以下、図面を参照して、本発明の実施形態における油圧制御装置について具体的に説明する。
[1.車両]
図1は、実施形態の油圧制御装置100を搭載する車両Veの一例を模式的に示す図である。図1に示すように、車両Veは、走行用動力源としてエンジン(ENG)1を備えている。エンジン1から出力された動力は、トルクコンバータ2、入力軸3、前後進切替機構4、ベルト式の無段変速機(以下「CVT」という)5、出力軸6、カウンタギヤ機構7、デファレンシャルギヤ8、車軸9を介して駆動輪10に伝達される。また、車両Veには、駆動装置の油圧供給先に油圧を供給する油圧制御装置100が搭載されている。
トルクコンバータ2は、内部が作動流体(オイル)で満たされた流体伝動装置であり、油圧制御装置100によって油圧制御される。図1に示すように、トルクコンバータ2は、クランクシャフト11と一体回転するポンプインペラ21と、ポンプインペラ21に対向して配置されたタービンランナ22と、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間に配置されたステータ23と、ロックアップクラッチ(以下「LUクラッチ」という)24とを備えている。また、タービンランナ22には、入力軸3が一体回転するように連結されている。例えば、LUクラッチ24が係合している場合、ポンプインペラ21とタービンランナ22とは一体回転するため、エンジン1が入力軸3に直結される。一方、LUクラッチ24が解放している場合、エンジン1から出力された動力は作動流体を介してタービンランナ22に伝達される。なお、ステータ23は、一方向クラッチを介してケースに保持されている。
また、ポンプインペラ21には、機械式オイルポンプ201が連結されている。機械式オイルポンプ201は、ポンプインペラ21を介してエンジン1に連結されており、エンジン1によって駆動される。なお、機械式オイルポンプ201とポンプインペラ21とは、ベルト機構などの伝動機構を介して連結されてもよい。
入力軸3は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構からなる前後進切替機構4に連結されている。前後進切替機構4は、エンジントルクを駆動輪10へ伝達する際、駆動輪10に作用するトルクの方向を前進方向と後進方向とに切り替える。図1に示すように、前後進切替機構4は、サンギヤ4Sと、サンギヤ4Sに対して同心円上に配置されたリングギヤ4Rと、第1ピニオンギヤおよび第2ピニオンギヤを自転可能かつ公転可能に保持しているキャリア4Cとを備えている。サンギヤ4Sには、入力軸3が一体回転するように連結されている。キャリア4Cには、CVT5のプライマリシャフト54が一体回転するように連結されている。
また、前後進切替機構4には、サンギヤ4Sとキャリア4Cとを選択的に一体回転させるクラッチC1と、リングギヤ4Rを選択的に回転不能に固定するブレーキB1とが設けられている。クラッチC1およびブレーキB1は、いずれも油圧式である。クラッチC1の油圧アクチュエータおよびブレーキB1の油圧アクチュエータには、油圧制御装置100によって油圧が供給される。
例えば、クラッチC1が係合し、かつブレーキB1が解放された場合、前後進切替機構4全体が一体回転し、CVT5のプライマリシャフト54と入力軸3とは一体回転する。また、クラッチC1が解放し、かつブレーキB1が係合された場合、サンギヤ4Sとキャリア4Cとが逆方向に回転するため、プライマリシャフト54は入力軸3に対して逆方向に回転する。あるいは、クラッチC1が解放し、かつブレーキB1が解放された場合、前後進切替機構4が中立状態(ニュートラル状態)となり、エンジン1とCVT5との間はトルク伝達不能に遮断される。
CVT5は、プライマリシャフト54と一体回転するプライマリプーリ51と、出力軸6と一体回転するセカンダリプーリ52と、各プーリ51,52のV溝に巻き掛けられた無端状のベルト53とを備えている。各プーリ51,52のV溝幅が変化してベルト53の巻き掛け径が変化することにより、CVT5の変速比は連続的に変化する。
プライマリプーリ51は、プライマリシャフト54と一体化された固定シーブ51aと、プライマリシャフト54上を軸方向に移動する可動シーブ51bと、可動シーブ51bに推力を付与する油圧シリンダ51cとを備えている。油圧シリンダ51cは、可動シーブ51bの背面側に配置されており、可動シーブ51bを固定シーブ51a側へ移動させる推力を発生させる。油圧シリンダ51cには、油圧制御装置100によって油圧が供給される。
セカンダリプーリ52は、出力軸6と一体化された固定シーブ52aと、出力軸6上を軸方向に移動する可動シーブ52bと、可動シーブ52bに推力を付与する油圧シリンダ52cとを備えている。油圧シリンダ52cは、可動シーブ52bの背面側に配置されており、可動シーブ52bを固定シーブ52a側へ移動させる推力を発生させる。油圧シリンダ52cには、油圧制御装置100によって油圧が供給される。
出力軸6は、出力ギヤ6aと一体回転し、その出力ギヤ6aが噛み合っているカウンタギヤ機構7を介してデファレンシャルギヤ8に連結されている。デファレンシャルギヤ8には、左右の車軸9,9を介して左右の駆動輪10,10が連結されている。
また、油圧制御装置100は、車両Veの油圧供給先に油圧を供給する油圧回路200と、その油圧回路200を電気的に制御する電子制御装置(以下「ECU」という)300とを備えている。
