JP6585402B2 - 炉心監視システム及び炉心監視方法 - Google Patents
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Description
ここでLHGRとは、燃料集合体内の燃料棒に対する単位長さあたりの熱出力であり、CPRとは、遷移沸騰が起こる燃料集合体出力と実際の燃料集合体出力との比である。
このように求められたLHGRやCPRが、制限値に達していなければ、運転員は、原子炉出力を上昇させることが可能と判断し、この判断に基づいて制御棒操作や炉心流量操作が継続される。
このようなABWRにおいては、簡易計算により、熱的状態値の簡易値を短周期で計算し、リアルタイムで得られるこの簡易値に基づき炉心監視を行っている。
しかし、この多群3次元炉心性能計算は、計算結果を得るのに現状では長時間(例えばおおよそ5分)要するため、炉心をリアルタイムで監視する用途に適さない。
しかし、この熱的状態値の簡易値は、炉心のリアルタイム監視には適しているが、精度が低いため、係数等を設け評価が厳しくなる側に誤差が出るように簡易値が演算される。このため熱的状態値の簡易値が制限値に到達しないように、制御棒や炉心流量を操作するとなると、監視が過度に保守的となる問題がある。
しかし、多群3次元炉心性能計算装置により長周期間隔で出力される熱的状態値と、修正1群3次元炉心性能計算装置により短周期間隔で出力される熱的状態値とでは、それぞれの計算で使用するデータの取得タイミングが相違するため、同じ出力タイミングであっても両者が乖離してしまう場合があるという課題が存在した。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係る炉心監視システム10A(10)は、少なくとも原子炉熱出力31及び原子炉圧力32を計算するプロセス計算装置11と、TIP走査により得たTIPデータ33から導いたベース分布学習に基づき長周期状態値を長周期毎に出力する多群3次元炉心性能計算装置12と、少なくともAPRM値35及びLPRM値36に基づき炉心流量37及び制御棒位置38を制御するプラント制御装置13と、修正1群3次元炉心性能計算装置20とから構成されている。
そしてプロセス計算装置11は、プロセス計装からの入力に基づいて原子炉圧力32を計算する。この原子炉圧力32は、原子炉圧力容器の圧力を表す物理量である。
この送信は長周期毎に(例えば10分周期)行われる。
線出力密度(LHGR)は、炉心内のどの箇所においても、運転管理基準にて規定された制限値を上回ってはならない。
この限界出力比(CPR)は、通常、その値そのもののではなく、FLCPRによって監視されている。このように定義されたFLCPRは、1.0を超えないように監視されることになるが、更に余裕を見込み1.0よりも小さい値に設定されたFLCPR制限値により監視が行われる。
この多群3次元炉心性能計算は、修正1群3次元炉心性能計算よりも計算精度が高いが、同等の計算能力を有する計算機を使用する場合、計算時間を多く要する。
そこで、TIP走査により定期的に(例えば月に1回)実測されるTIPデータ33と理論計算による計算値との比(以下、ベースという)を保存する。
そして多群3次元炉心性能計算装置12は、長周期毎に計算される中性子束分布の理論計算値に、補正のためのベースを乗算した長周期状態値を出力する。
この炉心性能計算結果を補正するための比をベースといい、このベースの炉内における分布をベース分布という。
移動式炉心内計装系(TIP)によりTIP走査が実施される度に、多群3次元炉心性能計算装置12おいてベース分布が更新される。
なお、多群3次元炉心性能計算装置12におけるベース分布の計算とは別に、修正1群3次元炉心性能計算装置20におけるベース分布42の計算が、同じTIPデータ33に基づき独自に実行される。
ここで、局部出力領域モニタ(LPRM:Local Power Range Monitor)とは、原子炉内の燃料集合体間に均等に多数設けられている中性子センサであり、LPRM値36とは、これら中性子センサの各々における中性子束の測定値である。
また平均出力領域モニタ(APRM:Average Power Range Monitor)とは、複数のLPRMを、配列の規則性に則っていくつかのグループに分類し、各々のグループに含まれる複数のLPRMの測定値を平均したAPRM値35を出力する。
TIPトリガ受信部21が、多群3次元炉心性能計算装置12からTIPトリガ34を受信しない場合(S11 No)、短周期状態値計算部23は、短周期(例えば200ms周期)毎に、プラント制御装置13からAPRM値35、LPRM値36、炉心流量37及び制御棒位置38を取得し、プロセス計算装置11から原子炉熱出力31及び原子炉圧力を取得し、理論状態値を計算する。
