以下の例示的な実施形態や変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が部分的に省略される。実施形態や変形例に含まれる部分は、他の実施形態や変形例の対応する部分と置き換えて構成されることができる。また、実施形態や変形例に含まれる部分の構成や位置等は、特に言及しない限りは、他の実施形態や変形例と同様である。
<第1実施形態>
図1は、実施形態のX線厚み測定システム10の全体構成を示す概略図である。X線厚み測定システム10は、X線厚み測定装置12によって測定対象90の厚みを測定するとともに、X線厚み測定装置12の異常の診断に必要な予兆データ68(図2参照)を生成して蓄積し、X線厚み測定装置12の異常を診断する。
図1に示すように、実施形態のX線厚み測定システム10は、X線厚み測定装置12と、予兆データサーバ14と、メンテナンス装置16と、ネットワーク18とを備える。ネットワーク18は、X線厚み測定装置12と、予兆データサーバ14と、メンテナンス装置16とを互いに情報を送受信可能に接続するLAN(Local Area Network)等であってよい。また、実施形態のX線厚み測定システム10は、TCP/IP等の通信規格に従って、インターネット等のネットワークを介して、当該X線厚み測定システム10の外部に設けられる上位装置と通信可能である。
X線厚み測定装置12は、厚み測定の対象である測定対象90にX線を照射して、測定対象90を通過したX線の量によって、測定対象90の厚みを測定する。X線厚み測定装置12は、測定部20と、X線制御電源22と、板厚演算部(制御装置)24とを備える。
測定部20は、測定対象90にX線を照射して、測定対象90の厚みを算出するための検出電圧または検出電流の少なくともいずれかを検出値として、板厚演算部24へ出力する。実施形態の測定部20は、保持部26と、変圧器28と、X線発生器30と、検出器32と、出力検出部34と、抵抗35とを有する。
保持部26は、変圧器28と、X線発生器30と、検出器32と、出力検出部34と、抵抗35とを保持する。
変圧器28は、X線制御電源22が出力した電力を変圧(例えば、昇圧)して、後述するX線発生器30のフィラメント38に供給する。
X線発生器30は、X線制御電源22から供給される電力によって、X線を発生させて、測定対象90に照射する。実施形態のX線発生器30は、X線管36と、フィラメント38と、ターゲット40とを有する。X線管36は、例えば、内部を真空状態に維持する密閉された管である。X線管36は、フィラメント38及びターゲット40を内部に収容して保持する。フィラメント38は、変圧器28を介して、X線制御電源22から供給された電力によって、電子をターゲット40へ放出する。ターゲット40は、フィラメント38が放出した電子の衝突によって、X線を測定対象90へと照射する。
検出器32は、測定対象90を挟んでX線発生器30と対向する位置に配置されている。実施形態の検出器32は、X線発生器30から照射され、測定対象90を通過したX線の強度に応じた検出電圧及び検出電流の少なくともいずれかの値を検出信号として出力検出部34へ出力する。検出器32は、例えば、入射したX線に応じた検出電圧及び検出電流を出力する電離箱であってよい。
出力検出部34は、検出器32が出力した検出信号を変換処理して板厚演算部24へ出力する。例えば、出力検出部34は、AD変換器等を有し、アナログ信号の検出信号をデジタル変換した値を、測定対象90の厚みを算出するための検出値として出力してよい。
X線制御電源22は、電源の一例であって、板厚演算部24からの電源制御信号に基づいて、変圧器28を介してX線発生器30のフィラメント38に供給される電力を供給する。X線制御電源22は、例えば、商用電源等の外部電源に接続されていてよい。また、X線制御電源22は、ドライブ検出部42および管検出部44を有する。
ドライブ検出部42は、ドライブ電圧値及びドライブ電流値を検出する。ドライブ電圧値は、変圧器28の一次側の電圧の値であって、X線制御電源22が供給する電力の電圧の値である。ドライブ電流値は、変圧器28の一次側に流れる電流の値であって、X線制御電源22が供給する電力の電流の値である。ドライブ検出部42は、検知(検出)したドライブ電圧値及びドライブ電流値を板厚演算部24へ出力する。実施形態では、ドライブ検出部42は、X線制御電源22が有する図示しないRTC(Real Time Clock)から、ドライブ電圧値及びドライブ電流値の検出時のタイムスタンプである時刻データを取得する。そして、ドライブ検出部42は、検出したドライブ電圧値及びドライブ電流値に、取得した時刻データを付加して、板厚演算部24へ出力する。また、実施形態では、ドライブ検出部42は、予め設定された周期(例えば、100ms)で、ドライブ電圧値及びドライブ電流値を検出するものとする。
管検出部44は、管電圧値及び管電流値を検出する。管電圧値は、変圧器28の二次側の電圧の値であって、フィラメント38とターゲット40間の電圧の値である。管電流値は、X線発生器30の二次側を流れる電流の値であって、フィラメント38とターゲット40間に流れる電流の値である。実施形態では、管検出部44は、抵抗35の両端の電圧を管電圧値として検出し、抵抗35に流れる電流の値を管電流値として検出する。そして、管検出部44は、検知(検出)した管電圧値及び管電流値を板厚演算部24へ出力する。実施形態では、管検出部44は、X線制御電源22が有する図示しないRTCから、管電圧値及び管電流値の検出時のタイムスタンプである時刻データを取得する。そして、管検出部44は、検出した管電圧値及び管電流値に、取得した時刻データを付加して、板厚演算部24へ出力する。また、実施形態では、管検出部44は、予め設定された周期(例えば、100ms)で、管電圧値及び管電流値を検出するものとする。すなわち、実施形態では、ドライブ検出部42および管検出部44は、同じ周期で、ドライブ電圧値、ドライブ電流値、管電圧値、および管電流値の検出を行う。
板厚演算部24は、X線厚み測定装置12の制御全般を司る。板厚演算部24は、X線厚み測定装置12によって測定対象90の厚みを測定するオペレータ等が使用するコンピュータであってよい。板厚演算部24は、出力検出部34から取得した検出値に基づいて、測定対象90の厚みを算出する。板厚演算部24は、X線発生器30に供給する電力の管電圧値に応じたドライブ電圧値を指示する電源制御信号をX線制御電源22に出力する。板厚演算部24は、管検出部44から取得した管電圧値に基づいて設定したドライブ電圧値を指示する電源制御信号を生成してよい。板厚演算部24は、出力検出部34から出力される検出値、ドライブ検出部42により検出されるドライブ電圧値、ドライブ検出部42により検出されるドライブ電流値、管検出部44により検出される管電圧値、管検出部44により検出される管電流値のうち少なくともいずれかを含む測定情報56(図2参照)をネットワーク18へ出力する。板厚演算部24は、例えば、ブロードキャストによって測定情報56を出力してよい。実施形態では、板厚演算部24は、出力検出部304から取得する検出値および測定対象90の厚みのうち、検出値を含む測定情報56を出力しているが、検出値及び測定対象90の厚みの少なくともいずれか一方を含む測定情報56を出力するものであれば、これに限定するものではない。例えば、板厚演算部24は、検出値および測定対象90の厚みの両方を含む測定情報56を出力しても良いし、検出値に代えて、測定対象90の厚みを含む測定情報56を出力しても良い。
