JP2016084470A - 接着シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 折り曲げ等の変形状態を保持しつつ十分な発泡性能を維持しながら変形後の形状保持性に優れ、その結果、形状が複雑な隙間を完全に充填することが可能な接着シートを提供する。【解決手段】 発泡性の接着剤組成物による接着層を有する接着シートの基材に、樹脂シートとして、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつDSC曲線中で下方向へシフトする前後の各基線間の幅(ΔH)と昇温速度(Φ)に基づいて式:(ΔH/Φ)で表される、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)が60〜420mJ/(K・g)の熱可塑性樹脂を含む原料から形成されたものを用いたことが特徴である。【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、各種空隙を充填する用途への利用に適した接着シートに関する。
各種電気部品又は電子部品等を製造するに際し、内部への水の浸入を防止したり、隣接又は対向する2つの部材間を絶縁させるために、各部材間に存在する隙間(又は空隙若しくは間隙)を埋めることがある。隙間を埋めるための技術として、絶縁体である樹脂シートの両方の面に(発泡性の)接着層を設けた接着シートを隙間に入れ、熱を加えることによって接着させる技術が知られている(特許文献1)。
特開2010−261030号公報
上述した各部材間に存在する隙間として、直線状あるいは略直線状等の形状が単純なもののほか、L字状やV字状等の屈曲部を有する形状の複雑なものもある。前者の隙間であれば、特許文献1の接着シートにより埋めることは可能である。
しかしながら、後者の隙間に対して、特許文献1による技術では、接着シートの基材にスプリングバック特性(U字やV字等に折り曲げたときに元に戻ろうとする特性)が高い樹脂シートを使用していたため、その隙間の形状に沿うよう挿入すること、すなわち屈曲部の形状に沿うように接着シートを変形させること、さらにはその変形状態を保持させることが困難であった。その結果、形状が複雑な隙間を完全に充填することができず、作業効率が低下していた。
本発明の目的は、折り曲げ等の変形状態を保持しつつ十分な発泡性能を維持しながら変形後の形状保持性に優れ、その結果、形状が複雑な隙間を完全に充填することが可能な接着シートを提供することである。
本発明者は、接着層を有する接着シートの基材に、樹脂シートとして、特定の性質を持つ熱可塑性樹脂を含む原料から形成されたものを用いることにより、屈曲部を有する形状が複雑な隙間の該屈曲部の形状に沿うように変形させることができること、さらにはその変形状態を保持させることができること、換言すれば、変形後の形状保持性に優れ、屈曲部(角部)を有する形状が複雑な隙間を完全に充填可能な接着シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明によれば、以下に示す構成の接着シートが提供される。また以下に示す構成の接着シートを用いた電気部品又は電子部品の製造方法が提供される。
本発明の接着シートは、樹脂シートの片面又は両面に接着層を有する。接着層は、発泡性の接着剤組成物により形成される。この場合において、樹脂シートとして、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつDSC曲線中で下方向へシフトする前後の各基線間の幅(ΔH)と昇温速度(Φ)に基づいて式:(ΔH/Φ)で表される、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)が60〜420mJ/(K・g)の熱可塑性樹脂を含む原料から形成されたものを用いることを特徴とする。
本発明の電気部品又は電子部品の製造方法は、部品間に存在する屈曲部を含む隙間に本発明の接着シートを入れ、加熱し、接着層を熱発泡させることを特徴とする。
樹脂シートを形成する熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が150℃以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、液晶ポリマー、パラ芳香族ポリアミド、又はこれらの混合物であることが好ましい。樹脂シートとして、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0以上の難燃性を有するものを用いることが好ましい。
接着層を形成する接着剤組成物は、熱発泡剤(より好ましくは熱膨張性微小球)と軟化温度が105℃以下の熱硬化型樹脂を含むことが好ましい。熱硬化型樹脂は、重量平均分子量が1650以下であることが好ましく、800以下がより好ましい。熱硬化型樹脂は、重量平均分子量が450以上であることが好ましい。熱硬化型樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。熱発泡剤は、接着剤組成物に含まれる熱硬化型樹脂100質量部に対して、1〜30質量部含まれていることが好ましい。
本発明の接着シートは、接着層の上に積層されるコート層を有することが好ましい。コート層として、例えば、常温でタックを示さないが熱により軟化して消失するものを用いることが好ましい。コート層は樹脂で形成される。この場合において、熱発泡剤の熱発泡温度をT1とし、接着層の硬化開始温度をT2とし、コート層のガラス転移温度をT3としたとき、T3<T1≦T2の関係を満足することが好ましい。このとき、T1は100℃以上200℃以下がより好ましく、T2は110℃以上250℃以下がより好ましく、T3は60℃以上140℃以下がより好ましい。
接着層の上にコート層を積層する場合において、加熱発泡前の接着層の厚みをt1とし、コート層の厚みをt2としたとき、t2≦0.6・t1(コート層の厚みが加熱発泡前の接着層の厚みの60%以下)の関係を満足することが好ましい。このとき、t2が0.5μm以上600μm以下であることがより好ましく、その際のt1が20μm以上1000μm以下であることが好ましい。
本発明の接着シートは、例えば、空隙充填用途への利用に適しているが、特にこの用途に限定されるものではない。
空隙充填用途へ使用する場合の、空隙の大小は、特に限定されず、例えば1mm以下(例えば、数十μmから数百μm程度)の小さな空隙を充填する用途へ使用することもできる。空隙の形状も特に限定されず、形状が単純な空隙(例えば、先が見通せる直線状あるいは緩やかにカーブを描く略直線状等)への適用はもとより、形状が複雑な空隙(例えば、L字状やV字状等の屈曲部(小さなRの丸みがついたものも含む)を1つ以上有するもの等)を充填する用途にも使用することもできる。
本発明で言う「小さな空隙」としては、例えば、画像表示装置(液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等)に固定された画像表示部材や、携帯電子機器(携帯電話や携帯情報端末等)に固定された光学部材(カメラやレンズ等)と、筐体(窓部)との間に生ずる間隙や、モーター等のコイル巻線間、溶接構造物における金属材料の突き合わせ部等が挙げられる。「形状が複雑な空隙」としては、例えば、自動車外装材と補強板の間に生ずる隙間(通称ヘム部)、ねじ山等が挙げられる。
本発明の接着シートは、接着層を積層する基材に、特定の性質を持つ熱可塑性樹脂を含む原料から形成されたものを用いたため、屈曲部を有する隙間の該屈曲部の形状に沿うように変形させることができ、かつその変形状態を保持させることができる。すなわち、変形後の形状保持性に優れ、その結果、形状が複雑な隙間を完全に充填することができる。
