JP6581055B2 - 硫化物固体電解質、リチウム固体電池および硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

硫化物固体電解質、リチウム固体電池および硫化物固体電解質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に代えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れる。
硫化物固体電解質は、リチウムイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用であり、従来から、種々の研究がなされている。例えば、特許文献1には、硫化物固体電解質として、LiS−Pが例示されている。また、特許文献2には、LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程を含む硫化物固体電解質の製造方法が示されている。また、特許文献2には、上記製造方法を行うことにより、Li元素、P元素およびS元素を含み、CuKα線を用いたX線回折測定において特定のピークを有する結晶性材料の硫化物固体電解質が得られることが開示されている。
特許文献3には、O元素およびF元素を含有する硫化物固体電解質が開示されている。特許文献4は、硫化物固体電解質(例えば、LiPS)と水素よりもイオン化傾向の小さい金属を含有する抑制材(例えば、CuO)を含むリチウムイオン伝導材料が開示されている。特許文献5には、75LiS・(25−x)P・xPで表される結晶化ガラスを含む硫化物固体電解質が開示されている。
特開2005−228570号公報 特開2015−146239号公報 特開2012−054212号公報 特開2011−113720号公報 特開2011−057500号公報
硫化物固体電解質は、水と接触した場合に硫化水素が発生する虞がある。そのため、硫化水素の発生を抑制することが望まれている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有し、一般式xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)で表される組成を有し、結晶性材料であることを特徴とする硫化物固体電解質を提供する。
本発明によれば、N元素を所定の割合で含む結晶性材料であることにより、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質とすることができる。
上記発明においては、上記一般式において、67.5≦x+y≦72.5または80≦x+y≦85であり、TG−DTAにおいて、261℃±50℃の位置に発熱ピークを有しないことが好ましい。
上記発明においては、XPSのN1sスペクトルにおいて、397cm−1±0.5cm−1および398cm−1±0.5cm−1の各位置にピークを有することが好ましい。
本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを含有するリチウム固体電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記固体電解質層の少なくとも一つが、上述した硫化物固体電解質を含有することを特徴とするリチウム固体電池を提供する。
本発明によれば、上述した硫化物固体電解質を含有することにより、硫化水素の発生が抑制されたリチウム固体電池とすることができる。
本発明においては、Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有し、一般式xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)で表される組成を有し、結晶性材料である硫化物固体電解質の製造方法であって、上記硫化物固体電解質の原料組成物を非晶質化して硫化物ガラスを得る非晶質化工程と、上記硫化物ガラスを熱処理して、上記結晶性材料を得る熱処理工程と、を有することを特徴とする硫化物固体電解質の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記非晶質化工程および熱処理工程を有することにより、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質を得ることができる。
上記発明においては、上記熱処理工程における熱処理温度が、261℃以上であることが好ましい。
本発明の硫化物固体電解質は、硫化水素の発生が抑制されているといった効果を奏する。
本発明のリチウム固体電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の硫化物固体電解質の製造方法の一例を示す説明図である。 実施例2−1、2−2、および比較例2−1、2−2の化学安定性評価の結果である。 実施例1のXPSのN1sスペクトルの測定結果である。
以下、本発明の硫化物固体電解質、リチウム固体電池および硫化物固体電解質の製造方法の詳細を説明する。
A.硫化物固体電解質
