以下、本発明の一実施例を図1から図14に従って説明する。
図1は、一実施例の加熱調理器であるクッキングヒータを、システムキッチン1に設置した状態の斜視図であり、図2は、クッキングヒータの分解した図である。また、図3は
プレート3を外した本体2内部の上面図である。
図1、図2において、1はシステムキッチン、2はクッキングヒータの本体で、図ではシステムキッチン1の天板1aに設けられた開口部からクッキングヒータ本体2を落とし込んで据え付けている状態を示す。3はこの本体2の上面部に配置されるプレートで、被加熱物が載置されるもので、耐熱性が高いガラスやセラミックで形成されている。本実施例では、上面3bに載置した鍋を誘導加熱し、発熱した鍋底の温度をプレート3を介して検出する。
4はプレート3の外周端面四辺を保持し保護するプレート枠である。6は被加熱物である鍋(図示無し)を載置する位置を示す載置部で、この載置部6のプレート3を挟んで対応した位置に三口の前記鍋を誘導加熱する加熱コイル60が設置されている。ちなみに、載置部6は、プレート3の上面手前の右に載置部右6a、左に載置部左6bが配置され、これら両載置部6a、6b間の奥(中央後部)に載置部中央6cが配置されている。
前記した渦電流は、右加熱コイル60a、左加熱コイル60b、中加熱コイル60cに例えば20kHz〜40kHz程度の高周波電流を流して磁束を時間的に変化させることで発生する。右加熱コイル60a(60a1、60a2)(図3)、左加熱コイル60b(60b1、60b2)(図3)、中加熱コイル60c(60c1、60c2)(図3)は、インバータ回路の駆動によって高周波電流が流れる加熱コイルで、加熱コイル60の外周には加熱コイル60外周に磁束が漏れるのを防止するシールドリング61が設けられている。このシールドリング61と載置部6を示す位置とは略一致する位置関係にある。また、コイルベース31に載置されている。加熱コイル60の中心付近にプレート3の下面3a(図4参照)に接触してプレート3越しに鍋底の温度を検出する温度センサ34が設置されている。図2では、各加熱コイル60に一個の温度センサ34を図示しているが、他に後述する隙間60a3、隙間60b3、隙間60c3(図3参照)に図示していない複数の温度センサ34を設けている。
コイルベース31は、3つの支持部32(例えば、バネ)で支持され、この支持部32によって上向きの付勢力が与えられている。これによって、加熱コイル60はプレート3の下面3a(図4)に押し付けられ、被加熱物と加熱コイル60との距離が一定に保たれる。
そして、本体2には後述のオーブン11を覆う仕切板2bの上方に設けた基板台73a、73b上に載置した右基板7a、左基板7bと、右基板7a、左基板7bを覆うように設けられる右基板カバー66a、左基板カバー66bと、ファン装置Fとを備えている。
9はプレート3の前側に設けられた上面操作部で、前記鍋を加熱する加熱コイル60の火力や加熱時間の設定を行う。10は上面操作部9の奥側に位置する上面表示部で、上面操作部9にて設定された情報の表示を行う。
2aは本体2の後方に設けられた吸気口で、本体2の内部に備わる加熱コイル60や加熱コイル60に電源を供給するインバータ基板、制御基板内の発熱する電子部品を冷却するのに使用される外気を吸引するところである。8は本体2の後方のバックフレーム23に設けられた排気口である。ファン装置Fにより吸気口2aより吸気された外気が発熱部品である加熱コイル60や電子部品を冷却した後の廃熱を排気口8より本体2外に排出される。
11は魚や肉、ピザ等の被加熱物を焼くオーブンで、11aはオーブンのドアである。なお、オーブン11で発生した排熱も排気口8から排出される。5は主にオーブン11の調理条件を設定するために設けられた前面操作部である。
本体2に、収めて設置された基板や表示部等や、加熱コイル60のさらに上から蓋をするようにプレート3が設置されている。
