本実施の形態においても、図5を用いて説明した、一般的な横型ダイカストマシン及び同ダイカストマシンを使用するアルミニウム製品の鋳造方法に基づいて、本発明に係る、流量制御弁の異常検出方法について説明する。金型装置及び射出装置は、図5に示す一般的なダイカストマシンと同様であるが、射出装置の射出シリンダに流入させる、あるいは同射出シリンダから流出させる作動油の油量を制御させる流量制御弁の異常検出方法に特徴を有する。
図1は、本願発明に係る、流量制御弁の異常検出方法について説明するための、射出装置の油圧回路を示している。射出シリンダ10のヘッド室10Hは、射出切替バルブ18を介して、射出用アキュムレータ14に流路接続している。射出用アキュムレータ14の内部は、ピストンによって油室とガス室に仕切られており、ガス室はガスボトル17と流路接続されている。ガスボトル17には圧縮された窒素ガスが封入されており、圧縮された窒素ガスが膨張するときのエネルギーを利用することにより、射出用アキュムレータ14の油室内の作動油を、一気に射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、高速射出が可能となる。
また、ヘッド室10Hへの流路(配管)は、途中で分岐されて、絞り弁21と増圧切替バルブ19とを介して増圧用アキュムレータ15とも流路接続されている。増圧アキュムレータ15も、内部はピストンによって油室とガス室に仕切られており、増圧用アキュムレータ15の油室内の作動油を、絞り弁21を介して射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、昇圧・保持工程における高い射出圧力(増圧力)の維持が可能となる。
さらに、ヘッド室10Hへの流路(配管)は、途中で分岐されて、低速前後進切替バルブ20とも流路接続されている。低速前後進切替バルブ20は、作動油タンク24及びチェックバルブ23を介して油圧供給装置22とも流路接続されている。よって、ソレノイドaを励磁させる(図1において同バルブの流路接続が同バルブ記号右側に図示された状態になる)と、射出シリンダ10のヘッド室10H内の作動油を作動油タンク24に戻す(射出シリンダ10のピストン12の後退時)ことができ、またソレノイドbを励磁させる(図1において同バルブの流路接続が同バルブ記号左側に図示された状態になる)と、油圧供給装置22からの作動油をヘッド室10Hに供給させる(低速射出工程時)ことができる。
尚、射出シリンダ10のヘッド室10Hへ供給させる作動油の供給源を、射出用アキュムレータ14(射出充填工程)から増圧用アキュムレータ15(昇圧・保持工程)へと切り替えさせるタイミングが非常に重要なため、流路(管路)における上・下流の圧力差や、外部からの電気信号等で、これを適宜切り替えることが可能な射出・増圧切替弁(方向切替弁)を、それぞれのアキュムレータの切替バルブ(及び絞り弁)以降のヘッド室10Hまでの流路に配置させて、作動油の供給源を切り替えさせることが一般的である。しかしながら、このような射出・増圧切替弁は、本願発明には直接関係はない。また、説明を簡単にするために、このような射出・増圧切替弁の詳細な説明及び図1への図示は割愛している。
射出シリンダ10のロッド室10Rは、サーボモータ33でスプール(弁体)35を移動させる流量制御弁(サーボバルブ)16と流路接続されている。流量制御弁16は作動油タンク24及びチェック弁23を介して油圧供給装置22と流路接続されている。射出シリンダ10のピストン12の前進中は、流量制御弁16によりロッド室10Rと作動油タンク24とが連通される(図1において同弁の流路接続が同弁記号左側に図示された状態になる)ようにスプール35を移動させ、メータアウト制御で、弁内流路の開度を高精度に制御させることにより、高速射出速度を制御させることができる。また、流量制御弁16によりロッド室10Rと油圧供給装置22が連通される(図1において同弁の流路接続が同弁記号右側に図示された状態になる)ようにスプール35を移動させると、油圧供給装置22からの作動油の供給により射出シリンダ10のピストン12を後退させることができる。
油圧供給装置22は、ポンプ、可変圧力制御弁、可変流量制御弁、電気モータ等から構成されており、所望の圧力及び流量で作動油を供給可能で、低速射出工程における射出シリンダ10のピストン12の後退動作や、後述する射出準備工程における同シリンダのピストン12の後退動作や、射出用アキュムレータ14及び増圧用アキュムレータ15の油室への、所定の圧力での作動油の供給(蓄圧/チャージ)を行なわせることができる。また、ピストン12には射出ストロークセンサ26の可動部が取付けられており、ピストン12の位置及び速度を測定可能で、測定信号を図示しない制御装置に送りフィードバック制御に利用される。射出圧力の測定は、射出カップリング9(図5)の中に配置させたロードセルや、射出シリンダ10のヘッド室10H及びロッド室10R内の作動油の圧力を測定可能な圧力センサによって行なうことができる。いずれも図示は省略している。
次に、図2を用いて流量制御弁16の構造等について説明する。流量制御弁本体30の中には、段付き円柱形状のスプール(弁体)35が軸方向(図2の左右方向)に移動可能に配置されている。流量制御弁本体30の右側には、運動変換機構31とカップリング装置32が取付けられており、さらにサーボモータ33が装着されている。サーボモータ33の回転軸の回転運動は、カップリング装置32によって運動変換機構31に伝達され、そこで連結ロッド51の直進運動に変換されて、連結ロッド51に連結されたスプール35を軸方向に移動させる。サーボモータ33の回転軸にはエンコーダ34が取付けられており、サーボモータ33の回転軸の回転量(回転角度)を検出できる。
