本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1を参照して、画像読取装置1の概略構成について説明する。図1の上側、下側、左側、右側、表側、及び裏側を、各々画像読取装置1の上側、下側、前側、後ろ側、右側、及び左側とする。
[1.画像読取装置1の物理的構成]
図1に示すように、画像読取装置1は、搬送される原稿の両面を読み取り可能に構成されたシートフィードスキャナである。画像読取装置1は、筐体10、給紙トレイ16、及び排紙トレイ18を備える。
筐体10は、第1筐体11及び第2筐体12を有する。第1筐体11及び第2筐体12の各々の形状は、箱状である。第1筐体11は、筐体10の下部を形成する。第2筐体12は、第1筐体11に対して上側から重なり、筐体10の上部を形成する。第1筐体11と第2筐体12との上下方向における間の位置には、搬送経路20が形成される。搬送経路20は、画像読取装置1が原稿を搬送して画像を読み取る過程で、原稿が通過する領域に対応する。搬送経路20は、給紙口10A及び排紙口10Bによって筐体10の外側と繋がる。搬送経路20は、第1筐体11の上面と、第2筐体12の下面との間に定義される。
以下、搬送経路20に沿った方向を「搬送方向」という。搬送方向は、概して、前方斜め下側と後方斜め上側との間に亘って延びる方向に対応する。ただし、搬送方向は、搬送経路20に沿った方向であるため、直線方向として定義されなくてもよい。即ち、搬送方向は、搬送経路20における位置に応じて、前後、上下、左右方向に対する向きの関係が変化してもよい。搬送方向のうち、搬送経路20における給紙口10A側を「上流側」という。搬送方向のうち、搬送経路20における排紙口10B側を「下流側」という。
給紙トレイ16は、第1筐体11のうち給紙口10Aの後ろ側から、後方斜め上側に向けて延びる。給紙トレイ16は、略板形状である。給紙トレイ16の上側の面に、1以上の原稿が載せられる。本例の原稿は、A4サイズ、レターサイズ等の薄紙又は厚紙である。以下の説明では、原稿をシートと記載する。
排紙トレイ18は、第1筐体11のうち排紙口10Bの下側から、前側に向けて延びる。排紙トレイ18は、略板形状である。排紙トレイ18の上側の面は、排紙口10Bから筐体10の外部に排出されるシート35を受ける。
図1に示すように、第1筐体11は、給紙ローラ41、搬送ローラ91、第1読取部93、及び搬送ローラ92を備える。給紙ローラ41、搬送ローラ91、第1読取部93、及び搬送ローラ92は各々、搬送経路20に沿って搬送方向上流側から下流側に順番に並ぶ。給紙ローラ41、搬送ローラ91、及び搬送ローラ92の上面は各々、第1筐体11の上面をなす。
給紙ローラ41は、円柱状である。給紙ローラ41の軸線は、左右方向に延びる。軸部材42は、給紙ローラ41の軸線に沿って延びる。軸部材42は、第1筐体11に回転可能に支持される。軸部材42は、後述するモータ71(図2参照)の回転に応じて回転する。給紙ローラ41は、軸部材42の回転に応じて、右側面視における反時計回りに回転する(矢印321)。給紙ローラ41の一部(例えば、給紙ローラ41の上に位置する外周部分)は、搬送経路20に向けて突出する。給紙ローラ41と軸部材42との間には、ワンウェイクラッチ(非図示)が設けられる。このワンウェイクラッチは、給紙ローラ41が軸部材42に対して右側面視における反時計回りに空転することを許容する。
搬送ローラ91、92は、シート35に当接して回転することで、原稿を搬送経路20に沿った搬送方向に搬送可能である。搬送ローラ91、92は円柱状である。搬送ローラ91、92の軸線は各々、左右方向に延びる。搬送ローラ91、92は同一形状である。軸部材91Aは搬送ローラ91の軸線に沿って延びる。軸部材92Aは搬送ローラ92の軸線に沿って延びる。軸部材91A、92Aは各々、第1筐体11に回転可能に支持される。軸部材91A、92Aは各々、モータ71(図2参照)の回転に応じて回転する。搬送ローラ91は、軸部材91Aの回転に応じて、右側面視における反時計回りに回転する(矢印323)。搬送ローラ92は、軸部材92Aの回転に応じて、右側面視における反時計回りに回転する(矢印324)。搬送ローラ91、92の一部(例えば、搬送ローラ91、92の上に位置する外周部分)は、搬送経路20に向けて突出する。
第1読取部93は、搬送経路20において搬送ローラ91よりも搬送方向の下流に配置され、搬送経路20上の読取位置P2(図6参照)の画像を読み取り、読み取った画像を表す画像データを生成可能である。第1読取部93は、周知の接触型イメージセンサ(後述)を備える。第1読取部93は、後述する制御部2(図2参照)と電気的に接続する。第1読取部93は、搬送方向において搬送ローラ91、92の間に設けられる。第1読取部93の読取位置P2は、左右方向に直線状に延びる。第1読取部93は、左右方向を主走査方向とする。第1読取部93は、シート35に対して設定された画像読取領域の画像を下側から読み取り可能である。画像読取領域は、搬送経路20に沿って上流から下流に向けて搬送されるシート35に対して設定される、画像を読み取る対象となる領域である。画像読取領域については後述する。第1読取部93は、読み取った画像を表す画像データを、制御部2に出力する。