本発明の硫化物固体電解質は、Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有し、一般式xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)で表される組成を有し、結晶性材料であることを特徴とする。
本発明によれば、N元素を所定の割合で含む結晶性材料であることにより、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質とすることができる。
その理由は、以下のように推測される。すなわち、本発明の硫化物固体電解質が、N元素を含有することにより、水分との接触部において、水(HとOH)のプロトン(H)がN原子に引き付けられることで、硫黄(S原子)と反応するHの量が減り、硫化水素(HS)の発生を抑制すると推測される。また、上記硫化物固体電解質の表面が塩基性となり、硫化水素の発生を抑制することができると推測される。すなわち、硫化物固体電解質は水分と反応した際に硫化水素(HS)が発生する虞があるが、硫化水素は、通常、酸性下で生じる。本発明の硫化物固体電解質は、N元素を含むことにより、水分と反応すると、NH水溶液(例えば、NH +OH)のような状態となり塩基性になると推測される。硫化水素は、通常、塩基性下では発生しないため、硫化水素の発生を抑制することができると推測される。
また、本発明においては、N元素の割合が少なすぎても、多すぎても硫化水素の発生を十分に抑制できない。具体的に、N元素の割合が少なすぎると、上述したメカニズムによる効果を十分に得られない可能性があるからである。
一方、N元素の割合が多すぎることにより、硫化水素の発生を十分に抑制できない理由は以下のように推測される。N元素の含有量を多すぎると、硫化物固体電解質中のS原子がN原子と置換する。N原子に置換されたS原子は、リチウムイオン(Liイオン)と反応することにより硫化リチウム(LiS)が生成し、硫化物固体電解質中の硫化リチウムの含有量が増加する。硫化リチウムは水と反応して硫化水素を発生しやすいため、硫化水素の発生を十分に抑制できなくなると推測される。なお、本発明者らは、N元素の含有量は多い方が硫化水素の発生を抑制する効果が得られるとも考えたが、意外にも、N元素の割合が多すぎると硫化水素の発生を十分に抑制できないことを知見した。
なお、特許文献2には、LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程を含む硫化物固体電解質の製造方法が示されているが、特許文献2では、混合物Aを加圧成型した混合物Bを加熱することにより、Li元素、P元素およびS元素を含み、CuKα線を用いたX線回折測定において特定のピークを有する硫化物固体電解質が得られることが開示されている。また、特許文献2の[0019]段落には、LiN中のNはNとして排出される旨が記載されている。さらに、実施例においては、混合物Bの熱処理をAr気流下(開放系)で行う旨が記載されている。そのため、特許文献2の結晶性材料である硫化物固体電解質は、N元素を含まず、上述した一般式の組成を有しないと推測される。
また、本発明においては、N元素を含む結晶性材料であることにより、イオン伝導度を高くすることができる。その理由は以下のように推測される。N原子は、S原子よりも大きい価数を取ることができる。そのため、硫化物固体電解質におけるS原子の一部がN原子に置換された場合、置換したN原子は、結合に寄与していない電子を過剰に有することができる。そのため、イオンが動きやすくなり、イオン伝導度が高くなると推測される。
本発明においては、イオン伝導度を高くする観点からも、N元素が上記一般式で表される組成を有するように含有していることが好ましい。N元素の含有量が多すぎると、硫化物固体電解質中で、N原子は、例えば、LiNの状態で存在すると推測される。LiNはイオン伝導性が低いため、硫化物固体電解質のイオン伝導度が低下すると推測される。
なお、特許文献3では、O元素、F元素を含有する硫化物固体電解質が開示されている。特許文献3では、O、FはSに比べてイオン半径が大きい。具体的なイオン半径は、Oは140pmであり、Fは136pmであり、Sは184pmである。そのため、O、Fはイオン(例えば、リチウムイオン)を引き付ける力が強いため、イオンの動きが制限され、イオン伝導度が低下する虞がある。これに対し、NはO、Fに比べてイオン半径が小さい。具体的なNのイオン半径は、171pmである。そのため、Nは、イオンを引き付ける力が弱いため、リチウムイオンが動きやすくなり、イオン伝導度を向上できると推測される。
後述する実施例1、2−1、2−2で示すように、本発明の硫化物固体電解質は、高温時(例えば、350℃以上)における硫化水素の発生を抑制することができ、化学安定性が高い。そのため、本発明の硫化物固体電解質を用いたリチウム固体電池において、なんらかの理由により発熱反応が生じた場合も、硫化水素の発生を抑制することができる。
本発明の硫化物固体電解質は、一般式xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)(一般式1)で表される組成を有する。
