JP6596830B2 - インクジェットヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェットヘッドに関する。
従来、チャネル内のインクを吐出させることによって各種画像の記録を行うインクジェット記録装置のインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドとして、親水化された部分を有するものが知られている。
例えば、2種のインクを交換して吐出可能な吐出部を備えたインクジェットヘッドにおいて、吐出する各インク又は2種の混合インクに対する適正に応じて、吐出口形成面を撥水面とするか非撥水面するかを選択するインクジェット記録装置が知られている(特許文献1参照)。
また、ノズルプレート(ノズル基板)のインク吐出面表面が撥インク処理されたインク射出ノズルの吐出口周縁を親水化処理したインクジェットヘッドが知られている(特許文献2参照)。このインクジェットヘッドにより、クリーニングに起因する傷によるインク吐出方向の曲りを抑制している。
また、ノズルプレート(ノズル基板)のノズル吐出面のみにエネルギーを付与し撥水膜を選択的に形成し、撥水膜形成工程後の第2のエネルギーを付与しながら、ノズル吐出面以外(ノズル内壁面)に親水膜を形成する親水膜形成工程を含むノズルプレートの製造方法が知られている(特許文献3参照)。
特開2006−240164号公報 特開2001−121709号公報 特開2011−68095号公報
しかしながら、例えばノズル基板に形成されるノズルを保護するため、ノズル基板の周囲を取り囲むように天板を設ける場合、特許文献1〜3に記載のノズル基板を用いて製造したインクジェットヘッドは、インクをノズルから連続吐出する際に特に高い周波数でインクを連続吐出すると、発生するミストの量は吐出周波数に応じて増えるため、ノズル吐出面に加えて天板にもミストが付着することにより吐出特性が不安定化することがわかった。発明者が鋭意検討した結果、天板に付着するミストが大きく成長して形成された大きな液だまりがノズル基板のうち、インクが吐出される側の面(インク吐出面)に流れ込むと、インク吐出面からノズル穴に戻るインク量も不安定となり、ノズル吐出面の状態を変化させて著しい吐出不安定化を招くことがわかった。
本発明の課題は、インクの連続吐出中も安定化した吐出特性を得ることである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のインクジェットヘッドは、
インクを吐出するノズルを有するノズル基板と、
前記ノズル基板を取り囲む天板と、を備え、
前記ノズル基板のうち、前記ノズルからインクが吐出される側の面の全面と、
前記天板のうち、前記ノズルからインクが吐出される側の面の少なくとも一部と、が親インク処理されており、
前記天板は、インクの後退接触角が最前面の外周から前記ノズル基板を中に位置する開口部の側壁にかけて小さくなるよう変化し、前記ノズル基板はインクの後退接触角が一様であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記天板は、リセス構造部を有し、
前記ノズル基板は、前記天板の最前面よりも低い位置に配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記リセス構造部は、最前面の外周から前記ノズル基板を中に位置する開口部の側壁にかけてなだらかに連続するテーパー部であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記親インク処理は、真空プラズマ処理であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記真空プラズマ処理は、ドライエッチングであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記天板の一部は、
前記天板の前記ノズルからインクを吐出させる方向側に位置する面のうち、前記ノズル基板に隣接する領域であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インクジェットヘッドは、吐出するインクが粒子を含むインクであることを特徴とする。
本発明によれば、連続吐出中も安定化した吐出特性を得ることができる。
本発明の実施の形態のインクジェット記録装置を示す概略構成図である。 インクジェットヘッドの概略斜視図である。 図2の切断面で切断したときのアクチュエーターの断面図である。 実施例1のインクジェットヘッドの断面図である。 実施例2のインクジェットヘッドの断面図である。 実施例3のインクジェットヘッドの断面図である。 実施例4のインクジェットヘッドの断面図である。 実施例5のインクジェットヘッドの断面図である。 実施例6のインクジェットヘッドの断面図である。 (a)〜(d)は、実施例7のインクジェットヘッドの親インク処理の各工程の断面図である。 比較例2のインクジェットヘッドの断面図である。
添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1〜図3を参照して、本実施の形態の装置構成を説明する。先ず、図1を参照して、本実施の形態のインクジェット記録装置1000の概略構成について説明する。図1は、インクジェット記録装置1000を示す概略構成図である。なお、インクジェット記録装置について一例として、以下においてラインヘッドを用いる例を説明しているがこれに限定されない。例えば、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向にインクジェットヘッドを走査することによって画像を形成するスキャン方式のインクジェット記録装置に適用することも可能である。また、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色を設ける例を記載したが、これに限定されず単色でも適用することができる。例えばK(ブラック)のみを使用する構成であってもよい。
インクジェット記録装置1000は、搬送部200と、画像形成部300と、インク供給部400と、制御部500と、を備えている。インクジェット記録装置1000では、制御部500の制御に基づいて、搬送部200により搬送される記録媒体Pに対して、インク供給部400から供給されたインクにより画像形成部300で画像を形成する。
搬送部200は、画像形成が行われる記録媒体Pを保持し、画像形成部300に供給する。搬送部200は、巻き出しロール210、ローラー220,230及び巻き取りロール240等を有する。ロール状に巻かれた長尺状の記録媒体Pは、巻き出しロール210から繰り出され、ローラー220,230に支持されながら搬送され、巻き取りロール240に巻き取られる。