図1は一例としてのDSC曲線中で基線が階段状に変化する様子を示した模式図である。 図2は実験例1で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図3は実験例2で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図4は実験例3で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図5は実験例5で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図6は実験例7で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図7は実験例8で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図8は実験例9で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図9は実験例4で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図10は実験例6で用いた樹脂シートから準備した測定試料について得られたDSC曲線である。 図11は角部への充填性評価における充填試験装置の断面図である。 図12は角部への充填性評価におけるコの字状試験片の折り曲げ方を示した略図である。 図13は角部への充填性評価におけるコの字状試験片を充填試験装置に挿入する方法を示した略図である。 図14はコの字状試験片を充填試験装置に挿入した状態で充填試験装置を切断した際の断面図である。 図15はコの字状試験片を充填試験装置に挿入し加熱発泡した後、充填試験装置を切断した際の断面図である。
BL1…ガラス転移前の基線例
BL2…ガラス転移後の基線例
CP…変曲点
SP…補外開始温度
1…ステンレス成形品
2…SPCC鋼板
3…接着シートをコの字型に成型した試験片
3’…加熱発泡後の試験片
4…充填試験装置
5…切断箇所
[樹脂シート]
本発明の接着シートに基材として用いられる樹脂シートは、熱可塑性樹脂を含む原料で形成したものであればよい。
樹脂シートの形成に使用する熱可塑性樹脂は、変形後の形状保持性の観点から、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつガラス転移による熱容量変化(ΔCs=ΔH/Φ)が60〜420mJ/(K・g)、好ましくは60〜200mJ/(K・g)であればよい。
本発明者は、こうした特性を持つ熱可塑性樹脂を含む原料で形成した樹脂シートこそが変形後の形状保持性を維持でき、その結果、その樹脂シートを基材に含む接着シートを用いれば、形状が複雑な隙間を完全に充填することができることを見出したものである。
本発明で言う「ガラス転移温度」及び「ガラス転移による熱容量変化」はともに、実施例の項での説明により定義づけられる。
なお、上述したガラス転移による熱容量変化(ΔCs)値は、樹脂シートを構成する原料のガラス領域とゴム領域のエネルギー差である。ガラス領域において、エネルギー準位がより高く(つまりΔCsが60mJ/(K・g)以上)、したがってより剛直な構造をとる物質であればあるほど、折り曲げによる外部応力の影響を強く受け、その結果、より多く、折り曲がるものと思われる。また、剛直な構造であるために折り曲げ後もその形状を維持することができ、変形後の形状保持性が良好になるものと思われる。
一方、樹脂シートを形成する原料のΔCs値が低い(60mJ/(K・g)未満)と、ガラス領域においてもゴム領域とほとんど変わらない剛直さを持つため、外部応力の影響は外部応力がかかっている時間のみにとどまり、その弾性から変形を元に戻そうとする作用が多く働くようになる。そのため、折り曲げ状態を維持することができず、変形後の形状保持性が不良になるものと思われる。
また、樹脂シートを形成する原料がTgを持たず、したがってΔCs値を定義できないポリイミド等の場合、剛直な構造を持つが、広い温度範囲にわたって過度に剛直を示すため、折り曲げにより変形させるためには非常に大きな外部応力が必要となる。また、その形状を保持することは困難になると思われる。
樹脂シートの形成に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)、パラ芳香族アミド、トリアセチルセルロース 等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して使用できる。これらのうち、ガラス転移による熱容量変化ΔCsがより適正な範囲(60〜200mJ/(K・g))に属し、その結果、シート状に形成したときの変形後の形状保持性に優れ、かつ接着剤樹脂硬化加工時の高熱条件下においてもシートの変形等ないことから、LCP、パラ芳香族アミド、トリアセチルセルロース 又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
PENは、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールから製造され、公知の方法によってフィルム状に成形されるが、市販品、例えば、テオネックス(帝人デュポンフィルム社製)等を用いてもよい。
PCは、例えば、ビスフェノールAとホスゲン(若しくはジフェニルカーボネート)を原料として製造される。ホスゲンを用いる場合は、界面重縮合でポリマー化され、ジフェニルカーボネートを用いる場合は、エステル交換による重合で合成されるが、原材料、重合方法は特に問わない。また、市販品、例えばピュアエース(帝人社製)、ユーピロンシート(三菱ガス化学社製)、サンロイドエコシートポリカ(住友ベークライト社製)、カーボグラス(旭硝子社製)等を用いてもよい。
LCPは、溶融時に液晶性を示す芳香族ポリエステルが代表的であり、通常、芳香族ジオール、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等のモノマーから合成することができるが、そのLCPのフィルムとして、市販品、例えば、ベクスター(クラレ社製)、バイアック(ジャパンゴアテックス社製)、ペリキュール(千代田インテグレ社製)、液晶ポリマーキャストフィルム(共同技研化学社製)等を用いてもよい。
パラ芳香族アミドは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)やあるいはこれに第三成分を共重合させることにより得ることができるが、そのパラ芳香族アミドのフィルムとして、市販品、例えば、ミクトロン(東レ社製)、アラミカ(帝人アドバンストフィルム社製)等を用いてもよい。
トリアセチルセルロースは、セルロースを無水酢酸と反応させて,セルロース分子をアセチル化することにより得られるが、そのトリアセチルセルロースフィルムとして市販品、例えば、コニカミノルタ社製、富士フィルム社製等を用いてもよい。
樹脂シートの形成に使用する熱可塑性樹脂は、接着シートとしたときの使用時、硬化時の熱による変形を低減するという観点から、そのTgが150℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上である。このような熱可塑性樹脂としては、上述したLCP、パラ芳香族アミド、又はこれらの混合物等が挙げられる。
樹脂シートの形成に使用する熱可塑性樹脂は、シート製膜性の観点から比較的高分子量であることが好ましい。高分子量にすることによってシート成型時に粘性を保つことが容易となり薄膜に成形することが可能となる。熱可塑性樹脂の最適な重量平均分子量は樹脂の種類によって異なり、例えばポリカーボネートを使用した場合5000以上であることが好ましく、より好ましくは10000以上である。PENを使用した場合には10000以上であることが好ましく、20000以上であることがさらに好ましい。LCPを使用した場合には20000以上であることが好ましい。なお、重量平均分子量が100000以上となると粘性が非常に高くなり成形不良が起きやすくなるため、100000未満であることが好ましい。
