に至る長穴である。ガイド穴54の位置P1の高さはH1である。位置P2および位置P3の高さは、H1よりもΔh分だけ上方UのH2である。ガイド穴54の位置P1と位置P2との左右方向Yの距離は、Δx1である。位置P2と位置P3との左右方向Yの距離は、Δx2である。ガイド壁部53a、53b、53c、53dのガイド穴54には、キャップユニット40の移動テーブル41に備えられたガイドピン48a、48b、48c、48dがそれぞれ挿入されている。これにより、移動テーブル41は、ガイド壁部53によって支持される。移動テーブル41は、ガイドピン48a、48b、48c、48dが全てガイド穴54に挿入され得る範囲において、ガイド壁部53a、53dとガイド壁部53b、53cとの間を移動することができる。また、移動テーブル41は、ガイド穴54によって移動経路が規制される。
バネ部55は、ベース部51の上面と移動テーブル41の下面とに接続されている。バネ部55とベース部51との接続位置に対し、バネ部55と移動テーブル41との接続位置は、右斜め上方である。バネ部55としては、例えば引張コイルばねを使用することができる。バネ部55は、所定のテンションを内包した状態でベース部51と移動テーブル41とに接続されている。バネ部55は、常時、移動テーブル41を左下方に向けて付勢する。
ガイド機構50は、インクヘッドユニット30の移動に連動して、移動テーブル41を移動させる。換言すると、ガイド機構50は、インクヘッド32の移動に連動して、キャップユニット40を移動させる。ガイド機構50は、キャップユニット40の移動経路を、後述する退避位置とキャップ装着位置とバルブ開放位置との間で規制する。
図7Aに示すように、バネ部55の張力によって、移動テーブル41は、通常、ガイドピン48a、48b、48c、48dがガイド穴54の位置P1に位置するように、ガイド機構50に支持される。この位置が、キャップユニット40の「退避位置」である。キャップユニット40は、例えばプリンタ1の印刷時に、退避位置に配置される。なお、このとき、インクヘッド32A〜32Hの下端よりも、キャップ42A〜42Hの上端のほうが、下方Dに位置する。移動テーブル41の係止部41cの左方Lの側面の位置は、位置X1となるように調整されている。
プリンタ1が印刷を停止すると、インクヘッドユニット30は側方部材15に収容される。キャリッジ31は、インクヘッドユニット30を搭載して、主走査方向Yを右方Rに向けて移動する。キャリッジ31の位置を、進行方向の先端である係合部31A(図2参照)の右方Rの側面の位置で表す。するとキャリッジ31は、主走査方向Yの位置X1において、退避位置にある移動テーブル41の係止部41cに当接する。位置X1とは、キャップユニット40の「退避位置」に対応する、キャリッジ31の位置である。キャリッジ31が位置X1よりもさらに右方Rに移動すると、キャリッジ31の係合部31Aが移動テーブル41の係止部41cをさらに右方に押す。これにより、移動テーブル41は、バネ部55の張力に反し、キャリッジ31と一体となって右方Rに移動する。
キャリッジ31は、インクヘッド32A〜32Hにキャップ42A〜42Hを装着するため、インクヘッドユニット30を「キャップ装着位置」にまで移動させる。「キャップ装着位置」に対応するキャリッジ31の位置は、図7Bに示すように位置X2である。キャリッジ31の係合部31Aは、移動テーブル41の係止部41cをΔx1だけ右方Rに移動させる。これにより、移動テーブル41の左方Lの側面も位置X2に位置する。また、移動テーブル41の右方Rへの移動経路は、ガイド穴54によって規制される。移動テーブル41が右方RへΔx1だけ移動することによって、ガイドピン48a、48b、48c、48dはガイド穴54の位置P1から位置P2へと移動される。これにより、移動テーブル41は、右方RへのΔx1の移動に伴い、上方UにΔhだけ移動する。このような移動テーブル41の移動によって、移動テーブル41に固定されたキャップ42A〜42Hがインクヘッド32A〜32Hに装着される。すなわち、キャリッジ31が位置X1から位置X2に移動することにより、キャップユニット40は「退避位置」から「キャップ装着位置」に移動される。その結果、インクヘッド32A〜32Hにキャップ42A〜42Hが装着される。