第2筐体12は、第1センサ81、リバースローラ46、従動ローラ95、第2センサ82、第2読取部94、及び従動ローラ96を備える。第1センサ81、リバースローラ46、従動ローラ95、第2センサ82、第2読取部94、及び従動ローラ96は各々、搬送経路20に沿って搬送方向上流側から下流側に順番に並ぶ。第1センサ81、リバースローラ46、従動ローラ95、第2センサ82、第2読取部94、及び従動ローラ96の下面は各々、第2筐体12の下面をなす。
第1センサ81は、搬送経路20の第1側(例えば、上側)において、搬送方向において給紙口10Aと給紙ローラ41との間の部分に設けられる。言い換えると、第1センサ81は、搬送経路20において給紙ローラ41の上流、且つ、給紙トレイ16の前下端部側の給紙口10A付近に配置されている。第1センサ81は、第1センサ81の配置される位置において、給紙トレイ16に載せられたシート35の有無を検知し、制御部2(図2参照)に検知結果を出力する。第1センサ81の構成の詳細は後述する。
リバースローラ46は、給紙ローラ41に対して上側に配置される。リバースローラ46は円柱状である。リバースローラ46の直径は、給紙ローラ41の直径よりも小さい。リバースローラ46の軸線は左右方向に延びる。軸部材47は、リバースローラ46の軸線に沿って延びる。軸部材47は、第2筐体12に回転可能に支持される。軸部材47は、後述するモータ71(図2参照)の回転に応じて回転する。リバースローラ46は、図示しないワンウェイクラッチを介して軸部材47に接続される。リバースローラ46は、軸部材47から、反時計回りの駆動力を受ける(矢印322)。ワンウェイクラッチの空転トルクは、シート35とリバースローラ46との間の摩擦力、及び給紙ローラ41とリバースローラ46との間の摩擦力によって空転する値に設定されている。
一方、ワンウェイクラッチの空転トルクは、シート35同士の間の摩擦力によっては空転しない値に設定されている。このため、給紙ローラ41とリバースローラ46との間にシート35が存在しない場合、又は給紙ローラ41とリバースローラ46との間にシート35が1枚だけ存在する場合、リバースローラ46は、軸部材47から受ける駆動力に逆らって、時計回りに回転する。一方、給紙ローラ41とリバースローラ46との間にシート35が2枚以上存在する場合、リバースローラ46は、軸部材47から受ける駆動力に応じて、反時計回りに回転する。リバースローラ46の一部(例えば、リバースローラ46の下に位置する外周部分)は、搬送経路20に向けて突出する。リバースローラ46のうち給紙ローラ41と近接する端部は、搬送経路20において給紙ローラ41に接触する。リバースローラ46は、搬送経路20に対して上側に配置される。
従動ローラ95、96は円柱状である。従動ローラ95は、搬送ローラ91の上側に接触する。従動ローラ96は、搬送ローラ92の上側に接触する。従動ローラ95、96の軸線は、左右方向に延びる。従動ローラ95、96は同一形状を有する。従動ローラ95、96が固定される各々の軸部材は、第2筐体12に回転可能に支持される。軸部材91A、92Aは、後述するモータ71(図2参照)の回転に応じて回転する。従動ローラ95は、図示しないバネによって、搬送ローラ91に向けて付勢される。従動ローラ96は、図示しないバネによって、搬送ローラ92に向けて付勢される。従動ローラ95、96の一部(例えば、従動ローラ95、96の下に位置する外周部分)は、搬送経路20に向けて突出する。
第2センサ82は、搬送経路20において搬送ローラ91と第1読取部93及び第2読取部94との間に配置され、シート35を検知可能である。第2センサ82は、搬送経路20の第1側(例えば、上側)に設けられる。言い換えると、第2センサ82は、搬送経路20において、搬送ローラ91の下流であり、且つ第1読取部93及び第2読取部94の上流に配置されている。第2センサ82は、第2センサ82の配置される位置において、搬送経路20に沿って搬送ローラ91から第1読取部93及び第2読取部94へ向けて搬送されるシート35の有無を検知し、制御部2(図2参照)に検知結果を出力する。
