JP6587198B1 - コンクリート塀のフェイルセイフ構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のコンクリートブロック11,12を並べて形成されたコンクリート塀である。隣り合うコンクリートブロック同士は接合部材13により接合される。地震などで大きな外力がコンクリートブロックに作用した場合、接合部材は設定強度までは隣り合うコンクリートブロック同士を接合するが、設定強度以上の外力(せん断力)が作用した場合、接合部材が破断するか、コンクリートブロックから離脱する。接合部材として金属製帯板の両端部をブロックに締結し、その中間部に切り欠きを形成した脆弱部とする。
【選択図】図1
Description
一方、直方体ブロックの積層壁ではなく、L型のコンクリ−トブロック製品を複数個連続して並べて構築したコンクリート塀が提案されている。各L型コンクリートブロックは、その横方向の長さが2mの製品であるため、地震の横揺れなどについては上記積層ブロック塀よりは強度的に有利であり安全である。
この場合、L型コンクリートブロックを横一列に配してコンクリート塀を構築するが、これらコンクリート製品(L型コンリートブロック)同士の連結は、接合金具により行われることとなる。
従来、この種のコンクリートブロック同士の連結には、ジョイント金物が使用され、強固に連結されている。ジョイント金物としては、特許文献1に示すように、プレート金具、L型金具、くの字型金具が使用されている。この接合金具は、通常以下の役割を有する。すなわち、施工時に水平力が作用してもコンクリートブロックが動かないようにすること、および、ごく少量の地盤沈下時に多少耐えることである。
すなわち、これらの接合金具により隣り合うコンクリートブロック同士が強固に連結されることとなるため、コンクリート塀として複数のブロックが強固に連結された(一体化された)構成となり、地震発生により横方向、つまりコンクリート塀の延在する方向に対して横方向の外力(水平力)が作用した場合、コンクリート塀全体としてうねりのような現象が生じて塀全体が一時に倒壊するおそれが大であった。すなわち、共倒れのおそれが生じており、安全性について大きな懸念事項となっていた。
例えばコンクリート塀の延在方向の地盤強度が一定ではない場合、地震発生時に作用する外力が地盤の弱い部分のコンクリートブロックでは大きな揺れを発生させ、これがコンクリート塀の全体に拡大されることがある。強固に連結されて一体化されたコンクリート塀では、地震の揺れを全体に拡大させるばかりではなく、その一部が転倒するときコンクリート塀全体が転倒することとなる。
コンクリートブロック同士を接合して構築されたコンクリート塀は、直方体ブロックを積み重ねた既設のブロック塀に対してその重量が大であることから、このような共倒れ現象についてはその可能性が大となっているのである。
上記接合部材としては、例えば金属製の帯板材があり、この帯板材は、作用するせん断力によりその一部が破断される構成(例えば切り欠き付きの鉄板)とすることができる。この場合、帯板材の一端部が隣り合うコンクリートブロックの一方に、その他端部が残りの他方にそれぞれ固着される構成とすることができる。コンクリートブロックへの固着は、インサートボルトおよびナット、インサートナットおよびボルトなどを使用することが一般的である。この場合は、インサートボルト、ナット、鉄板を含めて接合部材が構成されることとなる。接合部材の設置位置は後述するかかと部、設計施工状況によってはつま先部を含むことができる。
接合部材における脆弱部とは、接合部材の本体よりもせん断強さが小さく、せん断力が作用したとき、帯板状の本体で最初に破断する部分である。地震などによる外力が作用したとき、その外力、せん断力が設計値を越えるとき、例えばコンクリートブロックが倒れるような外力が作用したとき、この脆弱部から破断することで、隣のコンクリートブロックが共倒れすることを阻止することができる。ひいては、多数のブロックが連続して形成されたコンクリートブロック製のコンクリート塀全体の倒壊を一部の倒れのみで抑えることができ、災害発生時の安全性向上に寄与する。
