以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
なお、以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互い無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。各実施の形態は、個別で実施してもよいが、組合せて実施してもよい。
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよいものとする。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップなどを含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合などを除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素などの形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。このことは前記数値及び範囲についても同様である。
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。以下、各種の実施例を詳述する。
図1は本発明の第一の実施例による通信システム100の構成を示す図である。第一の実施例による通信システムは、あらかじめ決められた経路を移動する移動体である列車105に搭載された移動局106と、列車の移動経路である線路108の片側にそって設けられ、移動局106との通信が可能な複数の基地局103を含んで構成されている。
複数の基地局は制御装置101に有線または無線で接続しており、基地局の動作は、制御装置101によって制御されている。制御装置はサーバ102と有線または無線で接続されている。このような構成とすることで、移動局106は基地局103と無線通信することにより、サーバ102にアクセスすることができる。また図には示していないが、制御装置101はその他のシステムや他のネットワークと接続する構成としても良い。第一の実施例では、基地局は指向性を有する通信エリア104を形成している。
第一の実施例では、列車105は、進行方向107が示す方向、すなわち、基地局103_1から103_3に向かう方向に移動する。
図2は、第一の実施例による基地局103が有するアンテナの指向性の概念を示す平面図であり、上空から線路108を見下ろしたときの様子を示している。線路108上を走行する列車と無線通信を行うことを想定した場合、基地局103が形成する通信エリアは、線路108の方向に延び、その他の方向には必要がない。そこで、本実施例では、図2に示すように、アンテナの放射パタン140は、メインローブ104_Mとサイドローブ104_Sから構成されている。本発明の実施例では、移動局の移動経路である線路108を、主にメインローブがカバーするように基地局を配置する。以下、アンテナの指向性を示す図においては、メインローブの放射パタンを模式化して表わす。複線の場合、列車は線路108の両方向に進行するものが存在するが、一つの基地局(アンテナ)が形成するメインローブ104は、線路108の一方向にのみ形成され、反対方向には形成されない。線路108の両方向に形成しようとすれば、基地局が1対必要であり、単純には費用が2倍必要になる。
次に、図3と図4を用いて、基地局の指向性と移動局の進行方向の関係による、移動局が受信する電力の変化を説明する。図3ならびに図4では、説明のために2つの基地局のみ存在する場合について示している。本実施例では、2つの基地局のメインローブの少なくとも一部がオーバーラップするように2つの基地局103が配置されている。
図3と図4に示すように、実施例1では、複数の基地局103の指向性が同じ方向を向くように基地局が配置されている。すなわち、電波強度のパタンは、基地局103を中心にして、経路の第1の方向側(例えば上り)と第2の方向側(例えば下り)に非対称のパタンとなる。基地局103_1からの電波は、基地局103_2の方向に向かって、徐々に弱くなる。列車105は線路108に沿って両方向に進行する。よって、このような指向性の通信エリアが形成されている場合、移動局106(すなわち列車105)の進行方向によって、経時的に受信電力が変化する様子が異なってくる。
図3は、基地局103のメインローブが伸びる方向と同じ方向に、移動局106すなわち列車105)が移動する場合を説明する図である。図3(A)に示すように移動局106の進行方向が、基地局103_1から103_2に向かう方向である場合、移動局が受信する電力は移動局の場所によって、図3(B)に示す受信電力と場所の関係図(151)に示すように変化する。列車105が移動することによって、移動局106が基地局103_1から得られる電力は、急激に増加し、ピークをすぎた後は、徐々に減少する。基地局103_2から得られる電力も同様の変化となる。
移動局106は移動に伴い基地局103_1から103_2にハンドオーバする必要があるが、接続中の基地局103_1の受信電力が徐々に減少している間に、隣接する基地局103_2から大きな電力が得られるようになるため、ハンドオーバは、隣接する基地局から十分な電力が受信できるようになったタイミングで行えば良い。
図4は、基地局103のメインローブが伸びる方向と逆の方向に、移動局106(すなわち列車105)が移動する場合を説明する図である。図4(A)に示すように移動局の進行方向が、基地局103_2から103_1に向かう方向である場合、受信電力は移動局の場所によって、図4(B)に示す受信電力と場所の関係図(161)に示すように変化する。接続中の基地局103_2から得られる電力は、基地局103_2に近付くにつれて徐々に大きくなり、ピークを過ぎた後は急激に減少する。基地局103_1から得られる電力も同様の変化となる。
図4に示す受信電力の変化となる場合は、隣接する基地局103_1からの信号の電力が接続中の基地局103_2からの信号の電力よりも大きくなってからハンドオーバの処理を開始した場合、103_2からの信号の電力が急激に減少するため、ハンドオーバに失敗し、通信が切れる恐れがある。そのため、基地局103_1からの信号の電力が、基地局103_2からの信号の電力よりも小さい状態であってもハンドオーバの処理を開始することが望ましい。
そのため、隣接する基地局からの信号の受信電力があらかじめ決められた閾値を越えた時に、ハンドオーバの処理を開始すると良い。隣接する基地局からの信号の受信電力に対する閾値は、例えば、移動局が、受信信号をエラーなく処理するために必要な電力の下限値である。さらに、上記の条件に追加して、接続中の基地局からの信号の受信電力もあらかじめ決められた閾値よりも大きくなった時に、ハンドオーバの処理を開始する条件としても良い。また、閾値を伝搬環境に依存して決定するようにしても良い。
このような条件でハンドオーバを行うことで、隣接する基地局103_1からの信号の受信電力が接続中の基地局103_2からの信号の受信電力よりも大きくなってからハンドオーバを行う場合よりも、ハンドオーバの処理が可能となる時間を長くすることができ、ハンドオーバに失敗する確率を低減することができる。
