以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。無線LANの規格書として知られているIEEE Std 802.11TM−2012およびIEEE Std 802.11acTM−2013は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態に係る無線通信装置の機能ブロック図を示す。この無線通信装置は、無線通信基地局または無線通信基地局と通信する無線通信端末に実装されることができる。無線通信基地局(以下、基地局)も、無線通信端末(以下、端末)の一形態である。以下では端末と言うときは、説明上、特に両者を区別する必要がない限り、基地局も含んでもよい。
図1に示されるように、端末(非基地局の端末および基地局)に搭載される無線通信装置は、上位処理部90、MAC処理部10、PHY(Physical;物理)処理部50、MAC/PHY管理部60、アナログ処理部70(アナログ処理部1〜N)及びアンテナ80(アンテナ1〜N)を含む。Nは1以上の整数である。図では、N個のアナログ処理部と、N個のアンテナが一対ずつ接続されているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えばアナログ処理部の個数が1つで、2つ以上のアンテナがこのアナログ処理部に共通に接続されてもよい。MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、およびPHY処理部50は、他の端末(基地局を含む)との通信に関する処理を行う制御部またはベースバンド集積回路の一形態に相当する。アナログ処理部70は、例えばアンテナ80を介して信号を送受信する無線通信部またはRF(Radio Frequency)集積回路の一形態に相当する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、当該ベースバンド集積回路(制御部)およびRF集積回路の少なくとも前者を含む。ベースバンド集積回路の機能は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。ソフトウェアはROM、RAM等のメモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶媒体に格納してプロセッサにより読み出して実行してもよい。メモリはSRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
上位処理部90は、MAC(Medium Access Control:媒体アクセス制御)層に対して上位層のための処理を行う。上位処理部90は、MAC処理部10との間で信号をやり取りできる。上位層としては、代表的なものとしては、TCP/IPやUDP/IP、さらにその上層のアプリケーション層などが挙げられるが、本実施形態はこれに限定されない。上位処理部90は、MAC層と上位層との間でデータをやり取りするためのバッファを備えていてもよい。上位処理部90を介して有線インフラに接続するようになっていてもよい。
MAC処理部10は、MAC層のための処理を行う。前述のように、MAC処理部10は、上位処理部90との間で信号をやり取りできる。更に、MAC処理部10は、PHY処理部50との間で、信号をやり取りできる。MAC処理部10は、MAC共通処理部20と送信処理部30と受信処理部40を含む。
MAC共通処理部20は、MAC層での送受信に共通する処理を行う。MAC共通処理部20は、上位処理部90、送信処理部30、受信処理部40及びMAC/PHY管理部60と接続し、夫々との間で信号のやり取りをする。
送信処理部30及び受信処理部40は、相互に接続している。また、送信処理部30及び受信処理部40は、夫々MAC共通処理部20及びPHY処理部50に接続している。送信処理部30は、MAC層での送信処理を行う。受信処理部40は、MAC層での受信処理を行う。
PHY処理部50は、PHY層のための処理を行う。前述のように、PHY処理部50は、MAC処理部10との間で信号をやり取りできる。PHY処理部50は、アナログ処理部70を介してアンテナ80に接続されている。
MAC/PHY管理部60は、上位処理部90、MAC処理部10(より詳細には、MAC共通処理部20)及びPHY処理部50の夫々と接続されている。MAC/PHY管理部60は、無線通信装置におけるMAC動作及びPHY動作を管理する。
アナログ処理部70は、アナログ/デジタル及びデジタル/アナログ(AD/DA)変換器やRF回路を含み、PHY処理部50からのデジタル信号を所望の周波数のアナログ信号に変換してアンテナ80から送信、またアンテナ80から受信した高周波のアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、ここでは、AD/DA変換をアナログ処理部70で行っているが、PHY処理部50にAD/DA変換機能を持たせる構成も可能である。
本実施形態に係る無線通信装置は、1チップ内にアンテナ80を構成要素として含む(一体化する)ことで、このアンテナ80の実装面積を小さく抑えることができる。更に、本実施形態に係る無線通信装置は、図1に示されるように、送信処理部30及び受信処理部40が、N本のアンテナ80を共用している。送信処理部30及び受信処理部40がN本のアンテナ80を共用することにより、図1の無線通信装置を小型化できる。なお、本実施形態に係る無線通信装置は、図1に例示されたものと異なる構成を備えても勿論よい。
無線媒体への信号送信に際して、PHY処理部50は、送信処理部30からMACフレームを受け取る。PHY処理部50は、MACフレームにプリアンブル及びPHYヘッダの追加や符号化、変調などの処理を行ってPHYパケットに変換する。アナログ処理部70は、デジタル信号であるPHYパケットを、所望の周波数のアナログ信号に変換する。アンテナ80は、アナログ処理部70からのアナログ信号を無線媒体に輻射する。なお、PHY処理部50は、信号送信の期間中に、無線媒体がビジーであることを示す信号を、MAC処理部10(より正確には受信処理部40)へ出力する。
また、PHY処理部50は、MIMO技術を拡張したアップリンクマルチユーザMIMO(Uplink Multi−User MIMO:DL−MU−MIMO)およびDL−MU−MIMO(Downlink Multi−User MIMO:DL−MU−MIMO)の少なくとも一方に関する処理を行う。第1の実施形態および後述する第3の実施形態では、少なくともUL−MU−MIMOに関する処理を行うものとする。また、後述する第2の実施形態では、少なくともDL−MU−MIMOに関する処理を行うものとする。UL−MU−MIMOは、基地局が、複数台の端末から空間多重で(同一周波数帯域で同時に)送信されるストリームを複数のアンテナで同時に受信し、受信信号をMIMO復調することで、各端末のフレームへ分離する。これにより、基地局は、複数台の端末から同一の周波数帯域で同時に送信されるフレームを受信できる。またDL−MU−MIMOでは、基地局が複数のアンテナから、複数台の端末に対しそれぞれストリームを空間多重で送信し、各端末が受信信号をMIMO復調することでフレームに分離し、自端末宛のフレームを受信する。これにより、基地局は、複数台の端末へ同時にフレームを同一の周波数帯域でそれぞれ送信できる。
ここで、DL−MU−MIMOでは、ビームフォーミングと呼ばれる技術を用いる。ビームフォーミングでは、各ストリームで互いに干渉が最小もしくは小さくなるようなビームを形成して送信する。これにより、空間多重が可能となり、基地局は複数台の端末と同時に、同一の周波数帯域で受信または送信することができる。このようなビームフォーミングを行うため、基地局は、自装置のアンテナと各端末のアンテナとの間の伝搬路応答(アップリンクの伝搬路応答、ダウンリンクの伝搬路応答)の情報を取得する必要がある。例えば、ダウンリンクの伝搬路応答の場合、基地局が、各端末に対してそれぞれ伝搬路推定用のフレーム(既知のビットパターンを含む)を送信処理部30で生成して送信し、端末が推定した伝搬路応答の値を含むフレームを、それぞれフィードバックさせて受信処理部40で受信することで、各端末とのダウンリンクの伝搬路応答を取得する。アップリンクの伝搬路応答を取得する場合、各端末に伝搬路推定用のフレーム(既知のビットパターンを含む)を送信させ、基地局が各端末から受信したフレームの信号に基づき、伝搬路応答をPHY処理部50で推定する。PHY処理部50では、これらのダウンリンクの伝搬路応答を用いてビームフォーミングを行い、またアップリンクの伝搬路応答を用いてMIMO復調を行う。これらのダウンリンクの伝搬路応答およびアップリンクの伝搬路応答に関する情報は、PHY処理部50内のバッファまたはPHY処理部50からアクセス可能なメモリに格納してもよい。または、MAC/PHY管理部60またはMAC/PHY管理部60からアクセス可能なメモリ等に格納してもよい。なお、ダウンリンクの伝搬路応答を取得する方法、またはアップリンクの伝搬路応答を推定する方法は、ここで述べた方法に限定されるものではない。
UL−MU−MIMOでは、基地局は、各端末からフレーム(より詳細には、MIMO変調後のPHYパケット)を複数のアンテナで、空間多重で受信し、事前に推定したアップリンクの伝搬路応答から、PHY処理部50で受信信号をMIMO復調することで、各フレームに分離する。この際、ZF(Zero−Forcing)法、MMSE(Minimum Mean Square Error)法、または、最尤推定法など、任意の手法を用いることができる。なお、後述する変形例で説明するように、複数の端末がアップリンクする複数のフレームの先頭側(物理ヘッダ内)に互いに直交するプリアンブルを追加し、これらのプリアンブルを利用して端末毎ノアップリンクの伝搬路応答を推定することも可能である。この場合、事前にアップリンクの伝搬路応答を推定しないで、UL−MU−MIMOを実現できる。各端末では、予め定められたタイミング(例えば、後述するように基地局から受信されるCTSフレームの受信完了から(正確には、当該CTSフレームを内包する物理パケットが無線媒体を占有終了する時点から。以降も同様)SIFS経過後)にフレームを送信するようMAC/PHY管理部60でMAC処理部10およびPHY処理部50を制御することで、各端末から空間多重でフレームが送信される。
DL−MU−MIMOでは、基地局は、複数のアンテナから各端末にフレームをビームフォーミングで送信する。PHY処理部50は、ダウンリンクの伝搬路応答に基づき算出される送信ウェイトを利用してビームフォーミング送信用の信号を送信系統毎に生成する。その後、アナログ処理部70の処理を経て、各送信系統に対応するアンテナから空間に輻射する。各端末では、PHY処理部50で受信信号を復調することで、自端末宛のフレーム(例えばRAが自端末のMACアドレスのフレーム)を取得する。
無線媒体からの信号受信に際して、アナログ処理部70は、アンテナ80が受信したアナログ信号を、PHY処理部50が処理可能な基底帯域(Baseband)の信号に変換し、デジタル信号に変換する。PHY処理部50は、アナログ処理部70からデジタルの受信信号を受け取り、その受信レベルを検出する。検出した受信レベルを、キャリアセンスレベル(閾値)と比較し、受信レベルが、キャリアセンスレベル以上であれば、PHY処理部50は媒体(CCA;Clear Channel Assessment)がビジーであるということを示す信号を、MAC処理部10(より正確には、受信処理部40)へ出力する。受信レベルが、キャリアセンスレベル未満であれば、PHY処理部50は、媒体(CCA)がアイドルであるということを示す信号を、MAC処理部10(より正確には受信処理部40)へ出力する。
PHY処理部50は、受信信号に対し、復調処理(MIMO復調を含む)、プリアンブル及びPHYヘッダを取り除く処理などを行って、ペイロードを抽出する。IEEE802.11規格ではこのペイロードをPHY側ではPSDU(physical layer convergence procedure (PLCP) service data unit)と呼んでいる。PHY処理部50は、抽出したペイロードを受信処理部40に渡し、受信処理部40はこれをMACフレームとして扱う。IEEE802.11規格では、このMACフレームを、MPDU(medium access control (MAC) protocol data unit)と呼んでいる。加えて、PHY処理部50は、受信信号を受信開始した際に、その旨を受信処理部40に通知し、また受信信号を受信終了した際に、その旨を受信処理部40に通知する。また、PHY処理部50は、受信信号が正常にPHYパケットとして復号できた場合(エラーを検出しなければ)、受信信号の受信終了を通知すると共に、媒体がアイドルであるということを示す信号を、受信処理部40に渡す。PHY処理部50は、受信信号にエラーを検出した場合には、エラー種別に即した適切なエラーコードをもって、受信処理部40にエラーを検出したことを通知する。また、PHY処理部50は、媒体がアイドルになったと判定した時点で、媒体がアイドルであることを示す信号を受信処理部40に通知する。
MAC共通処理部20は、上位処理部90から送信処理部30への送信データの受け渡し、及び受信処理部40から上位処理部90への受信データの受け渡しを、夫々仲介する。IEEE802.11規格では、このMACデータフレームの中のデータを、MSDU(medium access control (MAC) service data unit)と呼んでいる。また、MAC共通処理部20は、MAC/PHY管理部60からの指示を一旦受け取り、当該指示を送信処理部30及び受信処理部40に適したものに変換して出力する。
MAC/PHY管理部60は、例えばIEEE802.11規格におけるSME(Station Management Entity)に相当する。その場合、MAC/PHY管理部60とMAC共通処理部20との間のインターフェースは、IEEE802.11規格におけるMLME SAP(MAC subLayer Managament Entity Service Access Point)に相当し、MAC/PHY管理部60とPHY処理部50との間のインターフェースは、IEEE802.11無線LANにおけるPLME SAP(Physical Layer Management Entity Service Access Point)に相当する。
なお、図1において、MAC/PHY管理部60は、MAC管理のための機能部とPHY管理のための機能部とが一体であるかのように描かれているが、分けて実装されてもよい。
MAC/PHY管理部60は、管理情報ベース(Management Information Base;MIB)を保持する。MIBは、自端末の能力や各種機能が夫々有効か無効かなどの各種情報を保持する。例えば、自端末が、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOに対応するか否かといった情報も保持されていてもよい。MIBを保持・管理するためのメモリは、MAC/PHY管理部60に内包させてもよいし、MAC/PHY管理部60に内包せずに別に設けるようにしてもよい。MIBを保持・管理するためのメモリをMAC/PHY管理部60とは別に設ける場合に、MAC/PHY管理部60は、その別のメモリを参照でき、またメモリ内の書き換え可能なパラメータに関しては書き換えを行うことができる。基地局では、他の非基地局端末でのこれらの情報も、非基地局としての各端末からの通知により、取得することができ、前述した伝搬路応答や各種ウェイトに関する情報と合わせて、自端末に関する情報とともに記憶させてもよい。その場合、MAC/PHY管理部60は、他の端末に関する情報を参照・書き換えが可能になっている。あるいはこれらの他の端末に関する情報を記憶するためのメモリは、MIBとは別に保持・管理するようにしてもよい。その場合、MAC/PHY管理部60あるいはMAC共通処理部20が、その別のメモリを参照・書き換えが可能なようにする。
また、基地局としての端末のMAC/PHY管理部60あるいはMAC共通処理部20は、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOを行うためのグループの生成およびグループ識別子(以下、グループID)の付与を管理する。基地局は、通信リンクが確立(後述)した複数の端末の中から、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOを行う端末を組み合わせて、端末のグループを生成し、各グループに属する端末群をMACアドレス(または後述するアソシエーションID)に基づき管理する。例えば、通信リンクが確立した端末が10台(仮に端末1〜10とする)存在したとすると、1番目のグループとして端末1〜4、2番目のグループとして無線端末1、3、5、6、3番目のグループとして端末6〜10を組み合わせる。各グループにはユニークなグループID(グループ識別子)を付与する。この際、IEEE Std 802.11ac−2013でDL−MU−MIMO用に規定されたグループIDを用いてもよい。UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMO通信は、グループIDによりグループを指定して、グループ単位で複数端末の多重送信を行う。基地局は、グルーピングの結果をグループIDとして各端末に、管理フレーム(詳細は後述)を用いて通知することで、各端末は自装置がいずれのグループに属しているかを把握できる。グルーピングの方法としては、例えば各端末とのダウンリンクまたはアップリンクの伝搬路応答を利用して相関の低い端末を同じグループにまとめてもよいし、その他の方法を用いてグルーピングしてもよい。