キャリッジ31は、図7Cに示すように、「キャップ装着位置」よりもさらに右方Rの「バルブ開放位置」に移動することができる。「バルブ開放位置」は、「キャップ装着位置」よりもΔx2だけ右方Rに設定されている。このとき、キャリッジ31の係合部31Aは、キャップ装着位置にある移動テーブル41の係止部41cをさらに右方に押す。これにより、移動テーブル41は、バネ部55の張力に反して右方RにΔx2だけ移動する。ガイドピン48a、48b、48c、48dはガイド穴54の位置P2から位置P3へと移動される。位置P2とP3の高さは同じであることから、インクヘッド32A〜32Hとキャップ42A〜42Hとは装着状態を維持したまま右方Rに移動される。移動テーブル41の左方Lの側面は、X3に位置する。このような「バルブ開放位置」への移動では、移動テーブル41のテーブル壁部41bの右方Rに備えられた複合キャップバルブ47の棒部材45h、47hは、まず、ガイド機構50の右側壁部52の押上部52に当接する。より具体的には、4つの複合キャップバルブ47のうち、相対的に下方Dに配置された2つの複合キャップバルブ47の棒部材45h、47hは、第1押上部52A1に当接する。また、4つの複合キャップバルブ47のうち、相対的に上方Uに配置された2つの複合キャップバルブ47の棒部材45h、47hは、第2押上部52A2に当接する。棒部材45h、47hは、端部の下面に、右斜め上方に延びる斜面を備えている。第1押上部52Aおよび第2押上部52A2は、端部の上面に、右斜め上方に延びる斜面を備えている。棒部材45h、47hと第1押上部52Aおよび第2押上部52A2とが当接することで、左右方向の移動が上下方向の移動に変換される、直交スライド機構が構築されている。このことにより、移動テーブル41が第1方向Y1にさらに移動することで、棒部材45h、47hは第1押上部52Aおよび第2押上部52A2に沿って斜面を上昇し、上方Uに押し上げられる。その結果、複合キャップバルブ47に備えられる2つのキャップバルブ45は、閉状態から開状態に切り替えられる。
換言すると、キャリッジ31が「バルブ開放位置」に移動することによって、インクヘッド32A〜32Hにキャップ42A〜42Hを装着した状態で、キャップバルブ45を開状態に切り替えることができる。4つの複合バルブ47に備えられた棒部材45h、47hは、全て同時に第1押上部52Aおよび第2押上部52A2と当接し、上方に押し上げられる。その結果、8つのキャップバルブ45は同時に開状態に切り替えられる。
なお、キャリッジ31が「バルブ開放位置」あるいは「キャップ装着位置」よりも左方Lに移動すると、キャリッジ31の係合部31Aは移動テーブル41の係止部41cの押圧を緩和ないしは解消する。移動テーブル41は、バネ部55によって左下方に向けて付勢されている。このことから、移動テーブル41は「バルブ開放位置」あるいは「キャップ装着位置」から、「退避位置」へと移動される。
制御装置100は、プリンタ1の各部の動作を包括的に制御する。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等の情報を送受信するインターフェイス(I/F)と、印刷制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記印刷制御プログラム等の各種データを格納する記憶部と、を備えている。また、制御装置100は、例えばFPGA(field-programmable gate array)等の書き換え可能なプログラマブルロジックデバイスによって構成されていてもよい。FPGAは、例えば、集積回路によって構成されるCPUコアや、乗算器、RAM、および関連する周辺回路等を含むことができる。