本実施例では、上記の理由により、基地局の指向性と、移動局の進行方向の関係によって、ハンドオーバ条件を変える制御を行う。
図5は、本実施例のハンドオーバ条件の制御の一例を示す表図である。図5に示すように、基地局の指向性情報181と、移動局の進行方向情報182によって、ハンドオーバ条件番号184を設定する。図5では、指向性や進行方向を表すために、X駅、Y駅を用いて表現しているが、図3から図5において、基地局103_1と基地局103_2の中間に位置した時に、基地局103_1の方向がX駅方向、基地局103_2の方向がY駅方向としている。また、図5では、参考として、ハンドオーバの前後で受信電力がどのように変化するかを受信電力変化パタン183として記載している。
図6は第一の実施例による、ハンドオーバ条件番号(184)に対応するハンドオーバ条件(186)を示す図である。本実施例では、ハンドオーバ条件を満足すると移動局はハンドオーバ処理を開始する。本実施例では、移動局の進行方向によって、ハンドオーバ条件番号の3、または4を選択しているが、ハンドオーバ条件番号は、適宜変更可能である。また、図6のハンドオーバ条件番号と、ハンドオーバ条件の関係も一例であって、ハンドオーバ条件番号の数やハンドオーバ条件は適宜変更しても良い。
図6に記載したハンドオーバ条件について、以下に簡単に説明する。以下では、接続中の基地局のビーコンの受信電力をA、接続中の基地局以外、すなわち切り替え候補の基地局のビーコンの受信電力をBとして表す。切り替え候補の基地局は、多くの場合、接続中の基地局に隣接する基地局となる。
ハンドオーバ条件1から3は、図3のように、移動によって接続中の基地局から受信できる電力が徐々に小さくなり、ハンドオーバを行う場合に用いられる条件である。
ハンドオーバ条件番号1は、他の基地局からのビーコンの受信電力Bが接続中の基地局からのビーコンの受信電力A以上になった場合に、ハンドオーバすることを示している。これらは図3(B)に示すように、2つの基地局から得られるビーコンの受信電力の差が大きい時に適した条件である。受信電力は伝搬環境の変化によっても変動し、また測定誤差が存在する場合もあるため、1回の測定の結果だけで判断するよりは、複数回の測定を行い、その平均値をハンドオーバの判断に用いることが望ましい。以下の条件においても同様である。
ハンドオーバ条件番号2は、2つの基地局から得られるビーコンの受信電力の関係が、一定時間A≦Bとなった場合にハンドオーバすることを示している。このような条件は、瞬時的な変動で2つの基地局の受信電力の大小関係が逆転して、ハンドオーバが発生することを防ぎたい場合に適した条件となる。
ハンドオーバ条件番号3は、A≦Bとなり、かつ、Bの経時変化が減少である場合にハンドオーバすることを示している。これは、図3(B)に示すように、受信電力が急激に増加している場所は、通信エリアの境界であるため、通信エリアの境界でのハンドオーバをさけて、ハンドオーバをさせたい場合に適した条件となる。
ハンドオーバ条件4から6は、図4のように、移動によって接続中の基地局からの信号の受信電力が徐々に大きくなる状態で、ハンドオーバを行う場合に用いられる条件である。
ハンドオーバ条件番号4は、他の基地局からのビーコンの受信電力Bがあらかじめ決めた値M以上になった場合にハンドオーバすることを示している。例えばMの大きさは移動局が、受信信号をエラーなく処理するために必要な電力の下限値である。フェージングや測定誤差に対するマージンも考慮した値を設定してもよい。この条件は、次の基地局へのハンドオーバの閾値を小さくすることで、ハンドオーバが実行されやすくし、接続中の基地局の通信エリアをはずれる前に、確実に他の基地局にハンドオーバさせたい場合に適した条件となる。
ハンドオーバ条件番号5は、接続中の基地局からのビーコンの受信電力Aがあらかじめ決めた値N以上になり、かつ他の基地局からのビーコンの受信電力Bがあらかじめ決めた値M以上となった場合にハンドオーバすることを示している。ハンドオーバ条件番号4との違いは、接続中の基地局からのビーコンの受信電力がN以上になるという条件を付加していることである。この条件は、ハンドオーバ条件番号4とは逆に、接続中の基地局からのビーコンの受信電力がNよりも小さい場合は、他の基地局へのハンドオーバを防ぐことで、移動局がある一定レベルの受信電力を受信できるようにしたい場合に適した条件となる。受信電力が大きい方が、データの伝送速度を速くすることができるため、基地局と移動局との間で、ある程度のデータ伝送速度を維持したい場合に適した条件となる。
ハンドオーバ条件番号6は、閾値を伝搬環境に依存して決定することを示している。例えば、天候などにより伝搬環境が大きく変動する場合に適した条件となる。
図7を用いて、第一の実施例による基地局103と移動局106の動作を説明する。図7は横軸に時間を示し、基地局103と移動局106が送信する信号のタイミングを示している。第一の実施例では、複数の基地局は同一の周波数を用いて、移動局と通信する。そのため、図7に示すビーコン送信期間1107で、複数の基地局(図7の例では3つ)が時分割してビーコン1102を送信する。いま、順に基地局(N)から基地局(N+9)と番号づけられた10台の基地局が、線路に沿って存在する場合を例に説明する。例えば、隣接する4つの基地局からの信号が干渉となる場合は、ビーコン送信期間を5つに分割し、基地局(N)から基地局(N+4)までの5つの基地局に其々の送信期間を割り当てる。また、基地局(N+5)から基地局(N+9)までの5つの基地局にも其々の送信期間を割り当てる。このとき、5つはなれた基地局が同じタイミングで、例えば基地局(N+5)と基地局(N)とが同じタイミングでビーコンを送信するように構成する。
移動局106は、ビーコンの受信結果から、最も接続に適した基地局を選択し、データリクエスト信号/確認応答信号送信期間1108に、選択した基地局に対してデータリクエスト信号1103を送信する。データリクエスト信号1103を受信した基地局は移動局に確認応答信号1106を送信する。本実施例では基地局103と移動局106は異なる周波数を用いて通信するため、ダウンリンクデータ/ アップリンクデータ送信期間1109にダウンリンクデータ1104ならびに アップリンクデータ1105の双方を送信し、確認応答信号送信期間1110に、それぞれ確認応答信号1106を送信する。
図8を用いて、第一の実施例による移動局のハンドオーバ条件の設定方法を説明する。移動局106は、基地局103の指向性情報を取得し(S191)、次に移動局の進行方向情報を取得する(S192)。さらに、ハンドオーバ条件情報を取得し(S193)、これらの情報から、ハンドオーバ条件を設定する(S194)。
本実施例の通信システムは、ハンドオーバの条件をより詳細にし、ハンドオーバをより確実に実施できるようにするために、基地局の指向性情報として、指向性の方向の他に、アンテナ設置高さ、方位角および仰角平面におけるメインローブの半値幅、チルト角、アンテナゲイン、各基地局の識別番号や位置、各基地局間の線路にそった距離等も取得できるシステムとしても良い。また、各ハンドオーバ条件をどの箇所で適用したか、またその成功率などのデータも移動局が取得できる構成としても良い。
