JP6593034B2 - 高周波誘電加熱用シート部材 - Google Patents
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Description
このような問題を軽減するために、出願人は、電極を導電性ピンから成る複数のピン電極の集合体とし、ピン電極をそれぞれ独立に変位可能として加熱される冷凍食品表面に接触させ凹凸に倣わせることによって、エアギャップを排除し、局所的な集中加熱を抑制して均一に、かつ、短時間に解凍可能としたものを提案した(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載された技術により、冷凍食品全体が均一に加熱されるため、出力を上げることにより短時間で解凍を行うことが可能となる。
この際に、電極側の表面は、特許文献1に記載されたようなピン電極や、公知の他の手段によって局所的な集中加熱を抑制することができるが、重ねて配置した対向面は、被加熱物の凹凸によって接触箇所とエアギャップが生じ、それらの加熱速度の相違から対向側の表面に温度のムラが発生するという問題があった。
さらに、冷凍食品等の被加熱物を加熱により解凍する場合、解凍時にドリップが発生することがあり、このドリップが重ねて配置された被加熱物の対向面に流出すると、水は比誘電率が大きいことから、被加熱物の濡れ状態によって比誘電率が変化し、特にドリップが溜まった箇所で局所的な温度上昇がより顕著化するという問題があった。
この時、エアギャップが生じて隙間が大きい箇所では、空気の比誘電率が小さいことからインピーダンスが大きく、接触箇所では相対的にインピーダンスが小さいため、接触箇所に電流が集中する。
電流が集中する箇所は発熱が大きくなることから解凍が早く進むが、解凍された冷凍食材は比誘電率が上昇するため、接触箇所の更なるインピーダンス低下と電流集中が促進される。これにより接触箇所が発熱暴走に至り、変色や煮えの発生等の品質低下に繋がる。また、接触箇所以外の箇所は電流が減少するため解凍が進まず、より解凍が不均一になる。
また、局所的に温度上昇した箇所以外は十分に解凍されず、非常に不均一な解凍状態であった。
このような局所的な温度上昇は、解凍後に一定期間冷蔵するような場合、局所的に温度が冷蔵温度より大きく上昇しており品質の保持の点で問題があった。
また、局所的な温度上昇によってタンパク質や糖質の組成変化、脂肪類の溶融等の変化が生じる虞もあり、加熱調理せずに提供するような食材、食品には使用することができず、加熱調理する場合においても調理に不均一さが生じ、味や食感に悪影響を及ぼすという問題があった。
このような局所的な大きな温度上昇を抑制するためには、加熱速度を落として被加熱物内の熱伝導によって全体の温度の均一化を図る必要があった。
このことで被加熱物の対向面の局所的な温度上昇を抑制することができ、熱伝導によって均一化を図るために加熱速度を落とすことなく、短時間に複数の被加熱物を加熱することができる。
また、本発明のシート部材を被加熱物の間に挟む、あるいは、シート部材で対向する被加熱物のいずれか一方を包装するだけでよいため、被加熱物の厚みに個体差がある場合でも一定の間隔で離間させることができ、従来の装置や電源を改造する必要がなく、取り扱いも容易である。
さらに、シート部材が、特性の異なる材料で形成された複数の層からなり、前記複数の層は、少なくとも液体吸収機能層、液体遮蔽機能層を含むことにより、上方に液体吸収機能層を位置させると、上方の被加熱物から流出したドリップ等の液体は、液体吸収機能層で吸収、保持され、液体遮蔽機能層で下方の被加熱物の表面には到達しない。
このことで、被加熱物の表面に液体が濡れ広がったり、液体が凹部へ流れ込んで溜まったりすることなく、さらに液体吸収機能層が液体を吸収し被加熱物の対向面間に液体が連続して介在することによる比誘電率の上昇が防止され、被加熱物の対向面の局所的な温度上昇を確実に抑制することができる。