図8は、制御装置100のブロック図である。制御装置100は、第1制御部101と、第2制御部102と、第3制御部103とを有している。また、付加的に、制御装置100は、第4制御部104と、第5制御部105と、第6制御部106と、印刷制御部107を有している。第1制御部101〜第6制御部106は、キャップユニット40によるインクヘッド32の吸引クリーニングを制御する。第1制御部101〜第6制御部106は、例えば、図9に示したフローに沿って、プリンタ1にインクヘッド32の吸引クリーニングを実行させる。印刷制御部107は、プリンタ1の基本的な印刷動作を制御する。これらの制御装置100の各部は、ハードウェア(例えば、回路)により構成されていてもよく、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより機能的に実現されてもよい。
印刷制御部107は、インクヘッド32、フィードモータ、スキャンモータに電気的に接続されている。印刷制御部107は、記憶部に記憶された印刷制御プログラムと印刷データとに基づき、スキャンモータによってキャリッジ31を主走査方向Yに所定の速度で移動させる。そして、印刷データに基づく所定の位置において、キャリッジ31に搭載されたインクヘッド32からインクを吐出させる。このことを、フィードモータによって、記録媒体8を副走査方向Xに移動させることと交互に、繰り返し行う。これによって、印刷データに沿った印刷を実施することができる。
第1制御部101は、図9のS1に示されるキャッピングを実施する。第1制御部101は、インクヘッド32を移動させるスキャンモータに電気的に接続されている。第1制御部101は、プリンタ1が印刷を停止するとき、スキャンモータを作動させて、キャリッジ31を位置X1から位置X2まで右方Rに移動させる。これにより、退避位置に位置していたキャップユニット40は、ガイド機構50の規制の下、キャリッジ31によってキャップ装着位置に移動される。その結果、キャップ42をインクヘッド32に装着させることができる。また、キャップ42とインクヘッド32との間には、密閉空間Sが用意される。
第2制御部102は、キャップバルブ45の開状態への切替えを実施する。第2制御部102は、スキャンモータに電気的に接続されている。第2制御部102は、スキャンモータを作動させることによって、キャリッジ31を位置X2から位置X3まで右方Rに移動させる。これにより、キャップ装着位置に位置していたキャップユニット40とインクヘッドユニット30とは、キャップ42をインクヘッド32に装着した状態のまま、バルブ開放位置に移動される。その結果、キャップバルブ45の棒部材45h、47hがガイド機構50の押上部52Aに当接して上方Uに押し上げられ、キャップバルブ45が開状態に切り替えられる。複数の複合キャップバルブ47は、キャリッジ31の移動によって全て同時に開状態に切り替えられる。これにより、インクヘッド32にキャップ42を装着したまま、インクヘッド32とキャップ42との間の密閉空間Sを、大気圧の外部に開放することができる。
第3制御部103は、キャップ42のインクヘッド32からの脱着を実施する。第3制御部103は、スキャンモータに電気的に接続されている。第3制御部103は、スキャンモータを作動させることによって、キャリッジ31を位置X3から位置X2まで、さらには、位置X2から位置X1まで、左方Lに移動させる。このことにより、インクヘッドユニット30を、位置X3から位置X2まで、さらには、位置X2から位置X1まで移動させることができる。ここで、移動テーブル41は、バネ部55によって左下方に付勢されている。このことにより、キャリッジ31の位置X3から位置X2への移動に伴い、キャップユニット40は、キャップ42をインクヘッド32に装着した状態のまま、バルブ開放位置からキャップ装着位置に移動される。同時に、キャップバルブ45の棒部材45h、47hは、ガイド機構50の押上部52Aから左方Lに離間して重力により下方Dに降下する。その結果、キャップバルブ45は開状態から閉状態に切り替えられる。また、キャリッジ31の位置X2から位置X1への移動に伴い、キャップ装着位置に位置していたキャップユニット40は、退避位置に対応する位置X1にまで移動される。また、キャップ装着位置に位置していたインクヘッドユニット30は、ガイド機構50の規制の下、退避位置にまで移動される。その結果、キャップユニット40とインクヘッドユニット30とが左方Lに移動しながら、上下方向で離反し、インクヘッド32からキャップ42が脱着される。第3制御部103は、スキャンモータを作動させることによって、キャリッジ31を位置X1よりも左方L(例えばホームポジション)に移動させるようにしてもよい。
