[実施形態1]
本発明の実施対象となる画像形成装置である電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した第1の実施形態について説明する。なお、本実施形態のプリンタは、いわゆるタンデム式の画像形成装置であって、乾式二成分現像剤を用いた乾式二成分現像方式を採用したものであるが、本発明はこれに限定されない。
図2は、プリンタの一例における画像形成部全体の概略構成図である。このプリンタは、画像読取部から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。
このプリンタには、図2に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色用の4個の回転体としての潜像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkが並設されている。
これら感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkは、駆動ローラ10を含む回転可能な複数のローラに支持された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並んで配置されている。また、感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkの周りには、帯電器2Y,2M,2C,2Bk、現像装置9Y,9M,9C,9Bk、クリーニング装置4Y,4M,4C,4Bk、除電ランプ3Y,3M,3C,3Bkなどがプロセス順に配設されている。
本実施形態のプリンタでフルカラー画像を形成する場合、感光体ドラム1Yを回転駆動しながら帯電器2Yで一様帯電した後、光書込装置からの光ビームLYを照射して感光体ドラム1Y上にY静電潜像を形成する。このY静電潜像は、現像装置9Yにより、現像剤中のYトナーにより現像される。現像時には、現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加され、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着する。
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転に伴い、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する一次転写位置に搬送される。この一次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面には、一次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加される。そして、このバイアス印加によって発生した一次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像を中間転写ベルト5側に引き寄せ、中間転写ベルト5上に一次転写する。以下、同様にして、Mトナー像、Cトナー像、Bkトナー像も、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合うように一次転写される。
そして、中間転写ベルト5上に4色重なり合ったトナー像は、中間転写ベルト5の回転に伴い、二次転写ローラ7と対向する二次転写位置に搬送される。また、この二次転写位置には、レジストローラ対30により所定のタイミングで転写材である用紙が搬送される。そして、この二次転写位置において、二次転写ローラ7により用紙の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した二次転写電界及び二次転写位置での当接圧により、中間転写ベルト5上のトナー像が用紙上に一括して二次転写される。その後、トナー像が二次転写された用紙は、定着ローラ対8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
図3は、中間転写ベルト駆動装置をモータ制御部20とともに示す斜視図である。中間転写ベルト5は、ベルトループ内に配設された複数の張架ローラによって張架されながら、張架ローラの1つである駆動ローラ10の回転駆動によって無端移動せしめられる。この駆動ローラ10は、減速機構を介して駆動源としての中間転写駆動モータ17に接続されている。 この減速機構は、中間転写駆動モータ17の回転軸にある小径歯車17aと、駆動ローラ10の回転軸にある大径歯車10aとを噛合わせた構成となっている。
中間転写ベルト5の搬送速度検出器として、ベルトエンコーダ方式がある。中間転写ベルト5の表面もしくは裏面にはエンコーダパターン16が刻まれており、このエンコーダパターン16をベルトエンコーダセンサ15で読み取ることによって、ベルト表面速度を検出する。
図3では従動ローラ11と駆動ローラ10の中央にベルトエンコーダセンサ15を設置しているが、ベルト表面速度を正しく測定するために、平坦な部分であれば他の場所でも良い。
例えば、平坦でない回転軸上にベルトエンコーダセンサ15をレイアウトしてしまうと、軸の曲率の影響が出てしまい、中間転写ベルト5の製造上の厚み変動や環境変化による変動によって、エンコーダパターン16の間隔が変化してしまう。そのため、正しいベルト表面速度ではなくなってしまうので、避ける必要がある。
エンコーダパターン16は、シート状のエンコーダパターンを貼り付けたり、ベルト上に直接パターン加工したり、中間転写ベルト5の製造工程で一体加工したりと、製作方法はどのような方法でも良い。
ここでは、ベルトエンコーダセンサ15は等間隔のスリットを備えた反射式の光学センサを想定しているが、エンコーダパターン16からベルト表面位置を正確に検出できるセンサであれば良い。例えば、CCDカメラ等を使用し、画像処理によって表面位置を検出するものでも良い。
また、ドップラー方式やベルト表面の凹凸から画像処理によって表面位置を検出できるセンサ方式であれば、エンコーダパターン16を無くすことも可能となる。
中間転写ベルト5の他の搬送速度検出器として、ロータリーエンコーダ方式がある。複数の張架ローラの1つである従動ローラ11の回転軸に設けた回転検出器である。従動ローラ11は中間転写ベルト5の無端移動に伴って従動回転するローラで、中間転写ベルト5の搬送速度を検出することができる。
中間転写ベルト5の周方向における全領域のうち、従動ローラ11に対する掛け回し位置を通過してから、駆動ローラ10に対する掛け回し位置に進入する前の箇所が、M,C,Y,K用の感光体と当接してM,C,Y,K用の一次転写ニップを形成する。中間転写ベルト5におけるM,C,Y,K用の一次転写ニップの形成箇所に対しては、ベルト裏面側から転写ローラがそれぞれ当接している。これら転写ローラにそれぞれ電源によって転写バイアスが印加されることで、各色の一次転写ニップにおいてベルトと感光体との間に転写電界が形成される。
一次転写部にてカラー画像が形成されるため、この部分でのベルト搬送速度を検出して制御するのが良い。そこで、従動ローラ11にロータリーエンコーダを設置するか、従動ローラ11と駆動ローラ10の間にベルトエンコーダセンサ15を設置するのが望ましい。
また、図中で符号12が付されている張架ローラは、テンションローラである。テンションローラ12はベルトループの外側からベルトに押し当てられ、一定のベルト張力を発生させるものである。
テンションローラ12によって生じるベルト張力によって、中間転写ベルト5は各張架ローラの表面に当接して、中間転写ベルト5が周方向に搬送される。特に、駆動ローラ10の表面と中間転写ベルト5との当接力は、駆動ローラ10のベルト搬送摩擦力と相関があるために重要で、中間転写ベルト5搬送するために必要な搬送摩擦力が確保できるようにテンションローラ12の押し当て力を設定する。
また、図中で符号13が付されている張架ローラは、二次転写対向ローラである。なお、ベルトループの外側においては、二次転写対向ローラ13との対向位置で中間転写ベルト5のおもて面に当接する二次転写ローラ7が配設されている。そして、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5のおもて面に電荷を付与することで、当該おもて面に用紙を吸着させる。
また、ベルトループ外側にて二次転写ローラ7のベルト搬送方向下流に配設されたベルトクリーニング装置14がベルトに当接している。ベルトクリーニング装置14は、ベルトのおもて面に付着しているトナー等の異物を、トナーと自らとの電位差によってベルト表面からトナーを回収する。
モータ制御部20では、中間転写ベルト5の搬送速度を一定とするために、中間転写駆動モータ17をフィードバック制御する。中間転写ベルト5の搬送速度情報となるセンサ出力21と駆動ローラ10の回転情報となるセンサ出力22を基に中間転写駆動モータ駆動制御信号23を出力する。
また同時に、二次転写ローラ7の当接や二次転写部を通過する用紙の影響による中間転写ベルト5の搬送速度変動を抑制するために、二次転写駆動モータをフィードバック制御する。中間転写ベルト5の搬送速度情報であるセンサ出力21と駆動ローラ10の回転情報となるセンサ出力22を基に二次転写駆動モータの二次転写駆動モータ制御信号24を出力する。
次に、二次転写ローラ7の駆動機構について説明する。図4は、本実施形態の画像形成装置で採用した二次転写ローラ7の駆動機構を示す図である。
駆動ローラ10を回転駆動させる中間転写駆動モータ17とは別に、二次転写ローラ7を回転駆動させる二次転写駆動モータ42が設けられている。そして、モータ制御部20(図5参照)から送信される二次転写駆動モータ制御信号24によって、二次転写駆動モータ42を回転させたり停止させたりと回転が制御される。二次転写駆動モータ42としては、中間転写駆動モータ17と同じく、ブラシ付きDCモータやブラシレスDCモータを用いることができる。
二次転写駆動モータ42の回転速度は、二次転写駆動モータ42の回転軸にある小径歯車42aと二次転写ローラ7の回転軸にある大径歯車7aとで構成される減速機構により減速される。そして、減速機構に連結された二次転写ローラ7の図中反時計回り方向の回転により、二次転写部に搬送された用紙を搬送する。