このことで、対向する両方の被加熱物の表面のいずれにも液体が滞留することなく、比誘電率の上昇が防止され、被加熱物の対向面の局所的な温度上昇を確実に抑制することができる。
本請求項3に記載の構成によれば、シート部材が、液体遮蔽機能層が液体を透過させずに内部に気泡を有することにより、液体遮蔽機能を維持しながら、断熱性を付与できる。これにより、万一、被加熱物の表面に発熱しやすい脂や骨の露出、夾雑物等が付着していた等の原因で、対向する一方の表面に局所的な温度上昇が発生した場合でも、他方の被加熱物の表面に影響を及ぼすことを抑止することができる。
また、液体吸収機能層に吸収、保持された液体が発熱した場合でも、その熱が被加熱物の表面に影響を及ぼすことを抑止することができる。
本請求項4に記載の構成によれば、シート部材が、柔軟性を有することにより、被加熱物の表面の凹凸が大きい場合でも、シート部材が被加熱物の表面の凹凸に倣うことで、対向する被加熱物を直接重ねた場合に比べてシート部材の厚さ以上に離間することがなく、加熱効率が落ちることを防止できる。
また、加熱中に被加熱物の表面の凹凸が変形した際にも、シート部材も倣って変形するため、対向する被加熱物を直接重ねた場合と同様の加熱効率を維持できる。
実験例に用いるシート部材の比誘電率について、インピーダンスアナライザにて直径50mmの平行平板電極で各種シート部材を挟み、周波数10MHzにおける静電容量を測定し、電極面積とシート部材の厚みから算出した。
各種シート部材の比誘電率は以下のとおりである。
ポリエチレン 2.3
発泡ポリエチレン 1.59
ポリプロピレン不織布 1.26
ポリエステル不織布 1.24
パルプ繊維 1.63
(2)ドリップ流出の有無
ドリップ流出有の条件については、予め鶏モモ肉2kgパックの包材に穴を開け、解凍時に発生したドリップがパック外に流出するようにした。
(3)表面温度の測定
サンプルとして解凍前温度−20℃の鶏モモ肉2kgパックを2段重ねし、高周波周波数13.56MHz、出力500VAで加熱した。
60分加熱後、対向面の表面をサーモグラフィーにより撮影し、温度分布及び最高温度を測定した。
本発明の一実施形態に係る高周波誘電加熱用シート部材110を用いる高周波誘電加熱装置100は、図1に示すように、導電性の下部電極101と上部電極102が対向配置されて、両電極間に被加熱物Mが配置されるように構成されている。
被加熱物Mは、下部電極101と上部電極102の対向方向にシート部材110を介して複数重ねて配置され、下部電極101と上部電極102とが高周波電源103に接続されて、複数の被加熱物Mが同時に高周波誘電加熱される。
この状態で、前述したサンプルを、比誘電率の低い厚さ0.5mm又は0.2mmポリエチレン製のシート部材110を間に配して2段重ねし、高周波加熱して対向面の表面温度を観察した。実験条件及び結果を図4に示す。
その結果、図3、図4に示すように、被加熱物Mの対向面の最高温度は40℃以下に抑えられ、局所的な大きな温度上昇による煮えは発生していない。
解凍状態としては、冷凍時にパック内で密着していた個々の鶏モモ肉を、手でほぐせる程度に解凍されている。
前述と同様のサンプルで、シート部材110が空隙を有する材料を用いた際の加熱後の対向面の表面温度を図3に示す。実験条件及び結果を図4に示す。
シート部材110が空隙を有することで比誘電率が小さくなり、よりエアギャップとのインピーダンス差を小さくすることができ、これにより被加熱物Mの対向面の最高温度は20℃以下に抑えられ、局所的な大きな温度上昇は発生していない。
解凍状態としては、冷凍時にパック内で密着していた個々の鶏モモ肉を、手でほぐせる程度に解凍されている。
なお、シート部材110が厚さ6mmの発泡ポリエチレン製の場合には、前述の加熱条件での解凍状態が、冷凍時にパック内で密着していた個々の鶏モモ肉を手でほぐせない程度に加熱効率が低下した。
また、被加熱物Mの内部温度−15℃から0℃までの解凍時間は、鶏モモ肉2kgパック1個の場合で54分であったのに対し、参考例4の2段重ねした場合で73分であった。