MAC処理部10は、データフレーム、制御フレーム及び管理フレームの3種類のMACフレームを扱い、MAC層において規定される各種処理を行う。ここで、3種類のMACフレームについて説明する。
管理フレームは、他の端末との間の通信リンクの管理のために用いられる。管理フレームとしては、例えば、IEEE802.11規格におけるBasic Service Set(BSS)を形成するために、BSSの属性及び同期情報を報知するビーコン(Beacon)フレームや、認証のためにまたは通信リンク確立のために交換されるフレームなどがある。なお、ある端末が、もう一台の端末と互いに無線通信を実施するために必要な情報交換を済ませた状態を、通信リンクが確立していると、ここでは表現する。必要な情報交換として、例えば、自端末が対応する機能の通知や、方式の設定に関するネゴシエーションなどがある。管理フレームは、送信処理部30が、MAC/PHY管理部60からMAC共通処理部20を介して受けた指示に基づいて生成する。
管理フレームに関連して、送信処理部30は、他の端末に管理フレームを介して各種情報を通知する通知手段を有する。非基地局としての端末の通知手段は、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否の情報を、管理フレームに入れて送信することで、基地局に当該情報を通知してもよい。この管理フレームは例えば非基地局端末が基地局との間で認証を行う手順の一つであるアソシエーションプロセスで用いられるAssociation Requestフレームや、あるいはリアエソシエーションプロセスで用いられるReassociation Requestフレームである。当該情報を管理フレームで送信するように当該通知手段を制御する通知制御手段が、MAC/PHY管理部60に備えられていてもよい。また、基地局の通知手段は、非基地局の端末に、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否の情報を、管理フレームを介して通知してもよい。この管理フレームは例えばBeaconフレームや、非基地局端末が送信したProbe Requestフレームに対する応答であるProbe Responseフレームである。MAC/PHY管理部60は、これらの情報を管理フレームで送信するよう通知手段を制御する通知制御手段を備えてもよい。また、基地局の通知手段は、各端末にそれぞれを割り当てたグループのグループIDを、管理フレームを介して通知してもよい。この管理フレームは例えばGroup ID Managementフレームである。MAC/PHY管理部60は、グループIDを管理フレームで送信するよう通知手段を制御する通知制御手段を備えてもよい。
また、受信処理部40は、他の端末から管理フレームを介して各種情報を受信する受信手段を有する。一例として、非基地局としての端末の受信手段は、基地局としての端末からUL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否の情報を受信してもよい。また、基地局としての端末の受信手段は、非基地局としての端末からUL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否の情報を受信してもよい。上述した管理フレームを介して送受信する情報の例は、ほんの一例であり、その他種々の情報を、管理フレームを介して、端末(基地局を含む)間で送受信することが可能である。
データフレームは、他の端末との間で通信リンクが確立した状態で、データを当該他の端末に送信するために用いられる。例えばユーザのアプリケーション操作によって、端末においてデータが生成され、係るデータがデータフレームによって搬送される。具体的には、生成されたデータは、上位処理部90からMAC共通処理部20を介して送信処理部30に渡され、送信処理部30でデータをフレームボディフィールドに入れたデータフレームが生成され、PHY処理部50、アナログ処理部70及びアンテナ80を介して送信される。また、受信処理部40が、PHY処理部50を介してデータフレームを受信すると(受信したMACフレームがデータフレームであると把握すると)、そのフレームボディフィールドの情報をデータとして抽出し、MAC共通処理部20を介して上位処理部90に渡す。この結果、データの書き込み、再生などのアプリケーション上の動作が生じる。
制御フレームは、管理フレーム及びデータフレームを、他の無線通信装置との間で送受信(交換)するときの制御のために用いられる。制御フレームとしては、例えば、管理フレーム及びデータフレームの交換を開始する前に、媒体を予約するために他の無線通信装置との間で交換するRTS(Request to Send)フレーム、CTS(Clear to Send)フレームなどがある。また、他の制御フレームの例として、受信した管理フレーム及びデータフレームの送達確認のために送信されるACK(Acknowledgement)フレーム、BA(BlockAck)フレームなどの送達確認応答フレームがある。これらの制御フレームも送信処理部30で生成される。CTSフレームやACKフレーム、BAフレームなど、受信したMACフレームへの応答として送信される制御フレームに関しては、受信処理部40で応答フレームの送信判断をして、フレーム生成に必要な情報(制御フレームの種別、RAフィールド等に設定する情報など)を送信指示とともに送信処理部30に出す。送信処理部30が、当該フレーム生成に必要な情報に基づき、適切な制御フレームを生成する。
本実施形態では、基地局としての端末が、非基地局としての端末からRTSフレームを受信したときに応答するCTSフレームで、グループIDを指定することで、当該グループIDのグループに属する端末群に、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を行う。後に図4で詳細に説明するように、CTSフレームのRAフィールドの所定の第1領域、具体的に、個別/グループビット(Individual/Group bit:I/Gビット:I/Gビット)を“1”(第1の値)にし、RAフィールドの所定の第2領域(例えば3〜8ビット目)に、グループID(RTSフレームを送信した端末が属するグループのグループID)を設定したCTSフレームを応答する。なお、第1〜第3の実施形態ではRAフィールドの所定の第2領域にグループIDを設定する例を示すが、本発明にこれらに限定されるものではなく、後述する第1〜第4の変形例に示すように、I/Gビットに1を設定することをベースとして、種々の実施の態様が可能である。
基地局の受信処理部40がRTSフレームを受信すると、上記のCTSフレームを生成するための情報を送信処理部30に渡し、送信処理部30が、当該情報を利用してCTSフレームを生成する。送信処理部30は従来のCTSフレーム生成処理に加えて、この場合、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示をCTSフレームで行うか否かの判断が追加され、それに応じて通常のCTSフレームを生成するか、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を行うCTSフレームを生成することになる。このUL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を行うか否かの判断は、MAC共通処理部20やMAC/PHY管理部60で行うようにして、送信処理部30はその許可もしくは指示の判断を受けて所望のCTSフレームを生成するようにしてもよい。あるいは受信処理部40がRTSフレームを受信した際に、受信処理部40でUL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示をCTSフレームで行うか否かの判断を行い、それに応じてCTSフレームのRAフィールドを指定して、送信処理部30にCTSフレーム生成の指示とともに通知するようにしてもよい。この場合でも、受信処理部40自身がUL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を行うか否かの判断は、MAC共通処理部20やMAC/PHY管理部60で行うようにして、受信処理部40ではその許可もしくは指示の判断を受けて送信処理部30に所望のCTSフレームの生成指示を出すようにしてもよい。I/Gビットを1にしたCTSフレームとすることで、当該CTSフレームのRAフィールドの値が、BSS内の端末のMACアドレス、もしくは将来BSSに加入する端末のMACアドレスに一致する可能性はないため、特段問題を生じさせずに、、RAフィールドにグループIDを設定できる。
また、このCTSフレームを受信した端末の受信処理部40は、フレームコントロールフィールドからフレーム種別(タイプおよびサブタイプ)が、制御およびCTSであることを判定する。そして、RAフィールドのI/Gビットが1であることから、当該CTSフレームがUL−MU−MIMO送信を許可または指示するものであること、かつRAフィールド内の所定の第2領域にグループIDが入っていることを把握できる。そして、当該所定の第2領域からグループIDを抽出する。MAC/PHY管理部60は、当該抽出したグループIDと、自端末が属しているグループのグループIDを比較し、両者が一致する場合は、予め定められたタイミングでUL−MU−MIMO送信(端末レベルでの観点からは個々に基地局にフレームを送信)を行うようMAC処理部10およびPHY処理部50を制御する。通常の場合、基地局からフレームを受信した端末は、フレーム種別(タイプおよびサブタイプ)が、制御およびCTSであれば、RAフィールドのI/Gビット(先頭ビット)は0であることを期待する。これは、通常であれば、RTSフレームのTAフィールドの値をコピーしてCTSフレームのRAフィールドに入れるためである。しかしながら、本実施形態に係るCTSフレームは、RAフィールドのI/Gビットが1であることから、上記のようにUL−MU−MIMO送信を許可または指示するフレームとして利用できる。この詳細についてはさらに後で述べる。なお、RTSフレームを基地局に送信した非基地局端末は、RTSフレーム送信のSIFS後にCTSフレームを受信した場合には、そのCTSフレームがUL−MU−MIMO送信を許可または指示するものであれば、グループIDを抽出・自端末が属しているグループのグループIDと比較することは省略して、CTSフレーム受信完了のSIFS後にフレームを送信するようにしてもよい。
また、本実施形態では、基地局は、複数端末からのUL−MU−MIMO送信への応答となる送達確認応答フレームを送信する際、送達確認応答フレームのRAフィールドのI/Gビットを1にし、残りのフィールド領域の一部(ここではCTSフレームと同じ所定の第2領域とするが、これに限定されない)に、グループIDを入れてもよい。フレーム種別は、送達確認を表す値(例えばAckまたはBlockAckなど)を設定する。受信処理部40が、UL−MU−MIMO送信された各端末からのデータフレームを受信すると、送達確認応答フレームを生成するための情報(端末毎のデータフレームの成功可否情報(ACK情報)、RAフィールドに設定する値、フレーム種別の値等)を送信処理部30に渡し、送信処理部30が、当該情報を利用して送達確認応答フレームを生成する。グループIDが入った送達確認応答フレームを生成するか否かは、送信処理部30もしくは受信処理部40でUL−MU−MIMO送信を受信したことにより判断するか、あるいは、CTSフレームでのUL−MU−MIMO送信を許可または指示する判断を行った結果と連動するようにする。CTSフレームでのUL−MU−MIMO送信を許可または指示する判断を行った結果と連動するとは、具体的には、CTSフレーム時にいずれかの処理部または管理部でUL−MU−MIMO送信を許可または指示する判断を行った結果を、同一フレーム交換シーケンス(IEEE802.11規格では、TXOP(Transmission Opportunity;送信権獲得期間)に当たる)内では保持・参照できるようにし、送達確認応答フレームを生成する場合にその保持した結果を参照してそれに応じてRAフィールドに入れる値を決める。この際に用いる送達確認応答フレームのフォーマットは、BAフレームを再利用したもの、新規に定義したフレームなどがあり得るが、詳細は後述する。これによれば、当該送達確認応答フレームのRAフィールドの値が、BSS内の端末のMACアドレス、もしくは将来BSSに加入する端末のMACアドレスに一致する可能性はないため、特段問題を発生させずに、送達確認応答フレームのRAフィールドにグループIDを設定できる。上記の送達確認応答フレームを受信した端末の受信処理部40は、フレームコントロールフィールドからフレーム種別が送達確認であることを(例えばフレームタイプおよびサブタイプが、制御およびBlockAck(またはAck)であるなど)を判定する。そして、RAフィールドのI/Gビットが1であることから、RAフィールド内の所定の第2領域にグループIDが設定されていることを把握し、当該所定の第2領域からグループIDを抽出し、MAC/PHY管理部60に通知する。MAC/PHY管理部60は、当該抽出されたグループIDと、自端末が属しているグループIDを比較し、両者が一致する場合は、その旨を受信処理部40に通知し、受信処理部40(もしくはMAC/PHY管理部60)は、自端末のACK情報を送達確認応答フレームから特定し、当該ACK情報に基づきフレーム送信の成功可否を判断する。
MAC処理部10は、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)に基づきMACフレームを送信する場合、媒体上でのアクセス権(送信権)を獲得する必要がある。送信処理部30は、受信処理部40からのキャリアセンス情報に基づいて、送信タイミングを計る。送信処理部30は、係る送信タイミングに従って、PHY処理部50に送信指示を与えて、MACフレームを渡す。送信指示に加えて、送信処理部30は、送信に使用される変調方式及び符号化方式を合わせて指示してもよい。これらに加えて、送信処理部30は、送信電力を指示してもよい。MAC処理部10は、アクセス権(送信権)獲得後、媒体を占有可能な時間の間(TXOP)が得られると、QoS(Quality of Service)属性などの制限を伴うものの、他の無線通信装置との間でMACフレームを連続して交換できる。TXOPは、例えば、無線通信装置が後述のCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)に基づき所定のフレーム(例えばRTSフレーム)を送信し、他の無線通信装置から応答フレーム(例えばCTSフレーム)を正しく受信した場合に、獲得される。この所定のフレームが、当該他の無線通信装置によって受信されると、当該他の無線通信装置は、最小フレーム間隔(Short InterFrame Space)後に、上記応答フレームを送信する。また、RTSフレームを用いないでTXOPを獲得する方法として、例えば直接ユニキャストで送達確認応答フレームの送信を要求するデータフレーム(後述のようにフレームまたはペイロードが連接された形状のフレームであってもよい)あるいは管理フレームを送信し、それに対する送達確認応答フレーム(ACKフレームやBlockAckフレーム)を正しく受信する場合がある。あるいは、送達確認応答フレームの送信を要求しないフレームであって、そのフレームのDurationフィールド(後述)に当該フレームを送信する以上の期間を設定したものを送信した場合には、当該フレームを送信した段階からDurationフィールドに記載された期間のTXOPを獲得したと解釈してもよい。
受信処理部40は、キャリアセンス情報を管理する。このキャリアセンス情報は、PHY処理部50が入力する媒体(CCA)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense)情報と、受信フレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス(Virtual Carrier Sense)情報との両方を包含する。いずれか一方のキャリアセンス情報がビジーを示すならば、媒体がビジーであるとみなされ、その間送信は禁止される。なお、IEEE802.11規格において、媒体予約時間は、MACヘッダの中のいわゆるDuration/IDフィールド(以下では単にDurationフィールドと記述)に記載される。MAC処理部10は、他の無線通信装置宛ての(自己宛てでない)MACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含むPHYパケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。受信処理部40は、NAVの間に他無線通信装置から自装置の属するグループへのUL−MU−MIMO送信の許可または指示を含むフレーム(後述する本実施形態に係るCTSフレーム(図4参照)など)を受信した場合は、NAVを設定している間であっても、当該許可または指示に応じてフレームのUL−MU−MIMO送信を行うことを許容する。