サーボモータ33とエンコーダ34とは、図示しない制御装置と電気的に接続されており、同制御装置の指令によってサーボモータ33を回転させてスプール35を移動させ、また、エンコーダ34の検出信号からスプール35の位置を検出させて、スプール35の位置制御や移動速度制御のフィードバック制御に利用される。さらに、同制御装置は、ダイカストマシンの図示しない表示装置とも電気的に接続され、流量制御弁16の異常が検出された場合は、同表示装置に異常を表示して、あるいはブザーや動作表示灯等でオペレータに警告する。
流量制御弁本体30の内部には、スプール35が配置されるとともに、外部と流路接続される空間部が設けられている。空間部には、シリンダ接続ポート42を介して射出シリンダ10のロッド室10Rと連通するシリンダ側大径部46、油圧供給装置接続ポート43を介して油圧供給装置22と連通する油圧供給側大径部45、及びタンク接続ポート41を介して作動油タンク24と連通するタンク側大径部47が形成されている。シリンダ側大径部46と油圧供給側大径部45との間に形成された油圧供給側小径部30cには、油圧供給側スプール太径部35bが僅かな隙間をもって摺動可能な状態で嵌合されており、シリンダ側大径部46と油圧供給側大径部45との間の作動油の連通を阻止している。また、シリンダ側大径部46とタンク側大径部47との間に形成されたタンク側小径部30bにも同様に、タンク側スプール太径部35aが僅かな隙間をもって摺動可能な状態で嵌合されており、シリンダ側大径部46とタンク側大径部47との間の作動油の連通を阻止している。
スプール35の両端には太径部が形成されており、流量制御弁本体30の内径部と僅かな隙間で嵌合することによって、作動油の外部流出を阻止している。一方、スプール35において、両端の太径部、タンク側スプール太径部35a、油圧供給側スプール太径部35cの間は細径になっており、作動油が流れる空間となっている。また、スプール35の両端の太径部のさらに両端には、スプール35を軸方向に移動させるための、空間部に連通するスペースが確保されている。万一、流量制御弁本体30の内径部とスプール35の両端の太径部との間の僅かな隙間から、このスペースに作動油が漏れたとしても、その量は微少であり、同スペースに形成された作動油タンク24に連通される流路から作動油タンク24に戻されるため、スプール35の移動に問題はない。
図2におけるスプール35の位置は、タンク接続ポート41とシリンダ接続ポート42と油圧供給装置接続ポート43とが、それぞれタンク側スプール太径部35aと油圧供給側スプール太径部35bにより遮断されている全閉位置であり、スプール35の0点位置(全閉状態)である。この状態からサーボモータ33により、スプール35を右側に動かすとタンク側スプール太径部35aがシリンダ側大径部46の内側に移動され、タンク接続ポート41とシリンダ接続ポート42とを連通させる流路が形成されて、射出シリンダ10のロッド室10Rの作動油が作動油タンク24に戻される。また、スプール35を左側に動かすと油圧供給側スプール太径部35bがシリンダ側大径部46の内側に移動され、油圧供給装置接続ポート43とシリンダ接続ポート42とが連通される流路が形成されて、射出シリンダ10のロッド室10Rに油圧供給装置22から作動油を供給させることができる。
また、スプール35を左右に移動させて、油圧供給側スプール太径部35b及びタンク側スプール太径部35aを、それぞれシリンダ側大径部46の内側へどのくらい移動させるか(移動量/移動距離)によって、連通されるそれぞれの流路に流動される作動油の流動断面積(弁の開度)が決定され、流量制御弁16内を流動させる作動油の流量制御を自在に行なうことができる。
図3は、流量制御弁16の運動変換機構31とカップリング装置32の内部構造を示す。
運動変換機構31の変換装置ケース54は、流量制御弁本体30の右側に固定されており、その内部にはボールねじ軸57が、軸受け58と押さえナット59によって、軸方向に拘束された状態で回転自在に支持されている。ボールねじ軸57と螺合するボールねじナット56は、連結ロッド51を介してスプール35と連結されている。連結ロッド51は、流量制御弁本体30の右側に固定されたガイドブッシュ固定板52に組み込まれているガイドブッシュ53に、摺動可能な状態で嵌合されている。そのため、ボールねじナット56は、回転が拘束された状態で軸方向に移動可能に支持されている。尚、ガイドブッシュ固定板52のスプール35側の端面は、図2の右側における、スプール35の機械的移動限位置である、前進側端面30dとなるように構成されている。
また、運動変換機構31の変換装置ケース54の右側には、カップリング装置32のカップリングケース60が固定されており、さらにその右側にはサーボモータ33が固定されている。サーボモータ33の回転軸は、カップリング62によってボールねじ軸57と連結されており、サーボモータ33を回転させるとボールねじ軸57が回転される。
よって、図示しない制御装置からサーボモータ33に所定の回転量(回転角度)の回転指令信号を与えることにより、サーボモータ33の回転軸とカップリング62とボールねじ軸57とが所定の回転量だけ回転され、その回転量に準じた距離だけ、ボールねじナット56と連結ロッド51とスプール35とを一体で左右に移動させることができる。
このように、サーボモータ33に適切な回転指令信号を与えて、スプール35を適切な位置に移動、あるいは移動位置を保持させることにより、流量制御弁16の開閉動作や開度調整を自由に行なうことができる。
尚、サーボモータは、一般的に回転軸の回転量を検出するエンコーダや同等の機能を有する検出機構がサーボモータ自体に内蔵されたものが多く、上記のようなエンコーダ34をサーボモータ33の回転軸に取り付ける必要がない場合がある。そのような場合、図示はしていないが、変換装置ケース54、あるいはカップリングケース60内において、プーリー及びベルト等の回転伝達機構でボールねじ軸57の回転を別に設けた回転軸に同期させ、その別に設けた回転軸にエンコーダを配置させて、ボールねじ軸の回転量を検出させても良い。このように、サーボモータ及びボールねじ軸(運動変換機構)のそれぞれの回転軸の回転量が個別に検出可能な形態の場合、双方の回転量を比較することにより、例えば、カップリング装置32のカップリング62に生じた緩みや、ボールねじ軸57及びボールねじナット56間の摺動部の磨耗の進行により、サーボモータ及びボールねじ軸のそれぞれの回転軸の回転量の不一致を流量制御弁の運動変換機構の異常として検出させてもよい。