予兆データサーバ14は、板厚演算部24から測定情報56を複数回繰り返し取得して、複数の測定情報56から生成したX線厚み測定装置12の異常の予兆を示すデータ68(以下、予兆データ。図2参照)を記憶して蓄積する。ここで、予兆データ68は、X線厚み測定装置12から取得した測定情報56の統計である。そして、予兆データサーバ14は、予兆データ68をメンテナンス装置16からの要求に応じて出力する。
メンテナンス装置16は、例えば、X線厚み測定装置12をメンテナンスするメンテナンス担当者等が使用するコンピュータである。メンテナンス装置16は、予兆データサーバ14から取得した予兆データ68に基づいて、X線厚み測定装置12の異常を診断し、診断した結果を画像等によって出力する。
図2Aは、実施形態のX線厚み測定システム10の制御系の構成を示すブロック図である。まず、図2Aを用いて、X線厚み測定装置12が有する板厚演算部24の機能構成の一例について説明する。図2Aに示すように、板厚演算部24は、制御側処理部46と、制御側記憶部48とを有する。
制御側処理部46は、X線厚み測定装置12の制御全般を司る。制御側処理部46は、演算処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアプロセッサであってよい。制御側処理部46は、制御側記憶部48に格納されたプログラムを読み込み、読み込んだプログラムを制御側記憶部48に展開することで、種々の演算処理を実行する。制御側処理部46は、例えば、測定プログラム54を読み込み、受付部50及び算出部52として機能する。尚、受付部50及び算出部52の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)を含む回路等のハードウェアによって構成されてもよい。
受付部50は、測定情報56を受け付けて、算出部52へ出力する。受付部50は、例えば、出力検出部34から出力される検出値、ドライブ検出部42により検出されるドライブ電圧値、ドライブ検出部42により検出されるドライブ電流値、管検出部44により検出される管電圧値、及び管検出部44により検出される管電流値を、測定情報56として受け付ける。
算出部52は、受付部50から測定情報56を取得すると、当該測定情報56に基づいて、測定対象90の厚みを算出するとともに、X線厚み測定装置12を制御する。例えば、算出部52は、検出値に基づいて、測定対象90の厚みを算出する。実施形態では、算出部52は、出力検出部34から、予め設定された周期(例えば、5ms)で、検出値を取得し、当該検出値を取得する度に、測定対象90の厚みを算出する。すなわち、算出部52は、予め設定された周期(例えば、5ms)で、測定対象90の厚みを算出する。また、実施形態では、算出部52は、板厚演算部24が有する図示しないRTCから、検出値の検出時のタイムスタンプである時刻データを取得する。そして、算出部52は、取得した検出値および算出した測定対象90の厚みに、取得した時刻データを付加する。また、算出部52は、管電圧値及び管電流値が予め設定された設定電圧値になるように、X線制御電源22にドライブ電圧値を指示する電源制御信号を生成して出力する。算出部52は、ブロードキャストで、測定情報56をネットワーク18へ出力してよい。
制御側記憶部48は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)等の主記憶装置及び補助記憶装置を有する。制御側記憶部48は、制御側処理部46が実行する測定プログラム54、及び、測定プログラム54を実行するために取得した測定情報56等を記憶する。測定プログラム54は、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)またはDVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよく、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。
次に、図2Aを用いて、予兆データサーバ14の機能構成の一例について説明する。予兆データサーバ14は、図2Aに示すように、予兆側処理部58と、予兆側記憶部60とを有する。
予兆側処理部58は、予兆データサーバ14の制御全般を司る。予兆側処理部58は、CPU及びGPU等のハードウェアプロセッサであってよい。予兆側処理部58は、予兆側記憶部60に格納されたプログラムを読み込み、読み込んだプログラムを予兆側記憶部60に展開することで、種々の演算処理を実行する。予兆側処理部58は、例えば、予兆プログラム66を読み込み、取得部62及び予兆部64として機能する。取得部62及び予兆部64の一部または全部は、ASICまたはFPGAを含む回路等のハードウェアによって構成されてもよい。
取得部62は、X線厚み測定装置12から測定情報56を取得する。実施形態の取得部62は、ネットワーク18上に流れるドライブ電圧値、ドライブ電流値、管電圧値、管電流値及び検出値のうち少なくとも1つのパラメータを含みかつ当該パラメータの検出時または算出時の時刻データが付加された測定情報56を複数回取得して、予兆部64へ出力する。実施形態の取得部62は、後述する予兆部64による予兆データ68の生成に要する時間よりも長い周期で、X線厚み測定装置12から測定情報56を取得する。すなわち、取得部62により測定情報56を取得する周期が、予兆部64による予兆データ68の生成に要する時間よりも長いものとする。これにより、予兆部64による予兆データ68の生成によって予兆データサーバ14にかかる処理負荷が大きくなって、X線厚み測定装置12からの測定情報56の取得が失敗することを防止できる。
予兆部64は、取得部62により取得した測定情報56を、予兆側記憶部60に書き込む。また、予兆部64は、取得部62により取得した測定情報56の統計を予兆データ68として生成する。そして、予兆部64は、生成した予兆データ68を予兆側記憶部60(記憶部の一例)に書き込む。実施形態の予兆部64は、ネットワーク18から取得した複数の測定情報56に基づいて、X線厚み測定装置12の異常を診断するための予兆データ68を生成して、予兆側記憶部60に蓄積する。予兆部64は、例えば、複数の測定情報56と予め定められた閾値とを比較した結果を統計的に処理した値を予兆データ68として生成してよい。予兆部64は、生成した予兆データ68を予兆側記憶部60に蓄積する。予兆部64は、予兆側記憶部60に蓄積した予兆データ68をメンテナンス装置16からの要求に応じて出力する。尚、予兆部64は、測定情報56に含まれるドライブ電圧値、ドライブ電流値、管電圧値、管電流値及び検出値の少なくともいずれかと閾値とを比較した結果に基づいて、予兆データ68を生成してよい。また、予兆部64は、取得部62により取得した測定情報56にスパイクが発生する度に、当該測定情報56にスパイクが発生したことをメンテナンス装置16に通知する。さらに、予兆部64は、生成した予兆データ68を、アナログやTCP/IP等の通信規格に従って、外部の上位装置に通知する。