ここで、データフレームは、複数のMACフレームもしくは複数のMACフレームのペイロード部分を連接するようになっていてもよい。前者はIEEE802.11規格ではA(Aggregated)−MPDU、後者はA(Aggregated)−MSDU(MAC service data unit)と呼ばれる。また、データフレームがA−MPDUの場合などのように、複数のMACフレームに対する応答をまとめて送信する場合には、ACKフレームではなく、BA(BlockACK)フレームが用いられる。
非基地局の端末は、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を、接続する基地局に通知してもよい。IEEE802.11規格では、基地局が中心となり構成するBSS(これをインフラストラクチャ(Infrastructure)BSSと呼ぶ)に、非基地局の端末が加入し、BSS内でデータフレームの交換ができるようになるために経る手順(procedure)が、段階的に複数規定されている。そこで、上記UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を、非基地局の端末が、接続する基地局に通知するために、これらの手順の中で、非基地局の端末が、基地局宛てに送信する管理フレームに、上記UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を入れてもよい。
例えば、アソシエーション(association)という手順があり、非基地局の端末から、当該端末が接続を要求する基地局に対して、アソシエーション要求(Association Request)フレームを送信する。基地局は、アソシエーション要求フレームに対するACKフレーム送信後、アソシエーション要求フレームに対する応答フレームのアソシエーション応答(Association Response)フレームを送信する。アソシエーション要求フレームに端末は自端末の能力(capability)を入れ、それを送信することで基地局に自端末の能力の通知をする。そこで例えば、端末はアソシエーション要求フレームの中にUL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を入れて送信してもよい。当然、他の基地局へ再接続するための再アソシエーション(reassociation)という手順にもこの通知を入れるようにしてもよい。この手順では、非基地局の端末から、再接続を要求する他の基地局に対して、再アソシエーション要求(Reassociation Request)フレームを送信する。当該他の基地局は、再アソシエーション要求フレームに対するACKフレーム送信後、再アソシエーション要求フレームに対する応答フレームの再アソシエーション応答(Reassociation Response)フレームを送信する。そこで、端末は再アソシエーション要求フレームの中に、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を入れて送信する。管理フレームとして、アソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレーム以外にも、後述するように、ビーコンフレーム、プローブ応答(Probe Response)フレームなどを用いてもよい。ビーコンフレームは基本的に基地局が送信するもので、BSSの属性を示すパラメータとともに、基地局自身の能力を通知するパラメータも入れられる。そこで、この基地局自身の能力を通知するパラメータとして、基地局がUL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を加えるようにしてもよい。プローブ応答フレームは後述のようにビーコンフレームを送信する端末がプローブ要求(Probe Request)フレームを受信すると、送信するフレームであり、基本的にはビーコンフレームと同一の内容を通知するものであるため、これを用いても基地局はプローブ要求フレームを送信した端末にUL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応可否を通知することができる。
なお、上記で扱った情報のうち、他の情報を通知することで、その情報が必須となるものがあれば、通知を省略できる。例えば、ある新しい規格あるいは仕様に対応する能力を定義し、それに対応していれば自ずとUL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOには対応できる、というのであれば、UL−MU−MIMOまたはDL−MU−MIMOへの対応の通知をしなくてもよい。
図2に、本発明の実施形態に従った無線通信システムを示す。1つの基地局(AP:Access Point)100が、複数の非基地局である端末(STA:STAtion)101〜108と、無線通信システムあるいはBSS1を構成しているとする。このBSS1で、基地局100は、UL−MU−MIMOが有効な状態にしてあるとする。基地局100は、BSS1内の端末群をグループ化しており、ここでは、少なくとも端末101、102、103を同じグループにまとめ、当該グループにグループID(例えばIEEE Std 802.11ac−2013でDL−MU−MIMO用に規定されたグループIDでもよい)を付与し、端末101〜103にグループIDを通知しているものとする。また、端末101〜103は、UL−MU−MIMOに対応可能であり、UL−MU−MIMOが有効な状態にしてあるとする。なお、1つの端末が複数のグループに属してもかまわず、その場合は、端末には各グループのグループIDが通知される。
基地局100は、例えばMIBで、基地局100自身がUL−MU−MIMOに対応できることを情報として保持している。端末101〜103も、例えばこのMIBを持っていて、UL−MU−MIMOへの対応可否が、同様に設定されているものとする。基地局100は、例えばさらにUL−MU−MIMOが使える状態(有効な状態)になっているか否かを示すMIBを持っている。基地局100は、UL−MU−MIMOが有効な場合に、送信処理部30で生成する管理フレームに、UL−MU−MIMOが使用可能な旨を情報として入れてもよい。管理フレームとして、例えばビーコンフレーム、プローブ応答(Probe Response)フレームなどを用いてもよい。プローブ応答フレームは、管理フレームのプローブ要求(Probe Request)フレームを、ビーコンフレームを送信する端末(インフラストラクチャBSSの場合には基地局)が受信し、当該端末(基地局)が、プローブ要求フレームで要求される条件に合致したBSSを構成している場合に、受信したプローブ要求フレームへの応答として送信するフレームである。ビーコンフレームは、報知フレームであり、つまりビーコンフレームの受信先アドレス(RA)は、ブロードキャストアドレスである。一方、プローブ応答フレームのRAは、ある端末のアドレスを指定するユニキャストアドレスである。RAは、MACフレームの先頭に設けられるMACヘッダ部の複数のアドレスフィールドの先頭に設定される。なお、ビーコンフレームやプローブ応答フレームで、UL−MU−MIMOが使用可能な旨の情報はBSSの属性を示すパラメータとして入れられることになる。UL−MU−MIMOに対応できることは能力であり、これも前述のようにビーコンフレームやプローブ応答フレームに入れることができる。
図3は、図2に示した基地局100および端末101〜103の動作シーケンスの例を示す。端末101〜103がそれぞれ基地局100に送信したいデータを有しており、これらのデータを含むデータフレームを、端末101〜103から基地局100へUL−MU−MIMOで送信する場合のシーケンスを示す。上述したように、端末101〜103は、基地局100により同じグループにまとめられており、当該グループのグループIDを事前に通知されている。
端末102が、データフレームを送信しようとして媒体を観測した結果、媒体がビジーであると検出し、例えばDIFSと呼ばれる期間と、それに続くランダムに決定したバックオフ期間の間、キャリアセンスを行い、キャリアセンス結果がアイドルとして、アクセス権(送信権)を獲得したとする。この場合、端末102は、基地局100からデータフレームの送信許可を得るため、データフレームの送信許可を要求するRTSフレーム71を送信する。端末102はRTSフレーム71を送信する段階で、CTSフレーム受信後のデータフレーム送信がUL−MU−MIMO送信になることを想定していなくてもよい。RTSフレーム71のフレーム種別(タイプ、サブタイプ)は、制御およびRTS(送信許可要求)である。RTSフレーム71の送信元アドレス(TA)は端末102のMACアドレス、受信先アドレス(RA)は基地局100のMACアドレスである。このRTSフレーム71は基地局100で受信されるとともに、端末101、103にも受信されるとする。端末101、103は、RTSフレーム71を受信すると、RTSフレーム71のDurationフィールドに記載された値に基づきNAVを設定する。また端末101、103は、当該RTSフレーム71のTAから、基地局100にRTSフレーム71が送信されたことを把握する。
基地局100は、RTSフレーム71を受信すると、フレーム種別、TA、RA等を確認し、フレーム種別(タイプ、サブタイプ)が、制御およびRTS(送信許可要求)、TAが端末102、RAが基地局100であることを把握する。基地局100は、TAフィールドに格納されたMACアドレスから端末102が属するグループを把握する。基地局100は、端末102が属するグループ内の端末群(端末101〜103)に、データフレームのUL−MU−MIMO送信を許可すべく、RAフィールドの所定の第1領域(ここでは先頭ビット)を“1”に設定し、端末102が属するグループのグループIDを表す値を、RAフィールドの先頭ビット以外の所定の第2の領域に設定したCTSフレーム(本実施形態に係るCTSフレーム)を生成する。RAフィールド内の先頭ビットおよび当該所定の第2領域以外の残りの領域は、予約領域としてもよいし、事前に定義したパターンを設定してもよい。予約領域の場合、予約領域内の各ビットには任意の値(1または0)を設定してかまわない。基地局100は、このように生成した本実施形態に係るCTSフレーム72を、RTSフレーム71の受信完了からSIFSと呼ばれる期間の経過後に送信する。なおCTSフレームでは、TAフィールドは存在しない。なお、基地局100が端末102からRTSフレーム71を受信すると、前述のように端末102が属するグループ内の端末群(端末101〜103)にUL−MU−MIMO送信を許可するか否かの判断を行い、UL−MU−MIMO送信を許可すると判断した場合にデータフレームのUL−MU−MIMO送信を許可するCTSフレーム72を送信することになる。
図4(A)は、本実施形態に係るCTSフレームのフォーマットを示す。CTSフレームは、フレームコントロール(Frame Control)フィールド、デュレーション(Duration)フィールド、RAフィールド、FCS(Frame Check
Sequence)フィールドからなる。
フレームコントロールフィールドは、フレームの種別などを表す情報が設定される。フレーム種別の識別は、フレームコントロールフィールドの中のタイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)という2つのフィールドで行う。CTSフレームの場合、フレームタイプ(Frame Type)は、制御(Control)を表す値が設定され、フレームサブタイプ(Frame Subtype)は、CTS(送信許可)を表す値が設定される。FCSフィールドには、フレームのFCS情報が設定される。FCS情報は、受信側でフレームボディ部の誤り検出のため用いられる。Durationフィールドは前述した通り、媒体予約時間が設定される。
RAフィールドは6オクテット(48ビット)の長さを有する。RAフィールドには、通常のCTSフレームでは受信先の端末のMACアドレスを格納するが、本実施形態に係るCTSフレームでは、RAフィールドには、別途定義したフォーマットの情報を設定する。図4(B)に、本実施形態に係るCTSフレームにおけるRAフィールドのフォーマット例を示す。このようなフォーマットを有するRAを、本明細書では、グループIDシグナリングRA(Group ID signaling RA)と呼ぶ。先頭ビットは、個別/グループ(Individual/Group)アドレスを格納するフィールドであり、グループを示す“1”(第1の値)が設定される。I/Gビットは、RAフィールドの所定の第1領域に対応する。本実施形態では、I/Gビットは先頭ビットであるが、他の位置のビットがI/Gビットとして定義されても構わない。また、所定の第1領域は1ビットでなく、2ビット以上の複数ビットとすることも可能である。このとき複数ビットは連続するビットでなく、離れた位置のビットであってもよい。なお、MACアドレスは、先頭ビットが個別/グループアドレスを表し、個々の端末(機器)のMACアドレス(6オクテット)は、I/Gビットが“0”になっている。通常の送信(ユニキャスト送信)では、装置のMACアドレスがRAフィールドにそのまま設定されるため、RAフィールドのI/Gビットは“0”である。なお、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信では、RAフィールドのI/Gビットは“1”に設定される。通常、CTSフレームの送信はRTSフレームのTAアドレスをコピーして用いるか、後述のようにRTSフレームの受信なく自主的にCTSフレームを送信する場合には自端末のMACアドレスを入れるため、ユニキャストであることから、RAフィールドのI/Gビットは“0”であるが、本実施形態に係るCTSフレームでは、I/Gビットを“1”に設定することを特徴の1つとする。
2番目のビットは、予約(Reserved)フィールドである。3番目から8番目の6ビットは、上述した所定の第2領域に相当し、グループIDが設定される。残りの40ビットは、予約フィールドである。予約フィールドには、任意の値を設定(例えばオール0)して構わない。2つの予約フィールドのいずれか一方または両方を、事前に定義したパターン(predefined pattern)を設定するように変更しても構わない。このパターンを利用することで、グループIDで指定したグループ内の端末群に、追加の情報、例えば当該CTSフレームがUL−MU−MIMO送信を許可するために送信されたものであることを再確認するための情報、を通知することが可能である。また例えば図4(B)で予約フィールドとしている部分のうち、2オクテットをUL−MU−MIMO送信時のデータフレームが媒体を占有する時間、つまりデータフレームを格納する物理パケット長を指定するために用いるようにしてもよい。
ここでは、3番目から8番目の6ビットからなる所定の第2領域にグループIDを設定したが、グループIDを設定する領域は、ここに限定されるものではない。各端末および基地局で、RAフィールドにおけるグループIDが設定された領域を共通に認識できるかぎり、任意の領域を、グループIDの設定領域として定義できる。グループIDの設定領域は、システムまたは仕様として事前に定義しておいてもよいし、グループIDの設定領域を基地局が決定して、基地局から同じBSS内の各端末に管理フレームを介して、グループIDの設定領域を通知するようにしてもよい。この際、グループ毎に、グループIDの設定領域の位置が異なってもよく、この場合は、グループごとに、それぞれ個別の設定領域を通知すればよい。
端末101〜103は、基地局100から送信された図4のフォーマットのCTSフレーム72を受信し、フレーム種別(フレームタイプ、フレームサブタイプ)と、RAフィールドを確認する。フレームタイプが制御(Control)、フレームサブタイプがCTSであり、RAフィールドの先頭ビット(個別/グループID)の値が1であることから、本フレームが、本実施形態に係るCTSフレームであること、すなわち、UL−MU−MIMO送信を許可もしくは指示するCTSフレームであることを把握する。また、RAフィールドの所定の第2領域(3〜8ビット目)にグループIDが設定されていることを把握する。
