ところが、上記した従来のEGR弁90において、第1軸受47と第2軸受48には、回転軸40との間に設計上不可避なガタ(隙間)が存在する。そのため、弁体39が弁座38に着座する全閉状態において、弁体39に流路36を通じて開弁方向の圧力が作用することにより、ガタの分だけ弁体39が弁座38から浮き上がり、その隙間からEGRガスが吸気通路へ洩れたり、吸気が排気通路へ洩れたりするおそれがある。例えば、図12において、弁座38を境にその上側を排気通路に通じる排気側とし、その下側を吸気通路に通じる吸気側とする。ここで、エンジンの過給時には、吸気側から弁体39に過大な過給圧が作用することにより、上記ガタの分だけ弁体39が弁座38から浮き上がるおそれがある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、全閉時に弁体の弁座からの浮き上がりを防止し、弁体と弁座との間からの気体の洩れを防止することを可能とした排気還流弁を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部を排気還流ガスとして吸気通路へ流してエンジンへ還流する排気還流通路に設けられ、排気還流ガスの流量を調節するための排気還流弁であって、ハウジングと、ハウジングに設けられ、排気還流ガスが流れる流路と、流路に配置され、弁孔を含む弁座と、流路に配置され、弁座に着座可能に設けられた弁体と、弁体が取り付けられる取付部を含み、弁体を開閉するために回転される回転軸と、回転軸は、取付部を自由端とし、取付部の反対側を基端部とし、取付部が流路に配置され、基端部にてハウジングに片持ち支持されることと、ハウジングにて回転軸を回転可能に支持するための軸受とを備え、弁体が弁座に着座する全閉状態から回転軸を回転させることにより弁体を開弁動作させるように構成した排気還流弁において、弁座に着座した弁体を弁座から離間させようと弁体に作用する圧力に抗して弁体を弁座に押圧するために回転軸をその直径方向に付勢する付勢手段を備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、排気還流弁の全閉時に、付勢手段により、回転軸がその直径方向に付勢されるので、弁体を弁座から離間させようとする圧力が弁体に作用しても、弁体が弁座に押圧されて弁座に密着する。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、軸受は、互いに離れて配置された第1軸受及び第2軸受を含み、第2軸受が第1軸受よりも弁体に近い側に配置されることと、付勢手段は、第2軸受よりも弁体に近い位置に配置されることと、付勢手段により第1軸受を支点として回転軸に作用する押圧モーメントが、弁体を弁座から離間させようと第1軸受を支点として回転軸に作用する離間モーメントよりも大きくなるように設定されることとを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成において、第1軸受と第2軸受には、回転軸との間に設計上不可避なガタ(隙間)が存在する。このため、全閉状態において、弁体に流路を通じて圧力が作用することにより、ガタの分だけ弁体が弁座から浮き上がるおそれがある。上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、付勢手段により回転軸に作用する押圧モーメントが、弁体を弁座から離間させようと回転軸に作用する離間モーメントよりも大きくなるように設定されるので、全閉時に、てこの原理により、弁体が弁座に効果的に押し付けられる。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、流路は、弁座を境として排気通路に通じる排気側と吸気通路に通じる吸気側とに分けられ、排気側にて弁体と回転軸が配置されると共に、弁体が弁座に着座可能に設けられることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、流路の排気側にて弁体と回転軸が配置されると共に、弁体が弁座に着座可能に設けられる。従って、全閉時には、排気側に作用する排気の圧力が、弁体が弁座に着座する方向に作用し、あるいは、吸気側に作用する吸気負圧が、弁体が弁座に着座する方向に作用する。