予兆側記憶部60は、ROMと、RAMと、HDD等の主記憶装置及び補助記憶装置を有する。予兆側記憶部60は、予兆側処理部58が実行する予兆プログラム66、及び、予兆プログラム66の実行によって生成された予兆データ68等を記憶する。予兆プログラム66は、CD−ROMまたはDVD−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよく、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。
次に、図2Aを用いて、メンテナンス装置16の機能構成の一例について説明する。メンテナンス装置16は、図2Aに示すように、メンテナンス側処理部70と、メンテナンス側記憶部72と、表示部73とを有する。
メンテナンス側処理部70は、メンテナンス装置16の制御全般を司る。メンテナンス側処理部70は、CPU及びGPU等のハードウェアプロセッサであってよい。メンテナンス側処理部70は、メンテナンス側記憶部72に格納されたプログラムを読み込み、読み込んだプログラムをメンテナンス側記憶部72に展開することで、種々の演算処理を実行する。メンテナンス側処理部70は、例えば、メンテナンスプログラム76を読み込み、診断部74として機能する。診断部74の一部または全部は、ASICまたはFPGAを含む回路等のハードウェアによって構成されてもよい。
診断部74は、予兆データサーバ14が出力した予兆データ68を取得して、予兆データ68に基づいて、X線厚み測定装置12の異常を診断する。診断部74は、X線厚み測定装置12の異常の場合、X線厚み測定装置12が故障状態に近づいていることを示す情報(警告を示す情報)、例えば、X線厚み測定装置12が故障状態に近づいているレベル(以下、異常レベルと言う)を示すインジケータ(警告を示す画像である警告画像)を生成し、表示部73に表示させる。表示部73は、予兆データサーバ14から出力される予兆データ68や、警告画像等の各種情報を表示する。具体的には、表示部73は、X線厚み測定装置12の異常レベルを示すインジケータを表示する。そして、表示部73は、予兆データサーバ14から、測定情報56にスパイクが発生したことが通知される度に、インジケータが示す異常レベルを上げる。
メンテナンス側記憶部72は、ROMと、RAMと、HDD等の主記憶装置及び補助記憶装置を有する。メンテナンス側記憶部72は、メンテナンス側処理部70が実行するメンテナンスプログラム76等を記憶する。メンテナンスプログラム76は、CD−ROMまたはDVD−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよく、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。
ここで、図2Bを用いて、X線厚み測定装置12から出力される測定情報56のデータの構成の一例について説明する。図2Bは、実施形態にかかるX線厚み測定システム内で送受信される測定情報のデータの構成の一例を示す図である。
図2Bに示すように、板厚演算部24は、管電圧値TVと、管電流値TCと、ドライブ電圧値Epと、ドライブ電流値Ipと、各値TV,TC,Ep,Ipに付加される時刻データtime1と、検出値Dvと、測定対象90の厚みTと、当該検出値Dvおよび厚みTに付加される時刻データtime2と、を含む測定情報56を、ネットワーク18を介して、予兆データサーバ14に出力する。実施形態では、板厚演算部24は、測定対象90の厚みTを算出する度に(すなわち、予め設定された周期(例えば5ms))で、測定情報56を生成し、当該生成した測定情報56を出力する。
ただし、実施形態では、ドライブ検出部42および管検出部44により各値TV,TC,Ep,Ipを検出する周期(例えば、100ms)が、測定対象90の厚みTを算出する周期(例えば、5ms)よりも長いため、測定対象90の厚みTを算出するタイミングと同じタイミングにおいて、各値TV,TC,Ep,Ipが得られない場合がある。そのため、板厚演算部24は、図2Bに示すように、測定対象90の厚みTが算出されるタイミングにおいて、各値TV,TC,Ep,Ipが得られない場合には、管電圧値TVと、管電流値TCと、ドライブ電圧値Epと、ドライブ電流値Ipと、各値TV,TC,Ep,Ipに付加される時刻データtime1と、としてヌルを含む測定情報56を生成する。よって、実施形態の板厚演算部24は、測定対象90の厚みTが算出される周期で、測定情報56を生成して、当該生成した測定情報56を出力する。
本実施形態では、板厚演算部24は、測定対象90の厚みTを算出する度に、測定情報56を出力しているが、これに限定するものではなく、予め設定された数分の測定情報56が生成される度に、または予め設定された周期分の測定情報56が生成される度に、予め設定された数(所定数)分の連続する測定情報56、または予め設定された周期分(所定期間毎)の測定情報56をまとめて出力しても良い。
次に、図3A〜3Eを用いて、予兆データサーバ14において生成される予兆データ68の一例について説明する。図3A、図3B、図3C、図3D、図3Eは、各々、測定情報56の各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの一例を示すグラフである。図3A、図3B、図3C、図3D、図3Eの各グラフの横軸は、時間を示す。図3Aのグラフの縦軸は、管電圧値TVを示す。図3Bのグラフの縦軸は、管電流値TCを示す。図3Cのグラフの縦軸は、ドライブ電圧値Epを示す。図3Dのグラフの縦軸は、ドライブ電流値Ipを示す。図3Eのグラフの縦軸は、検出値Dvを示す。図3A、図3B、図3C、図3D、図3Eの各値TV、TC、Ep、Ip、Dvは、管電圧値TVを100kVに維持するためにドライブ電圧値Epを制御した場合の値である。取得部62は、板厚演算部24が出力した図3A、図3B、図3C、図3D、図3Eに示す各値TV、TC、Ep、Ip、Dvをネットワーク18から取得して、予兆部64へ出力する。予兆部64は、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvを取得すると、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvに対応付けて予め設定された閾値と各値TV、TC、Ep、Ip、Dvとを比較して、予兆データ68を生成する。ここで、予め設定された閾値は、X線厚み測定装置12の出荷試験時における各値TV、TC、Ep、Ip、Dvを正常な値とし、当該出荷試験時における各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの変動範囲にマージンを加えた値に基づいて設定される。
予兆部64は、図3Aに示すように、例えば、管電圧値TVが第1閾値Th1+a以上、または、第2閾値Th1−a以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、管電圧値TVが第1閾値Th1+a以上、または、第2閾値Th1−a以下であれば、管電圧異常値を1インクリメントする。図3Aに示す例では、管電圧値TVが第1閾値Th1+a以上、または、第2閾値Th1−a以下となっていないので、管電圧異常値をインクリメントしない。
予兆部64は、図3Bに示すように、例えば、管電流値TCが第3閾値Th2+b以上、または、第4閾値Th2−b以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、管電流値TCが第3閾値Th2+b以上、または、第4閾値Th2−b以下であれば、管電流異常値を1インクリメントする。例えば、図3A、図3B、図3C、図3D、図3Eに示す例では、予兆部64は、破線で囲む領域内の管電流値TCが第3閾値Th2+b以上、または、第4閾値Th2−b以下に7回なっているので、管電流異常値を7インクリメントする。
