しかし、全ての車両が舵角センサーを備えているわけではなく、舵角センサーを有していない車両も多い。また、舵角センサーを備えている車両であっても、車両についての制御を行うネットワークから、舵角センサーからのハンドル舵角の信号を得ることができない場合がある。さらに、ハンドル舵角のデータフォーマット等が公開されておらず、ハンドル舵角を得ることが困難な場合もある。
このような舵角センサーを用いることなく、車輪の内輪差または外輪差を検出することで、車両の進行方向を検出することも、特許文献1に記載されている。さらに、同文献には、左右の車速センサーを配置しその出力パルス差(移動距離の差)により、車両の旋回を検出することで、方位の変位量を算出することが記載されている。
しかし、このような構成とするには、複数の異なる車輪について、新たに車速センサーを設置して、それらの車速センサーを、それぞれワイヤーを介してシステムに接続する必要があり、設置のための手間とコストがかかる。
また、従来の一般的な車速センサーは、1回転につき、2〜8パルス程度の信号しか出力できないため、高い分解能が得られない。このため、たとえ車速センサーを用いても、車両の右左折が検出できる程度の精度しか得られず、舵角センサーと同程度の精度は出ない。
したがって、例えば、角度があまりない分岐の箇所では、方向の変化を検出できない。また、例えば、高速道路を降りる際に、本線に対して斜め方向に降りて行くような状態を検出できない。さらに、例えば、車線変更の際の方向変化や、同一車線内での方向変化を検出することもできない。
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、複数の異なる車輪にセンサーを設置してそれぞれワイヤー接続する手間とコストがかからず、舵角センサーからのハンドル舵角を得ることができない場合であっても、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができるシステム等を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のシステムは、
(1)車両が備える車輪の回転に関する情報を、車両についての制御を行うネットワークから取得し、取得した少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて、当該車両の進行方向の変化に関する情報を求めることを特徴とする。
このようにすれば、車両についての制御を行うネットワークに接続するだけで、進行方向の変化に関する情報を求めることができる。したがって、例えば、複数の異なる車輪にセンサーを設置して、それらのセンサーを、それぞれワイヤーで接続する必要がない。特に、車両についての制御を行うネットワークから、ハンドル舵角等を得ることができない、あるいは、データフォーマット等が公開されておらず、得ることが困難な場合に有効である。
また、例えば、GPSによって車両の進行方向の変化に関する情報を求める構成では、GPSの電波が遮られて測位ができない場所では、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができないが、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報を得ることにより、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。例えば、車両の進行方向の変化に関する情報に基づいて、GPSで求めた走行距離の補正等を行う構成を備えるようにしてもよい。さらに、舵角センサーがない車両の場合、舵角センサーがあってもその用途が限定されている場合、舵角センサーが故障している場合であっても、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する信号を得ることにより、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。
車輪の回転に関する情報としては、例えば、車輪の単位時間あたりの回転量とするとよく、例えば、車輪の単位時間あたりの回転数としたり、車輪の単位時間あたりの回転角度としたりするとよい。また、車輪の回転に関する情報として、特に、車両を制御するために、所定の時間間隔でネットワークに送出されている情報を読み取る構成とするとよい。さらに、車輪の回転に関する情報としては、例えば、既存の車両の車輪毎に設置され、車輪の回転に応じた情報を出力するセンサーからの情報を用いるとよい。このようにすると、例えば、ユーザが後付で簡単にネットワークに接続して利用できるのでよい。
車両についての制御を行うネットワークとしては、例えば、車外のネットワークとしてもよいが、特に、車両に備えるネットワークとするとよい。特に、車両自体の制御に用いるデータが流れるネットワークとするとよい。特に、車両の制御のための複数のコンピュータが接続されるネットワークとするとよく、例えば、CANなどとするとよい。車両自体の制御に用いるデータが流れるネットワークにおける車輪の回転に関する情報の分解能は、車速(1km/hステップ)に比べ、10倍から100倍の分解能があるため、量子誤差が小さくなり、たとえ低速走行時であっても、車輪の回転に関する情報から求めた車両の進行方向の変化に関する情報の誤差も極めて小さくなる。このため、例えば、舵角センサーと比べても、遜色のないレベルで正確に進行方向の変化に関する情報を求めることができる。
また、例えば、車両自体の制御に用いるデータが流れるネットワークにおける車輪の回転に関する情報からは、車両の進行方向の変化に関する情報とともに、例えば、車速を算出したり、走行距離を算出したり、別に取得したエンジンの回転数と車速から変速比を算出したりする構成とするとよいが、これら車速、走行距離、変速比等の誤差も小さくすることができる。
また、例えば、車両に備えるネットワークは、有線であってもよいし、無線であってもよい。特に、例えば、有線のネットワークであれば、ネットワークの信号線(例えば、信号線群)の1箇所にワイヤー接続するだけで、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。特に、ネットワークの信号線に対して着脱自在なコネクタに接続する構成とするとよい。例えば、車両に備える故障診断コネクタ等のネットワークの信号線を有するコネクタに接続するプラグを備える構成とするとよい。
2つの異なる車輪としては、例えば、4輪の車両の場合、前輪の左右の車輪、後輪の左右の車輪、前輪の左と後輪の左の車輪、前輪の右と後輪の右の車輪、前輪の左と後輪の右の車輪、前輪の右と後輪の左の車輪のいずれかにするとよい。
「少なくとも2つ」とは、2つ以上とするとよい。例えば、2つの車輪のみに対応する情報を用いるとよい。このようにすると、例えば、処理する情報量が少なくなり、処理の簡素化、高速化が可能となる。また、例えば、2つの車輪に対応する情報と、他の2つの車輪に対応する情報のうち、正常な値を示している方を用いる又は両方の情報の平均を用いてもよい。このようにすると、例えば、精度の高い検出が可能となる。
車両が備える車輪の回転に関する情報の、車両についての制御を行うネットワークからの取得は、例えば、所定時間ごとに行うとよい。所定時間は、例えば、車両の進行方向の変化に関する情報を求めるのに必要な時間とするとよい。例えば、ほぼ同時刻の少なくとも2つの車輪の回転に関する情報の瞬時値とするとよい。
車両の進行方向の変化に関する情報は、例えば、少なくとも2つの車輪の回転に関する情報の相違の程度を示す情報とするとよい。例えば、2つの車輪の回転に関する情報が示す値の差に基づく情報とするとよい。また、例えば、2つの車輪の回転に関する情報が示す値の比に基づく情報とするとよい。
進行方向の変化は、例えば、分岐点における右左折とするとよい。このようにすれば、例えば、判定する方向が少なく、処理の簡素化、高速化が可能になる。また、進行方向の変化は、例えば、進行角度の変化又はハンドル舵角の変化としてもよい。このようにすれば、例えば、より詳細な走行状態を判定できる。例えば、同一車線における進行方向の変化、車線変更における進行方向の変化を検出できる。さらに、GPSの測位ができない場合でも、立体交差、地下、トンネルなどでの道路のカーブにおける進行方向の変化を検出できる。
(2)前記車両についての制御を行うネットワークから、ハンドル舵角に関する情報を取得し、取得したハンドル舵角に関する情報と、前記少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報との関係に基づき、当該車両の異常状態を検出する態様とするとよい。
ネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報は、ハンドル舵角を正確に示しているが、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報は、車両の状態によって、実際のハンドル舵角との相違が生じる。このため、例えば、両方の情報が著しく相違するといった関係に基づいて、車両の異常状態を検出できる。車輪の回転に関する情報の関係に基づいてハンドル舵角を求める方法としては、例えば、次のようにするとよい。まず、ほぼ同時刻のハンドル舵角と、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報とを、その用途に応じた車両の進行方向の変化に関する情報を生成するために必要な時間間隔で取得したログを作成し、そのログにおける車両の少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係と、同時刻のハンドル舵角との対応関係の関数を求め、本システムでは、その関数を用いて、車輪の回転に関する情報の関係に基づいてハンドル舵角を求めるとよい。例えば、同時刻の2つの異なる車輪の回転数の瞬時値の差若しくは比と、当該時刻のハンドル舵角とを対応づけてログとして記憶しておき、この差若しくは比と舵角との相関関係を関数として記憶する。関数は、数式としてプログラムに組み込んでもよいし、例えば、写像を求めるテーブル等を作成して記憶しておき、このテーブルを用いて計算するプログラムとして構成してもよい。
例えば、ネットワークを流れる車輪の回転に関する情報やハンドル舵角のデータフォーマットは車種ごとに異なる場合がある。例えば、車輪の回転に関する情報とハンドル舵角との対応関係を車種ごとに予め採って関数を求めてプログラムないしデータとして本システムに記憶しておき、本システムでは車種を自動検出で設定あるいは手動でユーザが設定する機能を設け、設定された車種の対応関係を求めるとよい。例えば、この求めたハンドル舵角とネットワークから取得したハンドル舵角との関係に基づき、タイヤのパンクやスリップなどの車両の異常状態を検出するとよい。
車両の異常状態としては、例えば、特定のタイヤの回転数が、他のタイヤと比べて著しく異なる状態とするとよい。例えば、パンクや空気圧の異常や、雪道、アイスバーンや泥道等での特定のタイヤのスリップ等を、車両の異常状態とするとよい。
(3)前記車両についての制御を行うネットワークとして車両に備えるネットワークに接続された機器への問いかけは行わずに、前記ネットワークを流れる情報を読み取る態様とするとよい。
このようにすれば、ネットワークに接続された機器への問いかけによる情報収集は行わずに、ネットワークを流れる情報を読み取るので、ネットワークに接続された機器へのストレスを回避できる。特に、車輪の回転に関する情報をネットワークに出力するコンピュータは、問いかけに対する応答をする必要がないので、ストレスを回避できる。しかも、ネットワークのトラフィックを増加させることがないので、車両の制御全体へのストレスも回避することができる。
(4)前記車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、前記少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報とを、表示画面に表示させる制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、前記車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、前記少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報とを比較することができる。このようにハンドル舵角に関する両情報を比較した車両の搭乗者又は車両の外部の者は、例えば、両情報の相違の程度等から、車両の異常状態を判定できる。
表示の態様は、例えば、車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報との相違を、識別できる態様とするとよい。例えば、両情報の相違の存在を表示させたり、相違の大きさを表示させたり、相違から推定される異常の種類を表示させたりするとよい。このようにすれば、車両の異常状態を容易に判定できる。
表示画面は、例えば、視覚的に認識できる表示ができるものとするとよい。例えば、車内に設置された表示画面とするとよい。このようにすれば、例えば、表示画面を見た車両の搭乗者が、上記の両情報の比較ができる。また、例えば、車外に設置された表示画面とするとよい。このようにすれば、例えば、車外にいる者が、上記の両情報の比較ができる。
(5)前記車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、前記少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報との関係に基づいて、当該車両の異常状態を検出し、当該異常状態を、表示画面に表示させる制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、表示画面に車両の異常状態が表示されるので、運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、自ら異常状態を判定する煩わしさがなく、車両の異常状態を容易に認識できる。
異常状態の表示は、例えば、パンクや空気圧の異常、特定のタイヤのスリップ等を、文字、図形、色又はこれらの変化により認識できる表示とするとよい。
(6)前記車両の進行方向の変化に関する情報を、表示画面に表示させる制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、車両の進行方向の変化を認識することができる。この車両の進行方向の変化から、運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、当該車両の運転状態を判定することにより、安全運転やエコ運転に役立てることができる。
表示画面は、例えば、車内に設置された表示画面とするとよい。このようにすれば、例えば、車両の搭乗者が、当該車両の進行方向の変化を認識することができる。また、例えば、車外に設置された表示画面とするとよい。このようにすれば、例えば、車外にいる者が、当該車両の進行方向の変化を認識することができる。例えば、タクシー会社や運送会社において、会社に設置された表示画面により、過去又は現在の運転者の車両の進行方向の変化をチェックして、運転状態がどのようなものかを判定し、運転者の安全運転やエコ運転を促す指標とするとよい。また、例えば、運転者が、自宅の表示画面により、過去の自らの車両の進行方向の変化をチェックして、運転状態がどのようなものであったかを判定し、自らの安全運転やエコ運転を目指す指標とするとよい。
車両の進行方向の変化に関する情報の表示は、例えば、進行方向の変化の有無から、車両の運転状態を判定できる態様の表示とするとよい。例えば、瞬時における車両の進行方向の変化を視覚により把握可能な態様としてもよい。さらに、所定期間における車両の進行方向の変化をまとめて視覚により把握可能な態様とするとよい。所定期間としては、例えば、車線変更を短時間に繰り返し行なっている、同一車線内での進行方向の変化が頻繁に生じている等の判定ができる程度の期間とするとよい。車両の搭乗者又は車両の外部の者によって判定される車両の運転状態は、例えば、安全運転やエコ運転に適合又は反するような運転の状態であるとよい。このようにすれば、例えば、車両の運転手の安全運転やエコ運転の実現に結びつけることができる。例えば、車線変更を短時間に繰り返し行なっていることは、追い越しの頻度が高いという運転状態として、車両の搭乗者又は車両の外部の者が判定するとよい。例えば、同一車線内での進行方向の変化が頻繁に生じていることは、飲酒運転、居眠り運転という運転状態として、車両の搭乗者又は車両の外部の者が判定するとよい。運転状態を判定できる態様の表示としては、例えば、所定期間における進行方向又はハンドル舵角の変化を示すグラフ、所定期間における進行方向又はハンドル舵角の変化の頻度を示す数字等により、表示する態様とするとよい。
(7)前記車両の進行方向の変化に関する情報に基づいて、当該車両の運転状態を判定し、当該運転状態を表示画面に表示させる制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、表示画面に車両の運転状態が表示されるので、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、自ら運転状態を判定する煩わしさがなく、車両の運転状態を簡単に認識することができる。
運転状態の表示は、例えば、危険、安全、居眠り、飲酒等を、文字、図形、色又はこれらの変化により認識できる表示とするとよい。
(8)車両の運転操作に関する情報を取得し、取得した前記車両の運転操作に関する情報を、前記車両の進行方向の変化とともに、表示画面に表示させる制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、車両の進行方向の変化に関する情報とともに、車両の運転操作に関する情報を表示するので、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、進行方向の変化と運転操作に関する情報との関係に基づいて、車両の運転状態を、より詳細に判定することができる。
車両の運転操作に関する情報は、例えば、運転者が運転中に操作することが必要となる部材や機構の操作が有ったことと、そのタイミングを示す情報とするとよい。例えば、ウィンカーをいつ出したか、ブレーキをいつ何回踏んだか、アクセルをいつ何回踏んだかといった情報を、車両の運転操作に関する情報とするとよい。
例えば、右左折の前にウィンカーを出していない場合は、危険な運転状態として判定するとよい。例えば、右左折の前にブレーキを踏んでいない場合、アクセルを踏んでいる場合は、危険な運転状態として判定するとよい。