図8の基地局103の指向性情報を取得する処理(S191)では、列車の移動区間に存在する基地局の指向性情報は、列車の移動開始前に入手するように構成した。しかし、情報入手のタイミングはこれに限ったものではない。例えば、移動局が基地局と通信しながら、隣接する基地局の指向性情報などを入手できるようにシステムを構成しても良い。一例として、基地局が送信するビーコンの中に、自基地局の情報の他に、他の基地局の指向性の方向や他の情報を送るようにしても良い。他の例は、移動局が現在接続中の基地局に対して、次にハンドオーバすると予想される基地局の指向性の方向や他の情報の提供をリクエストして、それらの情報を受信するようにしても良い。
また、列車上に、進行方向に対して離れた箇所に複数の無線送受信機を設けて、それぞれの無線送受信機が受信したビーコンの電力のデータを保持し、かつ、互いにそのデータを参照できるように移動局を構成し、列車の移動によって、先にビーコンを受信した無線送受信機のビーコンの受信電力の履歴を用いて移動局が基地局の指向性を判断し、その結果をもとに、後からビーコンを受信する無線送受信機が基地局と通信するような構成としても良い。このように、情報の入手方法は1つに限ったものではなく、基地局のハンドオーバに間に合うように情報を入手できれば、いずれの方法でも良い。
図8の移動局の進行方向情報を取得する処理(S192)についても、列車105の移動中にリアルタイムで情報を入手してもよいし、列車の発車前に予めデータを記憶しておいてもよい。リアルタイムな進行情報は、列車の運転情報等から生成することができる。予めデータを記憶する場合は、列車の運行情報(時刻表やダイヤ)等から、各時刻に対応する進行方向データを予め生成することができる。
図9を用いて、第一の実施例による移動局のハンドオーバ制御方法を説明する。移動局は、ビーコン送信期間に基地局から送信されたビーコンを受信し(S1401)、受信したビーコン電力に対する演算を実施する(S1402)。ビーコン電力演算のステップでは、例えば、ある一定期間内に受信した複数のビーコン電力の平均値の算出、前回受信したビーコン電力との差の算出、また、複数の基地局のビーコン電力のそれぞれに対する平均値の比較などを行う。なお、図8で説明したように、ビーコンの中に、自基地局の指向性に関する情報や他の基地局の指向性に関する情報を含んで送信しても良い。自基地局の指向性に関する情報は、自基地局アンテナの方向や電波出力の情報から生成すればよい。また、他基地局の指向性に関する情報は、他基地局から直接に有線または無線経由で情報を入手すればよい。
次に、ビーコン電力演算により算出した値を用い、ハンドオーバ条件を満足するか?の判定を行う(S1403)。判定結果が条件を満足する、であれば、基地局の切り替えを決定(S1404)し、判定結果が条件を満足しない、であれば、接続中の基地局との接続を決定する(S1405)。次に、その結果に基づいて、データリクエスト信号の作成・送信を行う(S1406)。
図10は、基地局と移動局の動作シーケンス1300を示す図である。第一の実施例では、移動局106は、列車105が移動を開始する前に、基地局103の指向性情報、移動局106の進行方向情報、ハンドオーバ条件情報を取得し(S1301)、それに基づいて、ハンドオーバ条件を設定する(S1302)。基地局103がビーコンを送信し(S1303)、移動局106はビーコンを受信し、必要な演算処理を行う(S1304)。移動局は、演算結果から、切り替え判断を行い、接続基地局を決定し(S1305)、決定した基地局へデータリクエスト信号を送信する(S1306)。データリクエスト信号を受信した基地局103は確認応答信号を送信する(S1308)。次いで、確認応答信号を送信した基地局と移動局で通信を行い(S1307)、それに対して、それぞれ確認応答信号を送信する(S1308)。以降、このシーケンスを繰り返す。
図11は、第一の実施例による移動局106の構成を示す図である。移動局106は、基地局103と無線通信を行うための無線信号送受信部1807、移動局の各種動作の時間管理を行う時間管理部1806、アプリケーションを制御するアプリケーョン制御部1805、移動局の通信を制御する通信制御部1802、他の装置やシステムに接続するためのインタフェース1801を含んで構成される。通信制御部1802は、ハンドオーバ制御部1803とハンドオーバ以外の通信制御を行うその他の通信制御部1804を含んで構成される。各部はバス1808で接続されている。なお、図11は移動局の構成の一例であり、バッファなど、動作に必要な機能をさらに追加しても良いことは明白である。以下に説明する基地局や、制御装置の構成も同様である。
本実施例の移動局106は、ハンドオーバ制御に特徴があるため、図12を用いて、ハンドオーバ制御部の構成の詳細を説明する。その他の機能は、一般的な無線通信装置と同等である。
図12に示すハンドオーバ制御部1803は、ハンドオーバ条件格納部2702、移動局進行方向保持部2703、基地局指向性保持部2704を有し、それぞれハンドオーバ条件、移動局進行方向、基地局指向性の情報を取得し、格納する。本実施例では、ハンドオーバ条件は、列車に線路をあらかじめ走行させて、当該線路において最適となるハンドオーバ条件を取得し、その結果を入力するようにしても良い。また、移動局進行方向は、列車の運行を管理する別システムから進行方向の情報を取得するようにシステムを構成する、また他の方法を用いて取得するようにシステムを構成しても良い。また、また手入力できるようにしても良い。また、基地局の指向性の情報は、あらかじめ、当該線路の移動局の指向性の情報を用意しておき、その情報を入力するようにしても良い。このように、様々な方法で、これらの情報を取得することが可能である。これらのハンドオーバ条件、移動局進行方向、基地局指向性の情報は、ハンドオーバ条件設定部2706に入力され、ハンドオーバ条件が設定される。
無線信号送受信部1807で受信された複数のビーコンの受信電力は、ビーコン電力格納部2705で保持される。ビーコン電力演算部2707では、ビーコン電力格納部に保持された値を用いて、一定期間ごとの各ビーコンの受信電力の平均値の算出など、ハンドオーバ条件設定部2706で設定された条件の判定に必要な値を算出する。本実施例では、先に述べたように、複数の基地局が同じタイミングで、ビーコンを出す。そのため、ハンドオーバを行い、通信を中止した基地局から受信していたビーコンの情報は、ハンドオーバ後にリセットするようにシステムを構成しても良い。こうすることで、これまで接続していた基地局と、同じタイミングでビーコンを送信する他の基地局からのビーコンの情報が混在することを防ぐことができる。
切り替え要否・接続基地局決定部2709は、ハンドオーバ条件設定部2706、ビーコン電力演算部2707からの情報に基づき、基地局の切り替え要否を判断し、接続する基地局を決定する。接続する基地局が決定されたら、その結果をデータリクエスト信号作成・送信処理部2710に入力し、該当基地局に対して、データリクエスト信号を送信するために、信号の作成、送信処理を行う。
