JP6598368B2 - 炭化珪素焼結体原料の製造方法、及び炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

炭化珪素焼結体原料の製造方法、及び炭化珪素単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化珪素焼結体原料の製造方法、炭化珪素焼結体原料、及び炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
炭化珪素は耐熱性に優れ、絶縁破壊電圧が大きく、エネルギーバンドギャップが広く、また、熱伝導度が高いなどの優れた性能を有するため、大電力パワーデバイス、耐高温半導体素子、耐放射線半導体素子、高周波半導体素子等への応用が可能である。シリコンが材料自体の物性限界から性能向上も限界に近づきつつあるため、シリコンよりも物性限界を大きくとれる炭化珪素が注目されている。近年は電力変換時のエネルギーロスを低減する省エネルギー技術として、炭化珪素材料を使ったパワーエレクトロニクス技術が期待を集めている。
その基盤技術として炭化珪素単結晶の成長技術の研究開発が精力的に進められている。
炭化珪素単結晶を成長させる方法として、種結晶を用いる昇華再結晶法(改良レーリー法)が広く用いられている。この方法は例えば坩堝内に配置した種結晶上に、坩堝底部に配した炭化珪素原料を2000℃以上に加熱して昇華ガスを発生させ、その昇華ガスを原料部より数十〜数百℃低温にした種結晶上に再結晶化させることによって、種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させるものである(例えば、特許文献1,2)。
炭化珪素単結晶の製造に昇華再結晶法を用いた場合、炭化珪素原料の昇華特性が生産性を大きく左右する。炭化珪素単結晶の製造コストを下げるためには、炭化珪素原料の昇華特性を高めることは必須である。
特許第5624777号公報 特許第5613619号公報 特許第4962205号公報 特許第4048606号公報
しかしながら、昇華再結晶法では、坩堝内に配された炭化珪素粉末原料を加熱して昇華させていくと、炭化珪素粉末原料の上層部から主としてシリコンが昇華していくため、炭化珪素粉末原料のうち上層部のシリコンが枯渇してこの上層部が固まった枯渇層となり、この枯渇層によって昇華ガスの供給量が減少し、また、この枯渇層が炭化珪素粉末原料の上層部に蓋をする役割をし、未だ昇華していない下層部の炭化珪素粉末原料が残留して無駄になるという不都合があった(特許文献3、4)。
これに対して、特許文献3では、筒の外壁面から内壁面に貫通する複数の小孔を備え、筒の一端が炭化珪素原料に埋め込まれ、筒の他端が炭化珪素原料から突出するように容器本体内に配置される、カーボン材製あるいは高融点金属製の孔付パイプを用いることが提案されている。炭化珪素原料内で発生した昇華ガスは、粉末原料の深さにかかわらず、孔付パイプの小孔を介して孔付パイプの中空領域に流入し、当該中空領域を介して成長空間領域に導かれる。しかしながら、小孔が詰まってしまうと昇華ガスは小孔から出づらくなり、小孔を介して孔付パイプの中空領域に流入する昇華ガスの量は減ってしまう。また、炭化珪素原料のうち、孔付パイプの外壁面に接触する部分は成長空間に露出していないため、成長空間に露出する炭化珪素原料の表面積の増加は大きくない。
また、特許文献4では、容器内空間に接する表面部に配置される炭化珪素原料粉末の粒子径が底部に配置される原料粉末の粒子径より大径となるものとし、これら大径の粒子間の間隙が底部側で発生する昇華ガスの通路となるようにする方法が提案されている。しかしながら、大径の原料粉末は同じ体積の小径の原料粉末に比べて成長空間に露出する炭化珪素原料の表面積が小さくなる。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、成長空間に露出する表面積が大きく効率的に原料昇華ガスを放出する炭化珪素焼結体原料の製造方法、炭化珪素焼結体原料、及び炭化珪素単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
(1)容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造において用いられる原料の製造方法であって、
前記容器内の下部に炭化珪素原料粉末を装填すると共に、その装填面から前記炭化珪素原料粉末内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料を配し、
炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、前記通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させると共に、前記通路形成材料が抜けて形成されたガス通路を有する炭化珪素原料の焼結体を得ることを特徴とする炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(2)前記通路形成材料がSi、SiN、Si及びSiNの混合物、又は、これらとSiCの混合物のいずれかであることを特徴とする(1)に記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(3)前記加熱の温度が1400℃〜2100℃であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(4)前記通路形成材料が前記容器の中心軸に対して対称に配されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(5)前記ガス通路が複数形成されるように、前記通路形成材料が炭化珪素原料粉末内に配されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(6)前記通路形成材料を固めて直棒状の通路形成材料棒とし、前記容器の中央部側に位置する通路形成材料棒の径が端部側に位置する通路形成材料棒の径よりも大きくなるように、前記通路形成材料を炭化珪素原料粉末内に配することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一つに記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(7)前記通路形成材料を固めて直棒状の通路形成材料棒とし、前記容器の中央部側に位置する通路形成材料棒の密度の方が端部側に位置する通路形成材料棒の密度よりも高くなるように、前記通路形成材料を炭化珪素原料粉末内に配することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一つに記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
(8)容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造において用いられる、炭化珪素原料の焼結体からなる炭化珪素焼結体原料であって、原料ガスが通るガス通路が規則的に形成された炭化珪素焼結体原料。
(9)容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、
前記容器内の下部に炭化珪素原料粉末を装填すると共に、その装填面から前記炭化珪素原料粉末内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料を配し、
炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、前記通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させると共に、前記通路形成材料が抜けて形成された通路を有する炭化珪素原料の焼結体からなる炭化珪素焼結体原料を作製した後に、該炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の成長を行うことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
(10)容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、原料ガスが通るガス通路が規則的に形成された炭化珪素焼結体原料を原料として用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法によれば、炭化珪素原料の内部から炭化珪素原料の装填面に通じるガス通路を有する焼結体の炭化珪素原料を得ることできる。この炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)によれば、その通路を構成する内面が炭化珪素からなり、その内面から昇華した原料ガスがその通路を通って成長空間に抜け出ることができる。すなわち、この炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)によれば、炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)の装填面だけでなく、通路の内面も成長空間に露出しているため、従来より成長空間に露出する炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)の表面積が大きく、効率的に昇華ガスを放出することができる。この炭化珪素原料によれば、下層部の炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)も昇華して成長空間に放出されて炭化珪素単結晶の成長に使われるので、未昇華のまま残留して無駄になる炭化珪素原料の量を低減することできる。
本発明の炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)によれば、炭化珪素原料の内部から炭化珪素原料の装填面に通じるガス通路を構成する内面が炭化珪素からなり、その内面から昇華した原料ガスがその通路を通って成長空間に抜け出ることができる。すなわち、この炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)によれば、成長空間に露出する炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)の表面積が大きく効率的に昇華ガスを放出することができる。この炭化珪素原料によれば、下層部の炭化珪素原料(炭化珪素焼結体原料)も昇華して成長空間に放出されて炭化珪素単結晶の成長に使われるので、未昇華のまま残留して無駄になる炭化珪素原料の量を低減することできる。