画像形成部300は、記録媒体P上にインクを吐出して画像を形成する。画像形成部300は、複数のラインヘッド310、複数のラインヘッド310を保持するキャリッジ330等を有している。また、インクとしてエネルギー線で硬化するインクを使用する場合、さらに照射部320を備えることが好ましい。
ラインヘッド310は、搬送部200に搬送される記録媒体Pに対してインクを吐出し、画像を形成する。ラインヘッド310は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色について個別に設けられている。図1では、搬送部200による記録媒体Pの搬送方向に対して上流からY、M、C、Kの各色に対応したラインヘッド310が順番に設けられている。
本実施の形態のラインヘッド310は、キャリッジ330に、記録媒体Pの搬送方向に略垂直な方向(幅方向)について記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で設けられている。すなわち、インクジェット記録装置1000は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。ラインヘッド310は、複数のインクジェットヘッド100(図2参照)が配列されて構成されている。また、図示の通り、キャリッジ330にはキャリッジヒーター330aを設け、インクを加熱するようにしても良い。
照射部320は、インクジェット記録装置1000で用いられるインクが記録媒体P上に吐出された後に当該インクを硬化させるためのエネルギー線を照射する。照射部320は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を有し、当該蛍光管を発光させて紫外線等のエネルギー線を照射する。照射部320は、ラインヘッド310よりも記録媒体Pの搬送方向下流側に設けられている。照射部320は、画像形成後の記録媒体Pに対してエネルギー線を照射することで、記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させる。
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa〜1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオード等が挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば、発光ダイオード等)がより望ましい。また、エネルギー線は紫外線に限らず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であれば良く、光源もエネルギー線の波長などに応じて置換される。
インク供給部400は、インクタンク410、ポンプ420、インクチューブ430、サブタンク440、インクチューブ450、ヒーター460等を有している。インク供給部400は、インクを貯留して、当該インクを画像形成部300のラインヘッド310に供給し、各色のインクをラインヘッド310の各ノズルから吐出可能とする。インクタンク410内のインクは、ポンプ420により、インクチューブ430を介してインクジェットヘッド100のインクの背圧を調整するサブタンク440に送られる。サブタンク440には、フロートセンサー440aが設けられ、フロートセンサー440aによる液面位置の検出データに基づいて制御部500がポンプ420を動作させることにより所定量のインクが貯留されるようになっている。サブタンク440内のインクは、インクチューブ450を介してインクジェットヘッド100に供給される。なお、本例では、インクタンク410、ポンプ420、インクチューブ430、サブタンク440、インクチューブ450、ヒーター460を備える構成を例示したが、これに限定されず、インクジェットヘッド100にインクが供給される構成であれば種々の構成を適用することができる。
また、図1に示す例では、ヒーター460は、インク供給部400の全てを覆うように設けられているが、インク供給部400を構成する部材のうちいずれかに個別に設けられているものとしても良い。これにより、インク供給部400内のインクが加熱及び保温されて、インクの温度が所定温度以上に保たれるように構成されている。ヒーター460としては、例えば、電熱線や伝熱部材によって構成され、インク供給部400を構成する各部材を覆ったり、インク供給部400を構成する部材の外面に貼り付けられたりして設けられている。
本実施形態のインクジェット記録装置1000に用いられるインクは、特に限られないが、例えば、後述する実施例1〜7の評価のように、粒子を含みミストが舞いやすいインクを用いる場合に効果が高い。
制御部500は、インクジェット記録装置1000の各部の動作を制御し、全体の動作を統括する。制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。制御部500では、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムが読み出されてRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、例えば、画像形成処理や上記したインク供給処理等の種々の制御処理が実行される。
図2は、インクジェットヘッド100の概略斜視図である。インクジェットヘッド100は、アクチュエーター1と、筐体2と、天板3と、接着剤層4、5と、を備える。
アクチュエーター1の前面(インクの吐出側面(前面1a))には、インクを吐出するための多数のノズル11aを配列したノズル基板11が接着されている。
ノズル基板11としては、PET等のポリアルキレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のプラスチックス、シリコン、及び金属としてはSUSやNiを用いることができる。なお、ノズル基板にはインクを吐出する際に発生するミストが付着するため、ステンレス板(例えば、SUS316など)を用いることにより耐インク性を向上させることができる。
図3は、図2の切断面Sで切断したときのアクチュエーター1の断面図である。アクチュエーター1は、各ノズル11aに対応する多数のチャネルを並列した長尺状の圧電性セラミック基板からなり、インクに与える圧力変化を発生させる部材である。なお、以下においても説明される本実施態様におけるアクチュエーター1に限定されないことはもちろん、ベンドモードヘッドやインクを加熱して気泡を発生させることによってインクを吐出する方法等、吐出方法によって限定されず、種々の吐出方法において適用することができる。
