JP6584284B2 - 接着シート - Google Patents
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Description
しかしながら、後者の隙間に対して、特許文献1による技術では、接着シートの基材にスプリングバック特性(U字やV字等に折り曲げたときに元に戻ろうとする特性)が高い樹脂シートを使用していたため、その隙間の形状に沿うよう挿入すること、すなわち屈曲部の形状に沿うように接着シートを変形させること、さらにはその変形状態を保持させることが困難であった。その結果、形状が複雑な隙間を完全に充填することができず、作業効率が低下していた。
本発明の接着シートは、樹脂シートの片面又は両面に接着層を有する。接着層は、発泡性の接着剤組成物により形成される。この場合において、樹脂シートとして、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつDSC曲線中で下方向へシフトする前後の各基線間の幅(ΔH)と昇温速度(Φ)に基づいて式:(ΔH/Φ)で表される、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)が60〜420mJ/(K・g)の熱可塑性樹脂を含む原料から形成されたものを用いることを特徴とする。
本発明の電気部品又は電子部品の製造方法は、部品間に存在する屈曲部を含む隙間に本発明の接着シートを入れ、加熱し、接着層を熱発泡させることを特徴とする。
BL2…ガラス転移後の基線例
CP…変曲点
SP…補外開始温度
1…ステンレス成形品
2…SPCC鋼板
3…接着シートをコの字型に成型した試験片
3’…加熱発泡後の試験片
4…充填試験装置
5…切断箇所
本発明の接着シートに基材として用いられる樹脂シートは、熱可塑性樹脂を含む原料で形成したものであればよい。
樹脂シートの形成に使用する熱可塑性樹脂は、変形後の形状保持性の観点から、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつガラス転移による熱容量変化(ΔCs=ΔH/Φ)が60〜420mJ/(K・g)、好ましくは60〜200mJ/(K・g)であればよい。
本発明者は、こうした特性を持つ熱可塑性樹脂を含む原料で形成した樹脂シートこそが変形後の形状保持性を維持でき、その結果、その樹脂シートを基材に含む接着シートを用いれば、形状が複雑な隙間を完全に充填することができることを見出したものである。
一方、樹脂シートを形成する原料のΔCs値が低い(60mJ/(K・g)未満)と、ガラス領域においてもゴム領域とほとんど変わらない剛直さを持つため、外部応力の影響は外部応力がかかっている時間のみにとどまり、その弾性から変形を元に戻そうとする作用が多く働くようになる。そのため、折り曲げ状態を維持することができず、変形後の形状保持性が不良になるものと思われる。
また、樹脂シートを形成する原料がTgを持たず、したがってΔCs値を定義できないポリイミド等の場合、剛直な構造を持つが、広い温度範囲にわたって過度に剛直を示すため、折り曲げにより変形させるためには非常に大きな外部応力が必要となる。また、その形状を保持することは困難になると思われる。
トリアセチルセルロースは、セルロースを無水酢酸と反応させて,セルロース分子をアセチル化することにより得られるが、そのトリアセチルセルロースフィルムとして市販品、例えば、コニカミノルタ社製、富士フィルム社製等を用いてもよい。
本発明の接着シートにおいて、樹脂シートの片面又は両面に積層する接着層は、熱発泡性の接着剤組成物により形成されるものであれば特に限定されない。その一例を示すと次のとおりである。
基材上に接着層及びコート層を積層したシートを、5cm×5cmの大きさに切って6枚の接着シートを用意する。該接着シートのコート層同士が向かい合うようにを6枚重ねてからガラス板に挟む。上記積層体上に100gの荷重をかけて常温(25℃)で24時間静置した後、荷重を解除してガラス板を上下に広げた際、各接着シートのコート層同士が密着した状態で接着シートの基材と接着層間で剥離が生じることを密着している、すなわちコート層が常温でタックを示すという。一方、ガラス板を上下に広げた際、接触していたコート層間で剥離する場合は、コート層は、常温でタックを示さないという。
「割れが生じる」とは、接着シートを180度に折り曲げた際に、接着層に亀裂が生じ、少なくとも接着層の一部が脱落すること、あるいは脱落しうる状態にあることをいう。