予兆部64は、図3Cに示すように、例えば、ドライブ電圧値Epが第5閾値Th3+c以上、または、第6閾値Th3−c以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、ドライブ電圧値Epが第5閾値Th3+c以上、または、第6閾値Th3−c以下であれば、ドライブ電圧異常値を1インクリメントする。図3Cに示す例では、ドライブ電圧値Epが第5閾値Th3+c以上、または、第6閾値Th3−c以下となっていないので、ドライブ電圧異常値をインクリメントしない。
予兆部64は、図3Dに示すように、例えば、ドライブ電流値Ipが第7閾値Th4+d以上、または、第8閾値Th4−d以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、ドライブ電流値Ipが第7閾値Th4+d以上、または、第8閾値Th4−d以下であれば、ドライブ電流異常値を1インクリメントする。図3Dに示す例では、ドライブ電流値Ipが、第7閾値Th4+d以上、または、第8閾値Th4−d以下となっていないので、ドライブ電流異常値をインクリメントしない。
予兆部64は、図3Eに示すように、例えば、検出値Dvが第9閾値Th5+e以上、または、第10閾値Th5−e以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、検出値Dvが第9閾値Th5+e以上、または、第10閾値Th5−e以下であれば、検出異常値を1インクリメントする。図3Eに示す例では、検出値Dvが、第9閾値Th5+e以上、または、第10閾値Th5−e以下となっていないので、検出異常値をインクリメントしない。
そして、予兆部64は、管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値等の異常値を含む予兆データ68を生成する。尚、管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値等の異常値の各初期値は、0であってよい。従って、値TV、TC、Ep、Ip、Dvが対応する閾値範囲内であれば、値TV、TC、Ep、Ip、Dvに対応する異常値は0である。上述の閾値は、一例であって、例えば、管電圧値TVに応じて、閾値を変化させてもよい。この場合、閾値は管電圧TVに対応付けて予兆側記憶部60に格納されていてよい。
次に、図4Aおよび図4Bを用いて、メンテナンス装置16において表示される警告画像の一例について説明する。図4Aおよび図4Bは、メンテナンス装置16が出力する警告画像92の一例を示す図である。メンテナンス装置16の診断部74は、予兆データサーバ14から取得した予兆データ68に基づいて、表示部73に警告画像92を表示させてよい。具体的には、診断部74は、予兆データ68に含まれる管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値に基づいて、異常レベルを診断する。例えば、診断部74は、管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値のうち、0でない異常値の個数を異常レベルとしてよい。この場合、診断部74は、0レベルから5レベルまでの範囲で異常レベルを設定する。尚、診断部74は、予め定められた異常判定用閾値に基づいて、異常レベルを設定してもよい。この場合、診断部74は、管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値のうち、異常判定用閾値以上の異常値の個数を異常レベルとして設定してよい。本実施形態では、診断部74は、異常レベルとして、0〜5までを設定することとしているが、これに限定するものではなく、6以上を異常レベルとして設定することも可能である。また、診断部74は、予兆データサーバ14から測定情報56にスパイクが発生したことが通知される度に、表示部73に表示される警告画像92が示す異常レベルを上げても良い。例えば、診断部74は、0レベルから5レベルまでの範囲で、予兆データサーバ14から測定情報56にスパイクが発生したことが通知される度に、異常レベルを1ずつ上げても良い。また、診断部74は、予め設定された期間内の予兆データ68に、予め設定された回数以上、スパイクが発生した場合に、異常レベルを上げても良い。これにより、一時的に、予兆データ68にスパイクが発生した場合に、異常レベルが上がることを防止でき、X線厚み測定装置12に異常が発生した可能性が高い場合に異常レベルを上げることができる。その結果、診断部74により設定される異常レベルの信頼性を高めることができる。
そして、診断部74は、異常レベルに応じて、警告画像92を生成してよい。具体的には、診断部74は、設定した異常レベルを示す警告画像92を生成する。そして、表示部73は、生成された警告画像92に表示する。例えば、異常レベルが1の場合、診断部74は、図4Aに示すように、警告画像92内に配列された5個の四角のうち、1番下の四角を着色した警告画像92を生成し、当該生成した警告画像92を表示部73に表示させてもよい。また、異常レベルが4の場合、診断部74は、図4Bに示すように、警告画像92内に配列された5個の四角のうち、1番下から4個の四角を着色した警告画像92を生成し、当該生成した警告画像92を表示部73に表示させてもよい。尚、診断部74は、警告画像92内の四角毎に、着色する色を変化させてよい。このように、診断部74は、異常レベルに応じて生成した警告画像92を表示部73に表示させる。
次に、図5を用いて、X線厚み測定装置12の制御側処理部46が実行する測定処理の流れの一例について説明する。図5は、X線厚み測定装置12の制御側処理部46が実行する測定処理のフローチャートである。制御側処理部46は、測定プログラム54を読み込むことによって、測定処理を実行する。
図5に示すように、測定処理では、制御側処理部46の受付部50は、管電圧値TV及び管電流値TCを管検出部44から取得して、算出部52へ出力する(S102)。受付部50は、ドライブ電圧値Ep及びドライブ電流値Ipをドライブ検出部42から取得して、算出部52へ出力する(S104)。算出部52は、管電圧値TVと設定電圧値とを比較して、ドライブ電圧値Epを制御する(S106)。算出部52は、例えば、管電圧値TVが設定電圧値よりも低ければ、取得したドライブ電圧値Epより高い電圧値を指示する電源制御信号をX線制御電源22に出力する。一方、算出部52は、管電圧値TVが設定電圧値よりも高ければ、取得したドライブ電圧値Epより低い電圧値を指示する電源制御信号をX線制御電源22に出力する。X線制御電源22は、取得した電源制御信号が示す電圧値にドライブ電圧値Epを変化させて、X線発生器30に電力を供給する。
受付部50は、検出値Dvを出力検出部34から取得して、算出部52へ出力する(S108)。算出部52は、検出値Dvに基づいて、測定対象90の厚みを算出する(S110)。算出部52は、ドライブ電圧値Ep、ドライブ電流値Ip、管電圧値TV、管電流値TC及び検出値Dvを含む測定情報56をネットワーク18に出力する(S112)。この後、制御側処理部46は、ステップS102以降を繰り返す。