各チャネル12は、ダイヤモンドブレード等により直線状の細長い溝形状に切削されて、削り残した圧電性セラミックが隣接するチャネル12、12との間の隔壁13を構成している。各チャネル12の深さは、図2において右にいくにつれて徐々に浅くなって、ついには消滅する。チャネル12の内面の一部には金属電極(図示せず)が形成されている。
また、各チャネル12の上から非圧電性セラミック基板等からなるカバー基板14が接着されている。カバー基板14には、各チャネル12の浅溝部分に対応する位置に、全チャネル12に亘る開口14aが形成されており、この開口14aを覆うようにマニホールド15が設けられ、このマニホールド15の内側と各チャネル12の浅溝部分との間に、各チャネル12にインクを分配するための共通インク室16が形成されている。
非圧電性セラミック基板としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイド、石英、非分極のPZTの少なくとも1つから選ばれることが好ましく、隔壁13をせん断変形させても分極した圧電性セラミックを確実に支持することができる。
圧電性セラミックとして、PZT、PLZT等のセラミックで、主にPbOx、ZrOx、TiOxの混合微結晶体に、ソフト化剤又はハード化剤として知られる微量の金属酸化物、例えばNb、Zn、Mg、Sn、Ni、La、Cr等の酸化物を含むものが好ましい。
PZTは、チタン酸ジルコン酸鉛であり、充填密度が大きく、圧電性定数が大きく、加工性が良いので好ましい。PZTは、焼成後、温度を下げると、急に結晶構造が変化して、原子がズレ、片側がプラス、反対側がマイナスという双極子の形の、細かい結晶の集まりになる。こうした自発分極は方向がランダムで、極性を互いに打ち消しあっているので、更に分極処理が必要となる。
分極処理は、PZTの薄板を電極で挟み、シリコン油中に漬けて、10〜35kV/cm程度の高電界を掛けて、分極する。分極したPZTに分極方向に直角に電圧を掛けると、側壁が圧電滑り効果により、斜め方向に、くの字形に、せん断変形して、インク室の容積が膨張する。
金属電極の材料としては、金、銀、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、タンタル、チタンを用いることができ、特に、電気的特性、加工性の点から、金、アルミニウムが良く、メッキ、蒸着、スパッタで形成される。各金属電極は、各チャネル12の内部から、浅溝部分を通ってアクチュエーター1の後方(図3の右端)側の上面まで引き出され、図示しない信号線によって駆動回路と電気的に接続される。
アクチュエーター1は、駆動回路から与えられる駆動電圧が各チャネル12内の金属電極に印加されると、隔壁13がせん断変形することでチャネル12の圧力変化が発生し、応力を受けたチャネル12内のインクがノズル11aから吐出する。ノズル11aから吐出したインクはチャネル12の長手方向に向かって飛翔して紙などの記録材に着弾する。
天板3は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、変性PPE、アルミニウム、ステンレス等を用いることができるが、天板3には、インクがノズルから吐出される際に発生するミストが付着するので、耐インク性の観点からステンレス板(例えば、SUS316など)が用いられることがより好ましい。
天板3は、ノズル基板11を取り囲むように配置され、ノズル基板11の周囲を保護する。インクジェットヘッド100にはノズル基板11の周囲に天板3によって平板状のスペースが形成される。天板3の略中央部には、アクチュエーター1のノズル面とほぼ同形状の開口部bが設けられ、アクチュエーター1を開口部bにはめ込むことで、ノズル基板11を開口部bから臨ませるように配置されている。
天板3とアクチュエーター1との間は、接着剤層5により封止されている。
接着剤層4は、天板3の側面より外側に盛り上がっていることが好ましい。これにより、インクが天板3の裏面まで浸透することを更に抑制することが出来る。接着剤層4,5の接着剤は、例えば、エポキシ化合物と硬化剤と組み合わせたものが用いられる。
なお、吸引キャップを用いてアクチュエーター1のノズル11aから強制的にインクを吸引するノズルの回復動作時に、天板3が記録媒体と対抗する面(前面3a)をキャップ受け面とし、インクを吸引するための吸引キャップ(図示略)と密着させることによりノズル基板を損傷させることなく、インクを吸引することできる。また、吸引キャップ内部の負圧を保つ機能を有するようにすると、インク吸引をより効率的に行う観点で好ましい。
なお、ノズル基板と天板の少なくとも一部には親インク領域を有する。親インク領域は、(拡張収縮法で測定した)当該領域に対する水の後退接触角を60°以下とした領域である。ここで、「後退接触角」というのは、水を基材に一度付着させた後、再度水で濡らされた該基材表面の上に作られる接触角である。上述した親インク領域は例えば、真空プラズマ処理等の親インク処理により形成することができ、より具体的にはドライエッチング等を用いることができる。真空プラズマ処理は、真空チャンバー中にインクジェットヘッドチップ、インクジェットヘッド等を置き、Ar、N及びOから選ばれる少なくとも1つまたはそれらの混合ガスを注入し、外部からの電磁界で、プラズマ状態にする処理であり、表面のエッチング性を高めるために、CF等のフッ素系炭化水素ガスを用いても良い。本実施の形態のインクジェットにおいては、ガスにOが含まれることが好ましい。
このインクジェットヘッド100を搭載したインクジェット記録装置1000では、高い周波数でインクを連続吐出しても、連続吐出中に発生したミストが、液だまりとなって付着せずに親インク処理されたノズル基板の全面及び天板の一部で薄い膜となり、吐出安定化を実現できる。また、連続吐出中に発生したミストによって形成された液だまりを薄い膜として天板からノズル基板に流れこませる観点から、天板のノズルからインクを吐出させる方向側に位置する面のうち、ノズル基板に隣接する領域を上述した天板の一部として親インク領域とすることがより好ましい。
本発明者は、上述した吐出安定化を実現できる理由を以下の通り考えている。
高い周波数でインクを連続吐出することにより発生するミストがノズル面に付着しても、親インク処理、すなわち後退接触角を60°以下としたノズル基板の全面及び天板の一部を親インク領域とすることにより、上述したミストが濡れ広がって大きな液だまりとなることなく、薄い膜を形成する。特に天板に付着したミストが成長して形成された大きな液だまりが、ノズル基板に達することによりノズルに戻るインク量が不安定化することがなく、大きな液だまりと比較して薄い膜となったインクが少量ずつ徐々にノズルに流れ込むため、ノズルを塞ぐことがなく、吐出安定化を実現できると考えている。なお、より薄い膜を形成し、インクを少量ずつノズルに流れ込むようにしてより吐出安定化させる観点から親インク領域の後退接触角を30°以下とすることがより好ましい。