本発明の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素原料の内部から炭化珪素原料の装填面に通じるガス通路を有する焼結体の炭化珪素原料を用いるので、効率的に原料昇華ガスを炭化珪素単結晶の成長に使うことができ、炭化珪素単結晶の成長速度を向上することができる。
典型的な炭化珪素単結晶製造装置の断面の模式図である。 炭化珪素原料粉末を装填した容器(坩堝)の断面模式図である。 本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法を用いて得られた炭化珪素焼結体原料を有する容器(坩堝)の断面模式図である。 炭化珪素原料粉末内に通路形成材料を配する配し方の一例を模式的に示す平面図である。 炭化珪素原料粉末内に通路形成材料を配する配し方の他の例を模式的に示す平面図である。 炭化珪素原料粉末内に通路形成材料を配する配し方の他の例を模式的に示す平面図である。
以下、本発明を適用した炭化珪素焼結体原料の製造方法、炭化珪素焼結体原料、及び炭化珪素単結晶の製造方法について、図面を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(炭化珪素焼結体原料の製造方法)
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法は、容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造において用いられる原料の製造方法であって、前記容器内の下部に炭化珪素原料粉末を装填すると共に、その装填面から前記炭化珪素原料粉末内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料を配し、炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、前記通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させると共に、前記通路形成材料が抜けて形成されたガス通路を有する炭化珪素原料の焼結体を得るものである。
まず、本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法によって製造された炭化珪素焼結体原料を用い昇華再結晶法を適用して炭化珪素単結晶を製造する、典型的な炭化珪素単結晶製造装置の断面の模式図を図1に示す。
単結晶単結晶製造装置100は、真空容器1内の中央に断熱材2で覆われた例えば、黒鉛製の坩堝3が配置され、真空容器1の外側には加熱手段10が配置されて概略構成されている。坩堝3の蓋部3aに形成された台座4の下面に炭化珪素種結晶Wが固定される。
図1に示す坩堝3は円筒状であり、台座4はその中心軸が円筒状の坩堝3の中心軸に一致するような円柱状の形状で蓋部3aから下方に向かって突き出ている。台座4の下面に炭化珪素種結晶Wが固定されると、炭化珪素種結晶Wはその中心軸がほぼ円筒状の坩堝3の中心軸に一致することになる。炭化珪素原料粉末は坩堝3の下部に装填されるので、装填された炭化珪素原料粉末全体の中心軸が炭化珪素種結晶Wの中心軸にほぼ一致する。
断熱材2には、坩堝3の下部および上部の一部に孔部2a、2bが形成されている。坩堝3は真空容器1の内部中央の支持棒6上に設置されている。支持棒6は筒状とされており、この支持棒6の孔部6aを断熱材2に設けた孔部2aと合わせるようにする。これにより、真空容器1の下に配置された放射温度計7aにより、この支持棒6の孔部6aおよび断熱材2の下側の孔部2aを通して、坩堝3の下部表面の温度を観測できる構成とされている。同様に、真空容器1の上に配置された別の放射温度計7bにより、断熱材2の上側の孔部2bを通して、坩堝3の上部表面の温度を観測できる構成とされている。
真空容器1内のガス交換は、まず、排出管8に接続した真空ポンプ(図示略)を用いて、真空容器1の内部の空気を排気して、例えば、4×10−3Pa以下の減圧状態とする。真空ポンプとしては例えば、ターボ分子ポンプなどを用いることができる。その後、導入管9から真空容器1の内部に高純度Arガスを導入して、真空容器1の内部(炉内)を例えば、Ar雰囲気で9.3×10Paという環境とする。
加熱手段10は例えば、高周波加熱コイルであり、電流を流すことにより高周波を発生させて、坩堝3を1900℃以上の温度に加熱することができる。これにより、坩堝3内の炭化珪素原料粉末11を加熱して、炭化珪素原料粉末11から原料昇華ガス(原料ガス)を発生させ、発生した原料昇華ガスは坩堝3の内部空間(成長空間)12を通って炭化珪素種結晶W上で炭化珪素を再結晶化されて炭化珪素単結晶が成長する。