一般式1におけるxの値は、例えば、52.5以上であっても良く、57.5以上であっても良い。また、xの値は、例えば、75以下であっても良く、70以下であっても良い。また、yの値は、通常、10以上、15以下である。
また、x+yの値は、通常、67.5以上であり、80以上であっても良い。また、x+yの値は、通常、85以下であり、72.5以下であっても良い。本発明においては、中でも、x+yの値は、67.5≦x+y≦72.5、または、80≦x+y≦85の関係を有することが好ましい。
なお、一般式1は、あくまで、LiS、P、LiNを用いてLi元素、P元素、S元素およびN元素の割合を例示したものであり、硫化物固体電解質の原料組成物が、LiS、P、LiNであることを特定するものではない。本発明の硫化物固体電解質は、例えば、原料組成物として単体S、単体P等を用いた場合も、上記一般式1で表される組成を有する。
上記一般式1の組成は、例えば、Li(2x+3y)50(x+125)(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)(一般式2)の組成とも表すことができる。
また、本発明の硫化物固体電解質は、例えば、x=75とした場合、75LiS−25P−yLiN(10≦y≦15)(一般式3)で表される組成を有する。一般式3は、例えば、LiS:P=75:25で表される組成を基準とした場合、Liを過剰に有するLi過剰型の組成と捉えることもできる。
また、本発明の硫化物固体電解質は、例えば、x=75−1.5yとした場合、(75−1.5y)LiS−25P−yLiN(10≦y≦15)(一般式4)で表される組成を有する。一般式4は、例えば、LiS:P=75:25で表される組成を基準とした場合、LiNの割合を変化させても、硫化物固体電解質全体のLiの割合が変化しないLi定値型の組成と捉えることもできる。
なお、上記一般式3、4も、硫化物固体電解質の原料組成物が、LiS、P、LiNであることを特定するものではない。
本発明の硫化物固体電解質が上記組成を有することは、例えば、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析を行うことで確認することができる。
本発明の硫化物固体電解質は、通常、結晶性材料である。より具体的には、硫化物ガラスを熱処理して結晶化したガラスセラミックスであることが好ましい。
結晶性材料は、通常、XRD(X線回折)測定において2θに特定のピークを有する材料をいう。本発明の硫化物固体電解質においては、CuKα線を用いたXRD(X線回折)測定において、2θ=17.9°±0.5°、19.1°±0.5°、29.1°±0.5°、29.8°+0.5°、30.9°+0.5°の位置にピークを有することが好ましい。なお、これらのピークは、±0.3°の範囲内にあっても良く、±0.1°の範囲内にあっても良い。
また、本発明においては、例えば、CuKα線を用いたXRD測定におけるLiSのピーク(2θ=27.0°±0.5°、31.2°±0.5°、44.8°±0.5°、53.1°±0.5°)を有しないことが好ましい。本発明の硫化物固体電解質が、実質的にLiSを含まないものとすることができるため、硫化水素の発生をより抑制することができるからである。
また、本発明においては、例えば、CuKα線を用いたXRD測定におけるLiNのピーク(例えばα型のLiNピーク、2θ=21.6°±0.5°、27.9°±0.5°)を有しないことが好ましい。本発明の硫化物固体電解質が、実質的にLiNを含有しないものとすることができるため、リチウムイオン伝導度を高くすることができるからである。
本発明の硫化物固体電解質は、通常、結晶性材料である。本発明の硫化物固体電解質は、例えば、ガラス成分をさらに含有していても良く、含有していなくても良いが、後者がより好ましい。硫化物固体電解質のイオン伝導性をより高くすることができるからである。
本発明の硫化物固体電解質は、TG−DTA(示差熱熱重量同時分析)において、261℃±50℃の位置に発熱ピークを有しないことが好ましい。上記発熱ピークは、上述した一般式1の組成を有するガラス成分の結晶化のピークである。そのため、硫化物固体電解質がTG−DTA測定において、261℃±50℃の位置に発熱ピークを有しないことにより、硫化物固体電解質の結晶性を高くすることができるからである。
本発明の硫化物固体電解質は、例えば、XPS(X線電子分光分析)のN1sスペクトルにおいて、397cm−1±0.5cm−1および398cm−1±0.5cm−1の各位置にピークを有することが好ましい。これらのピークは、±0.3cm−1の範囲内にあっても良く、±0.1cm−1の範囲内にあっても良い。言い換えると、上記N1sスペクトルにおいて、397cm−1付近から398cm−1付近に、少なくとも2本のピークを有することが好ましい。
この場合、硫化物固体電解質は、例えば、結晶構造中にN原子が取り込まれた状態(アニオン構造中にN原子が結合を有して取り込まれた状態)を取る。本発明の硫化物固体電解質は、例えば、1つのN原子に対し、3つのP原子がそれぞれ一重結合で結合したNP構造を有していても良い。また、例えば、1つのN原子に対し、1つのP原子が一重結合で結合し、1つのP原子が二重結合で結合したP−N=P構造を有していても良い。イオン伝導度を高くすることができる。また、硫化水素の発生をより抑制することができる。