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、流路は、弁座を境として排気通路に通じる排気側と吸気通路に通じる吸気側とに分けられ、吸気側にて弁体と回転軸が配置されると共に、弁体が弁座に着座可能に設けられることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、流路の吸気側にて弁体と回転軸が配置されると共に、弁体が弁座に着座可能に設けられる。従って、全閉時には、流路の吸気側と排気側との間の圧力差が、弁体が弁座に着座する方向に作用する。また、全閉時には、弁体と回転軸が排気還流ガスに曝されない。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、付勢手段は、ハウジングに設けられ、回転軸を付勢するためのスプリングと、スプリングと回転軸との間に介在された接触部材とを含むことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の作用に加え、スプリングと回転軸との間に接触部材が介在され、スプリングが回転軸に直接接触することがない。
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、付勢手段は、ハウジングにて回転軸へ向けて往復動可能に設けられたピストンと、ピストンを回転軸へ向けて付勢するために、排気還流通路に作用する圧力をピストンに供給するための圧力供給通路と、ピストンよりも流路に近い位置にて回転軸とハウジングとの間に設けられたシール部材とを含むことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の作用に加え、排気還流通路に吸気圧力(過給圧)などの圧力が作用するときだけ、圧力供給通路を介してピストンに圧力が供給される。従って、ピストンに圧力が供給されないときは、ピストンが回転軸へ向けて付勢されない。
請求項1に記載の発明によれば、全閉時に弁体の弁座からの浮き上がりを防止することができ、弁体と弁座との間からの気体の洩れを防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に対し、全閉時に弁体の弁座からの浮き上がりを効果的に防止することができ、弁体と弁座との間からの吸気の洩れを効果的に防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、流路の排気側に作用する排気圧力又は流路の吸気側に作用する吸気負圧を利用し、全閉時における排気還流弁からの排気還流ガス洩れを効果的に防止することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、流路の吸気側に作用する過給圧を利用し、全閉時における排気還流弁での排気還流ガスの漏れを効果的に防止することができる。また、排気還流ガス中の異物が、回転軸に付着したり、回転軸とハウジングとの間に侵入したりすることを極力防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、付勢手段による回転軸の回転フリクションを軽減することができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、必要時以外は、付勢手段による回転軸の回転フリクションを軽減することができる。
<第1実施形態>
以下、この発明の排気還流弁(EGR弁)をガソリンエンジンシステムに具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。自動車に搭載されたガソリンエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1には、その各気筒へ吸気を導入するための吸気通路2と、各気筒から排気を導出するための排気通路3が設けられる。吸気通路2と排気通路3には、過給機5が設けられる。吸気通路2には、エアクリーナ4、過給機5のコンプレッサ5a、インタークーラ6、スロットル装置7及び吸気マニホルド8が設けられる。スロットル装置7は、バタフライ式のスロットル弁7aが開閉されることにより、吸気通路2の吸気量を調節するようになっている。吸気マニホルド8は、サージタンク8aと、サージタンク8aからエンジン1の各気筒へ分岐する複数の分岐通路8bとを含む。排気通路3には、過給機5のタービン5bと、排気を浄化する触媒10が設けられる。エンジン1は周知の構成を備え、燃料と吸気との混合気を燃焼し、燃焼後の排気を排気通路3へ排出するようになっている。過給機5は、タービン5bが排気の流れにより回転動作し、それに連動してコンプレッサ5aが回転することにより、吸気通路2の吸気を昇圧させるようになっている。
