JP6597279B2 - インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明はインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関し、詳しくは、共通電極の電流密度が増加しても、インク室列内の液滴速度差を低減することができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェットヘッドは、駆動電位生成装置からの駆動電位の印加によって吐出エネルギー付与手段を駆動させ、インクに吐出エネルギーを付与し、ノズルからインクを吐出させる。一般に、吐出エネルギー付与手段としては、PZT等の圧電素子を一対の電極間で挟んだものが用いられ、電極間の静電容量を利用して該圧電素子を機械的に駆動させることでインクに吐出エネルギーを付与するようになっている。
従来、このようなインクジェットヘッドの一例として、吐出エネルギー付与手段からなる駆動壁とインク室(チャネル)とを交互に配置したせん断モード型のインクジェットヘッドがある。せん断モード型のインクジェットヘッドは駆動壁を隣り合うチャネルで共用するため、隣り合うチャネル内のインクを同時に吐出することができない。このため、1つおきのチャネル毎に、インク吐出を行う吐出チャネルとインク吐出を行わないダミーチャネルとに分けた独立駆動タイプのインクジェットヘッドが知られている(特許文献1)。
独立駆動タイプのインクジェットヘッドは、各吐出チャネルに対応する電極を駆動電位生成装置と個別に電気的接続するのに対し、各ダミーチャネルに対応する電極を、チャネル列で共通となる共通電極に一括して電気的接続し、この共通電極を駆動電位生成装置と電気的接続する構成となっている。共通電極は、インクジェットヘッドのヘッドチップの一面に、チャネル列に沿って延びるように形成されている。
特開2008−143167号公報
近年、チャネルの高密度化に伴い、共通電極を配置するヘッドチップ表面のスペースが狭くなり、共通電極を細く形成せざるを得なくなってきている。また、1チャネル列当たりのチャネル数も増加し、それに伴って共通電極の電流密度が増加してきている。これにより、共通電極に対して駆動電位生成装置からの駆動電位が印加される接続領域に負荷が集中し、該接続領域における発熱量が大きくなる現象が見られるようになった。
共通電極の発熱はヘッドチップに伝達されるため、共通電極に沿って配列されるチャネル内のインクの温度が、接続領域の近傍のチャネルで高くなる。その結果、接続領域の近傍のチャネル内のインクの粘度が低下することにより液滴速度が変化し、チャネル列内における液滴速度差が発生する問題がある。特に、記録速度を向上させるべくインクジェットヘッドが高速駆動される程、発熱量が大きくなるため、チャネル列内の液滴速度差の発生の問題は顕著となる。
そこで、本発明は、共通電極の電流密度が増加しても、インク室列内の液滴速度差を低減することができるインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
また、本発明は、共通電極の電流密度が増加しても、インク室列内の液滴速度差を低減することができるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
1.圧電素子を利用してインクに吐出エネルギーを付与する複数の吐出エネルギー付与手段と、前記吐出エネルギー付与手段に電気信号を付与する一対の駆動電極、共通電極とを有するヘッドチップを備え、
前記共通電極は、少なくとも2つの前記エネルギー付与手段に前記電気信号を付与し、前記共通電極と電気的に接続される引出部材との接続領域を3箇所以上有していることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.前記接続領域は、前記共通電極の長さ方向に均等間隔をおいて分散配置されていることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.前記接続領域は、前記共通電極の両端部と、該両端部から前記複数の吐出エネルギー付与手段を均等に分ける部位とを少なくとも含むことを特徴とする前記2記載のインクジェットヘッド。
4.前記引出部材は、前記駆動電極に供給する駆動電位を生成する駆動電位生成装置と電気的に接続されていることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
5.前記駆動電位生成装置から前記接続領域までの経路抵抗は、全て等しいことを特徴とする前記4記載のインクジェットヘッド。