本発明の硫化物固体電解質は、例えば、Li元素、P元素およびS元素を含有するイオン伝導体を有することが好ましい。また、上記イオン伝導体が、さらにN元素を含有していても良い。上記イオン伝導体はオルト組成のアニオン構造(PS 3−構造)を主成分として有することが好ましい。本発明におけるオルト組成のアニオン構造は、例えば、PS 3−構造のS原子がN原子と置換した構造も含むものとする。オルト組成のアニオン構造の割合は、イオン伝導体における全アニオン構造に対して、70mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。オルト組成のアニオン構造の割合は、ラマン分光法、NMR(核磁気共鳴)法、XPS等により決定することができる。
本発明の硫化物固体電解質は、イオン伝導性(特にリチウムイオン伝導性)が高いことが好ましい。25℃における硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導度は、例えば、1×10−4S/cm以上であることが好ましい。また、本発明の硫化物固体電解質の形状は、特に限定されるものではないが、例えば粒子状を挙げることができる。さらに、硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の硫化物固体電解質は、硫化水素の発生が抑制されたものである。本発明においては、硫化物固体電解質のHS発生温度は、例えば、350℃以上であることが好ましく、370℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることがさらに好ましい。HS発生温度、および測定方法については、後述の実施例で説明する。
本発明の硫化物固体電解質は、イオン伝導性を必要とする任意の用途に用いることができる。中でも、本発明の硫化物固体電解質は、リチウム固体電池に用いられることが好ましい。また、本発明の硫化物固体電解質の製造方法については、後述する「C.硫化物固体電解質の製造方法」で詳細に説明する。
B.リチウム固体電池
本発明のリチウム固体電池について、図を用いて説明する。図1は本発明のリチウム固体電池の一例を示す概略断面図である。図1におけるリチウム固体電池10は、正極活物質を含有する正極活物質層1と、負極活物質を含有する負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された固体電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。本発明においては、正極活物質層1、負極活物質層2および固体電解質層3の少なくとも一つが、上記「A.硫化物固体電解質」に記載した硫化物固体電解質を含有することを特徴とする。
本発明によれば、上述した硫化物固体電解質を含有することにより、硫化水素の発生が抑制されたリチウム固体電池とすることができる。
以下、本発明のリチウム固体電池における各構成について説明する。
1.正極活物質層
本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、正極活物質層が固体電解質を含有し、その固体電解質が、上述した硫化物固体電解質であることが好ましい。正極活物質層に含まれる上記硫化物固体電解質の割合は、リチウム固体電池の種類によって異なるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内であり、1体積%〜60体積%の範囲内であることが好ましく、10体積%〜50体積%の範囲内であることがより好ましい。また、正極活物質としては、例えばLiCoO、LiMnO、LiNiMn、LiVO、LiCrO、LiFePO、LiCoPO、LiNiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等を挙げることができる。
正極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、正極活物質層は、結着材を含有していても良い。結着材の種類としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素含有結着材等を挙げることができる。また、正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
2.負極活物質層
本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、負極活物質層が固体電解質を含有し、その固体電解質が、上述した硫化物固体電解質であることが好ましい。負極活物質層に含まれる上記硫化物固体電解質の割合は、電池の種類によって異なるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内であり、1体積%〜60体積%の範囲内であることが好ましく、10体積%〜50体積%の範囲内であることがより好ましい。また、負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