このエンジンシステムは、排気還流装置(EGR装置)21を備える。この装置21は、エンジン1から排気通路3へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)として吸気通路2へ流して各気筒へ還流させる排気還流通路(EGR通路)22と、EGR通路22に設けられ、EGRガスを浄化するための排気還流触媒(EGR触媒)23と、EGR触媒23より下流のEGR通路22に設けられ、EGRガスを冷却するための排気還流クーラ(EGRクーラ)24と、EGRクーラ24より下流のEGR通路22に設けられ、EGRガスの流量を調節するための排気還流弁(EGR弁)25とを含む。EGR通路22は、入口22aと複数の出口22bを含む。EGR通路22の下流側には、複数の出口22bを有するEGR分配管26が設けられる。EGR分配管26は、吸気マニホルド8の分岐通路8bに設けられる。この実施形態で、EGR通路22の入口22aは、エンジン1とタービン5bとの間の排気通路3に接続される。EGR分配管26の複数の出口22bは、各分岐通路8bのそれぞれに接続される。複数の出口22bが各分岐通路8bに接続されるのは、EGRガスを各分岐通路8bを介して各気筒へ均等に導入するためである。
この実施形態で、EGR弁25は、開度可変な電動弁により構成される。このEGR弁25として、大流量、高応答及び高分解能の特性を有することが望ましい。そこで、この実施形態では、EGR弁25の構造として、例えば、特許第5759646号公報に記載される「二重偏心弁」を基本構成として採用することができる。この二重偏心弁は、大流量制御に対応して構成される。
ここで、この二重偏心弁を含む電動式のEGR弁25の概略構成について以下に説明する。図2に、このEGR弁25を斜視図により示す。EGR弁25は、二重偏心弁より構成される弁部31と、モータ42(図5参照)を内蔵したモータ部32と、複数のギヤ51〜53(図5参照)を内蔵した減速機構部33とを備える。弁部31は、内部にEGRガスが流れる流路36を有する管部37を含み、流路36の中には弁座38、弁体39及び回転軸40の先端部が配置される。回転軸40には、モータ42(図5参照)の回転力が複数のギヤ51〜53(図5参照)を介して伝達されるようになっている。
図3に、弁体39が弁座38に着座する全閉状態における弁部31を一部破断して斜視図により示す。図4に、弁体39が弁座38から最も離れた全開状態における弁部31を一部破断して斜視図により示す。図3、図4に示すように、流路36には段部36aが形成され、その段部36aに弁座38が組み込まれる。弁座38は、円環状をなし、中央に弁孔38aを有する。弁孔38aの縁部には、環状のシート面38bが形成される。弁体39は、円板状をなし、その外周には、シート面38bに対応する環状のシール面39aが形成される。弁体39は回転軸40の先端部に固定され、回転軸40と一体的に回動するようになっている。図3、図4において、弁体39より上の流路36は、EGRガスの流れの上流側を示し、弁座38より下の流路36は、EGRガスの流れの下流側を示す。すなわち、流路36において弁体39は、弁座38よりもEGRガスの流れの上流側に配置される。この実施形態で、流路36の上流側は、EGR通路22を介して排気通路3に通じる「排気側」となり、流路36の下流側は、EGR通路22を介して吸気通路2(吸気マニホルド8)に通じる「吸気側」となる。
図5に、全閉状態のEGR弁25を平断面図により示す。図6に、全閉状態のEGR弁25を図5のA−A線断面図により示す。図5、図6に示すように、このEGR弁25は、主要な構成要素として、回転軸40と弁体39の他に、ボディ41、モータ42、減速機構43及び戻し機構44を備える。