端末101〜103は、RAフィールドの3〜8ビット目からグループIDを抽出し、抽出したグループIDと、自端末が属するグループのグループIDとを比較する。自端末が複数のグループに属していれば、自端末が属している各グループのグループIDと比較する。比較の結果、基地局から通知されたグループIDのグループに自端末が属していると判断した場合は、UL−MU−MIMO送信を行うことを決定する。すなわち、基地局へ送信するデータを含むデータフレームを生成し、本実施形態に係るCTSフレームの受信完了からSIFS経過後に、同じグループに属する他の端末とともに、空間多重でデータフレーム(より詳細にはデータフレームを含む物理パケット)を送信する。あるいは、比較の結果、基地局から通知されたグループIDのグループに自端末が属していると判断した上で、自端末から基地局に送信するデータフレームがある場合に、UL−MU−MIMO送信を行うことを決定するようにしてもよい。この場合には、自端末から基地局に送信するデータフレームがなければ、CTSフレームの受信完了からSIFS経過してもデータフレームを送信しない。あるいは、比較の結果、基地局から通知されたグループIDのグループに自端末が属していると判断した上で、自端末から基地局に送信するデータフレームがない場合には、ペイロード部が空のデータパケット(IEEE802.11規格では、例えばQoS Nullフレームなど)を送信するようにしてもよい。この場合、さらにペイロード部が空のデータパケットを受信した基地局では、送信元の端末が当該TXOPでのそれ以降のアップリンク送信機会にデータフレームを送信しないと解釈するようにすることで、例えば、当該TXOPでのそれ以降のアップリンク送信機会には当該送信元の端末分を差し引いた多重数であるとして複数の受信アンテナを残りの端末からのフレーム受信に用いて受信性能を向上させることができる。端末101及び端末103では、送信するデータフレームがあってRTSフレーム71を送信した端末102とは異なり、このような状況が起こりうる。また、前述のようにCTSフレーム72の中でUL−MU−MIMO送信時のデータフレームを格納する物理パケット長が指定されている場合には、端末101〜103は各々送信するデータフレームがその長さになるよう、あるいはその長さ以下になるように調整するような仕組みにしてもよい。端末101〜103が各々送信するデータフレームがその長さになるように調整する方法は、IEEE Std 802.11ac−2013でDL−MU−MIMO送信をする際に用いられる調整手法を参照すればよい。このようにすれば、UL−MU−MIMO送信の終了時間を決めることができ、基地局はその終了時間のSIFS後に送達確認応答フレームをUL−MU−MIMO送信を行った端末、この場合は端末101〜103に送信することができる。
本例では、端末101〜103が属するグループのグループIDが指定されていることから、端末101〜103からCTSフレームの受信完了からSIFS経過後に、データフレーム73、74、75が基地局100へ空間多重で送信される。なお、SIFSは一例であり、固定時間であれば他の時間またはIFSでもよい。SIFSより長いIFSでもよい。このことは、本明細書の全体に対して適用される。DIFS等、他の種類のIFSについても同様に、固定時間であれば他の時間またはIFSでもよい。端末101、103は、端末102が送信したRTSフレーム71を受信しており、そのRAフィールドから基地局100へRTSフレーム71が送信されたことを把握しているため、CTSフレーム72が基地局100から受信されたと判断できる(前述したようにCTSフレームにはTAフィールドは存在しない)。なお、隠れ端末等の理由で、端末101または103がRTSフレーム71を受信できていない可能性もある。その場合は、CTSフレーム72の送信元は、自端末が接続している基地局100であると見なしてもよいし、データフレームの送信を行わないようにしてもよい。なお、各データフレーム73、74、75のRAフィールドには、基地局100のMACアドレスが格納され、TAフィールドには各端末のMACアドレスが格納される。なお、各データフレーム73、74、75のRAフィールドおよびTAフィールドの先頭ビット(個別/グループID)は“0”である。なお、本例では、端末102は、自端末のMACアドレスをTAフィールドに設定したRTSフレームを送信した後、自端末が属するグループのグループIDが設定されたCTSフレームを受信するが、RAフィールドに自端末のMACアドレスを設定したCTSフレームは受信しない。この場合においても、端末102は、RAフィールドに自端末のMACアドレスを設定したRTSフレームの再送を行う必要はない(すなわち当該RTSフレームの再送をキャンセルする)。この判断は、MAC/PHY管理部60および受信処理部40が行えばよい。
このように、図4に示したフォーマットを有する本実施形態に係るCTSフレームは、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を通知するとともに、UL−MU−MIMO送信の開始タイミングを決めるトリガとしても機能する。なお、端末101〜103から基地局100に送信するデータフレームの個数もしくは長さは前述のようにCTSフレームの中で通知しない場合には事前に定義しておき、これに従うものとする。
ここで、基地局100が、RTSフレーム(図3のRTSフレーム71参照)の受信をトリガとし、図4に示したフォーマットを有する本実施形態に係るCTSフレームを送信することで、UL−MU−MIMOの送信を許可または指示できる理由について詳しく説明する。
IEEE Std 802.11−2012では、RTSフレームの送信時に、自端末からのRTSフレーム送信の長さと送信先からのCTSフレーム送信とを考慮して、RTSフレームのDuration値を設定する。Duration値が、送信先以外の端末でのNAV設定に用いられる。またIEEE Std 802.11−2012では9.3.2.4節に、RTSフレームの送信先以外の端末で、当該RTSフレームの受信に起因して設定したNAVをリセットする動作が記述されている。具体的に、RTSフレームの受信完了から、2×SIFS(図3のCTSフレーム72の前後のSIFS参照)と、CTSフレームの送信時間(CTSフレームの伝送レートは、RTSフレームの伝送レートで決まる)と、2×SlotTimeとを加算した時間だけ経過しても、CCA検出(例えばCTSフレーム72の後のSIFS後のCCA検出)できなければ、NAVをリセットする。なお、SlotTimeは、CCAを検出できる時間であり、余裕を見て、2倍の時間を取っている。
従って、RTSフレームをトリガにした、フレームシーケンスを考える場合には、少なくとも、従来のCTSフレームと同じ長さで、かつRTSの送信レートをベースに一意に定められる送信レートを用いた制御フレームを、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示、および対象となるグループIDを通知するための応答フレームとして送信しなくてはならない。
一方、CTSフレーム、ACKフレーム、BA(BlockAck)フレームといった応答の制御フレームは、その応答を発動するフレーム(CTSフレームの場合はRTSフレーム、ACKフレームの場合はDataフレーム(Aggregateされた場合も含む)、BAフレームの場合はDataフレーム(Aggregateされた場合も含む)となる)のTAフィールドをコピーして、当該制御フレームのRAフィールドに用いる。そして、TAフィールドは、通常の送信ではフレームを送信する端末のMACアドレス、すなわちユニキャストアドレスを指定するので、I/Gビットは0に設定しなくてはならない。このため、応答フレームでのTAフィールドのI/Gビットが0であると期待されるフレームを受信して発動される当該応答フレームでは、RAフィールドのI/Gビットを、グループIDがRAフィールドに含まれているか否かの識別に用いることができる。すなわち、RAフィールドのI/Gビットが1であれば、グループIDがRAフィールドに含まれていると判断することができる。
またIEEE Std 802.11ac−2013での、bandwidth signaling TAを用いるフレームは、RTSフレーム (もしくはRTSフレームを内包したcontrol wrapperフレーム。なお、CTSフレームに関しても同様)であり、それに対する応答フレームはCTSフレームとなる。bandwidth signaling TAをコピーして、コピーした値を、CTSフレームのRAフィールドに用いる際に、I/Gビットは1から0に戻すことになっている。つまり、bandwidth signaling TAを用いたフレームを受信して発動される応答フレームでも、RAフィールドはI/Gビットを0とすることになっている。よって、この点からも、RAフィールドのI/Gビットを、グループIDがRAフィールドに含まれているか否か(MACアドレスの一部として用いられているか否か)の識別に用いることができる。なお、本実施形態でもbandwidth signaling TAを用いるフレームに対応してUL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を行わない通常の応答フレームを送信すると判断すれば、受信したフレームの送信元アドレスフィールドをコピーした値の先頭ビットの値が1の場合は、コピーした値の先頭ビットの値を0に変更したものを、当該フレームに対する応答フレームの受信先アドレスフィールドに設定するようにすればよい。その場合受信処理部40は、このように先頭ビットの値を0に変更したアドレスを、送信処理部30に応答フレームを生成するための情報として渡す。
このようなRTSフレームおよびCTSフレームついての制約のもと、本実施形態では、端末102からRTSフレームを受信した基地局100が、グループIDを利用して、端末102を含む、当該グループIDで指定されるグループに属する端末群に、UL−MU−MIMO送信を許可もしくは指示するフレームとして、CTSフレームのRAフィールドを、図4(B)のように変更したフレーム(本実施形態に係るCTSフレーム)を送信する。そして、このCTSフレームを受信した端末群は、端末102を含め、自端末が、当該グループIDが示すグループに属すると判断して、UL−MU−MIMO送信を行う。具体的な動作として、端末101〜103は、当該CTSフレームを受信すると、フレーム種別(タイプ、サブタイプ)が、制御およびCTSであることを把握し、RAフィールドの先頭ビット(I/Gビット)を確認する。当該ビットが1であることを判断すると、第3〜第8番目のビットB2−B7の領域(所定の第2領域)の値をグループIDとして抽出する。抽出したグループIDが、自端末が属するグループのグループIDに一致するか確認し、一致する場合に、CTSフレームの受信完了からSIFS後に、データフレームを送信する。その結果、複数の端末からのUL−MU−MIMO送信となる。
図3において、基地局100は、端末101〜103からUL−MU−MIMO送信されたデータフレームを受信し、受信信号をMIMO復調してストリームごとに分離し、各端末から送信されたデータフレームを取得する。各端末から送信されるデータフレームのTAは、各端末のMACアドレスであり、TAの先頭ビット(I/Gビット)は0である。RAは、基地局101のMACアドレスであり、RAの先頭ビット(I/Gビット)は0である。端末(基地局を含む)のMACアドレスの先頭ビットとして取ることができる値は0であることが事前に定義されている。なお、基地局にUL−MU−MIMO送信されるデータフレームあるいはそれを内包する物理パケットには、グループIDは入れる必要はない。基地局100は、各端末のデータフレームの受信に成功したかを、データフレームのFCSフィールドに基づき判断する。基地局100は、各端末のデータフレームの受信の成功可否情報(ACK情報)を格納した送達確認応答フレーム76を生成し、送達確認応答フレーム76を、UL−MU−MIMO送信信号の受信完了から、SIFS経過後に送信する。
この送達確認応答フレームでも、RAフィールドにグループIDを入れる手法を利用できる。TAフィールドが自端末のMACアドレス、RAフィールドが基地局100のMACアドレスであるデータフレームを送信した端末は、その応答として、ユニキャストの応答フレームを受信することを期待する。つまり、RAフィールドが、自端末が送信したデータフレームのTAフィールドの値のコピーである応答フレームを受信することを期待する。よって、基地局100に送信したデータフレームに対する応答フレームのRAフィールドのI/Gビットを、グループIDがRAフィールドに設定されているかの識別に用いることができる。すなわち、I/Gビットが1であれば、RAフィールドにグループIDが設定されていると判断できる。なお、前述のCTSフレーム72の場合と同様、RAフィールド内のI/GビットとグループIDを指定する領域以外の場所で、例えば事前に定義したパターンを設定するようにしてもよいし、例えば2オクテットをUL−MU−MIMO送信時のデータフレームが媒体を占有する時間、つまりデータフレームを格納する物理パケット長を指定するために用いるようにしてもよい。送達確認応答フレーム76の中でUL−MU−MIMO送信時のデータフレームを格納する物理パケット長が指定されていれば、端末101〜103は同一TXOP内で続けてデータフレームを送信できる場合に、次に各々が送信するデータフレームをその長さになるよう、あるいはその長さ以下になるように調整するような仕組みを設けることで、次のUL−MU−MIMO送信の終了時間を決めることができ、基地局はその終了時間のSIFS後にその次のUL−MU−MIMO送信に対する送達確認応答フレームをUL−MU−MIMO送信を行った端末、この場合は端末101〜103に送信することができる。
ここで送達確認応答フレームのフォーマットとして、新規フレームを定義してもよいし、BA(BlockAck)フレームを再利用し、BAフォーマットを拡張してもよい。
BAフレームを再利用する場合、通常のBAフレームと同様、フレームタイプは制御(Control)、フレームサブタイプはBlockAckとなる。このようにBAフレームを再利用したフレームをMulti−Station Block Ackと呼んでもよい。図5(A)にBAフレームを再利用する場合のフレームフォーマット例を示す。図5(B)は、BAフレームにおけるBA Controlフィールドのフォーマットの例を示し、図5(C)は、BAフレームにおけるBA Informationフィールドのフォーマットの例を示す。複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであるということは、BA Controlフィールドの中で示してもよい。例えばIEEE802.11規格では、Multi−TIDサブフィールドが1でCompressed Bitmapサブフィールドが0の場合が現状予約(Reserved)になっているが、これを複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであることを示すために用いるようにしてもよい。あるいは図5(B)ではビットB3−B8の領域が予約サブフィールドになっているが、この領域の一部または全てを複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであることを示すために定義してもよい。
BAフレームにおけるRAフィールドは、図4(B)に示したフォーマットを有するグループIDシグナリングRA(Group ID signaling RA)を格納する。BA ControlフィールドのMulti−Userサブフィールドには、BA Informationフィールドでレポートするユーザ数(端末数)を通知する。BA Informationフィールドには、ユーザ(端末)ごとに、アソシエーションID(Association ID:AID)用のサブフィールド(図5(C)ではPer TID Infoと記載)と、Block Ack開始シーケンスコントロール(Block Ack Starting Sequence Control)サブフィールドと、Block Ackビットマップ(Block Ack Bitmap)サブフィールドとを配置する。アソシエーションIDサブフィールドにはユーザ識別を行うためAIDを入れる。Block Ack開始シーケンスコントロールサブフィールドには、当該BlockAckフレームが示す送達確認情報の最初のMSDUのシーケンス番号を格納する。Block Ackビットマップサブフィールドには、Block Ack開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号の受信成功可否のビット(ACK情報)からなるビットマップ(Block Ackビットマップ)を入れる。なお、当該BAフレームの中に同一TXOPでの同一グループIDによるUL−MU−MIMO送信の許可または指示をするようなフィールドを設けてもよい。BA Controlフィールドとして図5(B)ではビットB3−B8の領域が予約サブフィールドになっているが、例えばこの領域の一部を同一TXOPでの同一グループIDによるUL−MU−MIMO送信の継続許可または指示として使うようにすればよい。RAフィールドの一部に設けるのでもよい。この場合、当該情報は1ビットあれば例えばその値が1であれば継続可能、0であれば継続不可を示すことができ、十分と考えられる。そうすれば、当該BAフレームを受信した端末では同一TXOP内で再びBAフレームのSIFS後に続けてUL−MU−MIMO送信をすることができる。