さらに、短周期状態値計算部23は、前回使用したベース分布42を用いて、この理論状態値を補正した短周期状態値43を計算する(S13)。
この場合、短周期状態値計算部23は、新たに更新されたベース分布42を用いて、理論状態値を補正し短周期状態値43を計算する(S13)。
なお計算された短周期状態値43は、上述したFLPD及びFLCPRに変換され、短周期毎に比較調整部25へ送られる。
これにより、炉心の熱的状態値の監視を短周期でかつ高精度で行うことができ、過度に保守的にならない監視が可能となる。また、短周期による監視を継続しながら、TIP走査によるベース分布の学習を行うことが可能であり、監視を長時間継続することが可能となる。
図3を用いて第2実施形態に係る炉心監視システム10B(10)を説明する。なお図1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
このLPRMゲイン較正作業中は、増幅器のゲイン調整に伴い、急激にLPRM値が不連続変化するといった事象が発生する。
このため、修正1群3次元炉心性能計算装置20は、通常、LPRM値を使用して計算しているため、LPRMゲイン較正中は、通常とは異なる動作をする必要がある。
LPRM較正定数の計算とは、炉心性能計算により求まったLRPMの理論値とLPRM実測値の比を計算するというもので、この値に基づきプラント制御装置13にてLPRMのゲインが較正される。較正実施後は、プラント制御装置13より、較正済みのLPRM値が伝送されることとなるため、較正実施が完了したことを正しく認識できないと、短周期状態値計算部23における処理に対し誤った計算結果を出力してしまうという影響を及ぼす。
バイパス判定処理部26が、多群3次元炉心性能計算装置12からLPRMゲイン較正中フラグ51を受信しない場合(S21 No)、短周期状態値計算部23は、通常通りプラント制御装置13からAPRM値35、LPRM値36、炉心流量37及び制御棒位置38を取得し、プロセス計算装置11から原子炉熱出力31及び原子炉圧力を取得し、さらにベース分布42を用いて、短周期状態値43を計算する(S25)。
そして、フラグ51の受信が終了したところで(S23 Yes)、LPRM較正定数を更新し(S24)、短周期状態値43の計算を再開する(S25)。
図5を用いて第3実施形態に係る炉心監視システム10C(10)を説明する。なお図1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第3実施形態は、第2実施形態におけるバイパス判定処理部26(図3)の構成に替えて、LPRMゲイン較正中フラグ51を受け取ると短周期状態値計算部23を、LPRM値を使用せずに熱的状態値を計算させるモードに切り替える計算モード切替部29をさらに備えている。
修正1群3次元炉心性能計算装置20Cは、計算モード切替部29がLPRMゲイン較正中フラグ51を受信した場合と、その受信が終了した場合とにおいて、次のような異なる処理を行う。
そして、フラグ51の受信が終了したところで、LPRM較正定数を更新し(S24)、通常の単周期状態値の計算を再開する。
そのため、LPRMゲイン較正作業中にLPRM値を使用して短周期状態値43を計算すると、正しい計算結果を得られず、その結果、誤った比較結果をプラント制御装置13に出力する恐れがある。
このような事態を防止するために、従来では監視を一時中断していたが、この場合、LPRMゲイン較正中は炉心の監視ができないという課題が残る。
図6を用いて第4実施形態に係る炉心監視システム10D(10)を説明する。なお図1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第4実施形態における修正1群3次元炉心性能計算装置20Dは、第1実施形態の構成に加え、多群3次元炉心性能計算装置12で得られた高精度な補正データ52(例えばLPRM熱中性子照射量データ、制御棒照射量データ、ノード毎燃焼度データ)の受信を行う補正データ受信部28を備えている。
この補正データ52が求まると、多群3次元炉心性能計算装置12は、補正データ52を、修正1群3次元炉心性能計算装置20Dの補正データ受信部28に送信する。その後、補正データ受信部28は、受信した補正データ52を、短周期状態値計算部23が内部保持する対応データに上書きする。
しかし、多群3次元炉心性能計算と修正1群3次元炉心性能計算の精度には違いがあり、これらデータは両者の間で次第にずれていき、その結果求まる炉心性能計算結果にもずれが生じることとなる。
これにより、履歴データ記憶装置にアクセスし、任意の時刻の計算データを履歴として閲覧することができ、炉心の監視機能を向上させることができる。
