JP2022147196A - ダイカストマシンの良否判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ACサーボモータで駆動するサーボバルブを備えたダイカストマシンにおいて、エンコーダ等の機器類の故障による、誤動作や暴走によって生じる鋳造不良や機械故障を回避して、ダイカストマシンの安定運転による鋳造品の品質安定化を得る。【解決手段】射出充填動作を行う射出シリンダと、射出シリンダへの油圧の供給量を調整するサーボバルブと、サーボバルブを制御する射出制御部と、サーボバルブは、ACサーボモータと、ACサーボモータの回転動作を直線動作に変換するボールネジ機構と、ボールネジ機構と連結し前後進動作によって油圧の流量を調整するスプールと、ACサーボモータの回転動作を検出するエンコーダと、通常運転モードとチェックモードとを備え、チェックモードは、エンコーダとサーボバルブの良否判定を行い、良否判定の結果に基づいて通常運転モードを有効とする良否判定方法を提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、溶湯を金型キャビティに射出充填することにより鋳造品を得るダイカストマシンに関するものである。
アルミニウム合金等の溶湯を用いたダイカストマシンによる鋳造成形は、射出スリーブの内部に溶湯を供給し、プランジャの前進動作により溶湯を金型キャビティ内に射出充填する。次いで、金型キャビティ内の射出充填した溶湯に向けて、冷却固化に伴う溶湯の凝固収縮を補う保圧を作用させる。その後、溶湯が冷却固化した鋳造品を金型キャビティから取り出す。同時に、プランジャを後退動作させて、再び射出スリーブの内部に溶湯を供給し、次ショットの鋳造成形の準備に進む。この一連の鋳造成形動作を計画された個数の鋳造品を得るまで繰り返される。
この金型キャビティへの溶湯の射出充填と保圧は、鋳造品の品質に大きく影響する最も重要な成形工程である。例えば、プランジャの前進動作(射出速度という)が不安定な場合には、射出スリーブ内の溶湯が波打つように暴れて、空気巻込み(ボイド不良)、湯ジワ不良、湯廻り不良、溶湯酸化物(異物)混入等の射出速度に起因する鋳造不良が発生する。また、射出スリーブ内と金型キャビティ内の溶湯への圧力付与(いずれも鋳造圧力という)が不安定な場合には、鋳バリ、湯廻り不良、ヒケや転写不良、鋳巣等の鋳造圧力に起因する鋳造不良が発生する。
そのために、例えば特許文献1に示すような、射出速度と鋳造圧力を高精度に制御できるダイカストマシンを必要とする。特許文献1においては、サーボモータの回転動作により射出圧シリンダへの油圧の供給量と排出量を制御する油圧回路を備えた射出装置であって、射出シリンダはプランジャに連結されており、サーボモータの回転制御により射出速度と鋳造圧力が高精度に制御できるとしている。一般的に、サーボモータは分解能の高い回転制御ができ、サーボモータの回転動作を直線動作に変換する変換機構を介して、油圧の供給量と排出量を調整するスプールの位置を制御する。これにより、射出シリンダへの油圧の供給量と排気量が精密に制御でき、結果的に射出速度と鋳造圧力を高精度に制御できる仕組みとなっている。また、サーボモータには回転方向と回転速度および回転量を検出できる回転検出器(エンコーダ)を備え、このエンコーダからの検出信号に基づいてサーボモータの回転動作を制御する。
ここで、例えばエンコーダが故障している場合や、エンコーダの検出信号の通信系に断線や配線間違い等の異常が生じた場合では、エンコーダからの検出信号を制御装置に正しく通信できない通信障害となる。その結果、サーボモータの回転動作は誤動作し、射出速度や鋳造圧力の制御が乱れて、射出速度や鋳造圧力に起因する多くの鋳造不良が生じ、鋳造成形を中断せざるを得ない状態となる。また、ダイカストによる鋳造は、射出速度が10m/秒程度の高速動作を必要とする事例が多く、この高速動作中の通信障害によるサーボモータの誤動作は射出シリンダやプランジャの暴走となり、射出シリンダやプランジャが機械前進限等に衝突し機械故障となる危険性を有している。この場合は、ダイカストマシン全体の補修工事を終えるまで成形は長時間の停止となる。
そこで、エンコーダの故障や通信異常等による制御系統の異常を事前に検知して、鋳造不良や機械故障を未然に防止する手段の、異常検出方法や良否判定方法等が提案されている。特許文献2では、通信障害の異常検知に加えて、油圧回路の射出シリンダへの油圧の供給量と排出量を制御するスプールの摺動状態の異常検知も合わせて行うとしている。
特開平10-58114号公報 特開2016-215254公報