次に、このような構成された横型ダイカストマシンの射出装置の油圧回路に採用される流量制御弁を前提にして、図4他を用いて、本発明に係る、流量制御弁の異常検出方法を説明する。
図4は、本実施の射出充填工程における、射出シリンダ10のピストン12の位置、射出速度及び射出圧力等時間変化、並びにその際のピストン12の動作、各弁やバルブの作動状態を表わすグラフである。Pmは設定保持圧力、Pm’は設定切替圧力を示す。低速射出工程は、時間t0〜t1間であり、高速射出工程は、時間t1〜t2間、昇圧保持工程の昇圧工程は、時間t2〜t3間、保持工程は、時間t3〜t4間である。尚、図4に示す流量制御弁16の作動状態は、流量制御でない(開度制御を行っていない)場合、実際には、スプール35の移動時間を含み、弁の開放・閉止を示す線が、斜め(あるいは曲線)に表示される場合であっても、流量制御である場合と区別するために、他の切替バルブと同様に垂直に表記している。
まず、射出充填工程に入る前に、射出用アキュムレータ14と増圧用アキュムレータ15の蓄圧、及び型締め動作を完了しておく。そして、溶解炉で溶融状態となったアルミニウムの溶湯を図示しない給湯装置等でスリーブ6内へ注湯する。その後、溶湯の温度が下がらないよう、速やかに射出充填工程を開始する。
射出充填工程の開始時(低速射出工程)において、全ての弁やバルブを閉止させた状態から、低速前後進切替バルブ20のソレノイドbをON(励磁)する(図1において同バルブの流路接続が同バルブ記号左側に図示された状態になる)とともに、流量制御弁16をロッド室10Rと作動油タンク24とが連通する(図1において同弁の流路接続が同弁記号左側に図示された状態/図2においてスプール35が右側に移動された状態になる)ように一定開度で開く。この状態において、油圧供給装置22からの作動油を、低速前後進切替バルブ20を経由させて射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させると、射出シリンダ10のロッド室10Rの作動油が作動油タンク24に戻され、ピストン12を低速で前進させることができる。低速射出工程では、所望の射出速度(0.2〜0.5m/sec程度)になるように、流量制御弁16の油圧供給装置22側への一定開度を前提にして、作動油の供給量(必要されば圧力も)が、油圧供給装置22側において調整される。
本実施例における低速射出工程は、油圧供給装置22からの作動油の供給量によって、射出シリンダ10のピストン12の前進速度を制御させている。一方、油圧供給装置22からの作動油の供給ではなく、射出切替バルブ18を開放させて、射出用アキュムレータ14からの作動油を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させると共に、流量制御弁16により、射出シリンダ10のロッド室10Rから流出させる作動油の流量を制御するメータアウト制御にて、ピストン12の前進速度を制御させることも可能である。
そして、射出ストロークセンサ26により、射出シリンダ10のピストン12が高速射出切り替え位置に達したことを検出すると(t1)高速射出工程へ移行させる。具体的には、射出切替バルブ18を開き、射出用アキュムレータ14に所定の圧力で蓄圧された作動油を、射出シリンダ10のヘッド室10Hに一気に供給させる。この時、流量制御弁16により、射出シリンダ10のロッド室10Rから流出させる作動油の流量を制御するメータアウト制御にて、ピストン12の前進速度を制御させて、低速(0.2〜0.5m/sec程度)から高速(4〜5m/sec)まで瞬時に加速させた後、その前進速度を安定して維持させる。高速射出工程では、プランジャチップ7を高速で前進させ、金型キャビティ5内で溶湯が凝固を始める前に短時間で充填させる。尚、上記で示した低速及び高速の実数値は、それぞれの速度の程度や差異を示すために例示したものであり、ダイカストマシンのサイズや、ダイカストマシンメーカーにより、これら低速や高速の定義は異なる。
本実施例においては、金型キャビティ5内が溶湯で満たされて溶湯圧力が上昇し、対応するように上昇する射出圧力の測定値が、設定切替力(Pm´)に達したことが検出されると、昇圧・保持工程に切り替えさせる(t2)。先に説明したように、この切り替えを、射出シリンダ10のピストン12が設定切替位置に達した時点で行なわせても良い。図4は射出圧力によって切り替えられる様子を示し、圧力センサまたはロードセルで射出圧力の測定値を監視させながら、設定切替圧力(Pm’)に達した瞬間に昇圧・保持工程への切り替えが行われている。
昇圧・保持工程の昇圧工程(増圧工程)への切り替え時において、射出切替バルブ18を閉じるとともに増圧切替バルブ19を開く。すると増圧用アキュムレータ15に蓄圧された高圧の作動油が、絞り弁21を介して射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される。この時、金型キャビティ5内の溶湯圧力の昇圧(速度)が早すぎると、金型の合わせ面からバリ吹きが発生し、また遅すぎると、アルミニウム製品に鋳巣(引け巣)が発生する。そのため、射出条件を決定する試験鋳造等の際、適度な昇圧時間(t2からt3間)で射出圧力を上昇させるように絞り弁21の絞り量を予め調節させておく。また、t3以降、射出圧力が設定された保持圧力(Pm)でサチュレートするように、増圧用アキュムレータ15の図示しないガスボトルへ封入させるガスの封入圧力も予め調整させておく。