送達確認応答フレーム76が、BAフレームを再利用したフレームの場合、この送達確認応答フレーム76を受信した端末は、送達確認応答フレーム76のフレームコントロールフィールドのフレームタイプおよびフレームサブタイプを確認する。これらが、制御およびBlockAckであることを検出すると、次に、RAフィールドのI/Gビットを確認し、この値が1であることから、このRAフィールドが、図4(B)に示したフォーマットを有するグループIDシグナリングRA(Group ID signaling RA)を格納していると判断する。そして、RAフィールドの3〜8番目のビットの値をグループIDとして抽出し、抽出したグループIDと、自端末が属するグループのグループIDとを比較する。抽出したグループIDが自端末の属するグループのグループIDに一致している場合は、自端末が送信した(1つ以上の)データフレームに対するACK情報をBlock Ack Bitmapフィールドから特定し、自端末が送信したデータフレームの送信成功の可否を判断する。例えば、自端末のAIDを格納しているTID Infoサブフィールドを、BA Informationフィールド内から特定し、特定したTID Infoサブフィールドに後続するBlock Ack Starting Sequence Controlサブフィールドに設定された値(開始シーケンス番号)を特定し、開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号の送信成功の可否を、Block Ackビットマップから特定する。AIDのビット長は、TID Infoサブフィールド長より短くてよく、AIDをTID Infoサブフィールドの一部の領域(例えば2オクテット(16ビット)のうち先頭から11ビット(B0−B10))に格納されている。なお、BA Controlフィールドの中で、複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであるということが示されている場合には、送達確認応答フレーム76のフレームコントロールフィールドのフレームタイプおよびフレームサブタイプから制御およびBlockAckであることを検出した後、RAフィールドを確認してRAフィールドがグループIDシグナリングRAを格納していると判別すると、BA Controlフィールドを確認して複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであるかを確認する手順を入れるようにしてもよい。この場合に複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであればRAフィールドからグループIDを抽出する作業以降を継続し、複数の端末に関する送達確認応答情報を通知するために拡張したBAフレームフォーマットでなければ、受信したフレームがエラーであるとして処理する。
複数の端末にBAフレームではなくACKフレームを返す場合は、各BA情報フィールドのTID Infoサブフィールドにおける1つのビット(例えば2オクテット(16ビット)のうち、先頭から12ビット目(先頭をB0とすれば、B11))をACKかBAかを示すビット(ACK/BAビット)として用い、当該ビットにACKを示す値を設定するようにしてもよい。ACKを示す値を設定した場合に、Block Ack Starting Sequence ControlサブフィールドおよびBlock Ack Bitmapサブフィールドは省略する。これにより、1つのフレームで複数の端末のACKを通知できる。
上述した例では、BAフレームを再利用してBAまたはACKを応答する場合を示したが、グループIDを設定する送達確認応答フレームとして、新規フレームを定義する場合は、例えば図6に示すフォーマットを用いることができる。フレームコントロールフィールドのフレームタイプは制御とし、サブタイプは例えばサブタイプとしてGroup ID Ackとして新規の値を定義する。ここでサブタイプを従来と同様のACKとして設定してしまうと、グループIDシグナリングRAに対応しない端末では、従来のACKフレーム長と異なるために受信したフレームがエラーであると処理してしまう可能性があるため、サブタイプはACKとは別の新規の値を定義すべきである。RAフィールドは、図4(B)に示したフォーマットを有するグループIDシグナリングRA(Group ID signaling RA)を設定する。Ackビットマップフィールドには、各端末の受信成功可否を表す情報(ACK情報)を格納する。Ackビットマップフィールドのフォーマットは任意でよいが、一例として、BlockAckの場合のBA Informationフィールド(図5(C)参照)と同様のフォーマットを採用してもよい。これに限られず、端末とシーケンス番号とACK情報との対応関係が明確であれば、どのようなフォーマットを採用としてもよい。なお、UL−MU−MIMO送信で送信するデータフレーム数が1つに限定される場合は、シーケンス番号に関する情報を、送達確認応答フレームから省略してもよい。このとき、管理フレームで同じグループに属する各端末の順序を指定する情報を事前に通知しておき、Ackビットマップフィールドには、当該順序で、各端末について、ACK情報を1つずつ配置してもよい。これによれば、Ackビットマップフィールドには端末を識別する情報(AID等の情報)を入れる必要はないため、ACKビットマップフィールド長を短くできる利点がある。この場合、送達確認応答フレームを受信した端末は、Ackビットマップフィールドにおいて、予め通知された自端末の順位に応じた位置のビットを特定し、特定したビットからACK情報を抽出する。BlockAckにおける図5(C)の例のように開始シーケンス番号と、当該開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号のACK情報を格納する場合も、予め各端末の順位を指定して、同様にして実施可能である。すなわち、予め通知された自端末の順位に応じた位置のフィールドをAckビットマップフィールドにおいて特定し、特定したフィールドの先頭側の領域から開始シーケンス番号を特定し、後ろ側の領域の各ビットから、当該開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号のACK情報を抽出すればよい。ここでは、各端末の順位を指定する情報を事前に管理フレームで通知したが、各端末の順位を指定するフィールドを図6の送達確認応答フレームに追加し(たとえばRAフィールドとAckビットマップフィールドの間に追加し)、これを利用して各端末は、自端末の順位を把握してもよい。当該新規フレームにおいても、BAフレームの場合で記述したようにフレーム中に同一TXOPでの同一グループIDによるUL−MU−MIMO送信の許可または指示を示す情報を設けてもよい。例えば当該情報はグループIDシグナリングRAとして用いるRAフィールドの一部サブフィールドとして入れることができる。
なお、本実施形態では、グループIDと、各端末に対するACK情報とを1つの送達確認応答フレームに格納して、各端末に同時に送信したが、図7に示すように、各端末に個別に送達確認応答フレーム76a、76b、76cを生成して、それぞれSIFS間隔で、順番に送信するようにしてもよい。この場合、送達確認応答フレームは、公知のAckフレームもしくはBAフレームでよく、個々の送達確認応答フレームのRAフィールドには、各端末のMACアドレス(I/Gビットは0)を設定すればよい。
図8は、本実施形態に係る基地局の基本的な動作例のフローチャートである。
基地局は、BSS内の端末からRTSフレームを受信する(S101)。すなわち、フレーム種別(タイプ、サブタイプ)が、制御(Control)およびRTSであるフレームを受信する。基地局は、予めUL−MU−MIMO送信用のグループを管理しており、RTSフレームを送信した端末が属するグループを、RTSフレームのTAに基づき特定する(S102)。そして、個別/グループビット(I/Gビット)を1に設定し、当該特定したグループのグループIDをRAフィールドの所定の第2領域(図4(B)のB2〜B7ビット、すなわち3〜8番目のビット)に設定したCTSフレームを生成する(S103)。このとき、CTSフレームのフレームコントロールフィールドのフレーム種別(タイプ、サブタイプ)は、通常のCTSフレームと同様に、制御およびCTSを示す値を設定する。基地局は、生成したCTSフレームを、RTSフレームの受信完了からSIFS後に送信する(同S103)。なお、前述のように厳密にはS101の後で、S103までの間に、RTSフレームの送信元端末が属するグループにUL−MU−MIMO送信の許可または指示を送信するか否かの判断を行うことになる。例えばS101の直後にこの判断を行うようにしてもよいし、S102でグループを特定した後にRTSフレームの送信元端末からだけのシングルユーザ(Single−User;SU)送信をさせるようにするか、あるいは、特定したグループからのUL−MU−MIMO送信ができるようにするかを、基地局で保持する情報に基づいて判断するようにしてもよい。RTSフレームの送信元端末からだけのSU送信をさせるように判断した場合には、S103の代わりに通常のCTSフレームを生成し送信し、後述のS104の代わりにRTSフレームの送信元端末からだけのデータフレームを受信し、S105の代わりに従来の送達確認応答フレームを生成し送信することになる。
基地局は、CTSフレームの送信完了からSIFS経過後に、CTSフレームで通知したグループIDのグループに属する端末群からUL−MU−MIMO送信されるデータフレームを受信する(S104)。基地局は、受信したUL−MU−MIMO送信信号をMIMO復調することでストリーム毎の信号を取得し、信号を復号することで、各端末のデータフレームを得る。基地局は、データフレームのFCS情報に基づき、受信成功の可否を判定し、受信成功の可否を示す情報(ACK情報)を生成する(S105)。端末毎に複数のデータフレームを受信する場合は、各データフレームのACK情報を生成する。基地局は、送達確認応答フレームとして、RAフィールドのI/Gビットを1に設定し、グループIDをRAフィールドの所定の第2領域(図4(B)のB2〜B7ビット、すなわち3〜8番目のビット)に設定し、また、各端末のデータフレームに対するACK情報を、使用するフレームフォーマットに応じて所定のフィールドに格納した応答フレームを生成する(同S105)。基地局は、生成した応答フレームを、UL−MU−MIMO送信信号の受信完了からSIFS後に、各端末に同時に送信する(同S105)。継続して同一TXOPでの同一グループIDによるUL−MU−MIMO送信の許可または指示をする場合には、S104とS105が同一TXOPで繰り返されることになる。
図9は、本実施形態に係る端末の基本的な動作例のフローチャートである。
基地局へ送信するデータを有する端末は、例えばDIFSおよび必要に応じてバックオフ期間のキャリアセンスによりアクセス権(送信権)を獲得したら、RTSフレームを基地局に送信する(S201)。RTSフレームのTAアドレスは、当該アクセス権を獲得した端末のMACアドレス(I/Gビットは0)、RAアドレスは基地局のMACアドレス(I/Gビットは0)である。以下に説明するステップS202〜S208は、ステップS201でRTSフレームを送信した端末以外の端末についても適用される。
端末は、RTSフレームを受信した基地局から送信されるCTSフレームを受信する(S202)。端末は、当該CTSフレームのフレームコントロールフィールドに基づきフレーム種別(タイプ、サブタイプ)を調べ、制御およびCTSであることを把握する。そして、当該CTSフレームのRAフィールドのI/Gビット(先頭ビット)が1であることから、RAフィールドの所定の第2領域(図4(B)のB2〜B7ビット、すなわち3〜8番目のビット)にグループIDが設定されていると判断し、当該所定の第2領域からグループIDを読み出す(S203)。
端末は、読み出したグループIDと、自端末が属しているグループのグループIDと比較する(S204)。両グループIDが一致する場合(YES)、基地局からUL−MU−MIMO送信を許可または指示されたグループに属していると判断し、基地局にデータフレームをUL−MU−MIMO送信することを決定する。そして、端末は、基地局へ送信したいデータを含むデータフレームを生成して、CTSフレームの受信完了から、SIFS経過後に、基地局にUL−MU−MIMO送信する(S205)。グループIDが一致しない場合は(NO)、自端末が、基地局からUL−MU−MIMO送信を許可または指示されたグループに属していないと判断し、送信は行わない。
端末は、データフレームの送信後、基地局から送信される送達確認応答フレーム(図5または図6参照)を受信する。端末は、送達確認応答フレームのフレームコントロールフィールドに基づきフレーム種別(タイプ、サブタイプ)を判定する。例えば図5のBlockAckを再利用した応答フレームの場合、フレーム種別(タイプ、サブタイプ)は、制御およびBlockAckであり、RAフィールドの個別/グループIDビットは1である。この場合、端末は、これらのフレーム種別および個別/グループIDビットを把握すると、所定の第2領域(図4(B)のB2〜B7ビット、すなわち3〜8番目のビット)にグループIDが設定されていると判断し、当該領域からグループIDを読み出す(S206)。端末は、読み出したグループIDと、自端末が属しているグループのグループIDと比較する(S207)。両グループIDが一致すると(YES)、自端末のAIDに対応するBlock Ack Starting Sequence ControlサブフィールドとBlock Ack Bitmapサブフィールドを特定し、特定したこれらのサブフィールドから、自端末が送信したデータフレームのACK情報を特定し、ACK情報に基づきデータフレーム送信の成功可否を判定する(S208)。両グループIDが一致しない場合、他のグループに属する端末のACK情報が格納されていると判断し、何も行わない。すなわち両グループIDが一致しない場合、送達確認応答フレームを受信していないとして処理する。両グループIDが一致しない場合と、S108で送信したデータフレームのいずれかが不成功であると判定した場合は、従来の再送処理と同様で、再度自端末が基地局に送信する機会を得た場合に再送対象のデータフレームを送信する。この再度自端末が基地局に送信する機会はS205のUL−MU−MIMO送信と同一のTXOP内であってもよい。継続して同一TXOPでの同一グループIDによるUL−MU−MIMO送信の許可または指示を受けた場合には、同一TXOPであればS205に戻ることになる。なおその場合、S208の処理とS205の処理は前後してもよい。
ステップS206において、送達確認応答フレームが図6に示したような新たに定義したフレームの場合、フレーム種別(タイプ、サブタイプ)は、制御および例えばGroup ID Ackであり、RAフィールドのI/Gビットは1である。この場合、端末は、これらのフレーム種別およびI/Gビットを把握すると、所定の第2領域(図4(B)のB2〜B7ビット、すなわち3〜8番目のビット)にグループIDが設定されていると判断し、当該領域からグループIDを読み出す(S206)。そして、当該グループIDと、自端末が属しているグループのグループIDと比較し(S207)、一致する場合は(YES)、Ack Bitmapフィールドから自端末のACK情報を特定し、ACK情報に基づきデータフレーム送信の成功可否を判定する(S208)。
以上、本実施形態によれば、端末からのユニキャストのMACフレームにより誘発されて送信するMACフレームであって、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示をするMACフレームを送信する際、MACフレームのRAフィールドのI/Gビットを1にし、残りのフィールド領域の一部に、MACアドレスよりも短いマルチユーザ用に定義したグループIDを入れる。具体的に、端末から受信するRTSフレームに対して、RAフィールドのI/Gビット(先頭ビット)を“1”にし、RAフィールドの所定の第2領域(3〜8ビット目)に、当該端末が属するグループのグループIDを入れたCTSフレームを応答する。これによれば、当該CTSフレームのRAフィールドの値が、BSS内の端末のMACアドレス、もしくは将来BSSに加入する端末のMACアドレスに一致する可能性はないため、特段問題を発生させることなく、RAフィールドにグループIDを設定できる。また、既存のRTS−CTSの枠組みを利用して、UL−MU−MIMO送信を実現でき、UL−MU−MIMO送信を許可または指示するためのフレームを新たに定義する必要はない。