また、本実施例では、あらかじめ決められたハンドオーバ条件でのハンドオーバが適切かどうかを判定するために、ハンドオーバ結果受信部2708を設けている。ハンドオーバ結果受信部では、一例としてハンドオーバの失敗確率があらかじめ決められた閾値を越えた場合は、ハンドオーバ条件格納部にハンドオーバ条件を変更するように通知する動作を行う。ハンドオーバ時間管理部2711は、移動局の時間管理部1806からの信号をもとに、ハンドオーバ制御部の動作に対する時間管理を行う。移動局の進行方向が、現在接続中の基地局から得られる電力が、移動局の移動に従って増加する方向である場合は、図4に示すように受信電力が急激に低下する場合があるため、ハンドオーバが適切かどうかの判定に有用である。
図13に第一の実施例による基地局103の構成を示す。基地局103は無線信号を送受信する無線信号送受信部1710、制御装置とのインタフェースである有線インタフェース1701、基地局の制御を行う基地局制御部1702を含んで構成されている。基地局制御部は、無線通信の制御を行う無線通信制御部1703、基地局の各種動作の時間管理を行う時間管理部1704、その他の通信制御を行うその他の通信制御部1705を含んで構成される。各部はバス1711で接続されている。
無線通信制御部1703は、ビーコンの送信を制御するビーコン制御部1706、移動局から送信されたデータリクエスト信号を処理するデータリクエスト信号処理部1707、移動局へ送信する信号や、制御装置101に送信する信号の制御を行う送信信号制御部1708、移動局から受信した信号や、制御装置101から受信した信号の制御を行う受信信号制御部1709を含んで構成される。第一の実施例における基地局の機能は、一般的な無線通信装置と同等である。
図14に第一の実施例における制御装置101の構成図を示す。制御装置101は、基地局やその他のシステムとのインタフェースとなるインタフェース1501、通信システム全体の時間管理を行う時間管理部1502、基地局から送信するビーコンのタイミングなどを管理するビーコン管理部1503、基地局と移動局の間のデータの送受信を制御するスケジューリング管理部1504、その他の通信システムの制御を行うその他の通信制御部1505から構成されている。
図15は移動局106のハードウェア構成を示す図である。中央処理部(Central Processing Unit:CPU)1901、メモリ1902、DSP(Digital Signal Processor)1903、FPGA(Field−Programmable Gate Array)1904、及び、有線インタフェース190、ならびに無線部1906を含み、これらはバス1907によって接続される。
メモリ1902は、各種情報の保持、情報の処理や、移動局を動作させるための機能を実装するためのプログラムを格納する。CPU1901は、メモリ1902に格納されたプログラムを実行する。DSP1903やFPGA1904は移動局の信号処理機能を実装する。有線インタフェース1905は、他の装置とのインタフェース機能を実装し、無線部1906は、アンテナも含み、無線信号を送受信する機能を実装する。本実施例における移動局のハードウェア構成は、一般的な無線機の構成と同等である。また基地局機能も移動局と同等のハードウェア構成で実現できる。図11に示す通信制御部1802、アプリケーション制御部1805、時間管理部1806等は、メモリ1902に格納されたプログラム(ソフトウェア)がCPU1901によって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して行うことができる。また、ソフトウェアによる制御に変えて、FPGAあるいは専用のハードウェアで同じ機能を実現してもよい。基地局103の指向性に関する情報は、移動局106が移動を開始する前に取得してメモリ1902に格納しておいてもよいし、移動局106が移動中に最寄りの基地局からデータを入手してメモリ1902に格納してもよい。
図16に制御装置101のハードウェア構成を示す。制御装置は、各種情報の保持や、制御装置を動作させるための機能を実装するためのプログラムを格納するメモリ2802、メモリ2802に格納されたプログラムを実行するCPU2801、基地局やその他装置とのインタフェースとなるインタフェース2803を含んで構成されている。図14に示した制御装置101の各部分は、ソフトウェアで構成してもよいし、ハードウェアで構成してもよい。この点は、移動局106と同様である。
第一の実施例では、基地局には指向性を有するアンテナを使用するが、移動局と基地局の間の無線通信にミリ波帯を使用する場合は、マイクロ波帯よりも距離減衰が大きくなるので、基地局のアンテナは、メインローブの半値幅の角度が小さい、例えば10度以下となるような、狭い指向性を有するアンテナとすると良い。
一方、移動局のアンテナは、基地局と通信できれば、指向性を有するアンテナでも、オムニアンテナでもどちらでも良いが、基地局のアンテナ指向性の方向が、移動局の移動範囲において、移動経路にそってほぼ同じ方向を向くように設置されているのであれば、移動局のアンテナも、その電波を受信できるような方向に指向性があるアンテナを用いると良い。移動局も指向性のあるアンテナとしゲインを持たせることにより、移動局にオムニアンテナを使用する場合に比べて、基地局との間の通信距離を長くすることができる。
以上、述べたように、第一の実施例では、通信システムを、基地局の指向性に関する情報と、移動局の進行方向の情報を用いて、異なるハンドオーバ条件を設定するように構成する。このような構成とすることで、列車の移動経路の片側のみに基地局を設けた場合でも、進行方向に適した状態でハンドオーバを行うことができ、低コストで安定した通信を実現する通信システムを提供することができる。
また、上記通信システムは、あらかじめ定められた経路を移動する移動体に設けられた移動局と、移動局と通信可能な複数の基地局を移動局の移動経路にそって配置し、基地局の通信エリアは指向性を有するように形成し、移動体の移動によって、基地局と移動局の接続を切り替える場合、基地局の指向性と移動体の進行方向の関係によって、接続中の基地局から、異なる基地局への接続を切り替える条件を変更するように制御した移動局を用いることで、実現することができる。
本発明の第二の実施例を説明する。第二の実施例では、移動局が移動しながら、基地局から指向性に関する情報を入手し、ハンドオーバ条件を設定する通信システムについて説明する。
移動局が移動しながら基地局の指向性に関する情報を入手できるように通信システムを構成することは、移動局の移動範囲において、基地局の指向性が変化する場合や、また、列車が当初の予定とは異なる経路を走行するように変更になった場合などにおいて好適に作用する。
移動局の移動範囲において、基地局の指向性が変化する例を、図17ならびに図18を用いて説明する。
