以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。無線LANの規格書として知られているIEEE Std 802.11TM−2012およびIEEE Std 802.11acTM−2013は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る無線通信システムを示す。図1の無線通信システムは、基地局であるアクセスポイント(中継局)1、2、3を備える。アクセスポイント1〜3は、それぞれ無線通信グループまたは無線通信ネットワークである、BSS(BSS:Basic Service Set)1、2、3を形成する。BSS1〜3には、複数の無線通信端末が属する。無線通信端末は、端末、無線端末、またはステーション(STA)と呼ぶこともある。アクセスポイント1〜3も、中継機能を有する点を除き、端末の機能を有するため、端末の一形態である。なお、アクセスポイント1〜3を制御する制御局が存在してもよい。
アクセスポイント1〜3と、各アクセスポイントのBSSに属する複数の端末とは、任意の無線通信方式に従って無線通信を行う。一例として、IEEE802.11規格に準拠した通信を行う。端末に搭載される無線通信装置は、アクセスポイントに搭載される無線通信装置と通信する。アクセスポイントに搭載される無線通信装置は、端末に搭載される無線通信装置と通信する。本実施形態の無線通信システムは、IEEE802.11規格の無線LANを想定するが、これに限定されるものではない。
BSS1〜3に属する端末は、BSS1〜3を管理するアクセスポイント1〜3と通信できる。またアクセスポイント1〜3は、互いに通信できる。例えばアクセスポイント1はアクセスポイント2、3と通信でき、アクセスポイント2はアクセスポイント1、3と通信できる。アクセスポイント1は、アクセスポイント2に隣接し、アクセスポイント2はアクセスポイント1、3に隣接する。
アクセスポイント3は、有線ネットワーク31に接続されている。有線ネットワーク31は、イーサーネット等のLANでもよいし、インターネット等の広域ネットワークでもよい。アクセスポイント1〜3に属する端末が、有線ネットワーク31にデータを送信するためには、アクセスポイント3を経由する必要がある。例えばBSS1に属する端末がデータを有線ネットワーク31に送信するためには、アクセスポイント1にデータを含むフレームを送信し、アクセスポイント1がこのデータを含むフレームをアクセスポイント2に中継し、さらにアクセスポイント2がこのデータを含むフレームをアクセスポイント3に中継する必要がある。アクセスポイント3が最も上流側に配置されており、アクセスポイント1が最も下流側に配置されている。
アクセスポイント1〜3は、1つまたは複数のアンテナを備える。図1の例では、アクセスポイント1〜3は、2つ以上のアンテナを備える。アクセスポイントが具備するアンテナ数は、これより多くても、少なくてもかまわない。各端末は、それぞれ1つまたは複数のアンテナを備える。アクセスポイントのアンテナは、指向性を制御可能に構成されていてもよい。一例として図2(A)に示すように、自局のBSSに属する端末群の方向の指向性と、隣接するアクセスポイントの方向の指向性とを切り換え可能でも良い。また、アクセスポイントのアンテナは、特定の方向に指向性を有さない、全方位指向性(オムニ指向性)でもよい。オムニ指向性と、図2(A)、図2(B)の指向性を互いに切り換え可能でもよい。指向性の切り替え方法としては、複数の指向性タイプを有する複数のアンテナを備え、使用するアンテナを切り換えることで対応してもよい。また、複数のブランチを有するアンテナを用い、各ブランチのインピーダンスまたは抵抗を制御することで、指向性を可変にしてもよい。ここで述べた以外の構成で、指向性を制御してもよい。
端末は、アソシエーションプロセスを経て、アクセスポイントと接続することで、アクセスポイントのBSSに属することができる。接続とは、無線リンクを確立した状態を意味しており、アクセスポイントとのアソシエーションプロセスを経て、通信に必要なパラメータの交換が完了することで、無線リンクが確立される。無線リンクを確立した端末には、アクセスポイントからアソシエーションID(AID)が割り当てられる。AIDは、端末がアクセスポイントのBSSに属するためにアクセスポイントとの間で行うアソシエーションプロセス時に付与される識別子である。より詳細には、アクセスポイントは、接続要求(Association Request)フレームを送信してきた端末に接続許可をする場合に、そのネットワークでローカルに生成した番号を割り当てる。その番号がAIDと呼ばれるものであり、0以外のある指定の範囲内の番号を割り当てる。AIDは、そのネットワーク(BSS)内ではユニークになるように割り当てる。APは、接続を許可する端末に、割り当てたAIDを含む接続応答(Association Response)フレームを送信する。端末は、接続応答フレームからAIDを読み出すことで、自装置のAIDを把握する。端末は、アクセスポイントから接続許可の接続応答フレームを受信することで、アクセスポイントが形成するBSSに属し、以降、アクセスポイントと通信することができる。このようなアクセスポイントと端末間の接続のプロセスをアソシエーションプロセスと呼ぶ。APは、端末とアソシエーションプロセスを行う前に、認証(Authentication)プロセスを行ってもよい。アクセスポイントは、自装置に接続した端末を、AIDまたはMACアドレスにより識別できる。
図3は、本実施形態に係るMACフレームの基本的なフォーマット例を示す。フレームの種別は、大きく、データフレーム、管理フレームおよび制御フレームに大別され、いずれの種別のフレームも、このようなフレームフォーマットをベースとする。本フレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、フレームボディ(Frame body)及びFCSの各フィールドを含む。MACヘッダは、に示すように、Frame Control、Duration/ID、Address1、Address2、Address3, Sequence Control、Address4、QoS Control及び HT(High Throughput) controlの各フィールドを含む。
これらのフィールドは必ずしもすべて存在する必要はなく、フレームの種別に応じて一部のフィールドが存在しない場合もあり得る。例えばAddress3またはAddress4またはこれらの両方のフィールドが存在しない場合もある。また、QoS ControlおよびHT Controlフィールドの両方または一方が存在しない場合もある。またフレームボディフィールドが存在しない場合もあり得る。一方、図4に示されていない他のフィールドが存在してもよい。HT Controlフィールドを、IEEE802.11acのVHT (Very High Throughput)Controlフィールド、または、次世代無線LANの規格であるIEEE802.11axのHE(High Efficiency) Controlフィールドに拡張してもよい。
Address1のフィールドには、受信先アドレス(Receiver Address;RA)が、Address2のフィールドには送信元アドレス(Transmitter Address;TA)が入り、Address3のフィールドにはフレームの用途に応じてBSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)(全てのビットに1を入れて全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSID場合もある)か、あるいはTAが入る。Address4フィールドは、アクセスポイント間の通信の場合などに用いられる。Address4フィールドが存在しない場合もある。
Frame Controlフィールドには、タイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)という2つのフィールド等が含まれる。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば制御フレームであるRTS(Request to Send)フレーム、CTS(Clear to Send)フレーム、ACKフレーム、BA(Block Ack)フレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
Duration/IDフィールドは媒体予約時間を記載し、他の端末宛てのMACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。
QoS Controlフィールドは、フレームの優先度を考慮して送信を行うQoS制御を行うために用いられる。このQoS Controlフィールドには、データのトラフィックに応じた識別子が設定されるTIDフィールド(0〜15までの16種類存在)、および送達確認方式が設定されるAck policyフィールド等が含まれる。TIDフィールドを確認することで、データのトラフィック種別を認識することができ、またAck policyフィールドを確認することで、そのQoS Dataフレームが“Normal Ack policy”か、“Block Ack policy”か、それとも“No Ack policy”で送信されたのかを判別することができる。
HT Controlフィールドは、IEEE802.11nで導入されたフィールドであり、QoSデータフレームまたは管理フレームのときに、オーダーフィールドが1に設定されていると存在する。前述したように、HT Controlフィールドは、IEEE802.11acのVHT (Very High Throughput)Controlフィールドにも、次世代無線LAN規格であるIEEE802.11axのHE(High Efficiency) Controlフィールドにも拡張可能であり、各々IEEE802.11n、IEEE802.11ac、あるいはIEEE802.11axの各種機能に応じた通知をすることができる。
管理フレームでは、固有のElement ID(IDentifier)が割り当てられた情報エレメント(Information element;IE)をFrame Bodyフィールドに設定できる。フレームボディフィールドには、1つまたは複数の情報エレメントを設定できる。情報エレメントのフォーマットを図4に示す。情報エレメントは、Element IDフィールド、Lengthフィールド、情報(Information)フィールドの各フィールドを有する。情報エレメントは、Element IDで識別される。情報フィールドは、通知する情報の内容を格納し、Lengthフィールドは、情報フィールドの長さ情報を格納する。管理フレームには、情報エレメント以外にも、フレーム種別(サブタイプ)に応じて、予め定められた1つまたは複数のフィールドが配置されてもよい。
FCSフィールドには、受信側でフレームの誤り検出のため用いられるチェックサム符号としてFCS(Frame Check Sequence)情報が設定される。FCS情報の例としては、CRC(Cyclic Redundancy Code)などがある。
Address1、Address2、Address3、Address4に関して、アクセスポイントへ送信されるフレームか否か、アクセスポイントから送信されるフレームか否か、フレームがMSDU(MAC Service Data Unit)かA−MSDU(A(Aggregated)−MSDU)のどちらかなどに応じて、それぞれのフィールドに設定するアドレスの内容が異なる。