二次転写ローラ7の対向側には、中間転写ベルト5を支持している二次転写対向ローラ13があり、二次転写ローラ7は、中間転写ベルト5を挟んで二次転写対向ローラ13に当接されている。このような二次転写ローラ7の当接は、スプリングによって行われる。また、カム機構によって二次転写ローラ7は、前記スプリングの付勢力に抗して中間転写ベルト5から離間可能である。
そして、前記スプリングと前記カム機構とによって構成される接離手段により図中矢印方向に二次転写ローラ7が移動することで、二次転写部での中間転写ベルト5(二次転写対向ローラ13)に対する二次転写ローラ7の当接状態と離間状態とが切り替えられる。また、中間転写ベルト5に対して二次転写ローラ7を離間させることにより、ベルト機構37の取り出しや、用紙搬送ジャム時のメンテナンスなどが可能となる。
二次転写部の転写性を向上させるために、二次転写ローラ7の表面部に弾性層を設けている。これは、ニップ領域を広げたり、用紙の表面粗さに追従したりして、転写ローラが当接する。二次転写ローラ7の例としては、低慣性薄肉金属パイプを中心に、シリコンゴム等の低硬度ゴム材料ローラ部(弾性ゴム層)を設け、その表層に塗布されるウレタンコーティング層から構成される。
近年の画像形成装置で採用される二次転写ローラ7では、導電性ゴムローラ部はゴム硬度40[°](ゴム硬度Aスケール)以下の加硫ゴムまたはシリコン系ゴムを下層に構成し、その表層には粘性を無効とするウレタンコーティング層を薄層として設けている。これにより、導電性ゴムローラ部の当接変形により、ニップ領域を拡げ、且つ、適切な転写必要圧力を確保する構造としている。
一般に発泡ゴム構造以外の方法で40[°]以下の低硬度を実現しようとすると、加硫ゴムの場合は可塑剤の添加により粘性が増加する。また、シリコンゴムの場合も高粘性になる。その結果、転写ベルト接触部での粘着、或いは用紙接触部との粘着による両移動体の移動不良が生じる。これを回避するために、上述した表層に塗布されるウレタンコーティングが有効である。
従来の二次転写駆動モータの駆動制御手法は、定速性に優れたステッピングモータを採用してモータ自身の回転を一定に駆動するか、ブラシレスDCモータを採用してモータ軸の回転をFG信号により検出しモータ軸回転速度を一定に駆動する手法であった。
中間転写駆動モータ17は、先に説明した中間転写ベルト駆動制御により、中間転写ベルト5を所定搬送に駆動制御される。一方、二次転写駆動モータ42は、モータ軸または二次転写ローラ軸を一定とするように駆動される。この時、二次転写ローラ7の変形量が当初の設計値から変化すると二次転写ローラ表面速度が中間転写ベルト搬送速度と異なり、二次転写ベルトの搬送に影響を与えてしまう。
近年、二次転写部における中間転写ベルト5から用紙への転写性向上のために、二次転写ローラ7はゴム硬度40[°]程度の変形しやすい、表面硬度の低いローラ部材を採用している。そのため、二次転写ローラ径の公差、接触圧力変化や、環境、経時によるローラ形状の変化量は大きく、二次転写ローラの表面速度の偏差(変動)が深刻となり、二次転写ローラ表面速度と中間転写ベルト搬送速度との速度差に変動が生じやすい。また、二次転写ローラ表層にウレタンコーティングをしているが、ニップ領域の広がりによる転写ベルトとの摩擦力が増加しており、速度差が中間転写ベルト5へ与える影響が大きくなっている。
近年、様々な用紙への対応要求が高まり、搬送する用紙の厚み幅が増加している。用紙の厚みにより二次転写ローラ7の変形量も変化するため、速度差の変動は更に大きくなる。また、用紙の種類、特に表面コート紙や表面の紙繊維の荒さが特徴の和紙などの搬送により、転写ベルトとの摩擦力が大きく変動し、速度差が中間転写ベルト5へ与える影響が更に大きくなっている。
中間転写ベルト5の表面速度に対する二次転写ローラ7の表面速度は、中間転写ベルト駆動制御性能へ影響するだけでなく、転写画像にも大きく影響する。中間転写ベルト5の表面速度に対して二次転写ローラ7の表面速度が速いと、中間転写ベルト5から用紙に転写された画像は引き伸ばされ画像長が長くなる。逆に、中間転写ベルト5の表面速度に対して二次転写ローラ7の表面速度が遅いと、中間転写ベルト5から用紙に転写された画像は縮まり画像長が短くなる。
例えば、A3サイズの用紙上に長さ400[mm]の画像を転写する際に、中間転写ベルト5の表面速度に対して二次転写ローラ7の表面速度が0.1[%]速いと、中間転写ベルト5から用紙に転写された画像は0.4[mm]長くなる。このような画像長の変化は、用紙の表裏転写画像の位置精度が要求される印刷物や、画像枠が既定されている印刷物では大きな問題となる。
図5は、本実施形態に係る中間転写装置の中間転写駆動モータ17、及び二次転写駆動モータ42のモータ制御部20を中心にしたブロック図である。
図5において、モータ制御部20は、制御CPU25を内蔵している。モータ制御部20は、画像形成装置全体を制御するメイン制御部44(回転体当接装置における記憶手段であるメモリ43、設定手段を含む。)からのモータ指令値を受け、中間転写駆動モータ17の回転速度を制御(回転体当接装置における第1の制御手段に相当する。)と、二次転写駆動モータ42の回転速度を制御する(回転体当接装置における第2の制御手段に相当する。)。
また、モータ制御部20において、制御CPU25では後述する各種情報を収集し、各モータへの制御出力を演算してPWM(パルス幅変調信号)として出力する。前記各種情報としては、次のものが挙げられる。すなわち、エンコーダ18やベルトエンコーダセンサ15や二次転写ローラエンコーダ26や二次転写駆動モータエンコーダ27からの回転速度情報、及び、中間転写駆動モータ17や二次転写駆動モータ42の駆動電流値などである。
プリドライバ350,450では、モータの回転角をホール素子信号により認識して、PWM信号をモータ3相出力信号に変換して、FET360,460を介してモータを駆動する。これによって、各モータの指示値である目標速度信号に基づき中間転写駆動モータ17及び二次転写駆動モータ42の回転速度が目標となるように制御する。
PWM信号によってモータの駆動電流は算出することができるが、プリドライバを含むモータ駆動回路の変動や応答性の影響を受けて誤差が発生してしまう。そこで、より高精度にモータの駆動電流を把握するために、FETの電流を計測して駆動電流を把握してもよい。
さらに、制御CPU25は、必要に応じて、メモリ43(回転体当接装置における記憶手段に相当する。)に収集データや演算データを格納したり、メイン制御部44に中間転写装置の異常通知などの情報を通知したりする。
メイン制御部44は、他のモータによる二次転写ローラ7の当接動作情報を取得する。また、メイン制御部44は操作部45と接続されており、オペレータが操作部45からメイン制御部44を介してモータ制御部20に指示を出し制御することもできる。
図6は、二次転写ローラ7が中間転写ベルト5及び二次転写対向ローラ13へ当接した際の表面速度差に伴う中間転写ベルト搬送トルクへの影響について説明する図である。詳しくは、図6(a)は中間転写ベルト5と二次転写ローラ7とが離間した状態でそれぞれを一定速度で駆動した場合を示す図である。図6(b)は中間転写ベルト5と二次転写ローラ7とが当接した状態でそれぞれを一定速度で駆動した場合を示す図である。
中間転写ベルト5の搬送駆動は、ベルトエンコーダセンサ15からの速度情報を基に目標値で一定となるように中間転写駆動モータ17の回転速度がフィードバック制御されているため、中間転写ベルト5の表面速度は常に一定となる。一方、二次転写ローラ7は、二次転写駆動モータエンコーダ27、二次転写ローラエンコーダ26の速度情報を基にフィードバック制御されているため、二次転写ローラ7の回転軸の速度は常に一定となる。
ところが、二次転写ローラ7の表面速度はローラ径公差により、表面速度は中間転写ベルト5と一致しない。また、当接時には、変形量に応じて表面線速は大きく変化するため、二次転写ローラ7の表面速度と中間転写ベルト5の表面速度とに線速差が生じる。
例えば、図6(a)のように二次転写ローラ7が離間し、それぞれ規定速度で駆動制御している場合、それぞれ、単体で駆動するトルクが発生する。中間転写ベルト搬送トルクは、搬送ローラ軸摩擦、感光体ドラム1との表面速度差と接触摩擦、転写ベルトクリーニングユニットの接触状態などに起因して個体差や環境、経時で変化するが、現時点での単体駆動トルクとなる。また、二次転写ローラ回転トルクは、二次転写ローラ軸摩擦などに起因して変化するが、現時点での単体駆動トルクとなる。
ここで、図6(b)のように二次転写ローラ7が中間転写ベルト5に当接し、二次転写ローラ7が大きく変形した場合は、二次転写ローラ軸の回転速度が一定であれば、二次転写ローラ7の表面線速は大きくなる。また、ローラ径や硬度の公差も含め、中間転写ベルト5との表面線速差が生じると、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7はそれぞれ一定速度を保つフィードバック制御を行っているため干渉トルクが生じる。
干渉トルクとは、二次転写駆動モータ42が、二次転写ローラ7だけでなく中間転写ベルト5の搬送トルクを負担するトルク成分を言う。または、中間転写駆動モータ17が、中間転写ベルト5だけでなく二次転写ローラ7の回転トルクを負担するトルク成分を言う。図6(b)では、二次転写ローラ側は中間転写ベルト5より速い表面線速を維持し、中間転写ベルト側は二次転写ローラ7より遅い表面線速を維持しようとする。そのため、二次転写ローラ側は干渉トルクによりモータトルクは増加し、中間転写ベルト側は干渉トルクによりモータトルクは減少する。
近年の画像形成装置は更なる高画質化への要求に対応するため、制御性能の更なる向上が求められており、中間転写ベルト5の搬送トルクに影響しないように二次転写ローラ7の速度調整が必要になった。例えば、干渉トルクが生じ、その干渉トルクが二次転写ローラ回転周期で変化すると、中間転写ベルト5の速度変動を発生させる。
そこで、図6(b)に示すような二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との当接状態に応じて、二次転写ローラ7の回転速度を調整する必要がある。二次転写ローラ7の設定速度と表面線速との関係は、環境(温湿度)や、公差(ローラ硬度)などで大きく異なるため、事前の把握は困難である。