図2に示すように、本体2の上面開口部に配置されるプレート組14は、プレート3と、プレート3の外周を保護するプレート枠4と、プレート3の下面3a(図4)外周を保持する保持部材15(図4)と、プレート3の下面に保持される操作表示基板17(図4)とで構成される。
プレート枠4は、プレート3の左右の辺を保護するサイドフレーム21と、プレート3の前辺を保護するフロントフレーム22と、プレート3の後辺を保護するバックフレーム23から構成される。なお、サイドフレーム21はプレート3の右側の辺を保護するサイドフレーム右用とプレート3の左側の辺を保護するサイドフレーム左用があるが、ここではサイドフレーム21として同じ番号で図示し説明する。
図3で加熱コイル60について説明する。
本体2の右基板7a、左基板7bを覆う右基板カバー66a、左基板カバー66bの上にコイルベース31で支持して加熱コイル60が設けられている。以下では、代表で右加熱コイル60aについて説明する。
右加熱コイル60aは、同心円状の同一平面上に設けられた内側加熱コイル60a1と外側加熱コイル60a2で構成され通常二重加熱コイルと呼ばれ、内側加熱コイル60a1の外端と外側加熱コイル60a2の内端が電気的に接続されている。内側加熱コイル60a1と外側加熱コイル60a2との間には隙間60a3を設けて配置している。内側加熱コイル60a1の内側の径は内径M、外側加熱コイル60a2の外側の径は外径Lである。図3に示すように、左加熱コイル60b、中加熱コイル60cともに同様の構造となっている。また図3に示すように、隙間60a3、隙間60b3には、非接触タイプの赤外線センサRを設けている。左加熱コイル60bにも同様に赤外線センサRを設けている。
図4は、プレート組14を裏返した状態を示し、プレート3の下面3aを示す図である。プレート組14はプレート3の下面3aにプレート3の外周を保持する保持部材15と、プレート3の外周を保護するプレート枠4と、プレート3の下面3aの手前に保持される操作表示基板17とで構成する。プレート3の下面3aの外周には保持部材15がシリコン等の接着剤で貼り付けている。
保持部材15は、鋼板1枚よりプレス加工して作製したものである。保持部材15の前縁部15aには操作表示基板17を支持する複数の支持部15cを備えた基板支持部15bを一体に構成している。支持部15cは操作表示基板17の左右端部を支持する部分と、左右に渡る複数個所(約7箇所)を支えるものである。
図4に示すように、プレート3の下面3aには印刷16が施され、ベース16g(図14に示す主色塗料16a)で外観を装飾し、且つ、本体2内部の構成部品をプレート3上面から見えないようにしている。また、印刷16を施さない窓16fを設け、本体2内部に配置する液晶や発光体などによる火力表示などをプレート3の上面3bから視認できる上面表示部10を構成する。
プレート3の上面3bは、場合により載置部6周囲に鍋の横滑り防止のため直径約1mmのドット柄16e(図14)が印刷されているものがある、ここでは図示を省略する。
下面3aには、図2で示した載置部6を示す載置部表示をベース16g(主色塗料16a)と異なる色で明瞭に印刷される。また、プレート3の手前には、横一列に操作キーの枠と名称などを示す入力部の表示が配置される。
次に、図5、図6を用いて、プレート3の下面3aに設ける温度センサ70について説明する。プレート3の下面3aに設けられた温度センサ70(41、42、43、44、45)は、加熱される鍋(被加熱物)の鍋底の温度検出を行うものである。この温度センサ70は、温度に応じて導体抵抗が変化する銀ペースト、銅ペースト等の導電材料を線状に塗布したものであり、プレート3を介して熱伝導した鍋底温度をその抵抗変化に基づいて検出するものである。本実施例では、加熱コイル60に対向したプレート3の面(下面3a)に導体40を印刷し、導体40の温度に依存して変化する抵抗変化を捉えている。