第1センサ81、及び第2センサ82は、シート35を検知可能なセンサである。第1センサ81、及び第2センサ82は、シート35の接触に応じて回動する回動部材と、回動部材の回動を検知可能な周知の光学センサとを含む。第1センサ81、及び第2センサ82は、後述する制御部2(図2参照)と電気的に接続する。第1センサ81、及び第2センサ82は、図示しない発光部及び受光部を備え、発光部から発光された光が受光部によって受光されたか否かを検知し、検知結果を示す信号を制御部2に出力する。例えば、シート35が回動部材に接触していない場合、回動部材は発光部から発光された光を遮り、受光部は光を検知しない。一方、シート35が回動部材に接触している場合、回動部材が回動することにより、発光部から発光された光は遮られず、受光部が光を検知する。ただし、発光部と受光部とを、搬送経路20を挟んで対向させることにより、シート35が光を遮ったか否かを検知してもよい。この場合、回動部材は不要になる。
第2読取部94は、搬送経路20において搬送ローラ91よりも搬送方向の下流に配置され、搬送経路20上の読取位置P1(図6参照)の画像を読み取り、読み取った画像を表す画像データを生成可能である。第2読取部94は、第1読取部93と同様の構成の周知の接触型イメージセンサ(後述)を備える。第2読取部94は、搬送方向において従動ローラ95、96の間に設けられる。第2読取部94の読取位置P1は、左右方向に直線状に延びる。第2読取部94は、左右方向を主走査方向とする。第2読取部94は、シート35に対して設定された画像読取領域の画像を上側から読み取り可能である。第2読取部94は、制御部2からの指示に応じて、読み取った画像を表す画像データを、制御部2に出力する。
[2.画像読取装置1の電気的構成]
図2を参照し、画像読取装置1の電気的構成について説明する。図2に示すように、画像読取装置1は、操作部24、第1センサ81、第2センサ82、入出力インターフェース(以下、「入出力I/F」という。)30、外部通信I/F40、制御部2、モータ71、給紙ローラ41、リバースローラ46、搬送ローラ91、92、第1読取部93、及び第2読取部94を備える。
操作部24は、第2筐体12の上面に設けられる。操作部24は、電源ボタン及びスタートボタンを含む複数の操作ボタンである。使用者は操作部24を介して各種指示を入力可能である。
入出力I/F30は、所定の規格(例えば、Universal Serial Bus (USB))に適合したインターフェース素子であり、画像読取装置1とUSBメモリ等のリムーバルメディアを接続するためのインターフェースである。本実施形態において、入出力I/F30は、USBポートである。
外部通信I/F40は、画像読取装置1をLANに接続されているPC(パーソナルコンピュータ)等の外部装置との間で、LANを経由した通信を行うための回路等を備える。外部通信I/F40は、LANを経由せずに外部装置との間で直接通信を行うためのインターフェース(例えばUSBインターフェース)で構成されてもよい。
制御部2は、モータ71と第1読取部93及び第2読取部94とを制御可能である。制御部2は、CPU5、RAM6、及びROM7を備える。CPU5は、画像読取装置1全体の制御を司る。制御部2は、図示しないが、CPU5からの指示に応じて、モータ71に対して駆動信号(例えば、駆動電流)を送信する所定の電気回路等を備える。CPU5は、RAM6、ROM7と電気的に接続する。RAM6は、CPU5による演算処理で得られた演算結果等、各種のデータを一時的に記憶する。RAM6は、1枚のシート35に対応する画像データを記憶する画像データ記憶エリア8と、1ライン分の画像データを随時記憶する出力バッファ9との記憶領域を少なくとも確保している。出力バッファ9は、第1読取部93、第2読取部94によって生成された複数ライン分の画像データを記憶可能である。
ROM7は、OSを記憶する。また、ROM7は、CPU5に後述の処理(図4及び図5参照)を実行させるプログラム、及び各種プログラムが使用するフラグやデータの初期値等を記憶する。ROM7は、非一時的な記憶媒体の一例である。非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を記憶可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。本実施形態における記憶装置はROM7であるが、記憶装置は、情報を記憶する時間の長さに関わらずデータを保持できる、他の非一時的な記憶媒体、例えば、フラッシュメモリ、HDD、SSD、RAM等でもよい。
制御部2は、モータ71、第1読取部93、第2読取部94、第1センサ81、及び第2センサ82の各々と電気的に接続する。モータ71は、軸部材42(図1参照)を介して給紙ローラ41を回転駆動する。モータ71は、軸部材47、91A、92Aを介してリバースローラ46、搬送ローラ91、92を回転可能である。モータ71には、種々のタイプのモータを使用できる。本例のモータ71は、ステッピングモータである。ステッピングモータの駆動信号は、通常、所定周波数のパルス信号である。制御部2は、CPU5の制御に応じて、モータ71をステップ駆動するための駆動信号を生成することで、モータ71を駆動する。制御部2は生成した駆動信号のパルス数に基づき、原稿の搬送距離を算出する。モータ71の回転速度の切替えは、例えば、駆動パルスの周波数を切替えることによって行われる。