ここで、MSDUは、MPDU(Medium access control (MAC) Protocol Data Unit)であるMACフレームの中のデータ(フレームボディ部分)を指している。A−MSDUは、1つのMPDUのフレームボディ中に、複数のデータペイロードであるMSDUが連接されたものを指している。なお、これらのMSDU、A−MSDU、MPDU等の表現は、IEEE802.11規格での呼び方である。
図5に、Address1、Address2、Address3、Address4の各フィールドに設定する内容を示すテーブルの例を示す。このテーブルは、IEEE802.11規格書から抜粋したものである。使用するプロトコルの種類や規格に応じて、フレームヘッダで定義するAddressフィールドの個数および定義は異なってもよく、この際、各Addressフィールドへ設定するアドレスの内容は、このテーブルに必ずしも従う必要はない。
図5のテーブルにおける「To DS」ビットおよび「From DS」ビットは、Frame ControlフィールドのTo DSおよびFrom DSの各サブフィールドに設定されるビットに対応する。「To DS」はアクセスポイントへ送信するフレームの場合にビット“1”が設定され、それ以外の場合はビット“0”に設定される。「From DS」は、アクセスポイントから送信されるフレームの場合にビット“1”が設定され、それ以外の場合は“0”に設定される。
一番上の行(「To DS」=0、「From DS」=0)の設定例は、同じBSS内のある端末から別の端末へ直接送信するフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、受信先アドレス(Receiver Address;RA)として、フレームが送信される直接の宛先となる端末(上記別の端末)のアドレス(MACアドレス)が設定される。RAとして、端末のアドレス(ユニキャストアドレス)以外に、ブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスが設定されることもある(以下、同様)。Address2フィールドには、送信元アドレス(Transmitter Address;TA)として、SA(Source Address)が設定される。SAは、フレームの転送が開始される最初の送信元となる端末のアドレスである。ここでは、上記ある端末のアドレスである。Address3フィールドには、BSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)(全てのビットに1を入れて全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSIDの場合もある)が設定される。Address4フィールドは、使用されない。
2番目の行(「To DS」=0、「From DS」=1)の設定例は、アクセスポイント(BSS)から、当該アクセスポイント(BSS)に属する端末へ送信するフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先の端末のアドレス(MACアドレス)が設定される。Address2フィールドには、TAとして、送信元であるアクセスポイントのBSSIDが設定される。Address3フィールドには、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、SA(Source Address)またはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、使用されない。
3番目の行(「To DS」=1、「From DS」=0)の設定例は、アクセスポイント(BSS)に属する端末から、当該アクセスポイントに送信するフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先であるアクセスポイントのBSSIDが設定される。Address2フィールドには、TAとして、SA、すなわち当該端末のアドレス(MACアドレス)が設定される。Address3フィールドには、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、DA(Destination Address)またはBSSIDが設定される。DAは、フレームが最終的に転送される先となる端末(アクセスポイントの場合も含む)のアドレスである。Address4フィールドは、使用されない。
4番目の行(「To DS」=1、「From DS」=1)の設定例は、アクセスポイント(BSS)間の通信のフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先であるアクセスポイントのBSSIDが設定される。Address2フィールドには、TAとして、送信元であるアクセスポイントのアドレス(MACアドレス)が設定される。Address3フィールドには、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、DA(Destination Address)またはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、SAまたはBSSIDが設定される。
本実施形態では、アクセスポイント1のBSS1に属する端末が、フレームを送信して、アクセスポイント1、2を経由して、アクセスポイント3まで転送される例を示すが、各アクセスポイントでの転送の際、MACヘッダのAddress1〜4フィールドは、上述した規則に従って、適宜、適切なアドレス(またはBSSID)に書き換えられるものとする。
ここで、アクセスポイントが送信するフレーム、および端末が送信するフレームは、実際には、フレームの先頭に、物理ヘッダ(PHY header)が付加され、物理ヘッダとフレームとを含む物理パケットが送信される。物理パケットのことを、物理フレームと呼んでもよい。
図6に、物理パケットのフォーマット例を示す。物理パケットは、物理ヘッダとPHYペイロードとを含む。物理ヘッダは、Legacy Preamble部分と、11n、11acまたは11ax等の各種規格に応じたPreamble部分とを含む。PHYペイロードはデータ部であり、変調処理が施された後のフレームが含まれる。Legacy Preambleは、IEEE802.11aで規定される物理ヘッダと同様の構成であり、L−STF、L−LTF 、L−SIGのフィールドを含む。L−STFやL−LTFは既知のビットパターンを示す。これは、受信側の装置が受信利得調整や、タイミング同期、伝搬路推定等を行うために用いる。L−SIGには、これより後のPreamble部分とPHY payloadとの送信に必要な時間を受信側の装置で算出するための情報が含まれる。
ここで本実施形態のアクセスポイント1〜3は、各々のBSSに属する端末群および自局以外のアクセスポイントと、直交周波数分割多元接続方式(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を実施可能である。OFDMAでは、1つまたは複数のサブキャリアを含むリソースユニット(サブチャネル、リソースブロック、周波数ブロックなどと呼んでもよい)を通信リソースとして複数の端末(アクセスポイントの場合を含む)に割り当て、リソースユニットベースで、複数の端末と同時に通信する。アップリンクのOFDMAをUL−OFDMA、ダウンリンクのOFDMAをDL−OFDMと記述する。
リソースユニットは、通信を行うリソースの最小単位となる周波数成分である。図7に、1つのチャネル(ここではチャネルMと記述している)の連続した周波数領域内に確保したリソースユニット(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を示す。チャネルMには、互いに直交する複数のサブキャリアが配置されており、1つまたは複数の連続するサブキャリアを含む複数のリソースユニットがチャネルM内に定義されている。リソースユニット間には、1つ以上のサブキャリア(ガードサブキャリア)が配置されてもよいが、ガードサブキャリアは必須ではない。チャネル内の各サブキャリアには、サブキャリアを識別するための番号が付与されていてもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。20MHzの複数のチャネルをまとめて1つのチャネルとしてもよい。帯域幅に応じてチャネル内のサブキャリア数またはリソースユニット数が異なってもよい。複数の端末がそれぞれ異なるリソースユニットを同時に用いることで、OFDMA通信が実現される。
リソースユニットの帯域幅(あるいはサブキャリア数)は、各リソースユニットで共通でもよいし、リソースユニットごとに帯域幅(あるいはサブキャリア数)が異なってもよい。図8(A)〜図8(C)に、1つのチャネル内におけるリソースユニットの配置パターン例を模式的に示す。紙面に沿って横方向が周波数領域方向に対応する。各パターンにそれぞれパターン識別子が付与されており、いずれかのパターンをアクセスポイントが選択できるようになっていてもよい。ここで示すパターンは一例であり、このほかにも種々のパターンが可能である。
図8(A)は、同じ帯域幅の複数のリソースユニット(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を配置した例を示し。図8(B)は、図8(A)より大きな帯域幅の複数のリソースユニット(RU#11−1、RU#11−2、・・・、RU#11−L)を配置した例を示す。図8(C)は3種類の帯域幅のリソースユニットを配置した例を示す。リソースユニット(RU#12−1、RU#12−2)が最も大きな帯域幅を有し、リソースユニットRU#11−(L−1)は図8(B)の各リソースユニットと同じ帯域幅、リソースユニット(RU#K−1、RU#K)は図8(A)の各リソースユニットと同じ帯域幅である。
なお、各端末がOFDMAで使用するリソースユニット数は、特定の値に制限されず、1つでも、複数でもよい。端末が複数のリソースユニットを用いる場合、周波数的に連続する複数のリソースユニットをボンディングして1つのリソースユニットとして用いてもよい。また、離れた箇所にある複数のリソースユニットを用いることを許容してもよい。図8(B)のリソースユニット#11−1は、図8(A)のリソースユニット#1と#2をボンディングしたリソースユニットの一例と考えることもできる。
1つのリソースユニット内のサブキャリアは周波数領域で連続しているとするが、非連続に配置された複数のサブキャリアからリソースユニットを定義してもよい。OFDMAで使用するチャネルは1つに限定されず、チャネルMと周波数領域で離れた位置に配置された別のチャネル(図7ではチャネルNを参照)内にも、チャネルMと同様にしてリソースユニットを確保し、チャネルMとチャネルNの両方内のリソースユニットを用いてもよい。チャネルMとチャネルNとでリソースユニットの配置パターンは同じであっても、異なってもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、上述のように、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。3つ以上のチャネルを用いることも可能である。なお、チャネルMとチャネルNをまとめて1つのチャネルとして考えることも可能である。