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法は、図1に示したような炭化珪素単結晶製造装置内で実施してもよく、さらに製造した炭化珪素焼結体原料を用いてそのまま炭化珪素単結晶を製造してもよい。
また、本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法は別の装置で実施してもよく、製造した炭化珪素焼結体原料を炭化珪素単結晶製造用として供給することもできる。
以下では、本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法について、図1に示したような炭化珪素単結晶製造装置内で実施した場合を例にとって説明する。
図2は、炭化珪素原料粉末を装填した容器(坩堝)の断面模式図である。
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法では、図2に示すようにまず、容器(坩堝)3内の下部3bに炭化珪素原料粉末11を装填すると共に、その装填面11aから炭化珪素原料粉末11内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料13を配する。
次いで、炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、通路形成材料13を溶融、蒸発または昇華させると共に、通路形成材料13が抜けて形成されたガス通路14を有する炭化珪素原料の焼結体15を得る(図3参照)。
ここで、通路形成材料とは、それ自体が炭化珪素焼結体原料の製造過程で溶融、蒸発または昇華して無くなることによって、得られた炭化珪素原料の焼結体において、通路形成材料があった部分が炭化珪素原料の昇華ガスが通ることができるガス通路を形成することになるという材料を意味する。
炭化珪素原料粉末の焼結温度は1400〜2100℃で程度であり、また、単結晶成長における炭化珪素の昇華温度は2200〜2500℃程度である。従って、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料とは、1400〜2100℃程度の温度で溶融、蒸発または昇華する材料である。
通路形成材料は、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する材料であることを要する。炭化珪素原料粉末の焼結温度未満で消失してしまう材料では炭化珪素原料粉末が崩れて通路形成材料が抜けた部分をその粉末が埋めてしまうことになり得るからであり、炭化珪素の昇華温度と同じかまたはそれより高い温度で昇華する材料では炭化珪素単結晶製造装置内で炭化珪素焼結体原料を製造し、そのまま引き続きその炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の製造を行うことができないからである。
通路形成材料は、炭化珪素単結晶製造に用いる原料であることが好ましい。炭化珪素単結晶製造に用いない材料では、炭化珪素単結晶製造装置内で炭化珪素焼結体原料を製造し、そのままその炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の製造を続ける際に不純物になり得るからであり、また、仮に別の装置で炭化珪素焼結体原料を製造した場合でも、通路形成材料が炭化珪素焼結体原料内にいくらか残存していることもあり得るので、その場合にはやはり、炭化珪素単結晶製造の際に不純物になり得るからである。
ただし、通路形成材料は、炭化珪素焼結体原料を製造した化珪素単結晶製造装置内で炭化珪素焼結体原料を使って炭化珪素単結晶を製造した際に問題にならない程度に不純物を含んでいても構わない。
炭化珪素原料粉末内に配する通路形成材料の形状自体は特に制限はなく、例えば、棒状のものを用いることができる。棒状にする方法としては特に制限はないが、例えば、バインダーを用いて固体状に固める方法や圧力をかけて成形する方法を用いることができる。
棒状の通路形成材料の径は一様であることが好ましいが、それには限定されない。すなわち、棒状は直棒状に限らないが、直棒状であることが好ましい。
直棒状の通路形成材料(通路形成材料棒)とする場合、その径は2mm以上であることが好ましい。2mm以上であれば、実際の炭化珪素単結晶の製造サイクルではガス通路が詰まりにくいからである。炭化珪素原料の減少の影響が少ない範囲で、3〜10mmであることがより好ましい。
炭化珪素原料粉末内に配する通路形成材料の数(通路形成材料が配された部分が他の部分と離間している場合を通路形成材料が1個として数えたもの)は、1個でもよいが、複数個の方が好ましい。
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法で得られる炭化珪素焼結体原料は、成長空間に露出するSiC原料の表面積を大きくすることによって炭化珪素単結晶の成長速度を高めるものである。
通路形成材料が抜けてできたガス通路の総容積が大きくなることはSiC原料の量が少なくなることを意味する。従って、通路形成材料の形状や数はSiC原料の量自体ができるだけ少なくならない範囲で、成長空間に露出するSiC原料の表面積を大きくするように決めることが好ましい。