第4制御部104は、S2に示される本吸引を実施する。第4制御部104は、吸引ポンプ46に電気的に接続されている。第4制御部104は、第1制御部がインクヘッド32にキャップ42を装着させた後、吸引ポンプ46を駆動させる。これにより、密閉空間S内を減圧する。第4制御部104は、例えば、密閉空間Sが−20〜35kPa(例えば−30kPa)程度になるように減圧する。このときキャップ42の容量にも依るが、第4制御部104は、例えば、吸引ポンプ46を流速3cc/sec以上10cc/sec以下(例えば、7.3cc/min)程度で駆動させる。減圧時間は、例えば、10〜20秒(例えば、13.7秒)である。このことにより、インクヘッド32のノズル33内に残留しているインクを、キャップ42および流路44に排出させることができる。また、インクヘッド32からキャップ42に排出されたインクを、廃液ボトル49に回収することができる。第4制御部104は、吸引ポンプ46の作動後、例えば上記減圧時間が経過したときに、吸引ポンプ46を停止することができる。第4制御部104が吸引ポンプ46を停止させることにより、吸引クリーニングにおける本吸引は終了する。
第5制御部105は、S3に示される等圧調整を実施する。第5制御部105は、第4制御部104が吸引ポンプ46を停止させたのち、その減圧状態を維持する。第5制御部105は、インクヘッド32にキャップ42を装着させた状態で、吸引ポンプ46の停止状態を所定の時間だけ維持する。第5制御部105による減圧状態の維持時間は、例えば、3〜10秒間(例えば、約5秒間)である。これにより、インクヘッド32およびその上流側の流路全体の圧と、密閉空間Sの減圧状態とが均等化される。
第6制御部106は、S4に示される空吸引を実施する。第6制御部106は、吸引ポンプ46に電気的に接続されている。第6制御部106は、第2制御部102がキャップバルブ45を開状態に切り替えたのち、吸引ポンプ46を駆動させる。第6制御部106は、インクヘッド32にキャップ42を装着したまま、大気圧に開放されたインクヘッド32とキャップ42との間の空間を空吸引する。この空吸引において、第6制御部106が吸引ポンプ46を駆動させることで、吸引ポンプ46の上流側の流路44が減圧される。このときキャップ42の容量にも依るが、第4制御部104は、例えば、本吸引よりも高い移送量で上流側の流体を吸引し、下流側(すなわち外部大気)に排出する。第6制御部106は、例えば、吸引ポンプ46を流速40cc/sec以上80cc/sec以下(例えば、65.6cc/min)程度で駆動させる。減圧時間は、例えば、1〜10秒(例えば、5秒)である。第6制御部106は、第2制御部によるキャリッジ31の移動とともに、吸引ポンプ46による吸引とを、同時に行ってもよいし、キャリッジ31をバルブ開放位置に移動させたのちに吸引ポンプ46を駆動させるようにしてもよい。このことにより、開閉流路44a、密閉空間S、キャップ42、および、吸引流路44bに残留しているインクを、吸引ポンプ46よりも下流側に排出させることができる。また、排出されたインクを廃液ボトル49に回収することができる。第6制御部106は、吸引ポンプ46を停止させることで、空吸引を終了することができる。
上記構成によると、第1制御部101および第2制御部102によって、キャリッジ31を位置X1から位置X3に移動させることで、インクヘッド32にキャップ42を装着させたまま、インクヘッド32とキャップ42との間の密閉空間Sを、外部大気圧の開放することができる。また、第3制御部103によって、キャリッジ31を位置X3から位置X2に移動させることで、開放されたインクヘッド32とキャップ42との間の空間を、再び密閉空間Sとすることができる。つまり、キャップバルブ45の開状態と閉状態との切り替えに、スキャンモータを使用することができ、新たな部材を設ける必要がない。これにより、簡単な構成によってインクヘッドにキャップを密着させたままキャップ内を簡便に大気圧に開放することが可能とされる。