図17は、第二の実施例における基地局の配置と指向性を示す図である。第一の実施例との違いは、基地局のハンドオーバが発生する箇所での移動局の受信電力の変化が、第一の実施例の場合に比べて小さく抑えられていることである。このため、基地局103からのメインローブが、線路108の両方向に形成されている。図17の例では、一組の基地局103_n、103_n+1を互いに逆向きの指向性を持つ基地局として構成したが、これに限るものではない。基地局103_nから、基地局103_n+1に切り替える場合は、基地局103_nからの信号の受信電力が大きい状態から、基地局103_n+1からの信号の受信電力が大きい状態への切り替えとなる。また、基地局103_n+1から、基地局103_n+2に切り替える場合は、基地局103_n+1からの信号の受信電力が小さい状態から、基地局103_n+2からの信号の受信電力が小さい状態への切り替えとなる。
その結果、第一の実施例では、移動局は受信電力の急激な変化に対応することが必要だったが、第二の実施例ではそれを回避し、移動局がゲイン調整に要する時間を低減することができる。
図18は、第二の実施例における基地局の他の配置と指向性を示す図である。本実施例では、基地局によって、指向性の向きが変化している。このような通信システムの構成は、周辺環境に適した指向性の配置を可能とし、かつ、基地局の設置自由度を高める効果が得られる。
第二の実施例では、第一の実施例と異なり、基地局の指向性が、移動局の進行方向に対して同じ方向に配置されていない。そのため、移動局は、オムニアンテナを使用する構成とする、もしくは、基地局のそれぞれの指向性にあわせて複数の指向性アンテナを有するように構成し、接続する基地局によって、移動局のアンテナを切り替える構成とする。
図19に第二の実施例における基地局103Bの構成図を示す。基本的な構成は図13の基地局と同様であり、同一の構成は同じ符号をつけて説明は省略する。本実施例による基地局103Bは、移動局106と通信しながら、隣接する基地局の情報を提供するため、無線通信制御部の中に、隣接基地局情報送信制御部1712を設けている。隣接基地局情報送信制御部では、列車105に進行方向を問い合わせる、もしくは、列車のこれまでのハンドオーバの履歴を制御装置101から取得するなどによって、列車の進行方向を判定し、次に移動局106がハンドオーバする基地局103Bを推定して、その基地局の情報を移動局に通知する。
通知する情報は、隣接基地局の指向性の方向、さらには、現在通信中の基地局と、隣接基地局までの距離や、ビームの半値幅や送信電力などの情報としてもよい。これらの情報は、制御装置が基地局の情報を一元管理して、移動局からの情報提供のリクエストに応じて、各基地局から移動局に通知するようにしても良い。
また、基地局自身で隣接する基地局の情報を保持し、移動局からの情報提供のリクエストに応じて移動局に通知するようにしても良い。また、移動局からの情報提供のリクエストがなくても、基地局が定期的に送信するビーコンに隣接基地局の情報も含めるように構成しても良い。
図20は第二の実施例における基地局と移動局の動作シーケンス1300Bを示す図である。基本的な構成は図10のシーケンス1300と同様であり、同一の構成は同じ符号をつけて説明は省略する。図20に示すシーケンスと図10に示した第一の実施例における動作シーケンスの差は、移動局106が、基地局103からのダウンリンク信号の中から隣接基地局の指向性の情報等を取得する処理(S2209)と、それに基づいて、ハンドオーバ条件を設定する処理(S2210)が設けられていることである。
このような構成にすることで、基地局の指向性の方向と移動局の進行方向の関係が、列車の走行途中で変化する場合であっても、隣接基地局の情報を得て、都度、適したハンドオーバ条件を設定することができるため、安定した通信を提供することができる。
また、図20には示していないが、基地局の指向性に関する情報だけではなく、移動局の進行方向の情報も移動中に入手できるようにし、ハンドオーバ条件を設定する通信システムとしても良い。移動局の進行方向は、列車の運行を管理する別システムから進行方向の情報を取得するようにシステムを構成しても良い。また手入力できるようにしても良い。このようなシステム構成にすることによって、移動局の進行方向が当初の予定から変更になった場合でも、柔軟に対応することができる。
また、基地局103からのダウンリンク信号(S1307)に隣接基地局の指向性の情報等を含めるかどうかを、例えば移動局106からのデータリクエスト信号(S1306)等に当該情報を要求するか否かの情報を含めることにより、選択できる構成とすることもできる。
図21は、第二の実施例で、移動局が受信する電力を説明するグラフ図である。第二の実施例では、例えば、図17に示したように基地局が配置されている場合、列車の移動により、移動局が受信する電力は図21の2100に示すように変化する。図21のQ、R、S、Tはそれぞれ、基地局103_nから103_n+3の場所ではなく、各基地局のメインローブが移動局の移動経路上に通信エリアを形成し始める地点として表している。
本実施例では、メインローブによる通信エリアがオーバーラップするように基地局を配置している。従って、基地局103_nから、基地局103_n+1に向けて列車が移動する場合は、基地局103_nから、基地局103_n+1に1回だけハンドオーバすることが望ましい。
そこで、本実施例では、ビーコンの受信電力だけではなく、列車や基地局の位置の情報も用いて、ハンドオーバを実施するように通信システムを構成する。
図22は、第二の実施例によるハンドオーバ条件情報の説明図である。本実施例の移動局は、図22に示すように、ハンドオーバの対象となる基地局2301と、その時に発生する受信電力の変化のパタン2302、ならびにハンドオーバ条件2303を記載したテーブルを保持し、それに基づいて、ハンドオーバを実施する。
本実施例では、移動局は、基地局から隣接基地局の情報を取得することで、図22のテーブルを作成する。
基地局103_nから、基地局103_n+1へのハンドオーバは、移動局がハンドオーバ先となる基地局103_n+1のメインローブ部分からの電力を受信できる位置(R地点)を越えたら実施する条件としても良い。移動局の位置情報は、列車にGPSを搭載してそこから情報を取得しても良く、また、列車の移動速度と走行時間から位置を算出するようにしても良い。
また、位置情報だけで判断すると、急激な伝搬環境の変化によって、ハンドオーバが困難な状態になっていても、それを検知できずハンドオーバを実行しようとして、ハンドオーバに失敗してしまう恐れがある。そのため、ハンドオーバ条件2303に示したように、位置情報だけではなく、新たに接続しようとする基地局からの信号の受信電力に関する条件も追加しても良い。
さらに、基地局103_nから、基地局103_n+1にハンドオーバする場合は、どちらの基地局からの電波も強い場所でのハンドオーバとなるため、また、2つの基地局のサイドローブからメインローブに切り替わる部分も存在するため、電力の大小関係だけでハンドオーバを実施しようとすると、1回以上のハンドオーバが発生する恐れがある。従って、ハンドオーバを1回行った場合は、一定時間、ハンドオーバを行わないという条件を付加しても良い。