油圧回路200は、CVT5の各油圧シリンダ51c,52c、クラッチC1およびブレーキB1の油圧アクチュエータ、トルクコンバータ2の内部、駆動装置の潤滑必要部にオイル(油圧)を供給する。ECU300は、油圧回路200に油圧指令信号を出力して、CVT5の変速動作や、クラッチC1などの各係合装置を制御する。つまり、ECU300は、油圧回路200を電気的に制御することによって、前進および後進の切替制御や、CVT5の変速制御などを実行する。
[2.油圧回路]
図2は、油圧回路200を模式的に示す回路図である。図2に示すように、油圧回路200は、回路内のオイルをライン圧PL、セカンダリ圧Psec、潤滑圧Plubの三つの油圧(制御圧)に制御し、車両Veの油圧供給先(シーブ系231、クラッチ系232、T/C系233、クーラ・潤滑系234)に供給する。なお、セカンダリ圧Psecはライン圧PLよりも低圧であり、潤滑圧Plubはセカンダリ圧Psecよりも低圧である。また、油圧回路200は、オイルポンプの吐出ポート数が制御圧数と同数に構成され、かつオイルポンプ数が制御圧数よりも少なく構成されている。
具体的には、油圧回路200は、ライン圧供給先(シーブ系231、クラッチ系232)にライン圧PLを供給するライン圧油路211と、セカンダリ圧供給先(T/C系233)にセカンダリ圧Psecを供給するセカンダリ圧油路212と、潤滑圧供給先(クーラ・潤滑系234)に潤滑圧Plubを供給する潤滑圧油路213とを備えている。
ライン圧油路211には、プライマリレギュレータバルブ221が接続されている。プライマリレギュレータバルブ221は、ライン圧油路211からのフィードバック圧(油圧)と弾性体の付勢力とにより作動して、ライン圧油路211内の油圧をライン圧PLに調圧する。油圧回路200では、ライン圧PLに調圧する際、プライマリレギュレータバルブ221を通じてライン圧油路211内の油圧をセカンダリ圧油路212に排出できる。また、図2に示すように、ライン圧油路211には、オイル流量を検出する流量センサ250が設けられている。
セカンダリ圧油路212には、セカンダリレギュレータバルブ222が接続されている。セカンダリレギュレータバルブ222は、セカンダリ圧油路212からのフィードバック圧(油圧)と弾性体の付勢力とにより作動して、セカンダリ圧油路212内の油圧をセカンダリ圧Psecに調圧する。油圧回路200では、セカンダリ圧Psecに調圧する際、セカンダリレギュレータバルブ222を通じてセカンダリ圧油路212内の油圧を潤滑圧油路213に排出できる。
油圧回路200には、ライン圧PLの供給源として、1ポートオイルポンプにより構成された機械式オイルポンプ(以下「メインポンプ」という)201と、セカンダリ圧Psecおよび潤滑圧Plubの供給源として、2ポートオイルポンプにより構成された電動オイルポンプ(以下「サブポンプ」という)202とが設けられている。メインポンプ201は、第1吐出ポートPo1を有する。サブポンプ202は、第2吐出ポートPo2と第3吐出ポートPo3とを有する。要するに、油圧回路200は、三つの制御圧(供給油圧)を制御し、その制御圧数よりも少ない二つのオイルポンプ(メインポンプ201,サブポンプ202)と、制御圧数と同数の三つの吐出ポートPo1,Po2,Po3とを有する。
なお、図2には、ライン圧系の油路(ライン圧系回路)を実線、セカンダリ圧系の油路(セカンダリ圧系回路)を一点鎖線、潤滑圧系の油路(潤滑圧系回路)を破線で示す。また、シーブ系231は、CVT5の各油圧シリンダ51c,52cを含む。クラッチ系232は、クラッチC1の油圧アクチュエータと、ブレーキB1の油圧アクチュエータとを含む。T/C系233は、トルクコンバータ2を含む。クーラ・潤滑系234は、駆動装置のギヤ(例えば前後進切替機構4)などの潤滑必要部を含む。
メインポンプ201は、ライン圧供給先(シーブ系231、クラッチ系232)にライン圧PLのオイルを圧送するものであり、第1吐出ポートPo1を有する可変容量ポンプにより構成されている。図2に示すように、第1吐出ポートPo1は、ライン圧油路211に接続されている。エンジン1が駆動することにより、メインポンプ201は、オイルパン240内のオイルを吸引して第1吐出ポートPo1から吐出する。第1吐出ポートPo1から吐出されたオイルは、ライン圧PLのオイルとしてライン圧油路211内を流動する。これにより、メインポンプ201からライン圧油路211を介してライン圧供給先にオイルが圧送される。
サブポンプ202は、セカンダリ圧供給先(T/C系233)にセカンダリ圧Psecのオイルを圧送するとともに、潤滑圧供給先(クーラ・潤滑系234)に潤滑圧Plubのオイルを圧送するものであり、第2吐出ポートPo2と第3吐出ポートPo3とを有する可変容量ポンプにより構成されている。また、サブポンプ202は、電動モータ(M)203によって駆動する。電動モータ203は、図示しないバッテリに電気的に接続されている。