特許文献2に示す手段では、サーボモータの回転トルクに制限をかけてスプールを前後進させ、停止した位置をそれぞれスプールの前進限位置と後退限位置としてエンコーダ検出信号で設定し、予め設定された機械仕様値と比較して、スプールの摺動状態とエンコーダの動作状態と検出信号の通信状態の異常検知ができるとしている。
しかしながら、この異常検知は実際の鋳造成形の動作工程中に行っている。例えば、スプールの前進限位置の異常検知は、金型キャビティへの溶湯の射出充填と保圧(低速前進、高速前進、高圧充填)の工程を終えた後に、さらにスプールを前進させて前進限位置を確認するとしている。そのため、射出充填と保圧工程は異常検知が全く無い状態で行われるため、誤動作や暴走の危険性を回避できたとはいえない。また、スプールの後退限位置の異常検知も、次ショットの準備工程として、スプールの後退移動により、射出スリーブ内に溶湯を供給するためにプランジャを後退限まで後退させた後に、さらにスプールを後退させて後退限位置を確認するとしている。そのため、準備工程も異常検知が全くない状態で行われるため、誤動作や暴走によりプランジャが実際に後退限(機械停止位置)に達した後も強制的に後退を続け、プランジャのオーバーランによるダイカストマシンの破損の危険性を回避できたとはいえない。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、通常運転モードとチェックモードを設け、鋳造成形の開始前に、チェックモードで正常判定を受けた後に、通常運転モードが有効となるようにする。その後、通常運転モードで実際の鋳造成形を行うことで、ダイカストマシンの誤動作や暴走による鋳造不良や機械故障を確実に回避でき、ダイカストマシンの安定運転による鋳造品の品質安定化を得ることを目的とする、ダイカストマシンの良否判定方法に関するものである。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法は、
射出スリーブの内部に溶湯が供給され、プランジャの前後進動作により前記溶湯を金型キャビティへ射出充填するダイカストマシンにおいて、前記プランジャの前後進動作を行う射出シリンダと、前記射出シリンダへの油圧の供給量を調整するサーボバルブと、前記サーボバルブを制御して前記プランジャの前後進動作を制御する射出制御部と、前記サーボバルブは、ACサーボモータと、前記ACサーボモータの回転動作を直線動作に変換するボールネジ機構と、前記ボールネジ機構と連結し前後進動作によって油圧の流量を調整するスプールと、前記ACサーボモータの回転動作を検出するエンコーダと、前記射出制御部は、通常運転モードとチェックモードと、を備え、前記チェックモードは、前記エンコーダの検出信号に基づいて、前記エンコーダと前記サーボバルブの良否判定を行い、前記良否判定の結果に基づいて前記通常運転モードを有効とすることを特徴とする。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記ACサーボモータを所定の回転数で回転動作させ、前記検出信号の有無に基づいて、前記エンコーダの良否判定を行うとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記ACサーボモータを所定の回転方向で回転動作させ、前記検出信号の回転方向に基づいて、前記エンコーダの良否判定を行うとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記スプールが前進動作する方向に、前記ACサーボモータを所定のトルクで回転動作させ、前記ACサーボモータの回転動作が停止した時の前記検出信号の数値を前進限停止位置と設定し、次いで、前記スプールが後退動作する方向に、前記ACサーボモータを所定のトルクで回転動作させ、前記ACサーボモータの回転運動が停止した時の前記検出信号の数値を後退限停止位置と設定し、前記前進限停止位置と前記サーボバルブに設定された前進限位置とを比較して、前記後退限停止位置と前記サーボバルブに設定された後退限位置とを比較して、前記エンコーダの良否判定を行うとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記前進限停止位置と前記前進位置とを比較し、前記後退限停止位置と前記後退限位置とを比較して、前記サーボバルブの良否判定を行うとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記前進限停止位置と前記後退限停止位置の間に基準点を設定し、前記ACサーボモータを前記基準点の方向に回転動作させ、前記検出信号が前記基準点を検出した位置を前記サーボバルブの原点設定とするとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記前進限停止位置と前記後退限停止位置の間に折返し点を設定し、前記原点設定後は、さらに前記折返し点の方向に前記ACサーボモータの回転動作を行い、前記検出信号が前記折返し点を検出すると、前記ACサーボモータを逆回転させて前記原点設定の位置まで回転動作を行い、前記検出信号が前記基準点を検知した位置を前記サーボバルブの原点設定とするとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記サーボバルブへの油圧の供給を停止するとしても良い。