また、上記構成によると、第3制御部103によって、キャリッジ31を位置X2から位置X1に移動させることで、インクヘッド32からキャップ42を脱着することができる。つまり、スキャンモータの駆動という簡単な操作によって、インクヘッド32へのキャップ42の着脱と、キャップバルブ45の開閉とを、簡便かつスムーズに行うことができる。これにより、例えば、インクヘッド32の吸引クリーニングを簡便かつスムーズに実施することができる。
さらに、上記構成によると、第1制御部101〜第6制御部106の協働によって、図8に示す吸引クリーニングを好適に実施することができる。すなわち、下記表1に示すように、第1制御部101がスキャンモータを駆動することでキャッピング工程S1を実施したのち、第4制御部104が吸引ポンプ46を駆動することで本吸引工程S2を実施し、その後、第5制御部105が所定の時間、減圧状態を維持して等圧調整工程S3を実施したのち、第6制御部106が吸引ポンプ46を駆動することで空本吸引工程S4を実施し、そして、第3制御部103がスキャンモータを駆動することでデキャッピング工程S5を実施する。これにより、ここに開示される吸引クリーニングを実施することができる。
なお従来の吸引クリーニングでは、クリーニング終了後のインクヘッドにエアが侵入したり、インクが逆流したりする場合があった。インクヘッドにエアが侵入すると、例えば、インクヘッドに備えたダンパによるエア除去の処理が必要となる。また、インクが逆流すると、インクヘッド内のインク室を洗浄する洗浄処理が必要となる。なお、特許文献1の段落0057には、密閉空間を大気圧に開放する際に、吸引ポンプによる吸引を継続して行うことを開示している。つまり本吸引の開始から空吸引の終了まで、吸引ポンプを駆動させるようにしている。この操作によると、インクヘッドへのエアの侵入やインクの逆流は抑制されるものの、インクヘッドに過度な負圧を印加する虞があった。インクヘッドへの過度な負圧は、ノズルごとのメニスカス条件にバラつきをもたらし得るために好ましくない。本発明者らは、クリーニング後のインクヘッドにエアが侵入したり、インクが逆流したりする事象は、以下の点にあると知見した。すなわち、インクヘッドは、通常、ノズルからの液ダレを防止するために、流路内に例えば−1kPa程度の弱い負圧が印加されている。また、インクヘッドの吐出孔であるノズルは、その断面積が非常に狭い。そしてインクヘッド内のインク流路は、断面積に比べて十分に長い。このような状態で本吸引時に密閉空間を減圧すると、インクヘッドの流路全体の圧が下がるまでに比較的長い時間を要する。したがって、従来のクリーニングでは、本吸引後に、密閉空間の圧とインクヘッド内の圧(特に上流側)とに差が生じている場合があった。そして空吸引のために密閉空間の圧を外気圧に開放すると、密閉空間側からインクヘッドへと吸引する力が働き、エアやインク等の流体の逆流が発生していた。例えば本吸引によって排出されたインクがキャップに多量に収容されていると、この排インクがインクヘッドの表面に付着したまま密閉空間が外気圧に開放される事態が生じうる。その結果、インクヘッドの表面に付着していた排インクがインクヘッドに逆流してしまう。
これに対し、上記構成によると、インクヘッド32の吸引クリーニングにおいて、本吸引の後に、等圧調整を実施している。インクヘッド32が本吸引によって減圧されるとき、インクヘッド32とキャップ42の間の密閉空間Sは相対的に広いために減圧され易く、インクヘッド32のノズル33内の空間は十分に断面が狭く長いために減圧され難い。その結果、本吸引後のノズル33と密閉空間Sとの間には、気圧差が発生しやすい。例えば、密閉空間Sは−30kPa程度に減圧されるのに対し、インクヘッド32のノズル33内の空間は−10kPa程度にしか減圧されないことがあり得る。そしてノズル33の密閉空間Sとの境界付近では、ノズル33内の圧力をさらに減圧しようとする力が作用する。ここで、等圧調整を行わずに空吸引のための密閉空間Sの減圧を開放すると、ノズル33内を減圧しようとする力によって密閉空間Sの流体(空気またはインク)がノズル33内に導入されてしまう。