なお、導体40としては、銀ペーストに代え、基材に銀箔、または、銅箔を張り付け、該銅箔をエッチングにより不要部を取り除いた導体40を設けてもよい。そして前記基材をプレート3と加熱コイル60との間に設けても良い。前記基材は硬質でも軟質でも良い。さらに銅箔などの温度によって抵抗変化する導体40を加工(裁断)して導体40を設けても良い。
本実施例では、プレート3に導体40をスクリーン印刷で塗布して、焼き付けた構成について以下説明する。図14に示すように、プレート3の主材であるガラスの下面3aから順に主色塗料16a、耐熱塗料16b、導電塗料(導体40)、耐熱塗料16cと積層する。導体40の端子部40cは、銀ペーストの導体40にカーボンを重ねて導通を確保して最も下の耐熱塗料16cの下へ露出して設けている。すなわち、導体40が塗料に埋設するように設けられている。重ね塗りをする理由は、導電塗料(導体40)が透明なプレート3を使用した場合は上面3b側から見えないようにするためであり、また本体2の内部は発熱部品によって温度上昇し、冷却用として吸気した空気に導体40が暴露される事の無いように耐環境性を確保するためである。もし、プレート3の基材に不透明な材料を使用した場合、プレート3の下面3aに導体40を印刷した後重ね塗りをしても良い。導体40の引き回しを見えるようにデザインする場合も同様にプレート3の下面3aに導体40を印刷した後に重ね塗りしてもよい。導体40の塗布後に重ね塗りする理由として、特に注意する現象である銀のマイグレーション現象を防止して、導体40の短絡を防止している。
次に、温度センサ70(導体40)について説明する。温度センサ70は、温度検知部40aと引き出し線40bと端子部40cとの3の構成から成っている。図6で例えば、導体43a(温度センサ70)で説明すると、温度検知部43a1と引き出し線43a2と端子部43a3である。
また温度センサ70は、一端側の端子部40cから他端側の端子部40cまで交わる事が無く途切れる事の無い同じ太さの導体40を平行線で構成している(端子部40cへの引き回し部を除いて)。例えば導体43a(温度センサ70)で説明する。往路は一端側の端子部43a3から一端側の引き出し線43a2そして一端側の温度検知部43a1を経て、この温度検知部43a1の先端部43a5で折り返して、復路は、他端側の温度検知部43a1から他端側の引き出し線43a2そして他端側の端子部43a3へと交わる事が無く途切れる事の無い同じ太さの線状の導体40を平行線で描いた構成となっている。
導体40を平行線(略導体の幅一本分の間隔をあけた状態)で構成し、隣接する導体40に流れる電流の向きが相反する向きとすることで、加熱時の加熱コイル60の磁束の影響を軽減している。
また、導体40を折り返して平行線を構成する事で、導体40の往路と復路の長さが同じにすることで加熱時の加熱コイル60の磁束の影響を軽減している。
さらに、温度センサ70の導体40は、径方向に振れる矩形波状を周方向に並べて配置し、加熱コイル60の周方向の巻回と直交して配置することで、加熱時の加熱コイル60の磁束の影響を軽減している。加えて、温度センサ70の導体40には交流の電流を流すことで、平行線で近接する導体間に発生するマイグレーション現象を防止している。
次に、温度センサ70(導体40)の引き回しについて説明する。温度センサ70は、鍋を載置部6に載置して加熱した時に、鍋底の温度が高くなる位置の温度を効率よく検知できるように、右加熱コイル60aと略対向するプレート3の下面3aの位置に導体43と導体44を設けている。左加熱コイル60bも同様の導体41と導体42を設け、中加熱コイル60cでは外側加熱コイル60c2側のみに対向面に導体45を設けている。以下温度センサ70の説明は代表して右加熱コイル60a側に設けた温度センサ70について説明する。