詳細には、サブポンプ202の電動モータ203は、ECU300によって駆動制御される。サブポンプ202は、電動モータ203の回転数に応じてオイルの吐出流量が変化するため、ECU300の制御によって可変容量化されている。さらに、サブポンプ202は、メインポートとしての第2吐出ポートPo2の吐出流量と、サブポートとしての第3吐出ポートPo3の吐出流量との比(ポート比)を変化できるように構成されている。図2に示すように、第2吐出ポートPo2は、セカンダリ圧系回路を構成する第1吐出油路214に接続されている。第3吐出ポートPo3は、潤滑圧系回路を構成する第2吐出油路215に接続されている。そのため、電動モータ203が駆動すると、サブポンプ202は、オイルパン240内のオイルを吸引して、第2吐出ポートPo2から第1吐出油路214にオイル吐出し、かつ第3吐出ポートPo3から第2吐出油路215にオイル吐出する。
ここで、第2吐出ポートPo2からセカンダリ圧供給先に至る経路(セカンダリ圧系回路)と、第3吐出ポートPo3から潤滑圧供給先に至る経路(潤滑圧系回路)とを分けて説明する。
まず、セカンダリ圧系回路について説明すると、第2吐出ポートPo2からセカンダリ圧供給先に至る経路(図2に一点鎖線で示す経路)には、第1吐出油路214と、第1切替バルブ223と、セカンダリ圧油路212とが設けられている。第1吐出油路214は、サブポンプ202(第2吐出ポートPo2)と第1切替バルブ223とを接続する油路である。第1切替バルブ223は、第2吐出ポートPo2からセカンダリ圧供給先に至る経路を開通および遮断する。その第1切替バルブ223は、ライン圧油路211に接続された第1ON/OFFソレノイド224から入力される信号圧によって開通と遮断とを切り替える。第1ON/OFFソレノイド224は、ECU300によって電気的に制御される。
第1ON/OFFソレノイド224がONの場合、第1ON/OFFソレノイド224から第1切替バルブ223に信号圧が入力されることにより、第1切替バルブ223は開く。この場合、第2吐出ポートPo2から吐出されたオイルは、第1吐出油路214から第1切替バルブ223を通じてセカンダリ圧油路212に流入し、セカンダリ圧Psecのオイルとしてセカンダリ圧油路212内を流動して、セカンダリ圧供給先に供給される。なお、第1ON/OFFソレノイド224の信号圧は、ライン圧油路211内の油圧を元圧としている。
第1ON/OFFソレノイド224がOFFの場合、第1ON/OFFソレノイド224から第1切替バルブ223に信号圧が入力されないので、第1切替バルブ223は閉じる。この場合、第2吐出ポートPo2から吐出されたオイルは、第1吐出油路214から第1逆止弁225を通じてライン圧油路211へ流入する。つまり、第1切替バルブ223は、第2吐出ポートPo2から吐出されたオイルをセカンダリ圧供給先に供給する回路と、第2吐出ポートPo2から吐出されたオイルをライン圧供給先に供給する回路とを切り替えるものである。
第1逆止弁225は、第1吐出油路214とライン圧油路211との接続箇所に設けられており、第1吐出油路214側の油圧がライン圧油路211側の油圧よりも低い場合には閉じている。反対に、第1吐出油路214側の油圧がライン圧油路211側の油圧よりも高い場合、第1逆止弁225は開く。油圧回路200は、第1ON/OFFソレノイド224がOFFの場合、第1吐出油路214側の油圧が高くなり、第2吐出ポートPo2から吐出されたオイルをライン圧供給先に圧送(供給)する。
次に、潤滑圧系回路について説明すると、第3吐出ポートPo3から潤滑圧供給先に至る経路(図2に破線で示す経路)には、第2吐出油路215と、第2切替バルブ226と、中間油路216と、セカンダリレギュレータバルブ222と、潤滑圧油路213とが設けられている。第2吐出油路215は、サブポンプ202(第3吐出ポートPo3)と第2切替バルブ226とを接続する油路である。第2切替バルブ226は、第3吐出ポートPo3から潤滑圧供給先に至る経路を開通および遮断する。その第2切替バルブ226は、ライン圧油路211に接続された第2ON/OFFソレノイド227から入力される信号圧によって開通と遮断とを切り替える。第2ON/OFFソレノイド227は、ECU300によって電気的に制御される。
第2ON/OFFソレノイド227がONの場合、第2ON/OFFソレノイド227から第2切替バルブ226に信号圧が入力されることにより、第2切替バルブ226は開く。この場合、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルは、第2吐出油路215から第2切替バルブ226を通じて中間油路216内に流入する。中間油路216は、第2切替バルブ226とセカンダリレギュレータバルブ222を接続する油路である。なお、第2ON/OFFソレノイド227の信号圧は、ライン圧油路211内の油圧を元圧としている。
例えば、セカンダリレギュレータバルブ222が開くことにより中間油路216と潤滑圧油路213とが連通すると、中間油路216内のオイルは、セカンダリレギュレータバルブ222を通じて潤滑圧油路213へ流入する。つまり、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルは、潤滑圧Plubのオイルとして潤滑圧油路213内を流動する。油圧回路200は、第2ON/OFFソレノイド227がON、かつセカンダリレギュレータバルブ222が開いている場合、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルを、第2切替バルブ226およびセカンダリレギュレータバルブ222を通じて潤滑圧供給先に圧送(供給)する。