インクは色材を含有する。色材は、染料又は顔料でありうるが、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料が好ましい。顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料を用いることができる。
顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機顔料又は有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、例えばトルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)番号で以下に例示する。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26、
上記顔料の中でも、キナクリドン系、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソ
インドリノン系、縮合アゾ系、キノフタロン系、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が
優れているため好ましい。
有機顔料は、レーザ散乱による測定値でインク中の平均粒径が10nm以上150nm以下であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じることがある。150nmを超える場合はサテライトと言われる微小のミストが発生しやすく、ミストが付着することによって液だまりが生じ、該液だまりによる吐出不良が生じやすい。本発明では、上述したインクも好適に使用することができる。例えばインクに酸化チタンを含有させる場合は白色度と隠蔽性を持たせるために平均粒径を150nm以上300nm以下、好ましくは180nm以上250nm以下として画像形成を行うため、本発明を好適に使用することができる。
またインクジェットインク中の顔料の最大粒径は、3.0μmを越えないよう、十分に分散あるいは、ろ過により粗大粒子を除くことが好ましい。
(実施例1)
図4を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例1のインクジェットヘッド100Aを説明する。図4は、インクジェットヘッド100Aの断面図である。
図4に示すように、インクジェットヘッド100Aは、ノズル基板11Aと、天板3Aと、を有する。図4は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
本実施例では、ノズル基板11Aのインク吐出方向側の面の全面及び天板の全面に親インク領域1cA,3cAを有し、ノズル基板11Aは、天板3AからX方向に少し突出している。ノズル基板11A及び天板3Aのインク吐出方向側(+X側)の面を、図4上の複数の矢印で表されるように、真空プラズマ処理として、ドライエッチングを行うことにより、親インク領域1cA,3cAが形成される。
なお、本実施例ではドライエッチングを行うこととしたが、これに限定されず親インク処理(後退接触角が60°以下)できる種々の方法を用いることができる。
ここで、前面とは、+X側から見た面であり、最前面とは、X軸の値が最も高い位置にある前面とし、以下の説明でも同様である。
ここで、インクジェットヘッド100Aの製造方法を説明する。先ず、インクジェットヘッド100Aの各部材の組立前に、ノズル基板11Aには、前面に保護フィルムが貼られ、後面からレーザー光が照射されて、ノズル11aが形成される。保護フィルムは、レーザー光照射時に、ノズル基板11Aのノズル11aの前面側の形状がいびつな不適切な形状になることを防ぐためのものである。なお、上述した保護フィルムを剥がす際に、保護フィルムを貼る前にあらかじめ撥インク層が形成されていると、ノズル基板11Aの保護フィルムの糊残りを低減できるので好ましい態様である。ノズル基板11Aの保護フィルムの糊残りを低減することによって製造後の液滴の着弾精度(真直度)向上や射出角度分布不良低減の観点で好ましい。
なお、ノズル11a形成後、保護フィルムは剥がされるが、保護フィルムを貼った状態で後の工程流動させることとしてもよい。このとき、保護フィルムでノズルを保護できる。ノズル11a形成後、保護フィルムには穴が開いており、この穴から接着剤や埃等の異物が入るおそれがあるため、穴のない保護フィルムを新たにノズル基板11Aに貼ることとしてもよい。
そして、ノズル基板11A、天板3A、筐体2等が接合されて組み立てられる。このとき、接着剤の使用により、接着剤層4,5が形成される。そして、ノズル基板11A及び天板3Aのインク吐出側の面に、真空プラズマ処理として、ドライエッチングにより、親インク処理され、親インク領域1cA,3cAが形成される。親インク領域1cA,3cAの後退接触角は、60°以下にされている。
ドライエッチングの際には、インクジェットヘッド100Aの筐体2、電装系等を含む本体部を覆う金属製の保護材をインクジェットヘッド100Aに取り付けて、ドライエッチングを行うのが好ましい。完成後のインクジェットヘッド100Aは、検査液等を使った検査が行われる。インクジェットヘッド100Aは、この検査により用いられた検査液がアクチュエーター1、ノズル基板11Aのノズル11aの流路やノズル穴全体に残るおそれがあるが、この検査液を乾かすことによりドライアップされる。なお、ドライアップされたインクジェットヘッド100Aをインクジェット記録装置1000に搭載して使用することもできるが、さらに吐出安定性を向上させる観点で、インクジェット記録装置1000に搭載して記録動作を行う前に、使用するインクでインクジェットヘッド100Aの流路及びノズル面を濡らしておくことが好ましい。また、前述した濡らすインクは使用するインクに限られず、例えば顔料や染料を除いたダミーインクを用いても良い。
(実施例2)
図5を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例2のインクジェットヘッド100Bを説明する。図5は、インクジェットヘッド100Bの断面図である。なお、実施例1と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図5に示すように、インクジェットヘッド100Bは、ノズル基板11Aと、天板3Bと、を有する。図5は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