(9)車両の運転操作に関する情報を取得し、取得した当該車両の運転操作に関する情報と、当該車両の進行方向の変化に基づいて、当該車両の運転状態を判定し、当該運転状態を表示画面に表示させる制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、表示画面に、車両の進行方向の変化のみではなく、車両の運転操作に関する情報を加味して判定された運転状態が表示されるので、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者は、自ら運転状態を判定する煩わしさがなく、詳細な運転状態を簡単に得ることができる。
(10)前記異常状態に応じて、音を出力する制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、音を出力することにより、表示画面を見ていない車両の搭乗者又は外部の者にも、確実に車両の異常状態を知らせることができる。例えば、パンクや空気圧の異常、特定のタイヤのスリップ等を、車両の搭乗者又は車両の外部の者に、認識させることができる。
(11)前記運転状態に応じて、音を出力する制御を行う態様とするとよい。
このようにすれば、音を出力することにより、表示画面を見ていない車両の搭乗者又は外部の者にも、確実に車両の運転状態を知らせることができる。例えば、居眠り運転や飲酒運転における危険を、車両の搭乗者又は車両の外部の者に、警告することができる。
(12)同時刻における前記少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係を示す値を1回の値として、連続した所定の複数回の値の平均値を用いて、車両の進行方向の変化に関する情報を求める態様とするとよい。
このようにすれば、複数回の値のうち、他と極めて異なる値を示す回が存在しても、その値をそのまま用いるのではなく、複数回の値の平均値を用いるので、より舵角に近似した値に平準化される。したがって、舵角センサーにより一層近く、高い精度の方向検出ができる。
連続した複数回の値の平均値は、例えば、複数回の値の平均値を用いた後、最も古い回の値を除いて次回の値を含めて求めた平均値を求めるという方法で、順次求めた平均値を用いて行くとよい。
(13)前記車両が備える車輪の回転に関する情報は、ABSに使用されている車輪の回転状況を検出するセンサーからの信号に基づく情報とする態様とするとよい。
このようにすれば、ABS(アンチロックブレーキシステム)に使用されているセンサーからの信号を使用することになるため、特別なセンサーを追加する手間と費用を節約できる。また、ABSに使用されているセンサーからの信号に基づく情報は、トランスミッションの車速センサーに比べて、高い分解能が得られるので、方向を正確に検出できる。
(14)ABSの機能が働いていると、車両の進行方向の検出をしない態様とするとよい。
ABSが働いていると、センサーからの信号を用いた正確な進行方向の検出ができないため、検出をしないことにより、誤検出による誤判定、誤操作を防止できる。
(15)(1)〜(14)のシステムとしての機能は、コンピュータに実現させるためのプログラムとして構成することができる。
本発明によれば、複数の異なる車輪にセンサーを設置してそれぞれワイヤー接続する手間とコストがかからず、舵角センサーからのハンドル舵角を得ることができない場合であっても、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。
[1.電子機器の構成]
図1、図2は、本発明のシステムを構成する電子機器として好適な一実施形態であるレーダー探知機1を示している。図1(a)は、レーダー探知機1の前面(車両後方(運転者側)に向く面)側の斜視図、図1(b)は背面側の斜視図である。図2は、レーダー探知機1のブロック図である。
レーダー探知機1は、薄型矩形状のケース本体2を備え、そのケース本体2の背面側下方に取り付けられたブラケット3を用いて車両のダッシュボード上等に貼り付けて固定される。
ケース本体2の前面(車両後方(運転者側)に向く面)には、表示器5を備える。表示器5は、3.2インチのカラーTFT液晶ディスプレイで構成する。この表示器5上には、表示器5のどの部分がタッチされたかを検出するタッチパネル6を備える。また、ケース本体2の前面の右サイドには音量調整ボタン7が配置され、同左サイドには各種の作業用ボタン8が配置される。
ケース本体2の右側面には、着脱可能な記録媒体としてのメモリカード11を装着するためのカード挿入口9を備え、ケース本体2内のカード挿入口9の内側にメモリカードリーダ10が内蔵される。このカード挿入口9からメモリカード11を挿入することで、そのメモリカード11はメモリカードリーダ10に装着される。メモリカードリーダ10は、装着されたメモリカード11に格納されたデータを内部に取り込む。より具体的には、メモリカード11に格納されたデータは、新規な警報対象(ターゲット)の情報(経度・緯度等の位置情報、種別情報等)などの更新情報があり、その更新情報が制御部18の制御により装置に内蔵されるデータベース19に格納(ダウンロード)され、データ更新がされる。
データベース19は、制御部18のマイコン内あるいはマイコンに外付けした不揮発性メモリ(たとえばEEPROM)により実現できる。なお、データベース19には、出荷時に地図データ並びに一定の警報対象に関する情報が登録されており、その後に追加された警報対象についてのデータ等が上記のようにしてデータ更新される。
ケース本体2の背面側中央上方の内部にGPS受信器13を配置し、さらにその横にマイクロ波受信器14,無線受信器15を配置する。GPS受信器13は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、現在位置(経度・緯度)情報を出力する。マイクロ波受信器14は、速度測定装置から出射される所定周波数のマイクロ波を受信する。無線受信器15は、飛来する所定周波数の無線を受信する。ケース本体2内の下方には、スピーカ16も内蔵している。スピーカ口は、ケース本体2の底面に設けている。
ケース本体2の側面側下方には、DCジャック12を配置する。このDCジャック12は、図示省略のシガープラグコードを接続するためのもので、そのシガープラグコードを介して車両のシガーソケットに接続されて電源供給を受け得るようにする。
ケース本体2の前面には、上記の表示器5に加えて、ランプ31、リモコン受信器32、赤外線通信機34を配置している(図1では省略)。ランプ31は、警報の種類・緊急度に応じて、種々の色で光って警告する。リモコン受信器32は、赤外線によりリモコン(携帯機:子機)33とデータ通信をし、本装置に対する各種の設定を行なう。赤外線通信機34は、携帯電話機35等の赤外線通信機を内蔵した通信装置との間で、データの送受を行なう。
ケース本体2内には、地磁気センサー36、加速度センサー37を備える。地磁気センサー36は、地磁気を検出して北方向が進行方向に対してどの方向にあるかを検出するセンサーある。加速度センサー37は、車両の前後、左右、上下の加速度を検出するセンサーある。
また、本実施形態のレーダー探知機1は、車両に実装されているOBD−II(IIはローマ数字の「2」であり、以下「OBD−II」を「OBD2」と記す)コネクタに接続する接続ケーブル22を備えている。この接続ケーブル22の先端には、車両のOBD2コネクタに着脱自在に装着できるプラグ23が取り付けられている。OBD2コネクタは、故障診断コネクタとも称され、車両のECUに接続され、各種の車両情報が出力される。
接続ケーブル22の他端には、レーダー探知機1のケース本体2の側面に設けたソケット口24と接続するためのコネクタ端子25が設けられており、レーダー探知機1に対しても接続ケーブル22を着脱できるようにしている。もちろん、接続ケーブル22をレーダー探知機1に直接接続するようにしてもよい。
接続ケーブル22に取り付けられたプラグ23と、車両本体側のOBD2コネクタとを連結することで、制御部18は、車両についての制御を行う車内のネットワークに接続され、各種の車両情報を0.5秒おきに取得する。この車両情報としては、例えば、車速、エンジン回転数、エンジン負荷率、スロットル度、点火時期、残り燃料の割合、インテークマニホールドの圧力、吸入空気量(MAF)、インジェクション開時間、エンジン冷却水の温度(冷却水温度)、エンジンに吸気される空気の温度(吸気温度)、車外の気温(外気温度)、燃料タンクの残り燃料の量(残燃料量)、燃料流量、瞬間燃費、アクセル開度、ウィンカー情報(左右のウィンカーの動作(ON/OFF))、ブレーキ開度、ハンドルの回転操舵角情報等がある。
制御部18は、CPU,ROM,RAM,不揮発性メモリ、I/O等を備えるコンピュータであり、上述した各部と接続され、各種の入力機器(タッチパネル6、GPS受信器13、マイクロ波受信器14、無線受信器15等)から入力される情報に基づき所定の処理を実行し、出力機器(表示器5,スピーカ16等)を利用して所定の警報・メッセージを出力する。これらの基本構成は、基本的に従来のものと同様のものを用いることができる。例えば音声の出力は、音声のPCMデータを、不揮発性メモリであるEEPROM上に記憶しており、制御部18はこのPCMデータを再生してスピーカ16から音声を出力する。