次に、図6を用いて、予兆データサーバ14の予兆側処理部58により実行される予兆処理の流れの一例について説明する。図6は、予兆データサーバ14の予兆側処理部58が実行する予兆処理のフローチャートである。予兆側処理部58は、予兆プログラム66を読み込むことによって、予兆処理を実行する。
図6に示すように、予兆処理では、取得部62が、測定情報56をネットワーク18から取得して、予兆部64へ出力する(S132)。予兆部64は、予兆データ68を生成する(S134)。予兆部64は、例えば、測定情報56に含まれる各値TV、TC、Ep、Ip、Dvと閾値とを比較して、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvが異常値か否かを判定し、異常値の個数を含む予兆データ68を生成する。予兆部64は、生成した予兆データ68を予兆側記憶部60に格納する(S136)。予兆部64は、予兆データ68の要求を取得したか否かを判定する(S138)。予兆部64は、予兆データ68の要求を取得していないと判定すると(S138:No)、予兆側処理部58は、ステップS132以降を繰り返す。予兆部64は、予兆データ68の要求を取得したと判定すると(S138:Yes)、予兆データ68をネットワーク18へ出力する(S140)。この後、予兆側処理部58は、ステップS132以降を繰り返す。
次に、図7を用いて、メンテナンス装置16のメンテナンス側処理部70が実行するメンテナンス処理の流れの一例について説明する。図7は、メンテナンス装置16のメンテナンス側処理部70が実行するメンテナンス処理のフローチャートである。メンテナンス側処理部70は、メンテナンスプログラム76を読み込むことによって、メンテナンス処理を実行する。
図7に示すように、メンテナンス処理では、診断部74が、予兆データ68の要求をネットワーク18へ出力する(S152)。診断部74は、予兆データ68を取得したか否かを判定する(S154)。診断部74は、予兆データ68を取得するまで待機状態となる(S154:No)。診断部74は、予兆データ68を取得すると(S154:Yes)、予兆データ68に含まれる異常値の個数に基づいて、X線厚み測定装置12の異常を診断して、異常レベルを算出する(S156)。診断部74は、算出した異常レベルに対応する警告を示す情報(例えば、図4Aおよび図4Bに示す警告画像92)を表示部73に出力する(S158)。この後、メンテナンス側処理部70は、ステップS152以降を繰り返す。
上述したように第1実施形態の予兆データサーバ14は、X線厚み測定装置12の故障等の異常を診断するための予兆データ68を生成して蓄積することができる。これにより、予兆データサーバ14は、X線厚み測定装置12の異常の診断を可能にするとともに、X線厚み測定装置12の板厚演算部24の処理負担及び診断に必要な記憶容量を低減できる。
また、第1実施形態の予兆データサーバ14は、メンテナンス装置16からの要求に応じて、蓄積した予兆データ68をメンテナンス装置16に提供している。これにより、予兆データサーバ14は、メンテナンス装置16におけるX線厚み測定装置12の異常の診断を実現できる。
<第2実施形態>
次に、第1実施形態の予兆データ68の生成方法を変更した第2実施形態について説明する。
第2実施形態の予兆部64は、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差と閾値とを比較した結果に基づいて、予兆データ68を生成する。すなわち、予兆部64は、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差と閾値との比較結果を含む予兆データ68を生成する。図8A、図8B、図8C、図8、図8D、図8Eは、各々、測定情報56に含まれる各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差のグラフである。図8A、図8B、図8C、図8D、図8Eの横軸は時間を示す。図8Aのグラフの縦軸は、管電圧値TVの標準偏差を示す。図8Bのグラフの縦軸は、管電流値TCの標準偏差を示す。図8Cのグラフの縦軸は、ドライブ電圧値Epの標準偏差を示す。図8Dのグラフの縦軸は、ドライブ電流値Ipの標準偏差を示す。図8Eのグラフの縦軸は、検出値Dvの標準偏差を示す。図8A、図8B、図8C、図8D、図8Eの各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差は、管電圧値TVを100kVに維持するためにドライブ電圧値Epを制御した場合の値である。
取得部62は、板厚演算部(制御装置)24が出力した図8A、図8B、図8C、図8D、図8Eに示す各値TV、TC、Ep、Ip、Dvをネットワーク18から取得して、予兆部64へ出力する。予兆部64は、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvを取得すると、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差を算出する。予兆部64は、当該標準偏差に対応付けて予め設定された閾値と標準偏差とを比較した結果に基づいて、予兆データ68を生成する。尚、予兆部64は、測定情報56に含まれるドライブ電圧値Ep、ドライブ電流値Ip、管電圧値TV、管電流値TC及び検出値Dvの少なくともいずれかの標準偏差と閾値とを比較した結果に基づいて、予兆データ68を生成してよい。ここで、予め設定された閾値は、X線厚み測定装置12の出荷試験時における各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差を正常な値とし、当該出荷試験時における各値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差の変動範囲にマージンを加えた値に基づいて設定される。
予兆部64は、図8Aに示すように、例えば、管電圧値TVの標準偏差が第1閾値Th1+a以上、または、第2閾値Th1−a以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、管電圧値TVの標準偏差が第1閾値Th1+a以上、または、第2閾値Th1−a以下であれば、管電圧異常値を1インクリメントする。図8Aに示す例では、管電圧値TVが第1閾値Th1+a以上、または、第2閾値Th1−a以下となっていないので、管電圧異常値をインクリメントしない。
予兆部64は、図8Bに示すように、例えば、管電流値TCの標準偏差が第3閾値Th2+b以上、または、第4閾値Th2−b以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、管電流値TCの標準偏差が第3閾値Th2+b以上、または、第4閾値Th2−b以下であれば、管電流異常値を1インクリメントする。例えば、図8A、図8B、図8C、図8D、図8Eに示す例では、予兆部64は、破線で囲む領域内の管電流値TCの標準偏差が第3閾値Th2+b以上、または、第4閾値Th2−b以下に2回なっているので、管電流異常値を2インクリメントする。
予兆部64は、図8Cに示すように、例えば、ドライブ電圧値Epの標準偏差が第5閾値Th3+c以上、または、第6閾値Th3−c以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、ドライブ電圧値Epの標準偏差が第5閾値Th3+c以上、または、第6閾値Th3−c以下であれば、ドライブ電圧異常値を1インクリメントする。図8Cに示す例では、ドライブ電圧値Epが、第5閾値Th+c以上、または、第6閾値Th−c以下となっていないので、ドライブ電圧異常値をインクリメントしない。