一方、基地局103_n+1から、基地局103_n+2へのハンドオーバは、基地局からの信号の受信電力がいずれも小さい状態でのハンドオーバとなる。従って、これは通常のセルラシステム等でも用いられているように、受信電力を基準にハンドオーバを実施するように構成しても良い。基地局103_n+1から、基地局103_n+2へのハンドオーバは、それぞれの基地局からある程度の距離が離れた地点でのハンドオーバとなる。基地局から離れると、周辺環境の変化による受信電力の変化が起きやすいため、位置を基準としたハンドオーバ条件にするよりは、受信電力に関する値をハンドオーバ条件とすることが望ましい。
また、図22には示していないが、移動局は基地局103_n+1から基地局103_n+2へ移動することがあらかじめ分かっているため、基地局103_n+1から基地局103_n+2へのハンドオーバをしやすくするように、受信電力を比較する際に、基地局103_n+2からの信号の受信電力に一定の値を付加した値と、基地局103_n+1からの信号の受信電力の大小関係を比較するように構成しても良い。ただし、この時も基地局103_n+1から103_n+2へのハンドオーバが実施された後は、一定時間ハンドオーバを行わないなどの条件を付加しても良い。
第二の実施例では、他の基地局に関する情報は、移動局から接続中の基地局に対して他の基地局の情報の通知をリクエストし取得するシステムについて説明したが、先に述べたように、基地局が送信するビーコンで、隣接する基地局の情報を移動局に通知するようにシステムを構成しても良い。
図23に上記システムで使用されるビーコンのフレームフォーマット2400の一例を示す。ビーコンは、プリアンブル2401、ヘッダ2402、データ2403から構成されている。本実施例におけるビーコンでは、データに基地局情報2404が含まれる。基地局情報の例としては、このデータで情報が送られる基地局の数、各基地局のID番号、そのID番号の基地局の基準点からの距離、そのID番号の基地局の指向性方向、そのID番号の基地局の出力電力、そのID番号の基地局のメインローブが線路をカバーする範囲の開始地点、そのID番号の基地局のメインローブが線路をカバーする範囲の終了地点などである。このような基地局情報を、自基地局について送信する、また隣接する他の基地局について送信するように構成しても良い。自基地局のみについて送信する場合は、図23におけるBS_ID_Numberは1となる。また自基地局に加えて他の1つの基地局の情報も送信する場合は、BS_ID_Numberは2となり、それぞれ基地局について、ID番号や、基準地点からの距離、指向性の方向などが送信される。また、図23に記載した情報は、あくまで一例であって、必ずしもすべてを送る必要はなく、また、さらに他の情報を送るようにしても良い。移動局はこのビーコンを受信することで、他の基地局に関する情報を取得できる。
第二の実施例では、列車が移動しながら指向性に関する情報を入手し、ハンドオーバ条件を設定し、また、ハンドオーバ条件もビーコンの受信電力に関する値だけではなく、列車や基地局の位置情報を用いて設定している。このような構成にすることにより、列車の移動経路が変更になった場合や、基地局の指向性が一方向に固定されていない場合でも、それに適したハンドオーバを実施できる。
また、移動局は、あらかじめ、すべての走行区間に存在する基地局の指向性に関する情報を保存する必要がなく、少なくとも接続中の基地局ならびに隣接する基地局の指向性に関する情報を保存するメモリがあれば良いため、より小さなメモリの実装で良い。
基地局の指向性が一方向に固定されない基地局の配置は、受信電力の急激な変化をなくしゲイン調整に要する時間を低減できる、もしくは、基地局設置の自由度を高くすることができる。
また、受信電力の情報だけではなく、位置情報を使うことで、2つの基地局からの電力がほぼ等しい場所を移動する場合でも、ハンドオーバが繰り返し発生する現象を低減することができる。
図24を用いて、第三の実施例における、通信システムの構成を説明する。第三の実施例では、基地局は、無線信号の送受信を行うRF(Radio Frequency)部3003と、信号の変復調処理を行うモデム部を分割し、両者を光ファイバ3002でつなぐ構成としている。また、本実施例では複数のモデム部を1ヶ所に集約し、集中信号処理装置3001を形成している。
基地局の指向性に関する情報と、移動局の進行方向情報から、ハンドオーバ条件を設定することは同じであるが、第三の実施例では、第一ならびに第二の実施例とは異なりハンドオーバの制御を基地局側が主体となって行う。
本実施例では、移動局がビーコン3004を送信し、それをRF部が受信する。このため移動局は、他の移動局が信号を送信していないかを確認してからビーコンを送信するような機能を有するように構成する。移動局のビーコンを受信したRF部はその受信電力を、集中信号処理装置に伝達する。このため、第三の実施例では、すべてのRF部は、ビーコンを受信し、その結果を集中信号処理装置に伝達する機能を保持する。また、集中信号処理装置は、各RF部から受信したビーコンの電力に関する情報を保持し、かつ、必要な演算を行うビーコン電力演算部を有する。
集中信号処理装置は、列車から進行方向の情報を取得しても良い。また、各RF部から収集したビーコンの電力を比較することで、移動局の進行方向を推定しても良い。
また、本実施例では、基地局の指向性に関する情報を、あらかじめ集中信号処理装置に格納しておくことで、集中信号処理装置で、基地局の指向性に関する情報、移動局の進行方向情報を用いてハンドオーバ条件を設定しても良い。
集中信号処理装置は、RF部が受信したビーコンの電力と、基地局の指向性に関する情報、移動局の進行方向情報とから設定したハンドオーバ条件を用いて、移動局が、いつ、どのRF部と通信すれば良いかを判断し、その結果を移動局に通知する。
また、本実施例では、集中信号処理装置3001は、内部にスイッチ機能を設け、モデム部とRF部の間の接続を切り替えることができる構成としても良い。集中信号処理装置内に設けたスイッチ機能を使うことで、特定の列車に対する信号を処理するモデム部は固定したまま、モデム部とRF部の接続を切り替えることで、モデム部の切り替え、すなわちハンドオーバの発生を防ぐことができる。この場合は、モデム部とRF部の接続の切り替えが生じるが、その切り替え条件を、これまで説明したハンドオーバ条件とすれば良い。
また、切り替え条件には、ビーコンの受信電力の他に、列車の位置や移動速度の情報、ならびにRF部が設置されている位置情報等も用いても良い。
このような構成とすることで、同じ集中信号処理装置がカバーするRF部の間でのハンドオーバの発生を防ぎ、移動体の移動に伴うハンドオーバの回数が少なく、安定して動作する通信システムを提供することができる。
本実施例におけるRF部は、移動局と通信しない場合は、移動局と通常の通信をするための無線通信機能はOFFにすることが、省エネルギーの観点からは望ましい。そのため、本実施例のRF部は、ビーコンの受信と、受信結果を集中信号処理装置に伝達する機能、並びに、集中信号処理装置からの信号を受信して、移動局と通常の通信をするための無線通信機能をONにする機能は、常時ON状態を保ち、移動局と通常の通信をするための無線通信機能はON状態とOFF状態を切り替えられる構成とすると良い。