一方、セカンダリレギュレータバルブ222が閉じていることにより中間油路216と潤滑圧油路213との間が遮断されると、中間油路216内のオイルは、第2逆止弁228を通じて中間油路216からセカンダリ圧油路212へ流入する。
第2逆止弁228は、中間油路216とセカンダリ圧油路212との接続箇所に設けられており、中間油路216側の油圧がセカンダリ圧油路212側の油圧よりも低い場合には閉じている。反対に、中間油路216側の油圧がセカンダリ圧油路212側の油圧よりも高い場合、第2逆止弁228は開く。油圧回路200は、第2切替バルブ226が開き、かつセカンダリレギュレータバルブ222が閉じている場合、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルを、第2切替バルブ226および第2逆止弁228を通じてセカンダリ圧供給先に圧送(供給)する。
第2ON/OFFソレノイド227がOFFの場合、第2ON/OFFソレノイド227から第2切替バルブ226に信号圧が入力されないので、第2切替バルブ226は閉じる。この場合、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルは、第2吐出油路215から第3逆止弁229を通じてライン圧油路211へ流入する。つまり、第2切替バルブ226は、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルを潤滑圧供給先に供給する回路と、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルをライン圧供給先に供給する回路とを切り替えるものである。
第3逆止弁229は、第2吐出油路215とライン圧油路211との接続箇所に設けられており、第2吐出油路215側の油圧がライン圧油路211側の油圧よりも低い場合には閉じている。反対に、第2吐出油路215側の油圧がライン圧油路211側の油圧よりも高い場合、第3逆止弁229は開く。油圧回路200は、第2ON/OFFソレノイド227がOFFの場合、第3吐出ポートPo3から吐出されたオイルをライン圧供給先に圧送(供給)する。
[3.電子制御装置]
図3は、油圧制御装置100を模式的に示す機能ブロック図である。ECU300は、油圧制御装置100の制御部を構成し、車両Veを制御するように構成されている。ECU300は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、入力信号および予め記憶させられているデータを使用して演算を行い、その演算結果を指令信号として出力する。図3に示すように、ECU300には、流量センサ250からライン圧油路211の流量を検出した信号が入力される。そのECU300は、ロックアップ判定部301と、必要流量算出部302と、ポンプ容量制御部303と、ポート比制御部304と、切替バルブ制御部305とを備えている。
ロックアップ判定部301は、LUクラッチ24が係合しているか否かを判定する。なお、ロックアップ判定部301は、周知の判定方法を用いてロックアップ判定できるように構成されている。
必要流量算出部302は、各油圧供給先(ライン圧系、セカンダリ圧系、潤滑圧系)に必要なオイルの流量α,β,γを算出する。また、必要流量算出部302は、流量センサ250により入力された信号に基づき、ライン圧系必要流量αを決定することができる。図3に示すように、必要流量算出部302は、ライン圧系必要流量αを算出するライン圧系算出部302aと、セカンダリ圧系必要流量βを算出するセカンダリ圧系算出部302bと、潤滑圧系必要流量γを算出する潤滑圧系算出部302cとを有する。ライン圧系必要流量αは、ライン圧供給先に供給する必要があるオイル流量のことである。セカンダリ圧系必要流量βは、セカンダリ圧供給先に供給する必要があるオイル流量のことである。潤滑圧系必要流量γは、潤滑圧供給先に供給する必要があるオイル流量のことである。また、各必要流量α,β,γは、入力トルク、入力回転数、変速比、ギヤ段、ロックアップ判定の結果、温度条件などにより決定される計算値である。すなわち、必要流量算出部302は、それらのパラメータを用いた周知の算出方法によって各必要流量α,β,γを算出できる。例えば、セカンダリ圧系算出部302bは、入力トルク、入力回転数、変速比、ギヤ段の条件からロックアップ判定を実施し、ロックアップ判定の結果に応じたセカンダリ圧系必要流量βおよび必要油圧を入力トルクと入力回転数とを用いて算出する。例えば、セカンダリ圧系必要流量βおよび必要油圧は、入力トルクおよび入力回転数に基づく所定のマップを用いて決定される。また、潤滑圧系算出部302cは、入力トルク、入力回転数に応じた潤滑圧系必要流量γを決定する。例えば、高負荷、高回転時には、低負荷、低回転時よりも大きな潤滑圧系必要流量γに決定される。
ポンプ容量制御部303は、各制御圧系の必要流量α,β,γに基づいて各ポンプ201,202の吐出容量を変化させる制御部である。ポンプ容量制御部303は、メインポンプ201の吐出容量を制御するメインポンプ容量制御部303aと、サブポンプ202の吐出容量を制御するサブポンプ容量制御部303bとを有する。
ポート比制御部304は、サブポンプ202の第2吐出ポートPo2の吐出流量と、サブポンプ202の第3吐出ポートPo3の吐出流量との比(ポート比)を制御する。また、ポート比制御部304は、必要流量算出部302により算出された各必要流量α,β,γに基づいてサブポンプ202のポート比を決定することができる。