なお、負極活物質層に用いられる導電化材および結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
3.固体電解質層
本発明における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。固体電解質層は、通常、固体電解質を含有する。本発明においては、固体電解質層が、上述した硫化物固体電解質を含有することが好ましい。固体電解質層に含まれる上記硫化物固体電解質の割合は、例えば10体積%〜100体積%の範囲内であり、50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。また、固体電解質層の形成方法としては、例えば、固体電解質を圧縮成形する方法等を挙げることができる。
4.その他の構成
本発明のリチウム固体電池は、上述した正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層を少なくとも有する。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な電池の電池ケースを用いることができ、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
5.リチウム固体電池
本発明のリチウム固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明のリチウム固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、本発明のリチウム固体電池の製造方法は、上述した電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム固体電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。その製造方法の一例としては、正極活物質層を構成する材料、固体電解質層を構成する材料、および負極活物質層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。
C.硫化物固体電解質の製造方法
本発明の硫化物固体電解質の製造方法は、Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有し、一般式xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)で表される組成を有する結晶性材料である硫化物固体電解質の製造方法であって、上記硫化物固体電解質の原料組成物を非晶質化して硫化物ガラスを得る非晶質化工程と、上記硫化物ガラスを熱処理して、上記結晶性材料を得る熱処理工程と、を有することを特徴とする。
本発明の硫化物固体電解質の製造方法について図を用いて説明する。図2は本発明の硫化物固体電解質の製造方法の一例を示す説明図である。図2では、まず、原料組成物(例えばLiS、P、LiN)を非晶質化して硫化物ガラスを得る(非晶質化工程)。次に、硫化物ガラスを熱処理して、結晶性材料を得る(熱処理工程)。以上の工程を行うことにより、上述した硫化物固体電解質を得ることができる。
本発明によれば、上記非晶質化工程および熱処理工程を有することにより、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質を得ることができる。
以下、本発明の硫化物固体電解質の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.非晶質化工程
非晶質化工程は、上記硫化物固体電解質の原料組成物を非晶質化して硫化物ガラスを得る工程である。
原料組成物は、通常、Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有する原料を混合することにより得られる。Li元素を含有する原料としては、例えば、Liの硫化物、Liの窒化物等を挙げることができる。具体的には、LiS、LiNを挙げることができる。P元素を含む原料としては、例えば、Pの単体、Pの硫化物を挙げることができる。Pの硫化物としては、例えば、P等を挙げることができる。S元素を含有する原料としては、例えば、Sの単体、上述したLiの硫化物、Pの硫化物を挙げることができる。N元素を含有する原料としては、例えば、上述したLiの窒化物を挙げることができる。
原料組成物における各原料の混合比率(モル比)は、上述した「A.硫化物固体電解質」の組成を有するように、適宜調整することができる。
原料組成物を非晶質化する方法としては、例えば、ボールミル、振動ミル等のメカニカルミリング法、溶融急冷法等を挙げることができる。メカニカルミリング法は、乾式であっても良く、湿式であっても良いが、均一処理の観点で後者が好ましい。湿式メカニカルミリング法に用いられる分散媒の種類は特に限定されるものではない。