インクジェットヘッド100Bは、実施例1と同様にノズル基板11Aのインク吐出側の面の全面及び天板3Bの全面に親インク領域1cA,3cBを有しているが、実施例2では天板3Bが、ノズル基板11AからY方向、Z方向(XY平面に垂直な方向)に離れるにつれて2段階にX方向の高さが変化する凹構造のリセス構造部である凹部3B1を有する。凹部3B1のX方向の高さは、天板3Bの最前面の高さの半分の高さである。また、凹部3B1は、Y方向において、天板3Bの長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。また、凹部3B1は、Z方向において、天板3Bの長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。凹部3B1は、+X方向から見て、ノズル基板11Aの周囲に帯状に形成されている。凹部3B1の前面は、ノズル基板11Aの前面よりもX方向の高さが低い。天板3Bの最前面(凸部の前面)は、ノズル基板11Aの前面よりもX方向の高さが高い。なお、この凹部3B1の位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。例えば、天板3Bの最前面は、ノズル基板11Aの前面とX方向の高さが等しい構成としてもよい。また、凹部3B1の前面のX方向の高さが、ノズル基板11Aの前面の高さ以上である構成としてもよい。
(実施例3)
図6を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例3のインクジェットヘッド100Cを説明する。図6は、インクジェットヘッド100Cの断面図である。なお、実施例1と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図6に示すように、インクジェットヘッド100Cは、ノズル基板11Aと、天板3Cと、を有する。図6は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
天板3Cは、実施例1の天板3Aと同様の形状を有しているが、前面の全面が親インク処理されておらず、天板3Cの前面の一部、より具体的には天板3Cの前面のうち、ノズル基板11Aに隣接する領域を親インク領域3cCとする。本実施例においては、親インク領域3cCは、Y方向において、天板3Cの長さのうちノズル基板11A側の1/3の長さの領域に形成されている。また、親インク領域3cCは、Z方向において、天板3Cの長さのうちノズル基板11A側の1/3の長さの領域に形成されている。なお、この親インク領域3cCの位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。
インクジェットヘッド100Cの製造方法は、インクジェットヘッド100Cの組立までは、実施例1のインクジェットヘッド100Aの製造方法と同様である。組み立てたインクジェットヘッド100Cには、金属等の保護材21が天板3C上に設けられ、真空プラズマ処理として、ドライエッチングを行うことにより、親インク処理され、親インク領域1cA,3cCが形成される。親インク領域3cCは、+X側から見て、ノズル基板11Aの周囲に帯状に形成されている。保護材21は、除去される。
(実施例4)
図7を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例4のインクジェットヘッド100Dを説明する。図7は、インクジェットヘッド100Dの断面図である。なお、実施例1と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、インクジェットヘッド100Dは、ノズル基板11Aと、天板3Dと、を有する。図7は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
天板3Dは、実施例2の凹部3B1と同様の位置、形状の凹部3D1を有する。但し、天板3Dは、前面の全面が親インク処理されておらず、一部のみが親インク処理されて、天板3Dの凹部3D1の前面の一部に、親インク領域3cDが形成されている。また、親インク領域3cDは、Y方向において、凹部3D1の長さのうちノズル基板11A側の1/3の長さの領域に形成されている。また、親インク領域3cDは、Z方向において、凹部3D1の長さのうちノズル基板11A側の1/3の長さの領域に形成されている。なお、この凹部3D1、親インク領域3cDの位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。
インクジェットヘッド100Dの製造方法は、インクジェットヘッド100Dの組立までは、実施例1のインクジェットヘッド100Aの製造方法と同様である。組み立てたインクジェットヘッド100Dには、保護材21が天板3D上に設けられ、真空プラズマ処理として、ドライエッチングを行うことにより、親インク処理され、親インク領域1cA,3cDが形成される。親インク領域3cDは、+X側から見て、ノズル基板11Aの周辺に帯状に形成されている。保護材21は、除去される。
(実施例5)
図8を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例5のインクジェットヘッド100Eを説明する。図8は、インクジェットヘッド100Eの断面図である。なお、実施例1と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、インクジェットヘッド100Eは、ノズル基板11Aと、天板3Eと、を有する。図8は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
天板3Eは、実施例2の天板3Bとは異なるテーパー状のリセス構造であるテーパー部3E1を有する。本実施例では、ノズル基板11Aがテーパー部3E1の前面の一番低い部分と比較してX方向において高い位置に配置されているため、テーパー部3E1の前面の一番低い部分とアクチュエーター1の側壁が接している。テーパー部3E1は、最前面の外周(テーパー部3E1におけるノズル基板11Aと逆側の最前部分)からノズル基板11Aを中に位置する開口部bの側壁(アクチュエーター1、ノズル基板11Aの側壁)にかけてなだらかに連続している。なお、テーパー部3E1は、アクチュエーター1の側壁に接しているものとするが、これに限定されるものではなく、テーパー部3E1がノズル基板11Aの側壁に接しているものとしてもよい。また、親インク領域をノズル基板11A又はアクチュエーター1の側壁にも設けておくことにより、より付着したインクをノズル基板11Aに流れ込ませやすくする観点でより好ましい。テーパー部3E1は、前面から見て、ノズル基板11Aの周辺に帯状に形成されている。テーパー部3E1の前面の一番低い部分は、ノズル基板11Aの前面よりもX方向の高さが低い。天板3Eの高い部分の前面(テーパー部3E1の前面の一番高い部分に接する平面)は、ノズル基板11Aの前面よりもX方向の高さが高い。