加熱コイル60に対向した下面3aに設けた温度センサ70は、加熱コイル60のコイル形状に沿って、円周方向に複数個の独立した温度センサ70からなっている。例えば、図6に示すように右加熱コイル60aに対向するプレート3の下面3aに設けた温度センサ70(導体43、44)は、導体43a〜導体43fと導体44a〜導体44bの8個の独立した温度センサから成る。二種類の導体43と44の違いについて説明する。導体44は加熱コイル60aの後方側に配置し、導体44は導体43より加熱コイルの中心寄りまで配置し、加熱コイルの中心部の温度を検知できるように配置されている。加熱コイル60bに設けた導体42も同様に、導体42は導体41より加熱コイルの中心寄りまで配置し、加熱コイルの中心部の温度を検知できるように配置されている。
各導体40の引き出し線40bは、磁束の影響を最小限にするため加熱コイル60を直交して最短距離でシールドリング61の外側に引き出している。その際、シールドリング61を横切るときも直交するようにしている。
また、最低限、同一加熱コイル60に対向したプレート3の下面3aに設けられる複数の独立した温度センサ70の導体40の全長は同じ長さに定め、前記複数の導体40の温度検知部40aの導体の長さも同じに設けられている。例えば、右加熱コイル60aの場合は、右加熱コイル60aに対向するプレート3の下面3aに独立して設けられた8個の導体(43、44)の全長は、導体43a〜43fと導体44a〜44bは全て同じである。また、各導体の温度検知部43a1〜温度検知部43f1と温度検知部44a1と温度検知部44b1の長さは全て同じ長さとなっている。理由は、加熱している時の鍋底の極小部の異常加熱を検出するために、同一鍋の鍋底の温度を検出している8個の温度センサ70は、単位長当たりの温度変化による抵抗変化を同じに設定している。そして、8個の温度センサ70が検出する温度変化から温度変化率を監視し、複数の温度センサが示す温度変化率に対して急激に温度変化率が大きい値を示す温度センサ70を配置した位置に対応する鍋底の温度が異常加熱していると判断できる。もしくは、特定の温度変化率以上に大きな変化率を示した時に異常と判断しても良い。各温度センサ70の全長(抵抗値)が異なる場合はソフトで補正することも可能である。本実施例ではすべての導体40の太さ、長さ、抵抗値を略統一している。
温度センサ70は、鍋の温度変化を捉えて抵抗変化するため、導体40の引き出し線40bの長さは短い方が良い。また、最低限の長さに全数の導体40の長さをそろえる必要がある。そこで、全数の導体40を最短距離で描ける引き回しにおいて、一番線長が長くなる導体40の線長に全数の導体40の長さを揃えるものである。そのため、温度検出部40aから引き出した引き出し線40bを最短距離で加熱コイル60とシールドリング61を直交した後、一カ所に集められた端子部40cに引き出し線40bを最短距離となるように引き回すと良い。この場合、先に決めた導体40の長さでは引き出し線40bの長さが長い場合が発生するので、引き出し線40bには引き出し線40bを折り返して長さを調整する調整部40dを設けている。この調整部40dは加熱している鍋の温度の影響を受けにくい場所に設けると最適である。しかし、スペースや導体40の長さの関係で調整部40dを鍋の温度の影響を受けにくい場所に設けられない場合は、調整部40dをシールドリング61の外側に設けることでも良い。シールドリング61の外側では加熱コイル60の磁束の影響を受けにくくなるので、鍋底がシールドリング61の外側に出ている箇所では加熱時に異常加熱されることは無く、シールドリング61の外側に出ている鍋底の温度は加熱コイル60上方の加熱されている鍋底からの熱伝導によって加熱された熱によって温度上昇し、その熱がプレート3を介して引き出し線40bに熱が伝わる。その場合、シールドリング61の外側の引き出し線40bに鍋底の温度の影響が無い場合と比べて、導体40の抵抗値は異なるが温度変化率はほぼ同じになる。そのため、複数の導体40の示す温度変化率に対して急激に温度変化率が大きい値を検出した時に鍋底の異常加熱を検出するシステムでは特に問題は無い。もちろん調整部40dの隣接する導体40の引き回しは平行である。