なお、OFDMAを実施する端末は、少なくとも後方互換の対象となるレガシー端末での基本チャネル幅(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格対応端末をレガシー端末とするなら20MHzチャネル幅)のチャネルで、フレームを含む物理パケットを受信・復号(復調および誤り訂正符号の復号等を含む)できるものとする。キャリアセンスに関しては基本チャネル幅の単位で行うものとする。キャリアセンスは、CCA(Clear Channel Assessment)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense)と、受信したフレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス(Virtual Carrier Sense)との両方を包含してもよい。後者のように、仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は前述したように、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。なお、チャネル単位で行ったCCAまたはNAVに基づくキャリアセンス情報は、チャネル内の全リソースユニットに共通に適用してもよい。例えばキャリアセンス情報がアイドルを示すチャネルに属するリソースユニットはすべてアイドルである。
なお、OFDMAは、上述したリソースユニットベースのOFDMA以外に、チャネルベースでのOFDMAも可能である。この場合のOFDMAを特にMU−MC(Multi−User Multi−Channel)と呼ぶことがある。MU−MCでは、クセスポイントが複数のチャネル(1つのチャネル幅は例えば20MHzなど)を複数の端末(アクセスポイントの場合を含む)に割り当て、当該複数のチャネルを同時に用いて、複数端末宛て同時送信もしくは複数端末からの同時受信を行う。以降に説明するOFDMAでは、リソースユニットベースのOFDMAを想定するが、リソースユニットをチャネルに読み替えるなど、必要な読み替えを行うことで、チャネルベースのOFDMAの実施形態も実現可能である。
図9に、DL−OFDMAで複数の端末(アクセスポイントの場合を含む)にフレームを送信する場合の物理パケットの構成例を示す。L−STF、L−LTF、L−SIGのフィールドは、一例として20MHzのチャネル幅で送信され、端末毎のフレームのいずれでも同じ値(同じシンボル)が設定される。SIG1フィールドは、複数の端末に対し共通の情報を設定し、例えば端末毎に受信に使用するリソースユニットを指定する。例えば、端末の識別子と、リソースユニットの番号(識別子)とを対応づけた情報を設定する。端末の識別子はアソシエーションID(AID)でもよいし、AIDの一部(Partial AID)でもよいし、MACアドレス等のその他の識別子でもよい。SIG1フィールドも、一例として、20MHzのチャネル幅で送信される。各端末のいずれもSIG1フィールドを復号可能である。SIG2フィールドはリソースユニット毎に個別に設定され、一例として、該当するデータフィールドの復号に必要なMCS等の情報が設定されてもよい。したがって、アクセスポイントからの信号を受信した各端末はSIG1フィールドを復号することで、自端末が復号すべきリソースユニットを把握できる。各端末は、それぞれ指定されたリソースユニットの信号を復号することで、フレームを受信する。
SIG1フィールドに、個々の端末の識別子と、リソースユニット識別子とを対応づけた情報を設定する代わりに、送信対象となる複数の端末が属するグループの識別子(以下、グループID)を設定してもよい。グループIDは、IEEE802.11ac等で定義されたグループIDと同じでもよいし、これとは別に定義したものでもよい。アクセスポイントは、自局に属する複数の端末(他のアクセスポイントを含んでも良い)をグループ化して、グループIDを付与する。1つの端末が複数のグループIDに属してもよい。アクセスポイントは、OFDMAを行う場合は、同じグループIDに属する端末(他のアクセスポイントを含んでもよい)群から選択した端末を対象に行う。アクセスポイントは、グループIDごとに、端末に複数のユーザポジションのうちの1つを割り当てる。1つのユーザポジションが2以上の端末に割り当てられる場合もある。アクセスポイントは、端末が属するグループIDと、当該グループID内で割り宛てられたユーザポジションを通知する。アクセスポイントは、SIG1フィールドに、グループIDを設定するとともに、複数のユーザポジションフィールドのそれぞれに対してリソースユニット識別子を設定する。グループIDに属する個々の端末は、自端末のユーザポジションで指定されたリソースユニット識別子を特定し、当該リソースユニット識別子のリソースユニットを復号する。復号して得られるフレームのMACフレームのRAが自端末のMACフレームに一致すれば、当該MACフレームを処理し、自端末のMACアドレス出なければ廃棄する。
別の方法として、アクセスポイントは、グループIDごとに、端末にどのリソースユニットをOFDMAで使用させるかを決定し、決定したリソースユニットを端末に割り当てる。アクセスポイントは、端末が属するグループIDと、当該グループID内で割り当てたリソースユニット識別子を通知する。アクセスポイントは、SIG1フィールドにグループIDを設定する。当該グループIDに属する端末は、自端末に割り当てられたリソースユニットを復号する。復号して得られるフレームのMACフレームのRAが自端末のMACフレームに一致すれば、当該MACフレームを処理し、自端末のMACアドレス出なければ廃棄する。
なお、図9のフォーマット例では一例であり、1つまたは複数の他のフィールドがSIG2フィールドの前後、またはSIG1フィールドの前後に配置されてもよい。またSIG2フィールドが存在しなくてもよい。当該他のフィールドは、20MHz帯域幅でも、リソースユニット幅でもよい。当該他のフィールドの一部または全部は、L−STFおよびL−LTFと同様に、既知シンボルから構成されていてもよい。SIG1フィールドは、HE−SIG−Aフィールドに対応してもよい。SIG2フィールドは、HE−SIG−Aフィールドの一部またはHE−SIG−Bフィールドまたはこれらの両方に対応してもよい。
図10は、本実施形態に係る無線通信システムのシーケンスの第1の例を示す。ここではリソースユニット1〜4を含む、1つの20MHz帯域幅のチャネルを用いる場合を想定する。各アクセスポイントのアンテナはオムニ指向性に設定されているとする。
アクセスポイント1は、BSS1内のある端末からRTSフレーム51を受信する。RTSフレーム51は、アクセスポイント1に送信許可を求めるフレームである。RTSフレーム51のRAは、アクセスポイント1のMACアドレス(BSSID)、TAは端末のMACアドレスである。RTSフレーム51のDuration/IDフィールドには、端末が無線媒体を占有したい期間長の情報を設定してもよい。例えば、RTSフレーム51の末尾から、ACKフレーム54Bの受信完了までの期間長の情報を設定してもよい。もしくは、本実施形態ではアクセスポイントがアクセスポイント2からのACKフレームも受信するため、ACKフレーム58Bの受信完了までの期間長の情報を設定してもよい。もしくは、RTSフレーム51の受信に対するCTSフレーム52をアクセスポイント1が送信するときに、Duration/IDフィールドの値を、ACKフレーム58Bの受信完了までの時間に更新してもよい。
なお、端末は、RTSフレーム51を送信する前に、CSMA/CAに従って、無線媒体へのアクセス権を獲得する。具体的に、端末はDIFS(Distributed coordination function InterFrame Space)/AIFS(Arbitration InterFrame Space)時間と、ランダムに決定したバックオフ時間との合計であるキャリアセンス時間(待機時間)の間、キャリアセンスを行う。CCA(Clear Channel Assessment)値が閾値以下であると、媒体がアイドルと判断し、アクセス権を獲得する。端末は、アクセス権に基づき、RTSフレーム51を送信する。
DIFS/AIFSは、DIFSおよびAIFSのいずれか一方を意味する。QoS対応でない場合はDIFSを指し、QoS対応の場合は、送信するデータのアクセスカテゴリ(AC:Access Category)に応じて決まるAIFSを指す。なお、DIFS時間またはAIFS時間は、一例であり、事前に定めた時間であれば、他の時間(IFS)でもよい。本明細書のその他の箇所で記載されるDIFS時間およびAIFS時間や、SIFS(Short InterFrame Space)についても同様である。
アクセスポイント1は、RTSフレーム51を受信すると、受信完了からSIFS後に、CTSフレーム52を送信する。CTSフレーム52のRAは、RTSフレーム51の送信元の端末のMACアドレス(RTSフレーム51のTA)である。TAは存在しなくてもよい。なお、RTSフレーム51のDuration/IDフィールドに設定された期間内に送受信されるフレーム(CTSフレーム52を含む)のDuration/IDフィールドには、当該フレームの送信に要する時間等に応じた値が直前に受信されたフレームのDuration/IDフィールドから減算されて設定される。これは一例であり、別の方法でDuration/IDフィールドの値が更新されてもよい。
アクセスポイント1が送信するCTSフレーム52は、RTSフレーム51の送信元の端末およびBSS1内の他の端末に受信される。CTSフレーム52が、アクセスポイント2、3にも受信されてもよい(図の破線で囲まれたCTSフレームを参照)。RTSフレーム51の送信元の端末は、CTSフレーム52を受信すると、そのSIFS後に、データフレーム53を送信する。データフレーム53は、複数のデータフレームをアグリゲートしたアグリゲーションフレーム(A-MPDU(medium access control (MAC) protocol data unit)等)でもよい。アグリゲーションフレームに含まれる個々のフレームをサブフレームと呼んでも良い。なお、アグリゲーションフレームを送信する場合、その応答となる送達確認応答フレームは、各サブフレームに対する送達確認情報を含むBAフレームである。アグリゲーションフレームでないデータフレームの場合は、それに対する送達確認応答フレームは、ACKフレームである。
アクセスポイント1は、データフレーム53を受信すると、その一定時間後(SIFSでもよいし、それより長いまたは短い時間でもよい)、当該端末への送達確認応答フレーム(図ではACKフレーム)54Bと、データフレーム53をアクセスポイント2に中継(転送)するためのデータフレーム54Aとを、OFDMAで送信する。データフレーム54Aのフレームボディフィールドには、データフレーム53のフレームボディフィールドと同じ値が設定される。MACヘッダのアドレスフィールド等は、適宜転送用に書き換えられる(図5参照)。なお、データフレームの末尾とACKフレームの末尾とが揃わない場合は、短い方のフレームにパディングデータを付加してもよい(図ではこの場合が示されている)。
ここでデータフレーム54Aは、ACKフレーム54Bよりも広い帯域で送信する。図の例では、ACKフレームは、リソースユニット0(RU0)を使って送信され、データフレーム54Aは、リソースユニット1〜3(RU1〜RU3)を使って送信される。各RUの帯域幅が同じ場合は、データフレーム54Aは、ACKフレーム54Bの3倍の帯域で送信される。このようにすることで、OFDMAのパケット長を短くできる。なお、RU1〜RU3は、ボンディングされて、1つの帯域として用いられてもよいし(この場合、ボンディングされた1つの帯域が、1つのリソースユニットとして扱われてもよい)、個々のリソースユニットごとにフレームが送信されてもよい。ここでは前者の場合を想定する。なお、前述したように、OFDMAでは、一例として各フレームは、図9のフォーマットのパケットで送信される。