第1読取部93は、CIS(Contact Image Sensor)21A及びAFE(Analog Front End)22Aを備える。第2読取部94は、CIS22A及びAFE22Bを備える。CIS21A、21Bは、画像を読み取る。AFE22A、22Bは各々、CIS22A、21Bによって読み取られたアナログの画像をデジタルの画像データに変換する。画像データは、CPU5からの指示に応じて、RAM6の出力バッファ9にライン毎に格納される。「ライン毎」とは、第1読取部93及び第2読取部94の主走査方向(「紙幅方向」に相当)に並ぶ画素列毎という意味である。第1読取部93及び第2読取部94から制御部2に入力された画像データは、CPU5によって、ガンマ補正や拡大、縮小などの画像処理が施される。画像処理された画像データは、CPU5によって圧縮や符号化等のデータ処理が施された後に、出力バッファ9に格納される。出力バッファ9に格納された、データ処理の施された画像データは、PC等外部装置の転送指令に応じて、ライン毎に順次入出力I/F30又は外部通信I/F40を介して外部装置に転送される。FTPサーバ出力される場合など、シート35一枚分又は複数枚分の画像データを外部装置にネットワークを介して送信される場合には、出力バッファ9から画像データ記憶エリア8に出力される。画像データ記憶エリア8に記憶されたシート35一枚分又は複数枚分の画像データは、例えば、外部通信I/F40を介してFTPサーバに出力される。
第1センサ81は、給紙トレイ16に配置されているシート35を検知した場合、制御部2にON信号を出力する。第1センサ81は、給紙トレイ16に配置されているシート35を検知しない場合、制御部2にOFF信号を出力する。第2センサ82は、第2センサ82の配置される位置のシート35を検知した場合、制御部2にON信号を出力し、第2センサ82の配置される位置のシート35を検知しない場合、制御部2にOFF信号を出力する。
[3.画像読取装置1の動作]
画像読取装置1によって複数のシート35が搬送され、画像が読み取られる場合の動作について説明する。使用者によって複数のシート35が給紙トレイ16の上面に載せられると、第1センサ81がシート35を検知し、制御部2に検知信号を送信する。制御部2は、給紙トレイ16にシート35が配置されたことを検知する。
制御部2(図2参照)は、モータ71を回転駆動する。モータ71の回転駆動力は、軸部材42に伝達されて、給紙ローラ41を反時計回りに回転させる(矢印321)。モータ71の回転駆動力は、軸部材91A、92Aに伝達されて、搬送ローラ91、92の各々を反時計回りに回転させる(矢印323、324)。複数のシート35が給紙ローラ41とリバースローラ46との間に到達するまでは、リバースローラ46は、時計回りに回転する。複数のシート35が給紙ローラ41とリバースローラ46との間に到達すると、モータ71の回転駆動力は、リバースローラ46を反時計回りに回転させる(矢印322)。
上記の状態で、搬送経路20に沿って搬送方向の下流に移動する複数のシート35のうち最も下側のシート351に、給紙ローラ41が第1側から接触する。このとき、給紙ローラ41及びリバースローラ46の回転によって、複数のシート35からシート351が1枚分離される。シート35は、搬送経路20に沿って下流に移動する。
搬送ローラ91は、搬送経路20に沿って移動するシート35に下側から接触し、従動ローラ95との間にシート35を挟んで、シート35を下流にさらに搬送する。第2センサ82はシート35を検知し、制御部2に検知信号を送信する。これによって、制御部2は、第2センサ82の配置される位置にシート35があることを検知する。
第2センサ82の下流に搬送されたシート35は、搬送経路20に沿って下流に移動する。搬送ローラ91は、搬送経路20に沿って移動するシート35に下側から接触し、シート35を下流にさらに搬送する。搬送ローラ91の下流に配置された第1読取部93は、制御部2からの指示に応じて、シート35の下面の画像を読み取る。搬送ローラ91の下流に配置された第2読取部94は、制御部2からの指示に応じて、シート35の上面の画像を読み取る。第1読取部93及び第2読取部94の出力信号は画像データに変換され、制御部2に出力される。
搬送ローラ92は、第1読取部93及び第2読取部94を通過したシート35に下側から接触し、従動ローラ96との間にシート35を挟んで、シート35を下流にさらに搬送する。シート35は、排紙口10Bから筐体10の外部に排出され、排紙トレイ18に配置される。
[4.画像読取領域]