通路形成材料としては例えば、Si(シリコン、珪素)、SiN(窒化シリコン、窒化珪素)、Si及びSiNの混合物、又は、これらとSiCの混合物のいずれかを用いることができる。N(窒素)は、SiCの原料ではないが、N型伝導性を有する炭化珪素単結晶の製造の際に用いられるのでSiNを用いてもよい。
SiNは、昇華温度が高く、Siのように融けないので通路形成材料を配した部分の形状に近いガス通路を形成しやすい点でSiより好ましい。SiNを通路形成材料として用いる場合、バインダーで固体状に固めたものや圧力をかけて成形したものを用いることができる。
なお、Siの融点は1414℃であり、沸点は2355℃である。SiNの昇華温度は圧力によっても変化するが概ね1400〜1900℃であり、Si及びSiNの混合物の昇華温度は混合割合に応じて1400〜1900℃であり、これらとSiCの混合物の昇華温度は混合割合に応じて1400〜2300℃である。
炭化珪素原料粉末内に通路形成材料を配する方法としては特に限定するものではないが、例えば、容器あるいは坩堝内に先に炭化珪素原料粉末を装填しておいて、固体状に固めた通路形成材料(棒状あるいは塊状など)を差し込む方法や、先に容器あるいは坩堝内に固体状に固めた通路形成材料を立てておいて、次いで容器あるいは坩堝内に炭化珪素原料粉末を装填する方法や、通路形成材料を入れた筒状(パイプ状)の部材を、容器あるいは坩堝内に先に装填しておい炭化珪素原料粉末内に差し込み、その後、筒状部材を引き抜いて通路形成材料を炭化珪素原料粉末内に残す方法や、先に通路形成材料を入れた筒状部材を先に容器あるいは坩堝内に立てておいて、次いで容器あるいは坩堝内に炭化珪素原料粉末を装填し、その後、筒状部材を引き抜いて通路形成材料を炭化珪素原料粉末内に残す方法などを用いることができる。
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法で得られる炭化珪素焼結体原料は、炭化珪素単結晶の成長速度が高まるように成長空間に露出するSiC原料の表面積を好適に大きくするように規則的にガス通路が形成されたものであって、単に炭化珪素原料を焼結することで形成されたランダムに配置する孔を有する多孔質の炭化珪素原料焼結体とは異なるものである。ランダムに配置する孔を有する多孔質の炭化珪素原料焼結体では孔が詰まりやすいが、本発明の炭化珪素焼結体原料では、ガス通路が詰まりにくい構成(形状、サイズ)を有するものである。
通路形成材料は、容器(坩堝)の中心軸、あるいは装填された炭化珪素原料粉末全体の中心軸に対して対称に配置することが好ましい。炭化珪素種結晶Wはその中心軸が容器(坩堝)の中心軸にほぼ一致するように固定されるので、理想的には、昇華したガスが炭化珪素種結晶Wの表面(単結晶が成長している場合にはその単結晶表面)に対称に当たることになるからである。
通路形成材料を配した後に炭化珪素焼結体原料を得るために加熱する加熱温度は、1400℃〜2100℃であることが好ましい。
炭化珪素原料粉末が焼結する前に通路形成材料が消失してしまうと、所望通りの形状やサイズのガス通路は形成できないので、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上の温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料を用いると共に、通路形成材料を配した後、炭化珪素焼結体原料を得るために炭化珪素原料粉末が焼結する温度以上で加熱する。かかる温度で加熱することにより、炭化珪素原料の形状が保持されたまま、通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させることができる。
通路形成材料としてSiを用いた場合には、加熱温度は1450〜2100℃であることが好ましく、また、SiNを用いた場合には、加熱温度は1600〜1900℃であることが好ましい。
通路形成材料を配した後に炭化珪素焼結体原料を得るために加熱する時間は加熱温度や雰囲気圧力に依存するが、目安と言えば例えば、0.5〜5時間である。
図4は、炭化珪素原料粉末内に直棒状の通路形成材料(通路形成材料棒)を配する配し方の一例を模式的に示す平面図である。
炭化珪素原料粉末内に通路形成材料棒を配する際には、通路形成材料棒を容器(坩堝)の底部に向けて真っ直ぐ、すなわち、容器(坩堝)の中心軸に平行に配置するのが好ましい。容器(坩堝)の底部から台座に固定された種結晶の方に昇華ガスが流れるからである。
図4に示すように、容器の中央部側に位置する通路形成材料棒の径が端部側(側壁3A側に位置する通路形成材料棒の径よりも大きくなるように、前記通路形成材料を炭化珪素原料粉末21内に配することが好ましい。
図4に示す例では、側壁側3A側から中心軸に近づくにつれて大径となる3種類の径の通路形成材料棒(側壁3A側から順に符号23a、23b、23c。図において引き出し線は通路形成材料棒の一部からだけ引いている。)が配置している。
容器(坩堝)の中央部側の方が容器(坩堝)の端部側よりも温度が低いことに起因して原料の昇華速度(単位時間当たりの昇華量)が低いため、それを補うためである。