アクセスポイント1が送信したパケットは、アクセスポイント2と当該端末で受信される。端末は、自端末用のリソースユニット(RU0)を復号してACKフレーム54Bを受信する。アクセスポイント2は、自端末用のリソースユニット(RU1〜3)を復号して、データフレーム54Aを受信する。なお、アクセスポイント2は、ACKフレーム54Bも受信するが、これを復号しないため、図ではRU0ではフレームを受信していないように描かれている。
アクセスポイント2は、パケットの受信完了から、一定時間後(SIFSでもよいし、それより長いまたは短い時間でもよい)に、アクセスポイント1に対するACKフレーム58Bと、データフレーム54Aをさらにアクセスポイント3に中継(転送)するためのデータフレーム58Aとを、OFDMAで送信する。データフレーム58Aのフレームボディフィールドには、データフレーム54Aのフレームボディフィールドと同じ値が設定される。MACヘッダのアドレスフィールド等は、適宜転送用に書き換えられる(図5参照)。ここでデータフレーム58Aは、ACKフレーム58Bよりも広い帯域で送信する。図の例では、ACKフレームは、リソースユニット0(RU0)を使って送信され、データフレーム58Aは、リソースユニット1〜3(RU1〜RU3)を使って送信される。
アクセスポイント2が送信したパケットは、アクセスポイント3とアクセスポイント1で受信される。アクセスポイント1は、自局用のリソースユニット(RU0)を復号してACKフレーム58Bを受信する。アクセスポイント3は、自局用のリソースユニット(RU1〜3)を復号して、データフレーム58Aを受信する。なお、アクセスポイント3は、ACKフレーム58Bも受信するが、これを復号しないため、図ではRU0ではフレームを受信していないように描かれている。
アクセスポイント3は、パケットの受信完了から、一定時間後(SIFSでもよいし、それより長いまたは短い時間でもよい)に、アクセスポイント2に対するACKフレーム59をチャネル帯域幅で送信(シングルユーザ送信)する。アクセスポイント2は、ACKフレーム59を受信する。ここでは、ACKフレーム59をチャネル帯域幅で送信しているが、アクセスポイント3が、BSS3内の1つ以上の端末にACKフレーム59と同時に送信したいフレームが存在する場合は、当該フレームとACKフレーム59とを、OFDMAで送信してもよい。この場合、ACKフレーム59は、例えばリソースユニット0で送信し、BSS内の端末宛のフレームをリソースユニット1〜3で送信すればよい。
以上のシーケンスによれば、アクセスポイント1は、端末から受信したフレームのアクセスポイント2への転送と、当該端末へのACKフレームの送信とを、OFDMAで行う。よって、効率的にフレームの転送と、送達確認応答とを行うことができる。アクセスポイント2も同様に、アクセスポイント1から受信したフレームのアクセスポイント3への転送と、アクセスポイント1へのACKフレームの送信とをOFDMAで行う。よって、効率的にフレームの転送と送達確認応答を行うことできる。
上述のシーケンスでは、OFDMAで端末に送信するフレームは送達確認応答フレーム(ACKフレーム)であったが、他のフレームでもよい。例えば端末がACKを要求しないフレームを送信した場合は、当該端末に、データフレームなど、他の種類のフレームを送信してもよい。また、RAがブロードキャストアドレスであるフレーム(管理フレームなど)を送信してもよい。または、当該端末とは別の端末宛のフレームを送信してもよい。ここで述べたことは、以下の他のシーケンス例でも同様である。
なお、アクセスポイント1は端末から受信したデータの転送を行うか判断し、転送を行うと決定したデータのみ、アクセスポイント2への転送の対象としてもよい。転送しないと判断したデータは、内部のキャッシュといったメモリに保持しておく。すなわち内部のメモリに保持しておけばよいと判断したデータについては、転送を行わないことを決定する。例えば、端末から何かのWebページの取得要求があったとする。そのWebページのデータをアクセスポイント1が保持している場合には、端末からの取得要求の転送は行わない。アクセスポイント1は、内部に保持しているデータを読み出して、当該端末に応答すればよい。あるいは、当該Webページのデータをアクセスポイント2が保持している場合に、アクセスポイント1が、アクセスポイント2からWebデータを取得して、端末に送信する方法もあり得る。このような場合も、アクセスポイント1は端末からの取得要求を転送しないと判断する。本段落で述べたことは、以下に説明する他のシーケンス例でも同様である。
図11は、本実施形態に係る無線通信システムのシーケンスの第2の例を示す。第1の例のシーケンスとの差分を中心に説明する。
アクセスポイント1が、RTSフレーム51の送信元端末に対してCTSフレーム52を送信すると、このCTSフレーム52を、アクセスポイント2とアクセスポイント3も受信する。アクセスポイント2、3は、CTSフレーム52のDuration/IDフィールドに設定された期間から、自局に転送用のフレームが受信されるタイミングを推定し、そのタイミングより前に、自局のBSS内にNAVを設定する。このためにアクセスポイント2、3は、CTS−To−Selfフレーム61、62を送信する。CTS−To−Selfフレームは、自局のMACアドレス(BSSID)をRAフィールドに設定したCTSフレームである。CTS−To−SelfフレームのDuration/IDフィールドには、自局のBSS内にNAVを設定したい期間に応じた値を設定する。例えば、アクセスポイント2は、端末用にデータフレーム54Aの受信完了、データフレーム58Aの転送完了、またはそれに対するACKフレーム59受信完了までNAVを設定するようにDuration/IDフィールドに期間を設定したCTS−To−Selfフレーム61を送信する。図では、データフレーム54Aの受信完了までNAVを設定した例が示されている。
同様に、アクセスポイント3は、データフレーム58Aの受信完了、またはそれに対するACKフレーム59の送信完了までNAVを設定するようにDuration/IDフィールドに期間を設定したCTS−To−Selfフレーム62を送信する。図では、データフレーム58Aの受信完了までNAVを設定した例が示されている。
RTSフレーム51の送信元がACKフレーム54Bの末尾までのNAVを設定し、パケット(データフレーム54AとACKフレーム54Bを含む)長またはその最大値が任意の方法で事前に把握できていれば、CTSフレーム52のDuration/IDから自局宛に転送されるフレームの受信完了するタイミングを推定できる。アクセスポイント2、3は、BSS2、3内にNAVを設定することで、例えば自局宛の転送フレーム54A、58Aを受信するときに、BSS2、3内の端末からフレーム送信が行われることを防止できる。すなわち、フレーム衝突により、転送フレーム54、58Aの受信に失敗することを防止できる。
アクセスポイント2、3は、CTS−To−Selfフレーム61、62を送信するときは、アンテナの指向性をBSS2、3内に向けてもよい(図2(A)参照)。これにより、アクセスポイント1がデータフレーム53を端末から受信するときに、アクセスポイント1でフレーム衝突が発生するのを防止できる。また、アクセスポイント2がデータフレーム54Aをアクセスポイント1から受信するときに、アクセスポイント2でフレーム衝突が発生するのを防止できる。アクセスポイント2、3は、転送されるデータフレーム54A、58Aを受信するときまでに、アンテナの指向性をオムニ指向性に戻す、または、隣接するアクセスポイントの方向に設定する。
以上のシーケンスによれば、アクセスポイント2、3は、例えばデータフレーム54A、58Aを受信完了するまで、自局のBSS2、3内にNAVを設定する。これにより、データフレーム54A、58Aの受信完了まで、BSS2、3内の端末からのフレーム送信を抑制する。よって、フレーム衝突により、転送用のフレーム54A、58Aの受信に失敗することを防止できる。すなわち、フレーム54A、58Aを正常に受信できる可能性を高めることができる。NAVをより長く設定することで、その後に送受信されるフレームも正常に受信できる可能性を高めることができる。
図12は、本実施形態に係る無線通信システムのシーケンスの第3の例を示す。第1および第2の例のシーケンスとの差分を中心に説明する。
アクセスポイント2は、アクセスポイント1から転送されるデータフレーム54Aを受信するタイミングに合わせて、またはこれより前に、アンテナの指向性を隣接するアクセスポイント1、3に向ける。これにより、データフレーム54Aを受信するときに、仮にBSS2内の端末からフレームが送信されても、このフレームの信号はアクセスポイント2では受信されず、データフレーム54Aのみを正しく受信できる。データフレーム54Aの受信完了から一定時間後に、データフレーム58AとACKフレーム58BをOFDMA送信するときも、その指向性を維持したまま、OFDMAのパケットを送信する。その後、ACKフレーム59を受信するときも、その指向性を維持する。ただし、ACKフレーム59を受信するタイミングで、オムニ指向性に戻してもよいし、
アクセスポイント3も、アクセスポイント2と同様にしてアンテナの指向性を制御する。アクセスポイント2から転送されるデータフレーム58Aを受信するタイミングに合わせて、またはこれより前に、アンテナの指向性を隣接するアクセスポイント2、1に向ける。これにより、データフレーム58Aを受信するときに、仮にBSS3内の端末からフレームが送信されても、このフレームの信号はアクセスポイント3では受信されず、データフレーム58Aのみを正しく受信できる。データフレーム58Aの受信完了から一定時間後に、ACKフレーム59を送信するときも、その指向性を維持する。ただし、ACKフレーム59を送信するときに、アンテナを、オムニ指向性に戻してもよい。
以上のシーケンスによれば、アクセスポイント2、3は、転送されるフレーム54A、58Aを受信する前に、自局のアンテナの指向性を隣接するアクセスポイントに向ける。これにより、転送されるフレーム54A、58Aを受信するときに、BSS2、3内の端末からフレーム送信が行われても、フレーム54A、58Aを正しく受信できる。すなわち、フレーム衝突により、転送用のフレーム54A、58Aの受信に失敗することを防止できる。
図13は、本実施形態に係る無線通信システムのシーケンスの第4の例を示す。第1〜第3の例のシーケンスとの差分を中心に説明する。
第1〜第3の例のシーケンスでは、アクセスポイント1はBSS1内の1台の端末からデータフレームを受信したが、本シーケンスでは、BSS1内の複数の端末からマルチユーザ送信される複数のフレームを受信する場合を示す。マルチユーザ送信の方式は何でもかまわない。例えば、アップリンクのOFDMA(UL−OFDMA)でもよいし、UL−MU−MIMO(Up−Link Multi−User Multi−Input and Multi−Output)でもよいし、UL−OFDMAとUL−MU−MIMOを組み合わせた方式(UL−OFDMA&UL−MU−MIMO)でもよい。
UL−MU−MIMOでは、複数の端末1〜4が、同一の周波数帯域で、同時にフレームを送信する。複数の端末が送信するフレームの物理ヘッダに互いに直交する信号(空間分離信号)を設定する。アクセスポイントがこれらの空間分離信号に基づき複数のフレームを分離して、受信できる。これにより、UL−MU−MIMOが実現される。これらの空間分離信号は、UL−MU−MIMOで各端末が利用するリソースに相当する。
アクセスポイント1は、BSS1内からマルチユーザ送信の対象となる複数の端末を選択し、選択した複数の端末を指定したトリガーフレーム64を生成する。アクセスポイント1は、前述した手順に従って無線媒体のアクセス権を獲得し、トリガーフレーム64を送信する。トリガーフレーム64は、アクセスポイント2、3に受信されてもよい(図の破線で囲まれたトリガーフレームを参照)。