切替バルブ制御部305は、各ON/OFFソレノイド224,227に指令信号を出力して各切替バルブ223,226による開通および遮断の切替制御を実行する。すなわち、切替バルブ制御部305は、サブポンプ202から吐出されたオイルの供給先を切り替える制御を実行する。
ここで、下記の表1および表2を参照して、各ポンプ201,202の吐出容量と、可変容量比と、可変ポート比と、各吐出ポートの吐出流量とを説明する。表1には、各ポンプ201,202の関係を示す。また、表2には、各吐出ポートPo1,Po2,Po3の関係を示す。
表1中の「A」は、メインポンプ201の吐出容量を表し、「x」は、メインポンプ201の可変容量比を表す。可変容量比xは、「0<x≦1」の範囲内で可変である。また、表1中の「B」は、サブポンプ202の吐出容量を表し、「y」は、サブポンプ202の可変容量比を表し、「z」は、サブポンプ202のメインポート側(第2吐出ポートPo2側)の可変ポート比を表す。可変容量比yは、「0<y≦1」の範囲内で可変である。第2吐出ポートPo2の可変ポート比zは、「a≦z≦b」の範囲内で可変である。なお、表1には示さないが、第3吐出ポートPo3の可変ポート比は「1−z」で表せる。
メインポート側の可変ポート比zは「0.5≦z<1」の範囲内で可変である。さらに、その可変ポート比zはサブポート側の可変ポート比「1−z」よりも大きい値に設定される。つまり、サブポート側の可変ポート比「1−z」は「0<(1−z)<0.5」の範囲内で可変であり、サブポンプ202の可変ポート比については「0<(1−z)<z<1」の関係が成立する。また、第2吐出ポートPo2側では、表1中の「a」および「b」について、「0.5≦a<b<1」の関係が成立する。なお、以下の説明では、第2吐出ポートPo2の可変ポート比zを「第2オイルポンプ202の可変ポート比z」と記載する場合がある。
なお、メインポンプ201の吐出容量とサブポンプ202の吐出容量との和(A+B)は一定である。また、サブポンプ202の可変容量比yは、電動モータ203の回転数比(制御回転数/モータ最大回転数)である。例えば、ECU300は、電動モータ203の回転数指令値を電動モータ203の最大回転数で割ることにより可変容量比yを算出および決定できる。
表2に示すように、第1吐出ポートPo1の吐出流量は、メインポンプ201のポンプ吐出容量Aと可変容量比xとの積「xA」で表せる。可変容量比xの最大値が1であるため、第1吐出ポートPo1の最大吐出流量は「A」となる。また、第2吐出ポートPo2の吐出流量(メインポート側)は、サブポンプ202のポンプ吐出容量Bと可変容量比yと第2吐出ポートPo2の可変ポート比zとの積「zyB」で表せる。可変容量比yの最大値が1であるとともに、可変ポート比zの最大値がbであるため、第2吐出ポートPo2の最大吐出流量は「bB」で表せる。また、第3吐出ポートPo3の吐出流量は、サブポンプ202のポンプ吐出容量Bと可変容量比yと第3吐出ポートPo3の可変ポート比「1−z」との積「(1−z)yB」で表せる。可変容量比yの最大値が1であるとともに、第3吐出ポートPo3の可変ポート比の最大値が「1−a」であるため、第3吐出ポートPo3の最大吐出流量は「(1−a)B」で表せる。
ECU300は、車両Veの状態に応じて、例えば流量センサ250からの入力信号に応じて、各制御圧系の必要流量α,β,γを満たせるように油圧回路200を制御する。その制御フローの一例を図4と図5とに示す。なお、以下の説明では、上記表1および表2に示す符号を用いる場合がある。
[4.油圧制御フロー]
図4は、油圧制御の全体フロー(メインフロー)を示すフローチャートである。図4に示すように、エンジン1が始動すると(ステップS1)、油圧制御装置100は、各ポンプ201,202を最大流量で作動させる(ステップS2)。ステップS2では、メインポンプ201の可変容量比xが最大値1であり、かつサブポンプ202の可変容量比yが最大値1である。
油圧制御装置100は、解放していたLUクラッチ24が係合したか否かを判定する(ステップS3)。LUクラッチ24が解放している場合(ステップS3:No)、油圧制御装置100は、ステップS2の処理を繰り返す。
LUクラッチ24が係合した場合(ステップS3:Yes)、油圧制御装置100は、各ポンプ201,202から吐出される流量が各制御圧系(ライン圧系、セカンダリ圧系、潤滑圧系)の必要流量α,β,γとなるように、各ポンプ201,202の吐出容量およびサブポンプ202のポート比を変化させる(ステップS4)。なお、ステップS4では、後述する図5に示す制御フロー(サブルーチン)が実行される。その詳細は、図5を参照して後述する。
ステップS4の制御を実行することにより、各ポンプ201,202から吐出される流量が各制御圧系(ライン圧系、セカンダリ圧系、潤滑圧系)の必要流量α,β,γとなる。そして、油圧制御装置100は、エンジン1が停止したか否かを判定する(ステップS5)。エンジン1が停止していない場合(ステップS5:No)、油圧制御装置100は、ステップS4の処理を繰り返す。エンジン1が停止した場合(ステップS5:Yes)、各ポンプ201,202は停止する(ステップS6)。なお、ステップS6では、ECU300の制御によって電動式のサブポンプ202が停止される。
[4−1.サブルーチン]