本発明に係るダイカストマシンの良否判定方法において、
前記チェックモードは、前記射出シリンダへの油圧の供給を制限する油圧制限回路を用いるとしても良い。
本発明によれば、ダイカストマシンの誤動作や暴走による鋳造不良や機械故障を確実に回避でき、ダイカストマシンの安定運転による鋳造品の品質安定化を得ることを目的とするダイカストマシンの良否判定方法を提供するものである。
本発明に係るダイカストマシンの射出装置の概念図である。 本発明に係る油圧回路の概念図である。 本発明に係るチ射出制御部の概念図である。 本発明に係る良否判定方法(工程1)の制御フロー図である。 本発明に係る良否判定方法(工程2)の制御フロー図である。 本発明に係る良否判定方法(工程3)の制御フロー図である
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、各請求項に係る発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の尺度や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
[ダイカストマシン]
先ず、本実施形態に係るダイカストマシンについて、図1を用いて説明する。なお、以下の説明では、本実施形態に係るダイカストマシンとして、横型のダイカストマシンをベースとしたが、これに限定されるものではない。
図1に示すダイカストマシン100は、図示しない固定盤に支持された固定金型1と、図示しない可動盤に支持され固定盤1に対して進退可能な可動金型3と、溶湯を射出する射出装置10と、射出装置10の動作を制御する射出制御部40とを備えている。アルミニウム合金等の溶湯を、射出装置10により固定金型1及び可動金型3で形成された金型キャビティ5に向けて射出充填することで鋳造品が成形される。
射出装置10は、溶湯が内部に供給される射出スリーブ11と、射出スリーブ11の内側で進退可能なプランジャ13と、プランジャ13と連結したプランジャロッド15と、プランジャロッド15と連結しプランジャ13の前後進動作を行う油圧駆動部20と、射出制御部40からの制御指令値に基づいて油圧駆動部20を制御するサーボバルブ30とを備えている。ここで、プランジャ13の動作に関し、金型キャビティ5に近づく動作を「前進動作」と定義し、金型キャビティ5から離れる動作を「後退動作」と定義し、プランジャ13の後退動作の完了位置を待機位置GEと定義し、プランジャ13の前進動作の完了位置を射出完了位置ZEと定義する。プランジャ13は、待機位置GEと射出完了位置ZEの範囲内で前後進動作する。また、プランジャ13の位置を検出する位置センサ21が備えられている(図1では油圧駆動部20に配置)。
射出スリーブ11は、図示しない固定盤から後方に突出した状態に水平に支持される円筒体である。射出スリーブ11の軸方向は、プランジャ13の前後進動作に一致する。射出スリーブ11の前側は、金型キャビティ5と連通するように、固定盤を貫通し、固定金型1の所定の位置に締結される。射出スリーブ11の後側は注湯口17が設けられている。プランジャ13が待機位置GEに待機している時に、図示しない給湯装置等から溶湯が注湯口17を通じて射出スリーブ11の内部に供給される。
また、射出スリーブ11には、必要に応じて、冷却水等の冷却媒体が流れる流路を含む図示しない冷却機構が設けられている。また、プランジャ13の摩耗損傷の防止や摺動状態の安定化及び溶湯残渣物の付着抑制等のため、射出スリーブ11とプランジャ13との摺動面に潤滑剤を塗布することが好ましい。
次に、図2を用いて油圧駆動部20とサーボバルブ30について詳細に説明する。なお、図2は、本実施形態を説明できる範囲で簡素化している。