また、金属製帯板であるジョイント金物にあっては、脆弱部を切り欠きで構成するため、その加工などにおいてきわめて便利である。また、切り欠き深さなどの変更により、破断するせん断強さのデザインが容易である。
また、切り欠きに限られず、例えば中間部のうちの脆弱部の板厚を他の部分(両端部、ブロックへの固着部や、脆弱部を除く中間部)よりも薄く形成し、この部分(脆弱部)からの破断が起こるように設計することもできる。
なお、上記コンクリートブロックの一例として使用されるL型コンクリートブロック(逆T字型ブロックでもよい)は,垂直部(縦壁)と水平部(底壁)とを有し、側方視してL字形状となっている。このブロックについては、工場生産するものとする。設置は、現場にて行われるが、複数のブロックを隣り合わせて列状に配置し、水平部は土石で埋没されることが多い。このL型ブロックの背面においてその垂直部(縦壁)の下端部がかかと部である。このかかと部同士を接合部材であるジョイント金物、特に脆弱部を有する金物で連結、接合する。ジョイント金物の両端部は例えば埋め込みボルト、インサートなどの締結部材により強固に連結、固定される。このとき、中間部は締結部材による固定部位から離れている。なお、このジョイント金物については1個の使用、複数個の使用も考えられる。いずれの場合でも隣り合うL型コンクリートブロック同士を接合することとなる。設計値までの外力、せん断力に対してはこれらのブロック同士は一体として強固に支え合うこととなる。金具の材質はステンレス板、またはメッキした金属板が好ましい。地中に埋められるため、その腐食を回避するためである。
帯板材の一部に脆弱な部分をあらかじめ形成しておく。この部分から破断することでブロック同士の接合は解除される。脆弱な部分としては例えば切り欠きなどとする。もしくは、全体を薄板で形成し、外力に対してその帯板材の全体をその締結部分よりも脆弱な構成とする。
締結部材とは、上述したブロックに埋設したインサートナット、ボルトなどがある。かかと部は横方向に作用する外力による応力が集中する部分となる。この場合のかかと部は、L型コンクリートブロックの縦壁を脚に、その底壁を足に想定した場合、縦壁の下端部(外面)が該当することとなる。なお、底壁の先端部がつま先部とされる。
地震時の水平力がかかった場合壁体はL型形状のかかと部分を中心とし回転転倒しようとする。このとき、かかと部の連結金具(接合金具)には捻りの力が働く。
壁体を固定するための連結金具であれば、連結箇所は壁体頂部、つま先部、かかと内側と、どのようにでも選ぶことは可能である。しかし、フェイルセイフ金具の場合は最も大きなテコの力が加わる(言い換えると回転力を支える力が弱いのは)のはかかと部であり、フェイルセイフ金具を設置するのはかかと部が最も有利、有効である。
転倒モーメントの働きにくい土砂設置の圧力などによる壁体の移動は、特に埋め戻し初期、つまりL型の壁体を下に押し付ける土砂が少ないときであり、壁体が回転する力よりも、水平に押される力のほうが大きい。
この場合、かかと、壁頂部、つま先部にかかる力は大きな違いがない。
そのため、通常のがっちり固定する連結金具ではどのような場所でも、差異がないが、フェイルセイフ金具では転倒時の最も大きな力のかかるかかと部分に設置するのが最も合理的である。
仮に壁頂部の場合、回転モーメントのかかる転倒時には大きな力がかかりにくいため、水平力と回転力の差が小さくなり、設計が困難となる。
言い換えると、かかと部分同士の連結であれば施工時に必要とされる水平力と、転倒時の回転力に差をつけることが可能なため、ゆとりのある設計とすることができる(十分な水平固定力と不十分な回転力保持)。
また、接合部材を金属製帯板で構成したため、脆弱部の形成についても例えばパンチング加工などにより容易に製造することができる。
さらに、コンクリートブロック同士の接合においてそのかかと部に接合部材を配置したため、地震などによる外力、曲げモーメントが最大値として作用する部分にて、そのジョイント金物が破断するため、より確実にこれらブロック同士の分離を図ることができ、安全性の向上に視することとなる。背面の上部に金物を配置するよりも大きなせん断力がかかと部にて作用するからである。複数のコンクリートブロックが接合された塀の塀全体の共倒れを防止することが容易となる。