ECU300は、上述したステップS4の処理として、図5に示すサブルーチンを実行する。図5に示すように、ECU300は、ライン圧系必要流量αがメインポンプ201の吐出容量A(第1吐出ポートPo1の最大吐出流量)よりも小さいか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11では、ECU300によって、ライン圧系必要流量αに対し、メインポンプ201のみ(第1吐出ポートPo1の吐出流量xAのみ)で供給可能か否かが判定される。ライン圧系必要流量αは、車両状態を示す各パラメータ(例えば流量センサ250からの入力信号)を用いてライン圧系算出部302aによって決定された計算値である。そして、ステップS11で肯定的に判定された場合、ECU300は、後述するステップS12の処理を実行する。一方、ステップS11で否定的に判定された場合、ECU300は、後述するステップS17の処理を実行する。
なお、ECU300は、各ポンプ201,202および油圧回路200をどのように制御した場合に、ライン圧系必要流量αを満たすことができるかを判定する流量判定部を備えている。
ライン圧系必要流量αがメインポンプ201の吐出容量Aよりも小さい場合(ステップS11:Yes)、ECU300は、サブポンプ202のメインポートである第2吐出ポートPo2の最大吐出流量bBよりもセカンダリ圧系必要流量βが小さいか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12では、ECU300によって、セカンダリ圧系必要流量βに対し、メインポートである第2吐出ポートPo2の吐出流量zyBのみで供給可能か否かが判定される。また、セカンダリ圧系必要流量βは、車両状態を示す各パラメータを用いてセカンダリ圧系算出部302bによって決定された計算値である。
セカンダリ圧系必要流量βが第2吐出ポートPo2の最大吐出流量bBよりも小さい場合(ステップS12:Yes)、ECU300は、第1吐出ポートPo1の吐出流量xAがライン圧系必要流量αとなるようにメインポンプ201の可変容量比xを変化させた状態(第1制御状態)に油圧回路200を制御する(ステップS13)。
さらに、ステップS13では、ECU300は、第2吐出ポートPo2の吐出流量zyBと第3吐出ポートPo3の吐出流量(1−z)yBとの和「yB」がセカンダリ圧系必要流量βと潤滑圧系必要流量γとの和「β+γ」となるようにサブポンプ202の可変容量比yを変化させる。潤滑圧系必要流量γは、車両状態を示す各パラメータを用いて潤滑圧系算出部302cによって決定された計算値である。また、ECU300は、第2吐出ポートPo2の吐出流量zyBがセカンダリ圧系必要流量βとなるようにサブポンプ202の可変ポート比zを変化させる。例えば、ECU300は、第2吐出ポートPo2の吐出流量と第3吐出ポートの吐出流量との比が、セカンダリ圧系必要流量βと潤滑圧系必要流量γとの比となるように可変ポート比zを制御する。加えて、ECU300は、各ON/OFFソレノイド224,227に指令信号を出力する。この場合、油圧回路200では、第2吐出ポートPo2とセカンダリ圧油路212とが第1切替バルブ223を介して連通(セカンダリ圧系回路が開通)され、かつ第3吐出ポートPo3と潤滑圧油路213とが第2切替バルブ226を介して連通(潤滑圧系回路が開通)される。
ステップS13の第1制御状態は、
「第1ON/OFFソレノイド224:ON」、
「第2ON/OFFソレノイド227:ON」、
「メインポンプ201の可変容量比:x=α/A」、
「サブポンプ202の可変容量比:y=(β+γ)/B」、
「サブポンプ202の可変ポート比:z=β/(β+γ)」となる。
セカンダリ圧系必要流量βが第2吐出ポートPo2の最大吐出流量bB以上である場合(ステップS12:No)、ECU300は、セカンダリ圧系必要流量βがサブポンプ202の吐出容量Bよりも小さいか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14では、ECU300によって、セカンダリ圧系必要流量βに対し、サブポンプ202のみ(第2吐出ポートPo2の吐出流量zyBと第3吐出ポートPo3の吐出流量{(1−z)yB}との和のみ)で供給可能か否かが判定される。
セカンダリ圧系必要流量βがサブポンプ202の吐出容量Bよりも小さい場合(ステップS14:Yes)、ECU300は、上述したステップS13と同様にメインポンプ202の可変容量比xおよびサブポンプ202の可変容量比yを変化させるとともに、サブポンプ202の可変ポート比zを最大値bに変化させた状態(第2制御状態)に油圧回路200を制御する(ステップS15)。
さらに、ステップS15では、ECU300は、上述したステップS13と同様の指令信号を各ON/OFFソレノイド224,227に出力する。そのため、油圧回路200では、第2吐出ポートPo2とセカンダリ圧油路212とが第1切替バルブ223を介して連通され、かつ第3吐出ポートPo3と潤滑圧油路213とが第2切替バルブ226を介して連通される。
ステップS15の第2制御状態は、
「第1ON/OFFソレノイド224:ON」、
「第2ON/OFFソレノイド227:ON」、
「メインポンプ201の可変容量比:x=α/A」、
「サブポンプ202の可変容量比:y=(β+γ)/B」、
「サブポンプ202の可変ポート比:z=b(最大値)」となる。