本発明の第四の実施例を説明する。第四の実施例では、例えば降雨による減衰による電波の減衰が大きい周波数帯を使用した通信システムにおいて、図25に示すように、移動局の移動によって、受信電力の大きい基地局から、受信電力の小さい基地局にハンドオーバする通信システムについて説明する。
無線通信に降雨減衰が大きい周波数帯を使用する場合に、各基地局の形成する通信エリアの変化を、図25並びに図26を用いて説明する。
図25は、第四の実施例による、降雨減衰が大きい場合の、基地局の通信エリアと、移動局の受信する電力の変化を説明する図である。
図26は、降雨減衰がない、もしくは図25に示した場合より少ない場合の、基地局の通信エリアと、移動局の受信する電力の変化を説明する図である。
図25並びに図26に示すように、降雨減衰の度合いによって各基地局の通信エリアの大きさが変化する。降雨減衰が大きい場合に比べて、降雨減衰がない場合や降雨減衰が少ない場合は、各基地局の通信エリアは大きくなる。
図25や図26に示すように、基地局103_1から基地局103_2の方向に列車が移動し、ハンドオーバをする場合は、実施例1で述べたように、次にハンドオーバする基地局からの信号の受信電力が、あらかじめ定められた閾値を超えた場合に、ハンドオーバするように通信システムを制御する。図25(B)に示すように、降雨減衰が大きい場合に、移動局が基地局から受信する信号の受信電力をもとにハンドオーバの閾値3101を設定した場合は、降雨減衰が大きい場合は図25(B)において3100として示した電力を受信するが、その条件を、図26のように、降雨減衰がない場合や少ない場合に適用すると、図26(B)に示すように、移動局が受信できる電力3200が低減し、通信環境が悪い条件で通信をすることになる。
図27は、本発明の第四の実施例によるハンドオーバ閾値の変更の例を説明するグラフ図である。
図28は、本発明の第四の実施例によるハンドオーバ閾値の変更の他の例を説明するグラフ図である。
本実施例では、図27や図28に示すように伝搬環境に応じてハンドオーバの閾値(3302、3401)を変更する制御を行うように通信システムを構成する。
図29は、第四の実施例における移動局のハンドオーバ制御部1803Bの構成を示す図である。以下では、図12に示す本発明の第一の実施例による移動局のハンドオーバ制御部1803の構成との違いを説明する。第四の実施例の移動局では、ビーコン情報格納部3507に、ビーコンに関する情報を格納する。ビーコン情報演算部3504の中に、想定値との差の演算部3505と受信ビーコン数カウント部3506を設けている。また、ハンドオーバ条件格納部3501に、閾値変更部3502を設け、その中に変更情報格納部3503を設けている。
本実施例では、移動局は、少なくとも初回は初期設定の閾値を用いてハンドオーバを行うが、ハンドオーバ後も、ハンドオーバ前に接続していた基地局や、現在接続中の基地局、さらに他の基地局など、移動局が受信できるビーコンを受信し、それらの情報から、各基地局のビーコンの受信電力の場所に対する変化がわかるように、すなわち、図25や図26に示すようなビーコンの受信電力と場所の関係がわかるように、ビーコン情報を収集し、格納する。
想定値との差の演算部3505は、接続中の基地局以外の基地局から受信したビーコン電力の中で、最も大きな値を示すビーコンの受信電力が初期設定の閾値、例えば図25に示す状況を想定して決定された閾値3101になった時の、現在接続中の基地局から受信するビーコンの受信電力の測定値とあらかじめ決められた想定値の差を算出する。本実施例では、図25に示す状況を想定した場合に、ハンドオーバする基地局からのビーコンの受信電力が閾値3101となった時の、接続中の基地局のビーコンの受信電力の大きさを推定した値を、あらかじめ決められた想定値3102とする。
想定値との差の演算部3505では、図26に示す状況において、接続中の基地局以外の基地局から受信したビーコンの受信電力の中で、最も大きな値を示すビーコンの受信電力が初期設定の閾値となったときの、接続中の基地局からのビーコンの受信電力の測定値3103と、想定値3102との差を算出する。
受信ビーコン数カウント部3506は、ビーコン情報格納部3507に格納されたビーコンに関する情報から、ある基地局の受信電力が想定値3102になった場合に、受信できている他の基地局からのビーコンの数をカウントするブロックである。図25や図26に示すように、降雨減衰が大きければ移動局が受信できるビーコンの数は少なく、降雨減衰がない場合や少ない場合は、より遠方の基地局からのビーコンも受信できるようになるため、受信できるビーコンの数は多い。
このように想定値との差や、受信ビーコン数をカウントすることで、その時の伝搬環境、すなわち、減衰が大きいか、少ないか、また、基地局の通信エリアがどのくらいの大きさかを推定することができる。
受信ビーコン数カウント部3506でのビーコン数のカウント結果と、想定値との差の演算部3505で算出した、想定値との差をハンドオーバ条件格納部3501内の閾値変更部3502 に伝達する。
閾値変更部3502では、変更情報格納部3503に格納された閾値変更情報を用いて、閾値の変更を決定し、その結果をハンドオーバ条件設定部に伝達する。変更情報格納部3503の情報は、ハンドオーバ結果受信部2708からの情報を用いて、変更するように構成しても良い。
図30ならびに図31に、本実施例による、変更情報格納部3503に格納された閾値変更情報を示す。図30は想定値との差を基準として閾値を変更する場合、図31は、受信できるビーコン数を基準として閾値を変更する場合の閾値変更情報である。
本実施例では2つの値を指標として、閾値を変更する構成となっているが、必ずしも2つの値を指標にする必要はなく、どちらか一方だけでも良い。複数の指標がある場合の利点は、それぞれの結果を用いて総合的に判断できることであり、例えば、図30ならびに図31の2つの閾値変更情報から導出された閾値の変更の値が、極端に異なる場合は、測定のエラーが生じたと考え、閾値の変更を中止するように構成しても良い。また、2つ閾値変更情報から導出された閾値の変更の結果が異なった場合は、確実にハンドオーバできるように、変更がより少ない方の値を選択するように構成しても良い。また、図31に示していないが、閾値変更情報での導出結果を参考にして、基地局のハンドオーバを行うたびに、少しずつ閾値を大きくしていき、最終的には導出結果の閾値になるように制御する機能ブロックを設けても良い。
図32は、本実施例における他の閾値変更情報を示す図である。図32では、ビーコンを受信できた最も遠方の基地局までの距離を指標にして、閾値の変更を行う場合を示している。この図の指標を用いるためには、各基地局が、ビーコンの中に基地局の位置を示す情報をいれて、ビーコンを送信すれば良い。移動局は、例えば、GPS受信機や走行距離などの情報から移動局のいる場所を推定し、基地局までの距離を計算するように構成すれば良い。
以上説明したように、伝搬環境によって、ハンドオーバの閾値を変更することによって、初期状態の閾値を用いてハンドオーバする場合に比べて、移動局の受信する電力を大きくすることができ、通信システムの性能を向上させることができる。