油圧駆動部20は、射出シリンダ22とアキュムレータ28とで構成される。射出シリンダ22のピストンロッド27は、プランジャロッド15を介してプランジャ13と接続される。射出シリンダ22のピストンヘッド26側のヘッド側油圧室23は、アキュムレータ28と油圧配管で接続しており、アキュムレータ28からの油圧の供給によりピストンヘッド26が押されて、ピストンロッド27を介してプランジャ13が前進動作する。このピストンロッド27の前進動作を射出シリンダ22の前進動作と呼称する。ここで、射出シリンダ22とプランジャ13の前後進動作の動作方向を合わせることにより、後述するダイカストマシン100の誤動作等の異常検知の良否判定を容易とする。ガスボトル29は、アキュムレータ28への加圧ガスの補給用である。
サーボバルブ30は、バルブ本体部31とACサーボモータ33とボールネジ機構35とで構成される。バルブ本体部31の内部には、摺動可能なスプール313が組み込まれており、このスプール313の位置を変えることで射出シリンダ22の前後進動作を制御することができる。具体的には、射出シリンダ22のピストンロッド27側のロッド側油圧室25と、バルブ本体部31の油圧ポート口315とが油圧配管で接続され、スプール313の位置制御でロッド側油圧室25の油圧の排出量を制御することで、射出シリンダ22の前進動作を行う(メータアウト制御方式)。その結果、射出シリンダ22のプランジャロッド27と連結しているプランジャ13の前進動作が制御される。ここで、スプール313と射出シリンダ22の前後進動作の動作方向を合わせることにより、プランジャ13と射出シリンダ22とスプール313の前後進動作の動作方向を揃えることができ、スプール313の前後進動作を精度良く制御することで、射出速度と鋳造圧力を高精度に制御できるとなる。なお、本実施形態を説明するうえで、スプール313の前進動作を「+方向」、スプール313の後退動作を「-方向」と定義する。
ACサーボモータ33の回転状態は、エンコーダ37で検出され射出制御部40に送られる。射出制御部40は、エンコーダ37の検出信号を受けて、予め設定された制御指令値と誤差がないように、ACサーボモータ33の回転動作のフィードバック制御を行う。フィードバック制御されたACサーボモータ33の回転動作は、ボールネジ機構35で回転動作を直線動作に変換され、連結ロッド312を介してスプール313の前後進動作の制御を行う。
ここで、ACサーボモータ33とエンコーダ37の一般的な機械仕様を用いて、高精度なフィードバック制御が実施できる仕組みについて説明する。ACサーボモータ33の回転動作が、ボールネジ機構35を介して連結ロッド312に連結されたスプール313の前後進動作となる。このスプール313の移動距離は、ACサーボモータ33の1回転で25mmの移動量の変化と仮定する。また、ACサーボモータ33の1回転で20000パルスを発信するエンコーダ37を用いたとする。その結果、例えばエンコーダ37の検出信号の10パルス分は、スプール313の移動量0.0125mmのとして検知される。実際には、ACサーボモータ33はエンコーダ37の1桁の検出パルス数で回転制御される。この原理によって、ACサーボモータ33は極めて精度の高い回転制御ができ、結果的に、スプール313の位置を0.01mm台の高精度に制御でき、最終的にはプランジャ13は極めて精度の高い前後進動作の制御を可能とする。
[チェックモード]
次に、本実施形態に係るダイカストマシンの良否判定を行うチェックモードについて、図3を用いて説明する。図3に示す射出制御部40は、通常運転モード41とチェックモード43を備える。ダイカストマシン100の起動時は、チェックモード43が有効となり、通常運転モード41は無効となるように細工されている。そのため、先ずチェックモード43を用いてダイカストマシン100の良否判定を行い、良否判定の結果、合格判定を受けて初めて通常運転モード41が有効となる。合格判定を受けない場合は、警報が発信され、異常個所を復旧させるメンテナンス作業の工程に進む。メンテナンス工程の後は、再びチェックモード43による合否判定を行う。この鋳造成形の開始前にダイカストマシン100の良否判定を行うことにより、誤動作による鋳造不良や暴走による機械破損の発生を未然に防ぐことが確実にできる。
チェックモード43は、エンコーダ37からの検出信号とACサーボモータ33への制御指令値を送受信する入出力部431と、ACサーボモータ33の回転動作を設定する条件設定部433と、条件設定部433の設定値に基づいてACサーボモータ33の回転動作の制御を行う制御部435と、ACサーボモータ33への制御指令値とエンコーダ37の検出信号等を比較してサーボバルブ30の良否判定を行う比較判定部437と、比較判定部437の判定結果に基づいて警報を発信する警報発信部439を備える。なお、比較判定部437の判定結果が正常判定の場合には、チェックモード43は正常終了し、通常運転モード41が有効となる。異常判定の場合には、異常個所の復旧のためのメンテナンス作業の工程に進む。