本発明において「コート層が消失する」とは、原則として、本発明の接着シートに、コート層を形成する樹脂のガラス転移温度を超える熱が加わることによってコート層が軟化し、これによりコート層の樹脂が接着層を形成する(硬化前の)熱硬化型樹脂と混ざり合うことによって接着層と一体化し、接着層上に存在していたコート層が見掛け上、存在しなくなることをいう。具体的には、後述する方法で接着シートを切断し、その断面をマイクロスコープで観察し、コート層の少なくとも一部が、接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失している場合をコート層が消失していると判断する。すなわち、本発明では、加熱により接着層が硬化した後の接着シートの、被着体と接する部分に、加熱硬化後の接着層の少なくとも一部が露出した状態になっている場合も、「コート層は消失している」と判断するものとする。つまり、本発明において「コート層が消失する」を解釈するにあたり、接着層を形成する(硬化前の)熱硬化型樹脂に対する、コート層を形成する樹脂の混ざり合う度合いは完全でなくてもよく、加熱硬化後、シート表面に接着層としての機能を発現すればよい。少なくとも、加熱により接着層が硬化した後の接着シートの、被着体と接する部分に、加熱硬化後の接着層の一部がシート表面に露出していればよい。加熱硬化後の接着層の全部がシート表面に露出している場合、それは接着層上に存在していたコート層が完全に存在しなくなっていることを意味する。
本実施形態の接着層を形成する接着剤組成物に含有させる熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性シロキサン変性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独、又は2種以上を併用して用いることができる。
また、本実施形態の接着層を形成する接着剤組成物に含有させる熱硬化型樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。また、エポキシ基、水酸基、アミド基、カルボキシル基、シラノール基、メルカプト基等の反応性基をもつ熱可塑性樹脂は硬化剤を加えることによって熱硬化型樹脂としても使用することができる。このような熱硬化型樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド酸樹脂等が挙げられる。
ここでの軟化温度は、JIS K7234(環球法)で定められた方法により測定される値である。
本実施形態では、シート状に形成しやすくするため、接着剤組成物に含有させる熱硬化型樹脂は、重量平均分子量が450以上であることが好ましい。分子量が450未満であると常温で液状に近い樹脂となるため、接着層の形状が保てない場合があるからである。
熱膨張性微小球としては、弾性を有する外殻の内部に発泡剤が封入された構造を有し、全体として熱膨張性(加熱により全体が膨らむ性質)を示す微小球を好適例として挙げることができる。
弾性を有する外殻としては、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質等、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等で形成されたものを好適例として挙げることができる。
発泡剤としては、加熱により容易にガス化して膨張する物質、例えばイソブタン、プロパン、ペンタン等の炭化水素を主として挙げることができる。熱膨張性微小球の市販品としては、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェアー」シリーズ(松本油脂製薬社製)、アドバンセルEMシリーズ(積水化学工業社製)、エクスパンセル(日本フェライト社製)等を挙げることができる。
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類等が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、水、塩フッ化アルカン(例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等)、アゾ系化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート等)、ヒドラジン系化合物(例えば、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等)、セミカルバジド系化合物(例えば、ρ−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等)、トリアゾール系化合物(例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等)、N−ニトロソ系化合物(例えば、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等)、等が挙げられる。
これらの熱発泡剤は、単独又は複数を混合して用いることができる。
これらの硬化剤は、単独又は複数を混合して用いることができる。
本実施形態の接着剤組成物は、これをシート状に形成した接着層の状態における硬化開始温度(T2)が好ましくは110℃以上250℃以下となるよう、各成分を配合することが望ましい。