この実施形態で、ボディ41は、流路36と管部37を含むアルミ製の弁ハウジング45と、同ハウジング45の開口端を閉鎖する合成樹脂製のエンドフレーム46とを含む。回転軸40及び弁体39は、弁ハウジング45に設けられる。すなわち、回転軸40は、その先端部に弁体39を取り付けるためのピン40aを含む。ピン40aは、本発明の取付部の一例に相当する。回転軸40は、ピン40aがある先端部を自由端とし、その先端部が弁体39と共に流路36に配置される。この実施形態では、流路36の排気側にて弁体39と回転軸40の先端部が配置されると共に、弁体39が弁座38に着座可能に設けられる。また、回転軸40は、ピン40aの反対側を基端部40bとし、その基端部40bにて弁ハウジング45に片持ち支持され、2つの軸受47,48を介して回転可能に支持される。回転軸40の基端部40bは、互いに離れて配置された2つの軸受、すなわち第1軸受47と第2軸受48を介して弁ハウジング45に支持される。第2軸受48は、第1軸受47よりも弁体39に近い側に配置される。第2軸受48に隣接して回転軸40と弁ハウジング45との間には、ゴムシール61が設けられる。第1軸受47及び第2軸受48は、それぞれボールベアリングにより構成される。弁体39は、ピン40aに対して溶接により固定され、流路36内に配置される。
図5において、エンドフレーム46は、弁ハウジング45に対し複数のクリップ(図示略)により固定される。エンドフレーム46の内側には、回転軸40の基端に対応して配置され、弁体39の開度(弁開度)を検出するための開度センサ49が設けられる。また、回転軸40の基端部40bには、メインギヤ51が固定される。メインギヤ51と弁ハウジング45との間には、弁体39を閉方向へ付勢するためのリターンスプリング50が設けられる。メインギヤ51の裏側には、凹部51aが形成され、その凹部51aに磁石56が収容される。この磁石56は、その上から押さえ板57により押さえ付けられて固定される。従って、メインギヤ51が、弁体39及び回転軸40と一体的に回転することにより、磁石56の磁界が変化し、その磁界の変化を開度センサ49が弁開度として検出するようになっている。
この実施形態で、モータ42は、弁ハウジング45に形成された収容凹部45aに収容される。モータ42は、収容凹部45aにて、留め板58と板ばね59を介して弁ハウジング45に固定される。モータ42は、弁体39を開閉するために減速機構43を介して回転軸40に駆動連結される。すなわち、モータ42の出力軸(図示略)上に固定されたモータギヤ53が、中間ギヤ52を介し、メインギヤ51に駆動連結される。中間ギヤ52は、大径ギヤ52aと小径ギヤ52bを含む二段ギヤにより構成される。中間ギヤ52は、ピンシャフト54を介して弁ハウジング45に回転可能に支持される。大径ギヤ52aには、モータギヤ53が連結され、小径ギヤ52bには、メインギヤ51が連結される。この実施形態では、各ギヤ51〜53により減速機構43が構成される。メインギヤ51と中間ギヤ52は、軽量化のために樹脂材料により形成される。
図5に示すように、弁ハウジング45とエンドフレーム46との接合部分には、ゴム製のガスケット60が設けられる。このガスケット60により、モータ部32と減速機構部33の内部が大気に対して密閉される。
従って、図3に示すように、弁体39の全閉状態から、モータ42が作動し、モータギヤ53が回転することにより、その回転が中間ギヤ52により減速されてメインギヤ51に伝達される。これにより、回転軸40及び弁体39が、リターンスプリング50の付勢力に抗して回動され、流路36が開かれる。すなわち、弁体39が開弁される。また、弁体39をある開度に保持するために、モータ42に回転力を発生させることにより、その回転力が保持力としてモータギヤ53、中間ギヤ52及びメインギヤ51介し回転軸40に伝達される。この保持力がリターンスプリング50の付勢力に均衡することにより、弁体39がある開度に保持される。
ここで、図6に示すように、弁体39が弁座38に着座する全閉状態において、流路36の吸気側に吸気通路2から過大な過給圧が作用することがある。この場合、弁体39が弁座38から浮き上がり、吸気が流路36の排気側へ洩れ、排気通路3へ流れて、バックファイア等が発生するおそれがある。そこで、このEGR弁25には、全閉状態において、過給圧等による弁体39の浮き上がりを防止すべく、弁体39を弁座38に押圧するために、回転軸40をその直径方向に付勢する付勢装置71が設けられる。この付勢装置71は、本発明の付勢手段の一例に相当する。