なお、ここでは、温度センサ70の、温度検知部40aと引き出し線40bに同じ導電材料を用いる例を示したが、温度検知部40aと引き出し線40bを異なる版で印刷し、温度検知部40aの抵抗変化率を引き出し線40bの抵抗変化率よりも大きくしても良い。このように構成することで、鍋温度を測定する温度検知部40aの感度を高めつつ、引き出し線40bが検出するノイズの影響を低減することができる。
次に、温度検知部の導体の配置について説明する。
初めに、本実施例で説明する誘導加熱調理器に使用される加熱コイル60は、被加熱物である鍋底を均一に加熱するため、略帯状の円形形状で構成し、また鍋の径の大小にも対応できるコイル幅を備えている。
加熱コイル60の種類は、全コイルを同一ピッチで巻いた一重コイル形状と、巻回の途中でピッチを広めた箇所を一カ所設けた二重コイル、ピッチを広めた箇所を二カ所設けた三重コイルなどが有る。本実施例で説明する加熱コイル60は、内側加熱コイル60a1(コイル幅H1)と外側加熱コイル60a2(コイル幅H2)と隙間から成る二重コイルの例である。
そして、異常加熱の発生は、鍋を誘導加熱するために発生する磁束の強い位置に特に多く発生する。その位置は、加熱コイル60が一重の場合はコイル幅の略中心の位置、二重コイルの場合は外側加熱コイル60a2(コイル幅H2)の略30%の加熱コイル60中心寄りの位置となる。また、異常加熱の発生する場所は、被加熱物の状態(鍋の径の大きさ、鍋底の凹み、鍋の中身など)に応じて加熱コイル60の内径M側、もしくは外周部側へと、その半径方向で移動する。
この磁束の強い位置、また異常加熱の発生する場所は、正常時の鍋底の温度の高い個所として温度ムラとして発生する場所でもある。
導体40で異常温度を検知する方法は、同一の加熱コイル60に複数の導体40(温度検知部40a)を備え、正常時は全ての温度検知部40aの検知温度の変化が略同じに推移し、異常温度が発生した時は、その異常温度が発生した鍋底に対向して配置してある温度検知部40a(一カ所、もしくは二カ所の少数の温度検知部40a)が他の温度検知部40aの温度変化と比較して著しく高い温度を検知した時に異常と判断できるように配置するものである。
そこで、前記した異常温度の発生する位置と場所と前述した検知方法から、温度検知部40aの配置は、正常時の温度の高い個所が発生しても全数の温度検知部40aが同等に温度変化を検知できる配置として、加熱コイル60の中心を通る半径方向にコイル幅を等分に分割した略扇形状(加熱コイルの周方向に等分した)の領域に温度検知部40aを配置したものである。そして温度検知部40aの配置方法は、加熱コイル60の周方向の巻回と直交するよう加熱コイル60の円周方向に温度検知部40aを径方向に長くして径方向に振れる矩形波状に引き回している。この該矩形波は一段(導体45)、もしくは外周方向に複数段(導体41〜導体44)設けている。
よって、温度検知部40aは、加熱コイル60の外径Lから出願人が使用可能鍋として説明書等に示す直径120mmの鍋の径までの間を、径方向と周方向に連続する配線を設けている。
また、加熱コイル60aの隙間60a3プレート3の下面3aに接触させて温度を測定する例えばサーミスタ等の温度センサ34を複数設け、プレート3の下面3aに設けた温度検知部43a1〜43f1、44a1、44b1に接触させて配置している(図示せず)。
以上説明したように、温度センサ70は、加熱コイル60によって加熱される被加熱物(鍋)の鍋底の温度検出できるように、加熱コイル60と対向するプレート3の下面3aに略加熱コイル60の形状に合わせ、コイル形状の円周に対向して独立した複数の温度センサ70(導体40)を設けたものである。正常時は同一加熱コイル60上に設けた独立した各温度センサ70は、加熱時にほぼ同じ温度上昇を示す。何かの理由で鍋底の一部分が異常加熱した時は、異常加熱した鍋底の位置と対向する箇所に配置した温度センサ70が加熱されて導体40の抵抗が急激に変化することで異常加熱の発生を検出する事ができる。また、前記検出時に同一加熱コイル60の上に配置した他の温度センサ70の温度検出状態と比較する事で、何らかの影響で部分的に異常加熱していることが正確に検出する事が可能となる。また、これらの比較から、各温度センサ70の剥離や、プレート3の破損を検出することもできる。