発泡前の接着層の厚み(t1)は接着シートの用途に応じて適宜選択すればよいが、下限として20μm以上、さらには30μm以上とすることが好ましく、上限として1000μm以下、さらには400μm以下、さらにまた200μm以下とすることが好ましい。接着層の厚みを20μm以上とすることにより、発泡反応によって生成された気泡を接着層内に保持させやすい。接着層の厚み(t1)を1000μm以下とすることにより、例えば、1mm以下の狭い空隙を充填させることが可能となる。
本実施形態の好ましい態様において接着層上に配置されるコート層を形成する樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等の熱可塑性樹脂が使用可能である。これらは、単独又は複数を組み合わせて用いることができる。なかでも、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を用いるのが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、商品名バイロン200(東洋紡績社製)、商品名ポリエスターTP220(日本合成化学社製)、商品名エリーテルKAシリーズ(ユニチカ社製)等が挙げられる。
また、フェノキシ樹脂を溶剤を用いて溶解したものも市販されており、こちらも同様に使用される。例えば、jER 1256B40、jER 1255HX30、jER YX6954BH30、YX8100BH30、jER YL7174BH40(いずれも三菱化学社製)、YP−40ASM40、YP−50EK35、YPB−40PXM40、ERF−001M30、YPS−007A30、FX−293AT40(いずれも新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
コート層が消失するメカニズムは次のとおりである。コート層を形成する樹脂のガラス転移温度を超える熱が加わることによってコート層が軟化する。これによりコート層の樹脂が接着層を形成する接着剤樹脂(上述した硬化前の熱硬化型樹脂、又は熱可塑性樹脂)と混ざり合い、接着層と一体化する(接着層内に取り込まれる)。その結果、接着層上に存在していたコート層が見掛け上、存在しなくなる。接着層を形成する
なお、本発明では、上述したように、加熱により接着層が硬化した後の接着シートの、被着体と接する部分に、加熱硬化後の接着層の少なくとも一部が露出(接触)していれば、「コート層は消失している」ものと判断する。
本実施形態において、t2は、例えば、0.5μm以上600μm以下が好ましい。
後述する各例で用いた樹脂シートに対し、下記項目について以下の方法により測定又は評価した。結果を表1又は表2に示す。
ガラス転移温度は次のようにして決定した。
まず、実験例1〜3、5〜9の樹脂シートについては、前記前処理を行わないものを測定試料とした。また、実験例4の樹脂シートについては、80℃付近に吸熱反応が見られ、目的とするガラス転移温度の検出が困難なため、前処理として80℃で10分間加熱したものを測定試料とした。
次に、上記測定試料について、測定装置として示差走査熱量測定装置(DSC3200、Mac Science社製)を用いた示差走査熱量測定(DSC)により、温度(℃)と熱流(熱容量。mJ/(s・g))をそれぞれ横軸(X軸)と縦軸(Y軸)に取ったXY平面上に、DSC曲線を得た(図2〜10)。
上記1.(1)で準備した各測定試料について得られたDSC曲線を用い、該曲線中で下方向へシフトする前後の各基線(例えば図1における「BL1」と「BL2」)間の幅(すなわち測定試料がガラス転移する前後の各基線の差)を熱容量変化度ΔH(単位:mJ/(s・g))と定義した上で、このΔHを測定試料の昇温速度Φ(単位:K/s)で除することにより算出される値を、測定試料のガラス転移による熱容量変化ΔCs(単位:mJ/(K・g))と定義した(上記非特許文献の同頁を参照)。各測定試料の熱容量変化度ΔHは、得られたDSC曲線から図2〜10に示すように決定した。昇温速度Φは、10K/sとした。結果を表1に示す。
なお、実験例4はガラス転移温度の直後に発熱反応ピークが見られたが、これは液晶相転移と思われるため、発熱ピークの開始前の地点をガラス転移後の基線値とし、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)を算出した。
実験例1〜9の樹脂シートについて、アンダーラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の難燃性試験規格UL94の薄手材料垂直燃焼試験方法及び垂直燃焼試験方法に準ずる試験を行い、VTMランク及びVランクを判定し、以下の基準で評価した。なお、評価に用いた樹脂シートのサンプルサイズは50mm×200mmとした。結果を表2に示す。