[2.電子機器の基本機能]
本実施形態のレーダー探知機1における機能は、制御部18であるコンピュータが実行するプログラムとして、制御部18のEEPROM上に格納され、これを制御部18が有するコンピュータが実行することで実現する。制御部18が有するプログラムによってコンピュータが実現する機能としては、GPSログ機能、待ち受け画面表示機能、マップ表示機能、GPS警報機能、レーダー波警報機能、無線警報機能などがある。
GPSログ機能は、制御部18が1秒ごとにGPS受信器13によって検出された現在位置をその検出した時刻および速度(車速)と関連づけて位置履歴として不揮発性メモリに記憶する機能である。この位置履歴は例えばNMEA形式で記録する。
待ち受け画面表示機能は、所定の待ち受け画面を表示器5に表示する機能である。図3(a)は、待ち受け画面の一例を示しており、ここではGPS受信器13によって検出した自車両の速度、緯度、経度、高度を示している。
マップ表示機能は、図3(b)に示すように、GPS受信器13によって検出した現在位置に基づき、データベース19にアクセスし、そこに記憶されている地図データを読み出して表示する機能である。また、マップ表示機能は、現在位置の周囲の警報対象をデータベース19に記憶された位置情報に基づいて検索し、周囲に警報対象が存在する場合に地図上の該当する位置にその警報対象を示す情報(ターゲットアイコン112等)を重ねて表示する機能も備える。具体的な表示態様は、以下の通りである。
制御部18は、表示器5のほぼ全面のメイン表示領域R1に、車両の進行方向が常に上を向くように地図を表示する。制御部18は、メイン表示領域R1の下側中央が現在の自車位置になるように地図を表示するとともに、当該位置に自車アイコン111を表示する。
制御部18は、メイン表示領域R1の上方側に設定されたステータスエリアR2に、ステータス情報を表示する。ステータスエリアR2に表示するステータス情報は、左から順に、現在時刻121(図では、「15:10」),GPS電波受信レベル表示アイコン122(図では、長さの異なる3本の直線が平行に起立した最大受信レベル),駐車禁止エリアアイコン123(駐車最重点エリア,駐車重点エリア内のときに表示),レーダーの受信感度を示す受信感度モード表示アイコン124(図では、最高感度の「SE」)、車両速度125(図では「30km/h」)、方位磁針126となっている。ステータスエリアR2は、透明な領域とし、メイン表示領域R1のレイアよりも上のレイアを用いて配置する。これにより、ステータスエリアR2内でも、ステータス情報が表示されていない場所では、下側に位置する地図が視認できる。
制御部18は、メイン表示領域R1の左サイドに設定されるスケール表示領域R3に、現在のスケール情報(縮尺)を表示する。スケールは、自車位置を0mとし、その自車位置からメイン領域R1の上下方向の中間位置までの距離(図では「500」)と、上方位置までの距離(図では「1000」)を表示する。単位は、「m」である。制御部18は、メイン表示領域R1が2回連続してタッチされたことを検知すると、メイン表示領域R1内の所定位置(スケール表示領域R3に添う位置)に地図スケール変更ボタンを表示し(図示省略)、その地図スケール変更ボタンに対するタッチに応じて地図スケールを変更する。つまり、制御部18は、変更した地図スケールの縮尺に合わせてメイン表示領域R1に表示する地図の縮尺を変更すると共に、スケール表示領域R3に表示するスケール情報も変更する。
図3(a)に示すような待ち受け画面表示機能実行中に、表示器5への1回のタッチを検知した制御部18は、メニュー画面を表示する。そのメニュー画面中に用意された画面切り替えボタンがタッチされたことを検知した制御部18は、図3(b)に示すようなマップ表示機能に切り替える。同様にマップ表示機能実行中に表示器5への1回のタッチを検知した制御部18は、メニュー画面を表示する。そのメニュー画面中に用意された画面切り替えボタンがタッチされたことを検知した制御部18は、待ち受け画面表示機能に切り替える処理を行う。
制御部18は、待ち受け画面表示機能、マップ表示機能(以下これらの機能を総称して待受機能と称する)の実行中に、発生したイベントに応じて、GPS警報機能、レーダー波警報機能、無線警報機能等の各機能を実現する処理を実行し、当該機能の処理終了時には元の待受機能の処理に戻る。各機能の優先度は、高いほうから、レーダー波警報機能、無線警報機能、GPS警報機能の順に設定している。
GPS警報機能は、制御部18に有するタイマーからのイベントにより所定時間間隔(1秒間隔)で実行される処理である。この処理は、データベース19に記憶された警報対象の緯度経度とGPS受信器13によって検出した現在位置の緯度経度から両者の距離を求め、求めた距離が所定の接近距離になった場合に、表示器5に図4(a)に示すような警報画面であるGPS警報表示130(警報対象の模式図・残り距離等)を表示し、スピーカ16から警報対象に接近した旨を示す接近警告の音声を出力する処理である。
こうした警報対象としては、居眠り運転事故地点、速度測定装置(レーダー式、ループコイル式、Hシステム、LHシステム、光電管式、移動式等)、制限速度切替りポイント、取締エリア、検問エリア、駐禁監視エリア、Nシステム、交通監視システム、交差点監視ポイント、信号無視抑止システム、警察署、事故多発エリア、車上狙い多発エリア、急/連続カーブ(高速道)、分岐/合流ポイント(高速道)、ETCレーン事前案内(高速道)、サービスエリア(高速道)、パーキングエリア(高速道)、ハイウェイオアシス(高速道)、スマートインターチェンジ(高速道)、PA/SA内ガソリンスタンド(高速道)、トンネル(高速道)、ハイウェイラジオ受信エリア(高速道)、県境告知、道の駅、ビューポイントパーキング等があり、これらの目標物の種別情報とその位置を示す緯度経度情報と表示器5に表示する模式図または写真のデータと音声データとを対応付けてデータベース19に記憶している。
図4(a)は、レーダー波警報機能の表示例を示している。このレーダー波警報機能は、マイクロ波受信器14によって速度測定装置(移動式レーダー等(以下、単に「レーダー」と称する))から発せられる周波数帯のマイクロ波に対応する信号が検出された場合に、表示器5に対して警報画面であるGPS警報表示131を表示するとともに、スピーカ16から警報音を出力する警報機能である。例えば、レーダーの発するマイクロ波の周波数帯のマイクロ波がマイクロ波受信器14によって検出された場合に、図4(b)に示すように、データベース19に記憶されたレーダーの模式図または写真を表示器5に警報画面として表示するとともに、データベース19に記憶された音声データを読み出して『レーダーです。スピード注意。』という音声をスピーカ16から出力する。表示する距離は、例えば、電界強度から推定した距離とするとよい。
無線警報機能は、無線受信器15によって、緊急車両等の発する無線電波を受信した場合に、その走行等の妨げとならないよう、警報を発する機能である。無線警報機能においては、取締無線、カーロケ無線、デジタル無線、特小無線、署活系無線、警察電話、警察活動無線、レッカー無線、ヘリテレ無線、消防ヘリテレ無線、消防無線、救急無線、高速道路無線、警備無線等の周波数をスキャンし、スキャンした周波数で、無線を受信した場合には、データベース19に無線種別ごとに記憶されたその周波数に対応する無線を受信した旨の模式図を警報画面として表示器5に表示するとともに、データベース19に無線種別ごとに記憶された音声データを読み出して、スピーカ16からその無線の種別を示す警報音声を出力する。たとえば、取締無線を受信した場合には『取締無線です。スピード注意。』のように音声を出力する。
[3.車両の走行状態検出機能]
制御部18が、上記の基本機能に加えて実現する車両の走行状態検出機能について説明する。車両の走行状態検出機能としては、車輪の回転に関する情報の取得機能、車両の方向変換検出機能、車両の異常状態検出機能などがある。
[車輪の回転に関する情報の取得機能]
車輪の回転に関する情報の取得機能は、車両についての制御を行う車内のネットワークから、車輪の回転に関する情報を取得する機能である。この機能の詳細は、以下の通りである。
まず、上記のように、レーダー探知機1に接続された接続ケーブル22のプラグ23を、車両本体側のOBD2コネクタに連結することで、制御部18が、車両についての制御を行う車内のネットワークに接続される。
この車内のネットワークは、車両の制御のために車内の各部に配置されたコンピュータ(ECU)が接続され、車両自体の制御に用いるデータが流れるCAN(Controller Area Network)である。このように、制御部18を、車両についての制御を行うCANに接続するだけでよい。複数の異なる車輪に新たにセンサーを設置して、それらのセンサーを、それぞれワイヤーで接続する必要はない。
制御部18は、リモートフレームの送信等によるECUへの問いかけは行わない。CANに流れ、車両自体の制御に用いられる各車輪の回転に関する情報を、制御部18が10ms間隔で取得する。この情報は、ABS(アンチロックブレーキシステム)に使用され、四輪それぞれの回転状況を検出するセンサーから出力される各車輪の回転速度に関する情報である。ABSに使用されているセンサーからの車輪の回転速度に関する情報の分解能は、車速(1km/hステップ)に比べ、10倍から100倍の分解能がある。