また、条件設定部433は、チェックモード43における、ACサーボモータ33の回転方向を決める回転方向設定値と、回転速度を決める回転速度設定値と、回転トルクを決める回転トルク設定値と、監視時間を決める監視時間設定値、とを備える。この4つの設定値を用いて、ダイカストマシンの良否判定を行う。
[良否判定方法]
次に、本実施形態に係るチェックモードを用いたダイカストマシンの良否判定方法について、図4、図5、図6を用いて説明する。
ダイカストマシン100の起動時は、チェックモード43が有効となり、通常運転モード41は無効となる。そのため、最初にチェックモード43を用いてダイカストマシン100の良否判定を行う。チェックモード43を開始させると、図4に示す工程1がスタートする。ACサーボモータ33は、条件設定部433の設定値に基づいて回転動作する。なお、図4では+方向の回転動作からスタートしたが、逆の-方向の回転動作からスタートしても良い。次に、エンコーダ37の検出信号を入出力部431で受信し、比較判定部437で良否判定を4段階で行う。
先ず、工程1における第1の判定は、検出信号の変化の有無の確認であり、検出信号が変化することが確認できれば第2の判定に進む。検出信号に変化が確認されない場合は、警報発信部439は警報を発信すると同時に、ACサーボモータ33の回転動作を停止させメンテナンス作業等の異常判定の処置を行う。
ここで、第1の判定の異常判定は、エンコーダ37の故障、エンコーダ37と入出力部431との信号線の断線等による通信障害、ACサーボモータ33の故障、のいずれかと判定される。これによって、射出充填工程や保圧工程において、プランジャ13の誤動作による鋳造不良や、プランジャ13の暴走による機械破損の予防となる。また、異常個所が特定できることによって、部品交換等のメンテナンスを容易とし、ダイカストマシンの稼働停止を最小限に抑えることができる。
次に、工程1における第2の判定は、エンコーダ37の回転方向の検出信号と、条件設定部433で設定したACサーボモータ33の回転方向設定値との比較判定である。図4では、ACサーボモータ33を+方向に回転させているので、エンコーダ37の検出信号も+方向に増加するのが正しい。正常判定の場合は、第3の判定に進む。異常判定の場合は、第1の判定と同様に警報を発し異常判定の処置を行う。
ここで、第2の判定の異常判定は、エンコーダ37と入出力部431との信号線の配線間違いを疑う(例えば信号線の+と-が入れ替わっている)。仮に、配線間違いのままでダイカストマシン100を動作させた場合、プランジャ13は意図する方向とは逆の方向に暴走し機械破損に直結する。また、例えば、エンコーダ37やACサーボモータ33を部品交換した際に、各部品の取り付方向や配線の間違いを事前に知ることができる。いずれにしても、誤動作又は暴走の予防と、ダイカストマシンの長時間の稼働停止の抑制効果を得る。
続いて、第3の判定に進む。ACサーボモータ33は、条件設定部433で設定された回転トルク設定値で+方向に回転動作が継続されている。ACサーボモータ33と連結したサーボバルブ30のスプール313が、例えば前進限等の機械的制限位置に到達すると、スプール313の動作抵抗が回転トルク設定値より大きくなって、ACサーボモータ33の回転は停止する。この回転トルク設定値は、スプール313等が破損しない範囲で適正に設定される。ACサーボモータ33の回転停止によって、エンコーダ37の検出信号も停止する。従って、エンコーダ37の検出信号を監視することで、ACサーボモータ33の回転停止、さらには、スプール313の機械的制限位置への到達を知ることができる。条件設定部433で設定した監視時間設定値を超えて、ACサーボモータ33の回転が停止した時のエンコーダ37の検出信号の数値を、スプール313の+方向の前進限停止位置A1と設定する。
ここで、サーボバルブ30の機械仕様値として定義されているスプール313の前進限位置A0(開限ともいう)と前進限停止位置A1を、比較判定部437で比較判定を行う(第3の判定)。第3の判定の結果、前進限位置A0と前進限停止位置A1が一致する(A1=A0)場合には工程2に進む。なお、判定結果が不一致の場合は(A1≠A0)、前進限位置A0と前進限停止位置A1の偏差ASと、予め設定された許容値AEの比較判定を比較判定部437で行う(第4の判定)。
第4の判定は、第3の判定で不合格と判定されても、偏差ASが許容値AEの範囲内であると判定されると(AS<AE)、エンコーダ37、スプール313、ボールネジ機構35は、許容できる範囲で正常判定とし工程2に進む。なお、第4の判定において、偏差ASが許容値AEを超えると判定されると(AS>AE)、エンコーダ37、スプール313、ボールネジ機構35のいずれかに異常があると判断され、プランジャ13の誤動作や暴走の危険性が潜在的に隠れているとして、第1および第2の判定と同様に警報を発し異常判定の処置を行う。