Claims (5)
- 少なくとも原子炉熱出力及び原子炉圧力を計算するプロセス計算装置と、中性子エネルギーを3つ以上の群に分けてそれぞれに拡散方程式を立てて原子炉の出力分布を計算しさらにTIP走査により得たTIPデータから導いたベース分布学習に基づき長周期状態値を長周期毎に出力する多群3次元炉心性能計算装置と、少なくともAPRM値及びLPRM値に基づき炉心流量及び制御棒位置を制御するプラント制御装置と、中性子は高速中性子群及び熱中性子群のみが存在するものとし更にこれらの存在比率は一定であるとして計算を行う修正1群3次元炉心性能計算装置とを備え、
前記修正1群3次元炉心性能計算装置は、
前記ベース分布学習が終了したことを示すTIPトリガを前記多群3次元炉心性能計算装置から受信するTIPトリガ受信部と、
前記多群3次元炉心性能計算装置における前記ベース分布学習を導いた前記TIPデータを取得して前記TIPトリガの受信を契機にベース分布を計算するベース分布計算部と、
少なくとも前記原子炉熱出力、前記原子炉圧力、前記APRM値、前記LPRM値、前記炉心流量及び前記制御棒位置を取得して理論状態値を計算し、前記TIPトリガを受信した場合は新たに更新された前記ベース分布を用いて前記理論状態値を補正し、前記TIPトリガを受信しない場合は前回使用した前記ベース分布を用いて前記理論状態値を補正して短周期状態値を計算し、前記長周期状態値よりも短周期で出力する短周期状態値計算部と、
前記短周期状態値と比較するための制限値を記憶する記憶部と、
前記短周期状態値が前記制限値を超えないように前記炉心流量及び前記制御棒位置の制御を調整する調整信号を前記プラント制御装置に出力する比較調整部と、を備えることを特徴とする炉心監視システム。 - 請求項1に記載の炉心監視システムにおいて、
前記LPRM値のゲイン較正中である旨を通知するフラグを受信している期間中、バイパス判定信号を送信し、前記短周期状態値計算部が前記LPRM値を取得してもバイパス処理させるバイパス判定処理部と、
前記ゲイン較正が完了し前記フラグの受信が停止したタイミングで前記LPRM値の較正定数の再計算及び更新を行うLPRM較正定数計算部と、をさらに備えることを特徴とする炉心監視システム。 - 請求項2に記載の炉心監視システムにおいて、
前記バイパス判定処理部に替えて、前記フラグを受け取ると前記短周期状態値計算部を、前記LPRM値を使用せずに熱的状態値を計算させるモードに切り替える計算モード切替部を、さらに備えることを特徴とする炉心監視システム。 - 請求項1に記載の炉心監視システムにおいて、
前記多群3次元炉心性能計算装置で得られたLPRM熱中性子照射量データ、制御棒照射量データ及びノード毎燃焼度データのうち少なくとも一つの補正データを受信し、前記短周期状態値計算部に内部保持させる補正データ受信部を、さらに備えることを特徴とする炉心監視システム。 - 少なくとも原子炉熱出力及び原子炉圧力を計算するプロセス計算装置と、中性子エネルギーを3つ以上の群に分けてそれぞれに拡散方程式を立てて原子炉の出力分布を計算しさらにTIP走査により得たTIPデータから導いたベース分布学習に基づき長周期状態値を長周期毎に出力する多群3次元炉心性能計算装置と、少なくともAPRM値及びLPRM値に基づき炉心流量及び制御棒位置を制御するプラント制御装置と、中性子は高速中性子群及び熱中性子群のみが存在するものとし更にこれらの存在比率は一定であるとして計算を行う修正1群3次元炉心性能計算装置とを備えるシステムの炉心監視方法であって、
前記修正1群3次元炉心性能計算装置における処理が、
前記ベース分布学習が終了したことを示すTIPトリガを前記多群3次元炉心性能計算装置から受信するステップと、
前記多群3次元炉心性能計算装置における前記ベース分布学習を導いた前記TIPデータを取得して前記TIPトリガの受信を契機にベース分布を計算するステップと、
少なくとも前記原子炉熱出力、前記原子炉圧力、前記APRM値、前記LPRM値、前記炉心流量及び前記制御棒位置を取得して理論状態値を計算し、前記TIPトリガを受信した場合は新たに更新された前記ベース分布を用いて前記理論状態値を補正し、前記TIPトリガを受信しない場合は前回使用した前記ベース分布を用いて前記理論状態値を補正して短周期状態値を計算し、前記長周期状態値よりも短周期で出力するステップと、
前記短周期状態値と比較するための制限値を記憶するステップと、
前記短周期状態値が前記制限値を超えないように前記炉心流量及び前記制御棒位置の制御を調整する調整信号を前記プラント制御装置に出力するステップと、を含むことを特徴とする炉心監視方法。
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