原稿の大きさと、マージン量と、画像読取領域との関係を図3を参照して説明する。本例の画像読取装置1は、原稿の大きさと、マージン量とに基づき、画像読取領域を設定する機能を有する。マージン量は、原稿の搬送方向下流側の端部である先端に対して、画像読取領域を設定するための設定値である。図3の矢印C1は搬送方向を示す。矢印C2は第1読取部93及び第2読取部94の主走査方向を示す。本例の画像読取装置1は、シート35の大きさに対応する領域A1の四方、つまり、搬送方向上流側及び下流側、並びに主走査方向一方端側(右側)及び他方端側(左側)の各々に対して、個別にマージン量を設定できる。
マージン量は、正の値、0、又は負の値で設定される。本例では、シート35の輪郭によって囲まれる矩形よりも外側に画像読取領域が設定される場合のマージン量は、正の値で設定される。シート35の輪郭によって囲まれる矩形よりも内側に画像読取領域が設定される場合のマージン量は、負の値で設定される。マージン量が0である場合は、シート35の輪郭によって囲まれる矩形が画像読取領域である。画像読取領域は、例えば、四方全てのマージン量が正の値M1の場合、領域A1の外側に、画像読取領域A2が設定される。四方全てのマージン量が負の値M2である場合、シート35の輪郭の内側に、画像読取領域A3が設定される。マージン量は、シート35の大きさに応じて予め設定された値であってもよいし、ユーザが操作部24又は外部通信I/F40を介して設定した設定可能範囲内の値でもよい。設定可能範囲は、画像読取装置1の大きさ等に応じて、予め設定されている値である。
[5.搬送モード]
画像読取装置1は、画像読取時の搬送ローラ91、92によるシート35の搬送速度を、読取解像度と、第1読取部93及び第2読取部94による画像データの処理速度等の仕様に応じて調整する。読取解像度は、第1読取部93及び第2読取部94が生成する画像データによって表される画像の解像度である。第1読取部93及び第2読取部94の単位時間あたりの読取ライン数が一定である場合、画像読取装置1は、原稿読取時の搬送ローラ91、92による複数のシート35の搬送速度を速くする程、画像データの読取ライン数を減少させることができる。この場合画像読取装置1は、シート35の搬送速度を速くすることで、シート35の搬送速度が遅い場合に比べ、画像データの副走査方向(搬送方向)の読取解像度を低くすることができる。同様に第1読取部93及び第2読取部94の単位時間あたりの読取ライン数が一定である場合、画像読取装置1は、原稿読取時の搬送ローラ91、92によるシート35の搬送速度を遅くする程、画像データの読取ライン数を増加させることができる。この場合画像読取装置1は、シート35の搬送速度を遅くすることで、シート35の搬送速度が速い場合に比べ、画像データの副走査方向の読取解像度を高くすることができる。
本例の画像読取装置1は、読取解像度に応じて自動的に搬送モードを設定する。本例の搬送モードは、第1モードと、第2モードとを含む。第1モードは、設定された読取解像度が閾値Yhよりも大きい場合に設定される。第2モードは、設定された読取解像度が閾値Yh以下の場合に設定される。閾値Yhは、読取解像度と、第1読取部93及び第2読取部94による画像データの処理速度等の仕様に応じて予め設定され、ROM7に記憶されている。読取解像度は、原稿の種類及び大きさ等に応じて予め設定された値であってもよいし、ユーザが操作部24又は外部通信I/F40を介して設定した設定可能範囲内の値でもよい。
[6.画像読取処理]
図4から図6を参照して、画像読取装置1で実行される画像読取処理について説明する。画像読取処理は、シート35に設定された画像読取領域を第2読取部94によって上側から読み取る処理である。シート35に設定された画像読取領域を第1読取部93によって下側から読み取る処理は、画像読取処理と同様の処理によって別途実行される。画像読取処理が繰り返されることで、給紙トレイ16に置かれた複数のシート35を順に読み取る処理が実行される。画像読取処理は、操作部24を操作して開始指示が入力された場合、又は外部通信I/F40を介して開始指示が入力(即ち、受信)された場合に開始される。開始指示には、マージン量、読取解像度が含まれる。画像読取装置1のCPU5は、画像読取処理の開始指示の入力を検知すると、ROM7に記憶された画像読取処理を実行するための画像読取プログラムをRAM6に読み出し、画像読取プログラムに含まれる指示に従って、以下に説明する各ステップの処理を実行する。処理の過程で取得されたり、生成されたりした情報及びデータは、適宜RAM6に記憶される。処理に必要な各種設定値は、予めROM7に記憶されている。以下、ステップを「S」と略記する。
説明を簡単にするために、矩形のシート35の四方に対して同一の値がマージン量として設定される場合について説明する。4つの具体例を例示する。具体例1は、マージン量が正の値M1であり、読取解像度がY1である。具体例2は、マージン量が負の値M2であり、読取解像度がY1である。具体例3は、マージン量がM1であり、読取解像度がY2である。具体例2は、マージン量がM2であり、読取解像度がY2である。Y1は閾値Yhよりも大きい。Y2は閾値Yh以下である。