図5は、炭化珪素原料粉末内に直棒状の通路形成材料(通路形成材料棒)を配する配し方の他の例を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、容器の中央部側に位置する通路形成材料棒の密度の方が端部側(側壁側)3Aに位置する通路形成材料棒の密度よりも高くなるように、前記通路形成材料を炭化珪素原料粉末31内に配することが好ましい。
図5に示す例では、側壁3A側から中心軸に近づくにつれて、同径の通路形成材料棒(符号33。図において引き出し線は通路形成材料棒の一部からだけ引いている。)の密度が高くなるように配置している。
容器(坩堝)の中央部側の方が容器(坩堝)の端部側よりも温度が低いことに起因して原料の昇華速度(単位時間当たりの昇華量)が低いため、それを補うためである。
複数の通路形成材料棒を用いる場合、各通路形成材料棒はすべて同じ径を有していても、すべて異なる径を有していても、いくつか異なる径を有するものが混在してもよい。
図6は、炭化珪素原料粉末内に通路形成材料を配する配し方のさらに他の例を模式的に示す平面図である。
図6に示す例は、通路形成材料が容器(坩堝)の中心軸に対して環状に(側壁にほぼ平行に)、複数の通路形成材料環を配置した例である。図6に示す例では、通路形成材料は連続的につながった通路形成材料環となっているが、環状的に配置されているが連続的にはつながっていない、断続的な通路形成材料環でもよい。
図6に示す例では、側壁3A側から中心軸に近づくにつれて、通路形成材料環(側壁3A側から順に符号43a、43b、43c。)の厚みが厚くなるように配置している。
容器(坩堝)の中央部側の方が容器(坩堝)の端部側よりも温度が低いことに起因して原料の昇華速度(単位時間当たりの昇華量)が低いため、それを補うためである。
(炭化珪素焼結体原料)
本発明の炭化珪素焼結体原料は、容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造において用いられる、炭化珪素原料の焼結体からなる炭化珪素焼結体原料であって、原料ガスが通るガス通路が規則的に形成されているものである。
ここで、「規則的に形成されている」とは、単に炭化珪素原料を焼結することで形成されるランダムに孔(連通孔を含む)が配置する多孔質の炭化珪素原料焼結体とは異なるものであることを意味するものであり、例えば、複数個の同じ径のガス通路が規則性をもって配置している場合や、複数個の異なる径のガス通路が規則性をもって配置している場合などが挙げられる。複数個の同じ径のガス通路が規則性をもって配置した炭化珪素焼結体原料は例えば、同じ径を有する通路形成材料棒を用いることにより製造することができる。また、複数個の異なる径のガス通路が規則性をもって配置した炭化珪素焼結体原料は例えば、所望の種類の径を有する通路形成材料棒を用いることにより製造することができる。
ガス通路は、通路形成材料が溶融、蒸発または昇華して抜けた跡であるからその配置、形状、数等の構成については、通路形成材料の構成について上述した内容をそのまま適用することができる。
炭化珪素焼結体原料内のガス通路は、炭化珪素焼結体原料が容器(坩堝)内に配置したときに、その底部に向けて真っ直ぐ、すなわち、容器(坩堝)の中心軸に平行に配置するのが好ましい。
炭化珪素焼結体原料内のガス通路は、中央部側に位置するガス通路の方が端部側(外周側)に位置するガス通路よりも大きな径のものであることが好ましい。
炭化珪素焼結体原料の中央部側の方が炭化珪素焼結体原料の端部側(外周側)よりも温度が低いことに起因して原料の昇華速度(単位時間当たりの昇華量)が低いので、それを補うためである。
炭化珪素焼結体原料内のガス通路は、中央部側に位置するガス通路の密度が端部側(外周側)に位置するガス通路の密度よりも高くなるように配置していることが好ましい。
炭化珪素焼結体原料の中央部側の方が炭化珪素焼結体原料の端部側(外周側)よりも温度が低いことに起因して原料の昇華速度(単位時間当たりの昇華量)が低いので、それを補うためである。
特許文献3のカーボン材製あるいは高融点金属製の孔付パイプを用いる場合と比べると、本発明の本発明の炭化珪素焼結体原料ではガス通路の内面を構成する材料がすべて炭化珪素原料そのものである点が異なる。
本発明の炭化珪素焼結体原料は例えば、本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法を用いて製造することができる。
(炭化珪素単結晶の製造方法)
本発明の第1実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記容器内の下部に炭化珪素原料粉末を装填すると共に、その装填面から前記炭化珪素原料粉末内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料を配し、炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、前記通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させると共に、前記通路形成材料が抜けて形成された通路を有する炭化珪素原料の焼結体からなる炭化珪素焼結体原料を作製した後に、該炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の成長を行うものである。