この第3の判定と第4の判定は、エンコーダ37の検出信号の検出漏れ(歯飛びと呼ばれる現象)の有無、ボールネジ機構35の空回り等の機械故障の有無、スプール313の摺動状態、について良否判定をする。その結果、プランジャ13の誤動作による鋳造不良や暴走による機械破損の予防効果と、異常個所の特定によるダイカストマシンの長時間の稼働停止の抑制効果を確実とする。
次に、図5を用いて工程2について説明する。工程2においては、ACサーボモータ33を工程1とは逆の方向に回転させて(-方向)、工程1と同様に4段階の判定を行う。先ず、第5の判定は、第1の判定と同様に、エンコーダ37の検出信号の変化の有無の確認である。次に、第6の判定は、第2の判定と同様に、エンコーダ37の検出信号の回転方向とACサーボモータ33の回転方向設定値との比較である。最後に、第7の判定と第8の判定は、第3の判定と第4の判定と同様に、エンコーダ37の検出信号の検出漏れ(歯飛びと呼ばれる現象)の有無、ボールネジ機構35の空回り等の機械故障の有無、スプール313の摺動状態、について良否判定をする。
良否判定の結果に基づいて、全ての判定結果が合格判定の場合は、工程3に進む。それ以外の判定の場合は、工程1と同様に警報を発し異常判定の処置を行う。
工程1と異なる箇所のみ説明する。条件設定部433で設定した監視時間設定値を超えて、ACサーボモータ33が回転停止した時のエンコーダ37の検出信号の数値を後退限停止位置B1とする。従って、第7の判定は、後退限位置B1とサーボバルブ30に定義される前進限位置B0の比較判定を行う。また、第8の判定は、後退限停止位置B1と後退限位置B0の偏差BSと、予め設定された許容値BEの比較判定を行う。
ここで、許容値AEと許容値BEは、射出充填時のプランジャ13の前進動作に及ぼす影響が極めて小さく、実際の鋳造品質にも影響しない程度の誤差範囲として設定する。例えば、エンコーダ37の検出信号が±10パルスの誤差では、スプール313の動作に換算すると±0.0125mmに過ぎない。この数値は、部品の機械加工時に設定する機械公差と同等であることから、許容値として設定しても問題は無いと考える。
このように、工程1の4段階の判定と、ACサーボモータ33を逆回転させた工程2の4段階の判定を組み合わせた二重の判定を設けることにより、判定精度は高くなり、プランジャ13の誤動作による鋳造不良や暴走による機械破損が予防効果と、異常個所の特定によるダイカストマシンの長時間の稼働停止の抑制効果を確実なものとする。
工程1と工程2は、ACサーボモータ33、エンコーダ37、エンコーダ37と入出力部431との配線状態、サーボバルブ30のスプール313の摺動状態等の、溶湯の射出充填に係る制御回路の全ての項目の良否判定が実施されたことになる。従って、工程1と工程2において、合格判定の結果は高品質で鋳造品を安定して鋳造成形できることを意味する。なお、工程1と工程2は制御回路の要素毎の個別の良否判定であるため、そのままでは鋳造成形を開始することはできない。そこで、工程3は射出制御部40からサーボバルブ30に至るまでの制御回路の各要素の関連付けのための原点設定を行う。この工程3における原点設定の後に、チェックモード43を完了し、通常運転モード41が有効となり、鋳造成形を開始することができる。
図6を用いて、工程3の原点設定の手順を説明する。工程3は、工程3-1と工程3-2に分かれる。先ず、工程3-1は、前進限停止位置A1と後退限停止位置B1の間に基準点Fを制御部435で再設定する。上述した工程1の第4の判定および工程2の第8の判定においては、厳密にいえば、許容値AEと許容値BEの範囲内で偏差が生じている。この偏差は、機械部品に特有の誤差(機差という)や経年変化による誤差と考えられる。基準点Fの再設定は、偏差を補正するために行われる。その結果、サーボバルブ30は高い制御精度を維持することができる。なお、前進限停止位置A1とは、サーボバルブ30の油圧の流量が+方向に最大となる開限位置、後退限停止位置B1とは、サーボバルブ30の油圧の流量が-方向に最大となる閉限位置、基準点Fとは、サーボバルブ30の油圧の流量がゼロとなる位置、または通常運転モード31の運転開始位置を示す。
工程3-1の説明に戻る。ACサーボモータ33を基準点Fの方向に回転動作させて、エンコーダ37の検出信号が基準点Fを確認後、ACサーボモータ33の回転動作を停止させ原点設定を行う。この原点設定により、射出制御部40とACサーボモータ33とサーボバルブ30のスプール313とエンコーダ37の制御回路の関連付けを終える。工程3-1の原点設定を終えると、チェックモード43は終了し、通常運転モード31が有効となり、鋳造成形が開始される。