図6に示すように、この付勢装置71は、第2軸受48よりも弁体39に近い位置にて弁ハウジング45に配置される。付勢装置71は、回転軸40を付勢するためのスプリング72と、スプリング72と回転軸40との間に介在されるボール73とを含む。ボール73は、本発明の接触部材の一例に相当する。スプリング72とボール73は、弁ハウジング45に形成された組み付け孔74に収容され、プラグ75により抜け止めされる。スプリング72と回転軸40の間にボール73が介在するのは、回転軸40を付勢する部材を、回転軸40の外周に点接触させるためである。点接触させることで、ボール73と回転軸40との接触面積を減らし、回転軸40の回転フリクションを軽減する機能を有する。プラグ75は、組み付け孔74を塞ぎ、スプリング72の端面を保持する機能を有する。
ここで、図6において、回転軸40には、スプリング72により、第1軸受47を支点とする押圧モーメントMPが作用する。また、弁体39には、流路36の吸気側に作用する吸気側圧力と流路36の排気側に作用する排気側圧力との圧力差(以下、「吸排差圧」という。)が作用し、その吸排差圧が回転軸40にも作用する。従って、回転軸40には、この吸排差圧により、弁体39を弁座38から離間させようと第1軸受47とする離間モーメントMEが作用する。この実施形態では、押圧モーメントMPが離間モーメントMEよりも大きくなるように、スプリング72の付勢力(ばね力)が設定されている。
ここで、押圧モーメントMPは、図6において、第1軸受47と付勢装置71との間の第1の距離L1と、スプリング72のばね力との積で求めることができる。一方、離間モーメントMEは、図6において、第1軸受47から弁体39までの第2の距離L2と、弁体39に作用する吸排差圧との積で求めることができる。図7に、エンジン回転速度に対する吸気側圧力、排気側圧力及び吸排差圧の関係をグラフにより示す。このグラフから、吸排差圧が負の値になる、すなわち吸気側圧力が排気側圧力よりも大きくなるのは、エンジン回転速度が「約1000〜2700(rpm)」となる範囲であることがわかる。この吸排差圧は、例えば、「2000(rpm)」では「12kPa」程度になる。従って、この実施形態では、この範囲の吸排差圧に対抗できるように、スプリング72のばね力を設定できればよいことになる。
以上説明したこの実施形態のEGR弁25の構成によれば、その全閉時に、付勢装置71により、回転軸40がその直径方向に付勢される。従って、弁体39を弁座38から離間させようとする圧力(吸排差圧)が弁体39に作用しても、弁体39が弁座38に押圧されて弁座38に密着する。このため、全閉時に弁体39の弁座38からの浮き上がりを防止することができ、弁体39と弁座38との間からの吸気の洩れを防止することができる。この結果、吸気が排気通路3へ流れることによるバックファイア等の発生を防止することができる。
この実施形態の構成によれば、付勢装置71により回転軸40に作用する押圧モーメントMPが、弁体39を弁座38から離間させようと回転軸40に作用する離間モーメントMEよりも大きくなるように設定される。従って、全閉時に、てこの原理により、弁体39が弁座38に効果的に押し付けられる。このため、全閉時に弁体39の弁座38からの浮き上がりを効果的に防止することができ、弁体39と弁座38との間からの吸気の洩れを効果的に防止することができる。
図8に、エンジン回転速度に対する吸排差圧、軸モーメント(従来例)、軸モーメント(本実施形態)の関係の一例を表により示す。また、図9に、エンジン回転速度に対する軸モーメント(従来例)、軸モーメント(本実施形態)の関係の一例をグラフにより示す。ここで、「軸モーメント」とは、第1軸受47を中心に回転軸40に作用するモーメントを意味する。この表及びグラフから、従来例では、エンジン回転速度が「約1000〜2700(rpm)」となる範囲で、軸モーメントが負の値になるのに対し、本実施形態では、エンジン回転速度の全範囲で軸モーメントが正の値となることがわかる。「負の値」の軸モーメントは、弁体39を弁座38から離間させる方向に作用することを意味する。これに対し、「正の値」の軸モーメントは、弁体39を弁座38に押し付ける方向に作用することを意味する。この実施形態では、押圧モーメントMPと離間モーメントMEとの差が軸モーメントとして回転軸40に作用することになる。従って、この実施形態では、エンジン回転速度の全範囲で、弁体39を弁座38に押し付けて密着させることができる。