昇圧・保持工程においては、金型キャビティ5内が溶湯で満たされているため、射出シリンダ10のピストン12の前進(前進量及び前進速度)は、金型キャビティ5内の溶湯の凝固収縮(凝固収縮する容積の単位時間当たりの減少量)に制約される。そのため、流量制御弁16の開度を制御させて、射出シリンダ10のピストン12の前進速度を制御させず、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される作動油の圧力(増圧力)に任せて、ピストン12の前進動作を金型キャビティ5内の溶湯の凝固収縮に追従させる。すなわち、射出シリンダ10のロッド室10R側に背圧を発生させず、ヘッド室10Hの作動油の圧力が、金型キャビティ5内の溶湯に直接付与される(メタル圧)ように、流量制御弁16の作動油タンク24側への開度を略全開状態にさせる。このようにして、溶湯の凝固収縮に対して、射出シリンダ10のピストン12が前進する分だけ作動油をヘッド室10Hに供給させてピストン12を前進させて、保持圧力(Pm)を維持させる。
ここで、流量制御弁16の作動油タンク24側への開度を略全開状態にさせるために、流量制御弁16のスプール35は、図2に示される0点位置より右側の、射出充填工程の高速射出工程完了時におけるスプール35の位置からさらに右側に移動される。本実施例においては、図2の状態(0点位置)からスプール35を右側にXmm移動させると、スプール右側端面35dと、流体制御弁本体30の空間部の前進側端面30dとが当接し、機械的移動限(位置)となるよう構成されている。この機械的移動限位置は、流量制御弁16の、射出シリンダ10のロッド室10Rと作動油タンク24とを連通させた状態における最大開度であって、スプール35をこの位置まで移動させても、射出シリンダ10のロッド室10R及び油圧供給装置22間が連通される虞はない。この機械的移動限位置(前進側端面30d)へのスプール35の到達は、サーボモータ33のエンコーダ34によって検出されるよう構成されている。本実施例においては、図3に示すように、ガイドブッシュ固定板52のスプール35側の端面が前進側端面30dとなるように構成されているが、図2右側へのスプール35の機械的移動限の形態はこれに限定されるものではない。
また、本実施例においては、射出シリンダ10のロッド室10R側に配置された流量制御弁16による、ロッド室10R側から流動される作動油の流量を制御することにより、高速射出工程におけるピストン12の前進速度をメータアウト制御させている。そのため、流量制御弁16は、高速射出工程等において、ピストン12の前進速度の制御の際、作動油タンク24側への開度を全開状態にする必要がないように構成されており、流量制御弁16のスプール35の移動の一方の側の、前進側端面30dへの当接を、通常の流量制御において当接させることがない機械的移動限(位置)とすることができる。
昇圧・保持工程の説明に戻る。昇圧・保持工程に切り替え後、流量制御弁16の作動油タンク24側への開度を略全開状態にさせるタイミングは、増圧切替バルブ19を開くタイミングと略同時で良い。流量制御弁16の開度を略全開状態にさせるタイミングと増圧切替バルブ19を開くタイミングとが多少前後したとしても、射出シリンダ10のピストン12の前進が制約されているため、ロッド室10Rから流量制御弁16に流入される作動油の量は少量であり、流量制御弁16の開度を略全開状態にさせるために、スプール35を、高速射出工程完了時におけるスプール35の位置から図2における右側への機械的移動限位置(前進側端面30d)まで移動させる間、スプール35に大きな流体力が作用する虞はない。
このような、昇圧・保持工程における、流量制御弁16の、射出充填工程の高速射出工程完了時におけるスプール35の位置から右側への機械的移動限位置(前進側端面30d)までの移動動作をスプール原点確認工程R2とする。このスプール原点確認工程R2は、後述するスプール原点確認工程L1のために、流量制御弁16が作動油タンク24側へ全開状態となるスプール35の移動の一方の側の、機械的移動限位置(前進側端面30d)まで、スプール35を移動させるための工程でもある。この機械的移動限位置(前進側端面30d)への到達後、その位置を予め設定された機械的移動限位置(前進側端面30d)の位置情報と比較させることが好ましい。また、射出シリンダ10のロッド室10R側に背圧をできるだけ発生させないために、射出充填工程の高速射出工程完了時におけるスプール35の位置から右側への前進側端面30dまでできるだけ早く移動させることが好ましい。
しかしながら、先に説明したように、このスプール35の移動動作の間、スプール35に大きな流体力が作用する虞がないため、射出充填工程の高速射出工程完了時におけるスプール35の位置から、右側の前進側端面30dまでの移動ストロークが、0点位置から右側への前進側端面30dまでの移動ストロークに対して、例えば、50%以上を占める割合のような比較的長い移動ストロークである場合、後述するスプール原点確認工程L2のように、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを監視させても良い。
昇圧・保持時間が完了すると(t4)、流量制御弁16を全閉状態にさせるために、流量制御弁16のスプール35を前進側端面30d(図2の右側)から左側へ0点位置まで移動させる。また、それとともに、増圧切替バルブ19及び低速前後進切替バルブ20も閉止させ、次の冷却工程へと移行させる。
このような、昇圧・保持工程における、流量制御弁16の、スプール35の前進側端面30d(図2の右側)から0点位置までの移動動作をスプール原点確認工程L1とする。そして、このスプール原点確認工程L1の間、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを監視させる。