図4に示すように、CPU5は、開始指示に含まれるマージン量を取得する(S1)。具体例1、3では、マージン量M1が取得され、具体例2、4ではマージン量M2が取得される。CPU5は、モータ71を制御して、シート35を搬送ローラ91によって第1速度で搬送する処理を開始させる(S2)。具体的には、CPU5は、モータ71を第1速度に対応する単位時間あたりのステップ数で駆動する指示を、制御部2を介してモータ71に送信する。モータ71の駆動開始時には、徐々に駆動パルスの周波数を増加していくスルーアップ制御が行われる。CPU5から駆動開始指示を受けたモータ71は、スルーアップ制御によって徐々に回転速度を増加し、スルーアップに必要な所定のステップ数の駆動後に搬送ローラ91及び92の各々を周速が第1速度Haとなる回転速度で回転させる。シート35は、給紙ローラ41の回転に応じて、搬送経路20を搬送ローラ91、92へ向けて移動する。
CPU5は、第2センサ82からON信号を受信したかを判断する(S3)。CPU5は、第2センサ82からON信号を受信していない場合(S3:NO)、第2センサ82からON信号を受信するまで待機する。第2センサ82は、シート35の先端を検知すると、制御部2にON信号を送信する。シート35の先端は、搬送方向における下流側の端部である。CPU5は、第2センサ82からON信号を受信した場合(S3:YES)、搬送モードが第1モードであるかを判断する(S4)。本例のCPU5は、開始指示に含まれる読取解像度に基づき搬送モードが第1モードであるかを判断する。具体例1、2において、読取解像度Y1が閾値Yhより大きいので、CPU5は、搬送モードが第1モードであると判断する(S4:YES)。具体例3、4において、開始指示に含まれる読取解像度Y2が閾値Yh以下であるので、CPU5は、搬送モードが第2モードであると判断する(S4:NO)。搬送モードが第1モードである場合、所定のタイミングで搬送速度が第2速度である搬送制御処理が実行される。搬送モードが第1モードと異なる第2モードである場合、第2センサ82がシート35の先端を検知した後も搬送速度が第1速度である搬送制御処理が継続される。
CPU5は、具体例3、4の場合(S4:NO)、シート35の先端が開始位置に到達したかを判断する(S5)。開始位置は、第2読取部94による画像データを生成する処理を開始する位置である。マージン量が正の値である場合、開始位置は、読取位置P1よりもマージン量だけ搬送方向上流側の位置である。マージン量が0又は負の値である場合、開始位置は、読取位置P1よりもマージン量の絶対値だけ搬送方向下流側の位置である。つまり、開始位置は、画像読取領域の先端が、第2読取部94の読取位置P1に達する時の、シート35の先端位置である。
開始位置は、マージン量に応じて異なる。開始位置は、S1で取得されたマージン量に応じて範囲R1内にある。範囲R1は、マージン量の設定可能範囲に対応している。S1で取得された搬送方向下流側のマージン量が正の値である具体例3では、開始位置は、読取位置P1よりも上流側、つまり、位置P1から位置P1Uの範囲のいずれかの位置にある。位置P1Uは、読取位置P1から、正のマージン量の設定可能範囲の上限値だけ上流側の位置である。S1で取得されたマージン量が0又は負の値である具体例4では、開始位置は、読取位置P1、又は位置P1よりも下流側、つまり、位置P1を含む位置P1から位置P1Dの範囲いずれかの位置にある。位置P1Dは、読取位置P1から、負のマージン量の設定可能範囲の下限値の絶対値だけ下流側の位置である。P1からP1Uまでの距離と、P1からP1Dまでの距離とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
CPU5は、シート35の先端が開始位置まで到達したかを、S3の処理で第2センサ82からON信号を受信してからのモータ71の駆動量(本例では、ステップ数)と、マージン量と、第2センサ82と読取位置P1との距離とに基づき判断する。モータ71の駆動量と、搬送距離との関係及び第2センサ82と読取位置P1との距離は、予めROM7に記憶されている。
CPU5は、シート35の先端が開始位置に到達していない場合(S5:NO)、シート35の先端が開始位置に到達するまで待機する。CPU5は、シート35の先端が開始位置に到達したことに応じて(S5:YES)、第2読取部94による画像データの生成処理を開始させる(S6)。第2読取部94は、読取位置P1の画像を表す画像データを生成する処理を開始する。例えば、第2読取部94は、CIS21Bに含まれる光源の点灯を開始し、CIS21Bに含まれる受光素子から、原稿の画像に対応するアナログ信号を取得する。第2読取部94は、AFE22Bによってアナログ信号に所定の処理を施し、A/D変換を行うことで画像データを生成する。第2読取部94は、画像データを制御部2に出力する。第2読取部94は、主走査方向の画像読取範囲を、シート35の大きさと、S1で取得されたマージン量とに基づき設定する。搬送ローラ91は、周速が第1速度Haとなる回転速度で回転しながら、シート35を第2読取部94へ向けて搬送する処理を継続する。