また、干渉トルクの発生は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との表面線速差や、二次転写部の摩擦係数(二次転写ローラ−中間転写ベルト間、用紙−中間転写ベルト間、用紙−二次転写ローラ間)の影響を大きく受ける。
前記表面線速差が大きくても前記摩擦係数がゼロならば、干渉トルクもゼロとなる。一方で、前記表面線速差が小さくても摩擦係数が大きいと、干渉トルクも大きくなる。したがって、干渉トルクは、画像形成装置毎や使用する用紙の紙種毎で大きく異なり、事前の把握は困難である。
このような課題から、本実施形態の画像形成装置では、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との当接状態での干渉トルク特性を把握して、二次転写ローラ7の当接状態に応じた最適な速度設定を導出して用いる。
図7は、二次転写ローラ7の当接状態と干渉トルクの関係を示す図である。
図7の横軸は、二次転写ローラ7の速度設定値であり、標準設定値を「0」としてパーセント表示とした。なお、標準設定値とは、設計値から二次転写ローラ7の当接状態におけるローラ表面速度が中間転写ベルト表面速度と一致すると想定された値である。実際には、ローラ公差、接触圧変動、環境、経時変化などで、標準設定値通りの表面速度とはならない。
図7の縦軸は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5それぞれの表面での搬送力である。これは、二次転写ローラ7や中間転写ベルト5の駆動トルク[Nm]を、ローラ径などの設計値を基に表面の搬送力[N]に換算した数値である。二次転写ローラ7と中間転写ベルト5それぞれのトルクを、グラフの同じ軸で表現できるため便宜上、換算している。
中間転写ベルト5の駆動トルクは、中間転写駆動モータ17のトルク推定値を、減速比や駆動ローラ径や中間転写ベルト5の厚みなどを考慮して、中間転写ベルト5の表面の搬送力に換算した。また、二次転写ローラ7の駆動トルクは、二次転写駆動モータ42のトルク推定値を、減速比や二次転写ローラ径などを考慮して、二次転写ローラ7の表面の搬送力に換算した。
なお、トルク推定値とは、各駆動モータの電流値または各駆動モータへのPWM指示値などの駆動指令値と、実際の中間転写ベルト5や二次転写ローラ7の回転速度とを基に、メイン制御部44で算出された負荷トルク値である。各駆動モータが一定速度または既定速度で精度よく制御されている状態では、前記電流値や前記PWM指示値のみから負荷トルク値を算出することができる。
図7における干渉トルクについて説明する。二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間した状態で、それぞれ一定速度のフィードバック制御で駆動する。そして、干渉トルクが全く発生しない状態における中間転写ベルト5と二次転写ローラ7のトルクをそれぞれ、中間転写単体搬送トルク、二次転写単体駆動トルクとして、基準「0」とする。中間転写ベルト5、二次転写ローラ7のそれぞれが一定速フィードバック制御したまま、二次転写ローラ7を当接させる。この時、二次転写ローラ7の表面速度は、公差などの要因で、中間転写ベルト表面速度と一致しない。
例えば、二次転写ローラ7が当接されて二次転写ローラ7の変形が大きく、表面速度が増加した場合、二次転写駆動トルクが増加し、中間転写ベルト5の搬送トルクは減少する。この両者のトルク推移の逆相関が干渉トルクである。また、図7は、この干渉トルク分を搬送力に換算して表示している。
図7では、二次転写ローラ7の設定速度を変更した場合の中間転写ベルト搬送トルクと二次転写駆動トルクから求めた搬送力推移である。干渉トルク及び、換算した搬送力は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5で逆相関であることが分かる。
このような干渉トルク特性(ここでは搬送力特性)から、ゼロクロスポイントの二次転写ローラ速度設定値、図7の特性例では1.5[%]付近が最適値となる。最適条件では、単体駆動時と当接駆動時で駆動トルクの変化がなく、中間転写ベルト駆動や用紙搬送において、より安定した駆動が実現できる。
図7では、3つの条件において、干渉トルク特性を計測した結果である。同じ装置でも条件によって、ゼロクロスポイントの最適値が異なることがわかる。なお、前記条件とは、温度環境、機内温度、二次転写ローラ接触圧及び搬送速度である。以下に、前記3つの条件(条件1、条件2、条件3)を示す。
・条件1:常温環境(25[℃])、機内温度30[℃]、二次転写ローラ接触圧100[%]、搬送速度200[mm/s]
・条件2:常温環境(25[℃])、機内温度30[℃]、二次転写ローラ接触圧80[%]、搬送速度400[mm/s]
・条件3:常温環境(35[℃])、機内温度45[℃]、二次転写ローラ接触圧100[%]、搬送速度200[mm/s]
これらの条件で最適値が異なるので、随時、干渉トルク特性を計測して、二次転写ローラ7の速度設定値の最適化を実施する必要がある。
本実施形態では、このような干渉トルク特性から二次転写ローラ7の速度設定を、画像形成装置に設けられた制御部で導出する。
図8は、本実施形態の二次転写ローラ7の速度設定の最適値を導出する過程を示す図である。図7に示した干渉トルク特性の計測については、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7とを離間した状態でのトルク推定値を基準にしている。そして、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7とを当接し、さらに設定速度の水準を幾つか設定して、各水準におけるトルク推定値が基準値から変動した量を、干渉トルクとしてプロットすると特性計測できる。
しかし、実際の装置上のモータトルク推定値には、干渉トルク成分だけでなく、他の負荷トルク成分が多く含まれてしまう。負荷トルク成分とは、クリーニングブレードの接触負荷や感光体ドラム1の接触負荷、二次転写ローラ7、中間転写ベルト5の速度変動を補正するための加減速トルクなどが挙げられる。
これらのノイズ成分を除去して干渉トルク成分を判断するには、フィルタ処理が必要となる。フィルタ処理するための計測データ(計測時間)が必要となる。また、特性が非線形性を有している場合が多く、計測ポイントが少ないと高精度なゼロクロスポイントが判断できない。計測ポイントを増やした干渉トルク特性の計測に多大な時間が必要となってしまう。装置個体差や稼動条件、環境、経時に対応するために、生産工程ではなく、オンマシンで、かつ、頻繁に干渉トルク特性を計測したい状況において、計測時間は非常に大きな問題となる。
このような干渉トルク特性の計測精度と時間短縮の課題に対して、有効な手段を提案する。ノイズである負荷トルク成分は、定常成分と感光体ドラム1や駆動ローラ10など回転周期で変化する周期変動成分が多くある。また、数分の計測時間では周期性が確認できない、徐々に増加または減少する変動成分がある。
そこで、干渉トルク特性の計測では、干渉トルク成分を負荷トルク成分に無い周期変動にして計測する手法が有効である。例えば、感光体ドラム周期、各ローラ周期は、概ね、1〜40[Hz]である。特性計測時の水準変更である二次転写ローラ7の速度設定変更を正弦波状に変化させて、その正弦波周期を0.2[Hz]程度とする。この周期で変化するトルク推定値成分を干渉トルク成分として特性評価する。なお、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7との当接状態で、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7との相対速度(二次転写ローラ7の設定速度)を正弦波や三角波の周期波状に変化させればよい。
例えば、二次転写ローラ7の当接状態で、図8(a)に示すように約6秒周期の正弦波状に二次転写ローラ7の設定速度を変化させる。この時の干渉トルク特性を図8(b)に示す。
二次転写ローラ7の設定速度変化に応じて、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7の搬送力が同じ正弦波状に変化している。この特性データの抽出には、ローパスフィルタを用いて抽出が可能である。また、速度設定水準も多く、ゼロクロスポイントの判断が正確となる。図8(b)のゼロクロスポイント時刻から、図8(a)の同時刻の二次転写ローラ7の速度設定値を最適値とする。または、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7の搬送力変動成分を正弦波近似して、その近似結果から、より正確にゼロクロスポイントを算出してもよい。
図1は、二次転写ローラ7の設定速度の最適値の導出にかかる制御のフローチャートである。この制御は、画像形成装置の電源ON時に実行されるイニシャライズ動作で行うが、画像出力動作時にも継続して行うことが可能である。
図1に示すように、二次転写設定速度の導出制御をスタートすると、まず、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間させる二次転写ローラ7の離間動作を行う(Step1)。そして、画像形成時の基準の速度指令値で中間転写ベルト5の駆動制御を行い、また、既定速度で二次転写ローラ7の駆動制御を行う。なお、既定速度プロファイルが存在しない装置稼動初期の場合には、一定値をプロファイルとして以下の導出過程を実行する。
次に、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5とが離間状態での、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5それぞれの駆動モータのトルク推移データを取得する(Step2)。そして、トルク推移データに対して必要に応じローパスフィルタ処理を行い、このようにして推定されたトルク推定値を単体駆動時の基準トルクとする。
その後、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5とを当接させる二次転写ローラ7の当接動作を行う(Step3)。そして、干渉トルク特性評価を行う(Step4)。詳しくは、二次転写ローラ7の設定速度を正弦波状に変更させながら駆動する。このときの二次転写ローラ7と中間転写ベルト5それぞれの駆動トルク推定値から、先の基準トルク値からの変動量を算出する。次に、ローパスフィルタを用いて、正弦波と同周期成分を抽出して、干渉トルク特性とする。