予兆部64は、図8Dに示すように、例えば、ドライブ電流値Ipの標準偏差が第7閾値Th4+d以上、または、第8閾値Th4−d以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、ドライブ電流値Ipの標準偏差が第7閾値Th4+d以上、または、第8閾値Th4−d以下であれば、ドライブ電流異常値を1インクリメントする。図8Dに示す例では、ドライブ電流値Ipが、第7閾値Th4+d以上、または、第8閾値Th4−d以下となっていないので、ドライブ電流異常値をインクリメントしない。
予兆部64は、図8Eに示すように、例えば、検出値Dvの標準偏差が第9閾値Th5+e以上、または、第10閾値Th5−e以下か否かを判定する。予兆部64は、例えば、検出値Dvの標準偏差が第9閾値Th5+e以上、または、第10閾値Th5−e以下であれば、検出異常値を1インクリメントする。図8Eに示す例では、検出値Dvが、第9閾値Th+e以上、または、第10閾値Th5−e以下となっていないので、検出異常値をインクリメントしない。
そして、予兆部64は、管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値等の異常値を含む予兆データ68を生成する。尚、管電圧異常値、管電流異常値、ドライブ電圧異常値、ドライブ電流異常値、及び、検出異常値等の異常値の各初期値は、0であってよい。従って、値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差が対応する閾値範囲内であれば、値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差に対応する異常値は0である。
上述したように、第2実施形態の予兆データサーバ14は、測定情報56に含まれる値TV、TC、Ep、Ip、Dvの標準偏差によって予兆データ68を生成している。これにより、予兆データサーバ14は、測定情報56の短時間の誤差に基づく、X線厚み測定装置12の異常の誤診を低減可能な予兆データ68を生成できるとともに、予兆データ68の記憶に必要な記憶容量を低減できる。
<第3実施形態>
次に、上述の実施形態の予兆データ68の生成方法を変更した第3実施形態について説明する。
第3実施形態の予兆部64は、検出値Dvの分散と尖度との積と、予め設定される閾値と、の比較の結果に基づいて、予兆データ68を生成する。予兆部64は、測定情報56に含まれる検出値Dvの分散と尖度との積を算出する。予兆部64は、算出した分散と尖度との積と、予め設定された閾値と、を比較した結果に基づいて、予兆データ68を生成してよい。すなわち、予兆部64は、検出値Dvの分散と尖度との積と、閾値と、の比較結果を含む予兆データ68を生成する。ここで、予め設定された閾値は、X線厚み測定装置12の出荷試験時における検出値Dvの分散と尖度との積を正常な値とし、当該出荷試験時における検出値Dvの分散と尖度との積の変動範囲にマージンを加えた値に基づいて設定する。図9は、測定情報56に含まれる検出値Dvの分散と尖度との積のグラフである。
測定対象90の厚みに対する統計誤差は、ポアソン分布になる。この統計的な誤差を利用して、雑音の性質を検出する。統計誤差がポアソン分布に従う場合、分散及び尖度は、平均値mを用いて次の式で表すことができる。
分散=m
尖度=1/m
従って、ポアソン分布に従う検出値Dvの分散と尖度の積は、平均値mに依存せず一定の値(即ち、1)となる。従って、検出値Dvの分散と尖度の積は、フィラメント38等に異常がなければ、ほぼ1となる。一方、フィラメント38が切れる直前であれば、検出値Dvの分散と尖度の積は、図9に破線の四角で囲む領域で示すように、高い値を示す。従って、予兆部64は、検出値Dvの分散と尖度の積と予め定められた閾値Th6とを比較することにより、フィラメント38等の異常を検出することができる。予兆部64は、検出値Dvの分散と尖度の積が閾値Th6以上となった場合、検出異常値を1インクリメントして予兆データ68を生成してもよい。
上述したように、第3実施形態の予兆データサーバ14は、測定情報56に含まれる検出値Dvの分散と尖度との積によって予兆データ68を生成している。これにより、予兆データサーバ14は、測定情報56の短時間の誤差に基づく、X線厚み測定装置12の異常の誤診を低減可能な予兆データ68を生成できるとともに、予兆データ68の記憶に必要な記憶容量を低減できる。
第3実施形態においては、予兆部64は、検出値Dvの分散と尖度との積と、予め設定された閾値と、を比較した結果に基づいて、予兆データ68を生成しているが、各値TV、TC、Ep、Ip,Dvの標準偏差と、予め設定された閾値と、を比較した結果、および、検出値Dvの分散と尖度との積と、予め設定された閾値と、を比較した結果の少なくともいずれか一方に基づいて、予兆データ68を生成するものであれば、これに限定するものではない。例えば、予兆部64は、各値TV、TC、Ep、Ip,Dvの標準偏差と、予め設定された閾値と、を比較した結果、および、検出値Dvの分散と尖度との積と、予め設定された閾値と、を比較した結果の両方に基づいて、予兆データ68を生成しても良い。
<第4実施形態>
本実施形態は、予兆データサーバ14が、X線厚み測定装置12から取得する測定情報56を記憶し、連続する所定数の測定情報56または所定期間毎の測定情報56の統計を予兆データ68として生成する例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
まず、本実施形態の予兆データサーバ14の機能構成の一例について説明する。
取得部62は、X線厚み測定装置12から取得した測定情報56を、予兆側記憶部60に書き込む。
予兆部64は、予兆側記憶部60に記憶される測定情報56のうち、所定数の連続する測定情報56または所定期間の測定情報56の統計を予兆データ68としてとして生成する。ここで、連続する測定情報56は、X線厚み測定装置12(算出部52)により連続して生成される測定情報56である。また、所定数は、予め設定された数であり、例えば、各日の6万個である。また、所定期間は、予め設定された期間であり、例えば、各日の5分間である。
そして、予兆部64は、生成した予兆データ68を、当該予兆データ68の生成に用いた測定情報56に付加される時刻データと対応付けて、予兆側記憶部60に書き込む。
ところで、X線発生器30に故障等の異常が発生すると、測定対象90の厚さの算出ができなくなり、鋼板製造ラインにおける測定対象90の厚さの制御および監視ができなくなる。よって、X線発生器30に異常が発生する前に(例えば、鋼板製造ラインの定期点検時)、X線発生器30の異常箇所の交換等のメンテナンスを行えれば、X線発生器30の異常による鋼板製造ラインへの影響を小さくすることができる。
しかしながら、測定情報56を用いて生成される予兆データ68は膨大な数となり、膨大な数の予兆データ68の中から、必要な予兆データ68を見つけ出すのは困難である。そこで、本実施形態では、予兆部64は、生成した予兆データ68を、当該予兆データ68の生成に用いた測定情報56に付加される時刻データと対応付けて、予兆側記憶部60に書き込む。これにより、予兆側記憶部60に記憶される予兆データ68と対応付けられる時刻データを参照して、必要な予兆データ68を検索することが可能となる。その結果、予兆側記憶部60に記憶される膨大な数の予兆データ68から、必要な予兆データ68を見つけ易くすることができる。