6.前記駆動電極は、前記エネルギー付与手段毎に設けられていることを特徴とする前記1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
7.前記駆動電極と導通する配線を有する配線基板を備え、
前記配線基板に、前記共通電極と重なり合うように電気的に接続される基板側共通電極を有することを特徴とする前記1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッド。
8.前記基板側共通電極は、前記配線基板の前記ヘッドチップとの接合面に配置された複数の電極部に分割されており、
前記配線基板は、前記ヘッドチップとの接合面の反対面に1つの配線部を有し、該配線部と前記複数の電極部とが、前記配線基板を貫通する貫通穴を介してそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする前記7記載のインクジェットヘッド。
9.前記ヘッドチップは、前記吐出エネルギー付与手段からなる複数の駆動壁と複数のチャネルとが交互に配置されることによって前記吐出エネルギー付与手段列であるチャネル列を構成していると共に、前記チャネルの開口部が、前記ヘッドチップの相反する前面及び後面にそれぞれ配置されており、
前記チャネル列は、インク吐出を行う吐出チャネルとインク吐出を行わないダミーチャネルとが1つおきに配置されており、
前記共通電極は、前記ヘッドチップの前記後面に形成され、前記吐出エネルギー付与手段の前記一対の駆動電極のうちの前記ダミーチャネル内に臨む前記一方の駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記1〜8の何れかに記載のインクジェットヘッド。
10.前記引出部材は、FPCであることを特徴とする前記1〜9の何れかに記載のインクジェットヘッド。
11.前記1〜10の何れかに記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明によれば、共通電極の電流密度が増加しても、インク室列内の液滴速度差を低減することができるインクジェットヘッドを提供することができる。
また、本発明によれば、共通電極の電流密度が増加しても、インク室列内の液滴速度差を低減することができるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明に係るインクジェットヘッドにおける駆動電位生成装置とヘッドチップの各吐出エネルギー付与手段との電気的接続構造の概念図 本発明におけるヘッドチップのチャネル列方向の位置と温度の関係を示すグラフ 本発明に係るインクジェットヘッドの一例を示す分解斜視図 図3に示すインクジェットヘッドのチャネル構造を説明する図 図3に示す配線基板をヘッドチップとの接合面側から見た図 (a)は図3中の(a)−(a)線に沿う端面図、(b)は図3中の(b)−(b)線に沿う端面図、(c)は図3中の(c)−(c)線に沿う端面図 本発明の他の実施形態に係る配線基板をヘッドチップとの接合面側から見た図 本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドにおける駆動電位生成装置とヘッドチップの各吐出エネルギー付与手段との電気的接続構造の概念図である。
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、ヘッドチップ100は、少なくとも2つの吐出エネルギー付与手段101を有している。吐出エネルギー付与手段101は、図1には示されていない複数のインク室内のインクに圧電素子を利用して吐出エネルギーを付与するためのものである。ヘッドチップ100は、吐出エネルギー付与手段101に電気信号を付与する一対の駆動電極、共通電極を有している。
共通電極102は、少なくとも2つの吐出エネルギー付与手段に電気信号を付与するものである。吐出エネルギー付与手段の駆動電極は、共通電極102と電気的に接続されると共に、個別の配線301によって駆動電位生成装置200にも電気的に接続されている。駆動電位生成装置200は、吐出エネルギー付与手段101を駆動する所定の駆動電位を生成し、該駆動電位を吐出エネルギー付与手段101の駆動電極に供給する。