このスプール原点確認工程L1は、流量制御弁16における流量制御とは関係なく、流量制御弁16を全閉状態にするためのスプール35の移動動作である。そのため、スプール原点確認工程R2と同様に、スプール35に大きな流体力が作用する虞はない。また、冷却工程においては、流量制御弁16をはじめ、作動油の流量やON−OFFのような制御は一切行われず、その間、スプール35の移動動作に供することができる時間的余裕がある。これらの状況により、スプール原点確認工程L1においては、鋳造サイクル上許容される範囲内で、低速で且つ低トルクでサーボモータ33を回転させ、スプール35を低速で機械的移動限位置(前進側端面30d)から0点位置まで移動させることが可能であり、且つ、好ましい。
何故なら、このサーボモータ33の低トルク回転時の回転トルクを基準にして、スプール35の動作不良の有無を判断させるサーボモータ33の回転トルクの上限値を予め低く設定させることができるからである。低く設定されるこの上限値により、ダイカストマシンによる鋳造サイクルの繰り返しによる、作動油の油温上昇に伴う弁本体及びスプールの熱膨張、あるいは、作動油へ混入した不純物(コンタミ)の弁本体内でのかみ込みや、経年変化等により発生する、スプール35の移動動作時の僅かな摺動(移動)抵抗の増加であっても、サーボモータ33の回転トルクの増加として、適切な上限値の設定により、スプール35の動作不良、すなわち、流量制御弁16の異常と判断させることができる。
具体的には、スプール35の移動動作において、スプール35を一定速度(低速)で移動させる速度制御を行わせる。そして、何らかの要因によって、スプール35の移動速度が遅くなった場合に、移動速度を維持させようとしてサーボモータ33の回転トルクを増加させる制御が行われるため、その回転トルクの増加を検出させ、設定させた上限値を超えるか否かでスプール35の動作不良、ひいては、流量制御弁の異常と判断させるものである。また、スプール35の動作不良を検出させるこの上限値とは別に、機械的移動限位置(前述した前進側端面30dや後述する後退側端面30a)へのスプール35の当接を、機械的構成が破損しない、且つ、正確に検出させるための、回転トルクの当接検出設定値が重要であることは言うまでもない。
実際には、スプール原点確認工程R2や後述するスプール原点確認工程L2において、スプール35をそれぞれの機械的移動限位置(前進側端面30dや後退側端面30a)まで移動させる場合、スプール35がこれら機械的移動限位置に到達する直前の位置に設定されるソフトリミット位置までスプール35を移動させた後、必要に応じて、さらに、スプール35の移動速度や、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを低下させて、これら機械的移動限位置へのスプール35の当接を検出させる。
一方、流量制御中の流量制御弁16のスプール35には、弁内を流動させる作動油の流量や圧力に比例する大きな流体力が作用する上、限られた時間内に、所定のタイミングと移動量でスプール35を移動・位置保持させるために、サーボモータ33において大きな回転トルクを発生させ、また、変動させなければならない。そのような状況下で、サーボモータ33の回転トルクを監視させ、予め設定される上限値超えでスプール35の動作不良の有無を判断させることは困難である。また、例え、何らかの基準に基づいて、サーボモータ33の回転トルクの上限値を設定させたとしても、上述したようなスプール35の移動動作時の僅かな摺動(移動)抵抗の増加を検出させることもが困難であることは言うまでもない。
鋳造サイクル中の、このようなスプール原点確認工程L1において行われる、サーボモータ33の低速で且つ低トルクでの回転によるスプール35の移動動作は、鋳造サイクル毎に、鋳造サイクルに影響を与えることなく、サーボモータ33の回転トルクの上限値越えとその位置の検出により、スプール35の動作不良の発生の判断とその発生位置を特定させる、本願発明に係る、流量制御弁の異常検出方法に好適である。
その後冷却時間が経過して、冷却工程が完了すると、金型装置101の型開き動作と連動させて、ピストン12及びプランジャチップ7を前進させて、アルミニウム製品を固定金型3から突き出させる。一般的に、金型は、金型キャビティ5内のアルミニウム製品が、型開き時に可動金型4側に保持されるよう設計される。しかしながら、金型キャビティ5の内面への離型剤塗布の不良や金型の温調不良による鋳造不良、あるいは、スリーブ6の内周面への離型剤塗布の不良等で、まれに、型開きの際、アルミニウム製品が固定金型3側からきちんと離型されなかったり、プランジャチップ7により直接押圧されるビスケット(分流子)部のみが固定金型3側から離型されなかったりして、型開き動作の進行により、アルミニウム製品が破損したり、金型を傷めたり、金型への製品残りが発生したりする。上述したピストン12の前進動作は、アルミニウム製品が、型開き時に可動金型4側に保持されてスムーズに固定金型3側から離型できるように、アルミニウム製品を、固定金型3からの離型を促す方向へ、ビスケット(分流子)部を介して押圧させる動作である。
この射出シリンダ10のピストン12を前進させる動作は、製品突き出し動作(製品突き出し工程)等と呼称され、アルミニウム製品を固定金型3からの離型を促す所定の離型力を確保するために、射出用アキュムレータ14を圧力源として行われる。一般的には、射出充填工程において、射出用アキュムレータ14の油室の作動油の多くが、射出シリンダ10のピストン12の前進のために消費されている(ヘッド室10H内へ供給されている)ため、射出充填工程完了後の冷却時間内に、油圧供給装置22から射出用アキュムレータ14の油室に作動油をチャージさせて、少なくとも、製品突き出し工程に必要な容量の作動油を必要な圧力で蓄圧させておく。その上で、具体的には、射出切替バルブ18を開放させて、射出用アキュムレータ14からの作動油を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させる。