セカンダリ圧系必要流量βがサブポンプ202の吐出容量B以上である場合(ステップS14:No)、ECU300は、第2吐出ポートPo2が最大吐出流量bBとなるようにサブポンプ202の可変容量比yおよび可変ポート比zを最大値に変化させた状態(第3制御状態)に油圧回路200を制御する(ステップS16)。
さらに、ステップS16では、ECU300は、メインポンプ201の可変容量比xを変化させる。この場合、ECU300は、第1吐出ポートPo1の吐出流量xAが、セカンダリ圧系必要流量βに対してサブポンプ202の吐出容量Bのみでは不足する分の流量(β−B)とライン圧系必要流量αとの和「α+(β−B)」となるように可変容量比xを変化させる。また、ECU300は、上述したステップS13と同様の指令信号を各ON/OFFソレノイド224,227に出力する。そのため、油圧回路200では、第2吐出ポートPo2とセカンダリ圧油路212とが第1切替バルブ223を介して連通され、かつ第3吐出ポートPo3と潤滑圧油路213とが第2切替バルブ226を介して連通される。
ステップS16の第3制御状態は、
「第1ON/OFFソレノイド224:ON」、
「第2ON/OFFソレノイド227:ON」、
「メインポンプ201の可変容量比:x={α+(β−B)}/A」、
「サブポンプ202の可変容量比:y=1(最大値)」、
「サブポンプ202の可変ポート比:z=b(最大値)」となる。
また、ライン圧系必要流量αがメインポンプ201の吐出容量A以上である場合(ステップS11:No)、ECU300は、メインポンプ201の吐出容量A(第1吐出ポートPo1の最大吐出流量)と第3吐出ポートPo3の最大吐出流量(1−a)Bとの和「A+(1−a)B」よりもライン圧系必要流量αが小さいか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17では、ECU300によって、ライン圧系必要流量αに対し、メインポンプ201の吐出流量とサブポンプ202の第3吐出ポートPo3の吐出流量との和のみで供給可能か否かが判定される。
メインポンプ201の吐出容量Aと第3吐出ポートPo3の最大吐出流量(1−a)Bとの和「A+(1−a)B」よりもライン圧系必要流量αが小さい場合(ステップS17:Yes)、ECU300は、メインポンプ201および第3吐出ポートPo3から吐出されるオイルによってライン圧系必要流量αを満たせる状態(第4制御状態)に油圧回路200を制御する(ステップS18)。
そのステップS18では、ECU300は、第1吐出ポートPo1の吐出流量xAと第3吐出ポートPo3の吐出流量(1−z)yBとの和「xA+(1−z)yB」がライン圧系必要流量αとなるようにメインポンプ201の可変容量比xを最大値1に変化させる。さらに、ECU300は、サブポンプ202の可変容量比yを最大値1に変化させる。また、ECU300は、サブポンプ202の可変ポート比zを最小値aに変化させる。加えて、ECU300は、各ON/OFFソレノイド224,227に指令信号を出力する。この場合、油圧回路200では、第2吐出ポートPo2とセカンダリ圧油路212とが第1切替バルブ223を介して連通(セカンダリ圧系回路が開通)され、かつ第3吐出ポートPo3とライン圧油路211とが第3逆止弁229を介して連通(第2切替バルブ226により潤滑圧系回路が遮断)される。
ステップS18の第4制御状態は、
「第1ON/OFFソレノイド224:ON」、
「第2ON/OFFソレノイド227:OFF」、
「メインポンプ201の可変容量比:x=1(最大値)」、
「サブポンプ202の可変容量比:y=1(最大値)」、
「サブポンプ202の可変ポート比:z=a(最小値)」となる。
ライン圧系必要流量αがメインポンプ201の吐出容量Aと第3吐出ポートPo3の最大吐出流量(1−a)Bとの和「A+(1−a)B」以上である場合(ステップS17:No)、ECU300は、全吐出ポートPo1〜Po3から吐出されるオイルによってライン圧系必要流量αを満たせる状態(第5制御状態)に油圧回路200を制御する(ステップS19)。
そのステップS19では、ECU300は、第1吐出ポートPo1の吐出流量xAと、第2吐出ポートPo2の吐出流量zyBと、第3吐出ポートPo3の吐出流量(1−z)yBとの和「xA+yB」が、ライン圧系必要流量αとなるように制御する。具体的には、ECU300は、各ポンプ201,202の可変容量比x,yをいずれも最大値1に変化させる。また、ECU300は、サブポンプ202の可変ポート比zを任意の値に制御する。さらに、ECU300は、各ON/OFFソレノイド224,227に指令信号を出力する。この場合、油圧回路200では、第2吐出ポートPo2とライン圧油路211とが第1逆止弁225を介して連通(第1切替バルブ223によりセカンダリ圧系回路が遮断)され、かつ第3吐出ポートPo3とライン圧油路211が第3逆止弁229を介して連通(第2切替バルブ226により潤滑圧系回路が遮断)される。
ステップS19の第5制御状態は、
「第1ON/OFFソレノイド224:OFF」、
「第2ON/OFFソレノイド227:OFF」、
「メインポンプ201の可変容量比:x=1(最大値)」、
「サブポンプ202の可変容量比:y=1(最大値)」、
「サブポンプ202の可変ポート比:z=任意」となる。