また、上記のCTSフレームを受信した端末は、フレームコントロールフィールドからフレーム種別(タイプおよびサブタイプ)が、制御よびCTSであることを判定し、RAフィールドのI/Gビットが1であることから、当該CTSフレームがUL−MU−MIMO送信を許可または指示するものであること、かつRAフィールド内の所定フィールド領域にグループIDが入っていることを把握できる。そして端末は、RAフィールドからグループIDを読み出し、当該グループIDに一致するグループに自端末が属している場合は、予め定められたタイミングでUL−MU−MIMO送信を行う。通常の場合、フレーム種別(タイプおよびサブタイプ)が、制御およびCTSであれば、RAフィールドのI/Gビット(先頭ビット)は0である。これは、通常であれば、RTSフレームのTAフィールドの値をコピーしてCTSフレームのRAフィールドに入れるためである。しかしながら、本実施形態に係るCTSフレームでは、RAフィールドのI/Gビットを1に設定するため、CTSフレームを受信した端末は、本CTSフレームがUL−MU−MIMO送信を許可または指示するフレームであり、RAフィールド内にグループIDが入っていることを識別できる。
また、本実施形態によれば、複数端末からのUL−MU−MIMO送信への応答となる送達確認応答フレーム(BAフレームを流用したフレーム、または新規に定義したフレーム等)を送信する際、送達確認応答フレームのRAフィールドのI/Gビットを1にし、残りのフィールド領域の一部に、グループIDを入れる。これによれば、当該送達確認応答フレームのRAフィールドの値が、BSS内の端末のMACアドレス、もしくは将来BSSに加入する端末のMACアドレスに一致する可能性はないため、特段問題を発生させることなく、RAフィールドにグループIDを設定できる。
また、上記の送達確認応答フレームを受信した端末は、フレームコントロールフィールドからフレーム種別(タイプおよびサブタイプ)が、制御およびBlockAck(または例えばGroup ID Ackのように送達確認応答フレームの一種)であることを判定し、RAフィールドのI/Gビットが1であることから、当該送達確認応答フレームがUL−MU−MIMO送信に対するACK情報を格納したフレームであること、かつRAフィールド内の所定の第2領域にグループIDが設定されていることを把握できる。そして端末は、RAフィールドの当該所定の第2領域からグループIDを読み出し、当該グループIDに一致するグループに自端末が属している場合は、予め定められた方法で、自端末のACK情報を送達確認応答フレームから特定して、データフレーム送信の成功可否を判断する。なお、システムまたは仕様上、送達確認応答フレームのRAフィールドをブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレス(この場合、I/Gビットは1とする)に設定することが許容されている場合、RAフィールドの値がブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスに一致しないことを確認できた場合のみ、所定の第2領域にグループIDが入っていると判断してもよい。
なお、本実施形態ではUL−MU−MIMO送信の場合で説明を行ったが、アップリンクのOFDMA (Orthogonal Frequency Division Multiple Access)に適用してもよい。アップリンクOFDMA(UL−OFDMA)は、1つまたは複数のサブキャリアをリソースユニット(サブチャネル、リソースブロック、周波数ブロックなどと呼んでもよい)として端末に割り当て、リソースユニットベースで、複数の端末からの受信を同時に行う通信方式である。リソースユニットは、通信を行うリソースの最小単位となる周波数成分である。リソースユニットは、通信を行うリソースの最小単位となる周波数成分である。図20に、1つのチャネル(ここではチャネルMと記述している)の連続した周波数領域内に確保したリソースユニット(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を示す。チャネルMには、互いに直交する複数のサブキャリアが配置されており、1つまたは複数の連続するサブキャリアを含む複数のリソースユニットがチャネルM内に定義されている。リソースユニット間には、1つ以上のサブキャリア(ガードサブキャリア)が配置されてもよいが、ガードサブキャリアは必須ではない。チャネル内の各サブキャリアには、サブキャリアを識別するための番号が付与されていてもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。20MHzの複数のチャネルをまとめて1つのチャネルとしてもよい。帯域幅に応じてチャネル内のサブキャリア数またはリソースユニット数が異なってもよい。複数の端末がそれぞれ異なるリソースユニットを同時に用いることで、アップリンクOFDMA通信が実現される。なお、リソースユニットを20MHzのチャネルとし、20MHzのチャネル単位で各端末にリソースユニットを割り当てることも可能である。UL−MU−MIMOの場合には各端末をストリームにより分離していたが、アップリンクOFDMA(UL−OFDMA)の場合には、そのストリームの代わりにリソースユニットで各端末を分離すると置き換えればよい。本実施形態でのUL−MU−MIMO送信に関する記述を参照すれば、RTSフレームをある端末が送信し、それに対し、基地局がグループIDシグナリングRAのCTSフレームを送信することで、そのグループIDと一致する複数の端末によるUL−OFDMA送信が可能となる。またUL−OFDMA送信後の送達確認応答フレームにもグループIDシグナリングRAを適用することで、UL−OFDMA送信を行った複数の端末への送達確認応答を一つのフレームでまとめて行うことができる。このようなUL−MU−MIMOからUL−OFDMAへの置き換えは後述の実施形態にも適用できる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、基地局が、I/Gビットを1にし、所定の第2領域にグループIDを設定したRAフィールドを含むCTSフレーム(グループIDシグナリングRAを設定したCTSフレーム)を送信することで、当該グループ内の端末群に対し、ダウンリンクマルチマルチユーザMIMO送信の予告(ダウンリンクマルチマルチユーザMIMO送信の対象であることの通知)を行う。基地局は、CTSフレームの送信後、SIFS後に、当該グループ内の端末群に対しデータフレームをダウンリンクマルチマルチユーザMIMO送信する。本実施形態では、CTS−To−Selfを流用し、基地局は、端末からのRTSフレームをトリガとすることなく、CTSフレームを送信する。なお、通常のCTS−To−Selfでは、基地局からCTSフレームを送信する場合、RAフィールドには、基地局のMACアドレス(I/Gビットは0)を設定するが、本実施形態では、CTSフレームのRAフィールドには、当該基地局のMACアドレスではなく、グループIDシグナリングRA(I/Gビットが1、所定の第2領域がグループID)を設定する。
図10は、図2に示した基地局100および端末106〜108の動作シーケンスの例を示す。基地局100は、端末106〜108へ送信するデータを有しており、これらのデータを端末106〜108へDL−MU−MIMO送信する場合のシーケンスを示す。端末106〜108は、予め基地局100によりDL−MU−MIMO送信用にグループ化されており、基地局100からグループIDを通知されているとする。
基地局100が、データフレームを送信しようとして媒体を観測した結果、媒体がビジーであると検出し、例えばDIFSと、それに続くランダムに決定したバックオフ期間の間、キャリアセンスを行い、キャリアセンス結果がアイドルとして、アクセス権を獲得したとする。この場合、基地局100は、BSS内の端末群にNAVを設定させるため、CTSフレーム81を生成して送信する。CTSフレーム81は、第1の実施形態で示した図4に示したCTSフレームと同じフォーマットを有する。すなわち、RAフィールドの所定の第1領域、具体的に、先頭ビット(I/Gビット)には1を、所定の第2領域(第3〜第8ビット)には端末106〜108が属するグループのグループIDを設定する。RAフィールド内のその他の領域は、予約フィールドとする。あるいはRAフィールド内のその他の領域の一部または全てに、事前に定義したパターンを設定するようにしてもよい。また第1の実施形態と本実施形態の両方の用途としてグループIDシグナリングRAを用いたCTSフレームを使う場合にその用途を区別するために、UL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示を行う第1の実施形態でのCTSフレームに対し、UL−MU−MIMO送信の予告であることを示す本実施形態でのCTSフレームであることをRAフィールド内の第1領域と第2領域を除くその他の領域の一部に示すようにしてもよい。この場合、当該情報は1ビットあれば例えばその値が0であればUL−MU−MIMO送信の許可もしくは指示であり、1であればUL−MU−MIMO送信の予告であることを示すことができ、十分と考えられる。なお、CTSフレームのため、TAフィールドは存在しない。
このCTSフレーム81は、端末106〜108を含むBSS内の端末群に受信される。CTSフレーム81を受信した端末は、CTSフレーム81のフレームコントロールフィールドからフレーム種別(タイプ、サブタイプ)を確認し、制御およびCTSであると把握する。そして、RAフィールドの先頭ビット(I/Gビット)を確認し、このビットの値が1であることを把握する。I/Gビットが1であることから、RAフィールドの値は、自端末のMACアドレスではないと判断し、Durationフィールドに設定されている値に従って、NAVを設定する。また、端末は、I/Gビットが1であることから、RAフィールドの所定の第2領域(第3〜第8ビット)にグループIDが設定されていると判断し、当該所定の第2領域からグループIDを読み出す。端末106〜108は、読み出したグループIDを自端末が属するグループのグループIDと比較し、両者が一致することから、CTSフレーム81の送信完了からSIFS後に自端末へ、基地局100からDL−MU−MIMO送信されると判断し、受信待ちを行う。ただし、端末は隣接する別の基地局から、図4のフォーマットのCTSフレームを受信する可能性があり、この場合CTSフレームにはTAフィールドが存在しないため自端末が接続している基地局からのCTSフレームか自端末が接続していない別の基地局からのCTSフレームかを上述の説明からだけでは区別できず、接続していない当該別の基地局からのCTSフレームに対し、そのSIFS後に自端末へDL−MU−MIMO送信があると判断し、受信待ちを行ってしまう。そこで、隣接する基地局同士では、事前に互いに重複しないように、グループIDを各々のBSS内のグループに割り当てるようにしてもよい。この方法として、例えば、事前に各基地局に割り当てることができるグループIDの範囲を静的に設定してもよいし、あるいは、基地局同士で有線または無線で制御用の通信路を形成し、当該通信路を介してグループIDに関する情報を交換することで、それぞれ付与するグループIDが重複しないようにしてもよい。無線の場合には、例えば自BSSで使用している、または使用予定のグループIDをビーコンフレームやプローブ応答フレームで通知するようにし、他の基地局はこれらのフレームを受信すると通知されたグループID以外の値を当該他の基地局が構成するBSSでのグループIDとして使用するようにする。当該他の基地局も同様に当該他の基地局が構成するBSSで使用している、または使用予定のグループIDを通知するようにすれば、基地局同士でそれぞれが付与するグループIDが重複しないようにすることができる。あるいは前述の事前に定義したパターンをCTSフレームに入れるようにし、当該パターンが自BSSと隣接BSSで重複しないようにすることで、端末でCTSフレームを区別できるようにしてもよい。当該パターンを用いてCTSフレームを区別するようにする場合にも、基地局同士でそれぞれが付与する当該パターンが重複しないようにする方法としては、上記グループIDでの重複を防止する方法を参照すればよい。あるいは、物理パケットのヘッダにBSSID(インフラストラクチャBSSでは当該BSSを形成する基地局のMACアドレスと等価)の一部情報、例えば最後の9ビットを加工して入れるようにし、端末は受信時に物理パケットのヘッダ部分の当該BSSID関連情報が自BSSと一致するか否かでCTSフレームを区別するようにしてもよいし、またさらに当該BSSID関連情報とグループIDシグナリングRAのCTSフレーム中のパターンの組み合わせでCTSフレームを区別するようにしてもよい。
なお、上述したように、通常、端末からのRTSフレームを受信することなく、基地局からCTSフレームを送信する場合(CTS−To−Selfの場合)、RAフィールドには、基地局100のMACアドレス(I/Gビットは0)が設定される。しかしながら、本実施形態では、基地局100のMACアドレスではなく、I/Gビットを1とし、所定の第2領域をグループIDとしたものをRAアドレスとして格納することを特徴とする。
基地局100は、CTSフレーム81の送信完了からSIFS経過後、CTSフレーム81で指定したグループ内の端末106〜108に、それぞれ宛のデータフレームを、DL−MU−MIMO送信する(これらのデータフレームをまとめて82としている)。この際、IEEE Std 802.11acの規格に合わせて、各端末に送信する物理パケットのヘッダ(VHT−SIG−Aフィールド)に、グループIDを入れてもよい。端末106〜108は、基地局100からDL−MU−MIMO送信される信号を受信待ちし、受信した信号をMIMO復調することで、自端末宛のデータフレームを抽出する。なお、各端末は、物理パケットのヘッダに含まれるグループIDが、自端末が属するグループのグループIDに一致するときのみ、データフレームの復号を行うようにしてもよい。各端末は、データフレームのFCS情報に基づき受信成功の可否を判定し、成功可否の判定結果(ACK情報)を示す送達確認応答フレーム83、84、85を生成する。端末106〜108は、基地局100からのMIMO信号の受信完了後、SIFS経過後に、基地局100に送達確認応答フレーム83〜85をUL−MU−MIMOで送信する。なお、送達確認応答フレーム83〜85のフォーマットは、通常のACKフレームでも、BAフレームでもよい。ここでは、送達確認応答フレーム83〜85をUL−MU−MIMO送信したが、図11に示すように、端末106〜108が、送達確認応答フレーム83a、84a、85aをSIFS間隔ずつあけて順番に送信してもよい。送達確認応答フレームを出力する順序は、グループ毎に事前に基地局100から各グループ内の端末に、管理フレームを介して通知しておけばよい。あるいはIEEE Std 802.11ac−2013を参照し、端末106宛てのデータフレームではA−MPDU構成を用いて送達確認応答要求(BlockAckRequest;BAR)フレームを入れずに端末106に送達確認応答フレーム送信を促すようにし(この手法をimplicit BARと呼ぶ)、端末107および端末108宛てのデータフレームではimplicit BARはせず、その結果、データフレーム82送信完了からSIFS後に端末106から送達確認応答フレームを受信し、端末106からの送達確認応答フレームの受信完了からSIFS後に端末107に送達確認応答要求フレームを送信して(この手法をexplicit BARと呼ぶ)、その結果、端末107宛て送達確認応答要求フレームの送信完了からSIFS後に端末107から送達確認応答フレームを受信し、端末107からの送達確認応答フレームの受信完了からSIFS後に端末108に送達確認応答要求フレームを送信して、その結果、端末108宛て送達確認応答要求フレームの送信完了からSIFS後に端末108から送達確認応答フレームを受信するようにしてもよい。
以上、本実施形態によれば、基地局が、グループIDシグナリングRAを設定したCTSフレームを送信することで、CTSフレームを利用して、ダウンリンクマルチマルチユーザMIMO送信の対象であることを、当該グループIDのグループ内の端末群に通知することができる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、RTSフレームの受信を、基地局によるアップリンクマルチマルチユーザMIMO送信の許可または指定の通知を行うCTSフレームの送信のトリガとしたが、本実施形態では、基地局は、端末からRTSフレームを受信することなく、CTSフレームを送信する。RTSフレームの送信が不要なため、高速にUL−MU−MIMO送信を開始できる。
図12は、図2に示した基地局100および端末101〜103の動作シーケンスの例を示す。端末101〜103は、基地局100へ送信するデータを有しており、これらのデータを基地局100へUL−MU−MIMO送信する場合のシーケンスを示す。端末101〜103は、予め基地局100によりUL−MU−MIMO送信用に同じグループにグループ化され、グループIDを通知されているとする。
基地局100が、データフレームを送信しようとして媒体を観測した結果、媒体がビジーであると検出し、例えばDIFSと、それに続くランダムに決定したバックオフ期間の間、キャリアセンスを行い、キャリアセンス結果がアイドルとして、アクセス権を獲得したとする。このとき、基地局100は、第1の実施形態で示した図4に示したものと同じフォーマットを有するCTSフレーム91を生成して送信する。すなわち、CTSフレーム91のRAフィールドの先頭ビット(I/Gビット)は1であり、RAフィールド内の所定の第2領域(第3〜第8ビット)には、端末101〜103が属するグループのグループIDを設定する。RAフィールド内のその他の領域は、予約フィールドであるとする。あるいはRAフィールド内のその他の領域の一部または全てに、事前に定義したパターンを設定するようにしてもよい。なお、CTSフレームであるため、TAフィールドは存在しない。