◎:UL94薄手材料垂直燃焼試験においてVTM−0を満たし、かつUL94垂直燃焼試験においてV−0を満たすもの。
○:UL94薄手材料垂直燃焼試験においてVTM−0を満たすもの。
×:UL94薄手材料垂直燃焼試験においてVTM−0を満たさないもの。
実験例1〜9の樹脂シートについて、JIS K7113に準拠して測定した(単位:MPa)。具体的には、タイプ2号型試験片を用いて樹脂シートを打ち抜き、万能試験機(インストロン社製)を用いて50mm/分の速度で試験を行い、下記式により算出した。結果を表2に示す。
σ1:変位ε1=0.0005において測定された引張応力(MPa)
σ2:変位ε2=0.0025において測定された引張応力(MPa)
実験例1〜9の樹脂シートについて、JIS C2110の短時間法に準拠して測定した。具体的には、試験片は樹脂シートを50mm×50mmに切断したものを用いた。試験電極はφ12.5mmの球状黄銅電極を用い、電極間圧着力は500gとし、シリコーンオイル中で測定を行った。なお、電圧の昇圧速度は1kV/秒とした。結果を表2に示す。
実験例1〜9の樹脂シートを40mm×100mmのサイズに切断し、試験片を作成した後、これを厚み10mmのゴム板上に載置した。次に、厚み1mm、幅50mm、高さ50mmの金属板を用いて、試験片と対向するように12.5kg/cm2の条件で垂直に押し当て(加圧)、30秒保持した。次に、変形できるかどうかの評価として加圧開放1秒後と、変形後の形状保持性の評価として加圧開放10秒後における試験片の折り曲がり角(折り曲がり片のゴムシート面に対する角度)を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
×:加圧解放1秒後の折り曲がり角が45度以上、加圧開放10秒後の折り曲がり角が45度未満(変形できたが、変形後の形状保持性が不良)のもの。
××:加圧解放1秒後及び加圧開放10秒後の折り曲がり角が45度未満(変形できない)のもの。
下記構成成分を下記固形分比(質量換算)で均一に混合して調製した。塗工液中の全固形分は85%とした。
・熱硬化型樹脂(ノボラック型エポキシ樹脂): 100質量部
(NC−2000L、エポキシ当量:229〜224g/eq、軟化温度:47〜57℃、重量平均分子量:700〜800、粘度(190℃):0.11dPa・s、日本化薬社製)
・硬化剤(固形分100%): 8.9質量部
(ジシアンジアミド(DICY)、ジャパンエポキシレジン社製)
・硬化促進剤(固形分100%): 0.5質量部
(キュアゾール2MZ−A、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル− (1’)]−エチル−s−トリアジン、四国化成社製)
・熱発泡剤: 10質量部
(マツモトマイクロスフェアーF100M、熱膨張性微小球、質量平均粒径:17〜23μm、熱膨張温度(熱発泡温度T1と同義):120℃、最大熱膨張温度:160℃、膨張倍率:10倍、松本油脂製薬社製)
下記構成成分を下記固形分比(質量換算)で均一に混合して調製した。塗工液中の全固形分は40%とした。
<コート層形成塗工液の構成成分>
・熱可塑性樹脂(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂): 100質量部
(PKHH、ガラス転移温度(T3):92℃、InChem社製)
・硬化剤(固形分75%): 10質量部
(タケネート600、三井武田ケミカル社製、NCO含有量:43.3%)
[接着層及びコート層の作成]
上述した構成の接着層形成塗工液例とコート層形成塗工液を用い、離型フィルム(バイナNo.23、藤森工業社製、厚み38μm)の離型処理面上に、コート層形成塗工液をベーカー式アプリケーターにて塗布した。その後、140℃で1分、乾燥することによってコート層を厚み(t2)5μmで形成した(積層品a’)。次に、コート層表面に、接着層形成塗工液を上記と同様に塗布した。その後、120℃で1〜2分、乾燥することによって接着層を厚み(t1)50μmで形成した(積層品a)。
また、離型フィルム上にコート層を形成しなかった以外は、上記と同じようにして、離型フィルム上に接着層を形成した(積層品b)。
(1)熱発泡温度(T1)
測定装置として動的粘弾性測定装置(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用し、熱膨張性微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、熱膨張性微小球層の上部にアルミ蓋(5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定する。正方向への変位開始温度を熱発泡温度(T1)とした。その結果、T1は120℃であった。