メカニカルミリング法の各種条件は、所望の硫化物ガラスが得られるように設定する。例えば、遊星型ボールミルを用いる場合、原料組成物および粉砕用ボールを加え、所定の回転数および時間で処理を行う。一般的に、回転数が大きいほど、硫化物ガラスの生成速度は速くなり、処理時間が長いほど、原料組成物から硫化物ガラスへの転化率は高くなる。遊星型ボールミルを行う際の台盤回転数は、例えば、200rpm以上、550rpm以下の範囲内であり、300rpm以上、510rpm以下の範囲内であっても良い。また、遊星型ボールミルを行う際の処理時間は、例えば、1時間以上、100時間以下の範囲内であり、1時間以上、70時間以下の範囲内であっても良く、10時間以上、50時間以下の範囲内であっても良い。
非晶質化により得られる硫化物ガラスは、XRD測定において、結晶に由来するピークを有しないことが好ましい。
2.熱処理工程
本発明における熱処理工程は、上記硫化物ガラスに熱処理を行い、上記硫化物固体電解質材料を得る工程である。
熱処理工程における熱処理温度、熱処理時間等については、上述した「A.硫化物固体電解質」の項で説明した硫化物固体電解質が得られるように適宜調整される。
熱処理工程における熱処理温度は、例えば、240℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、261℃以上であることが好ましい。また、熱処理温度は、例えば、320℃以下であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることが特に好ましい。
加熱時間は、例えば、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。また、加熱時間は、例えば、10時間以下であることが好ましく、5時間以下であることがより好ましい。
熱処理は、例えば、密閉条件で行われることが好ましい。密閉条件で行うことで、硫化物固体電解質中にN元素を取り込みやすくすることができるためである。また、反応系外にN元素がNとして排出されることを抑制することができるためである。加熱雰囲気は、例えば、真空を挙げることができる。
熱処理の方法としては、より具体的には、密閉容器中に硫化物ガラスをいれて、密閉容器内を真空引きし、密閉容器ごと焼成炉内で熱処理をする方法が挙げられる。密閉容器としては、例えば、石英管等を挙げることができる。
3.硫化物固体電解質
本発明により得られる硫化物固体電解質については、上記「A.硫化物固体電解質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[製造例1]
LiS(日本化学工業、99.9%)、P(アルドリッチ、99%)、LiNを出発原料とした。75LiS−25P−yLiNの組成を有するように、各原料を秤量した。製造例1では、y=10とした。秤量した各原料を遊星型ボールミルで処理し、ガラス状の硫化物固体電解質(硫化物ガラス)を作製した。遊星ボールミルはFRITCH製のP−7を用い、φ5mmのメディアを用いて回転数370rpmで40時間処理した。
[製造例2−1]
LiS(日本化学工業、99.9%)、P(アルドリッチ、99%)、LiNを出発原料とした。(75−1.5y)LiS−25P−yLiNの組成を有し、かつ、モル比でLi:P=3:1となるように、各原料を秤量した。製造例2−1では、y=10とした。上記の点以外は製造例1と同様にして、硫化物ガラスを作製した。
[製造例2−2]
製造例2−1と同様の出発原料を用い、(75−1.5y)LiS−25P−yLiNの組成においてy=15となるように、各原料を秤量したこと以外は、製造例2−1と同様にして、硫化物ガラスを作製した。
(TG−DTA測定)
製造例1、2−1、2−2で得られた硫化物ガラスについてTG−DTA測定を行った。測定にはTG−DTA装置(Thermo plus EVO、リガク製)を用いた。アルミニウム製の試料皿を用い、参照試料としてα−Al粉末を用いた。測定試料を20mg用い、Arガス雰囲気において室温(25℃)から500℃まで10℃/minで昇温し、TG−DTA測定を行った。TG−DTA測定では、いずれの製造例も、261℃近傍に発熱ピーク(結晶化のピーク)が確認された。
[実施例1]
製造例1と同様にして、硫化物ガラスを得た。得られた硫化物ガラスを、石英管に入れ、30Pa以下で真空封入した。上記石英管を焼成炉内で、310℃、2時間の条件で熱処理した。以上の工程により、硫化物固体電解質を得た。
[実施例2−1〜実施例2−2]
製造例2−1または製造例2−2と同様にして、硫化物ガラスを得た。得られた硫化物ガラスに対し、実施例1と同様に熱処理をして、硫化物固体電解質を得た。
[比較例1]
製造例1と同様の出発原料を用い、75LiS−25P−yLiNの組成においてy=15となるように、各原料を秤量したこと以外は製造例1と同様にして、硫化物ガラスを得た。得られた硫化物ガラスに対し、実施例1と同様に熱処理をして、硫化物固体電解質を得た。
[比較例2−1]
製造例2−1と同様の出発原料を用い、75LiS−25Pの組成を有するように、各原料を秤量したこと以外は、製造例2−1と同様にして、硫化物ガラスを作製した。得られた硫化物ガラスに対し、実施例1と同様に熱処理をして、硫化物固体電解質を得た。
[比較例2−2]