また、導体40の抵抗値変化で温度ムラを検出してもよい。載置部6以外に高温の鍋の
載置を検知できるように温度検知部40a以外の引き出し線40bで温度を検出しても良
い。
異常加熱の発生を検出するには、異常加熱した鍋底の位置と対向する箇所に配置した温度センサ70の温度上昇を、同一加熱コイル60の上に配置した他の温度センサ70の温度上昇と比較して、その差異が十分判別可能でなくてはならない。
つまり、プレート3上で右加熱コイル60aの上面3bに設けた載置部右6aに鍋を置いて右加熱コイル60aに対向する下面3aに設けた導体(43、44)の温度上昇を比較する。導体(43a〜43f、44a、44b)でなる8個の導体(43、44)を比較する。この8個の導体(43、44)の中で抵抗値の大小差異が生じ、この生じた差異を判別して異常加熱の発生を検出する。
これを図7の温度検知部43a1で説明する。例えば鍋底の形状が一部凸形状になる等、特異なものでプレート3との接触部が局所的に高温になる場合や、鍋底内部の一部に食材が沈下して、プレート3との接触部が局所的に高温になる場合が考えられる。その鍋底形状や食材の大きさを考慮すると、直径30mmの円に相当する面積部90の温度上昇を温度センサ70(導体43a)で検知し、同一加熱コイル60(右加熱コイル60a)の上に配置した他の温度センサ70(導体43b、43c、43d、43e、43f、44a、44b)と比較して判別可能である必要がある。
そのために、温度センサ70の導体40の全長に対して10%以上の長さが直径30mmの円に相当する面積部90の内部を通過するように、温度検知部43a1の導体40の配線の疎密を設定している。例えば、導体40の全長約2400mmに対し、直径30mmの円に相当する面積部90の内部を長さ240mm以上の導体40が通過するように、導体40の配線の疎密を設定すれば良い。この導体40の配線の疎密度合は、温度検知部43b1〜温度検知部43f1、温度検知部44a1、温度検知部44b1も同一に設定している。
また温度検知部44a1と温度検知部44b1は、プレート3に設ける赤外線センサ用透明窓部49と及び、赤外線センサRの赤外線入射部R1を避けて周囲に配置する。加熱コイル60aの隙間60a3に設けた赤外線センサRによる鍋底温度検出の妨げとならないようにしている。
また赤外線センサ用透明窓部49の近傍に位置する温度検知部44a1と温度検知部44b1は、内径側(前側寄り)へ突出して配線した内径部Zを備える。
内径部Zを設けているため、温度検知部44a1と温度検知部44b1からの前後方向の内径Sは、温度検知部43a1〜温度検知部43f1の左右方向の内径Pより小さく、半径方向で、より内側にまで配置されている。
赤外線センサ用透明窓部49の近傍に位置する温度検知部44a1と温度検知部44b1の導体の長さも、前述の通り、その他の温度検知部43a1〜温度検知部43f1の導体の長さと同一にする必要がある。これは例えば円形の鍋底の鍋を加熱コイル60aの中央に設置し、加熱した場合、複数の温度センサ70の間で温度上昇に差が生じないようにし、異常加熱と誤って判定させないためである。
図8の例は、加熱コイル60aの中心位置に直径180mmの鍋底径の鍋80を置いた場合を示す。図9の例は、加熱コイル60aの中心位置に直径120mmの鍋底径の鍋81を置いた場合を示す。いずれの場合も鍋底の下に隠れる温度検知部43a1〜温度検知部43f1、温度検知部44a1、温度検知部44b1の導体40の面積は等しくなるため、異常加熱と誤って判定することはない。直径120mmの鍋は、出願人が使用可能鍋として説明書等に示すものである。