図14にトリガーフレームのフォーマット例を示す。図14のフォーマットは、図3に示した一般的なMACフレームのフォーマットをベースとしており、Frame Controlフィールド、Duration/IDフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、Common Infoフィールド(Common Info)フィールドと、複数の端末情報(Per User Info)フィールドと、FCSフィールドとを含んでいる。Frame ControlフィールドのTypeおよびSubtypeでトリガーフレームであることを指定する。Typeは、一例として“制御”であり、Subtypeはトリガーフレームに対応する新たな値を定義してもよい。ただし、Typeを“管理”または、“データ”にしたトリガーフレームを定義してもかまわない。なお、Subtypeとして新たな値に定義する代わりに、トリガーフレームであることを通知するフィールドをMACヘッダの予約フィールドを利用して表現してもよい。
RAは、ブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスである。TAは、アクセスポイントのMACアドレス(BSSID)である。ただし、RAまたはTAまたはこれらの両方が省略される場合もあり得る。
Common Infoフィールドには、複数の端末に共通に通知するパラメータ情報を設定する。例えば、端末が送信するフレームの送信時間(例えば、μsec単位の時間や16μs単位の時間を設定する)、もしくは送信時間を計算可能な情報(例えば、バイト数)を含む。より詳細には、パケット(physical layer convergence procedure (PLCP) protocol data unit; PPDU)長、より具体的にはPPDUのLegacy Preamble部に含まれるL−SIG Length値を設定する。これにより、各端末が送信するフレーム(パケット)の終端を揃えることが可能になる。また、各端末に使用させる空間分離信号を特定するための情報を含む。また、周波数帯域幅を示す(例えば、20MHz幅であったり、80MHz幅であることを示す)情報や、PHYペイロードのGuard Intervalの長さ情報を含めてもよい。また、トリガーフレームを受信した場合に端末に要求する動作を示す情報を含めてもよい。例えば、送信するフレームまたはデータの種類を指定する情報や、端末に蓄積されている送信待ちのデータ量(データサイズ)を報告する要求を設定してもよい。その他、例えば端末情報フィールドのフォーマットを指定する情報、またはPer User Infoフィールドの個数の情報等を設定してもよい。
Per User Infoフィールドには、端末に固有に通知するパラメータ情報を設定する。例えば、端末に割り当てたAIDを設定する。また、端末が使用する空間分離信号を指定する情報を含む。また 端末が送信する場合に端末固有のPHY層で用いるパラメータを含める。例えば、端末がデータを送信する伝送レートを示すMCS (Modulation and Coding Scheme) Indexやストリーム数(Nsts:number of space time streams)等のPHY伝送速度情報、適用する誤り訂正符号の種類(LDPC(Low Density Parity Check)等)、送信電力情報(Transmit Power Information)等を含める。アクセスポイントは、複数の端末からの信号を受信する場合に各端末からの信号電力を同程度に制御するために送信電力を端末に指定してもよい。
BSS1内のトリガーフレーム64を受信し、かつトリガーフレーム64で指定された複数の端末は、トリガーフレーム64の受信完了から一定時間後に、データフレームを送信する。なお、各データフレームは、いずれも1チャネル帯域幅で送信されるが、データフレームの物理ヘッダに互いに直交する信号が設定されているため、受信側のアクセスポイント1ではこれらのデータを正しく分離できる。図の例では、3台の端末1〜3が、データフレーム65_1、65_2、65_3を送信する場合が示されている。これにより、端末1〜3によるデータフレーム65_1、65_2、65_3のマルチユーザ送信が行われる。
アクセスポイント1は、データフレーム65_1〜65_3を受信すると、データフレーム65_1〜65_3を転送するためのデータフレーム66_1、66_2、66_3と、データフレーム65_1〜65_3の全てに対する送達確認情報を含む送達確認応答フレーム67とを生成する。アクセスポイント1は、データフレーム65_1〜65_3の受信完了から一定時間後に、データフレーム66_1〜66_3と、送達確認応答フレーム67とをOFDMA送信する。送達確認応答フレーム67の例として、Multi−Station BA(以下、Multi−STA BA)フレームを用いてもよいし、新たに定義したフレームを用いてもよい。図では、Multi−STA BAフレームの場合が示されている。Multi−STA BAフレームのRAは、ブロードキャストまたはマルチキャストアドレスである。データフレーム66_1、66_2、66_3のRAは、アクセスポイント2のMACアドレス(BSSID)である。
ここでMulti−STA BAフレームについて説明する。Multi−STA BAフレームは、複数の端末に対する送達確認を1フレームで行うためにBlock Ackフレーム(BAフレーム)を流用したものである。フレームタイプは、通常のBAフレームと同様、制御(Control)、フレームサブタイプはBlockAckとすればよい。図15(A)にMulti−STA BAフレームのフォーマット例を示す。図15(B)は、BAフレームにおけるBA Controlフィールドのフォーマットの例を示し、図15(C)は、BAフレームにおけるBA Informationフィールドのフォーマットの例を示す。BAフレームを再利用する場合、複数の端末に関する送達確認応答を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであるということを、BA Controlフィールドの中で示してもよい。例えばIEEE802.11規格では、Multi−TIDサブフィールドが1、かつCompressed Bitmapサブフィールドが0の場合が、現状予約(Reserved)になっている。これを複数の端末に関する送達確認応答を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであることを示すために用いるようにしてもよい。あるいは図15(B)ではビットB3−B8の領域が予約サブフィールドになっているが、この領域の一部または全てを、複数の端末に関する送達確認応答を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであることを示すために定義してもよい。あるいは、このような通知を明示的に行わなくても良い。
BAフレームにおけるRAフィールドは、一例として、ブロードキャストアドレス、またはマルチキャストアドレスでもよい。BA ControlフィールドのMulti−Userサブフィールドには、BA Informationフィールドでレポートするユーザ数(端末数)を設定してもよい。BA Informationフィールドには、ユーザ(端末)ごとに、アソシエーションID用のサブフィールド、Block Ack開始シーケンスコントロール(Block Ack Starting Sequence Control)サブフィールドと、Block Ackビットマップ(Block Ack Bitmap)サブフィールドとを配置する。
アソシエーションIDサブフィールドにはユーザ識別を行うためAIDを設定する。より詳細には、図15(C)に示すように、一例として、Per TID Infoフィールドの一部を、アソシエーションID用のサブフィールドとして使う。現状、12ビット(B0からB11)が予約領域となっている。この先頭の11ビット(B0−B10)をアソシエーションID用のサブフィールドとして使う。Block Ack開始シーケンスコントロールサブフィールドおよびBlock Ackビットマップサブフィールドは、端末が送信するフレームが単一のデータフレームである場合(アグリゲーションフレームではない場合)は、省略すればよい。端末が送信するフレームがアグリゲーションフレームのときは、Block Ack開始シーケンスコントロールサブフィールドには、当該BlockAckフレームが示す送達確認応答の最初のMSDU(medium access control (MAC) service data unit)のシーケンス番号を格納する。Block Ackビットマップサブフィールドには、Block Ack開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号の受信成功可否のビットからなるビットマップ(Block Ackビットマップ)を入れればよい。
Multi−STA BAフレームを受信した端末は、フレームコントロールフィールドのTypeおよびSubtypeを確認する。これらが、制御およびBlockAckであることを検出すると、次に、RAフィールドを確認し、この値がブロードキャストアドレス等であることから、自端末が送信したフレーム(アグリゲーションフレームの場合)内の各データフレームに対する送達確認応答(成功可否)の情報をBlock Ack Bitmapフィールドから特定し、各データフレームの送信成功の可否を判断する。例えば、自端末のAIDを格納しているTID Infoサブフィールドを、BA Informationフィールド内から特定し、特定したTID Infoサブフィールドに後続するBlock Ack Starting Sequence Controlサブフィールドに設定された値(開始シーケンス番号)を特定し、開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号の送信成功の可否を、Block Ackビットマップから特定する。AIDのビット長は、TID Infoサブフィールド長より短くてよく、AIDは、例えば、上述したように、TID Infoサブフィールドの一部の領域(例えば2オクテット(16ビット)のうち先頭から11ビット(B0−B10))に格納されている。
端末が、UL−OFDMAでアグリゲーションフレームではなく、単一のフレームを送信した場合、例えば以下のようにすればよい。図15(C)に示すように、各BA情報フィールドのTID Infoサブフィールドにおける1つのビット(例えば2オクテット(16ビット)のうち、先頭から12ビット目(先頭をB0とすれば、B11))を、ACKかBAかを示すビット(ACK/BAビット)として用い、当該ビットにACKを示す値を設定する。ACKを示す値を設定した場合に、Block Ack Starting Sequence ControlサブフィールドおよびBlock Ack Bitmapサブフィールドは省略する。これにより、1つのBAフレームで、複数の端末のACKを通知できる。検査結果が失敗の端末については、ACKを通知する必要はないため、Multi−STA BAフレームでは当該端末に関する通知は行わなくてよい。受信側の端末は、自端末のAIDを含むフィールドを検出できないため(ACKがないため)、送信に失敗したと判断できる。このように、複数の端末がアグリゲーションフレームおよび単一のフレームのいずれを送信する場合においても、BAフレームを流用した単一の送達確認応答フレームで、複数の端末に対する送達確認を行うことができる。