図33は、第四の実施例による他のハンドオーバ制御の説明図である。上記の例では、ハンドオーバの閾値を変更したが、本実施例では、隣接する基地局を順々にハンドオーバするのではなく、図33に示すように、受信できるビーコン数によって、ハンドオーバする基地局を、例えば1つおき、または2つおきなどにするように変更する。その結果、移動局のハンドオーバ回数を減らすことができる。
図34は、本実施例におけるさらに別の方法で閾値変更を行うための制御装置101Bの構成を示す図である。本実施例では、移動局は収集した受信電力の情報や、ハンドオーバに使用した閾値などを制御装置に通知し、制御装置はその情報を、これから、情報を提供した移動局と同じ場所を移動する移動局に通知するように通信システムを構成する。
以下では、図14に示す本発明の第一の実施例による制御装置101と、本実施例の制御装置101Bの構成の違いを説明する。図34の制御装置には、先行移動局情報管理部3900が設けられている。先行移動局情報管理部3900は、制御部3901、保存部3902、送信部3903、受信部3904を含んで構成される。 本実施例の通信システムは、移動局が収集したビーコンの受信電力と場所の関係の情報を、移動局から基地局経由で制御装置に通知する。制御装置は、その情報を受信部3904で受信し、保存部3902に保存する。制御部3901は、情報を提供した移動局よりもあとの時間に、同じ場所を移動する移動局に対して、事前にビーコンの受信電力と場所の関係の情報を通知できるように、送信する情報、その情報を送信する基地局、送信するタイミング等を決定する。送信部3903は、制御部の決定に従って、送信信号を作成し、送信する。基地局と移動局の間の伝搬環境は変動するので、通知する情報の取得時刻も合わせて移動局に通知すると良い。また移動局も、基地局から情報を得たうえで、自らも情報を取得し、それを制御装置に通知することで、保存部の情報を適宜更新することができる。
上記の実施例では、ビーコンの受信電力と場所の関係の情報を移動局から送るように構成するが、移動局がハンドオーバに用いた閾値の情報そのものを制御装置に送るようにしても良く、また両方の情報を送るようにしても良い。
通信システムをこのような構成にすることにより、移動局はこれから通過するエリアの伝搬環境を事前に把握することができ、あらかじめ閾値を変更することが可能になる。
また、各移動局が、自ら取得したデータを制御装置に通知することで、制御装置は、伝搬環境の経時変化を知ることが可能になる。このように、制御装置と移動局の間で、伝搬環境の情報をやり取りすることで、移動局は1つ前の移動局だけではなく、さらに前の移動局の受信した信号の電力や、その経時変化を知ることができ、その情報を用いた閾値の変更が可能になる。
また、移動局への情報の提供はビーコンにこれらの情報を含めることで提供しても良いが、移動局から制御装置に対して、伝搬環境や閾値の情報の送信要求があった時にのみ、移動局に情報を提供するように構成してもよい。
図35を用いて本発明の第五の実施例を説明する。図35は基地局の指向性と移動局の進行方向の関係を説明する図である。本実施例の基地局は、図35に示すように、基地局4000のアンテナ指向性を変化させられるような構成となっている。指向性の変化は、基地局のアンテナの方向を機械的に変更しても良いし、電気的に制御するようにしてもよい。
図36は基地局のアンテナ指向性の方向を電気的に制御する例である。図36に示すように、基地局4000は、反対方向の指向性になるように設置した2つのアンテナ4001と無線送受信部4002の間の接続を、スイッチ4003で切り替えるような構成として、実現しても良い。一方、移動体である列車4006には、前方と後方に2つの移動局(4004,4005)を設けて、進行方向4007と指向性4008の関係の情報をもとに、いずれかの移動局を選択して通信するように構成する。
本実施例では、ある区間において、反対方向から来る列車がない場合は、図35(A)(B)に示すようにその列車の進行によって、接続中の基地局からの電力が徐々に弱くなるようにアンテナの指向性を選択し、列車も通知された指向性を有する基地局との通信に適した移動局を選択し、通信を行うように構成する。
互いに進行方向が異なる列車がすれ違う場合は、どちらか一方の列車は、すれ違う前(4009)と、すれ違ったあと(4010)で、基地局のアンテナの指向性の変化に対応する必要がある。指向性の変化によって、通信できないエリアが発生しないように、経路上の途中に存在する少なくとも1つの基地局は、図35(c)の基地局4000_2に示すように、同時に2つの方向に対して信号を送信できる構成とすればよい。もしくは、駅と駅の間の線路では、指向性は一方向だけになるようにして、駅に設けた基地局で指向性の変化に対する影響をカバーするようにシステムを構成しても良い。また、基地局の指向性の変化については、実施例2に述べたように、移動中にも移動局に通知することによって、移動局も対応することができる。このような構成とすることで、移動体のすれ違いが発生しない箇所では、それぞれの列車の進行によって、接続中の基地局からの電力が徐々に弱くなるような指向性とすることができるため、ハンドオーバは、他の基地局からの信号の受信電力が接続中の基地局からの信号の受信電力以上になった場合に行うようにできる。すなわち、電力の比較でハンドオーバを行うことができるため、実施例4で述べたような、降雨減衰によって通信エリアの大きさが変わっても、ハンドオーバ対して同じ条件を用いることができる。また、列車のすれ違いが発生する箇所でも、基地局のアンテナの指向性の変化を移動局に通知することで、ハンドオーバの条件を変更できるため、安定して通信ができる通信システムを提供することができる。
以上述べた実施例では、移動局側がハンドオーバ条件に従って、ハンドオーバの判断をしているが、移動局から情報を収集した基地局の制御装置が、ハンドオーバ条件を判断し、その結果を移動局に通知し、移動局がその通知された結果に基づきハンドオーバするように構成しても良い。
以上の実施例によれば、基地局の形成する通信エリアの指向性の方向と、移動局の進行方向の関係によって、ハンドオーバする条件を変更するので、移動体の進行方向によらず、ハンドオーバの失敗による通信の切断等を低減でき、安定した通信を実現する通信システムを提供することができる。また、基地局を移動経路に対して片側のみに設けた場合であっても安定した通信ができる低コストな通信システムを提供できる。また、移動経路の両側に基地局をおく必要がないため、基地局の設置の自由度が高い通信システムを提供できる。
以上述べた実施例では、列車上の移動局と線路に沿った基地局で構成されたシステムを説明したが、適用は上記に限られるものではない。例えば、高速道路上の上りと下りの車線を走行する自動車に搭載された移動局と、高速道路に沿って配置された基地局等にも適用が可能である。本実施例は、移動局の進行方向と基地局のアンテナの指向性に所定の制約条件を付すことができるシステム一般に応用が可能である。以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、本発明の意図を逸脱しない範囲では、種々組合せや変形が可能であることは明らである。すなわち、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。