そして、全閉状態の流量制御弁16を開き(図1において同弁の流路接続が同弁記号左側に図示された状態になる)、且つ、流量制御弁16の開度を制御させて、射出シリンダ10のロッド室10Rから流出される作動油の流量を制御させ、ピストン12の前進速度を、型開き動作と連動させるように制御される。そして、可動盤2の型開き動作とは関係なく、射出シリンダ10のピストン12が、製品突き出し工程における前進限位置に到達した後、射出切替バルブ18及び流量制御弁16を閉止させる。
尚、製品突き出し工程におけるピストン12の前進速度は、可動盤2の型開き速度に制約されるため、流量制御弁16の開度を一定の開度で固定させる場合が多く、ピストン12の前進速度が特に制御されない形態もある。そのため、製品突き出し工程における流量制御弁16によるピストン12の前進速度の制御は、実質的な流量制御ではないとみなせるため、図4においては、製品突き出し工程における、流量制御弁16の弁の開放・閉止を示す線を、他の切替バルブと同様に垂直に表記している。
続いて、ピストン12を射出開始位置まで後退させるため、流量制御弁16を油圧供給装置22側(図2においてスプール35が左側に移動された状態になる)に開くとともに、低速前後進切替バルブ20のソレノイドaを励磁させる。この状態で、油圧供給装置22から流量制御弁16を経由させて射出シリンダ10のロッド室10Rに作動油を供給させると、ピストン12を後退させることができる。そして、ピストン12が射出開始位置に到達すると、全てのバルブを閉止させる。
その後、射出用アキュムレータ14と増圧用アキュムレータ15への蓄圧を行なわせ、次の鋳造サイクルのための注湯工程及び射出充填工程への準備を完了させる。
ここで、上述した射出シリンダ10のピストン12を射出開始位置まで後退させる工程(射出充填準備工程)において、射出シリンダ10のロッド室10Rと油圧供給装置22とを連通させるために、流量制御弁16のスプール35は、図2に示す0点位置から左側に移動される。このときのピストン12の位置は、製品突き出し工程の完了時の位置(射出シリンダ10の製品突き出し工程における前進限位置)にある。そして、この射出充填準備工程においては、射出シリンダ10の射出開始位置まで、何ら外部負荷が付与されていない状態のピストン12を後退させれば良い。
また、ダイカストマシンでの鋳造サイクルにおいては、製品突き出し工程完了に引き続き、射出装置102の制御とは関係なく、その金型装置101外に配置された、図示しない製品取り出し装置等による可動金型4からのアルミニウム製品の製品取出工程や、型開き状態の金型間に図示しない離型剤塗布装置等を進入させての離型剤塗布工程等が行われる。これら、次の鋳造サイクルのための準備が行われるため、射出充填準備工程の完了後の、油圧供給装置22による射出用アキュムレータ14と増圧用アキュムレータ15への作動油の蓄圧(チャージ)を鑑みても、製品突き出し工程後の、射出準備工程における射出装置の制御に関しては、鋳造サイクル上、若干の時間的余裕がある。
そのため、射出充填準備工程におけるピストン12の後退動作の制御には、時間的な制約も少なく、高速射出工程における前進速度の制御精度は不要であり、また、高い圧力の作動油供給も不要である。従って、射出用アキュムレータ14や増圧用アキュムレータ15を圧力限として使用せず、油圧供給装置22側で、適切に流量及び圧力が設定された作動油を、射出シリンダ10のロッド室10Rに供給させて行われる。
すなわち、射出充填準備工程における、射出シリンダ10のピストン12の後退動作時に、流量制御弁16を油圧供給装置22側へ全開状態にさせることができる。具体的には、スプール35を0点位置から左側へ機械的移動限位置まで移動させる。この機械的移動限位置は、流量制御面16の、射出シリンダ10のロッド室10Rと油圧供給装置22とを連通させた状態における最大開度であって、スプール35を左側へこの位置まで移動させても、射出シリンダ10のロッド室10R及び作動油タンク24間が連通される虞はない。
本実施例においては、この機械的移動限位置が、流体制御弁本体30の空間部の後退側端面30aとして形成されている。図2の状態(全閉状態)からスプール35を左側にXmm移動させると、スプール左側端面35cと、流体制御弁本体30の空間部の後退側端面30aとが当接し、機械的移動限(位置)となるよう構成されている。
このような、射出充填準備工程における、流量制御弁16の、スプール35の0点位置から左側への機械的移動限位置(後退側端面30a)までの移動動作をスプール原点確認工程L2とする。そして、このスプール原点確認工程L2の間、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを監視させる。また、この機械的移動限位置(後退側端面30a)到達後、その位置を予め設定された機械的移動限位置(後退側端面30a)と比較されることが好ましい。
このスプール原点確認工程L2は、何ら外部負荷が付与されていない状態のピストン12を後退させるためのスプール35の移動動作であり、スプール原点確認工程R2と同様に、スプール35に大きな流体力が作用する虞はなく時間的余裕もある。そこで、スプール原点確認工程L1と同様に、鋳造サイクル上許容される範囲内で、低速で且つ低トルクでサーボモータ33を回転させ、スプール35を低速で0点位置から機械的移動限位置(後退側端面30a/図2の左側)まで移動させることが好ましい。
そして、射出充填準備工程を完了させるために、流量制御弁16のスプール35を機械的移動限位置(後退側端面30a/図2の左側)から右側へ0点位置まで移動させ、流量制御弁16を全閉状態とする。このスプール35の移動動作をスプール原点確認工程R1とする。そして、このスプール原点確認工程R1の間、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを監視させる。