樹脂シートの形成に使用する原料は、上述した熱可塑性樹脂以外に種々の添加剤を含むこともできる。添加剤の種類は特に限定されず、例えば、熱安定剤、滑剤、分散剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、流動調整剤、防汚剤、顔料、染料、微粒子等の一般的なプラスチック用添加剤が挙げられる。添加剤を含むとき、その添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば0.1〜10重量部程度とすることができる。
本発明の接着シートに用いる樹脂シートの厚みは、適用する空隙の大きさや用途に応じて適宜選択することができる。適用用途が例えば、幅1mm以下で、かつ屈曲部を有する隙間の充填である場合、樹脂シートの厚みは、例えば30〜600μmであることが好ましく、より好ましくは30〜500μmである。
本発明の接着シートに用いる樹脂シートは、上述した熱可塑性樹脂及び任意の添加剤を含む樹脂組成物を原料として用い、これを一軸延伸法、二軸延伸法及び無延伸法等に代表される溶融押出法、溶液延伸法、カレンダー法等の公知の方法で膜状に形成することで得られる。
本発明の接着シートに用いる樹脂シートは、弾性率が低いとシート加工時に搬送不良を生じ、しわ等が入りやすくなることから、引張弾性率が2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは4MPa以上(好ましくは25MPa以下、より好ましくは20MPa以下)である。なお、樹脂シートの引張弾性率は、JIS K7127「プラスチックフィルム及びシートの引張試験方法」に準拠して測定される値である。
本発明の接着シートに用いる樹脂シートは、絶縁材料として使用される場合には、同じ絶縁信頼性を有するのであればより薄膜であるほうが好ましいことから、絶縁破壊電圧が250kV/mm以上の絶縁性を有するものが好ましい。また、絶縁破壊電圧の上限値については特に限定されるものではないが、通常は500kV/mm以下であり、好ましくは400kV/mm以下である。
本発明の接着シートに用いる樹脂シートは、絶縁材料として使用される場合には使用時の安全性の観点から、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0以上の難燃性を有するものが好ましい。ここで、「UL94規格に準ずる試験においてVTM−0以上の難燃性」とは、アンダーラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の難燃性試験規格UL94の薄手材料垂直燃焼試験方法に準ずる試験において、VTM−0と判定されるものであることをいい、さらにUL94の垂直燃焼試験に準ずる試験において、5VA、5VB、V−0、V−1、V−2の自己消化性基準を満たすものをいう。
本発明の接着シートに用いる樹脂シートは、絶縁材料として使用される場合には高温状態での使用されることが想定され、耐熱性を十分に確保するために、UL746B長期耐熱温度指数で機械特性に関してB種以上の耐熱性を有するものが好ましい。
[接着層]
本発明の接着シートにおいて、樹脂シートの片面又は両面に積層する接着層は、熱発泡性の接着剤組成物により形成されるものであれば特に限定されない。その一例を示すと次のとおりである。
一例に係る接着層は、所定の温度以上に加熱した場合に、体積が増大し、かつ硬化反応が進行して接着力が増大する熱硬化型で発泡性の接着剤組成物により形成され、常温でタックを示す又は割れが生じる可能性のあるものである。この接着剤組成物は、少なくとも熱発泡剤と軟化温度が105℃以下の熱硬化型樹脂を含有する。軟化温度105℃以下の熱硬化型樹脂を含有させて接着層を構成することで、その接着層は常温でタックを示し、又は割れが生じ、若しくは割れが生じる可能性があるようになる。
本発明において、「常温でタックを示す」とは、以下の方法で、密着が確認されることをいう。
基材上に接着層及びコート層を積層したシートを、5cm×5cmの大きさに切って6枚の接着シートを用意する。該接着シートのコート層同士が向かい合うようにを6枚重ねてからガラス板に挟む。上記積層体上に100gの荷重をかけて常温(25℃)で24時間静置した後、荷重を解除してガラス板を上下に広げた際、各接着シートのコート層同士が密着した状態で接着シートの基材と接着層間で剥離が生じることを密着している、すなわちコート層が常温でタックを示すという。一方、ガラス板を上下に広げた際、接触していたコート層間で剥離する場合は、コート層は、常温でタックを示さないという。
「割れが生じる」とは、接着シートを180度に折り曲げた際に、接着層に亀裂が生じ、少なくとも接着層の一部が脱落すること、あるいは脱落しうる状態にあることをいう。
本実施形態の接着層の上には、コート層を配置することが好ましい。コート層は、樹脂により形成され、常温でタックを示さないが熱により軟化して消失する。
本発明において「コート層が消失する」とは、原則として、本発明の接着シートに、コート層を形成する樹脂のガラス転移温度を超える熱が加わることによってコート層が軟化し、これによりコート層の樹脂が接着層を形成する(硬化前の)熱硬化型樹脂と混ざり合うことによって接着層と一体化し、接着層上に存在していたコート層が見掛け上、存在しなくなることをいう。具体的には、後述する方法で接着シートを切断し、その断面をマイクロスコープで観察し、コート層の少なくとも一部が、接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失している場合をコート層が消失していると判断する。すなわち、本発明では、加熱により接着層が硬化した後の接着シートの、被着体と接する部分に、加熱硬化後の接着層の少なくとも一部が露出した状態になっている場合も、「コート層は消失している」と判断するものとする。つまり、本発明において「コート層が消失する」を解釈するにあたり、接着層を形成する(硬化前の)熱硬化型樹脂に対する、コート層を形成する樹脂の混ざり合う度合いは完全でなくてもよく、加熱硬化後、シート表面に接着層としての機能を発現すればよい。少なくとも、加熱により接着層が硬化した後の接着シートの、被着体と接する部分に、加熱硬化後の接着層の一部がシート表面に露出していればよい。加熱硬化後の接着層の全部がシート表面に露出している場合、それは接着層上に存在していたコート層が完全に存在しなくなっていることを意味する。
本実施形態では、熱発泡剤の熱発泡温度をT1とし、接着層の硬化開始温度をT2とし、コート層のガラス転移温度をT3としたとき、T3<T1≦T2の関係を満足することが好ましい。詳細は後述する。
本実施形態の接着層を形成する接着剤組成物に含有させる樹脂(以下、接着剤樹脂という場合がある)としては、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂や熱硬化型樹脂を用いることができる。
本実施形態の接着層を形成する接着剤組成物に含有させる熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性シロキサン変性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独、又は2種以上を併用して用いることができる。
また、本実施形態の接着層を形成する接着剤組成物に含有させる熱硬化型樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。また、エポキシ基、水酸基、アミド基、カルボキシル基、シラノール基、メルカプト基等の反応性基をもつ熱可塑性樹脂は硬化剤を加えることによって熱硬化型樹脂としても使用することができる。このような熱硬化型樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド酸樹脂等が挙げられる。