また、この実施形態の構成によれば、EGR弁25において、流路36の排気側にて弁体39と回転軸40が配置されると共に、弁体39が弁座38に着座可能に設けられる。従って、全閉時には、流路36の排気側に作用する排気圧力が、弁体39が弁座38に着座する方向に作用し、あるいは、流路36の吸気側に作用する吸気負圧が、弁体39が弁座38に着座する方向に作用することになる。このため、流路36の排気側に作用する排気圧力又は流路36の吸気側に作用する吸気負圧を利用し、全閉時におけるEGR弁25からのEGRガス洩れを効果的に防止することができる。
更に、この実施形態の付勢装置71の構成によれば、スプリング72と回転軸40との間にボール73が介在され、スプリング72が回転軸40に直接接触することがない。このため、付勢装置71による回転軸40の回転フリクションを軽減することができる。特に、この実施形態では、ボール73が回転軸40の外周に点接触するので、ボール73と回転軸40との接触面積を減らし、回転軸40の回転フリクションを効果的に軽減することができる。
<第2実施形態>
次に、この発明の排気還流弁をエンジンシステムに具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。この実施形態では、EGR弁25に設けられる付勢装置76の構成の点で第1実施形態と構成が異なる。
図10に、全閉状態のEGR弁25を図6に準ずる断面図により示す。図10に示すように、この実施形態の付勢装置76は、弁ハウジング45にて回転軸40へ向けて往復動可能に設けられたピストン77と、ピストン77と回転軸40との間に介在されるボール73と、ピストン77をボール73及び回転軸40へ向けて付勢するために、EGR通路22に作用する圧力をピストン77に供給するための圧力供給通路78と、ピストン77とボール73よりも流路36に近い位置にて回転軸40と弁ハウジング45との間に設けられたゴムシール61とを含む。すなわち、この実施形態では、第1実施形態において、図5及び図6に示すように、第2軸受48に隣接して設けられたゴムシール61が、図10に示すように、位置を換えて回転軸40と弁ハウジング45との間に設けられる。このゴムシール61は、本発明のシール部材の一例に相当する。ピストン77とボール73は、組み付け孔74に組み付けられたスリーブ79に収容される。スリーブ79は、筒部79aと、筒部79aの上端に形成された、通気孔を有する止めリング部79bとを含む。ピストン77とボール73は、止めリング部79bにより抜け止めされる。このゴムシール61により、流路36の排気側に作用する排気の圧力が、ピストン77とボール73に作用しないようになっている。ここで、ピストン77は、吸気圧力が正圧のときは、その正圧によってボール73及び回転軸40の方向へ付勢される。このとき、流路36の排気側に作用する排気の圧力は、ゴムシール61によりシールされるので、ボール73及びピストン77に逆方向の圧力として作用することはない。一方、ピストン77は、吸気圧力が負圧となるときは、その負圧によってボール73から離れ、回転軸40への付勢が解除され、回転軸40の回転フリクションが軽減される。圧力供給通路78の一端は組み付け孔74に接続され、他端は流路36の吸気側に通じるEGR通路22に接続される。圧力供給通路78は、EGR弁25に対して外装(外付け)される金属製パイプ等で構成することができる。この実施形態で、弁体39に作用する吸排差圧は、最大で「20kPa程度」であるが、付勢装置76により回転軸40に作用する付勢力は、最大で「90kPa程度」となり、付勢力の方が格段に大きい。このため、ピストン77の受圧面積は、弁体39の受圧面積よりも小さくすることができる。
従って、この実施形態の構成によれば、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。第1実施形態と異なる付勢装置76の構成については、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、この実施形態では、EGR通路22に過給圧などの正圧が作用するときだけ、圧力供給通路78を介してピストン77に圧力が供給される。従って、ピストン77に圧力が供給されないときは、ピストン77が回転軸40へ向けて付勢されない。このため、必要時以外は、付勢装置76による回転軸40の回転フリクションを軽減することができる。