このCTSフレーム91は、端末101〜103を含むBSS内の端末群に受信される。CTSフレーム91を受信した端末は、CTSフレーム91のフレームコントロールフィールドからフレーム種別(タイプ、サブタイプ)を確認し、制御およびCTSであると把握する。そして、RAフィールドの先頭ビット(I/Gビット)を確認し、端末はこのビットの値が1であることを把握する。端末は、I/Gビットが1であることから、RAフィールドの所定の第2領域にグループIDが設定されていると判断し、当該所定の第2領域からグループIDを読み出す。端末は、読み出したグループIDを自端末が属するグループのグループIDと比較する。端末101〜103以外の端末は、両者が一致しないため、自端末はUL−MU−MIMO送信の対象として指定されていないと判断する。一方、端末101〜103では、両者が一致するため、UL−MU−MIMO送信の対象として指定されたと判断する。端末101〜103は、CTSフレーム91の受信完了からSIFS後に、データフレーム92、93、94を基地局100にUL−MU−MIMO送信する。なお、データフレーム92、93、94のTAは、端末101〜103のMACアドレス(I/Gビットは0である)、RAは、基地局100のMACアドレス(I/Gビットは0)である。この動作では、端末101〜103は、CTSフレーム91を受信した場合、自端末が接続している基地局から当該CTSフレーム91が受信されたものとみなす。これにより、CTSフレーム91にTAフィールドが存在しなくても、データフレームの送信先を当該基地局と判断できるため、UL−MU−MIMO送信を実現できる。ただし、端末は隣接する別の基地局から、図4のフォーマットのCTSフレームを受信する可能性があり、この場合CTSフレームにはTAフィールドが存在しないため自端末が接続している基地局からのCTSフレームか自端末が接続していない別の基地局からのCTSフレームかを上述の説明からだけでは区別できず、接続していない当該別の基地局へデータフレームを送信してしまう。そこで、隣接する基地局同士では、事前に互いに重複しないように、グループIDを各々のBSS内のグループに割り当てるようにしてもよい。この方法として、例えば、事前に各基地局に割り当てることができるグループIDの範囲を静的に設定してもよいし、あるいは、基地局同士で有線または無線で制御用の通信路を形成し、当該通信路を介してグループIDに関する情報を交換することで、それぞれ付与するグループIDが重複しないようにしてもよい。無線の場合には、例えば自BSSで使用している、または使用予定のグループIDをビーコンフレームやプローブ応答フレームで通知するようにし、他の基地局はこれらのフレームを受信すると通知されたグループID以外の値を当該他の基地局が構成するBSSでのグループIDとして使用するようにする。当該他の基地局も同様に当該他の基地局が構成するBSSで使用している、または使用予定のグループIDを通知するようにすれば、基地局同士でそれぞれが付与するグループIDが重複しないようにすることができる。あるいは前述の事前に定義したパターンをCTSフレームに入れるようにし、当該パターンが自BSSと隣接BSSで重複しないようにすることで、端末でCTSフレームを区別できるようにしてもよい。当該パターンを用いてCTSフレームを区別するようにする場合にも、基地局同士でそれぞれが付与する当該パターンが重複しないようにする方法としては、上記グループIDでの重複を防止する方法を参照すればよい。あるいは、物理パケットのヘッダにBSSID(インフラストラクチャBSSでは当該BSSを形成する基地局のMACアドレスと等価)の一部情報、例えば最後の9ビットを加工して入れるようにし、端末は受信時に物理パケットのヘッダ部分の当該BSSID関連情報が自BSSと一致するか否かでCTSフレームを区別するようにしてもよいし、またさらに当該BSSID関連情報とグループIDシグナリングRAのCTSフレーム中のパターンの組み合わせでCTSフレームを区別するようにしてもよい。
以降のシーケンスは、第1の実施形態の図3と同様である。すなわち、基地局100は、端末101〜103からUL−MU−MIMO送信されたデータフレームの信号を、MIMO復調してストリームごとに分離し、各端末のデータフレームを取得する。各端末から送信されるデータフレームのTAは、各端末のMACアドレス(個別/グループフィールドは0)であり、RAは、基地局101のMACアドレス(個別/グループフィールドは0)である。基地局100は、各端末のデータフレームの受信に成功したかをデータフレームのFCSフィールド内のFCS情報に基づき判断する。基地局100は、各端末のデータフレームの受信の成功可否情報(ACK情報)を格納した送達確認応答フレーム95を生成し、送達確認応答フレーム95を、UL−MU−MIMO送信信号の受信完了から、SIFS経過後に送信する。この送達確認応答フレーム95でも、RAフィールドにグループIDを入れる手法を利用できる。その詳細な説明は、第1の実施形態の説明で述べた通りであるため省略する。
以上、本実施形態によれば、基地局から、I/Gビットを1にし、かつグループIDを設定したRAフィールドを有するCTSフレームを、端末からのRTSフレームの受信をトリガとすることなく、送信する。よって、第1の実施形態の効果に加え、RTSフレームの送信が不要な分、高速にUL−MU−MIMO送信を開始できる。
以下、上述した各実施形態に基づく変形例を説明する。これまではRAフィールドのI/Gビットを1にし、RAフィールド内の所定の第2領域にグループIDを設定したが、以下の各変形例では、グループIDを設定しない形態を示す。各変形例に示す形態または技術的思想は、上述した各実施形態に適用することが可能である。
(第1の変形例)
第1の実施形態では、RTSフレームに対する応答として、I/Gビットを1にし、所定の第2領域にグループIDを設定したRAフィールドを含むCTSフレームを送信することで、当該グループ内の端末群に対し、アップリンク多重送信(UL−MU−MIMO送信またはUL−OFDMA送信)の許可もしくは指示を行った。この場合、アップリンク多重送信を行うのはCTSフレームで指定されたグループIDのグループに属する端末に限定されるが、当該グループに属する端末に限定しない方法も可能である。
具体的に、基地局は、RTSフレームに対する応答として、RAフィールドのI/Gビットを1にしたCTSフレームを送信する。RAフィールドのうちI/Gビット以外の領域は、任意の値にしてもよいし、予め定めた値(ビットパターン)を設定してもよい。これにより、基地局は、任意の端末に対してアップリンク多重送信を指示する。RTSフレームを送信した端末、および当該RTSフレームを受信した他の端末(基地局を除く)は、基地局から送信されるCTSフレームを受信した場合、I/Gビットが1になっていることから、第1の実施形態で説明した理由により、アップリンク多重送信を許可または指示していると判断できる。
端末は、アップリンク送信したいデータを有するか否か等の理由に応じて、アップリンク送信を行うか否かを自由に決定する。端末は、アップリンク送信を行うことを決定した場合、UL−OFDMAの場合は、複数のリソースユニットから事前に定めた方法でリソースユニットを選択し、選択したリソースユニットで、CTSフレームの受信完了からSIFS等の事前に定めた時間の経過後に、データフレームをアップリンク送信する。UL−MU−MIMOの場合は、複数の空間リソース(空間、時間または周波数的に互いに直交関係にある複数のプリアンブル)から事前に定めた方法で空間リソースを選択し、選択した空間リソースでCTSフレームの受信完了からSIFS等の事前に定めた時間の経過後に、データフレームをアップリンク送信すればよい。
空間リソースについて説明する。UL−MU−MIMOの場合、基地局は事前に複数の端末から取得したアップリンクの伝搬路応答を用いて受信を行う方法以外に、複数の端末からそれぞれ送信するフレームに互いに直交するプリアンブルをフレームの先頭側(物理ヘッダ内)に付与することで、基地局は当該プリアンブルを利用して端末毎のアップリンクの伝搬路応答を把握し、把握した伝搬路応答に基づきプリアンブルより後の部分を復号することも可能である。端末間のプリアンブルの直交化の方法として、時間的、周波数的、符号的のいずれの方法を用いてもよい。時間直交の場合には、プリアンブルフィールドが複数の区間に分割され、各端末が互いに異なる区間でプリアンブルデータを送信する。ある区間には、いずれか1台数端末のみがプリアンブルデータを送信していることになる。つまり端末間でプリアンブルデータを送信する時間的な位置が異なっている。ある端末がプリアンブルデータを送信する間、他の端末は何も送信しない期間になる。時間直交の場合、プリアンブルは、送信するプリアンブルデータのみならず、どの時間で送信するかに関する情報も含んでいる。周波数直交の場合には、各端末が互いに直交関係にある周波数でプリアンブルデータを送信する。周波数直交の場合、プリアンブルは、送信するプリアンブルデータのみならず、どの周波数(サブキャリア)で送信するかに関する情報も含んでいる。符号直交の場合には、各端末がそれぞれ直交行列の互いに異なる行(または互いに異なる列)に含まれる複数の値(複数の値のそれぞれに対応するシンボル)を配置したプリアンブルデータを送信する。直交行列の各行(または各列)は互いに直交の関係にある。いずれの直交化の方法でも、アクセスポイント11では各端末のプリアンブルの識別が可能となる。
同じリソース(リソースユニットまたは空間リソース)を複数の端末が選択した場合、基地局ではこれらの端末から送信されたデータフレームの復号に失敗するが、端末の選択が重複しなかったリソースについては、基地局は正常にこれらのリソースで送信されたデータフレームを復号することで、アップリンク多重送信(UL−MU−MIMO送信またはUL−OFDMA送信)が実現される。なお、アップリンク多重送信がUL−MU−MIMOかUL−OFDMAのどちらの方式かは、事前に定めておいてもよいし、CTSフレームのRAフィールドにどちらかの方式かを指定する領域を設け、当該領域に方式を指定する情報を基地局が設定してもよい。
別の動作例として、RTSフレームに対してCTSフレームではなく、アップリンク多重送信用のトリガーフレームを基地局が送信する構成も可能である。この場合、トリガーフレームのRAフィールドのI/Gビットを1に設定する。RTSフレームを送信した端末、および当該RTSフレームを受信した他の端末(基地局を除く)は、基地局から送信されるフレームを受信した場合、I/Gビットが1になっていることから、受信したフレームが、トリガーフレームであると判断する。I/Gビットを1にすることでトリガーフレームであることを通知しているため、Frame Controlフィールドのタイプおよびサブタイプの値は既存のものを流用してもよい。トリガーフレームは任意のフォーマットで構成すればよい。トリガーフレームに、使用可能な複数のリソースを特定する情報を設定するフィールドを設け、トリガーフレームを受信し、かつアップリンク送信を行うことを決定した端末は、当該フィールドで指定された複数のリソースの中から使用するリソースを選択してもよい。CTSフレームの場合と同様に、UL−MU−MIMOかUL−OFDMAのどちらかの方式かを指定する領域をトリガーフレームに設け、当該領域に方式を指定する情報を基地局が設定してもよい(このことは以下で説明する他の変形例および実施形態についても同様に適用される)。またトリガーフレームにアップリンク多重送信を許可または指示する複数の端末を指定する情報を含め、当該情報で指定される端末のみがアップリンク送信可能でもよい。
(第2の変形例)
第1の変形例で複数の端末からアップリンク多重送信した複数のデータフレームに対する送達確認応答として、図5(A)〜図5(C)で説明したMulti−Station Block Ackを用いてもよい。ただし、このときRAフィールドのI/Gビットを1にするものとし、RAフィールド内の他の領域は、任意の値、または予め定めた値(ビットパターン)を設定してもよい。ただし、RAフィールドのビット列がブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスに一致しないものとする。または、当該他の領域には、アップリンク多重送信を行った端末のうちの1台の端末を選択し、選択した端末のアドレスのI/Gビット以外のアドレス部分を設定してもよい。選択する端末は、ランダムに選択してもよいし、事前に基地局とRTSフレームおよびCTSフレームの交換を行った端末がアップリンク送信を行っている場合は、当該端末を選択してもよい。
アップリンク送信を行った端末は、RAフィールドのI/Gビットが1であり、かつFrame Controlフィールドのタイプおよびサブタイプが制御(Control)およびBlockAckであるフレームを受信した場合は、当該フレームをMulti−Station Block Ackであると認識する。上述した他の領域に予め定めたビットパターンまたは端末のアドレス部分を設定する場合は、当該ビットパターンまたはアドレス部分が設定されていることを条件としてもよい。アドレス部分が設定されていることを条件とする場合は、アップリンク送信を行った端末は、RTSフレームを送信した端末等のアドレスを、当該RTSフレームの受信時に記憶しておくものとする。
本変形例で述べたMulti−Station Block Ackの構成を、第1の実施形態で用いてもよい。すなわち、第1の実施形態ではRAフィールドの所定の第2領域にグループIDを設定したが、グループIDを設定せずに、本変形例と同様のRAフィールドのフォーマットを用いてもよい。
(第3の変形例)
第1の変形例では、CTSフレームの受信をトリガとして、複数の端末が、送信したいデータを含むデータフレームをアップリンク多重送信(UL−MU−MIMO送信またはUL−OFDMA送信)を行ったが、データを送信するのではなく、アップリンク多重送信の要求(すなわち送信したいデータを保有している旨の通知)を、送信するようにしてもよい。すなわち、図13に示すように、基地局は、アップリンク送信の要求を持っている端末を知るために、RTSフレーム71に対する応答として、RAフィールドのI/Gビットを1に設定したCTSフレーム400を送信する。RTSフレーム71を送信した端末、および当該RTSフレームを受信した他の端末(ここでは少なくとも端末102、103を含む)は、基地局から送信されるCTSフレーム400を受信した場合、I/Gビットが1になっていることを確認し、アップリンク送信の要求を持っている場合は、事前に定義された要求通知用のフレーム(要求フレーム)401〜403を送信する。当該フレームは、Null Data Packet(NDP)でもよい。このときのフレーム送信は、UL−MU−MIMO送信またはUL−OFDMA送信(第1の変形例と同様の方法で送信)でもよい。あるいは、CSMA/CAベースで、ユニキャストでフレームを送信してもよい。CSMA/CAベースの場合、アップリンク送信の要求を受け付けるための時間の制限を設け、当該時間の間のみ受け付けても良いし、一定数の端末から要求を受け付けた時点で、受け付けを終了してもよい。端末102は、RTSフレーム71を送信しているため、要求フレーム402を送信しなくてもよい。基地局は、端末102から要求フレーム402を受信しなくても、端末102はアップリンク送信の要求を有していると解釈すればよい。端末102は、CTSフレーム400のRAフィールドのI/Gビットが1になっていることで、自端末のアップリンク送信の要求が基地局に届いたと解釈することができる。CTSフレーム400のRAフィールドのI/Gビット以外の領域に、要求フレームの送信で使用可能なリソース(リソースユニットまたは空間リソース)の情報を設定してもよい。端末101〜103は、当該情報で指定されたリソースの中から、ランダム選択等、所定の方法で選択したリソースで、要求フレームを送信してもよい。
基地局は、アップリンク送信の要求を通知した端末の中からアップリンク多重送信を行う端末を選定し、選定した端末にトリガーフレーム404を送信してもよい。トリガーフレーム404のフォーマットは任意に定めればよい。Frame Controlフィールドのタイプおよびサブタイプの値を、トリガーフレームに対して新たに定義してもよい。RAフィールドにはブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスを設定してもよいし、RAフィールドを設けないフォーマットも可能である。トリガーフレームに、選定した端末毎に、アップリンク送信で使用するリソースを特定する情報を設定するフィールドを設け、各端末は当該フィールドで指定されたリソースを用いてもよい。トリガーフレームは要求フレームの受信からSIFS等の一定時間後に送信してもよいし、CSMA/CAベースでアクセス権を獲得して、トリガーフレーム404を送信してもよい。トリガーフレーム404を受信しかつ選定された端末(ここでは端末101〜102)は、トリガーフレーム404の受信完了からSIFS等の予め定めた時間後にデータフレーム405、406を、アップリンク多重送信(UL−MU−MIMO送信またはUL−OFDMA送信)する。この後、基地局は、第2の変形例と同様にして送達確認応答フレームを送信してもよい。