なお、舵角センサーが取り付けられた車両の場合には、上記のように、OBD2からハンドルの回転操舵角情報(ハンドル舵角)を得ることもできる。しかし、全ての車両に舵角センサが取り付けられているわけではない。本実施形態では、舵角センサーが取り付けられた車両でも、取り付けられていない車両でも、ABSに使用されているセンサーから出力されている情報に基づいて、車両の方向変換、異常状態の検出を可能としている。
[車両の方向変換検出機能]
車両の方向変換検出機能は、制御部18が、上記の情報取得機能により取得した2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて、車両の進行方向の変化に関する情報として、車両の方向変換を検出する機能である。この機能の詳細は、以下の通りである。
まず、データベース19は、制御部18が取得した10msごとにCAN上に送出される各車輪の回転速度に関する情報を記憶している。そして、制御部18は、同時刻の2つの車輪の回転速度に関する情報の瞬時値の比を求め、この比の値から1を引く。このような計算により求めた値を、本実施形態では、車輪差比と呼ぶ。
車輪差比を求める対象となり得る2つの車輪は、以下の通りである。
・左前輪と右前輪
・左後輪と右後輪
・左前輪と左後輪
・右前輪と右後輪
・左前輪と右後輪
・右前輪と左後輪
(実際の走行による車輪差比の計測例)
実際の道路を走行して、上記のように、左前輪及び右前輪の車輪差比を求めた例を説明する。走行した経路は、図5に示すように、直進道路に接続された瓢箪形の道路であり、車両は、直進道路から瓢箪形に入って、右周りに一周して、再び直進道路に出るように走行している。
図6は、図5の経路を走行して、上記のように制御部18が求めた車輪差比(%)を縦軸とし、時間(秒)を横軸としたグラフである。このグラフの横軸のトータルの計測時間は、94秒である。また、図6のグラフには、制御部18が、計測と同時にOBD2から取得したハンドルの回転操舵角情報(ハンドル舵角)も、deg(°)で右の縦軸に示している。図6のグラフは、計測中又は計測終了後に、上記のように制御部18が求めてデータベース19に記憶したデータに基づいて、表示器5に表示させることができる。
以下、計測結果を、図5及び図6を参照して具体的に説明する。図5の経路における(1)〜(9)のカーブは、図6の(1)〜(9)に対応する。図5の矢印は、車両の進行方向を示す。まず、車両は、図5における左側の直線経路を直進して、瓢箪型の経路に入る。このとき、車両は(1)のT字路を左折する。すると、舵角は+290.0°程度、車輪差比は+29.00程度に達する。
次に、車両は(2)の緩やかな左曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は+20.0°程度、車輪差比は+2.00程度に達する。さらに、車両は(3)の右曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は−40.0°程度、車輪差比は−4.00程度に達する。
その後、車両は(4)の緩やかな右曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は−20.0°程度、車輪差比は−2.00程度に達する。そして、車両は(5)の右曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は−30.0°程度、車輪差比は−3.00程度に達する。
次に、車両は(6)の左曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は+50.0°程度、車輪差比は+5.00程度に達する。そして、車両は(7)の右曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は−60.0°程度、車輪差比は−6.00程度に達する。その後は、経路はほぼ直進となるため、舵角及び車輪差比ともに0付近が続く。
そして、車両は(8)の右曲がりのカーブを通過する。このとき、舵角は−40.0°程度、車輪差比は−4.00程度に達する。さらに、車両は、(9)のT字路を左折して、直進道路に出て行く。このとき、舵角は+300.0°程度、車輪差比は+30.00程度に達する。
以上の結果、車輪差比は、舵角とほぼ一致する結果が得られることがわかる。制御部18は、車輪車比が+であればハンドルが左、−であればハンドルが右に切られていることを検出できる。つまり、右左折のみならず、ハンドル舵角に相当する精度で、車両の進行方向を判定できる。また、データベース19に設定したしきい値に基づいて、交差点、T字路、L字路等を右左折したかを検出できる。例えば、車輪差比がしきい値+10.00以上であれば左折、しきい値−10.00以下であれば右折と検出できる。
なお、制御部18は、車輪差比を、次のように求めてもよい。左の前輪の回転速度に関する情報の瞬時値を1回の値として、連続した所定の複数回の値の平均値を求める。また、これと同時刻の右の前輪の回転速度に関する情報の瞬時値を1回の値として、連続した所定の複数回の値の平均値を求める。このように求めた左前輪の平均値と右前輪の平均値の比を求め、この比の値から1を引く。複数回の値の平均値を用いて値を求めた後、最も古い回の値を除いて次回の値を含めて平均値を求めるという方法で、順次求めた平均値を用いて、上記のように車輪差比を求めていく。
このように求めた車輪差比を縦軸とし、時間を横軸としたグラフを、図7に示す。このグラフにも、制御部18が、OBD2から同時並行に取得したハンドル舵角を示している。このグラフから明らかな通り、車輪の回転速度に関する情報の瞬時値の複数回の平均値により求めた車輪差比も、ハンドル舵角とほぼ一致する。さらに、平均値を用いることにより、複数回の値のうち、他と極めて異なる値を示す回が存在しても、ハンドル舵角により近似した値に平準化される。
(実際の走行による各車輪の回転速度の計測例)
上記のように、車輪差比によって方向変換を検出できる理由を示すため、車両が、単純に駐車場を直進してから右に一回りして再び直進に戻った場合において、制御部18が各車輪の回転速度を計測して比較したデータを、図8に示す。図8のグラフも、計測中又は計測終了後に、上記のように制御部18が取得してデータベース19に記憶したデータに基づいて、表示器5に表示させることができる。
図8(a)は、車速を示すグラフである。この車速は、OBD2から取得した値でも、GPSに基づく値でもよい。縦軸の数値の100分の1が速度km/hを示す。横軸の数値は、秒を示す。計測時間は、30.9秒である。
図8(b)は、上記の車速と同時に測定した各車輪の回転速度を示すグラフである。縦軸は、各車輪の回転速度に関する情報の瞬時値である。取得のタイミングは、約0.01秒間隔である。横軸の数値は、秒を示す。
図8(a)に示すように、計測開始から2.3〜4.5秒付近では、車速は上昇している。このとき、車両は直進しているため、図8(b)に示すように、各車輪の回転速度はほぼ一致している。そして、4.5〜23.0秒付近では、車両は右回りに走行しているため、各車輪の回転速度に違いが生じている。さらに、24.3秒付近から、車速が下降するともに、車両は直進に戻り、各車輪の回転速度は再び一致する。
ここで、図8(b)に示すように、車両が右回りに走行している時には、内輪となる右前輪及び右後輪は回転速度が遅く、外輪となる左前輪及び左後輪は回転速度が速くなっている。また、左前輪が最も回転速度が速く、右後輪が最も回転速度が遅くなっている。
したがって、単純な右旋回の場合には、左前輪と右後輪という対角線上にある車輪の車輪差比が、最も大きくなる。左旋回の場合には、逆に、右前輪と左後輪との車輪差比が大きくなることが、容易に推察される。次いで車輪差比が大きいのは、左前輪と右前輪又は左後輪と右後輪である。左前輪と左後輪又は右前輪と右後輪は、車輪差比は、他と比べると小さいが、相違は明確に表れている。例えば、図8(b)において、10秒付近の各車輪の回転速度を示す数値は、左前輪が623、左後輪が576、右前輪が507、右後輪が457となっている。
以上のように、車両が方向変換したときの各車輪の回転速度に相違が生じることは明らかである。このため、制御部18は、いずれか2つの車輪の回転速度に関する情報を比較すれば、方向変換を検出できる。
[車両の異常状態検出機能]
車両の異常状態検出機能は、制御部18が、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて、車両の異常状態として、特定の車輪のスリップを検出する機能である。なお、以下に示すグラフも、計測中又は計測終了後にデータベース19が記憶したデータに基づいて、制御部18が、表示器5に表示させることができる。
(雪道急ブレーキ)
図9は、前輪駆動車において、雪道で直進中に急ブレーキをかけた場合のスリップ状態を示すグラフである。図9(a)の縦軸は車速、横軸は時間を示す。車速は、OBD2から取得した値でも、GPSに基づく値でもよい。縦軸の数値の100分の1が、速度(km/h)を示す。また、横軸の数値は秒を示す。横軸のトータルの計測時間は、95秒である。図9(b)の縦軸は、上記の車速と同時に測定した各車輪の回転速度に関する情報の瞬時値である。取得のタイミングは、約0.01秒間隔である。横軸の数値は秒を示す。