実施形態では、予兆部64は、生成した予兆データ68を、当該予兆データ68の生成に用いた測定情報56のうち、最初に取得した測定情報56に付加された時刻データおよび最後に取得した測定情報56に付加される時刻データと対応付けて、予兆側記憶部60に書き込む。
また、予兆部64は、予兆データ68を生成後、予兆側記憶部60に記憶される測定情報56のうち、当該予兆データ68の生成に用いた測定情報56を、予兆側記憶部60から削除する。これにより、予兆データサーバ14において測定情報56の記憶に要する記憶容量を削減することができる。ただし、予兆部64は、測定情報56にスパイクが発生した場合、当該測定情報56のスパイクの発生をトリガにして、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を中止する。これにより、測定情報56にスパイクが発生してX線厚み測定装置12に異常が発生した可能性がある場合に、予兆データ68だけでなく、測定情報56を用いて、X線厚み測定装置12の異常を解析することができる。
実施形態では、予兆部64は、測定情報56が含む管電圧値、管電流値、ドライブ電圧値、ドライブ電流値、検出値、および厚みのうち少なくとも1つにスパイクが発生した場合に、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を中止する。また、実施形態では、予兆部64は、予兆側記憶部60に記憶される測定情報56のうち、スパイクが発生した測定情報56に付加される時刻データより後の時刻データが付加された測定情報56を削除しない。
そして、予兆部64は、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を中止してから、予め設定された期間(例えば、24時間)、再び、測定情報56にスパイクが発生しなかった場合、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を再開する。X線厚み測定装置12へのゴミ等の進入によって、一時的に、測定情報56にスパイクが発生した場合には、X線厚み測定装置12の異常が発生した可能性が高く、測定情報56を用いてX線厚み測定装置12の異常を解析する必要性が低いため、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を再開する。これにより、予兆データサーバ14において測定情報56の記憶に要する記憶容量を削減することができる。実施形態の予兆部64は、測定情報56にスパイクが発生してから、予め設定された期間、測定情報56にスパイクが発生しなかった場合、スパイクが発生した測定情報56に付加された時刻データから予め設定された期間経過した後の時刻データが付加された測定情報56については、予兆側記憶部60から削除する。
また、予兆部64は、測定情報56にスパイクが発生する度に、測定情報56にスパイが発生したことを、ネットワーク18を介して、メンテナンス装置16に通知する。さらに、予兆部64は、測定情報56が含む検出値および測定対象90の厚みにスパイクが発生しているが、測定情報56が含むドライブ電圧値、ドライブ電流値、管電圧値、および管電流値にスパイクおよび変動が発生していない場合、X線厚み測定装置12内において、X線管36以外の箇所に異常があることを検出する。そして、予兆部64は、X線厚み測定装置12内においてX線管36以外の箇所に異常があることを、ネットワーク18を介して、メンテナンス装置16に通知する。
次に、本実施形態のメンテナンス装置16の機能構成の一例について説明する。
診断部74は、予兆データサーバ14から取得した予兆データ68をX軸とし、時間軸をY軸とするグラフ(以下、予兆データグラフと言う)を表示部73に表示させる。そして、診断部74は、メンテナンス装置16が有する図示しない操作部を介して指示された、予兆データグラフの時間軸上の時間帯の測定情報56を表示部73に表示させる。
これにより、メンテナンス装置16のオペレータが、表示部73に表示された予兆データ68を見て、X線厚み測定装置12の異常があることを認識した場合に、容易に、測定情報56を確認することができるので、測定情報56を用いたX線厚み測定装置12の異常の解析を容易化できる。実施形態では、診断部74は、X線厚み測定装置12から出力される測定情報56を予め取得しておき、取得した測定情報56のうち、指示された時間帯の時刻データが付加された測定情報56を表示部73に表示させるものとする。
また、診断部74は、予兆データサーバ14から、測定情報56にスパイクが発生したことが通知された場合に、測定情報56にスパイクが発生したことを通知する通知画像を表示部73に表示させる。これにより、メンテナンス装置16のオペレータが、X線厚み測定装置12に何らかの異常が発生していることを容易に認識することができる。
次に、図10〜15を用いて、測定情報56が含む管電圧TVの統計である予兆データ68の生成処理の一例について説明する。ここでは、測定情報56が含む管電圧の予兆データ68を生成する例について説明するが、測定情報56が含む他のパラメータ(例えば、管電流値TC、ドライブ電圧値Ep、ドライブ電流値Ip,検出値Dv、および厚みTについても同様にして、予兆データ68を生成するものとする。
図10は、第4実施形態にかかる予兆データサーバが取得する測定情報が含む管電圧の一例を示す図である。図10において、縦軸は管電圧TV(kV)を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、図10に示すように、約130kVの管電圧TVの検出結果を含む測定情報56を取得する。そして、予兆部64は、図10に示す管電圧TVの検出結果に基づいて、所定期間(ここでは、100s)毎の管電圧TVの予兆データ68(例えば、平均、標準偏差、分散、歪度、および尖度)を生成する。
図11は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにより生成される管電圧の平均の生成結果の一例を示す図である。図11において、縦軸は管電圧TVの平均(kV)を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、図11に示すように、所定期間(ここで、100s)毎の管電圧TVの平均を、予兆データ68として生成する。
図12は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにより生成される管電圧の標準偏差の生成結果の一例を示す図である。図12において、縦軸は管電圧TVの標準偏差(kV)を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、図12に示すように、所定期間(ここでは、100s)毎の管電圧TVの標準偏差σを、予兆データ68として生成する。