このスプール原点確認工程R1も、スプール原点確認工程L1と同様に、流量制御弁16における流量制御とは関係なく、流量制御弁16を全閉状態にするためのスプール35の移動動作である。そのため、スプール原点確認工程R1においても、鋳造サイクル上許容される範囲内で、低速で且つ低トルクでサーボモータ33を回転させ、スプール35を低速で機械的移動限位置(後退側端面30a/図2の左側)から0点位置まで移動させることが好ましい。
これまで説明したように、流量制御弁本体30内のスプール35の移動動作において、説明上、一方の側に設けられた機械的移動限位置を後退側端面30a(図2の左側)とすると、スプール35を、スプール35の全閉止位置(図2に示す0点位置)及び、一方の側に設けられた機械的移動限位置間で移動させるスプール原点確認工程が、スプール原点確認工程R1(右行)及びL2(左行)であり、他方の側に設けられた機械的移動限位置を前進側端面30d(図2の右側)とすると、スプール35を、スプール35の全閉止位置及び、他方の側に設けられた機械的移動限位置間で移動させるスプール原点確認工程がスプール原点確認工程R2(右行)及びL1(左行)となる。
また、スプール原点確認工程R1及びR2を組み合わせると、スプール35の移動動作の右行の略全ストロークとなり、スプール原点確認工程L1及びL2を組み合わせると、スプール35の移動動作の左行の略全ストロークとなる。右行の略全ストローク中、図2に図示したスプール原点確認工程R2には、スプール35の移動ストロークに関して、低速射出工程における油圧供給装置22側への一定開度、及び、高速射出工程におけるピストン12の前進速度の制御中の開度分の移動ストロークを含んでいるものの、これらスプール原点確認工程L1、L2、R1において、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを監視させることにより、スプール35の移動動作中における動作不良を、左行の略全移動ストロークにおいて、且つ、一部(スプール原点確認工程L2及びR1)を往復で監視させることができる。
また、これらスプール原点確認工程L1、L2、R1及びR2において、スプール35の移動動作は、高速射出工程における前進速度の制御精度は不要であり、流量制御弁16における流量制御とは関係ない。また、スプール原点確認工程L1、L2、R1におけるスプール35の移動動作は、流量制御弁16の全閉状態と、いずれかの機械的移動限位置に到達させた全開状態とを、高圧の作動油の流動による大きな流体力がスプール35の移動に作用することもない状態で切り替えるだけの移動動作である。
そのため、これらのスプール原点確認工程においては、鋳造サイクル上許容される範囲内で、低速で且つ低トルクでサーボモータ33を回転させ、スプール35を低速で略全閉位置及び機械的移動限位置間を移動させることが可能であり、且つ、前述する理由において好ましい。また、先に説明したように、条件が許せば、移動速度が制約されるだけで、スプール35に大きな流体力が作用しないスプール原点確認工程R2においても、鋳造サイクル上許容される範囲内の速度で、且つ低トルクでサーボモータ33を回転させ、スプール35を、高速射出工程におけるピストン12の前進速度の制御中における位置から機械的移動限位置(前進側端面30d)間を移動させることが可能であり、その間、スプール35を移動させるサーボモータ33の回転トルクを他のスプール原点確認工程と同様に監視させてもよい。
鋳造サイクル中の、このようなスプール原点確認工程において行われる、サーボモータ33の低速で且つ低トルクでの回転によるスプール35の移動動作は、鋳造サイクル毎に、鋳造サイクルに影響を与えることなく、サーボモータ33の回転トルクの上限値越えとその位置の検出により、スプール35の動作不良の発生の判断とその発生位置を特定させる、本願発明に係る、流量制御弁の異常検出方法に好適であることはいうまでもなく、低く設定されるこの上限値(サーボモータ33の回転トルク)により、作動油の油温上昇に伴う流体制御弁本体30及びスプール35の熱膨張、あるいは、作動油へ混入した不純物(コンタミ)の弁本体内でのかみ込みや、経年変化等により発生する、スプール35の移動動作時の僅かな摺動(移動)抵抗の増加であっても、サーボモータ33の回転トルクの増加として、適切な上限値の設定によりスプール35の動作不良、すなわち、流量制御弁16の異常と判断させ、且つ、その異常発生位置の特定が可能である。
また、スプール35を、スプール35の略全移動ストロークの一方向だけでなく、一部は往復させて、その移動動作の間の、サーボモータ33の回転トルクの上限値越えとその位置の検出を行なわせるため、一方向の移動の際にのみ発生する、スプール35の僅かな摺動(移動)抵抗であっても検出させることができる。
本実施例においては、スプール35を、スプール35の略全移動ストロークの一方向だけでなく、一部は往復させて、その移動動作の間の、サーボモータ33の回転トルクの上限値越えとその位置の検出を行なわせる形態としたが、必ずしも、一部であっても往復させる必要はなく、略全移動ストロークを一方向に移動させるだけでも良い。また、流量制御弁が使用される装置の運転サイクルに影響を及ぼすことなく、略全移動ストロークを一方向に移動させることができない場合は、運転サイクルへの影響が少ない、スプール35の略全閉位置(略0点位置)及び、少なくとも一方の側に設けられた機械的移動限位置(後退側端面30aや前進側端面30d)間で移動させるだけでも良い。その場合は、所定の運転サイクル毎に、通常の運転サイクル中には移動させることができない、スプールの略全閉位置及び、他方の側に設けられた機械的移動限位置間で、スプールに大きな流体力が作用しない状態においてスプールを移動させて、本願発明に係る、流量制御弁の異常検出方法を実施させことが好ましい。