二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との干渉トルク推移データから、図8(b)の2つのデータの相関係数を算出して(Step5)、逆相関特性であるかを確認する。相関係数がマイナスであれば、逆相関であると判断して、次のステップへ移行するが、相関係数がプラスであれば、次ステップを実施せずに、二次転写設定速度の導出制御を終了とする。
二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との接触摩擦が著しく小さく、完全にスリップした状態では、逆相関が見られない。このような状態では、用紙搬送も不安定となりやすいので、画像形成装置本体へエラー情報として送信する。
また、二次転写ローラ7が当接することで、軸受部やローラ部に過大な変形が生じ、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との両方に、負荷トルクが増大する場合がある。このとき相関係数がプラスとなり、これも不具合として画像形成装置へエラー情報として送信する。
ゼロクロスポイントから二次転写ローラ7の最適設定速度を導出し、既定速度を最適値に変更する(Step6)。この最適値は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との表面速度が一致して、干渉トルクがゼロの状態とするものである。
一方で、二次転写プロセスにおいて、干渉トルクを若干量設定したほうが、転写率が向上する場合は、最適値に既定のオフセット値を加算してもよい。転写率とは、中間転写ベルト5のトナー量がどれだけ、用紙に転写させたかを示す指標である。若干の表面速度差がある方が、用紙と中間転写ベルト5との擦れによってトナーが転写しやすいということが言われている。
なお、二次転写ローラ7の最適設定速度は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との表面速度が一致して、干渉トルクが0となる状態が最適値であり、これにより干渉トルクに起因した中間転写ベルト5の速度変動を抑制することができる。一方で、単体駆動トルクに対してトルク推定値の変化量が多少あっても、干渉トルクに起因した中間転写ベルト5の速度変動を低減させることができる。
例えば、単体駆動トルクに対してトルク推定値の変化量が10[mNm]よりも少なくなるような、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との相対速度を導出し、その相対速度が得られるときの二次転写ローラ7の回転速度を二次転写設定速度とする。
また、干渉トルク特性から中間転写ベルト5の速度設定を、画像形成装置に設けられた制御部で導出し、前記相対速度が得られるときの中間転写ベルト5の回転速度を中間転写ベルト設定速度としてもよい。
なお、本実施形態においては、ベルト像担持体として中間転写ベルト5を用いた画像形成装置について説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、駆動ローラを含む複数の張架ローラで回転可能に張架された感光体ベルトを用い、感光体ベルトと転写ローラとを接触させて形成した転写部で、感光体ベルトから用紙にトナー像を転写する直接転写方式の画像形成装置などにも同様に適用可能である。また、本実施形態においては、転写部材として二次転写ローラ7を用いた画像形成装置について説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、図20及び図21に示すように、転写部材として、駆動ローラを含む複数の張架ローラで回転可能に張架された二次転写ベルト7cを用いた画像形成装置などにも同様に適用可能である。なお、図20及び図21においては、二次転写ローラ7が二次転写ベルト7cを回転させるための駆動ローラとして機能し、二次転写ベルト7cが二次転写ローラ7と二次転写ベルト張架ローラ7bとによって回転可能に張架されている。
[実施形態2]
次に、本発明を画像形成装置であるプリンタに適用した第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な構成及び動作については、実施形態1に記載した画像形成装置と略同様なので説明は省略する。
図9は、図1に示した二次転写ローラ7の設定速度の最適値の導出にかかる制御のフローチャートの前記Step4の処理で行った干渉トルク特性評価の実施結果を示している。なお、図9(a)は、周期が0.1[Hz]である正弦波状に二次転写ローラ7の速度設定を変更した場合における、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト搬送力との変動推移を実測したグラフである。図9(b)は、周期が0.2[Hz]である正弦波状に二次転写ローラ7の速度設定を変更した場合における、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト搬送力との変動推移を実測したグラフである。図9(c)は、周期が0.4[Hz]である正弦波状に二次転写ローラ7の速度設定を変更した場合における、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト搬送力との変動推移を実測したグラフである。図9(d)は、周期が1.0[Hz]である正弦波状に二次転写ローラ7の速度設定を変更した場合における、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト搬送力との変動推移を実測したグラフである。
前記干渉トルク特性評価では、二次転写ローラ7の速度設定を正弦波状に変更させながら駆動するが、正弦波の周期を0.1[Hz]、0.2[Hz]、0.4[Hz]、1.0[Hz]に設定し、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト搬送力との変動推移を実測した。中間転写ベルト搬送力変動については、二次転写ローラ7の表層ゴムの硬度及び厚みが異なる2種類のデータを示す。なお、図中の中間転写ベルト搬送力(ソフト)とは、二次転写ローラ7の表層ゴムの硬度が低く厚みが大きいものである。また、図中の中間転写ベルト搬送力(リジッド)とは、二次転写ローラ7の表層ゴムの硬度が高く厚みが小さいものである。差異確認の便宜上、中間転写ベルト搬送力(リジッド)は、実測データからノイズ除去して近似関数でフィッティングした結果を示す。
二次転写ローラ速度と中間転写ベルト搬送力(リジッド)との変動推移は、図8に示したものと同様に、二次転写ローラ速度が増加すると中間転写ベルト搬送力は減少する逆位相の関係を示している。しかし、中間転写ベルト搬送力(ソフト)は、逆位相ではあるものの、中間転写ベルト搬送力(リジッド)に比べて、位相遅れがあることがわかる。また、この位相遅れは、二次転写ローラ速度設定の正弦波周期が短くなる(周波数が高くなる)につれて増加する傾向であった。このように、二次転写ローラ7の正弦波状の速度変更に対し、中間転写ベルト5の搬送力変化の応答が遅れると、図1に示したフローチャート処理では、二次転写ローラ7の線速調整の精度が低下してしまう。
中間転写ベルト5の搬送力変化の応答が遅れる原因としては、二次転写ローラ7の二次転写ニップにおけるゴムのせん断変形が考えられる。二次転写ローラ7は、円筒状の中空芯金と、その外周面に固定された弾性材料からなる弾性層と、その外周面に被覆された表面層とを具備している。中空芯金を構成する金属としては、ステンレス鋼やアルミニウムなどを例示することができるが、これらの材料に限定されるものではない。
弾性層については、導電性を有するエピクロルヒドリンゴムや、カーボンを分散させたEPDMやSiゴム、イオン導電機能を有するNBR、ウレタンゴムなどを使用することができる。弾性層の硬度は、JIS−A硬度で40[°]から70[°]程度にすることが望ましく、先述したリジッドタイプの二次転写ローラ7は、弾性層の厚みは0.5[mm]で硬度70[°]である。一方、ソフトタイプの二次転写ローラ7は、弾性層の厚みは5[mm]で硬度40[°]である。ソフトタイプの二次転写ローラ7の弾性層は、中間転写ベルト5と当接した際の押圧変形が大きいだけでなく、中間転写ベルト表面速度と二次転写ローラ表面速度との速度差によって生じる回転方向のせん断変形も大きく生じる。そのため、表面速度差が正弦波状に変化する前記Step4に示した干渉トルク特性評価の実施時には、二次転写ローラ7の弾性層のせん断変形も大きく生じたり小さくなったりと変化する。そして、この二次転写ローラ7の弾性層のせん断変形が、中間転写ベルト5の搬送力変動の応答を遅らせていると考えられる。
図10に、ソフトタイプの二次転写ローラ7による搬送力変動の応答遅れに対応した二次転写ローラ7の設定速度の最適値導出のフローチャートを示す。なお、図10に示したフローチャートにおいて、図1に示したフローチャートとの違いは、二次転写ローラ7の設定速度の最適値を導出するStep6以降の処理である。
図10に示すように、二次転写設定速度の導出制御をスタートすると、まず、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間させる二次転写ローラ7の離間動作を行う(Step1)。そして、画像形成時の基準の速度指令値で中間転写ベルト5の駆動制御を行い、また、既定速度で二次転写ローラ7の駆動制御を行う。なお、既定速度プロファイルが存在しない装置稼動初期の場合には、一定値をプロファイルとして以下の導出過程を実行する。