アクセスポイント2は、アクセスポイント1が送信するトリガーフレーム64を受信すると、CTS−To−Selfフレーム69を送信して、BSS2内にNAVを設定する。アクセスポイント2は、この状態で、アクセスポイント1からの転送を待機する。アクセスポイント2は、データフレーム66_1〜66_3を受信すると、データフレーム66_1〜66_3に対する送達確認情報のすべてを含む送達確認応答フレーム(Multi−Station BAフレーム)68を生成し、また、データフレーム66_1〜66_3を転送するためのデータフレーム70_1、70_2、70_3を生成する。アクセスポイント2は、データフレーム66_1〜66_3の受信完了から一定時間後に、データフレーム70_1、70_2、70_3とMulti−STA BAフレーム68とを、OFDMA送信する。
アクセスポイント3は、アクセスポイント1が送信するトリガーフレーム64を受信すると、CTS−To−Selfフレーム72を送信して、BSS3内にNAVを設定する。アクセスポイント3は、この状態で、アクセスポイント2からの転送を待機する。アクセスポイント3は、データフレーム70_1〜70_3を受信すると、データフレーム70_1〜70_3に対する送達確認情報のすべてを含む送達確認応答フレーム(Multi−STA BAフレーム)71を生成する。アクセスポイント3は、データフレーム70_1〜70_3の受信完了から一定時間後に、Multi−STA BAフレーム71を送信する。
なお、図13に示したシーケンスにおいて、トリガーフレーム64の送信前に、マルチユーザ送信の要求を有する端末を特定するステップを追加してもよい。当該ステップで特定した端末の中から、トリガーフレーム64で指定する端末を特定してもよい。
以上のシーケンスによれば、アクセスポイント1は、複数の端末から多重送信されたフレームのアクセスポイント2への転送と、当該複数の端末への送達確認情報の送信とを、OFDMAで一度に行う。よって、効率的にフレームを転送することができる。アクセスポイント2も同様に、アクセスポイント1から受信した複数のフレームのアクセスポイント3への転送と、アクセスポイント1への当該複数のフレームの送達確認情報の送信とをOFDMAで一度に行う。よって、効率的にフレームの転送と送達確認を行うことができる。
図16は、本実施形態に係る無線通信システムのシーケンスの第5の例を示す。第1〜第4の例のシーケンスとの差分を中心に説明する。
第1〜第4の例のシーケンスでは、20MHz帯域幅の1つのチャネルを使った場合を示したが、第5のシーケンスでは、それぞれが20MHz帯域幅の2つのチャネル(ここではチャネル1およびチャネル2と呼ぶ)を使う場合の例を示す。アクセスポイント1〜3のそれぞれで、一方のチャネルをPrimary、他方のチャネルをSecondaryに設定する。本例では、アクセスポイント1は、チャネル1をPrimary、チャネル2をSeconaryに設定する。アクセスポイント2は、チャネル1をSeconary、チャネル2をPrimaryに設定する。アクセスポイント3は、チャネル1をPrimary、チャネル2をSeconaryに設定する。つまり、隣接するアクセスポイント間で設定を異ならせている。これにより隣接するBSS間での信号衝突の機会を低減できる。各アクセスポイントは、Primaryのみを使う通信と、帯域拡張によりSecondaryとPrimaryとの両方を同時に用いる通信が可能である。
アクセスポイント1の動作は、第1〜第3の例のシーケンスと同じである。アクセスポイント1は、Primaryチャネル(チャネル1)のみを使って動作している。したがって、アクセスポイント1から送信されるCTSフレーム52およびデータフレーム53等は、アクセスポイント2では、Secondaryチャネル(チャネル1)で受信される。
アクセスポイント2の動作は、基本的には第2の例のシーケンス(図11参照)と同じである。異なる点は、CTS−To−Selfフレーム61を、AP1が使用しているチャネル1であるSecondaryチャネルで送信するだけでなく、CTS−To−Selfフレーム75を、Primaryチャネル(チャネル2)でも送信する点である。これにより、Secondaryチャネルだけでなく、PrimaryチャネルにもNAVを設定する。これによりチャネル1でデータフレーム54Aを受信する際に、BSS2内の端末からチャネル2(Primaryチャネル)でフレームが送信されてフレーム衝突が発生することを防止できる。
アクセスポイント3の動作も、基本的には第2の例のシーケンス(図11参照)と同じである。異なる点は、CTS−To−Selfフレーム62を、チャネル1であるPrimaryチャネルで送信するだけでなく、CTS−To−Selfフレーム76を、Secondaryチャネル(チャネル2)でも送信する点である。これにより、Primaryチャネルだけでなく、SecondaryチャネルにもNAVを設定する。これによりチャネル1のみならず、チャネル2でもBSS3内の端末からのフレーム送信を防止して、データフレーム58Aの受信時に、フレーム衝突が発生することを防止できる。
図16の例では、各アクセスポイントの帯域は同じ40MHzであったが、同じである必要はない。例えば、これらのうちの1つのアクセスポイントの帯域が80MHzでもよい。広い帯域に対応可能なアクセスポイントほど、有線ネットワーク側に近く配置されてもよい。
図17は、アクセスポイントに搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。
アクセスポイントの無線通信装置は、アンテナ12A、12B、12C、12Dと、制御部101と、送信部102と、受信部103と、バッファ104とを備えている。アンテナの個数はここでは4つであるが、これに限定されない。
アンテナ12A〜12Dの指向性を設定可能である。指向性の設定は制御部101により行う。個々のアンテナが異なる指向性を有し、使用するアンテナを切り替えることで指向性を制御してもよいし、アンテナ12A〜12Dの全体の合成で指向性を制御してもよい。一例として、オムニ指向性、図2(A)の指向性、図2(B)の指向性間を切り替え可能である。
制御部101は、端末との通信を制御する制御部またはベースバンド集積回路に対応し、送信部102と受信部103は、アンテナを介してフレームを送受信する無線通信部またはRF(Radio Frequency)集積回路を形成する。制御部101の処理、および送信部102と受信部103のデジタル領域の処理の全部または一部は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。アクセスポイントは、制御部101、送信部102および受信部103の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えてもよい。
バッファ104は、上位層と制御部101との間で、フレームまたはデータ等を受け渡しするための記憶部である。バッファ104はDRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
上位層は、別のネットワークから受信したフレームを、端末側のネットワークへの中継のため、バッファ104に格納してもよい。また、上位層は、端末側のネットワークから受信したフレームまたはそのペイロードを、バッファ104を介して受けとってもよい。上位層は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を行ってもよい。または、TCP/IPやUDP/IPの処理を制御部101で行い、上位層では、それより上位のアプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部101は、主としてMAC層の処理、および物理層の処理(OFDMAまたはMU−MIMO等の処理を含む)を行う。制御部101は、送信部102および受信部103を介して、フレーム(より詳細にはフレームに物理ヘッダを付加した物理パケット)を送受信することで、各端末との通信を制御する。また制御部101は、定期的にアクセスポイントのBSS(Basic Service Set)の属性および同期情報等を通知するため、ビーコンフレームを送信するよう制御してもよい。また、制御部101は、クロックを生成するクロック生成部を含み、クロック生成部で生成するクロックを利用して、内部時間を管理してもよい。制御部101は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。あるいは、制御部101は、外部のクロック生成部で生成したクロックの入力を受け、当該クロックを利用して、内部時間を管理してもよい。
制御部101は、端末からのアソシエーション要求を受けて、アソシエーションプロセスを行い、お互いの能力・属性等の必要な情報を交換することで、当該端末と無線リンクを確立する。必要に応じて、事前に端末との間で認証プロセスを行ってもよい。制御部101は、端末の能力情報として、OFDMAの対応可否、UL−MU−MIMOの対応可否等の情報を取得してもよい。能力情報は、アソシエーションプロセス時でなく、その後の任意のタイミングで、端末に送信を要求するフレームを送信し、その応答として取得してもよい。
制御部101は、バッファ104を定期的に確認することで、ダウンリンク送信用のデータが存在するか等、バッファ104の状態を把握する。または、制御部101は、バッファ104等の外部からのトリガーにより、バッファ104の状態を確認する。
制御部101は、フレーム(より詳細にはフレームに物理ヘッダを付加した物理パケット)を送信する際、一例として、送信前にCSMA/CAに従って、キャリアセンスを行って、キャリアセンス結果がアイドルであることを示す場合(CCA値が閾値以下の場合)、無線媒体へのアクセス権を獲得する。制御部101は、フレームに符号化、およびMCSに基づく変調処理などの処理を行い、送信部102に出力する。送信部102は、入力されたフレーム(より詳細には物理ヘッダを付加した物理パケット)に、DA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行い、これらにより得られた信号をプリアンプで増幅して、複数のアンテナから空間に電波として放射する。
アンテナで受信された信号は、受信部103において、それぞれアンテナに対応する受信系統ごとに処理される。各アンテナの受信信号は、それぞれ受信系統において低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)により増幅され、周波数変換(ダウンコンバート)され、フィルタリング処理で所望帯域成分が抽出される。各抽出された信号は、さらにAD変換によりデジタル信号に変換されて、制御部101にパケットが入力される。各受信系統のデジタル信号をダイバーシティ技術により合成してパケットを取得する。なお合成はデジタル信号に変換される前のアナログ信号の段階で行ってもよい。なお、OFDMAの場合は、リソースユニット毎に成分が抽出され、必要なパケットが抽出される。MU−MIMOの場合は、空間分離信号を用いて、複数のパケットに分離する。
制御部101は、受信したパケットに復調および誤り訂正復号等の処理を行ってフレームを取得し、フレームのCRC検査(アグリゲーションフレームの場合は、アグリゲーションフレーム内の複数のデータフレームごとにCRC検査)を行う。制御部101は、端末からのフレームの受信完了から予め定めた時間後に、送達確認応答フレーム(より詳細には物理ヘッダを付加したパケット)を送信する。フレームがアグリゲーションフレームの場合は、送達確認応答フレームはBAフレームである。送信部102は、送達確認応答フレームにDA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行い、これらにより得られた信号をプリアンプで増幅して、複数のアンテナから空間に電波として放射する。