この工程3-1に示す原点設定により、例えば、通常運転モード31において鋳造成形を開始した際に、スプール313が意図しない位置のあることによる、プランジャ13の意図しない動き(誤動作又は暴走)を回避できる。また、射出制御部40からサーボバルブ30および油圧駆動部20を経由してプランジャ13に至るまでの全ての回路において、意図した正しい位置から鋳造成形を開始することができ、成形条件の設定通りにダイカストマシンは鋳造運転ができ、成形開始直後から鋳造品質の安定化を得ることができる。
次に、工程3-2について説明する。前進限停止位置A1と後退限停止位置B1の間に、基準点Fとは異なる折返点PBを制御部435で再設定する。先ず、ACサーボモータ33を折返点PBの方向に回転動作させて、エンコーダ37の検出信号が基準点Fを確認後もACサーボモータ33の回転を継続させて、基準点Fを通過させる。その後、エンコーダ37の検出信号が折返点PBを確認後、ACサーボモータ33の回転方向を逆に変えて(逆回転)、基準点Fの方向に逆回転の動作を行う。エンコーダ37の検出信号が基準点Fを確認後、ACサーボモータ33の回転動作を停止させ、原点設定を行う。この工程3-2に示す原点設定も、工程3-1の原点設定と同様に制御回路の関連付けを行う。工程3-2の原点設定を終えると、チェックモード34は終了し、通常運転モード31が有効となり、鋳造成形が開始される。
ここで、工程3-2に示す原点設定は、工程1および工程2で示した偏差ASと偏差BSが、許容値AEと許容値BEの範囲内であるが比較的大きく、そのため大きな補正を行うことが好ましいと判断された場合に用いると良い。例えば、ACサーボモータ33、エンコーダ37、ボールネジ機構35、スプール313等の回転動作や前後進動作する機械部品においては、動作方向の違いによる微小な誤差(ヒステリシスという)が存在する。工程3-2に示す原点設定は、このヒステリシスの補正に有効な手段である。その結果、通常運転モードの鋳造成形の開始時の意図しない誤動作や暴走の防止効果に加え、ヒステリシスの補正により、より精度の高いダイカストマシンの鋳造運転を可能とし、鋳造品質の安定化をより確実なものとする。
ここで、チェックモード43においては、例えば油圧源を停止させて、油圧駆動部20への油圧の供給を完全に停止して良否判定を行うとすることが好ましい。これは、チェックモード43の動作中に、油圧駆動部20へ意図しない油圧が供給されて、油圧駆動部20が暴走することを予防するためである。そのため、サーボバルブ30のスプール313が前進限停止位置A1から後退限停止位置B1の範囲内で大きく動作しても、油圧駆動部20の誤動作や暴走の恐れは無く全く安心である。
また、例えば、可動金型3を型開閉動作する型締装置の油圧源と、あるいは固定金型1や可動金型3に組み込まれた油圧コア等の油圧源と、油圧駆動部20の油圧源が兼用されており、チェックモード43の動作中も油圧源を停止することができないケースも少なくはない。この場合においては、例えば、油圧駆動部20とサーボバルブ30とを接続する油圧回路の途中に、流路切換え弁等の油圧の供給を制限する油圧回路を設け、この油圧回路により油圧駆動部20への油圧の供給を制限させるとすることが好ましい。これにより、油圧源を停止することなく安全にチェックモード44の動作ができる。
このように、実際の鋳造運転を行う前にチェックモード43を用いて、ACサーボモータ33、エンコーダ37、ボールネジ機構35、サーボバルブ30のスプール313、油圧駆動部20、の射出充填に係る制御回路の良否判定を行う。また、原点設定を追加することにより、制御回路の関連付けができる。さらに、チェックモード34で合格判定を受けた後に通常運転モード31が有効になり、鋳造成形を開始することができる安全手段を設けた。これらの相乗効果により、実際の鋳造運転の開始前に異常の有無が分かり、プランジャ13の誤動作や暴走による鋳造不良や機械故障を確実に回避でき、ダイカストマシン100の安定運転による鋳造品の品質安定化を得ることができる。また、仮に異常と判定された場合でも、異常の個所や部品の絞込みはできており、部品交換等のメンテナンス作業が簡素化され、ダイカストマシン100の長期間の生産停止を回避でき、高い生産効率を確保することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に記載された範囲には限定されない。上記の実施形態には多様な変更または改良を加えることが可能である。
1 固定金型
3 可動金型
5 金型キャビティ