まず、図9(a)に示すように、計測開始から25秒付近までは、安定した走行が続き、各車輪の回転速度はほぼ一致している。そして、25秒付近において、強くブレーキが踏まれている。もし、ABSがなければ、車輪の回転にロックがかかるので、車輪の回転速度は、ほぼ0になるはずである。しかし、ABSが働いているので、各車輪の回転速度は少し落ちる程度である。ABSは、車輪ごとに、適宜、制御値によって制御する。ただし、その結果としての実際の各車輪の回転速度は異なってくる。これは、舵角、路面の状態及びこれと各車輪の接触状態等が異なること等が原因である。
このため、図9(b)に示すように、左前輪が、最も回転速度が落ちて、大きくスリップしている。ここで、制御部18は、データベース19にあらかじめ設定したしきい値に基づいてスリップと判定すると、図9(b)に示すように、「左前輪がスリップ」という吹き出しをグラフに重ねて表示器5に表示させて、警告する。警告の表示領域は、データを示す線を避けた領域とする。
しきい値としては、例えば、特定の車輪の回転速度が、他のいずれかの車輪の回転速度の3分の1以上低下した場合等とする。なお、警告のためのしきい値をどの程度とするかは、実験等に基づいて決定すればよく、車輪の回転速度に差異が生じた場合を全て警告する必要はない。
この後、25〜47秒付近では、ブレーキをかけ続けている。このため、図9(a)に示すように、車両は徐々に減速する。特に、33秒付近においては、図9(b)に示すように、右前輪が最も回転速度が落ちて、大きくスリップしている。ここで、制御部18は、「右前輪がスリップ」という吹き出しをグラフに重ねて表示器5に表示させて、警告する。
そして、47〜56秒付近では、ブレーキをかけていない。このため、図9(a)に示すように、車速は非常に緩やかに低下している。このとき、図9(b)に示すように、各車輪の回転速度は安定して、ほぼ一致している。さらに、56秒付近で、再びブレーキが踏まれている。これにより、図9(a)に示すように、車速が急に落ちる。
このとき、図9(b)に示すように、右前輪が、最も回転速度を落として、大きくスリップしている。ここで、制御部18は、「右前輪がスリップ」という吹き出しをグラフに重ねて表示器5に表示させて、警告する。次いで、左前輪も、回転速度を落として、スリップしている。ここで、制御部18は、「左前輪がスリップ」という吹き出しをグラフに重ねて表示器5に表示させて、警告する。
63秒付近からは、各車輪の回転速度は安定して、ほぼ一致している。その後も安定した走行が続き、70秒付近から、ブレーキをかけずにアクセルを踏むことにより、緩やかに速度が上昇している。
(雪道アクセル1)
図10は、前輪駆動車において、雪道で直進中にアクセルをふかした場合のスリップ状態を示すグラフである。図10(a)の縦軸0〜6000rpmはエンジンの回転数、横軸は時間(秒)を示す。図10(b)は、縦軸0〜8000が車速(100分の1が速度km/h)、横軸は時間(秒)を示す。図10(c)は、縦軸が各車輪の回転速度を示す値、横軸が時間(秒)であり、トータルの計測時間は155秒である。
図10(a)に示すように、計測開始から3.7秒付近においてアクセルを踏むと、エンジンの回転数は急激に上昇する。11.2秒付近では、まだアクセルを踏み続けているが、坂道を上昇しているため、エンジンの回転数の上昇率はやや落ちる。3.7秒付近のエンジンの回転数の上昇に遅れて、図10(b)に示すように、12秒付近において、車速が上昇する。なお、車速が落ちた場合には、これに遅れてエンジン回転数が落ちる。
ここで、車速が上昇した12秒付近において、図10(c)に示すように、左前輪の回転速度が上昇してスリップし、4秒ほど遅れて、右前輪の回転速度が上昇してスリップする。制御部18は、データベース19にあらかじめ設定したしきい値に基づいてスリップと判定すると、図10(c)に示すように、「左前輪がスリップ」、「右前輪がスリップ」という吹き出しを、グラフに重ねて表示器5に表示させて、警告する。
しきい値としては、特定の車輪の回転速度が、他のいずれかの車輪の回転速度の2分の1以上となった場合等とする。なお、ブレーキをかけた場合のしきい値は、上記の雪道急ブレーキと同等とする。警告のためのしきい値をどの程度とするかは、実験等に基づいて決定すればよく、車輪の回転速度に差異が生じた場合を全て警告する必要はない。
その後、23〜76秒付近では、図10(a)に示すように、エンジンの回転数は変動しているが、これは地形に応じてアクセルを踏んでいるだけである。このため、図10(b)に示すように、82秒付近までは、車速はなだらかに上昇している。また、図10(c)に示すように、各車輪の回転速度は一致している。
さらに、図10(a)に示すように、76秒付近で急にアクセルが踏み込まれた後、110秒付近までアクセルが軽く踏み続けられる。すると、図10(b)に示すように、82秒付近において車速が急激に上昇した後、一旦下がってからまた上昇する。このとき、図10(c)に示すように、右前輪、左前輪の速度が急激に上昇してともにスリップした後、右前輪が元に戻る間に、左前輪がスリップを継続し、また右前輪がスリップを開始して、117秒付近において、両者が元に戻る。
このとき、制御部18は、図10(c)に示すように、「左前輪がスリップ」、「右前輪がスリップ」という吹き出しをグラフに重ねて表示器5に表示して、スリップを警告する。このように、左右に前輪のみがスリップするのは、駆動輪だからである。また、左右の車輪の挙動が相違するのは、右が道路、左がアイスバーンの場合のように、滑りやすさに相違があるためである。
次に、図10(a)に示すように、126秒付近でアクセルを踏み込んだところで、エンジンの回転数が急激に上昇する。これに遅れて131秒付近において、図10(b)に示すように、車速が僅かに上昇し、図10(c)に示すよう、左前輪が僅かにスリップする。ただし、制御部18は、この程度の回転数の上昇は、しきい値に達しない軽度のスリップであるとして、警告を出さない。
最後に、図10(a)に示すように、151秒付近でブレーキを踏むと、図10(b)に示すように、僅かに車速が低下して、図10(c)に示すように、左前輪が僅かにスリップする。このように、ブレーキによるスリップは、アクセルによるスリップとは逆に、回転速度の低下として現れる。なお、制御部18は、この程度のスリップは、しきい値に達しない軽度のスリップであるとして、警告を出さない。
(雪道アクセル2)
図11は、図10と同様に、前輪駆動車において、雪道で直進中にアクセルをふかした場合のスリップ状態を示すグラフである。但し、図10よりも、横軸の測定時間は321秒と長い。図10(a)は、縦軸0〜7000が車速(100分の1が速度km/h)、横軸は時間(秒)を示す。図10(b)は、縦軸が各車輪の回転速度を示す値、横軸が時間(秒)である。
このグラフからも明らかなように、雪道でアクセルを踏んで車速が急激に上昇すると、雪道スリップ1と同様に、右前輪、左前輪の回転速度が上昇して、スリップが発生することがわかる。
[4.実施形態の効果]
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(A)車両についての制御を行うネットワークに接続するだけで、制御部18が、進行方向の変化に関する情報を求めることができる。したがって、例えば、複数の異なる車輪にセンサーを設置して、それらのセンサーを、それぞれワイヤーで接続する必要がない。特に、車両についての制御を行うネットワークから、ハンドル舵角等を得ることができない、あるいは、データフォーマット等が公開されておらず、得ることが困難な場合に有効である。
(B)GPSによって車両の進行方向の変化に関する情報を求める構成では、GPSの電波が遮られて測位ができない場所では、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができないが、制御部18が、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報を得ることにより、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。なお、制御部18が、車両の進行方向の変化に関する情報に基づいて、GPSで求めた走行距離の補正等を行う構成を備えるようにしてもよい。
舵角センサーがない車両の場合、舵角センサーがあってもその用途が限定されている場合、舵角センサーが故障している場合であっても、制御部18は、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する信号を得ることにより、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。
(C)車両自体の制御に用いるデータが流れるネットワークにおける車輪の回転に関する情報の分解能は、車速(1km/hステップ)に比べ、10倍から100倍の分解能がある。このため、量子誤差が小さくなり、たとえ低速走行時であっても、制御部18が、車輪の回転に関する情報から求めた車両の進行方向の変化に関する情報の誤差も極めて小さくなる。従って、制御部18は、舵角センサーと比べても、遜色のないレベルで正確に進行方向の変化に関する情報を求めることができる。