本変形例では端末102が送信したRTSフレーム71に対して、基地局はCTSフレーム400を送信したが、送信するフレームは、CTSフレームに限定されない。例えばトレーガーフレームを送信してもよい。この場合、RTSフレーム71を受信し、かつトリガーフレームを受信した端末は、アップリンク送信の要求を有する場合は、要求フレームを送信する。
(第4の変形例)
第2の実施形態では、基地局は、DL−MU−MIMO送信を行う場合に事前にダウンリンクの伝搬路応答を取得していることを想定していたが、当該ダウンリンクの伝搬路応答を複数の端末から取得するために、複数の端末がUL−OFDMAまたはUL−MU−MIMOでダウンリンクの伝搬路応答を基地局に送信してもよい。基地局が、複数の端末からダウンリンクの伝搬路応答を取得するため、図14に示すように、サウンディング用のフレーム411を送信する。当該フレームとして、Null Data Packet(NDP)を用いてもよい。NDPはデータフィールドを有さない物理パケットである(つまりMACヘッダも含まない)。基地局が複数のアンテナを有する場合、複数のアンテナから同時にNDPの信号を送信してもよい。NDPの送信前に、任意の端末からRTSフレームなど、NDPの送信のトリガとなるフレーム(第1の変形例のRTSフレームに相当)を受信し、当該受信に対する応答としてNDPを送信してもよい。当該フレームを送信した端末および当該フレームを受信した端末は、当該フレームに対する応答としてNDPを受信したことで、伝搬路応答を取得してフィードバックすることを判断してもよい。
このNDPを受信した複数の端末101〜103は、NDPに基づき伝搬路を推定してダウンリンクの伝搬路応答を取得し、取得した伝搬路応答を含むフレーム411〜413を、NDPの受信完了からSIFS等の予め定めた時間後に、アップリンク多重送信(UL−OFDMAまたはUL−MU−MIMO)する。アップリンク多重送信の方法は第1の変形例と同様で良い。フレームの種類は管理フレームでも、データフレームでもよい。なお、一例として、当該フレームの送信元アドレスは自端末、受信先アドレスは基地局である。伝搬路応答を返す複数の端末は、事前に何らかの方法でダウンリンク送信があることを基地局から通知されていた端末でもよいし、NDPを受信した全端末でもよい。あるいは、自端末が伝搬路応答を返すかをランダムに決定してもよい。なお、2台以上の端末が同じリソースで送信した場合は、基地局はこれらの端末からのフレームを正常に復号できないことになる。
基地局は、複数の端末からアップリンク多重送信されたフレームを受信して、正常に復号できた端末についてはダウンリンクの伝搬路応答を取得する。基地局は、復号に成功したフレームを送信した端末を特定し、特定した端末に対するACKをまとめて含む送達確認応答フレーム414を生成して、送信する。このとき、送達確認応答フレーム414として、前述したMulti−Station Block Ackを利用する。RAフィールドにおけるI/Gビットを1にし、それ以外の領域は、任意の値にしてもよいし、予め定めた値(ビットパターン)を設定してもよい。サウンディング用のフレーム411の送信のトリガとなるフレーム(第1の変形例のRTSフレームに相当)を送信した端末が存在する場合に、当該端末のアドレスのI/Gビット以外のアドレス部分を設定してもよい。
第1の実施形態の説明で述べたように、Multi−Station Block Ackを利用して、複数の端末にBAではなくACKを返す場合は、各BA情報フィールドのTID Infoサブフィールドにおける1つのビット(例えば先頭から12ビット目(先頭をB0とすれば、B11))をACKかBAかを示すビット(ACK/BAビット)として用い、当該ビットにACKを示す値を設定すればよい。この場合、Block Ack Starting Sequence ControlサブフィールドおよびBlock Ack Bitmapサブフィールドは省略してよい。これにより、1つのフレームで複数の端末のACKを通知できる。
アップリンク多重送信した複数の端末は、送達確認応答フレーム414を受信し、I/Gビットが1であることから当該フレームはMulti−Station Block Ackであると判断し、自端末のAIDが格納されているTID Infoサブフィールドが存在するかで、送信が成功したか否かを判断する。I/Gビットを1にすることで、既存のBAフレームを流用して(つまりフレームタイプおよびサブタイプを新たに定義したり、新たなフレームフォーマットを定義することなく)、Multi−Station Block Ackを実現できる。上述した他の領域に予め定めたビットパターンまたは端末のアドレス部分を設定する場合は、当該ビットパターンまたはアドレス部分が設定されていることを条件としてもよい。
上述した例では、基地局は、サウンディング用のフレームを送信し、複数の端末からダウンリンクの伝搬路応答をアップリンク多重で取得したが、別の情報をアップリンク多重で取得し、それに対するACKをまとめて含む送達確認応答フレームを送信してもよい。例えば基地局が、複数の端末がUL−OFDMAで使用することを希望するリソースユニットの情報を把握したい場合に、当該情報の送信を要求するフレームを送信し、当該フレームを受信した複数の端末が、当該情報を含むフレームをアップリンク多重送信(UL−OFDMAまたはUL−MU−MIMO)してもよい。このときのアップリンク多重送信でUL−OFDMAを用いる場合は、任意のリソースユニットを用いるか、事前に指定されている場合はその指定されたリソースユニットを用いてもよい。基地局は、複数の端末からアップリンク多重送信されたフレームを受信して、正常に復号できた端末については上記情報を取得する。基地局は、上述と同様に、復号に成功したフレームを送信した端末を特定し、特定した端末に対するACKをまとめて含む送達確認応答フレームを生成して、送信する。この後、基地局は、これまで述べてきたCTSフレームまたはトリガーフレームを送信して、UL−OFDMAを開始する場合に、上記取得した情報に基づき、UL−OFDMAで各端末が使用するリソースユニットを指定してもよい。
(第4の実施形態)
図15は、端末(基地局を含む)の全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末は、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルとを含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等でもよい。
図16は、無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す。この構成は、無線通信装置が非基地局の端末および基地局のいずれに搭載される場合にも適用可能である。つまり、図1に示した無線通信装置の具体的な構成の一例として適用できる。この構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(232〜235)、PLL242、水晶発振器243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末または基地局に通知する情報、または端末または基地局から通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理(MIMO変調を含んでもよい)など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発信装置の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225でこれらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側のバラン234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理(MIMO復調を含んでもよい)等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
上述した各部の処理の詳細は、図1の説明から自明であるため、重複する説明は省略する。
(第5の実施形態)
図17(A)および図17(B)は、それぞれ第5の実施形態に係る無線機器の斜視図である。図17(A)の無線機器はノートPC301であり、図17(B)の無線機器は移動体端末321である。それぞれ、端末(基地局を含む)の一形態に対応する。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた端末(基地局を含む)に搭載されていた無線通信装置を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線機器は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン等にも搭載可能である。
また、端末(基地局を含む)に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図18に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図18では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、第1〜5のいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介してバッファと接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、第1〜5のいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、第1〜5のいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、第8の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、例えば、無線通信装置におけるMAC処理部10、MAC/PHY管理部60、または、制御部112と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、第6の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、第1〜5のいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、例えば、MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、送信処理回路113、受信処理回路114、制御部112の少なくとも1つと接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態を、ユーザに容易に通知することが可能となる。
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、第1〜5のいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、例えば、MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、送信処理回路113、受信処理回路114、制御部112の少なくとも1つと接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態を、ユーザに容易に通知することが可能となる。
(第13の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockAckフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std 802.11ac−2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマ(例えばデータフレーム用の再送タイマ)を起動し、第1のタイマが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。第1のタイマと同様、第2のタイマでも、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。この場合も、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマは、ここでは第2のタイマとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に発動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図19に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを発動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。本実施形態では、このようなフレーム間隔のパラメータを用いる無線通信システムを通信レンジの広い干渉システムとして想定する。
なお、本実施形態において各端末が送信するフレームは、異なる内容のフレームであっても、同一の内容のフレームでもよい。一般的な表現として、複数の端末が第Xのフレームを送信または基地局が複数の第Xフレームを受信すると表現するとき、これらの第Xのフレームの内容は同じであっても、異なってもよい。
また、複数の端末から基地局へのアップリンク多重送信では、上述したUL−MU−MIMOおよびUL−OFDMA以外に、OFDMAとMU−MIMO(Multiple−Input Multiple−Output)を組み合わせた通信方式(OFDMA&MU−MIMOと呼ぶ)も可能である。OFDMA&MU−MIMOの場合、リソースユニットごとに、複数の端末が同じリソースユニットを利用して、MU−MIMO送信を行うことになる。前述した各実施形態または各変形例では、アップリンク多重送信として、OFDMA&MU−MIMOを用いてもよい。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路 (PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
[付記]
[1]
無線通信装置であって、
送信許可を要求する第1フレームに応答して送信される、送信を許可する第2フレームを受信する受信部と、
前記第2フレームにおける受信先アドレスフィールドの第1領域に予め定めた第1の値が設定されているか判断する制御部と、
送信部と、を備え、
前記第1の値は、前記無線通信装置のアドレスにおける前記第1領域の値とは異なる値であり、
前記第1の値は、前記第2フレームを受信可能な他の無線通信装置のアドレスにおける前記第1領域の値とは異なる値であり、
前記送信部は、前記第2フレームにおける前記受信先アドレスフィールドの前記第1領域に前記第1の値が設定されている場合は、送信が禁止されている時間内であっても、第3フレームを送信し、
前記第3フレームは、前記他の無線通信装置から送信される第4フレームと多重される
無線通信装置。
[2]
前記第1領域は、前記第1フレームにおける前記受信先アドレスフィールドの先頭ビットである
[1]に記載の無線通信装置。
[3]
前記第3フレームは、前記第2フレームを受信した前記他の無線通信装置から送信される前記第4フレームと空間多重またはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)で送信される
[1]に記載の無線通信装置。
[4]
前記送信部は、送信元アドレスフィールドに前記無線通信装置のアドレスを設定し、受信先アドレスフィールドに、前記第2フレームの送信元アドレスを設定した、前記第1フレームを送信する
[3]に記載の無線通信装置。
[5]
前記受信部は、前記第1フレームが送信された後、前記受信先アドレスフィールドの前記第1領域に前記第1の値が設定された前記第2フレームを受信し、
前記送信部は、前記第2フレームの前記受信先アドレスフィールドに前記自装置のアドレスが設定されていなくても、前記第1フレームを再送しない
[4]に記載の無線通信装置。
[6]
前記受信部は、前記第3フレームの送信後、第5フレームを受信し、
前記制御部は、前記第5フレームの受信先アドレスフィールドにおける前記第1領域に前記第1の値が設定されている場合、前記第5フレームに前記無線通信装置と前記他の無線通信装置との送達確認情報が含まれていることを決定し、前記第5フレームから前記無線通信装置の前記送達確認情報を特定し、特定した前記送達確認情報に基づき、前記第3フレームの送信の成功可否を確認する
[1]に記載の無線通信装置。
[7]
少なくとも1つのアンテナをさらに備えた[1]ないし[6]のいずれか一項に記載の無線通信装置。