これらのL型ブロック11,12はその側面同士を接触させて配置され、それらの縦壁部111,121により直線状に延びる所定高さの塀の一部を構築するものとする。
これらのL型ブロック11,12の縦壁部111,121の背面(矩形の面)同士は略平坦な垂直面を形成するが、これらの縦壁部111,121の背面の隣り合うかかと部(背面の下端部のコーナ部)同士はジョイント金物13により接合されている。すなわち、これらのかかと部には埋設されたインサートナットを有し、帯板状のジョイント金物13の両端部が、それぞれのインサートナットに一対のボルトを締め込むことにより、このジョイント金物13がL型ブロック11,12に掛け渡された状態で固着されている。
図3には、このジョイント金物13を示す。このジョイント金物13は、ステンレス製などの所定長さの帯板で形成されており、その両端部131,132は台形状で、その中間部133は細いくびれ形状とされている。このくびれ部分が脆弱部133を構成することとなる。すなわち、同一材質、同一厚さのステンレス板の幅においては、その両端部131,132が大であり、その中間部である脆弱部133が小となるように作製(打ち抜き加工)されている。その結果、せん断強さに関しては幅小の脆弱部(長さ方向の中間部)133が小さく、幅大の両端部131,132が大きくなっている。なお、これらの両端部131,132にはボルト挿通用の孔131A,132Aがそれぞれ形成されている。
この場合、隣り合うL型ブロック11,12同士の接合は、そのかかと部にジョイント金物13を配置してその両端部を締結部材により各ブロック11,12に締結・固着する。詳しくはブロック11のかかと部のインサートナットにねじ込む一対のボルトが金物13の一端部131の孔131Aを挿通し締め付けられる。同じくブロック12についても孔132Aを挿通してボルトをインサートナットにねじ込むことにより他端部132はかかと部背面に固着される。
これらの結果、ジョイント金物13は垂直な縦壁背面の最も下の位置に固着されて、コンクリートブロック同士を接合することとなる。そして、この接合部材であるジョイント金物13は後に土砂などで覆われる。外観は、複数のコンクリートブロックによるブロック塀はその背面が平坦平滑面として認識できることとなる。景観において優れた効果を発揮する。
この脆弱部はそのせん断強さがその他の部分よりも小さいこととする。
また、ジョイント金物の取り付け位置は、かかと部だけではなく背面の上側部分などに設置することも可能である。
かかと部に設置すると、ブロックの倒壊の動きをいち早く検知して破断し、ブロック同士の連結を切り離し、この後は、それぞれが独立したブロックとして外力を受けることとなる。
13 ジョイント金物(接合部材)、
131,132 両端部、
133 脆弱部。
Claims (3)
- 隣り合うコンクリートブロック同士が接合部材を介して接合されることにより、複数のコンクリートブロックが連結されてコンクリート塀を構築するとともに、
上記コンクリートブロックの一つを介してその接合部材に、コンクリート塀の設計値以上の外力が作用するとき、この接合部材が破断することにより、または、この接合部材が少なくともいずれか一方のコンクリートブロックから離脱することにより、外力が作用するコンクリートブロックが転倒し、コンクリート塀全体が一体となって共倒れすることを防止するコンクリート塀のフェイルセイフ構造。 - 上記接合部材は、帯板材で構成され、この帯板材は金属製または樹脂製で上記外力によりその一部が破断される請求項1に記載のコンクリート塀のフェイルセイフ構造。
- 上記コンクリートブロックは、L型コンクリートブロックであり、
上記帯板材は、その一端部が上記隣り合うコンクリートブロックにおける一方のコンクリートブロックのかかと部に、その他端部が他方のコンクリートブロックのかかと部にそれぞれ締結部材により固着された請求項2に記載のコンクリート塀のフェイルセイフ構造。
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