測定装置として示差走査熱量測定装置(DSC3200、Mac Science社製)を使用し、作成したシート状の接着層樹脂を、常温から300℃において10℃/分で昇温したときの、定常範囲におけるDSCベースラインと硬化反応時のDSC上昇線の交わる点を硬化開始温度(T2)とした。その結果、T2は151℃であった。
測定装置として示差走査熱量測定装置(DSC3200、Mac Science社製)を使用し、作成したシート状のコート層樹脂を、常温から300℃において10℃/分で昇温したときのDSCベースライン変化点をガラス転移温度(T3)とした。その結果、T3は92℃であった。
上記積層品aについて、5cm×5cmサイズに切断し、厚み1mmのSPCC鋼板上に接着層が接するように置き、積層品aから離型フィルムを剥離した。次いで190℃に加熱したオーブンに30分間放置した後、取り出した。その後、SPCC鋼板、接着層(及びコート層)の全厚を測定し、得られた測定値から離型フィルムの厚みを減ずることにより加熱後の接着層の厚みを算出した。その結果、加熱後の接着層の厚みは325μmであった。よって、接着層の発泡倍率は5.9倍となった。
積層品a(コート層あり)と、積層品b(コート層なし)について、加熱発泡前に、接着層側の任意箇所を180度に折り曲げた後、接着層の状態を目視により確認した。
その結果、積層品a及び積層品b共に、接着層自体の割れは認められず良好なものであった。
上記積層品aを厚み1mmのSPCC鋼板上に接着層が接するように置き離型フィルムを剥離した。さらに厚み1mmのSPCC鋼板を接着層の厚みとコート層の厚みの合計の2倍の間隙を形成するようにして重ねて固定した。次いで190℃に加熱したオーブンに30分間放置した後、取り出した。これをSPCC鋼板上及び接着層(及びコート層)の断面が確認できるように垂直に切断し、断面をマイクロスコープにて観察しコート層の有無を確認した。その結果、コート層は無くなりSPCC鋼板に貼着していた。
[実験例1]
基材としての樹脂シート(厚み:50μm、ポリエチレンナフタレートフィルム:テオネックスQ51、帝人デュポンフィルム社製)の両方の面に、上記積層品aの接着層表面が向かい合うように80℃の熱を掛けながらラミネートした後、離型フィルムを剥離し、実験例1の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、ポリカーボネートフィルム:ピュアエース、帝人社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例2の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、パラ芳香族アミドフィルム:ミクトロン(GQタイプ)、東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例3の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、トリアセチルセルロースフィルム:8VAW、コニカミノルタ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例4の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、液晶ポリマー(LCP)フィルム:ベクスター、クラレ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例5の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、光学用ポリエチレンテレフタレートフィルム:ルミラーU403東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例6の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、工業用ポリエチレンテレフタレートフィルム:ルミラーT60、東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例7の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、ポリフェニレンスルファイドフィルム:トレリナ、東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例8の接着シートを得た。
基材として樹脂シート(厚み:50μm、ポリイミドフィルム:カプトン100H、東レデュポン社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例9の接着シートを得た。
実験例1〜9で得られた接着シートについて、下記項目について以下の方法により評価した。結果を併せて表1に示す。