CPU5は、第2読取部94により生成された画像データを、RAM6の出力バッファ9に出力する処理を開始させる(S7)。本例のCPU5は、画像データに所定の画像処理を施した後で、画像データを出力バッファ9に格納する。出力バッファ9に格納された画像データは、入出力I/F30又は外部通信I/F40を介して外部装置に随時送信される。外部装置に送信された画像データは、出力バッファ9から随時削除される。S7では、CPU5は、第2読取部94によって生成された画像データを、RAM6の出力バッファ9にライン毎に格納する処理を開始してもよい。その場合、CPU5は、例えば、出力バッファ9に格納された画像データに画像処理を施した後で、入出力I/F30又は外部通信I/F40を介して外部装置に随時送信すればよい。
CPU5は、シート35が終了位置まで搬送されたかを判断する(S8)。終了位置は、第2読取部94による画像データを生成する処理を終了する位置である。マージン量が正の値である場合、終了位置は、シート35の後端が、読取位置P1よりもマージン量だけ下流側の位置に到達した位置である。シート35の後端は、シート35の搬送方向上流側の端部である。マージン量が0又は負の値である場合、終了位置は、シート35の後端が、読取位置P1、又は読取位置P1よりもマージン量の絶対値だけ上流側の位置に到達した位置である。つまり、終了位置は、画像読取領域の後端が、第2読取部94の読取位置P1に達する時の、シート35の後端位置である。
CPU5は、シート35の後端が終了位置まで搬送されたかを、S3の処理で第2センサ82からON信号を受信してからのモータ71の駆動量(本例では、ステップ数)、マージン量、及び第2センサ82と読取位置P1との距離に基づき判断する。
CPU5は、シート35の後端が終了位置に到達していない場合(S8:NO)、シート35の後端が終了位置に到達するまで待機する。CPU5は、シート35の後端が終了位置に到達した場合(S8:YES)、第2読取部94に、画像読取領域の画像の読み取りを終了させる(S9)。第2読取部94は、CPU5の指示に応じて、画像を表す画像データを生成する処理を終了する。搬送ローラ92は、周速が第1速度Haとなる回転速度で回転しながら、シート35を搬送方向下流側へ向けて搬送する。
CPU5は、第2読取部94が生成した画像データを、RAM6の出力バッファ9に出力する処理を終了させる(S10)。第2読取部94は、CPU5からの指示に応じて、生成された画像データをRAM6の出力バッファ9に出力する処理を終了する。CPU5は、以上で画像読取処理を終了する。
S4において、CPU5は、具体例1、2の場合(S4:YES)、画像出力処理を実行する(S11)。図5に示すように、画像出力処理では、CPU5は、シート35の先端が減速位置に到達したかを判断する(S21)。減速位置CPは、読取位置P1からの距離がS1で取得されたマージン量以上である、搬送経路20上の位置である。図6に示すように、本例の減速位置CPは、搬送経路20上において、第2センサ82と、第2読取部94の読取位置P1との間にある。つまり、減速位置CPは、搬送経路20上において、第2センサ82の下流側、且つ第2読取部94の読取位置P1の上流側の位置である。本例の減速位置CPは、読取位置P1からの距離がS1で取得されたマージン量の最大値となる位置P1Uよりも、搬送方向上流側、且つ、第2センサ82の下流側にある。位置P1Uと減速位置CPとの距離は、画像読取装置1が、減速位置CPにおいて一旦停止し(S22)、第2速度での搬送を開始してから(S23)、位置P1Uにおいてシート35の先端が第2速度で安定して等速搬送されるのに要する距離を考慮して設定される。つまり、位置P1Uと減速位置CPとの距離は、スルーアップ処理、スルーダウン処理及びオーバーシュートの収束を考慮して設定される。
S21の処理は、搬送ローラ91によって搬送されたシート35が第2センサ82によって検知された後(S3)、且つモータ71の駆動開始(S2)を実行後に実行される。減速位置CPは、ROM7に記憶されている。CPU5は、シート35の先端が減速位置CPに到達したかを、S3の処理で第2センサ82からON信号を受信してからのモータ71の駆動量(本例では、ステップ数)に基づき判断する。CPU5は、シート35の先端が減速位置に到達していない場合(S21:NO)、シート35の先端が減速位置CPに到達するまで待機する。