このような熱硬化型樹脂のうち、特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等が好ましく、これらのうちの単独又は複数を組み合わせて用いることができる。なかでも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂及びこれらにCTBN変性やハロゲン化等といった各種変性を行ったエポキシ樹脂が挙げられ、なかでもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらは単独又は複数を混合して用いることができる。
エポキシ樹脂は、190℃での粘度が、通常0.05Pa・s以上が好ましく、0.1Pa・s以上であることがさらに好ましい。また、通常3.0Pa・s以下が好ましく、1.8Pa・s以下であることがさらに好ましい。粘度が低すぎると熱発泡剤の発泡状態を維持することができず、連泡化や破泡が発生するおそれがある。粘度が高すぎると発泡内圧よりも発泡外圧が高くなるので熱発泡剤が発泡しないおそれがある。ここにおける粘度は、動的粘弾性測定装置(Malvern Instruments社製、Bohlin C−VOR)を用いて測定した値である。
エポキシ樹脂は、エポキシ当量(WPE)が、通常150以上、好ましくは180以上であって、通常1000以下、好ましくは700以下である。「エポキシ当量」とは、エポキシ基1個あたりのエポキシ樹脂の分子量で定義される。ここで「エポキシ基」とは、3員環のエーテルであるオキサシクロプロパン(オキシラン環)を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む。)を含むものである。WPEは、JIS K7236、エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方(2001)に記載されている方法(過塩素酸−臭化テトラエチルアンモニウム法)等により決定される。
エポキシ樹脂は、常温で半固形又は固体であって、固体の場合には軟化温度が、105℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。また、通常40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。常温で液状であると硬化発泡時における粘度低下が顕著となりエポキシ樹脂の発泡状態を維持できなくなることから破泡、連泡化が進む可能性がある。また、接着層の形状を保てないおそれがある。
軟化温度が105℃以下の熱硬化型樹脂(好ましくはエポキシ樹脂)を含有させて接着層を構成することで、加熱により樹脂を柔らかくし、これにより熱発泡剤を接着層中で上手く発泡させることができる。軟化温度が105℃以下でも60℃を超えると、接着層に割れを生じることもある。しかしながら本発明ではコート層で接着層を被覆するため、接着層に割れが生じても脱落するおそれはなく、使用に支障を来すことはない。
軟化温度が60℃以下の熱硬化型樹脂(好ましくはエポキシ樹脂)を含有させて接着層を構成することで、上記作用(加熱により接着層中の熱発泡剤を上手く発泡させることが可能なこと)に加え、接着層の割れの発生を抑止でき、これにより接着層の脱落防止に寄与しうる。
ここでの軟化温度は、JIS K7234(環球法)で定められた方法により測定される値である。
本実施形態では、熱硬化型樹脂として、重量平均分子量が好ましくは1650以下、より好ましくは800以下のものを用いることが望ましい。重量平均分子量が1650以下の熱硬化型樹脂を含有させて接着層を構成することで、加熱により樹脂をより柔らかく調整し、コート層を消失させることができるため、接着性能をより良好に維持することができる。重量平均分子量が800以下の熱硬化型樹脂を含有させて接着層を構成することがより好ましい。上記作用(接着性能を維持すること)に加え、接着層の割れの発生を抑止できるためである。
本実施形態では、シート状に形成しやすくするため、接着剤組成物に含有させる熱硬化型樹脂は、重量平均分子量が450以上であることが好ましい。分子量が450未満であると常温で液状に近い樹脂となるため、接着層の形状が保てない場合があるからである。
接着層を形成する接着剤組成物に含有させる熱発泡剤としては、特に制限されず、例えば公知の熱発泡剤(熱分解型のもの、膨張黒鉛、マイクロカプセル化されたもの、等)を適宜選択して用いることができるが、中でもマイクロカプセル化されたもの(以下「熱膨張性微小球」と称する。)を好適に用いることができる。
熱膨張性微小球としては、弾性を有する外殻の内部に発泡剤が封入された構造を有し、全体として熱膨張性(加熱により全体が膨らむ性質)を示す微小球を好適例として挙げることができる。
弾性を有する外殻としては、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質等、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等で形成されたものを好適例として挙げることができる。
発泡剤としては、加熱により容易にガス化して膨張する物質、例えばイソブタン、プロパン、ペンタン等の炭化水素を主として挙げることができる。熱膨張性微小球の市販品としては、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェアー」シリーズ(松本油脂製薬社製)、アドバンセルEMシリーズ(積水化学工業社製)、エクスパンセル(日本フェライト社製)等を挙げることができる。
熱膨張性微小球の大きさは、接着シートの用途により適宜選択すればよく、具体的には、質量平均粒径で10〜20μm程度にするとよい。熱膨張性微小球は、その粒度分布を調整してから使用してもよい。粒度分布の調整は、使用する熱膨張性微小球に含まれる比較的大きな粒径のものを、遠心力型風力分級機、乾式分級機、篩過機等で分級して除去すればよい。具体的には、熱膨張性微小球の粒度分布の標準偏差が5.0μm以下となるようにするとよい。
熱膨張性微小球の膨張倍率は、5倍以上であることが好ましく、7倍以上であることが更に好ましい。その一方で15倍以下であることが好ましく、12倍以下であることが更に好ましい。なお、熱膨張性微小球の外殻は、該熱膨張性微小球が前記所定の膨張倍率となるまで膨張した場合であっても破裂しない、適度な強度を有するものであることが好ましい。
熱膨張性微小球の配合量は、接着剤樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であって、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下とされる。
熱発泡剤は、その熱発泡温度(T1)が、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上であって、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下であることが望ましい。T1は、熱発泡剤として、熱膨張性微小球を用いる場合は熱膨張温度に相当し、熱分解型発泡剤を用いる場合は熱分解温度に相当する。「熱膨張温度」とは発泡開始温度と同義であり、本実施形態ではTMA測定における熱膨張開始温度のことをいい、体積が最大限に膨張する最大熱膨張温度の意味ではない。
また、その他の熱発泡剤としては、熱分解型発泡剤や膨張黒鉛等が挙げられる。熱分解型発泡剤は、無機系と有機系に分類される。