さらに、上記のようなサーボモータ33の回転トルク及び位置の監視に加えて、スプール35の移動動作の少なくとも一方の側(前進側端面30d及び後退側端面30a)において、エンコーダ34等から、運転サイクル毎にリアルタイムで得られるそれぞれのスプール35の位置情報と、予め設定されるスプール35の機械的移動限位置情報とを比較させ、その差異が予め設定される許容値を超えた場合に、流量制御弁16のカップリング62の緩みや、運動変換機構31のボールねじナット56及びボールねじ軸57のボールの磨耗等によるガタツキや、スプールの位置を検出するエンコーダ等のパルス検出ミス等が疑われる、流量制御弁の異常と判断させてもよい。
この時、比較の基準となる”予め設定される機械的移動限位置情報”は、流量制御弁16を使用する装置の運転を開始させる前に、スプール35に作動油の流体力が作用しない状態で、スプール35を、一方の側の機械的移動限位置から他方の側の機械的移動限位置までの間を移動させた際の、一方の側の機械的移動限位置及び他方の側の機械的移動限位置の位置情報とすることが好ましい。この位置情報を得るための工程を、先に説明したスプール原点確認工程と区別するために、スプールの原点及びストローク確認工程と呼称する。この、スプールの原点及びストローク確認工程で得られた両端の機械的移動限位置の位置情報自体の精度は、同確認工程で確認された、両端の機械的移動限位置間の距離情報と、設計上の流量制御弁16の、両端の機械的移動限位置間の距離とを比較させたその差異が予め設定される許容値内であるか、等の方法により、同確認工程実施時に確認されることが好ましい。
運転サイクル毎に行われるスプール原点確認工程においては、検出される機械的移動限位置の位置情報と、スプールの原点及びストローク確認工程において最初に確認される機械的移動限位置の位置情報とからその差異を算出させ、予め設定される許容値と比較させる。運転サイクルの継続に伴う、スプール35の移動動作の状態変化を、運転サイクル毎のスプール原点確認工程において検出される、機械的移動限位置の位置情報の変化で確認するため、運転サイクル毎のスプール原点確認工程においては、機械的移動限位置のリセットは行わない方が好ましい。また、スプール35の略中間位置となる図2に示す全閉状態(0点位置)の位置情報は、スプールの原点及びストローク確認工程において確認されたスプール35の両端の機械的移動限位置情報から設定され、この位置情報に基づき、流量制御弁16の全閉状態を制御させることが好ましい。
さらに、鋳造サイクル毎に行わせた、サーボモータ33の回転トルク及び異常発生位置の監視データや、スプール35の移動動作の両端の機械的移動限位置の位置情報データを、蓄積させることが好ましい。蓄積させたデータを予め設定されるタイミングや頻度で比較させることにより、運転開始から作動油温度が上昇してサチュレートする間の操業一日間の各種データの差異、あるいは、運転開始時から数ヶ月、数年経過した後の各種データの差異を比較検討することにより、経年変化により発生するスプール35の動作不良の発生の判断や、動作不良が発生する時期や位置の予測も可能となる。
これまで説明した流量制御弁16の異常発生や異常発生箇所は、図示しない表示装置等に警告メッセージを表示して、オペレータにアナウンスされる。オペレータへの警告は、ブザー等により音で行なっても良い。異常を確認したオペレータは、鋳造を停止させて、異常と判断された鋳造サイクルで鋳造されたアルミニウム製品の品質を確認すると共に、異常の種類、すなわち、回転トルク及び位置情報の差異のいずれの異常か、さらには、異常の発生位置の確認も行う。異常が流量制御弁16のカップリング62の緩み等、流量制御弁16を射出装置から取り外さずに修復可能な要因であった場合、すぐに修復を行うことができる。また、異常の要因の特定や、その修復がすぐにできない場合、流量制御弁16を交換するとともに、射出装置の動作確認を行い、鋳造を再開させる。そして、取り外した流量制御弁16の異常の要因の特定やその修復を行う。
尚、本発明に係る、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構を介して、弁本体内に配置されたスプールをサーボモータにより任意の位置に移動、あるいは位置保持させて、前記弁本体内を流動させる作動油の流量を制御させる流量制御弁の異常検出方法を説明するために、このような流量制御弁が使用される、一般的な横型ダイカストマシンの射出装置を実施例に採用したが、同様の流量制御弁を採用する他の装置においても、本発明に係る、流量制御弁の異常検出方法を実施できることは言うまでもない。
また、他の装置においても、使用される流量制御弁において、本実施例のスプール原点確認工程に相当するような、流量制御とは関係ないか、関係があっても高い制御精度を要しない、スプールの移動動作時に大きな流体力が作用しない工程を、その流体制御弁が使用される他の装置の運転工程に組み込ませ、その工程において、サーボモータの回転トルクを監視させることにより、本発明に係る、流量制御弁の異常検出方法が、他の装置においても容易に実施できる。
他の装置としては、ダイカストマシンと同様に射出装置を備える射出成形機や押出プレス装置、さらには、油圧プレス装置が挙げられるが、回転運動を直線運動に変換する運動変換機構を介して、弁本体内に配置されたスプールをサーボモータにより任意の位置に移動、あるいは位置保持させて、前記弁本体内を流動させる作動油の流量を制御させる流量制御弁は、油圧シリンダのピストンの移動速度や押圧力の制御に一般的に使用されるため、これ以上の装置の記載は割愛する。
上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、これら実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。