例えば図3に示したように、インクヘッド32A、32Bに、異なる色のインクを吐出する第1ノズル列33aおよび第2ノズル列33bが設けられていると、本吸引時に異なる2色のインクがノズル面33Dに付着していて、かかる異なる2色のインクが単独で、あるいは、混色して、ノズル33内に導入され、ノズル33を汚染する可能性があった。これに対し、ここに開示されるインクジェットプリンタは、本吸引の終了後、空吸引が始まるまでに、系を閉状態に保ったまま待機する停止状態を含む。この等圧調整を実施することで、ノズル33と密閉空間Sとの間に生じた気圧差を緩和する。その結果、空吸引時にノズル33内に空気やインク等の流体が導入されるのを抑制することができる。
上記実施形態において、キャップ42は、上面から下方に向けて凹む凹部を有する箱状であった。第2流路のキャップ42側の端部は、キャップ42の下面から凹部に連通するように接続されている。第1流路のキャップ42側の端部は、凹部内であって、第2流路のキャップ42側の端部よりも上方に配置されている。換言すると、大気に開放された第1流路のキャップ42側の端部が、キャップ42内に残留するインクの吸引を行う第2流路の端部よりも上方に配置される。このことにより、インクヘッド32にキャップ42を装着した状態であるものの、第1流路からキャップ42の上方に大気を導入するため、第2流路によって好適にキャップ42に溜まったインクの吸引を効率的に行うことができる。
上記実施形態において、キャップ42は、凹部の底面(すなわちリップ部43dの底面)から下方に向けて凹む溝部43eを備えていた。また第2流路のキャップ42側の端部は、溝部43eにおいて凹部に連通するように接続されていた。このことにより、キャップ42に溜まったインクを溝部43eに沿ってより一層効率的に吸引することができる。また、溝部43eがリップ部43dの底面に広く設けられていることによって、空吸引を、貫通孔43cにおいて局所的に吸引するのではなく、溝部43eを通じてリップ部43dの底面の全体から均等に吸引することができる。その結果、キャップ42へのインク残留を低減することができる。
上記実施形態において、キャップバルブ45は、バルブ内流路と、バルブ内流路を閉鎖する弁体としてのピストン弁体と、弁体を閉状態に付勢する弾性体としてのバネと、を備えていた。また、第2制御部102の指示に基づき、弁体が弾性体の弾性力に抗って移動されることにより、開状態に切り替えられるように構成されていた。かかる構成によると、弁体を閉状態に戻すために特別な動力源を備える必要がない。これにより、簡便に、キャップバルブ45の開閉を実現することができる。このことは、インクヘッド32を多数(例えば4個以上、好ましくは6個以上、例えば8個以上)備えるプリンタ1において特に好適な構成である。
上記実施形態において、プリンタ1は、主走査方向Yに移動自在に設けられたキャリッジ31を備え、インクヘッド32はキャリッジ31に設けられていた。また、移動装置としてのガイド機構50は、キャップ42が設けられた移動テーブル41と、移動テーブル41に備えられ、移動テーブル41から主走査方向Yに交わる方向に突出するガイドピン48a、48b、48c、48dと、移動テーブル41を間に配置させ、主走査方向Yに沿って立設された少なくとも二組のガイド壁部と、主走査方向Yに下方から上方に向かって傾斜しながら延びるガイド穴54を有していた。ガイド機構50は、移動テーブル41を少なくとも上下方向に移動させることによって、キャップ42をキャップ装着位置と退避位置との間で移動させるように構成されていた。このような構成を採用することにより、インクヘッド32の数が多くなっても、対応する数のキャップ42を備えたキャップユニット40を省スペースで簡便に構成することができるために好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