加熱装置や食材のサイズによって被加熱物を横に並べての解凍ができない場合でも、シート部材を介すことで品質を損なうことなく多段重ね解凍が可能となり、ひとつずつ連続解凍する場合よりも短時間で解凍できる。
参考例4の条件で2段重ねした鶏モモ肉パック2個、4個、8個を加熱解凍した場合の、最大氷結晶生成帯(−5〜−1℃)通過時間は、それぞれ63分、71分、85分となり、次式で近似できる。
最大氷結晶生成帯通過時間=3.64×パック個数+56[分]
シート部材110として、被加熱物M側から順に液体吸収機能層(パルプ繊維)と液体遮蔽機能層(発泡PE)を用いたこと、包材に穴を開けてドリップの流出をさせた以外は、参考例1と同様に、解凍を行い、表面温度を測定した。評価結果を図3、図4に示す。参考例5に比して対向面最高温度が低くなっている。これは、液体吸収機能層がドリップを吸収し拡散するので、被加熱物凹部にドリップが流れ込んで溜まるのを防いでいるからである。
図2に示すように、液体透過機能層111、液体吸収機能層112及び液体遮蔽機能層113の3層からなるシート部材110aを用いた以外は、参考例1と同様に、解凍を行い、表面温度を測定した。
シート部材110aは、液体透過機能層111としてポリエステル不織布、液体吸収機能層112としてパルプ繊維、液体遮蔽機能層113として液体を透過しない独立気泡の発泡ポリエチレンが積層されたものである。実験条件及び結果を図4に示す。
被加熱物Mが冷凍肉等の場合、解凍時にドリップが生じることがあり、このドリップが重ねて配置された被加熱物の対向面に流出すると、その濡れ状態によって比誘電率が変化し、局所的な温度上昇がより顕著化する。
被加熱物Mを重ねて配置した際の接触箇所となる部分が凸部となるため、その部分の包装が破損している可能性が高く、ドリップが流出した場合には、前述の実施形態のシート部材110のみでは、図5に示すように、局所的な温度上昇を抑制する効果が低下する。
これに対し、本実施形態の3層からなるシート部材110aを用いた場合には、図3、図4に示すように、被加熱物Mの対向面の最高温度は20℃以下に抑えられ、局所的な大きな温度上昇は発生していない。
例えば、上記各実施形態では、被加熱物Mを2段に重ねているが、3段以上重ねて各対向面にシート部材を挟んでもよい。
また、下部電極101や上部電極102と被加熱物Mの間にシート部材を介在させてもよい。
さらに、シート部材を包材として用い、被加熱物Mを下部電極101と上部電極102の間に投入する前に予め包んでおいてもよい。
101 ・・・ 下部電極
102 ・・・ 上部電極
103 ・・・ 高周波電源
110 ・・・ シート部材
111 ・・・ 液体遮蔽機能層
112 ・・・ 液体透過機能層
113 ・・・ 液体吸収機能層
114 ・・・ 凸部
115 ・・・ 凹部
M ・・・ 被加熱物
D ・・・ ドリップ
Claims (4)
- 対向する電極の間に被加熱物を配置して加熱する高周波誘電加熱に用いられるシート部材であって、
前記シート部材が、特性の異なる材料で形成された複数の層からなり、
前記複数の層は、少なくとも液体吸収機能層、液体遮蔽機能層を含むことを特徴とする高周波誘電加熱用シート部材。 - 前記シート部材が、前記液体吸収機能層側の表層に液体透過機能層を有することを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱用シート部材。
- 前記シート部材が、前記液体遮蔽機能層が液体を透過させずに内部に気泡を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高周波誘電加熱用シート部材。
- 前記シート部材が、柔軟性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波誘電加熱用シート部材。
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