駆動電位生成装置200で生成される駆動電位は、共通電極102を介して、吐出エネルギー付与手段101の駆動電極に印加される。符号302は、共通電極102と電気的に接続される引出部材としての配線である。すなわち、本発明において引出部材とは、共通電極と駆動電位生成装置とを電気的に接続する部材をいう。この引出部材は単一の部材(電極又は配線)で構成されたものに限らず、複数の部材(電極及び又は配線)が導通するように構成されたものであってもよい。
本発明では、この共通電極102と駆動電位生成装置200との電気的な接続領域を3箇所以上設けている。図1では、共通電極102の両端部の接続領域102a、102bに加えて、共通電極102の両端部から複数の吐出エネルギー付与手段101を均等に分ける部位(中央部)の接続領域102cの合計3箇所設けた場合を例示している。
なお、本発明において駆動電位生成装置との接続領域とは、駆動電位生成装置からの駆動電位が共通電極に印加される部位のことである。一般に、インクジェットヘッドと駆動電位生成装置との間には、駆動電位の信号が流れる配線が設けられた例えばフレキシブル基板(FPC)等の電気的な中継部材が介在される。
各接続領域102a、102b、102cは、電気的負荷が集中することにより発熱するが、共通電極102の負荷は3箇所の接続領域102a〜102cに分散されるため、吐出エネルギー付与手段101の列で見た場合、局部的な発熱は抑制される。その結果、図2に示すように、吐出エネルギー付与手段101の列内の温度差を小さくすることができ、該列内のインク粘度を均一化できる。これにより、吐出エネルギー付与手段101の列内の液滴速度のばらつきを小さくでき、液滴速度差の発生を抑制することができる。
3箇所以上の接続領域は、上記のように共通電極の両端部と、該両端部から複数の吐出エネルギー付与手段101を均等に分ける部位(中央部)とを少なくとも含むようにすると、少ない数の接続領域で効率的に液滴速度差の発生を抑制できるために最も好ましい。しかし、本発明はこれに限らず、3箇所以上の接続領域が共通電極の長さ方向に均等間隔で分散配置されていれば、吐出エネルギー付与手段101の列内の温度のばらつきを抑制できる。
次に、本発明に係るインクジェットヘッドの具体的な実施形態について、図3〜図5を用いて説明する。
図3は、本発明に係るインクジェットヘッドの一例を示す分解斜視図、図4は、図3に示すインクジェットヘッドのチャネル構造を説明する図、図5は、図3に示す配線基板をヘッドチップとの接合面側から見た図、図6(a)は図3中の(a)−(a)線に沿う端面図、図6(b)は図3中の(b)−(b)線に沿う端面図、図6(c)は図3中の(c)−(c)線に沿う端面図である。
図3におけるインクジェットヘッドHは、ヘッドチップ1と、該ヘッドチップ1の前面1aに接合されるノズルプレート2と、ヘッドチップ1の後面1bに接合される配線基板3と、該配線基板3に接続されるフレキシブル基板4とを有している。
ヘッドチップ1は六面体形状を呈しており、PZT等の圧電素子からなる駆動壁11とチャネル12、13とが交互に並設されることによって構成された1列のチャネル列を有している。ここでは9個のチャネル12、13が示されているが、チャネル数は何ら限定されない。
チャネル列は、一つおきに吐出チャネル12とダミーチャネル13とが並設されることにより構成されている。各チャネル12、13の形状は、両側壁がヘッドチップ1の上面及び下面に対してほぼ垂直方向に延びており、そして互いに平行である。
ここで、吐出チャネルは、画像記録時に画像データに応じたインク吐出を行うチャネルである。ダミーチャネルは、画像データに関わらず常にインク吐出を行わないチャネルである。ダミーチャネル13はインク吐出を行う必要がないため、通常、インクが充填されないか、ノズルプレート2にノズル21が形成されない。本実施形態に示すノズルプレート2は、各吐出チャネル12に対応する位置のみにノズル21が形成されている。
ヘッドチップ1の前面1a及び後面1bには、それぞれ各チャネル12、13の前面1a側の開口部12a、13aと後面1b側の開口部12b、13bとがそれぞれ配置されている。各チャネル12、13は、その開口部12a、13aから開口部12b、13bに亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレート状に形成されている。
なお、本実施形態に示すヘッドチップ1において、インクが吐出される側の面を「前面」、その反対側の面を「後面」と定義する。また、ヘッドチップ1の前面1a又は後面1bと平行な方向であって、ヘッドチップ1から離れる方向をヘッドチップ1の「側方」と定義する。
各吐出チャネル12内及び各ダミーチャネル13内に臨む駆動壁11の表面には、駆動電極14がそれぞれ形成されている。駆動電極14は、該駆動壁11の表面から、各チャネル12、13の内面全体に亘って形成されている。