上記実施形態において、第5制御部105による減圧状態の維持時間は、例えば予め設定した所定の時間であった。しかしながら、ここに開示されるプリンタ1の構成はこれに限定されない。プリンタ1は、ダンパ26aa、26ab、26ba、26bbに、貯留室内のインクの圧力を検出するセンサ27aa、27ab、27ba、27bbを備えていた。ダンパ26aa、26ab、26ba、26bbはインクヘッド32のすぐ上流側に設置され、センサ27aa、27ab、27ba、27bbが検知する圧力は、ノズル33内の圧力とほぼ等しい。そこで、制御装置100は、センサ27aa、27ab、27ba、27bbによって、ノズル33内の圧力と、密閉空間Sとの圧力が均一になったと判断したとき、第5制御部105による吸引ポンプ46の停止状態の維持を終了し、第2制御部102によるキャップバルブ45の制御と第6制御部106による吸引ポンプ46との制御を実施するように構成されていてもよい。ノズル33内の圧力と、密閉空間Sとの圧力が均一になったことの判断は、例えば、本吸引による密閉空間Sの吸引圧力Q1と、ノズル33内の圧力Q2とが、Q1×0.8≦Q2≦Q1の関係を満たすことにより行ってもよい。このことにより、空吸引時にインクヘッド32にインクや空気等の流体が導入されることをより確実に抑制することができる。
上記実施形態において、キャップバルブ45は、移動テーブル41が主走査方向Yに移動することで、ピストン弁体45f、47fが棒部材45h、47hを介して上下方向Zに移動せしめられるように構成されていた。しかしながら、キャップバルブ45におけるピストン弁体45f、47fの移動態様はこれに限定されない。例えば、ピストン弁体45f、47fは、主走査方向Yに沿って移動可能に構成されていてもよい。一例として、ピストン弁体45f、47fは、バネ体45j、47jによって常時右方に付勢されることで閉状態となるよう構成されていてもよい。そしてピストン弁体45f、47fは、移動テーブル41が主走査方向Yの右方Rに移動することで棒部材45h、47hに押し当てられ、このことによりバネ体45j、47jの弾性力に抗ってバルブケース47a内で相対的に左方Lに移動し、開状態に切り替えられるように構成されていてもよい。あるいは、ピストン弁体45f、47fは、上下方向Zおよび主走査方向Yのほかの任意の方向で移動することで、開弁状態と閉弁状態とを切替えられるように構成されていてもよい。
上述した実施形態では、第2流路は、キャップ42の下面においてキャップ42の突出孔43bに接続されていた。しかしながら、第2流路とキャップ42との接続太陽はこれに限定されない。例えば、第2流路は、キャップ42の本体ケース43aの側壁の上方に設けられた貫通孔(図示せず)に接続されて、吸収体43hよりも上方Uで密閉空間Sに連通できるように構成されていてもよい。このような構成によっても、上述の効果を得ることができる。
上述した実施形態では、ガイド機構50は、移動テーブル41を主走査方向Yおよび上下方向に移動させるように構成されていたが、これに限定されない。ガイド機構50は、例えば、移動テーブル41を上下方向のみに移動させるように構成されていてもよい。また、ガイド機構50は、例えば、移動テーブル41を主走査方向Yおよび上下方向Zおよび副走査方向Xに移動させるように構成されていてもよい。
また、プリンタ1は、インクヘッド32のノズル面33Dを払拭し、また、ノズル面33Dの払拭に使用した部材を洗浄するクリーニング機構(図示せず)を備えていてもよい。クリーニング機構は、側方部材15内であって、キャップユニット40の左方Lに並んで配置されていてもよい。このことにより、吸引クリーニングを終えたインクヘッド32に対して、ノズル面33Dの払拭等のクリーニングを引き続き実施することができる。
上述した実施形態では、プリンタ1は、記録媒体8が載置されるプラテン6を備え、記録媒体8はグリットローラ16によって副走査方向Xに搬送されるように構成されていたがこれに限定されない。例えば、プリンタ1は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。即ち、プリンタ1は、記録媒体8を主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能なテーブルを備えていてもよい。