制御部101は、フレームで各端末に通知する情報、または各端末から通知された情報、またはこれらの両方を格納するための記憶装置にアクセスして当該情報を読み出してもよい。記憶装置は、内部メモリでも、外部メモリでもよく、揮発性メモリでも不揮発メモリでもよい。また、記憶装置は、メモリ以外に、SSD、ハードディスク等でもよい。
上述した、制御部101と送信部102の処理の切り分けは一例であり、上述した形態とは別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理およびDA変換までは、制御部101で行い、DA変換より後の処理を、送信部102で行うようにしてもよい。制御部101と受信部103の処理の切り分けも同様に、AD変換より前までの処理を、受信部103で行い、AD変換後の処理を含むデジタル領域の処理を、制御部101で行うようにしてもよい。
一例として、本実施形態に係るベースバンド集積回路は、送信時のデジタル領域の処理およびDA変換を行う部分と、受信時のAD変換以降の処理を行う部分とに対応し、RF集積回路は、送信時のDA変換より後の処理を行う部分と、受信時のAD変換より前の処理を行う部分に対応する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、ベースバンド集積回路およびRF集積回路のうち、少なくともベースバンド集積回路を含む。ここで述べた以外の方法でブロック間の処理、あるいはベースバンド集積回路およびRF集積回路間の処理を切り分けてもよい。
図18は、アクセスポイントにおける制御部101の第1の動作例のフローチャートである。制御部101は、自BSS内の端末または隣接するアクセスポイントからデータフレームを受信した場合(S101)、当該データフレームに対する送達確認応答フレームと、当該データフレームの内容(すなわちデータフレームのフレームボディフィールドのデータ)を転送するデータフレームとを生成する(S102)。生成したデータフレームと送達確認応答フレームとをOFDMA送信する(S103)。生成したデータフレームのRAは、中継先のアクセスポイントのMACアドレス(BSSID)である。
なお上記のフローでは、データフレームに応答して送達確認応答フレーム(ACKフレーム)を送信したが、他のフレームでもよい。例えば端末またはアクセスポイントがACKを要求しないフレームを送信した場合は、当該端末またはアクセスポイントに、データフレームなど、他の種類のフレームを送信してもよい。また、RAがブロードキャストアドレスであるフレーム(管理フレームなど)を送信してもよい。または、当該端末またはアクセスポイントとは別の端末またはアクセスポイント宛(中継先のアクセスポイントとは異なる)のフレームを送信してもよい。ここで述べたことは、以下の他のフローチャートでも同様である。
図19は、アクセスポイントにおける制御部101の第2の動作例のフローチャートである。制御部101は、他のアクセスポイント(自局より下流のアクセスポイント、すなわち有線ネットワークまでのホップ数が自局より大きいアクセスポイント)が端末に送信するCTSフレームを受信した場合(S104)、自BSS内の端末群の方向にアンテナの指向性を調整する(S105)。CTSフレームの受信から、一定時間後に、CTS−To−Selfフレームを送信する(同S105)。これにより自BSS内にNAVを設定する。制御部101は、CTSフレームのDuration/IDフィールドから、自局に転送されるデータフレームの受信タイミングを推定し、それより前にNAVが設定されるようにしてもよい。これによりNAVの設定を遅くして、それより前の時間を自BSS内の通信効率を高めることができる。CTS−To−Selfフレームを送信したら、アンテナの指向性をオムニ指向性に戻すか、隣接するアクセスポイントの方向に指向性を向ける(S106)。隣接するアクセスポイントから転送されるデータフレームの受信を待機し、データフレームを受信した後の動作は、図14のS101〜S103と同じである。
図20は、アクセスポイントにおける制御部101の第3の動作例のフローチャートである。制御部101は、他のアクセスポイント(自局より下流のアクセスポイント、すなわち有線ネットワークまでのホップ数が自局より大きいアクセスポイント)が端末に送信するCTSフレームを受信した場合(S104)、当該他のアクセスポイントの方向にアンテナの指向性を調整する(S107)。その状態でデータフレームを待機し(同S107)、データフレームを受信した後の動作は、図14のS101〜S103と同じである。
図21は、アクセスポイントにおける制御部101の第4の動作例のフローチャートである。制御部101は、他のアクセスポイント(自局より下流のアクセスポイント、すなわち有線ネットワークまでのホップ数が自局より大きいアクセスポイント)が端末群に送信するトリガーフレームを受信した場合(S111)、自BSS内の端末群の方向にアンテナの指向性を調整する(S112)。そして、トリガーフレームの受信から、一定時間後に、CTS−To−Selfフレームを送信する(同S112)。これにより自BSS内にNAVを設定する。制御部101は、トリガーフレーム内の情報から、自局に転送されるデータフレームの受信タイミングを推定し、それより前にNAVが設定されるようにしてもよい。これによりNAVの設定を遅くして、それより前の時間を自BSS内の通信に用いて、通信効率を高めることができる。CTS−To−Selfフレームを送信したら、アンテナの指向性をオムニ指向性に戻すか、隣接するアクセスポイントの方向に指向性を向ける(S113)。隣接するアクセスポイントからOFDMAで転送される複数のデータフレームの受信を待機する。制御部101は、隣接するアクセスポイントから複数のデータフレームを受信すると(S114)、当該複数のデータフレームに対する1つの送達確認応答フレーム(Multi−STA BAフレーム等)と、当該複数のデータフレームの内容(すなわちデータフレームのフレームボディフィールドのデータ)を転送する複数のデータフレームとを生成する(S115)。生成した複数のデータフレームと送達確認応答フレームとをOFDMA送信する(S116)。
図22は、端末に搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。
無線通信装置は、制御部201と、送信部202と、受信部203と、少なくとも1つのアンテナ1と、バッファ204とを備えている。制御部201は、アクセスポイントとの通信を制御する制御部またはベースバンド集積回路に対応し、送信部202と受信部203は、フレームを送受信する無線通信部またはRF集積回路に対応する。制御部201の処理、および送信部202と受信部203のデジタル領域の処理の全部または一部は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。端末は、制御部201、送信部202および受信部203の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えてもよい。
バッファ204は、上位層と制御部201との間で、フレームまたはデータ等を受け渡しするための記憶部である。バッファ204はDRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
上位層は、他の端末、アクセスポイント、またはサーバ等の他のネットワーク上の装置に送信するフレームを生成して、バッファ204に格納したり、他の端末、アクセスポイントまたは装置等から受信したフレームまたはそのペイロードを、バッファ204を介して制御部201から受け取ったりする。上位層は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を行ってもよい。また、TCP/IPやUDP/IPは制御部201で処理し、上位層は、これより上位のアプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部201は、主としてMAC層の処理を行う。制御部201は、送信部202および受信部203を介して、アクセスポイントとフレームを送受信することで、アクセスポイントとの通信を制御する。また、制御部201は、クロックを生成するクロック生成部を含み、クロック生成部で生成するクロックを利用して、内部時間を管理してもよい。制御部201は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。あるいは、制御部201は、外部のクロック生成部で生成してクロックの入力を受け、当該クロックを利用して、内部時間を管理してもよい。
制御部201は、一例としてビーコンフレームを受信して、アクセスポイントのBSSの属性および同期情報を把握した後、アクセスポイントにアソシエーション要求を行ってアソシエーションプロセスを行う。これにより、お互いの能力・属性等の必要な情報を交換することで、当該アクセスポイントと無線リンクを確立する。必要に応じて、事前にアクセスポイントとの間で認証プロセスを行ってもよい。制御部201は、端末の能力情報として、自端末が備えるアンテナの本数を送信してもよい。能力情報は、アソシエーションプロセス時に送信する他、アクセスポイントから能力情報の取得要求を受けたときに送信してもよい。
制御部201は、バッファ204を定期的に確認することで、アップリンク送信するデータが存在するか等、バッファ204の状態を把握する。または、制御部201は、バッファ204等の外部からのトリガーによりバッファ204の状態を確認する。制御部201は、バッファ204にデータの存在を確認したら、CSMA/CA等に基づき無線媒体へのアクセス権(送信権)を獲得後、当該データを含むフレーム(より詳細には物理ヘッダを付加した物理パケット)を、送信部202およびアンテナ1を介して送信してもよい。MU−MIMOの場合は、トリガーフレームの受信から一定時間後にパケットを送信する。パケットの物理ヘッダには、トリガーフレームで指定または事前に指定された空間分離信号を設定する。
送信部202は、制御部201から入力されたフレームにDA変換や、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行い、これらにより得られた信号をプリアンプで増幅して、1つまたは複数のアンテナから空間に電波として放射する。なお、複数のアンテナを備える場合、ビームフォーミングでフレームを送信してもよい。
アンテナ1で受信された信号は、受信部203において処理される。受信された信号は、受信部203においてLNAにより増幅され、周波数変換(ダウンコンバート)され、ファイルタリング処理で所望帯域成分が抽出される。抽出された信号は、さらにAD変換によりデジタル信号に変換されて、制御部201に出力される。制御部201では、復調、誤り訂正復号、物理ヘッダの処理が行われ、データフレーム等のフレーム(DL−MU−MIMOで受信したフレームも含む)が取得される。OFDMAの場合は、自装置のリソースユニットの信号成分を抽出して、復調等の処理を行う。フレームのMACヘッダの受信先アドレス(Address1)が自端末のMACアドレスに一致すれば、当該フレームを自端末宛のフレームとして処理する。一致しなければ、当該フレームを廃棄する。
制御部201は、受信したフレームのCRC検査(アグリゲーションフレームの場合は、アグリゲーションフレーム内の複数のデータフレームごとにCRC検査)を行う。制御部201は、フレームの受信完了からSIFS等の一定時間後に、送達確認応答フレームを、送信部202を介して送信する。また、制御部201は、アクセスポイントからRTSフレームを受信した場合は、その送達確認応答フレームとして、CTSフレームを送信する。