<第3実施形態>
次に、この発明の排気還流弁をエンジンシステムに具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、EGR弁25に対するEGR通路22の接続方向の点で第1実施形態と構成が異なる。図11に、全閉状態のEGR弁25を図6に準ずる断面図により示す。図11に示すように、この実施形態では、EGR弁25の流路36に対するEGR通路22の接続方向が、第1実施形態と逆向きになっている。すなわち、図11において、弁座38より上の流路36が「吸気側」となり、弁座38より下の流路36が「排気側」となっている。この場合、流路36の吸気側にて弁体39と回転軸40の先端部が配置されると共に、弁体39が弁座38に着座可能に設けられる。
ここで、図11に示すように、このEGR弁25には、弁体39が弁座38に着座する全閉状態において、流路36の吸気側が負圧となり排気側がほぼ大気圧となる場合がある。また、EGR弁25の全閉状態において、エンジン回転速度が高くなり流路36の排気側の排気圧力が吸気側の吸気圧力より高くなる場合がある。この場合に、各軸受47,48でのガタの分だけ弁体39が弁座38から浮き上がり、排気が流路36の吸気側へ洩れ、吸気通路2へ流れるおそれがある。排気が吸気通路2へ流れると、エンジン1が燃焼不安定になったり、アイドル回転速度が不安定になったり、出力不足になったりするおそれがある。そこで、この実施形態のEGR弁25では、全閉状態において、弁体39を弁座38に押圧するために、回転軸40をその直径方向に付勢する付勢装置71が設けられる。
以上説明したこの実施形態の構成によれば、EGR弁25の全閉時に、付勢装置71により、回転軸40がその直径方向に付勢される。従って、流路36の吸気側と排気側との間で、弁体39を弁座38から離間させようとする圧力(吸排差圧)が弁体39に作用しても、弁体39が弁座38に押圧されて弁座38に密着する。このため、全閉時に弁体39の弁座38からの浮き上がりを防止することができ、弁体39と弁座38との間からの排気の洩れを防止することができる。この結果、排気が吸気通路2へ流れて、エンジン1が燃焼不安定になったり、アイドル回転速度が不安定になったり、出力不足になったりすることを防止することができる。
また、この実施形態の構成によれば、流路36の吸気側にて弁体39と回転軸40が配置されると共に、弁体39が弁座38に着座可能に設けられる。従って、全閉時には、流路36の吸気側に作用する過給圧が、弁体39が弁座38に着座する方向に作用する。このため、流路36の吸気側に作用する過給圧を利用し、全閉時におけるEGR弁25でのEGRガスの漏れを効果的に防止することができる。また、全閉時には、弁体39と回転軸40がEGRガスに曝されない。このため、EGRガス中の異物が、回転軸40に付着したり、回転軸40と弁ハウジング45との間に侵入したりすることを極力防止することができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
(1)前記第1及び第3の実施形態では、スプリング72と回転軸40との間に接触部材としてボール73を設けたが、接触部材を、回転軸との接触面が球面をなす円柱状に形成することもできる。接触面を球面にすることで、接触部材を回転軸と点接触させて回転軸の回転フリクションを軽減することができる。
(2)前記第2実施形態では、付勢装置76に、ピストン77に加えてボール73を設けたが、このボール73を省略することができる。この場合、ピストンの回転軸と接触する端面を球面にすることで、ピストンを回転軸と点接触させることができる。点接触とすることで、回転軸の回転フリクションを軽減することができる。
(3)前記第2実施形態では、圧力供給通路78をEGR弁25の弁ハウジング45に対して外装したが、この圧力供給通路を弁ハウジングに内装することができる。すなわち、弁ハウジングに圧力供給通路を形成することができる。この場合、圧力供給通路のEGR弁からの張り出しを無くすことができる。