厚み0.3mmのステンレス板をコの字型に成形したステンレス成形品1のコの字部分に10mm×15mm×厚み1.5mmのSPCC鋼板2を設置した充填試験装置4を作製した。(図11)。ステンレス成形品1とSPCC鋼板2の間隙は0.45〜0.5mmとなった。
そして、充填試験装置4のコの字型の間隙部に当該試験片3を挿入した(図13、図14)。次いで、190℃に加熱したオーブンに20分間放置し、加熱発泡させた後、取り出した。
その後、充填試験装置4を試験片3の挿入方向と直行する方向5に切断し(図13)、コの字状隙間の充填状況を目視及びマイクロスコープ(デジタルマイクロスコープVHX、キーエンス社製)により200倍で観察し以下の基準で評価した(図15)。
◎:基材がコの字状態を保持し、角部の隙間を充填しているもの(図15(a))。
〇:基材がコの字状態から変形が認められたが、角部の隙間を充填しているもの(図15(b))。
××:加熱発泡前から基材がコの字形状を保持されておらず、未充填の部分が発生したもの(図15(c))。
表1に示すように、実験例1〜5では、樹脂シートがガラス転移による熱容量変化ΔCsの値が十分に高い原料(熱可塑性樹脂)からなるものであった。その結果、変形後の形状保持性が良好な樹脂シートとなった。また、実験例1〜5の接着シートは、これらの樹脂シートを基材として用いたところ、コの字形状に接着シートを変形後、形状を保持し、樹脂シートと被着体であるステンレス板及びSPCC鋼板との間隙が等しく保たれた状態で、接着層が加熱により硬化発泡し隙間がすべて埋まった。その結果、実験例1〜5で得られた接着シートは、被着体間の間隙が最も大きくなる角部への充填性が良好なものとなった。この際に、実験例1、2及び4では基材に変形が見られたが、実験例3及び5では、基材に変形は見られなかった。
これに対し、実験例6〜8では、樹脂シートがTgを持つもののΔCs値が低い原料からなり、その結果、変形後の形状保持性が不良な樹脂シートとなった。また、実験例6〜8での接着シートは、これらの樹脂シートを基材として用いたところ、コの字形状に接着シートを変形後、形状を保持することができず、樹脂シートと被着体であるステンレス板及びSPCC鋼板との間隙が不均一な状態で接着層が加熱により硬化発泡し、未充填の部分が発生した。その結果、実験例6〜8で得られた接着シートは、実験例1〜5と比較して、角部への充填性が不十分なものとなった。
次に、実験例9では、樹脂シートがTgを持たずΔCsを定義不能な原料からなり、その結果、折り曲げによる変形ができない樹脂シートとなった。また、実験例9の接着シートは、この樹脂シートを基材として用いたところ、コの字形状に接着シートが変形できず、樹脂シートと被着体であるステンレス板及びSPCC鋼板との間隙が不均一な状態で接着層が加熱により硬化発泡し、未充填の部分が発生した。その結果、実験例9で得られた接着シートは、実験例6〜8と同様に角部への充填性が不十分なものとなった。
Claims (7)
- 樹脂シートの少なくとも片面に、発泡性の接着剤組成物による接着層と、該接着層の上に積層され、樹脂からなり、常温でタックを示さないが熱により軟化して消失するコート層と、を有する接着シートであって、
前記接着層を形成する接着剤組成物は、熱発泡剤と軟化温度が105℃以下の熱硬化型樹脂を含み、
前記樹脂シートは、その原料として、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつDSC曲線中で下方向へシフトする前後の各基線間の幅(ΔH)と昇温速度(Φ)に基づいて式:(ΔH/Φ)で表される、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)が60〜420mJ/(K・g)の熱可塑性樹脂を含み、
熱発泡剤の熱発泡温度をT1とし、接着層の硬化開始温度をT2とし、コート層のガラス転移温度をT3としたとき、T3<T1≦T2の関係を満足する、ことを特徴とする接着シート。 - 前記樹脂シートはガラス転移温度が150℃以上の熱可塑性樹脂を用いた請求項1記載の接着シート。
- UL94規格に準ずる試験においてVTM−0以上の難燃性を有する樹脂シートを用いた請求項1又は2記載の接着シート。
- 前記樹脂シートを形成する熱可塑性樹脂は、重量平均分子量が20000以上100000未満である請求項1〜3のいずれかに記載の接着シート。
- 前記コート層は、その厚み(t2)が、加熱前または加熱発泡前の前記接着層の厚み(t1)の60%以下であって0.5μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の接着シート。
- 空隙の充填に用いる請求項1〜5のいずれかに記載の接着シート。
- 部品間に存在する屈曲部を含む隙間に請求項6記載の接着シートを入れ、加熱し、前記接着層を熱発泡させることを特徴とする、電気部品又は電子部品の製造方法。
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