製造例2−1と同様の出発原料を用い、(75−1.5y)LiS−25P−yLiNの組成においてy=15となるように、各原料を秤量したこと以外は、製造例2−1と同様にして、硫化物ガラスを作製した。得られた硫化物ガラスに対し、実施例1と同様に熱処理をして、硫化物固体電解質を得た。
なお、製造例、実施例および比較例の硫化物固体電解質(硫化物ガラス)の組成を、一般式1で表した場合のx、y、およびx+yの値を表1に示す。
[評価]
(化学安定性評価)
硫化水素(HS)の発生挙動を下記の方法で評価した。
得られた硫化物固体電解質100mgを大気中、10℃/minの温度で加熱し、発生するHSの温度プロファイルを測定した。急激に硫化水素(HS)が発生する温度をHS発生温度とした。具体的には、HS発生量(ppm)を縦軸、温度(℃)を横軸とした測定結果のグラフにおいて、50ppm/℃以上の傾きで温度上昇が観測された温度をHS発生温度とした。結果を、表1に示す。
また、実施例2−1、2−2、比較例2−1、2−1(定値型の組成)の結果を図3に示す。
Figure 0006581055
表1に示すように、xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)(一般式1)を満たす実施例1、2−1、2−2においては、N元素を含まない比較例2−1に比べてHS発生温度が50℃以上も高温領域側にシフトすることが確認された。
一方、一般式1の組成よりもN元素を過剰に含有させた比較例1−2、2−2においても、HS発生温度が高温領域側にシフトすることが確認されたが、意外にも0℃〜200℃付近において硫化水素が発生することが確認された。具体的には、図3に示すように、実施例2−1、2−2では、0℃から200℃付近において、硫化水素はほぼ発生していないことが確認されたが、比較例2−2においては最大で、200ppm程度、硫化水素が発生することが確認された。このことから、一般式1の組成よりもN元素を過剰に含有させた場合、副反応により硫化水素が発生することが示唆された。
以上から、一般式1を満たす場合に、HSの発生が抑制されたことが確認された。
また、図3に示すように、HS発生温度が高温領域側にシフトした実施例2−1、2−2においては、比較例2−1に比べて、HS発生温度より低温側においてもHSの発生が抑制されている。そのため、HS発生温度を高くすることにより、通常の電池の使用温度においても硫化水素の発生を抑制できることが示唆された。
(イオン伝導度測定)
製造例1、2−1、2−2の硫化物ガラス、または実施例1、2−1、2−2、比較例1、2−1〜2−2の硫化物固体電解質をマコール製のシリンダの中に100mg入れて、784MPaでプレスしてペレット状の固体電解質層を成型した。得られた固体電解質層の上下面を、SUS製のピストンで挟み込み、ボルト3本でトルク2Nmで締め付けた。インピーダンス測定を行うことで固体電解質層の伝導度を算出した。イオン伝導度は固体電解質層の厚さと、Cole−coleプロットの実軸上の抵抗値から算出した。結果を表2に示す。
Figure 0006581055
イオン伝導度測定の結果から、xLiS−25P−yLiN(10≦y≦15、67.5≦x+y≦85)を満たす製造例1、2−1、2−2の硫化物ガラスに比べて、実施例1、2−1、2−2の結晶性材料においては、イオン伝導度が高いことが確認された。また、実施例1、2−1、2−2の結晶性材料は、N元素を含有しない比較例2−1の結晶性材料に比べてもイオン伝導度が高いことが確認された。
また、実施例1、2−1、2−2の結晶性材料は、一般式1の組成よりもN元素を過剰に含有させた比較例1−2、2−2に比べてイオン伝導度が高いことが確認された。すなわち、一般式1において、N元素を過剰に含有させると、イオン伝導度が下がることが確認された。
(粉末XRD測定)
実施例1の硫化物固体電解質を不活性用のXRDガラスフォルダに詰め、Rigaku製のRINT2000を用いて粉末XRD回折測定を行った。CuKα線を用いて、2θ=10°〜60°でスキャンレート10°/minで測定を行った。
実施例1の硫化物固体電解質は、2θ=17.9°、19.1°、29.1°、29.8°、30.9°の位置にピークを有することが確認された。
また、実施例2−1、2−2の硫化物固体電解質においても、実施例1と同様のXRDピークが確認された。よって、製造例1、2−1、2−2で得られたTG−DTA測定の結晶化ピークよりも高温で熱処理することにより、結晶性材料の硫化物固体電解質が得られることが確認された。
なお、特許文献2の実施例1においては、硫化物固体電解質が、CuKα線を用いたXRD測定において、2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置にピークを有することが記載されている。よって、本発明における実施例1、2−1、2−2の硫化物固体電解質は、特許文献2の硫化物固体電解質と異なる結晶相であることが確認された。
また、比較例2−1の硫化物固体電解質のXRDピークを測定したところ、実施例1等で確認されたXRDピークとは異なるピーク、具体的には、2θ=17.5°、18.6°、29.1°、29.9°、31.2°の位置にピークを有することが確認された。このピークは、β−LiPSのXRDピークとほぼ一致する。したがって、実施例1等においては、N元素を含まない硫化物固体電解質とは異なる、新規結晶相を有することが確認された。