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類等が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、水、塩フッ化アルカン(例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等)、アゾ系化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート等)、ヒドラジン系化合物(例えば、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等)、セミカルバジド系化合物(例えば、ρ−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等)、トリアゾール系化合物(例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等)、N−ニトロソ系化合物(例えば、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等)、等が挙げられる。
これらの熱発泡剤は、単独又は複数を混合して用いることができる。
このような熱分解型発泡剤の配合量は、接着剤樹脂100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であって、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下とされる。
接着層を形成する接着剤組成物に熱硬化型樹脂を使用する場合には、上述した熱硬化型樹脂及び熱膨張性微小球の他に、硬化剤等の任意成分を含有させてもよい。硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)、脂肪族ポリアミド等のアミド系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、等のアミン系硬化剤;ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、p−キシレンノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤;無水メチルナジック酸等の酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独又は複数を混合して用いることができる。
硬化剤の配合量は、使用する熱硬化型樹脂との当量比から算出され、当量比の適切な範囲は0.8〜3.0である。例えば、硬化剤がジシアンジアミドの場合は、熱硬化型樹脂100質量部に対し、下限としては3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、上限としては30質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。また、例えば無水メチルナジックの場合は、熱硬化型樹脂100質量部に対し、下限としては60質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、上限としては240質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。硬化剤の配合量が上記下限値未満では、十分に硬化しにくく、耐熱性、耐薬品性等熱硬化性樹脂としての特徴を十分に発揮できない可能性がある。その一方で配合量が上記上限値を超えると、硬化時に過剰な発熱反応を伴い、硬化中の樹脂組成物粘度が必要以上に低下し、最終的に十分な発泡状態を維持することが難しくなる可能性がある。
硬化剤とともに、硬化促進剤を併用することもできる。硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類;トリブチルポスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;等が挙げられる。これらは単独又は複数を混合して用いることができる。硬化促進剤の配合量は、熱硬化型樹脂100質量部に対し、例えば5質量部以下とされる。
接着剤組成物に任意成分として配合可能なその他の添加剤としては、例えば、エラストマー成分として天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の固形あるいは液状のゴム類やポリウレタン、ウレタンプレポリマー等が挙げられる。その配合量としては、接着剤樹脂100質量部に対し、20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下用いられる。また、発泡助剤、各種充填剤、整泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤を配合してもよい。
本実施形態の接着剤組成物は、上述した熱発泡剤、接着剤樹脂、さらには必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、発泡助剤、各種添加剤等を任意の順序で混合させることにより得ることができる。上記原材料の混合は、ミキシングロール、プラネタリーミキサー、バタフライミキサー、ニーダ、単軸若しくは二軸押出機等の混合機あるいは混練機を用いて行うことができる。混合温度は、組成により異なるが、熱発泡剤の熱発泡温度(T1)以下で行うことが必要である。
本実施形態の接着剤組成物は、これをシート状に形成した接着層の状態における硬化開始温度(T2)が好ましくは110℃以上250℃以下となるよう、各成分を配合することが望ましい。
接着層は、上述した接着剤組成物を基材として用いられる樹脂シートの片面又は両面に塗布し、必要に応じて乾燥させることにより得られる。なお、接着層は、上述した接着剤組成物を、別途用意した離型フィルムに形成した、後述するコート層上に塗布し、必要に応じて乾燥させることにより得ることもできる。
発泡前の接着層の厚み(t1)は接着シートの用途に応じて適宜選択すればよいが、下限として20μm以上、さらには30μm以上とすることが好ましく、上限として1000μm以下、さらには400μm以下、さらにまた200μm以下とすることが好ましい。接着層の厚みを20μm以上とすることにより、発泡反応によって生成された気泡を接着層内に保持させやすい。接着層の厚み(t1)を1000μm以下とすることにより、例えば、1mm以下の狭い空隙を充填させることが可能となる。
[コート層]
本実施形態の好ましい態様において接着層上に配置されるコート層を形成する樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等の熱可塑性樹脂が使用可能である。これらは、単独又は複数を組み合わせて用いることができる。なかでも、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を用いるのが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、商品名バイロン200(東洋紡績社製)、商品名ポリエスターTP220(日本合成化学社製)、商品名エリーテルKAシリーズ(ユニチカ社製)等が挙げられる。
フェノキシ樹脂とは、ビスフェノールAやビスフェノールF等のジフェノールと、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンに基づく高分子量熱可塑性ポリエーテル樹脂(※ビスフェノール型エポキシ樹脂)をいう。フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が、20,000〜100,000であることが好ましい。
フェノキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、商品名PKHB、PKHC、PKHH、PKHJ(いずれもInChem社製)、jER 1256、jER 4250、jER 4275、(いずれも三菱化学社製)、YP−50、YP−50S、YP−70、ZX−1356−2、FX−316、(いずれも新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