このヘッドチップ1は独立駆動タイプであり、各駆動電極14に図3には示されていない駆動電位生成装置から所定電圧の駆動電位が印加されることにより、一対の駆動電極14、14に挟まれた圧電素子からなる駆動壁11をせん断変形させる。これによって吐出チャネル12内に供給されたインクに吐出エネルギーを付与し、ノズルプレート2のノズル21からインク滴として吐出させる。すなわち、本実施形態において、一対の駆動電極14、14と該駆動電極14、14に挟まれた駆動壁11が、本発明における吐出エネルギー付与手段を構成している。すなわち、駆動電極14は、吐出エネルギー付与手段毎に設けられている。
ヘッドチップ1の後面1bには、吐出チャネル12に1対1に対応するように接続電極15が形成されている。各接続電極15の一端は、対応する吐出チャネル12の開口部12bを介して、駆動電極14と電気的に接続されている。各接続電極15の他端は、ヘッドチップ1の一端縁(図3中の下端縁)に向けて延びている。
また、ヘッドチップ1の後面1bには、共通電極5(チップ側共通電極ともいう。)が形成されている。共通電極5は、チャネル列を挟んで接続電極15が配列される側とは反対側に、チャネル列方向に沿うように延びている。より具体的には、共通電極5は、ヘッドチップ1の後面1bをチャネル列と平行に延びる直線部51と、該直線部51の両端から直角に屈曲した2つの端部52、52を有する形状に形成されている。2つの端部52、52は、チャネル列を両側から挟むように配置されている。共通電極5の両端部52、52は、ヘッドチップ1の一端縁に向けて延び、接続電極15の他端と並列して配置されている。各ダミーチャネル13内の駆動電極14は、この共通電極5の直線部51と電気的に接続されている。
配線基板3は、ヘッドチップ1の後面1bの面積よりも大きな面積を有し、ヘッドチップ1の各駆動電極14と導通する配線(電極)を有する平板状の基板であり、接着剤を介してヘッドチップ1の一面である後面1bに接合されている。配線基板3は比較的硬質な基材材料からなる。具体的な基材材料としては、ガラス、セラミックス、シリコン、プラスチック等が挙げられる。中でも適度に剛性を備え、安価で加工も容易である点でガラスが好ましい。
一般に、ヘッドチップ1との接合面の反対面である配線基板3の裏面3bには、図示しないインクマニホールドが設けられる。インクマニホールドは、ヘッドチップ1の吐出チャネル12に供給するインクを保有する部材である。このため、配線基板3には、インクマニホールド内のインクを吐出チャネル12に供給するためのインク流路穴31が、各吐出チャネル12の開口部12bに対応する位置に貫通するように形成されている。
一方、配線基板3におけるダミーチャネル13に対応する位置には、インク流路穴は形成されていない。従って、ダミーチャネル13は、ノズルプレート2と配線基板3とによって閉塞されている。
ヘッドチップ1との接合面である配線基板3の表面3aには、インク流路穴31に近接して、ヘッドチップ1の後面1bに配列されている接続電極15と対応する個別電極32が形成されている。各個別電極32の一端は、対応する接続電極15と電気的に接続されている。各個別電極32は、この接続電極15を介して、対応する駆動電極14と電気的に接続されている。また、各個別電極32の他端は、配線基板3の端部3cまで延びている。
配線基板3には、ヘッドチップ1の共通電極5と重なり合うように電気的に接続される基板側共通電極6が形成されている。この基板側共通電極6は、配線基板3がヘッドチップ1の後面1bに接合された際、ヘッドチップ1の共通電極5と重なり合うことにより、接続電極15と個別電極32とが重なり合った際の高さと高さを合わせると共に、ヘッドチップ1側の共通電極5と一体となって共通電極として機能するものであり、本発明において好ましく設けられる。
基板側共通電極6は、第1の電極部61及び第2の電極部62の2つの部位に分割されており、これらが配線基板3の表面3aに接することなく配置されている。
基板側共通電極6の第1の電極部61は、配線基板3の表面3aにおいて、共通電極5の両端部52、52に対応する位置にそれぞれ1つずつ形成されている。各第1の電極部61、61は、配線基板3がヘッドチップ1の後面1bに接合されることにより、一端が共通電極5の各端部52、52と重なり合うように電気的に接続される。各第1の電極部61、61の他端は、配線基板3の端部3cまで延びている。2つの第1の電極部61、61は、間に全ての個別電極32を挟むように配置され、該個別電極32と並列して配置されている。