天板3Eは、前面の全面が親インク処理されておらず、前面の一部のみが親インク処理されて、天板3Eのテーパー部3E1の前面の一部、より具体的には、天板3Eのテーパー部3E1のうち、ノズル基板11Aに隣接する領域に親インク処理された親インク領域3cEが形成されている。テーパー部3E1は、Y方向において、天板3Eの長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。また、テーパー部3E1は、Z方向において、天板3Eの長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。親インク領域3cEは、Y方向において、テーパー部3E1の長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。また、親インク領域3cEは、Z方向において、テーパー部3E1の長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。なお、このテーパー部3E1、親インク領域3cEの位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。例えば、テーパー部3E1の前面の一番低い部分のX方向の高さは、ノズル基板11Aの前面の高さ以上とし、ノズル基板11A又はアクチュエーター1の側壁を介さずにノズル基板11Aの前面に付着したミストを直接流れ込ませる構成としても良い。
インクジェットヘッド100Eの製造方法は、インクジェットヘッド100Eの組立までは、実施例1のインクジェットヘッド100Aの製造方法と同様である。組み立てたインクジェットヘッド100Eには、矩形の穴部を有する保護材21が天板3E上に設けられ、真空プラズマ処理として、ドライエッチングを行うことにより、親インク領域1cA,3cEが形成される。親インク領域3cEは、+X側から見て、ノズル基板11Aの周囲に帯状に形成されている。保護材21は、除去される。
(実施例6)
図9を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例6のインクジェットヘッド100Fを説明する。図9は、インクジェットヘッド100Fの断面図である。なお、実施例1と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、インクジェットヘッド100Fは、ノズル基板11Aと、天板3Fと、を有する。図9は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
天板3Fは、実施例5のテーパー部3E1と同様の位置、形状のテーパー部3F1を有する。天板3Fは、前面の全面が親インク処理されておらず、テーパー部3F1の前面の全面のみが親インク処理されて、天板3Fのテーパー部3F1の前面の全面に、親インク処理された親インク領域3cFが形成されている。なお、このテーパー部3F1、親インク領域3cFの位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。
インクジェットヘッド100Fの製造方法は、インクジェットヘッド100Fの組立までは、実施例1のインクジェットヘッド100Aの製造方法と同様である。組み立てたインクジェットヘッド100Fには、保護材21よりも大きな矩形の穴部を有する保護材22が天板3F上に設けられ、真空プラズマ処理として、ドライエッチングにより、ノズル基板11Aの前面の全面と天板3Fの前面の一部とが親インク化された親インク領域1cA,3cFを有する。親インク領域3cFは、+X側から見て、ノズル基板11Aの周囲に帯状に形成されている。保護材22は、除去される。
(実施例7)
図10を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド100の一実施例としての実施例7のインクジェットヘッド100Gを説明する。図10(a)〜図10(d)は、インクジェットヘッド100Fの親インク処理の各工程の断面図である。なお、実施例1と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図10(a)に示すように、インクジェットヘッド100Gは、ノズル基板11Aと、天板3Gと、を有する。図10(a)〜図10(d)は、ノズル基板11Aのノズル11aを通るXY平面の断面図である。
天板3Gは、実施例5のテーパー部3E1と同様の位置、形状のテーパー部3G1を有する。なお、このテーパー部3G1の位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。
インクジェットヘッド100Gの製造方法は、インクジェットヘッド100Gの組立までは、実施例1のインクジェットヘッド100Aの製造方法と同様である。図10(a)に示すように、組み立てたインクジェットヘッド100Gには、矩形の穴部を有する保護材31が天板3G上に設けられ、真空プラズマ処理として、所定時間のドライエッチングを行うことにより、ノズル基板11Aの前面の全面が親インク処理され、親インク領域1cAを有する。保護材31は、除去される。
次いで、図10(b)に示すように、インクジェットヘッド100Gには、保護材31よりも大きな矩形の穴部を有する保護材32が天板3G上に設けられ、真空プラズマ処理として、所定時間のドライエッチングを行うことにより、親インク領域1cAの全面と天板3Gの前面の一部とが親インク処理され、さらに親インク化された親インク領域1cAと、親インク処理された親インク領域3cGとが形成される。親インク領域3cGは、親インク領域3cG1を含む。親インク領域3cG1は、Y方向において、テーパー部3G1の長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。また、親インク領域3cG1は、Z方向において、テーパー部3G1の長さのうちノズル基板11A側の1/2の長さの領域に形成されている。保護材32は、除去される。
次いで、図10(c)に示すように、インクジェットヘッド100Gには、保護材32よりも大きな矩形の穴部を有する保護材33が天板3G上に設けられ、真空プラズマ処理として、所定時間のドライエッチングを行うことにより、親インク領域1cAの全面と、親インク領域3cG1の全面及び天板3Gの前面の一部と、が親インク処理され、さらに親インク化された親インク領域1cA,3cG1と、親インク領域3cG2とが形成される。親インク領域3cGは、親インク領域3cG1,3cG2を含む。親インク領域3cG2は、Y方向において、テーパー部3G1の長さのうちノズル基板11Aと逆側の1/2の長さの領域に形成されている。また、親インク領域3cG2は、Z方向において、テーパー部3G1の長さのうちノズル基板11Aと逆側の1/2の長さの領域に形成されている。保護材33は、除去される。