(TG−DTA測定)
実施例1、2−1、2−2で得られた硫化物固体電解質に対し、TG−DTA測定を行った。具体的な測定方法は、製造例1、2−1、2−2の測定方法と同様とした。その結果、261℃±50℃において発熱ピークが確認されなかった。以上から、実施例1、2−1、2−2で得られた硫化物固体電解質は結晶性が高いことが確認された。
なお、従来のLiSおよびPを用いた硫化物固体電解質(例えば、75LiS−25P)においては、例えば261℃以上で熱処理を行うと、Liイオン伝導性が低いβ−LiPS相が生じる場合があることが知られている。そのため、従来においては、あえて硫化物固体電解質の熱処理温度を261℃以上とする動機付けはない。
また、製造例1、2−1、2−2の硫化物ガラスを261℃未満で熱処理した場合も、上述したXRDのピークを有する結晶性材料が得られることが確認された。また、得られた結晶性材料に対し、TG−DTA測定を行ったところ、261℃近傍に発熱ピークが得られることが確認された。その理由は以下のように推測される。本発明の硫化物固体電解質は、例えば、原料組成物に対しメカニカルミリングにより非晶質化する。そのため、得られる硫化物ガラスにおいては、局所的に反応が進行していることが推測される。硫化物ガラスを261℃未満で熱処理した場合も、局所的には結晶化が生じ、ガラス成分を含む結晶性材料が得られると推測される。
(XPS測定)
実施例1で得られた硫化物固体電解質のXPSにおけるN1sスペクトルを測定した。結果を図4に示す。図4に示すように、実施例1の硫化物固体電解質は、XPSのN1sスペクトルにおいて、397cm−1±0.5cm−1と、398cm−1±0.5cm−1とにそれぞれピークを有することが確認された。なお、397cm−1付近のピークはP−N=Pの結合のピークであり、398cm−1付近のピークはPNの3つのP−N結合のピークである。よって、XPS測定の結果から、実施例1の硫化物固体電解質の結晶構造中にN原子が取り込まれた状態を有することが確認された。硫化物固体電解質のアニオン構造中にN原子が結合を有して取り込まれていると推測される。
例えば、比較例2−1のようにLi元素、P元素、およびS元素を含有する硫化物固体電解質は、構成ユニットとして、例えば、PSユニットを含有することが好ましいが、PSユニット以外にも、例えば、Pユニット、Pユニットを含有する場合がある。Pユニットは架橋硫黄を含む。架橋硫黄は、具体的には、SP−S−PSユニット(Pユニット)の2つのP原子を架橋する硫黄のことである。このような架橋硫黄は水と反応しやすく、硫化水素が発生しやすい。
実施例1、2−1、2−2においては、N元素を含有させることにより、硫化水素の発生が抑制されていることから、架橋硫黄がN原子と置換されていることが示唆された。
1 …正極活物質層
2 …負極活物質層
3 …固体電解質層
4 …正極集電体
5 …負極集電体
6 …電池ケース

Claims (6)

  1. Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有し、
    75Li S−25P −10Li で表される組成を有し、結晶性材料であることを特徴とする硫化物固体電解質。
  2. TG−DTAにおいて、261℃±50℃の位置に発熱ピークを有しないことを特徴とする請求項1に記載の硫化物固体電解質。
  3. XPSのN1sスペクトルにおいて、397cm−1±0.5cm−1および398cm−1±0.5cm−1の各位置にピークを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫化物固体電解質。
  4. 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを含有するリチウム固体電池であって、
    前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記固体電解質層の少なくとも一つが、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質を含有することを特徴とするリチウム固体電池。
  5. Li元素、P元素、S元素およびN元素を含有し、75Li S−25P −10Li で表される組成を有し、結晶性材料である硫化物固体電解質の製造方法であって、
    前記硫化物固体電解質の原料組成物を非晶質化して硫化物ガラスを得る非晶質化工程と、
    前記硫化物ガラスを熱処理して、前記結晶性材料を得る熱処理工程と、
    を有することを特徴とする硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記熱処理工程における熱処理温度が、261℃以上であることを特徴とする請求項5に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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