制御部201は、データフレーム等のフレームをアクセスポイントに送信した場合、送信完了からSIFS等の一定時間後、アクセスポイントから送信される送達確認応答フレーム(ACKフレームまたはBAフレーム等)を、受信部203を介して受信する。制御部201は、送達確認応答フレームに基づき、データフレーム(アグリゲーションフレームの場合は集約されている個々のデータフレーム)の送信に成功したかを判断する。
制御部201は、アクセスポイントに通知する情報、またはアクセスポイントから通知した情報、またはこれらの両方を格納するための記憶装置にアクセスして情報を読み出してもよい。記憶装置は、内部メモリでも、外部メモリでもよく、揮発性メモリでも不揮発メモリでもよい。また、記憶装置は、メモリ以外に、SSD、ハードディスク等でもよい。
上述した、制御部201と送信部202の処理の切り分けは一例であり、上述した形態とは別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理およびDA変換までは、制御部201で行い、DA変換より後の処理を、送信部202で行うようにしてもよい。制御部201と受信部203の処理の切り分けも同様に、AD変換より前までの処理を、受信部203で行い、AD変換後の処理を含むデジタル領域の処理を、制御部201で行うようにしてもよい。
一例として、本実施形態に係るベースバンド集積回路は、送信時のデジタル領域の処理およびDA変換を行う部分と、受信時のAD変換以降の処理を行う部分とに対応し、RF集積回路は、送信時のDA変換より後の処理を行う部分と、受信時のAD変換より前の処理を行う部分に対応する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、ベースバンド集積回路およびRF集積回路のうち、少なくともベースバンド集積回路を含む。ここで述べた以外の方法でブロック間の処理、あるいはベースバンド集積回路およびRF集積回路間の処理を切り分けてもよい。
なお、非アクセスポイントの端末が、指向性制御可能な複数のアンテナを備え、アンテナの指向性制御を行ってもよい。
(第2の実施形態)
図23は、端末または基地局の全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末または基地局は、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、第1の実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルと、を含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等でもよい。
図24は、無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す。この構成は、アンテナ以外は、非基地局の端末および基地局のいずれに搭載される場合にも適用可能である。ただし、アクセスポイントのアンテナは指向性制御可能であるが、端末のアンテナは指向性制御可能でなくてもよい。この違いに起因してベースバンド回路とスイッチの動作が異なる。図では、n本のアンテナが示されている。これらをまとめて参照符号247で示している。nは1以上である。アンテナが複数本の場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(232〜235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路(ベースバンド回路)212に接続されてもよい。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247(アンテナ1〜n)とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末または基地局に通知する情報、または端末または基地局から通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247(1〜n)までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側のバラン234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
また、図24のモジュールがアクセスポイントの場合、スイッチ245は、ベースバンドIC211またはベースバンド回路212またはCPU215の指示信号に従って、各アンテナ1〜nの指向性を制御する。例えば各アンテナがそれぞれ複数のブランチを有し、各ブランチのインピーダンスまたは抵抗を制御することで、各アンテナの指向性を制御する。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
(第3の実施形態)
図25(A)および図25(B)は、それぞれ第3の実施形態に係る無線端末の斜視図である。図25(A)の無線端末はノートPC301であり、図25(B)の無線端末は移動体端末321である。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた無線端末に搭載されていた無線通信装置、または基地局11に搭載されていた無線通信装置、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等にも搭載可能である。
また、無線端末または基地局11、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図26に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線端末または基地局11、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図26では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る制御部または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係る基地局あるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、基地局に搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、例えば無線通信装置における制御部と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送信部(102または202)または受信部(103または203)または制御部(101または201)またはこれらのうちの複数と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、例えば無線通信装置における制御部と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第12の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、接続確立の手順においては、接続要求フレームと接続受付フレームが管理フレームであり、接続受付フレームへの確認フレームは制御フレームの応答フレームを用いることができる。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続している無線通信装置のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。このフレームは管理フレームに分類される。切断のためのフレームは、例えば接続をリリースするという意味でリリースフレームと呼ぶことがある。通常、リリースフレームを送信する側の無線通信装置ではリリースフレームを送信した時点で、リリースフレームを受信する側の無線通信装置ではリリースフレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、通信フェーズでの初期状態、例えば通信相手の無線通信装置を探索する状態に戻る。これは、切断のためのフレームを送信する際には、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるといった、物理的な無線リンクが確保できないことがあるからである。
一方、暗示的な手法としては、一定期間接続を確立した接続相手の無線通信装置からフレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自端末が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、リリースフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマ(例えばデータフレーム用の再送タイマ)を起動し、第1のタイマが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。第1のタイマと同様、第2のタイマでも、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。
あるいは接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。この場合も、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマはここでは第2のタイマとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11(拡張規格なども含む)無線LANではCSMA/CAをアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするためこのような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した場合に発動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図27に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功するとその受信終了時点からSIFS後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたSIFS後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、SIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。本実施形態では、このようなフレーム間隔のパラメータを用いる無線通信システムを通信レンジの広い干渉システムとして想定する。
なお、各実施形態で記載されているフレームは、Null Data Packetなど、IEEE802.11規格または準拠する規格で、パケットと呼ばれるものを指してもよい。
また、アクセスポイントが複数のフレームを送信、または、複数の端末が複数のフレームを送信する場合、これらのフレーム異なる内容のフレームであっても、同一の内容のフレームでもよい。一般的な表現として、アクセスポイントまたは複数の端末が、複数の第Xのフレームを送信または受信すると表現するとき、これらの第Xのフレームの内容は同じであっても、異なってもよい。Xは任意の値である。複数の第Xのフレームは同時に送信する場合、時系列に順番に送信する場合のいずれも含む。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路 (PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。