図13は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにより生成される管電圧の分散の生成結果の一例を示す図である。図13において、縦軸は管電圧TVの分散を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、図13に示すように、所定期間(ここでは、100s)毎の管電圧TVの分散を、予兆データ68として生成する。
図14は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにより生成される管電圧の歪度の生成結果の一例を示す図である。図14において、縦軸は管電圧TVの歪度を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、図14に示すように、所定期間(ここでは、100s)毎の管電圧TVの歪度を、予兆データ68として生成する。
図15は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにより生成される管電圧の尖度の生成結果の一例を示す図である。図15において、縦軸は管電圧TVの尖度を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、図15に示すように、所定期間(ここでは、100s)毎の管電圧TVの尖度を、予兆データ68として生成する。
次に、図16を用いて、本実施形態にかかる予兆データサーバ14による測定情報56の書込処理の一例について説明する。ここでは、管電圧TVにスパイクが発生した場合の測定情報56の書込処理について説明するが、測定情報56が含む他のパラメータ(例えば、管電流値TC、ドライブ電圧値Ep、ドライブ電流値Ip,検出値Dv、および厚みT)についてスパイクが発生した場合も同様にして、測定情報56の書込処理を実行する。
図16は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにおける測定情報の書込処理の一例を説明するための図である。図16において、縦軸は管電圧TV(kV)を表し、横軸は時間軸(ms)を表す。予兆部64は、予兆データ68を生成後、予兆側記憶部60に記憶される測定情報56のうち、予兆データ68の生成に用いた測定情報56を予兆側記憶部60から削除する。
ただし、図16に示すように、時刻t1において、管電圧TVにスパイクが発生した場合、予兆部64は、測定情報56の削除を中止する。そして、図16に示すように、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を中止してから、予め設定された期間(例えば、830s)経過した時刻t2まで、再び、管電圧TVにスパイクが発生しなかった場合、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を再開する。
次に、図17を用いて、本実施形態にかかるメンテナンス装置16による予兆データ68および測定情報56の表示処理の一例について説明する。ここでは、測定情報56が含む管電圧TVの予兆データ68の一例である標準偏差σを表示する例について説明するが、測定情報56が含む他のパラメータの予兆データ68についても同様にして表示する。
図17は、第4実施形態にかかるメンテナンス装置による予兆データおよび測定情報の表示処理の一例を説明するための図である。図17に示すように、メンテナンス装置16の診断部74は、縦軸が管電圧TVの標準偏差σを表し、横軸が時間軸(ms)を表す予兆データグラフ1701を含むウィンドウW1を、表示部73に表示させる。
そして、診断部74は、メンテナンス装置16が有する図示しない操作部を介して、表示部73に表示したウィンドウW1内の予兆データグラフ1701の時間軸において、測定情報56を表示させる時間帯が指示されると、当該指示された時間帯の管電圧TVのグラフを含むウィンドウW2を表示部73に表示させる。ここで、管電圧TVのグラフは、縦軸が管電圧TV(kV)を表し、横軸が時間軸(ms)を表す。
これにより、メンテナンス装置16のオペレータが、ウィンドウW1に表示された予兆データグラフ1701を見て、X線厚み測定装置12の異常があることを認識した場合に、容易に、管電圧TVのグラフを確認することができるので、測定情報56を用いたX線厚み測定装置12の異常の解析を容易化できる。
次に、図18を用いて、本実施形態にかかる予兆データサーバ14の予兆側処理部58により実行される予兆処理の流れの一例について説明する。
図18は、第4実施形態にかかる予兆データサーバにより実行する予兆処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18に示すように、本実施形態の予兆処理では、取得部62が、ネットワーク18を介して、X線厚み測定装置12から、測定情報56を取得して、予兆側記憶部60に書き込む(S1801)。予兆部64は、所定数の連続する測定情報56を取得したか否かを判断する(S1802)。所定数の連続する測定情報56が取得されていない場合(S1802:No)、S1801に戻り、取得部62は、新たな測定情報56を取得する。
一方、所定数の連続する測定情報56を取得した場合(S1802:Yes)、予兆部64は、所定数の連続する測定情報56に基づいて、予兆データ68を生成する(S1803)。予兆部64は、例えば、測定情報56に含まれる各値TV、TC、Ep、Ip、Dvと閾値とを比較して、各値TV、TC、Ep、Ip、Dvが異常値か否かを判定し、異常値の個数を含む予兆データ68を生成する。そして、予兆部64は、生成した予兆データ68を予兆側記憶部60に格納する(S1804)。
さらに、予兆部64は、取得した測定情報56にスパイクが発生しているか、または、測定情報56に最後にスパイクが発生してから、新たなスパイクが発生せずに、予め設定された期間経過しているかを判断する(S1805)。取得した測定情報56にスパイクが発生していない場合、または、測定情報56に最後にスパイクが発生してから予め設定された期間経過している場合(S1805:No)、予兆部64は、予兆側記憶部60から、取得した測定情報56を削除する(S1806)。一方、取得した測定情報56にスパイクが発生している場合、または、測定情報56に最後にスパイクが発生してから予め設定された期間経過していない場合(S1805:Yes)、予兆部64は、予兆側記憶部60からの測定情報56の削除を行わない。
次いで、予兆部64は、メンテナンス装置16から、予兆データ68の要求を取得したか否かを判定する(S1807)。予兆部64は、予兆データ68の要求を取得していないと判定すると(S1807:No)、予兆側処理部58は、ステップS1801以降を繰り返す。予兆部64は、予兆データ68の要求を取得したと判定すると(S1807:Yes)、予兆データ68をネットワーク18へ出力する(S1808)。この後、予兆側処理部58は、ステップS1801以降を繰り返す。
このように、第4実施形態にかかる予兆データサーバ14によれば、予兆側記憶部60に記憶される予兆データ68と対応付けられる時刻データを参照して、必要な予兆データ68を検索することが可能となる。その結果、予兆側記憶部60に記憶される膨大な数の予兆データ68から、必要な予兆データ68を見つけ易くすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
上述の実施形態では、予兆データサーバ14とは別のメンテナンス装置16に診断部74を設ける例を挙げて説明したが、診断部74は予兆データサーバ14に設けられていてもよい。