制御部18は、車両自体の制御に用いるデータが流れるネットワークにおける車輪の回転に関する情報から、車両の進行方向の変化に関する情報とともに、車速を算出したり、走行距離を算出したり、別に取得したエンジンの回転数と車速から変速比を算出したりすることもできる。このように求める車速、走行距離、変速比等の誤差も、小さくすることができる。
(D)車両に備えるネットワークは、有線のネットワークである。このため、制御部18は、ネットワークの信号線(例えば、信号線群)の1箇所にワイヤー接続するだけで、車両の進行方向の変化に関する情報を求めることができる。特に、ネットワークの信号線に対して着脱自在なコネクタに接続する構成なので、簡単に接続できる。
(E)制御部18は、2つの車輪のみに対応する情報を用いることにより、処理する情報量が少なくなり、処理の簡素化、高速化が可能となる。また、制御部18は、ほぼ同時刻の少なくとも2つの車輪の回転に関する情報の瞬時値を、ネットワークから10msごとに取得して用いている。このため、制御部18が、車両の進行方向の変化に関する情報を求める情報として十分である。
(F)制御部18は、ネットワークに接続された機器への問いかけによる情報収集は行わずに、ネットワークを流れる情報を読み取るので、ネットワークに接続された機器へのストレスを回避できる。特に、車輪の回転に関する情報をネットワークに出力するコンピュータは、問いかけに対する応答をする必要がないので、ストレスを回避できる。しかも、ネットワークのトラフィックを増加させることがないので、車両の制御全体へのストレスも回避することができる。
(G)制御部18は、ネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報とを、表示器5の表示画面に表示させる。このため、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者が、車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報とを比較することができる。このようにハンドル舵角に関する両情報を比較した車両の搭乗者は、両情報の相違の程度等から、車両の方向変換や異常状態を判定できる。
また、表示器5の表示画面に車両の異常状態が表示されるので、運転者を含む車両の搭乗者が、自ら異常状態を判定する煩わしさがなく、車両の異常状態を容易に認識できる。例えば、制御部18が、スリップの発生を知らせる警告を、吹き出しによりグラフに重ねて表示させることにより、スリップを車両の搭乗者に認識させることができる。制御部18は、警告の表示領域を、データを示す線を避けた領域とすることにより、データが見難くなることを防止できる。また、制御部18が、軽度のスリップは警告しないことにより、警告が頻繁に表示されて却って危険を認識し難くなることを防止できる。
さらに、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者が、車両の進行方向の変化を認識して、この車両の進行方向の変化に基づいて、当該車両の運転状態を判定することにより、安全運転やエコ運転に役立てることができる。
(H)制御部18は、ABS(アンチロックブレーキシステム)に使用されているセンサーからの信号を使用することになるため、特別なセンサーを追加する手間と費用を節約できる。また、ABSに使用されているセンサーからの信号に基づく情報は、トランスミッションの車速センサーに比べて、高い分解能が得られるので、方向を正確に検出できる。
さらに、制御部18がネットワークから取得する車輪の回転に関する情報に、複数回の値のうち、他と極めて異なる値を示す回が存在しても、その値をそのまま用いるのではなく、複数回の値の平均値を用いることにより、より舵角に近似した値に平準化することができる。したがって、舵角センサーにより一層近く、高い精度の方向検出ができる。
[5.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。
(a)「車輪の回転に関する情報」としては、車輪の単位時間あたりの回転量としてもよく、車輪の単位時間あたりの回転数としたり、車輪の単位時間あたりの回転角度としてもよい。このような情報も、車両の方向変換、異常な走行状態が生じた場合に、各車輪において相違する値を示すので、上記の実施形態と同様に、制御部18による方向変換、異常状態の検出が可能となる。
(b)「車両についての制御を行うネットワーク」としては、車外のネットワークとしてもよい。ネットワークは、有線であっても、無線であってもよい。例えば、車両の走行中のデータを収集する車外のネットワークから、車輪の回転に関する情報を取得することにより、車両の外部の者が、車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報とを比較することができる。この場合、表示画面は、車外に設置され、ネットワークに接続されたコンピュータの表示装置における表示画面としてもよい。
このようにハンドル舵角に関する両情報を比較した車両の外部の者は、両情報の相違の程度等から、車両の方向変換や異常状態を認識することができる。また、上記のように表示画面に車両の異常状態を表示すれば、車両の外部の者が、自ら異常状態を判定する煩わしさがなく、車両の異常状態を容易に認識できる。さらに、表示画面を見た車両の外部の者が、車両の進行方向の変化を認識して、この車両の進行方向の変化に基づいて、当該車両の運転状態を判定することにより、安全運転やエコ運転に役立てることができる。
例えば、タクシー会社や運送会社において、会社に設置された表示画面により、過去又は現在の運転者の車両の進行方向の変化をチェックして、運転状態がどのようなものかを判定し、運転者の安全運転やエコ運転を促す指標とするとよい。また、例えば、運転者が、自宅の表示画面により、過去の自らの車両の進行方向の変化をチェックして、運転状態がどのようなものであったかを判定し、自らの安全運転やエコ運転を目指す指標とするとよい。この場合、上記のように、車外のコンピュータがネットワークを介して情報を取得して表示画面に表示してよいし、車内に設置されたシステムに挿入されたメモリカード11に情報を記録し、このメモリカード11を車外のコンピュータで読み取ることにより、情報を表示画面に表示してもよい。
(c)回転に関する情報の対象となる「少なくとも2つの異なる車輪」は、2つ以上であってもよい。例えば、2つの車輪に対応する情報と、他の2つの車輪に対応する情報のうち、正常な値を示している方を用いる又は両方の情報の平均を用いてもよい。このようにすると、精度の高い検出が可能となる。車輪に関する情報は、上記のように、複数回の値のうち、他と極めて異なる値を示す回が存在する場合があるが、制御部18は、正常値又は平均値を求めて検出に用いることにより、このような値を排除又は平準化することができる。
(d)「車両の進行方向の変化に関する情報」は、例えば、少なくとも2つの車輪の回転に関する情報の相違の程度を示す情報とするとよい。例えば、2つの車輪の回転に関する情報が示す値の差に基づく情報としてもよい。また、例えば、2つの車輪の回転に関する情報が示す値の比に基づく情報としてもよい。このような情報によっても、進行方向に応じて相違する値が得られるので、制御部18は、進行方向の変化を検出できる。
制御部18による進行方向の変化の検出は、例えば、分岐点における右左折のみを検出してもよい。このようにすれば、制御部18が判定する方向が少なく、処理の簡素化、高速化が可能になる。また、進行方向の変化は、進行角度の変化又はハンドル舵角の変化としてもよい。本システムは、ハンドル舵角と同等の精度での検出が可能となるので、進行方向の詳細な変化までも検出できる。このようにすれば、制御部18は、より詳細な走行状態を判定できる。例えば、制御部18は、同一車線における進行方向の変化、車線変更における進行方向の変化を検出できる。さらに、GPSの測位ができない場合でも、制御部18は、立体交差、地下、トンネルなどでの道路のカーブにおける進行方向の変化を検出できる。
(e)ネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報は、ハンドル舵角を正確に示しているが、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報は、車両の状態によって、実際のハンドル舵角との相違が生じる場合がある。このため、制御部18は、あらかじめデータベース19に設定されたしきい値以上相違する等、両方の情報が著しく相違するといった関係に基づいて、車両の異常状態を検出することもできる。
車輪の回転に関する情報の関係に基づいてハンドル舵角を求める方法としては、次のようにしてもよい。まず、制御部18は、ほぼ同時刻のハンドル舵角と、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報とを、その用途に応じた車両の進行方向の変化に関する情報を生成するために必要な時間間隔で取得したログを作成し、データベース19に記憶する。制御部18は、そのログにおける車両の少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係と、同時刻のハンドル舵角との対応関係の関数を求め、その関数を用いて、車輪の回転に関する情報の関係に基づいてハンドル舵角を求める。例えば、制御部18は、同時刻の2つの異なる車輪の回転数の瞬時値の差若しくは比と、当該時刻のハンドル舵角とを対応づけてログとして、データベース19に記憶しておき、この差若しくは比と舵角との相関関係を関数としてデータベース19に記憶する。関数は、数式としてプログラムに組み込んでもよいし、写像を求めるテーブル等を作成して記憶しておき、このテーブルを用いて計算するプログラムとして構成してもよい。過去の情報に基づいて作成されたこのようなプログラムを、あらかじめデータベース19が記憶しておき、これにより制御部18が動作するように構成してもよい。