この炭化珪素単結晶の製造方法では、上述のとおりに、炭化珪素焼結体原料を作製した後に、その炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の成長を行う以外は通常の炭化珪素単結晶の製造方法で行う工程を行うことができる。
本発明の第2実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、原料ガスが通るガス通路が規則的に形成されている炭化珪素焼結体原料を原料に用いるものである。
この炭化珪素単結晶の製造方法では、上述のとおりの炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の成長を行う以外は通常の炭化珪素単結晶の製造方法で行う工程を行うことができる。
本発明の炭化珪素焼結体原料の製造方法、炭化珪素焼結体原料、及び炭化珪素単結晶の製造方法は、炭化珪素単結晶の製造に利用することができる。
3 坩堝(容器)
11 炭化珪素原料粉末
13 通路形成材料
14 ガス通路
15 炭化珪素焼結体原料
100 炭化珪素単結晶製造装置

Claims (8)

  1. 容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造において用いられる原料の製造方法であって、
    前記容器内の下部に炭化珪素原料粉末を装填すると共に、その装填面から前記炭化珪素原料粉末内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する材料であって、Si、SiN、Si及びSiNの混合物、又は、これらとSiCの混合物のいずれかである通路形成材料を配し、
    炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、前記通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させると共に、前記通路形成材料が抜けて形成されたガス通路を有する炭化珪素原料の焼結体を得ることを特徴とする炭化珪素焼結体原料の製造方法。
  2. 前記加熱の温度が1400℃〜2100℃であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
  3. 前記通路形成材料が前記容器の中心軸に対して対称に配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
  4. 前記ガス通路が複数形成されるように、前記通路形成材料が炭化珪素原料粉末内に配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
  5. 前記通路形成材料を固めて直棒状の通路形成材料棒とし、前記容器の中央部側に位置する通路形成材料棒の径が端部側に位置する通路形成材料棒の径よりも大きくなるように、前記通路形成材料を炭化珪素原料粉末内に配することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
  6. 前記通路形成材料を固めて直棒状の通路形成材料棒とし、前記容器の中央部側に位置する通路形成材料棒の密度の方が端部側に位置する通路形成材料棒の密度よりも高くなるように、前記通路形成材料を炭化珪素原料粉末内に配することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭化珪素焼結体原料の製造方法。
  7. 容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、
    前記容器内の下部に炭化珪素原料粉末を装填すると共に、その装填面から前記炭化珪素原料粉末内の下方に延びるように、炭化珪素原料粉末の焼結温度以上でかつ炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で溶融、蒸発または昇華する通路形成材料を配し、
    炭化珪素の昇華温度よりも低い温度で加熱して、前記通路形成材料を溶融、蒸発または昇華させると共に、前記通路形成材料が抜けて形成された通路を有する炭化珪素原料の焼結体からなる炭化珪素焼結体原料を作製した後に、該炭化珪素焼結体原料を用いて炭化珪素単結晶の成長を行うことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
  8. 容器内に種結晶と原料を配し、該原料を昇華させて、前記種結晶上に炭化珪素の単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、原料ガスが通るガス通路が規則的に形成された炭化珪素焼結体原料を原料として用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
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