これにより、図10に示すように、例えば使用者が、直径120mmの鍋底径の鍋81を加熱コイル60aの中心から手前側に20mmずらして設置した場合も、鍋底の下に隠れる温度検知部44a1、温度検知部44b1も含まれ、内径部Zによって含まれる面積が大きくなるため、温度を検出しやすくなる。使用者は鍋の中を覗くことで、無意識に鍋が使用者側に寄ることが多いための配慮である。本実施例によると、使用する鍋の鍋底径や鍋の設置位置によらず、精度よく異常加熱を検知できる。
温度センサ70は、プレート3に載置されている鍋底の温度検出以外に、温度センサ70(導体40)の断線検知の機能を利用したプレート3の割れ検知や後述する端子接続部46の接続不良の検出も可能である。そのため、温度センサ70の配置は加熱コイル60対向するプレート3の下面3a以外に鍋を載置する可能性の有る位置に配置して、プレート3の割れ検知や高温の鍋検知に使用する事が出来る。図5に示す導体40の配置例としては、端子接続部46の近傍に導体47と、上面表示部10の近傍に導体48を配置している。
また、温度センサ70の状態確認として、加熱コイル60に設けた温度センサ34の検出温度に基づいて温度センサ70の抵抗値を確認している。調理を開始するために本体2の電源スイッチ(図示無し)を入れた時、温度センサ34の検出温度を確認して、全ての温度センサ34の検出値が特定温度以下(例えば35℃以下)の時に、温度センサ70の導体40の配置されている近傍の温度センサ34の温度をもとに温度センサ70の導体抵抗を補正している。
次に、端子接続部46について説明する。各温度センサ70の端子部40cは、略一カ所に集め接続端子部46を形成している。各端子部40cはプレート3の鍋の載置される可能性の低い上面表示部10の近傍の前側に集結して設け、後述する接続部57で接続されて制御手段に接続される。
端子部40cは、後述のピン51を接触して接続するため、本体2にプレート3を組み付けるときの取付けバラツキの位置ずれ、部品寸法公差等を吸収できるように考慮して、端子部40cの面積を後述のピン51が動く範囲より広くして、ピン51が必ず接触できる大きさとして設けている。
また、端子接続部46は、ファン装置Fから送風される冷却風の通り道に配置しない。ファン装置Fから送風される冷却風は図2に示す矢印方向に流れて各基板に搭載された電子部品や各加熱コイル60を冷却した後、排気口8に向かって流れ、排気口8より本体2の外側に排気される。端子接続部46は冷却風の通る経路に設けないことで、吸気口2aから吸い込んだ小さなほこりなどが端子接続部46に付着するのを防止している。
図11〜図13を用いて接続部57について説明する。基板50はピン51を固定部51bで固定している。基板50は基板ホルダ52に固定されている。基板ホルダ52は、本体2内の構造体である基板カバー66に固定した弾性部材であるバネ53を介して保持している。基板ホルダ52には支柱56を備えている。基板ホルダ52を弾性部材であるバネ53で押し上げるように支えて、支柱56はプレート3に押し当てて当接部54で当たって、本体2からプレート3が押し上げられる圧力を略一定にする。プレート3に設けた端子接続部46と、本体2側に設けた基板50の距離を一定に保つ構造である。
バネ53によって押し上げる力は、端子接続部46にピン51を押し当てて、ピン51のバネ部51cのたわみ量を確保して、ピン51が疲労しないようにしている。ピン51は、当接面51aと傾斜するバネ部51cによって当接面51aが上下に動き、上下に動きながら前後に移動して当接する。これにより、両者の確実な当接を実現できる。
なお、以上の実施例では、温度センサ70をプレート3の裏面に設けた構成を示したが、プレート3の表面に温度センサ70を設ける構成としても良い。この場合には、温度センサ70上に保護層を塗布して、温度センサ70を保護する構成とするのが好ましい。