次いで、図10(d)に示すように、インクジェットヘッド100Gには、保護材33よりも大きな矩形の穴部を有する保護材34が天板3G上に設けられ、真空プラズマ処理として、所定時間のドライエッチングを行うことにより、親インク領域1cAの全面と、親インク領域3cG1,3cG2の全面及び天板3Gの前面の一部とが親インク処理され、さらに親インク化された親インク領域1cA,3cG1,3cG2と、親インク領域3cG3とが形成される。親インク領域3cGは、親インク領域3cG1,3cG2,3cG3を含む。親インク領域3cG3は、Y方向において、天板3Gの表面の長さのうちテーパー部3G1側の親インク領域3cG1と同じ長さの領域に形成されている。また、親インク領域3cG3は、Z方向において、天板3Gの表面の長さのうちテーパー部3G1側の親インク領域3cG1と同じ長さの領域に形成されている。このように、天板3Gの最前面の一部とテーパー部3G1の前面の全面とが親インク処理されている。親インク領域3cGは、+X側から見て、ノズル基板11Aの周囲に帯状に形成されている。天板3Gは、ノズル基板11AからY方向、Z方向に離れるにつれて親インク化の度合いがより低くなる(後退接触角がより大きくなる)親インク処理の4段階のグラデーション構造を有する。つまり、インクジェットヘッド100Gにおいて、天板3Gは、インクの後退接触角が最前面の外周からノズル基板11Aを中に位置する開口部bの側壁にかけて小さくなるよう変化している。保護材34は、除去される。なお、親インク領域3cG,3cG1,3cG2,3cG3の位置、形状は、一例であって、この例に限定されるものではない。また、親インク領域1cA,3cGの親インク処理の段階数は、4段階に限定されるものではない。
ここで、図11を参照して、実施例1〜7及び比較例1〜3の評価を説明する。図11は、比較例2のインクジェットヘッド100Hの断面図である。
実施例1〜7及び比較例1〜3のインクジェットヘッドの構成及び評価を次表1にまとめた。
Figure 0006596830
比較例1のインクジェットヘッドは、実施例1のインクジェットヘッド100Aと同様の構成であるが、ノズル基板及び天板に、親インク処理が施されていない。
比較例2のインクジェットヘッド100Hは、実施例1のインクジェットヘッド100Aと同様の構成であるが、ノズル基板のノズル穴近傍のみに親インク処理が施され、天板に、親インク処理が施されていない。
図11に示すように、比較例2のインクジェットヘッド100Hは、ノズル基板11Hと、天板3Hと、を有する。ノズル基板11Hは、実施例1のノズル基板11Aと同様の形状を有し、真空プラズマ処理として、ドライエッチングを行うことにより親インク処理された親インク領域1cHを有する。天板3Hは、実施例1の天板3Aと同様の形状を有する。但し、インクジェットヘッド100Hの製造時には、インクジェットヘッド100Hの組み立て後、保護材41が、ノズル基板11H及び天板3H上に設けられる。
保護材41は、全てのノズル11aの前面のノズル穴の位置に直径100μmの穴部を有する金属製のマスクである。保護材41は、その穴部が各ノズル11aのノズル穴の中心にくるようにアライメントされた後、ノズル基板11Hに接触させて固定される。そして、X方向の前面から真空プラズマ処理として、ドライエッチングが施される。保護材41は、除去される。このようにして、インクジェットヘッド100Hは、ノズル基板11Hのインク吐出側の面のうちノズル11aのノズル穴近傍の領域のみ親インク処理される。
比較例3のインクジェットヘッドは、実施例1のインクジェットヘッド100Aと同様の構成であるが、ノズル基板のインク吐出側の面のみに親インク処理が施され、天板に、親インク処理が施されていない。
表1の評価における連続射出安定性とは、連続吐出30分後の射出異常(インクの欠、曲り、速度低下)の有無の確認による評価である。連続射出安定性の評価において、吐出安定性の効果は、吐出周波数が5[kHz]以上で兆候が出始め、10[kHz]以上において、顕著となった。また、吐出安定性に関し、射出液滴1滴の液量は、42[pL]以下が適切であり、30[pL]以下が好ましく、15[pL]以下で、より高い効果を確認できた。
また、連続射出安定性の評価において使用したインクには、ミストが舞いやすい粒子を含むインクを用いる。インクジェットヘッドに使用されるインクの粒子径の領域は、平均粒径で1[nm]〜10[μm]程度である。本実施の形態のインクジェットにおいて好ましい粒子径の範囲としては、10[nm]~3[μm]であり、50[nm]〜600[nm]がより好ましい。この範囲には、通常の有機系顔料インクと通常の無機系顔料インクとも含まれる。
インクの密度としては、0.75〜2.2[g/cm]を好ましく用いることができ、より好ましい密度としては、0.75〜1.8[g/cm]である。この範囲には、通常の有機系顔料インク、通常の無機系顔料インク、銀インクが含まれる。
表1の連続射出安定性の評価において、吐出液滴量が平均14[pL]の液滴を吐出可能な512のノズル穴を有する実施例1〜7及び比較例1〜3のインクジェットヘッドを作製し使用した。使用するインクの有機溶剤としてn−テトラデカン用いると共に平均粒子径250[nm]の顔料を5[wt%]を含有させたインクを使用した。
駆動回路からインクジェットヘッドにパルス信号を送ることにより吐出周波数10[kHz]で上述したインクを出射しながら、搬送速度24[m/min]で紙を搬送させ連続吐出印画試験を行った。このとき、30分経過後連続吐出印画を止め、一度ノズル検査パターンを描画した。全ノズルについて、着弾したドッドの有無、射出角度を測定した。
表1の連続射出安定性の評価において、
◎:着弾ドットが観測されなかったノズルはなく、全吐出ノズルも−1°〜+1°の範囲におさまる、
○:着弾ドットが観測されなかったノズルはないが、全吐出ノズルが、−1°〜+1°の範囲におさまらない、
△:着弾ドットが観測されなかったノズルが、1〜20個存在する、
×:着弾ドットが観測されなかったノズルが、20個以上存在する、
とした。
表1の連続射出安定性の評価では、比較例1〜3のインクジェットヘッドは、いずれも×となり、良好でない評価となった。実施例1〜7のインクジェットヘッドは、いずれも△以上となり、比較例1〜3のインクジェットヘッドに比べて良好な評価が得られた。特に、実施例1、2、5〜7のインクジェットヘッドは、いずれも○以上となり、より良好な評価が得られた。さらに、実施例7のインクジェットヘッドは、◎となり、最も良好な評価が得られた。
以上、本実施の形態によれば、実施例1〜7のインクジェットヘッドは、ノズル基板と、ノズル基板を取り囲む天板と、を備え、ノズル基板のうち、ノズルからインクが吐出される側の面(前面)の全面と、天板のうち、ノズルからインクが吐出される側の面の少なくとも一部と、が親インク処理されている。