基板側共通電極6の第2の電極部62は、配線基板3の表面3aにおいて、共通電極5の直線部51に対応する位置に1本の直線状の電極によって形成されている。この第2の電極部62は、配線基板3がヘッドチップ1の後面1bに接合されることにより、共通電極5の直線部51と重なり合うように電気的に接続される。
配線基板3の裏面3bには、共通電極5と同様の形状で形成された1つの配線部33が形成されている。この配線部33は、インク流路穴31の配列方向と平行に延びる直線部331と、該直線部331の両端から直角に屈曲し、全てのインク流路穴31を両側から挟むように配置された2つの端部332、332とを有する。直線部331は、配線基板3を挟んで表面3aの第2の電極部62と重なる位置に配置され、両端部332、332は、配線基板3を挟んだ表面3aの第1の電極部61、61と重なる位置に配置されている。
配線基板3の表面3aに設けられた基板側共通電極6の第1の電極部61、61と、裏面3bに設けられた配線部33の各端部332、332とは、配線基板3を貫通するそれぞれ1つずつの貫通穴34、34を介して電気的に接続されている。また、配線基板3の表面3aに設けられた基板側共通電極6の第2の電極部62と、裏面3bに設けられた配線部33の直線部331とは、配線基板3を貫通する1つの貫通穴35を介して電気的に接続されている。この貫通穴35を介して、第2の電極部62の中央部と配線部33の直線部331の中央部とが電気的に接続されている。この中央部は、本実施形態において吐出エネルギー付与手段を構成する複数の駆動壁11を共通電極5の両端部から均等に分ける部位である。
フレキシブル基板(FPC)4は、配線基板3と図3には示されていない駆動電位生成装置との間を電気的に接続する中継部材の一例である。このフレキシブル基板4は、配線基板3の表面3aに設けられた複数の個別電極32と1対1に対応する複数の配線41と、配線基板3の表面3aに設けられた基板側共通電極6の2つの第1の電極部61、61と1対1に対応する2つの配線42、42とを有する。フレキシブル基板4の一端は、例えばACF(異方性導電フィルム)等によって、配線基板3の表面3a側の端部3cに接続される。これにより、個別電極32と配線41とが電気的に接続されると共に、基板側共通電極6の第1の電極部61、61と配線42、42とが電気的に接続される。
このフレキシブル基板4の他端は駆動電位生成装置と電気的に接続される。従って、本実施形態におけるインクジェットヘッドHは、ヘッドチップ1の吐出チャネル12の駆動電極14と駆動電位生成装置とが、フレキシブル基板4の配線41、配線基板3の個別電極32及びヘッドチップ1の接続電極15を介して電気的に接続されると共に、ヘッドチップ1の共通電極5と駆動電位生成装置とが、フレキシブル基板4の配線42、配線基板3の配線部33、貫通穴34、35、基板側共通電極6の第1の電極部61及び第2の電極部62を介して電気的に接続される。
これにより、駆動電位生成装置から共通電極5への駆動電位は、フレキシブル基板4の配線42、42から基板側共通電極6の第1の電極部61、61を通って、両端部52、52の2箇所に印加されるのと同時に、基板側共通電極6の第1の電極部61、61から貫通穴34、34、配線部33及び貫通穴35を通って、第2の電極部62の中央部の1箇所に印加される。この第2の電極部62は、ヘッドチップ1の共通電極5の直線部51と重なり合うことにより一体の共通電極として機能するから、貫通穴35による接続領域は、共通電極5に対する接続領域でもある。
従って、このインクジェットヘッドHにおける共通電極は、フレキシブル基板4を介した駆動電位生成装置との電気的な接続領域を、基板側共通電極6の第1の電極部61、61の部位による2箇所と貫通穴35の部位による1箇所の合計3箇所有していることになる。
これにより、駆動電位生成装置からの駆動電位の印加時の共通電極5、6の電気的負荷は、共通電極5の両端部52、52(基板側共通電極6の第1の電極部61、61)の2箇所のみに集中することがなく、中央部の貫通穴35の部位を含めた3箇所に分散される。その結果、電気的負荷の集中による発熱部位も分散され、ヘッドチップ1のチャネル列内の温度差を図2に示すように小さくすることができる。従って、このインクジェットヘッドHによれば、チャネル列内のインク粘度を均一化でき、チャネル列内の液滴速度差の発生を抑制することができる。