10 射出装置
11 射出スリーブ
13 プランジャ
15 プランジャロッド
17 注湯口
20 油圧駆動部
21 位置センサ
22 射出シリンダ
30 サーボバルブ
313 スプール
312 連結ロッド
33 ACサーボモータ
35 ボールネジ機構
37 エンコーダ
40 射出制御部
41 通常運転モード
43 チェックモード
100 ダイカストマシン

Claims (9)

  1. 射出スリーブの内部に溶湯が供給され、プランジャの前後進動作により前記溶湯を金型キャビティへ射出充填するダイカストマシンにおいて、
    前記プランジャの前後進動作を行う射出シリンダと、前記射出シリンダへの油圧の供給量を調整するサーボバルブと、前記サーボバルブを制御して前記プランジャの前後進動作を制御する射出制御部と、
    前記サーボバルブは、ACサーボモータと、前記ACサーボモータの回転動作を直線動作に変換するボールネジ機構と、前記ボールネジ機構と連結し前後進動作によって油圧の流量を調整するスプールと、前記ACサーボモータの回転動作を検出するエンコーダと、
    前記射出制御部は、通常運転モードとチェックモードと、を備え、
    前記チェックモードは、前記エンコーダの検出信号に基づいて、前記エンコーダと前記サーボバルブの良否判定を行い、前記良否判定の結果に基づいて前記通常運転モードを有効とする、ことを特徴とするダイカストマシンの良否判定方法。
  2. 前記チェックモードは、前記ACサーボモータを所定の回転数で回転動作させ、前記検出信号の有無に基づいて、前記エンコーダの良否判定を行う、請求項1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  3. 前記チェックモードは、前記ACサーボモータを所定の回転方向で回転動作させ、前記検出信号の回転方向に基づいて、前記エンコーダの良否判定を行う、請求項1または2のいずれか1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  4. 前記チェックモードは、前記スプールが前進動作する方向に、前記ACサーボモータを所定のトルクで回転動作させ、前記ACサーボモータの回転動作が停止した時の前記検出信号の数値を前進限停止位置と設定し、次いで、前記スプールが後退動作する方向に、前記ACサーボモータを所定のトルクで回転動作させ、前記ACサーボモータの回転運動が停止した時の前記検出信号の数値を後退限停止位置と設定し、前記前進限停止位置と前記サーボバルブに設定された前進限位置とを比較して、前記後退限停止位置と前記サーボバルブに設定された後退限位置とを比較して、前記エンコーダの良否判定を行う、請求項1から3のいずれか1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  5. 前記チェックモードは、前記前進限停止位置と前記前進位置とを比較し、前記後退限停止位置と前記後退限位置とを比較して、前記サーボバルブの良否判定を行う、請求項4記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  6. 前記チェックモードは、前記前進限停止位置と前記後退限停止位置の間に基準点を設定し、前記ACサーボモータを前記基準点の方向に回転動作させ、前記検出信号が前記基準点を検出した位置を前記サーボバルブの原点設定とする、請求項1から5のいずれか1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  7. 前記チェックモードは、前記前進限停止位置と前記後退限停止位置の間に折返し点を設定し、前記原点設定後は、さらに前記折返し点の方向に前記ACサーボモータの回転動作を行い、前記検出信号が前記折返し点を検出すると、前記ACサーボモータを逆回転させて前記原点設定の位置まで回転動作を行い、前記検出信号が前記基準点を検知した位置を前記サーボバルブの原点設定とする、請求項1から5のいずれか1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  8. 前記チェックモードは、前記サーボバルブへの油圧の供給を停止している、請求項1から請求項6のいずれか1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
  9. 前記チェックモードは、前記射出シリンダへの油圧の供給を制限する油圧制限回路を用いる、請求項1から請求項6のいずれか1に記載のダイカストマシンの良否判定方法。
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