次に、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5とが離間状態での、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5それぞれの駆動モータのトルク推移データを取得する(Step2)。そして、トルク推移データに対して必要に応じローパスフィルタ処理を行い、このようにして推定されたトルク推定値を単体駆動時の基準トルクとする。その後、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5とを当接させる二次転写ローラ7の当接動作を行う(Step3)。そして、干渉トルク特性評価を行う(Step4)。詳しくは、二次転写ローラ7の設定速度を正弦波状に変更させながら駆動する。このときの二次転写ローラ7と中間転写ベルト5それぞれの駆動トルク推定値から、先の基準トルク値からの変動量を算出する。次に、ローパスフィルタを用いて、正弦波と同周期成分を抽出して、干渉トルク特性とする。そして、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との干渉トルク推移データから、2つのデータの相関値を算出する(Step5)。
次に、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動トルクそれぞれの直交検波による近似計算処理により、二次転写ローラ速度及び中間転写ベルト駆動トルクそれぞれの振幅、位相、平均値を取得する(Step6)。次に、後述する二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動トルクとの計算式から位相差を導出する(Step7)。そして、中間転写ベルト駆動トルクの基準トルクと目標トルク、位相差、及び、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動トルクそれぞれの近似式から、二次転写ローラの最適設定速度を導出する(Step8)。
ここで、図10に示したフローチャートの前記Step6以降の処理について詳しく説明する。まず、二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動トルク(中間転写ベルト搬送力の回転トルク換算値)の正弦波周期ωの変動データyを、直交検波による近似計算処理により、それぞれの振幅C、位相θ、平均値bを取得する。中間転写ベルト駆動トルク変動y1は、以下数1で表される。
また、二次転写ローラ7の速度変動y2は、以下数2で表される。なお、二次転写ローラ速度は、実測データの近似計算処理と設定値とで、どちらを用いてもよい。
調整したい狙いの中間転写ベルト駆動トルク数値(目標トルク)Rtは、下記数3に示すように、図10のStep2の処理で得られた基準トルクRbにオフセットトルクRoffを加算したものである。なお、オフセットトルクRoffは、転写性や搬送する用紙の紙種などを考慮して予め決定される。
図10のStep6の処理での中間転写ベルト駆動トルク変動のデータにおいて、中間転写ベルト駆動トルクが数値Rtとなる時刻trを下記数4式より算出する。
正弦波状1周期の中間転写ベルト駆動トルク変動において、数値Rtとなる時刻は2点存在するがどちらを採用してもよい。得られた時刻trを上記数2の時間tに代入して、二次転写ローラ7の最適速度が導出される。
[実施形態3]
次に、本発明を画像形成装置であるプリンタに適用した第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な構成及び動作については、実施形態1に記載した画像形成装置と略同様なので説明は省略する。
図11は、本実施形態における二次転写ローラ7の当接状態と干渉トルクの関係を示す図である。図11は、二次転写ローラ7の当接状態と干渉トルクの関係を示す図である。横軸は二次転写ローラ7の速度設定値を、標準設定値を「0」としてパーセント表示とした。標準設定値とは、設計値から二次転写ローラ7の当接状態におけるローラ表面速度が中間転写ベルト表面速度と一致すると想定された値である。実際には、ローラ公差、接触圧変動や環境、経時変化で標準設定値とおりの表面速度とはならない。縦軸は、二次転写ローラ7、中間転写ベルト5の表面の搬送力とした。これは、二次転写ローラ7、中間転写ベルト5の駆動トルク[Nm]を、ローラ径など設計値を基に表面の搬送力[N]に換算した数値である。それぞれのトルクを同じ軸で表現できるため便宜上で換算している。各トルクは、中間転写駆動モータ17のトルク推定値を減速比、駆動ローラ径とベルト厚みを考慮して中間転写ベルト搬送力に換算した。また、二次転写駆動モータ42のトルク推定値を減速比、二次転駆動ローラを考慮して、二次転写ローラ表面搬送力としている。トルク推定値とは、駆動モータの電流値または、駆動モータへのPWM指示値と実際の回転速度値を基に算出された負荷トルク値である。各モータが一定速度、または既定速度に精度よく制御している状態では、電流値、PWM指示値のみから負荷トルク値を算出することができる。
図11における干渉トルクについて説明する。二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間した状態で、それぞれ一定速度のフィードバック制御で駆動する。そして、干渉トルクが全く発生しない状態における中間転写ベルト5と二次転写ローラ7のトルクをそれぞれ、中間転写ベルト単体搬送トルク、二次転写ローラ単体駆動トルクとして、基準「0」とする。中間転写ベルト5、二次転写ローラ7のそれぞれが一定速フィードバック制御したまま、二次転写ローラ7を当接させる。このとき、二次転写ローラ7の表面速度は、公差などの要因で中間転写ベルト表面速度と一致しない。例えば、二次転写ローラ7が当接されて二次転写ローラ7の変形が大きく、表面速度が増加した場合、二次転駆動トルクが増加し、中間転写ベルト5の搬送トルクは減少する。この両者のトルク推移の逆相関が干渉トルクである。また、図11は、この干渉トルク分を搬送力に換算して表示している。
図11では、二次転写ローラ7の設定速度を変更した場合の中間転写ベルト駆動トルクと二次転写ローラ駆動トルクから求めた搬送力推移である。干渉トルク及び、換算した搬送力は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5とで逆相関であることが分かる。このような干渉トルク特性(ここでは干渉搬送力特性)から、ゼロクロスポイントの二次転写ローラ速度設定値は、図11に示す特性例では1.5[%]付近が最適値となる。最適条件では、単体駆動時と当接駆動時とで駆動搬送力の変化がなく、中間転写ベルト駆動や紙搬送において、より安定した駆動が実現できる。
なお、二次転写ローラ7の駆動速度と中間転写ベルト5の駆動速度との差が一定範囲よりも大きくなると、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の表面でスリップが生じる。完全にスリップした状態では、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との接触摩擦が著しく小さくなる。そのため、逆相関が見られずに二次転写ローラ7と中間転写ベルト駆動トルクとの逆相関関係は変化する。このような状態では紙搬送も不安定となりやすい。本実施形態では、このような干渉トルク特性から二次転写ローラ7の速度設定をオンマシンで導出する。
図11に示した干渉トルク特性の計測について、二次転写ローラ7を離間した状態でのトルク推定値を基準にする。そして、二次転写ローラ7を当接し、さらに設定速度の水準を幾つか設定して、各水準におけるトルク推定値が基準値から変動した量を干渉トルクとしてプロットすると特性計測できる。このとき、逆相関関係が維持されている範囲内で図8に示した正弦波状に二次転写ローラ7の駆動速度を変調したい。しかし、二次転写ローラ7の駆動速度と中間転写ベルト5の駆動速度の差が一定範囲よりも大きくなると二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の表面でスリップが生じる。完全にスリップした状態では、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との接触摩擦が著しく小さくなる。二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動トルクとの逆相関関係は変化する。このような状態では紙搬送も不安定となりやすいので、正弦波駆動としては不適である。そこで、本実施形態においては、二次転速度最適値の導出方法を複数回実施することで調整精度を向上させている。二次転写ローラ速度最適値の導出方法の目的を、粗調整と微調整とに分けることにある。粗調整では、二次転写ローラ正弦波駆動による、スリップが発生しない二次転写ローラ速度範囲まで粗調整を行う。微調整では、スリップが発生しない二次転写ローラ速度範囲で二次転写ローラ速度最適値の導出方法を実施することで、高精度に二次転写ローラ速度を求める。同一の導出方法を、回数ごとに調整目的を変えることで、課題であった高精度調整を達成する。
図12は、図8に示した二次転写ローラ7の速度設定導出方法のフローチャートである。本動作は、画像形成装置の電源ON時に実行されるイニシャライズ動作で行う。また、画像出力動作時にも、継続して行うことが可能である。
まず、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間する動作を行う(Step.1)。そして、画像形成時の基準の速度指令値で中間転写ベルト5の駆動制御を行い、また、既定速度で二次転写ローラ7の駆動制御を行う。次に、二次転写ローラ離間状態での二次転写ローラ速度と中間転写ベルト5の駆動搬送力推移データとを取得する(Step.2)。搬送力推移データに対して必要に応じてローパスフィルタ処理を行う。この搬送力の値を単体駆動時の基準搬送力とする。その後、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5へ当接する当接動作を行う(Step.3)。そして、二次転写ローラ7の設定速度を周期状となるように駆動し(Step.4)、「Step.4」に記した駆動時の二次転写ローラ速度と中間転写ベルト5の駆動搬送力推移データとを取得する(Step.5)。そして、搬送力推移データに対して必要に応じてローパスフィルタ処理を行う。ゼロクロスポイントから、二次転写ローラ7の最適設定速度を導出し、既定速度を最適値に変更する(Step.6)。ゼロクロスポイントは、「Step.2」での中間転写ベルト5の駆動モータ単体駆動時の基準搬送力と、「Step.5」での中間転写ベルト5の駆動搬送力推移データが一致する交点である。二次転写ローラ速度の最適値は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の表面速度が一致して、中間転写ベルト5の干渉トルクがゼロの状態とするものである。しかし、二次転写プロセスにおいて、干渉トルクを若干量設定したほうが、転写率が向上する場合は、最適値に既定のオフセット値を加算してもよい。次に、「Step.4」〜「Step.6」の調整をN回実施したか判定する(Step.7)。前記調整をN回実施していない場合は(Step.7でNo)、再度、「Step.4」〜「Step.6」の調整を実施する。前記調整をN回実施している場合は(Step.7でYes)、「Step.7」において、フローチャートは完了する。