駆動電位生成装置との接続領域を基板側共通電極6の第1の電極部61、61の2箇所のみとした場合と、本実施形態のように3箇所とした場合との液滴速度差の発生具合を比較したところ、本実施形態によれば液滴速度差の発生が40%改善されることを確認できた。
また、本実施形態では、配線基板3の表面3aに形成された基板側共通電極6の第1の電極部61、61と第2の電極部62とを、配線基板3の裏面3bに形成された1つの配線部33と貫通穴34、34、35とを介して電気的に接続しているため、接続電極15や個別電極32との短絡のおそれなく、共通電極と駆動電位生成装置との接続領域を容易に形成することができる。
また、配線基板3の表面3aに、共通電極5と重なり合う基板側共通電極6(第1の電極部61及び第2の電極部62)が設けられているため、共通電極5の電流密度を小さくでき、発熱量の低減化を図ることができる。
本発明において、駆動電位生成装置から各接続領域までの経路抵抗は、全て等しいことが好ましい。これによって、各接続領域からの電流の流入、流出量を均一にできることで、発熱量を均一化できる。経路抵抗は、例えば各配線経路の長さや各配線の厚みを適宜調整することによって等しくすることができる。
以上の実施形態では、共通電極5(第2の電極部62)との1つの接続領域を構成する貫通穴35を、1つだけの貫通穴によって形成したが、これに限定されず、図7に示すように、一まとめにした複数の貫通穴によって構成してもよい。これによって、チャネル数の増加に伴う貫通穴35の部位の電気的負荷を低減できる。
さらに、図示しないが、配線基板3の表面3aに設けられた第1の電極部61、61と裏面3bに設けられた配線部33の両端部332、332とを電気的に接続する貫通穴34も、必要に応じてそれぞれ一まとめにした複数の貫通穴によって構成してもよい。
以上の実施形態におけるインクジェットヘッドHは、接続領域を3箇所としたが、例えば2つの第1の電極部61、61の間に、2箇所以上の貫通穴35を均等間隔で分散配置させることにより、合計4箇所以上の接続領域を設けるようにしてもよい。
また、インクジェットヘッドHに設けられるチャネル列は1列に限らず、2列以上であってもよい。この場合、チャネル列毎に設けられる共通電極に、上述した構造を適用すればよい。
また、以上の実施形態では、ヘッドチップ1の後面1bに配線基板3を接合し、この配線基板3の端部3cにフレキシブル基板4を電気的に接続する構成としたが、配線基板3を設けず、ヘッドチップ1の後面1bに直接フレキシブル基板を電気的に接続してもよい。この場合、フレキシブル基板(FPC)が引出部材となり、このフレキシブル基板に、上記の基板側共通電極6、配線部33及び貫通穴34、34、35が設けられることはもちろんである。
さらに、以上の実施形態では、隣り合うチャネル間の隔壁を圧電素子からなる駆動壁とし、この駆動壁をせん断変形させることによってチャネル内のインクに吐出エネルギーを付与するものを例示したが、これに限定されない。例えば、インク室の一面を振動板とし、この振動板を圧電素子によって振動させることによってインク室内のインクに吐出エネルギーを付与するものであってもよい。
次に、かかるインクジェットヘッドHを備えるインクジェット記録装置の一実施形態について図8を用いて説明する。
図8は、本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
インクジェット記録装置Pにおいて、搬送機構7は、紙、プラスチックシート、布帛等からなる記録媒体8を搬送ローラー対71によって挟持し、搬送モーター72による搬送ローラー73の回転によって図中のY方向(副走査方向)に搬送するようになっている。搬送ローラー73と搬送ローラー対71の間に、インクジェットヘッドHが配置されている。インクジェットヘッドHは、ノズル面側が記録媒体8の記録面81と対面するようにキャリッジ9に搭載されており、フレキシブル基板4を介して駆動電位生成装置200に電気的に接続されている。駆動電位生成装置200はキャリッジ9上に設けられていてもよい。
キャリッジ9は、不図示の駆動手段によって、記録媒体8の幅方向に亘って架け渡されたガイドレール91に沿って、副走査方向と略直交する図中のX−X’方向(主走査方向)に往復移動可能に設けられている。本実施形態に示すインクジェットヘッドHは、キャリッジ9の往復移動に伴って記録媒体8の記録面81を主走査方向に移動し、この移動の過程で、画像データに応じてノズルから液滴を吐出し、インクジェット画像を記録するスキャン型のヘッドである。しかし、本発明におけるインクジェット記録装置Pにおいて、インクジェットヘッドHはスキャン型に限らない。図示しないが、インクジェットヘッドHは、記録媒体8の幅方向に亘って長尺状に形成され又は複数の小ヘッドが千鳥状に配置されることにより、一定速度で搬送される記録媒体8に対してワンパスで記録を行うライン型でもよい。