以上説明した通り、油圧制御装置100によれば、ライン圧PLの供給源が機械式のメインポンプ201であるため、セカンダリ圧Psecおよび潤滑圧Plubの供給源であるサブポンプ202において、電動モータ203にフェール等の不具合が生じた場合でも、メインポンプ201によってライン圧PLを確保することができる。
また、油圧制御装置100によれば、ポンプの余剰損失を低減できるとともに、油圧回路の減圧損失を低減できる。ここでは、図6〜図8を参照して、余剰損失の低減および減圧損失の低減について説明する。図6は、余剰損失の発生要因を説明するための図である。図7は、減圧損失の発生要因を説明するための図である。図8は、余剰流量が低減することを説明するための図である。なお、図7,8では、横軸は積算油量、縦軸は平均油圧を表す。
図6に示すように、比較例としてのポンプ容量が一定の機械式オイルポンプでは、エンジンの回転数(ENG回転数)に応じて吐出流量が決定されるため、必要流量を満たすためには、必ず余剰損失が発生する。
これに対して、油圧制御装置100では、各ポンプ201,202から吐出されるオイル流量(ポンプ吐出流量)を各制御圧系(PL圧系、Psec圧系、Plub圧系)の必要流量に制御できるため、余剰損失を低減できる。詳細には、油圧制御装置100は、エンジン始動時すなわちポンプ始動時(時刻t1)からLUクラッチ24の係合時(時刻t2)の間、ポンプ吐出流量を最大流量に制御する。そして、ロックアップ係合後、油圧制御装置100は、各ポンプ201,202の可変容量比x,yおよび可変ポート比zを変化させることによりポンプ吐出流量が各制御圧系必要流量α,β,γとなる(時刻t3)。これにより、油圧制御装置100は、余剰損失を低減できる。
図7に示すように、制御圧数(ライン圧PL、セカンダリ圧Psec、潤滑圧Plubの三つ)よりも少ない吐出ポート数(例えば二つの吐出ポート)の構成では、余剰損失を低減しようとしても、必ず減圧損失が発生する。
これに対して、油圧制御装置100は、三つの制御圧と同数の吐出ポートPo1,Po2,Po3を有する構成であるため、減圧損失を低減することができる。
また、図8(a)に示すように、ポンプ容量が一定、かつポート比が一定の2ポートオイルポンプでは、各吐出ポートで余剰流量が発生する。そこで、図8(b)に示すように、可変容量化した2ポートオイルポンプでは、一方の吐出ポートに対して余剰流量を削減できても、他方の吐出ポートに取り切れない余剰流量が存在してしまう。なお、図8(a),(b)に示す2ポートオイルポンプのポート比は「b:1−b」で表せる。
これに対して、油圧制御装置100では、メインポンプ201が可変容量ポンプであるとともに、サブポンプ202が可変容量ポンプかつポート比を変化できる2ポートオイルポンプである。そのため、油圧制御装置100は、余剰損失を低減でき、減圧損失を低減できる。
[5.車両の他の例]
油圧制御装置100が搭載される車両は、CVT5を搭載した車両Veに限定されない。例えば、自動変速機(AT)を備えた車両に油圧制御装置100を搭載できる。その自動変速機を搭載した車両例を図9に示す。
図9は、油圧制御装置100を搭載する車両の他の例を模式的に示す図である。図9に示す車両Veは、複数の変速段に設定可能な自動変速機30を搭載し、複数の変速用係合装置を備えている。なお、上述した図1に示す車両Veと同様の構成については、説明を省略してその参照符号を引用する。
図9に示すように、自動変速機30は、シングル型の第1遊星歯車機構31と、四つの回転要素を有するラビニヨ型の第2遊星歯車機構32と、複数のクラッチC1,C2と、複数のブレーキB1〜B3とを備えている。それらのクラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3は、いずれも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式の係合装置である。その油圧アクチュエータは、上述したクラッチ系232に含まれ、油圧回路200によって油圧が供給される。
それらクラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3の係合状態と解放状態を切り替えることにより、自動変速機30は前進6段および後進1段の各変速段が成立させられる。例えば、二つのクラッチC1,C2および三つのブレーキB1〜B3のうち、いずれか二つを係合することによって前進6段の多段変速機が達成される。また、第1遊星歯車機構31は、入力軸3と一体回転するサンギヤ31Sと、第1ブレーキB1によって選択的に固定されるキャリア31Cと、第3ブレーキB3によって選択的に固定されるリングギヤ31Rとを備えている。第2遊星歯車機構32は、第1サンギヤ32S1と、第2サンギヤ32S2と、リングギヤ32Rと、ロングピニオンギヤ32P1と、ショートピニオンギヤ32P2と、キャリア32Cとを備えている。第1サンギヤ32S1は、第1クラッチC1によってサンギヤ31Sと選択的に一体回転する。第2サンギヤ32S2は、キャリア31Cと一体回転する。リングギヤ32Rは、第1クラッチC1によってサンギヤ31Sおよび入力軸3と選択的に一体回転し、第2ブレーキB2によって選択的に固定される。ロングピニオンギヤ32P1は、第2サンギヤ32S1とリングギヤ32Rとショートピニオンギヤ32P2と噛み合っている。キャリア32Cは、各ピニオンギヤ32P1,32P2を自転可能かつ公転可能に保持しているとともに、出力ギヤ(OUT)と一体回転する。