また、フェノキシ樹脂を溶剤を用いて溶解したものも市販されており、こちらも同様に使用される。例えば、jER 1256B40、jER 1255HX30、jER YX6954BH30、YX8100BH30、jER YL7174BH40(いずれも三菱化学社製)、YP−40ASM40、YP−50EK35、YPB−40PXM40、ERF−001M30、YPS−007A30、FX−293AT40(いずれも新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
これらのフェノキシ樹脂は単独又は複数を組み合わせて使用することができる。
本実施形態では、上記熱可塑性樹脂に、必要に応じて、イソシアネートや有機過酸化物等の硬化剤をさらに配合してもよい。硬化剤の種類や分子量等を適宜選択し配合することにより接着層との親和性を微調整が容易となる。配合する場合の、硬化剤(イソシアネート等)の配合量は、100質量部のポリエステル樹脂やフェノキシ樹脂等に対して、3〜30質量部程度とすることができる。
コート層は、上述した樹脂(硬化剤が配合される場合はこれを含む)を溶媒に溶解又は分散させたコート層形成塗工液を作製し、これを樹脂シート上に積層された接着層に塗布し、乾燥させることにより得られる。なお、コート層は、上述したコート層形成塗工液を、別途用意した離型フィルムに塗布し、乾燥させることにより得ることもできる。
コート層の厚み(t2)は、加熱前(又は加熱発泡前)の接着層の厚み(t1)の60%以下であることが好ましい。t2をt1の60%以下とすることにより、適切な組成で形成していることを条件に、熱(例えば60℃以上140℃以下程度の加熱)によってコート層は軟化し、かつこれを良好に消失させることができる。
コート層が消失するメカニズムは次のとおりである。コート層を形成する樹脂のガラス転移温度を超える熱が加わることによってコート層が軟化する。これによりコート層の樹脂が接着層を形成する接着剤樹脂(上述した硬化前の熱硬化型樹脂、又は熱可塑性樹脂)と混ざり合い、接着層と一体化する(接着層内に取り込まれる)。その結果、接着層上に存在していたコート層が見掛け上、存在しなくなる。接着層を形成する
コート層が厚すぎると、十分に接着層内に取り込まれなく、その結果、コート層の消失が良好に進まない可能性がある。また、熱発泡剤を含有する場合には、接着層内の熱発泡剤が十分発泡できない場合があり、発泡性が損なわれる可能性もある。
なお、本発明では、上述したように、加熱により接着層が硬化した後の接着シートの、被着体と接する部分に、加熱硬化後の接着層の少なくとも一部が露出(接触)していれば、「コート層は消失している」ものと判断する。
本実施形態において、t2は、例えば、0.5μm以上600μm以下が好ましい。
コート層は、そのガラス転移温度(T3)が好ましくは60℃以上140℃以下となるように、コート層を形成する樹脂を決定することが望ましい。コート層のガラス転移温度(T3)が低すぎると、コート層表面のべたつき(タック)が多くなって、本発明の効果が得られにくくなる可能性がある。一方、T3が高すぎると、接着層の加熱硬化温度域でコート層が十分に軟化しないため、接着層による接着力を十分に発揮できないおそれがある。
本実施形態では、接着層の組成との関係で、コート層を形成する樹脂を決定することが好ましい。コート層と接着層との親和性を考慮することにより、コート層が軟化した際により接着層内に取り込まれ(浸透し)やすくすることができる。これによりコート層の厚みを容易に設計することができる。例えば、接着層を形成する接着剤組成物に含有させる、重量平均分子量が800未満のエポキシ樹脂として、商品名NC2000L(ノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬、エポキシ当量229〜244、軟化温度47〜57℃)を用いる場合、コート層を形成する樹脂として、ビスフェノールAタイプの商品名PKHHを用いることが望ましい。
本発明の一実施形態に係る接着シートは、上述したように、樹脂シートの片面又は両面に接着層とコート層を順次形成することで作製してもよい。また上述したように、別途用意した離型フィルム上にコート層と接着層を順次形成した後、これに樹脂シートを貼り合わせる(ラミネートする)ことで作製してもよい。さらに、離型フィルムにコート層を形成したものと、樹脂シートに接着層を形成したものを貼り合わせる(ラミネートする)ことで作製することもできる。
本実施形態の接着シートは、各種電気部品又は電子部品の製造や、車体のスキン材と補強材の合わせ部の接合等、各部材間に存在する隙間を充填する用途に広く用いることができる。特に、1mm以下の狭い間隙、及び/又は、屈曲部を有する形状が複雑な間隙への充填用途に有益である。具体的には、本実施形態の接着シートを各部材間に存在する各種間隙に入れ、加熱し、接着層を熱発泡させることで、上述した各種間隙の完全な充填が可能となる。
以下、本発明を実験例(実施例及び比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.樹脂シートの測定又は評価
後述する各例で用いた樹脂シートに対し、下記項目について以下の方法により測定又は評価した。結果を表1又は表2に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は次のようにして決定した。
まず、実験例1〜3、5〜9の樹脂シートについては、前記前処理を行わないものを測定試料とした。また、実験例4の樹脂シートについては、80℃付近に吸熱反応が見られ、目的とするガラス転移温度の検出が困難なため、前処理として80℃で10分間加熱したものを測定試料とした。
次に、上記測定試料について、測定装置として示差走査熱量測定装置(DSC3200、Mac Science社製)を用いた示差走査熱量測定(DSC)により、温度(℃)と熱流(熱容量。mJ/(s・g))をそれぞれ横軸(X軸)と縦軸(Y軸)に取ったXY平面上に、DSC曲線を得た(図2〜10)。
一般に、測定試料がガラス転移すると、その前後で測定試料の比熱容量が変化し、これにより、DSC曲線のガラス転移温度付近でベースライン(基線)が階段状に変化(特に下方向へシフト)することが知られている(工学情報センター出版部が昭和60年12月29日に発行した非特許文献:「各種熱分析技術の基礎・応用と測定データ集」の43頁参照)。そこで次に、得られたDSC曲線から基線が下方向へシフトしている部分に着目し、下方向へシフトする前の元の基線(例えば図1において「BL1」が示す基線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点。例えば図1において「CP」が示す点)での接線と、の交点(補外開始温度。例えば図1において「SP」が示す点)を、測定試料のガラス転移温度(単位:℃)とした。結果を表1に示す。
(2)ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)
上記1.(1)で準備した各測定試料について得られたDSC曲線を用い、該曲線中で下方向へシフトする前後の各基線(例えば図1における「BL1」と「BL2」)間の幅(すなわち測定試料がガラス転移する前後の各基線の差)を熱容量変化度ΔH(単位:mJ/(s・g))と定義した上で、このΔHを測定試料の昇温速度Φ(単位:K/s)で除することにより算出される値を、測定試料のガラス転移による熱容量変化ΔCs(単位:mJ/(K・g))と定義した(上記非特許文献の同頁を参照)。各測定試料の熱容量変化度ΔHは、得られたDSC曲線から図2〜10に示すように決定した。昇温速度Φは、10K/sとした。結果を表1に示す。
なお、実験例4はガラス転移温度の直後に発熱反応ピークが見られたが、これは液晶相転移と思われるため、発熱ピークの開始前の地点をガラス転移後の基線値とし、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)を算出した。
(3)難燃性