本発明に係るインクジェット記録装置Pは、上述したインクジェットヘッドHを備えることにより、共通電極の電流密度が増加しても、チャネル列内の液滴速度差を低減することができる。
1:ヘッドチップ
1a:前面
1b:後面
11:駆動壁
12:吐出チャネル
12a:前面側の開口部
12b:後面側の開口部
13:ダミーチャネル
13a:前面側の開口部
13b:後面側の開口部
14:駆動電極
15:接続電極
2:ノズルプレート
21:ノズル
3:配線基板
3a:表面
3b:裏面
3c:端部
31:インク流路穴
32:個別電極
33:配線部
331:直線部
332:端部
34、35:貫通穴
4:フレキシブル基板
5:共通電極
51:直線部
52:端部
6:基板側共通電極
61:第1の電極部
62:第2の電極部
7:搬送機構
71:搬送ローラー対
72:搬送モーター
73:搬送ローラー
8:記録媒体
81:記録面
9:キャリッジ
91:ガイドローラー
100:インクジェットヘッド
101:吐出エネルギー付与手段
102:共通電極
102a、102b、102c:接続領域
200:駆動電位生成装置
301、302:配線
H:インクジェットヘッド
P:インクジェット記録装置

Claims (7)

  1. 圧電素子を利用してインクに吐出エネルギーを付与する複数の吐出エネルギー付与手段と、前記吐出エネルギー付与手段に電気信号を付与する一対の駆動電極、共通電極とを有するヘッドチップを備え、
    前記共通電極は、少なくとも2つの前記エネルギー付与手段に前記電気信号を付与し、前記共通電極と電気的に接続される引出部材との接続領域を3箇所以上有しており、
    前記接続領域は、前記共通電極の長さ方向に均等間隔をおいて分散配置され、前記共通電極の両端部と、該両端部から前記複数の吐出エネルギー付与手段を均等に分ける部位とを少なくとも含み、
    前記引出部材は、前記駆動電極に供給する駆動電位を生成する駆動電位生成装置と電気的に接続されており、
    前記駆動電位生成装置から前記接続領域までの経路抵抗は、全て等しいことを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記駆動電極は、前記エネルギー付与手段毎に設けられていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記駆動電極と導通する配線を有する配線基板を備え、
    前記配線基板に、前記共通電極と重なり合うように電気的に接続される基板側共通電極を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記基板側共通電極は、前記配線基板の前記ヘッドチップとの接合面に配置された複数の電極部に分割されており、
    前記配線基板は、前記ヘッドチップとの接合面の反対面に1つの配線部を有し、該配線部と前記複数の電極部とが、前記配線基板を貫通する貫通穴を介してそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする請求項記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記ヘッドチップは、前記吐出エネルギー付与手段からなる複数の駆動壁と複数のチャネルとが交互に配置されることによって前記吐出エネルギー付与手段列であるチャネル列を構成していると共に、前記チャネルの開口部が、前記ヘッドチップの相反する前面及び後面にそれぞれ配置されており、
    前記チャネル列は、インク吐出を行う吐出チャネルとインク吐出を行わないダミーチャネルとが1つおきに配置されており、
    前記共通電極は、前記ヘッドチップの前記後面に形成され、前記吐出エネルギー付与手段の前記一対の駆動電極のうちの前記ダミーチャネル内に臨む一方の駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記引出部材は、FPCであることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  7. 請求項1〜の何れかに記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
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