図13は、図8に示した二次転写ローラ7の速度設定導出方法であって近似式を用いた手法のフローチャート。図12のフローチャートと「Step.1」〜「Step.5」までは同じため、「Step.6」以降の相違点のみ記述する。
二次転速度と中間転写ベルト駆動搬送力の近似式を算出する(Step.6)。ゼロクロスポイントから、二次転写ローラ7の最適設定速度を導出し、既定速度を最適値に変更する(Step.7)。ゼロクロスポイントは、「Step.2」での中間転写ベルト5の駆動モータ単体駆動時の基準搬送力と、「Step.6」での中間転写ベルト5の駆動搬送力の近似式が一致する交点である。二次転写ローラ速度の最適値は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の表面速度が一致して、中間転写ベルト5の干渉トルクがゼロの状態とするものである。しかし、二次転写プロセスにおいて、干渉トルクを若干量設定したほうが、転写率が向上する場合は、最適値に既定のオフセット値を加算してもよい。次に、「Step.4」〜「Step.7」の調整をN回実施したか判定する(Step.8)。前記調整をN回実施していない場合は(Step.8でNo)、再度、「Step.4」〜「Step.7」の調整を実施する。前記調整をN回実施している場合は(Step.8でYes)、「Step.8」において、フローチャートは完了する。
[実施形態4]
次に、本発明を画像形成装置であるプリンタに適用した第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な構成及び動作については、実施形態1に記載した画像形成装置と略同様なので説明は省略する。
図14を用いて、干渉トルクの代替信号として使用可能な信号について説明する。本実施形態では、負荷トルク情報以外に、調整指標として有用な信号について説明する。図3及び図11では、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7の表面速度差起因の干渉トルクについて説明した。干渉トルクは、二次転写ローラ7または中間転写ベルト5の表面搬送力として、トルク測定値や、モータの駆動電流やモータのPWM値と、実際の速度情報を基に算出されたトルク推定値、いずれかの負荷トルクである(図14(a))。図14(b)のブロック線図では、フィードバック制御下での信号の流れを模式図として表す。各モータが一定速度、または既定速度に精度よく制御している状態では、駆動電流値、PWM値、コントローラ指示値の情報においても、負荷トルク(トルク測定値、トルク推定値)と同様に調整の指標として使用できる。理由は、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7の表面速度差による干渉トルクの変動が、フィードバック制御での制御帯域に含まれる周波数帯での変動であることによる。そのため、フィードバック制御を行うことで、駆動速度情報がコントローラに反映される。つまり、信号上流の各信号においても、干渉トルク情報が反映されるため、調整指標として適用可能となる。搬送力として適用可能な信号例としては、モータ電流指令値、モータ電流実測値、モータPWM指令値、モータPWM実測値、モータトルク実測値、モータトルク推定値、ローラトルク実測値、ローラトルク推定値などが挙げられる。
図14(c)は、図14(b)で示したブロック線図における二次系の開ループ特性のボード線図の例を表す。このとき、ゲイン余裕や位相余裕がフィードバック制御の安定性を満たしているものとする。ゲイン特性の交差周波数よりも低周波側が制御帯域となる。制御帯域の周波数であれば、速度変動による振動を抑制できる。ノイズとなる振動成分は、メカ系の共振、エンコーダ読み取り誤差等の回転周期で変化する周期変動成分である。そこで、正弦波状に速度を変更する場合も、交差周波数より十分低い周期とすることでノイズとなる振動成分を抑制して計測する手法が有効である。
図15は、本実施形態における二次転写ローラ7の速度設定の最適値を導出する基本過程を示す図である。本実施形態における二次転写ローラ7の速度設定の最適値導出の基本過程を、搬送力を例に説明する。なお、搬送力は、図14で説明した搬送力として適用可能な信号の一例である。
図15に示した干渉トルク特性の計測について、二次転写ローラ7を離間した状態での搬送力を基準にする。そして、二次転写ローラ7を当接し、さらに設定速度の水準を幾つか設定して、各水準における搬送力が基準値から変動した量を干渉トルクとしてプロットすると特性計測できる。しかし、実際の装置上のモータ駆動トルクには、干渉トルク成分だけでなく、他の負荷トルク成分が多く含まれてしまう。負荷トルク成分とは、ベルトクリーニング装置14のクリーニングブレードの接触負荷や感光体ドラム1の接触負荷、二次転写ローラ7、中間転写ベルト5の速度変動を補正するための加減速トルクなどが挙げられる。これらのノイズ成分を除去して干渉トルク成分を判断するには、フィルタ処理が必要となる。フィルタ処理するための計測データ(計測時間)が必要となる。また、特性が非線形性を有している場合が多く、計測ポイントが少ないと高精度なゼロクロスポイントが判断できない。計測ポイントを増やした干渉トルク特性の計測に多大な時間が必要となってしまう。装置個体差や稼動条件、環境、経時に対応するために、生産工程ではなく、オンマシンで、かつ、頻繁に干渉トルク特性を計測したい状況において、計測時間は非常に大きな問題となる。
このような干渉トルク特性の計測精度と時間短縮の課題に対して、有効な手段を提案する。ノイズである負荷トルク成分は、定常成分と感光体ドラム1や駆動ローラ10など回転周期で変化する周期変動成分が多くある。また、数分の計測時間では周期性が確認できない、徐々に増加または減少する変動成分がある。そこで、干渉トルク特性の計測では、干渉トルク成分を負荷トルク成分に無い周期変動にして計測する手法が有効である。例えば、感光体ドラム周期、各ローラ周期は、概ね、1〜40[Hz]である。特性計測時の水準変更である二次転写ローラ7の速度設定変更を正弦波状に変化させて、その正弦波周期を0.2[Hz]程度とする。この周期で変化する搬送力成分を干渉トルク成分として特性評価する。
二次転写ローラ7の当接状態で、図15(a)に示すように約6秒周期の正弦波状に二次転写ローラ7の設定速度を変化させる。このときの干渉トルク特性を図15(b)に示す。二次転写ローラ7の設定速度変化に応じて、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7の搬送力が同じ正弦波状に変化している。この特性データの抽出には、ローパスフィルタを用いて抽出が可能である。また、速度設定水準も多く、ゼロクロスポイントの判断が正確となる。図15(b)のゼロクロス時刻から、図15(a)の同時刻の二次転写ローラ7の速度設定値を最適値とする。または、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7の搬送力変動成分を正弦波近似して、その近似結果から、より正確にゼロクロスポイントを算出してもよい。正弦波での二次転写ローラ速度最適値の導出手順をまとめると、次のようになる。まず、ベルト搬送力(駆動トルクでもよい)の正弦波と単体駆動のゼロクロスポイントを算出する。次に、ゼロクロスポイントでの計測時間と対応する二次転写ローラ速度を算出する。
図11に示した干渉トルク特性の計測について、二次転写ローラ7を離間した状態での搬送力を基準にする。そして、二次転写ローラ7を当接し、さらに設定速度の水準を幾つか設定して、各水準における搬送力が基準値から変動した量を干渉トルクとしてプロットすると特性計測できる。このとき、逆相関関係が維持されている範囲内で、図15に示した正弦波状に二次転写ローラ7の駆動速度を変調したい。しかし、二次転写ローラ7の駆動速度と中間転写ベルト5の駆動速度との差が一定範囲よりも大きくなると、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の表面でスリップが生じる。完全にスリップした状態では、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との接触摩擦が著しく小さくなる。二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動トルクとの逆相関関係は変化する。このような状態では紙搬送も不安定となりやすいので、正弦波駆動としては不適である。
そこで、本実施形態においては、二次転写ローラ速度最適値の導出方法を複数回実施することで調整精度を向上する。二次転写ローラ速度最適値の導出方法の目的を、粗調整と微調整とに分けることにある。粗調整では、二次転写ローラ正弦波駆動による、スリップが発生しない二次転写ローラ速度範囲まで粗調整を行う。微調整では、スリップが発生しない二次転写ローラ速度範囲で二次転写ローラ速度最適値の導出方法を実施することで、高精度に二次転速度を求める。同一の導出方法を、回数ごとに調整目的を変えることで、課題であった高精度調整を達成することができる。
図16は、本実施形態における二次転写ローラ7の速度設定の最適値を導出する干渉トルクの代替信号の実施例を示す図である。ここでは、図15に示した二次転写ローラ7の速度設定の最適値導出の基本過程における、搬送力代替信号の適用例について説明する。図16は、図15と同じように二次転写ローラ7または中間転写ベルト5の回転速度を、0.2[Hz]、振幅1[%]で正弦波変調したときの、二次転写ローラ7及び中間転写ベルト5の搬送力(図16(a))、トルク(図16(b))、モータ電流信号(図16(c))、モータPWM信号(図16(d))を表す。いずれの信号においても、二次転写ローラ速度変動に伴い同周期の波形変化となることから、二次転写ローラ7または中間転写ベルト5が離間した状態の単体駆動の信号からの変化として観測可能である。よって、図15の二次転写ローラ7の速度設定の最適値導出に、搬送力代替信号として適用可能である。