このため、インクジェットヘッドの連続使用環境で生じる傷に対しても劣化がない上に、たとえ発生したインクのミストが多い環境下でミストが親インク処理された部分に付着しても、ごく薄い液膜を形成した状態を維持するため、ノズル面の状態に変化が生じず、インクの連続吐出中も安定化した吐出特性を得ることができる。
また、実施例2、4〜7のインクジェットヘッドにおいて、天板は、リセス構造部を有し、ノズル基板は、天板の最前面よりも低い位置に配置されている。例えば、図5、図7のインクジェットヘッド100B,100Dにおいて、ノズル基板11Aは、天板3B,3Dの最前面(凸部の前面)よりも低い位置に配置されている。また、図8〜図10のインクジェットヘッド100E,100F,100Gにおいて、ノズル基板11Aは、天板3E,3F,3Gのテーパー部3E1,3F1,3G1の最も高い部分に接する最前の平面よりも低い位置に配置されている。このため、リセス構造部により、記録媒体等とノズル基板とが接触しにくいため、ノズル基板の表面を保護できる。なお、ノズル基板は、天板の最前面と等しい高さ、又は天板の最前面より高い高さの位置に配置されている構成としてもよい。
また、実施例5〜7のインクジェットヘッドにおいて、天板のリセス構造部は、最前面の外周からノズル基板を中に位置する開口部の側壁にかけてなだらかに連続するテーパー部であることが好ましい。この構成によれば、天板に付着したインクをノズル基板のノズル面近傍になだらかに流れ込ませることができる。
また、実施例1〜7のインクジェットヘッドにおいて、親インク処理は、真空プラズマ処理である。このため、ムラなく全面を親インク処理することができる。
また、実施例1〜7のインクジェットヘッドにおいて、真空プラズマ処理は、ドライエッチングである。このため、短時間で親インク処理を行うことができる。
また、実施例7のインクジェットヘッドにおいて、天板は、インクの後退接触角が最前面の外周からノズル基板を中に位置する開口部の側壁にかけて小さくなるよう変化している。このため、天板の最前面の外周からノズル基板の開口部の側壁にかけてインクへの親和性を変化させ、親和性のグラデーションをつくることで、インクが親インク処理された部分に付着しても、ごく薄い液膜を形成して液だまりを防ぎ、薄い液膜の流れをつくり、インクをノズル基板のノズル穴に回収できる。
また、実施例1〜7のインクジェットヘッドは、吐出するインクが粒子を含むインクである。このため、粒子を含むためミストが舞いやすいインクの連続吐出中も安定化した吐出特性を得ることができる。
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る好適なインクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッドの一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態(実施例)の構成、下記の構成のうち、少なくとも2つを適宜組み合わせる構成としてもよい。
また、上記実施の形態では、真空プラズマ処理として、ドライエッチングを用いて親インク処理を行う構成としたが、これに限定されるものではない。親インク処理をウェットエッチングで行う構成としてもよい。この構成によれば、インクジェットヘッドの電装系へのダメージのリスクを低減できる。
また、以上の実施の形態におけるインクジェット記録装置1000を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
1000 インクジェット記録装置
200 搬送部
210 巻き出しロール
220,230 ローラー
240 巻き取りロール
300 画像形成部
310 ラインヘッド
320 照射部
330 キャリッジ
330a キャリッジヒーター
400 インク供給部
410 インクタンク
420 ポンプ
430 インクチューブ
440 サブタンク
440a フロートセンサー
450 インクチューブ
460 ヒーター
500 制御部
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H インクジェットヘッド
1 アクチュエーター
11,11A ノズル基板
11a ノズル
2 筐体
3,3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3H 天板
1a,3a 前面
1cA,3cA,3cB,3cC,3cD,3cE,3cF,3cG,3cG1,3cG2,3cG3,1cH 親インク領域
3B1,3D1 凹部
3E1,3F1,3G1 テーパー部
4,5 接着剤層
b 開口部
21,22,31,32,33,34,41 保護材

Claims (7)

  1. インクを吐出するノズルを有するノズル基板と、
    前記ノズル基板を取り囲む天板と、を備え、
    前記ノズル基板のうち、前記ノズルからインクが吐出される側の面の全面と、
    前記天板のうち、前記ノズルからインクが吐出される側の面の少なくとも一部と、が親インク処理されており、
    前記天板は、インクの後退接触角が最前面の外周から前記ノズル基板を中に位置する開口部の側壁にかけて小さくなるよう変化し、前記ノズル基板はインクの後退接触角が一様であることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記天板は、リセス構造部を有し、
    前記ノズル基板は、前記天板の最前面よりも低い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記リセス構造部は、最前面の外周から前記ノズル基板を中に位置する開口部の側壁にかけてなだらかに連続するテーパー部であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記親インク処理は、真空プラズマ処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記真空プラズマ処理は、ドライエッチングであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記天板の一部は、
    前記天板の前記ノズルからインクを吐出させる方向側に位置する面のうち、前記ノズル基板に隣接する領域であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記インクジェットヘッドは、吐出するインクが粒子を含むインクであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
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