ネットワークを流れる車輪の回転に関する情報やハンドル舵角のデータフォーマットは、車種ごとに異なる場合がある。この車輪の回転に関する情報とハンドル舵角との対応関係を車種ごとに予めとって関数を求めてプログラムないしデータとしてデータベース19に記憶しておく。そして、制御部18が、車種を自動検出で設定あるいは手動でユーザが設定する機能を、本システムに設ける。制御部18は、設定された車種と車輪の回転に関する情報やハンドル舵角との対応関係を求める。制御部18は、このように求めたハンドル舵角とネットワークから取得したハンドル舵角との関係に基づき、タイヤのパンクやスリップなどの車両の異常状態を検出することができる。これにより、車種が相違しても、正確な検出が可能となる。
(f)車両の異常状態として、特定の車輪の回転数が、他の車輪と比べて著しく異なる状態とすることにより、制御部18は、雪道、アイスバーンや泥道での特定の車輪のスリップばかりでなく、トラクションの異常、パンクや空気圧の異常についても検出することができる。
(g)車輪の回転に関する情報を、制御部18が表示器5に表示させる態様は、例えば、車両についての制御を行うネットワークから取得したハンドル舵角に関する情報と、少なくとも2つの異なる車輪の回転に関する情報の関係に基づいて求めたハンドル舵角に関する情報との相違を、識別できる態様であればよい。両情報の相違の存在を表示させたり、相違の大きさを表示させたり、相違から推定される異常の種類を表示させたりするとよい。このようにすれば、車両の方向変換や異常状態を容易に判定できる。
車両の進行方向の変化に関する情報の表示は、例えば、進行方向の変化の有無から、車両の運転状態を判定できる態様の表示とするとよい。例えば、瞬時における車両の進行方向の変化を視覚により把握可能な態様としてもよい。これは、表示画面による矢印等の記号表示であっても、左右に配置されたLED等のランプによる発光であってもよい。
異常状態の表示の態様は、上記のような吹き出しによるものの他、例えば、パンクや空気圧の異常、特定のタイヤのスリップ等を、文字、図形、色又はこれらの変化により認識できる表示とするとよい。表示画面による表示であっても、LED等のランプによる発光であってもよい。
さらに、表示の態様を、所定期間における車両の進行方向の変化をまとめて視覚により把握可能な態様とするとよい。所定期間としては、例えば、車線変更を短時間に繰り返し行なっている、同一車線内での進行方向の変化が頻繁に生じている等の判定ができる程度の期間とするとよい。
車両の搭乗者又は車両の外部の者によって判定される車両の運転状態は、例えば、安全運転やエコ運転に適合又は反するような運転の状態であるとよい。このようにすれば、例えば、車両の運転手の安全運転やエコ運転の実現に結びつけることができる。例えば、車線変更を短時間に繰り返し行なっていることは、追い越しの頻度が高いという運転状態として、車両の搭乗者又は車両の外部の者が判定するとよい。例えば、同一車線内での進行方向の変化が頻繁に生じていることは、飲酒運転、居眠り運転という運転状態として、車両の搭乗者又は車両の外部の者が判定するとよい。
運転状態を判定できる態様の表示としては、例えば、所定期間における進行方向又はハンドル舵角の変化を示すグラフ、所定期間における進行方向又はハンドル舵角の変化の頻度を示す数字等により、表示する態様とするとよい。
(h)制御部18は、上記のような車両の進行方向の変化に関する情報に基づいて、当該車両の運転状態を判定し、当該運転状態を、表示器5の表示画面に表示させる制御を行ってもよい。このようにすれば、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、自ら運転状態を判定する煩わしさがなく、車両の運転状態を簡単に認識できる。運転状態の表示は、例えば、危険、安全、居眠り、飲酒等を、文字、図形、色又はこれらの変化により認識できる表示とするとよい。
(i)制御部18は、ネットワークを介して、車両の運転操作に関する情報を取得し、取得した車両の運転操作に関する情報を、車両の進行方向の変化に関する情報とともに、表示器5の表示画面に表示させる制御を行ってもよい。このようにすれば、車両の進行方向の変化に関する情報とともに、車両の運転操作に関する情報を表示するので、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者が、進行方向の変化と運転操作に関する情報との関係に基づいて、車両の運転状態を、より詳細に判定することができる。
車両の運転操作に関する情報は、例えば、運転者が運転中に操作することが必要となる部材や機構の操作が有ったことと、そのタイミングを示す情報とするとよい。例えば、ウィンカーをいつ出したか、ブレーキをいつ何回踏んだか、アクセルをいつ何回踏んだかといった情報を、車両の運転操作に関する情報とするとよい。例えば、右左折の前にウィンカーを出していない場合は、危険な運転状態として判定するとよい。例えば、右左折の前にブレーキを踏んでいない場合、アクセルを踏んでいる場合は、危険な運転状態として判定するとよい。
(j)制御部18は、車両の運転操作に関する情報を取得し、取得した当該車両の運転操作に関する情報と、当該車両の進行方向の変化に関する情報とに基づいて、当該車両の運転状態を判定し、当該運転状態を、表示器5の表示画面に表示させる制御を行ってもよい。このようにすれば、表示画面を見た運転者を含む車両の搭乗者又は車両の外部の者は、自ら運転状態を判定する煩わしさがなく、詳細な運転状態を簡単に得ることができる。
(k)制御部18は、異常状態、運転状態に応じて、スピーカ16に音を出力させる制御を行ってもよい。このようにすれば、音を出力することにより、表示画面を見ていない車両の搭乗者又は外部の者にも、確実に車両の異常状態を知らせることができる。例えば、パンクや空気圧の異常、特定のタイヤのスリップ等を、車両の搭乗者又は車両の外部の者に、認識させることができる。また、音を出力することにより、表示画面を見ていない車両の搭乗者又は外部の者にも、確実に車両の運転状態を知らせることができる。例えば、居眠り運転や飲酒運転における危険を、車両の搭乗者又は車両の外部の者に、警告することができる。
(l)右左折や異常状態を検出するためのしきい値に対する大小判断、一致不一致の判断等において、以上、以下、として値を含めて判断するか、より大きい、より小さい、超える、超えない、上回る、下回る、未満として値を含めないように判断するかも自由である。したがって、例えば、値の設定によっては、「以上」を「より大きい」、「超える」、「上回る」に、「以下」を「より小さい」、「超えない」、「下回る」、「未満」に読み替えても、実質的には同じである。
(m)制御部18は、ABSの機能が働いている場合には、車両の進行方向の検出をしない設定としてもよい。ABSが働いていると、センサーからの信号を用いた正確な進行方向の検出ができないため、このような場合に制御部18が検出をしないことにより、誤検出による誤判定、誤操作を防止できる。
(n)制御手段を、1つの制御部18で実現しても良いし、複数の制御部18で実現しても良い。車両内に制御部18をすべて設けるようにしても良いし、車両外に制御部18をすべて設けるようにしても良いし、車両内に制御部18の一部を設け、車両外にその一部以外の部分を設けても良い。制御部18の機能の少なくとも一部をサーバにおき、当該機能をサーバで実行し、ユーザが持つ電子機器は、その実行結果を取得するようなシステムとしてもよい。また、データベースに登録する情報の一部または全部をサーバに登録しておくこともできる。そして、レーダー探知機その他の電子機器・装置は、係るサーバと通信する機能を備え、制御部は、適宜サーバにアクセスし、必要な情報を取得して処理を実行するシステムとしてもよい。
(o)表示手段としての表示器5は、ユーザ等が視覚的に認識できる表示ができるものであればよく、液晶、有機EL等の表示画面等のあらゆる表示装置を含む。このような表示手段は、上記のように、車両の外部に設置され、ネットワークに接続されたコンピュータの表示装置によって実現してもよい。音出力手段としてのスピーカ16(ヘッドフォン、イヤフォン等も含む)も、車両の外部に設置され、ネットワークに接続されたコンピュータの出力装置によって実現してもよい。
(p)本発明を適用するシステムは、レーダー探知機1には限定されない。種々の構成の車載用電子機器、例えば、カーナビゲーションシステム、ドライブレコーダーに適用することが可能である。本発明の機能は、電子機器として構成された既存のシステムにプログラムをインストールすることにより、簡単に追加することができる。従って、車両の所有者は、出費を抑えつつ、新たな機能を利用することができる。
(q)本発明のシステムとしての機能は制御部18に備えるコンピュータに実現させるためのプログラムとして構成されているが、これに限らずプログラムは複数のコンピュータに分散配置し、分散処理するようにしてもよい。