実験例1〜9の樹脂シートについて、アンダーラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の難燃性試験規格UL94の薄手材料垂直燃焼試験方法及び垂直燃焼試験方法に準ずる試験を行い、VTMランク及びVランクを判定し、以下の基準で評価した。なお、評価に用いた樹脂シートのサンプルサイズは50mm×200mmとした。結果を表2に示す。
◎:UL94薄手材料垂直燃焼試験においてVTM−0を満たし、かつUL94垂直燃焼試験においてV−0を満たすもの。
○:UL94薄手材料垂直燃焼試験においてVTM−0を満たすもの。
×:UL94薄手材料垂直燃焼試験においてVTM−0を満たさないもの。
(4)引張弾性率
実験例1〜9の樹脂シートについて、JIS K7113に準拠して測定した(単位:MPa)。具体的には、タイプ2号型試験片を用いて樹脂シートを打ち抜き、万能試験機(インストロン社製)を用いて50mm/分の速度で試験を行い、下記式により算出した。結果を表2に示す。
[式]E=(σ−σ)/(ε−ε
σ:変位ε=0.0005において測定された引張応力(MPa)
σ:変位ε=0.0025において測定された引張応力(MPa)
(5)絶縁破壊電圧
実験例1〜9の樹脂シートについて、JIS C2110の短時間法に準拠して測定した。具体的には、試験片は樹脂シートを50mm×50mmに切断したものを用いた。試験電極はφ12.5mmの球状黄銅電極を用い、電極間圧着力は500gとし、シリコーンオイル中で測定を行った。なお、電圧の昇圧速度は1kV/秒とした。結果を表2に示す。
(6)変形後の形状保持性
実験例1〜9の樹脂シートを40mm×100mmのサイズに切断し、試験片を作成した後、これを厚み10mmのゴム板上に載置した。次に、厚み1mm、幅50mm、高さ50mmの金属板を用いて、試験片と対向するように12.5kg/cm2の条件で垂直に押し当て(加圧)、30秒保持した。次に、変形できるかどうかの評価として加圧開放1秒後と、変形後の形状保持性の評価として加圧開放10秒後における試験片の折り曲がり角(折り曲がり片のゴムシート面に対する角度)を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:加圧解放1秒後及び加圧開放10秒後ともに折り曲がり角が90度以上(変形でき、変形後の形状保持性が良好)のもの。
×:加圧解放1秒後の折り曲がり角が45度以上、加圧開放10秒後の折り曲がり角が45度未満(変形できたが、変形後の形状保持性が不良)のもの。
××:加圧解放1秒後及び加圧開放10秒後の折り曲がり角が45度未満(変形できない)のもの。
2.接着層形成塗工液の調製
下記構成成分を下記固形分比(質量換算)で均一に混合して調製した。塗工液中の全固形分は85%とした。
<接着層形成塗工液の構成成分>
・熱硬化型樹脂(ノボラック型エポキシ樹脂): 100質量部
(NC−2000L、エポキシ当量:229〜224g/eq、軟化温度:47〜57℃、重量平均分子量:700〜800、粘度(190℃):0.11dPa・s、日本化薬社製)
・硬化剤(固形分100%): 8.9質量部
(ジシアンジアミド(DICY)、ジャパンエポキシレジン社製)
・硬化促進剤(固形分100%): 0.5質量部
(キュアゾール2MZ−A、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル− (1’)]−エチル−s−トリアジン、四国化成社製)
・熱発泡剤: 10質量部
(マツモトマイクロスフェアーF100M、熱膨張性微小球、質量平均粒径:17〜23μm、熱膨張温度(熱発泡温度T1と同義):120℃、最大熱膨張温度:160℃、膨張倍率:10倍、松本油脂製薬社製)
3.コート層形成塗工液の調製
下記構成成分を下記固形分比(質量換算)で均一に混合して調製した。塗工液中の全固形分は40%とした。
<コート層形成塗工液の構成成分>
・熱可塑性樹脂(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂): 100質量部
(PKHH、ガラス転移温度(T3):92℃、InChem社製)
・硬化剤(固形分75%): 10質量部
(タケネート600、三井武田ケミカル社製、NCO含有量:43.3%)
4.接着シートの作成
[接着層及びコート層の作成]
上述した構成の接着層形成塗工液例とコート層形成塗工液を用い、離型フィルム(バイナNo.23、藤森工業社製、厚み38μm)の離型処理面上に、コート層形成塗工液をベーカー式アプリケーターにて塗布した。その後、140℃で1分、乾燥することによってコート層を厚み(t2)5μmで形成した(積層品a’)。次に、コート層表面に、接着層形成塗工液を上記と同様に塗布した。その後、120℃で1〜2分、乾燥することによって接着層を厚み(t1)50μmで形成した(積層品a)。
また、離型フィルム上にコート層を形成しなかった以外は、上記と同じようにして、離型フィルム上に接着層を形成した(積層品b)。
[接着層及びコート層の評価]
(1)熱発泡温度(T1)
測定装置として動的粘弾性測定装置(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用し、熱膨張性微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、熱膨張性微小球層の上部にアルミ蓋(5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定する。正方向への変位開始温度を熱発泡温度(T1)とした。その結果、T1は120℃であった。
(2)接着層の硬化開始温度(T2)
測定装置として示差走査熱量測定装置(DSC3200、Mac Science社製)を使用し、作成したシート状の接着層樹脂を、常温から300℃において10℃/分で昇温したときの、定常範囲におけるDSCベースラインと硬化反応時のDSC上昇線の交わる点を硬化開始温度(T2)とした。その結果、T2は151℃であった。
(3)コート層のガラス転移温度(T3)
測定装置として示差走査熱量測定装置(DSC3200、Mac Science社製)を使用し、作成したシート状のコート層樹脂を、常温から300℃において10℃/分で昇温したときのDSCベースライン変化点をガラス転移温度(T3)とした。その結果、T3は92℃であった。
(4)接着層の膜厚(加熱後)
上記積層品aについて、5cm×5cmサイズに切断し、厚み1mmのSPCC鋼板上に接着層が接するように置き、積層品aから離型フィルムを剥離した。次いで190℃に加熱したオーブンに30分間放置した後、取り出した。その後、SPCC鋼板、接着層(及びコート層)の全厚を測定し、得られた測定値から離型フィルムの厚みを減ずることにより加熱後の接着層の厚みを算出した。その結果、加熱後の接着層の厚みは325μmであった。よって、接着層の発泡倍率は5.9倍となった。
(5)接着層の割れ
積層品a(コート層あり)と、積層品b(コート層なし)について、加熱発泡前に、接着層側の任意箇所を180度に折り曲げた後、接着層の状態を目視により確認した。
その結果、積層品a及び積層品b共に、接着層自体の割れは認められず良好なものであった。
(6)コート層の消失
上記積層品aを厚み1mmのSPCC鋼板上に接着層が接するように置き離型フィルムを剥離した。さらに厚み1mmのSPCC鋼板を接着層の厚みとコート層の厚みの合計の2倍の間隙を形成するようにして重ねて固定した。次いで190℃に加熱したオーブンに30分間放置した後、取り出した。これをSPCC鋼板上及び接着層(及びコート層)の断面が確認できるように垂直に切断し、断面をマイクロスコープにて観察しコート層の有無を確認した。その結果、コート層は無くなりSPCC鋼板に貼着していた。
以上のように、本実験例の接着シートに用いる接着層及びコート層は、接着シートとしても評価するにあたり適切なものである。
[接着シートの作成]
[実験例1]