図17は、二次転写ローラ設定速度の最適値の導出過程を説明するフローチャートである。本動作は、画像形成装置の電源ON時に実行されるイニシャライズ動作で行う。また、画像出力動作時にも、継続して行うことが可能である。
まず、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間する動作を行い、画像形成時の基準の速度指令値で中間転写ベルト5の駆動制御を行い、また、既定速度で二次転写ローラ7の駆動制御を行う。既定速度プロファイルが存在しない装置稼動初期の場合には、一定値をプロファイルとして以下の導出過程を実行する(Step.1)。次に、二次転写ローラ離間状態での二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の駆動モータの搬送力推移データを取得する。搬送力推移データに対して必要に応じてローパスフィルタ処理を行う。この搬送力を単体駆動時の基準搬送力とする(Step.2)。その後、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5へ当接する当接動作を行う(Step.3)。そして、干渉トルク特性評価を行う(Step.4)。なお、干渉トルク特性は、二次転写ローラ7の設定速度を正弦波状に変更させながら駆動し、このときの二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の搬送力波形から先の基準搬送力からの変動量を算出する。そして、ローパスフィルタを用いて、正弦波と同周期成分を抽出して、干渉トルク特性とする。
次に、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の干渉トルク推移データ(図15(b))の2つのデータの相関係数を算出して、逆相関特性であるかを確認する(Step.5)。相関係数がマイナスであれば、逆相関であると判断して、次のステップへ移行するが、相関係数がプラスであれば、次ステップを実施せずに導出を終了とする。二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との接触摩擦が著しく小さく、完全にスリップした状態では、逆相関が見られない。このような状態では紙搬送も不安定となりやすいので、画像形成装置本体へエラー情報として送信する。また、二次転写ローラ7が当接することで、軸受部やローラ部に過大な変形が生じ、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の両方に負荷トルクが増大する場合がある。このとき相関係数がプラスとなり、これも不具合として、画像形成装置へエラー情報として送信する。ゼロクロスポイントから、二次転写ローラ7の最適設定速度を導出し、既定速度を最適値に変更する(Step.6)。この最適値は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5の表面速度が一致して、干渉トルクがゼロの状態とするものである。しかし、二次転写プロセスにおいて、干渉トルクを若干量設定したほうが、転写率が向上する場合は、最適値に既定のオフセット値を加算してもよい。転写率とは、中間転写ベルト5のトナー量がどれだけ、紙に転写させたかを示す指標である。若干の表面速度差がある方が、紙とベルトの擦れによってトナーが転写しやすいということが言われている。
図18は、図15に示した二次転写ローラ7の速度設定導出方法のフローチャートである。本動作は、画像形成装置の電源ON時に実行されるイニシャライズ動作で行う。また、画像出力動作時にも、継続して行うことが可能である。
まず、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5から離間する動作を行い、画像形成時の基準の速度指令値で中間転写ベルト5の駆動制御を行い、また、既定速度で二次転写ローラ7の駆動制御を行う(Step.1)。次に、二次転写ローラ離間状態での二次転写ローラ速度と中間転写ベルト5の駆動搬送力推移データを取得する。搬送力推移データに対して必要に応じてローパスフィルタ処理を行う。この搬送力の値を単体駆動時の基準搬送力とする(Step.2)。その後、二次転写ローラ7を中間転写ベルト5へ当接する当接動作を行う(Step.3)。そして、二次転写ローラ7の設定速度を周期状となるように駆動し(Step.4)、「Step.4」に記した駆動時の二次転写ローラ速度と中間転写ベルト5の駆動搬送力推移データとを取得する(Step.5)。そして、搬送力推移データに対して必要に応じてローパスフィルタ処理を行う。ゼロクロスポイントから、二次転写ローラ7の最適設定速度を導出し、既定速度を最適値に変更する(Step.6)。ゼロクロスポイントは、「Step.2」での中間転写ベルト5の駆動モータ単体駆動時の基準搬送力と、「Step.5」での中間転写ベルト5の駆動搬送力推移データとが一致する交点である。二次転写ローラ速度の最適値は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との表面速度が一致して、中間転写ベルト5の干渉トルクがゼロの状態とするものである。しかし、二次転写プロセスにおいて、干渉トルクを若干量設定したほうが、転写率が向上する場合は、最適値に既定のオフセット値を加算してもよい。次に、「Step.4」〜「Step.6」の調整をN回実施したか判定する(Step.7)。前記調整をN回実施していない場合は(Step.7でNo)、再度、「Step.4」〜「Step.6」の調整を実施する。前記調整をN回実施している場合は(Step.7でYes)、「Step.7」において、フローチャートは完了する。
図19は、図15に示した二次転写ローラ7の速度設定導出方法であって近似式を用いた手法のフローチャートである。なお、図18のフローチャートと「Step.1」〜「Step.5」までは同じため、「Step.6」以降の相違点のみ記述する。
二次転写ローラ速度と中間転写ベルト駆動搬送力の近似式を算出する(Step.6)。ゼロクロスポイントから、二次転写ローラ7の最適設定速度を導出し、既定速度を最適値に変更する(Step.7)。ゼロクロスポイントは、「Step.2」での中間転写ベルト5の駆動モータ単体駆動時の基準搬送力と、「Step.6」での中間転写ベルト5の駆動搬送力の近似式が一致する交点である。二次転写ローラ速度の最適値は、二次転写ローラ7と中間転写ベルト5との表面速度が一致して、中間転写ベルト5の干渉トルクがゼロの状態とするものである。しかし、二次転写プロセスにおいて、干渉トルクを若干量設定したほうが、転写率が向上する場合は、最適値に既定のオフセット値を加算してもよい。次に、「Step.4」〜「Step.7」の調整をN回実施したか判定する(Step.8)。前記調整をN回実施していない場合は(Step.8でNo)、再度、「Step.4」〜「Step.7」の調整を実施する。前記調整をN回実施している場合は(Step.8でYes)、「Step.8」において、フローチャートは完了する。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
複数の張架部材によって回転可能に張架された中間転写ベルト5などの無端状のベルト像担持体と、前記複数の張架部材の1つであり、前記ベルト像担持体を回転駆動させる駆動ローラ10などの駆動ローラと、前記駆動ローラを回転駆動させる中間転写駆動モータ17などの第一駆動モータと、前記ベルト像担持体の回転速度を検出するベルトエンコーダセンサ15などの第一速度検出手段と、前記ベルト像担持体の外周面に当接して転写ニップを形成する二次転写ローラ7などの転写部材と、前記転写部材を回転駆動させる二次転写駆動モータ42などの第二駆動モータと、前記転写部材の回転速度を検出する二次転写ローラエンコーダ26などの第二速度検出手段とを備え、前記ベルト像担持体の外周面に担持した画像を転写ニップ内に挟み込んだ用紙などの転写材へ転写する転写装置において、前記ベルト像担持体と前記転写部材とを接離させる接離手段と、前記接離手段によって前記ベルト像担持体と前記転写部材とを離間させた第一状態での前記第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び前記第二駆動モータの駆動トルクに関する値に対しての、前記接離手段によって前記ベルト像担持体と前記転写部材とを接触させた第二状態での前記第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び前記第二駆動モータの駆動トルクに関する値の変化量が、、予め設定された所定変化量よりも少なくなるような前記相対速度を求めて設定する相対速度設定手段と、前記相対速度設定手段で設定した回転速度で前記ベルト像担持体及び前記転写部材を回転させるように、前記第一駆動モータと前記第二駆動モータとの少なくとも一方を制御するモータ制御部20などの制御手段を有する。
(態様A)においては、まずベルト像担持体と転写部材とを離間させた第一状態で、第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び第二駆動モータの駆動トルクに関する値を求める。次に、ベルト像担持体と転写部材とを接触させた第二状態で、第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び第二駆動モータの駆動トルクに関する値を求める。そして、第一状態での第一駆動モータ及び第二駆動モータの駆動トルクに関する値に対する、第二状態での第一駆動モータ及び第二駆動モータの駆動トルクに関する値の変化量が、所定変化量よりも少なくなるような相対速度を、相対速度設定手段で求めて設定する。そして、相対速度設定手段で設定した回転速度で前記ベルト像担持体及び前記転写部材を回転させる。これにより、第二状態で、第一駆動モータ及び第二駆動モータの駆動トルクに関する値が前記第一状態とできるだけ近い値となるような前記相対速度が得られる回転速度で、ベルト像担持体と転写部材とを回転させることができる。よって、第二状態での第一駆動モータ及び第二駆動モータの干渉トルクを低減させることができ、ベルト像担持体の移動速度を第一駆動モータによって高精度に制御することができる。したがって、ベルト像担持体の回転駆動や、転写ニップでの転写材搬送の安定性などを向上させることができる。