基材としての樹脂シート(厚み:50μm、ポリエチレンナフタレートフィルム:テオネックスQ51、帝人デュポンフィルム社製)の両方の面に、上記積層品aの接着層表面が向かい合うように80℃の熱を掛けながらラミネートした後、離型フィルムを剥離し、実験例1の接着シートを得た。
[実験例2]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、ポリカーボネートフィルム:ピュアエース、帝人社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例2の接着シートを得た。
[実験例3]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、パラ芳香族アミドフィルム:ミクトロン(GQタイプ)、東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例3の接着シートを得た。
[実験例4]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、トリアセチルセルロースフィルム:8VAW、コニカミノルタ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例4の接着シートを得た。
[実験例5]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、液晶ポリマー(LCP)フィルム:ベクスター、クラレ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例5の接着シートを得た。
[実験例6]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、光学用ポリエチレンテレフタレートフィルム:ルミラーU403東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例6の接着シートを得た。
[実験例7]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、工業用ポリエチレンテレフタレートフィルム:ルミラーT60、東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例7の接着シートを得た。
[実験例8]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、ポリフェニレンスルファイドフィルム:トレリナ、東レ社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例8の接着シートを得た。
[実験例9]
基材として樹脂シート(厚み:50μm、ポリイミドフィルム:カプトン100H、東レデュポン社製)を用いた以外は実験例1と同様にして実験例9の接着シートを得た。
5.接着シートの評価
実験例1〜9で得られた接着シートについて、下記項目について以下の方法により評価した。結果を併せて表1に示す。
(1)角部への充填性
厚み0.3mmのステンレス板をコの字型に成形したステンレス成形品1のコの字部分に10mm×15mm×厚み1.5mmのSPCC鋼板2を設置した充填試験装置4を作製した。(図11)。ステンレス成形品1とSPCC鋼板2の間隙は0.45〜0.5mmとなった。
次に実験例1〜9で得られた接着シートを10mm×14mmの大きさに切断した。この切断した接着シートを両端から6mmのところで90度に折り曲げてコの字型に成形し、試験片3とした(図12)。
そして、充填試験装置4のコの字型の間隙部に当該試験片3を挿入した(図13、図14)。次いで、190℃に加熱したオーブンに20分間放置し、加熱発泡させた後、取り出した。
その後、充填試験装置4を試験片3の挿入方向と直行する方向5に切断し(図13)、コの字状隙間の充填状況を目視及びマイクロスコープ(デジタルマイクロスコープVHX、キーエンス社製)により200倍で観察し以下の基準で評価した(図15)。
◎:基材がコの字状態を保持し、角部の隙間を充填しているもの(図15(a))。
〇:基材がコの字状態から変形が認められたが、角部の隙間を充填しているもの(図15(b))。
××:加熱発泡前から基材がコの字形状を保持されておらず、未充填の部分が発生したもの(図15(c))。
Figure 2016084470
Figure 2016084470
6.考察
表1に示すように、実験例1〜5では、樹脂シートがガラス転移による熱容量変化ΔCsの値が十分に高い原料(熱可塑性樹脂)からなるものであった。その結果、変形後の形状保持性が良好な樹脂シートとなった。また、実験例1〜5の接着シートは、これらの樹脂シートを基材として用いたところ、コの字形状に接着シートを変形後、形状を保持し、樹脂シートと被着体であるステンレス板及びSPCC鋼板との間隙が等しく保たれた状態で、接着層が加熱により硬化発泡し隙間がすべて埋まった。その結果、実験例1〜5で得られた接着シートは、被着体間の間隙が最も大きくなる角部への充填性が良好なものとなった。この際に、実験例1、2及び4では基材に変形が見られたが、実験例3及び5では、基材に変形は見られなかった。
これに対し、実験例6〜8では、樹脂シートがTgを持つもののΔCs値が低い原料からなり、その結果、変形後の形状保持性が不良な樹脂シートとなった。また、実験例6〜8での接着シートは、これらの樹脂シートを基材として用いたところ、コの字形状に接着シートを変形後、形状を保持することができず、樹脂シートと被着体であるステンレス板及びSPCC鋼板との間隙が不均一な状態で接着層が加熱により硬化発泡し、未充填の部分が発生した。その結果、実験例6〜8で得られた接着シートは、実験例1〜5と比較して、角部への充填性が不十分なものとなった。
次に、実験例9では、樹脂シートがTgを持たずΔCsを定義不能な原料からなり、その結果、折り曲げによる変形ができない樹脂シートとなった。また、実験例9の接着シートは、この樹脂シートを基材として用いたところ、コの字形状に接着シートが変形できず、樹脂シートと被着体であるステンレス板及びSPCC鋼板との間隙が不均一な状態で接着層が加熱により硬化発泡し、未充填の部分が発生した。その結果、実験例9で得られた接着シートは、実験例6〜8と同様に角部への充填性が不十分なものとなった。

Claims (7)

  1. 樹脂シートの少なくとも片面に、発泡性の接着剤組成物による接着層を有する接着シートであって、
    前記樹脂シートは、その原料として、少なくともガラス転移温度(Tg)を有し、かつDSC曲線中で下方向へシフトする前後の各基線間の幅(ΔH)と昇温速度(Φ)に基づいて式:(ΔH/Φ)で表される、ガラス転移による熱容量変化(ΔCs)が60〜420mJ/(K・g)の熱可塑性樹脂を含む、ことを特徴とする接着シート。
  2. 前記樹脂シートはガラス転移温度が150℃以上の熱可塑性樹脂を用いた請求項1記載の接着シート。
  3. UL94規格に準ずる試験においてVTM−0以上の難燃性を有する樹脂シートを用いた請求項1又は2記載の接着シート。
  4. 前記接着層を形成する接着剤組成物は、熱発泡剤と軟化温度が105℃以下の熱硬化型樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載の接着シート。
  5. 前記接着層の上に積層され、樹脂からなり、常温でタックを示さないが熱により軟化して消失するコート層をさらに有し、かつ熱発泡剤の熱発泡温度をT1とし、接着層の硬化開始温度をT2とし、コート層のガラス転移温度をT3としたとき、T3<T1≦T2の関係を満足する請求項4記載の接着シート。
  6. 空隙の充填に用いる請求項1〜5のいずれかに記載の接着シート。
  7. 部品間に存在する屈曲部を含む隙間に請求項6記載の接着シートを入れ、加熱し、前記接着層を熱発泡させることを特徴とする、電気部品又は電子部品の製造方法。
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