(態様B)
(態様A)において、前記第一駆動モータにかかる第一駆動トルクを推定するメイン制御部44などの第一駆動トルク推定手段と、前記第二駆動モータにかかる第二駆動トルクを推定するメイン制御部44などの第二駆動トルク推定手段とを有しており、前記第一状態での前記第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び前記第二駆動モータの駆動トルクに関する値は、前記第一駆動トルク推定手段及び前記第二駆動トルク推定手段で推定した、前記第一状態で前記ベルト像担持体と前記転写部材とを一定速度で回転させたときの前記第一駆動トルク及び前記第二駆動トルクであり、前記第二状態での前記第二駆動モータの駆動トルクに関する値及び前記第二駆動モータの駆動トルクに関する値は、前記第一駆動トルク推定手段及び前記第二駆動トルク推定手段で推定した、前記第二状態で前記ベルト像担持体と前記転写部材とを一定速度で回転させたときの前記第一駆動トルク及び前記第二駆動トルクである。
(態様B)においては、まずベルト像担持体と転写部材とを離間させた第一状態で、ベルト像担持体と転写部材とを一定速度で回転させたときの第一駆動トルクの推定値及び第二駆動トルクの推定値を求める。そして、この求めた第一駆動トルクの推定値及び第二駆動トルクの推定値を、ベルト像担持体や転写部材などの個体差や環境、経時ばらつきが反映された現状の目標トルク推定値とする。次に、ベルト像担持体と転写部材とを接触させた状態で、ベルト像担持体と転写部材との相対速度を変化させながらベルト像担持と転写部材とを回転させたときの第一駆動トルクの推定値及び第二駆動トルクの推定値を求める。そして、第一状態での第一駆動トルクの推定値及び第二駆動トルクの推定値に対する、第二状態での第一駆動トルクの推定値及び第二駆動トルクの推定値の変化量が、前記所定変化量よりも少なくなるような前記相対速度を求める。そして、前記第二状態で当該相対速度が得られる回転速度で前記ベルト像担持体及び前記転写部材を回転させる。これにより、第二状態で、前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値が前記第一状態とできるだけ近い値となるような前記相対速度が得られる回転速度で、ベルト像担持体と転写部材とを回転させることができる。よって、第二状態での第一駆動モータ及び第二駆動モータの干渉トルクを低減させることができ、ベルト像担持体の移動速度を第一駆動モータによって高精度に制御することができる。したがって、ベルト像担持体の回転駆動や、転写ニップでの転写材搬送の安定性などを向上させることができる。
(態様C)
(態様A)において、前記駆動トルクに関する値は、モータ電流値、モータ制御電圧、モータ制御電圧指示値、及び、モータPWM信号値の少なくとも何れか一つである。これによれば、上記実施形態について説明したように、負荷トルク(トルク測定値、トルク推定値)と同様に指標として用いて駆動の調整を行うことができる。
(態様D)
(態様A)乃至(態様C)において、前記相対速度設定手段による前記相対速度の設定を複数回行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、調整精度を向上させることができる。
(態様E)
(態様B)または(態様D)において、前記第一駆動トルク推定手段は、前記第一駆動モータの駆動指令値と前記第一速度検出手段の検出結果とに基づいて前記第一駆動トルクを推定し、前記第二駆動トルク推定手段は、前記第二駆動モータの駆動指令値と前記第二速度検出手段の検出結果とに基づいて前記第二駆動トルクを推定することができる。
(態様F)
(態様A)乃至(態様E)において、前記第二状態で、前記ベルト像担持体と前記転写部材との相対速度を正弦波や三角波の周期波状に変化させて、該ベルト像担持体と該転写部材とを回転させる。これによれば、上記実施形態について説明したように、第一駆動トルク及び第二駆動トルクには、それぞれ負荷トルク変動が含まれているが、正弦波や三角波の周期波状との相関から干渉トルクを高精度に判断することができる。
(態様G)
(態様A)乃至(態様F)において、前記第一駆動モータから前記駆動ローラに駆動を伝達する回転可能な第一駆動伝達部材と、前記第二駆動モータから前記転写部材に駆動を伝達する回転可能な第二駆動伝達部材とを有しており、前記第二状態で前記ベルト像担持体と前記転写部材との相対速度を、前記ベルト像担持体、前記転写部材、前記第一駆動伝達部材、及び、前記第二駆動伝達部材の相対速度を回転周期よりも長い周期の正弦波や三角波の周期波状に変化させる。これによれば、上記実施形態について説明したように、他の回転周期のトルク変動と分離して干渉トルク成分を抽出することができる。
(態様H)
(態様F)または(態様G)において、前記第一状態での前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値に対する、前記第二状態での前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値の変化を計測した結果に対して前記周期波状に近似し、その近似した結果に基づき、前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値の前記変化量が前記所定変化量よりも少なくなる前記相対速度を求める。これによれば、上記実施形態について説明したように、前記変化量の最小はゼロクロスポイントで簡単に求められるが、前記周期波状に近似してデータ全体からゼロクロスポイントを判断したほうが、より精度が高くなる。
(態様I)
(態様B)、(態様D)乃至(態様H)において、前記第一状態での前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値に対する、前記第二状態での前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値の変化量の推移を、前記ベルト像担持体と前記転写部材とで相関係数を導出し、前記相関係数が逆相関を示す場合に、前記変化量が前記所定変化量よりも少なくなる前記相対速度を求める。これによれば、上記実施形態について説明したように、干渉トルクが全く発生しない状態で、特異な速度設定をしないようにすることができる。
(態様J)
(態様A)乃至(態様I)において、前記変化量が前記所定変化量よりも少なくなる前記相対速度に、既定の相対速度を加算した相対速度が得られる回転速度で、前記ベルト像担持体及び前記転写部材を回転させるように、前記第一駆動モータと前記第二駆動モータとの少なくとも一方を制御手段で制御する。これによれば、上記実施形態について説明したように、転写効率が高い最適値に設定することが可能となる。
(態様K)
(態様A)乃至(態様J)において、前記所定変化量は前記第一状態での前記第一駆動トルクの推定値及び前記第二駆動トルクの推定値の±5[%]以内である。これによれば、上記実施形態について説明したように、干渉トルクに起因したベルト像担持体の速度変動を低減させることができる。
(態様L)
(態様B)、(態様D)乃至(態様K)において、前記ベルト像担持体と前記転写部材との相対速度を正弦波状に変化させた位相に対し、前記第一駆動トルク推定手段または前記第二駆動トルク推定手段で推定された駆動トルク推定値の変化の位相遅れ量を算出し、前期相対速度の変化と前記駆動トルク推定値の変化とが同時に発生したとして、前記第一状態での前記第一駆動トルクの推定値または前記第二駆動トルクの推定値に対して、前記駆動トルク推定値の変化量が少ない相対速度を導出する。これによれば、上記実施形態について説明したように、ソフトタイプの転写部材がせん断変形によりトルク変動応答が遅い場合でも、短時間の正弦波変調により正確に転写部材の最適設定速度を導出することができる。
(態様M)
トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像形成手段により形成されたトナー像を担持する中間転写ベルト5などのベルト像担持体と、前記ベルト像担持体から転写材にトナー像を転写する中間転写装置などの転写手段とを備えたプリンタなどの画像形成装置において、前記転写手段として、(態様A)乃至(態様L)の転写装置を用いた。これによれば、上記実施形態について説明したように、ベルト像担持体の駆動や転写材搬送の安定性を向上することができ、良好な画像形成を行うことができる。
(態様O)
駆動ローラ10などの駆動ローラを含む複数の張架部材によって回転可能に張架された中間転写ベルト5などのベルト像担持体の外周面に担持した画像を、ベルト像担持体と二次転写ローラ7などの転写部材とを当接させて形成した転写ニップ内に挟み込んだ用紙などの転写材へ転写する転写工程を実行可能に制御された転写装置に読み出されて実行されるプログラムにおいて、前記ベルト像担持体と前記転写部材とを接離させる接離手段によって前記ベルト像担持体と前記転写部材とを離間させた第一状態での前記駆動ローラを回転駆動させる中間転写駆動モータ17などの第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び前記転写部材を回転駆動させる二次転写駆動モータ42などの第二駆動モータの駆動トルクに関する値に対しての、前記接離手段によって前記ベルト像担持体と前記転写部材とを接触させた第二状態での前記第一駆動モータの駆動トルクに関する値及び前記第二駆動モータの駆動トルクに関する値の変化量が、予め設定された所定変化量よりも少なくなるような、前記ベルト像担持体と前記転写部材との相対速度を相対速度設定手段により求めて設定させる手順と、前記相対速度設定手段で設定した回転速度で前記ベルト像担持体及び前記転写部材を回転させるように、前記第一駆動モータと前記第二駆動モータとの少なくとも一方をモータ制御部20などの制御手段により制御させる手順とを、前記転写装置に実行させる。これによれば、上記実施形態について説明したように、ベルト像担持体の駆動や転写材搬送の安定性を向上させることができる。