CPU5は、シート35の先端が減速位置CPに到達した場合(S21:YES)、モータ71を制御して、シート35を搬送ローラ91によって第1速度よりも遅い第2速度で搬送する処理が開始させる(S22)。具体的には、CPU5はモータ71を停止する指示を、制御部2を介してモータ71に送信する(S22)。モータ71は、CPU5から駆動停止指示に応じて、スルーダウン制御によって徐々に回転速度を減少し、スルーダウンに必要な所定のステップ数の駆動後に駆動を停止する。給紙ローラ41、リバースローラ46、搬送ローラ91、92は、モータ71のスルーダウンに応じて徐々にスルーダウンした後、回転を停止する。S21からS23の処理によって、シート35の先端が、減速位置CPまで搬送されたことに応じて、モータ71による搬送速度が第1速度となる搬送処理を一旦停止された後、モータ71に搬送速度が第2速度となる搬送処理が開始される。
CPU5は、モータ71を第2速度Hbに対応する単位時間あたりのステップ数で駆動する指示を、制御部2を介してモータ71に送信する(S23)。モータ71は、CPU5からの駆動開始指示に応じて、スルーアップ制御によって徐々にモータ71の回転速度を増加させる。モータ71は、スルーアップに必要な所定のステップ数の駆動後に搬送ローラ91及び92の各々を周速が第2速度Hbとなる回転速度で回転させる。シート35は、給紙ローラ41の回転に応じて、搬送経路20を搬送ローラ91、92へ向けて移動する。
CPU5は、図4のS1で取得されたマージン量が0よりも大きいか、つまりマージン量が正の値かを判断する(S24)。具体例1では、マージン量M1が0よりも大きいので(S24:YES)、CPU5は、図4のS7の処理と同様に、第2読取部94による画像データの生成処理が開始される(S25)。CPU5は、図4のS5と同様に、シート35が開始位置まで搬送されたかを判断する(S26)。S26の開始位置は、シート35の先端が、読取位置P1よりもマージン量だけ搬送方向上流側の位置に到達した位置である。CPU5は、シート35が開始位置まで搬送されていない場合(S26:NO)、シート35が開始位置まで搬送されるまで待機する。ここで、出力バッファ9に画像データを出力する処理が行われていないため、第2読取部94によって生成された画像データは、出力バッファ9には記憶されない。即ち、制御部2が第2読取部94から受信した画像データのうち、後述するS29が開始する前に受信された画像データは、出力バッファ9に記憶されることなく削除され、最終的に得られる画像データには含まれない。
具体例2では、マージン量M2が0よりも大きくはないので(S24:NO)、CPU5は、図4のS5と同様に、シート35が開始位置まで搬送されたかを判断する(S27)。S27の開始位置は、シート35の先端が、読取位置P1よりもマージン量の絶対値だけ搬送方向下流側の位置に到達した位置である。CPU5は、シート35が開始位置まで搬送されていない場合(S27:NO)、シート35が開始位置まで搬送されるまで待機する。CPU5は、シート35が開始位置まで搬送された場合(S27:YES)、図4のS6の処理と同様に、第2読取部94による画像データの生成処理を開始させる(S28)。S28の処理により、搬送速度が第2速度に変更された後(S23)、シート35の先端が前記読取位置P1からマージン量だけ搬送方向下流側の開始位置に到達したことに応じて、生成処理を開始される。
S26の処理においてシート35の先端が開始位置まで搬送された場合(S26:YES)、又はS28の処理の次に、CPU5は、図4のS7の処理と同様に、第2読取部94が生成した画像データを、RAM6の出力バッファ9に出力する処理を開始させる(S29)。CPU5は、第2読取部94によって生成された画像データを、RAM6の出力バッファ9にライン毎に格納する処理を開始する。S26の次にS29が実行される場合、シート35の先端が読取位置P1からS1で取得されたマージン量だけ搬送方向上流側の位置に到達したことに応じて、第2読取部94により生成された画像データをRAM6の出力バッファ9に記憶させる処理を開始される。S28の次にS29が実行される場合、第2読取部94による生成処理が開始されたことに応じて(S28)、第2読取部94により生成された画像データがRAM6の出力バッファ9に記憶させる処理を開始される。
CPU5は、図4のS8の処理と同様に、シート35の後端が終了位置まで搬送されたかを判断する(S30)。CPU5は、シート35の後端が終了位置に到達していない場合(S30:NO)、シート35の後端が終了位置に到達するまで待機する。CPU5は、シート35の後端が終了位置に到達した場合(S30:YES)、図4のS9と同様に、第2読取部94に、読み取った画像を表す画像データを生成する処理を終了させる(S31)。CPU5は、図4のS10と同様に、第2読取部94が生成した画像データを、RAM6の出力バッファ9に出力する処理を終了させる(S32)。CPU5は、以上で画像出力処理を終了させ、処理を図4の画像読取処理に戻す。
CPU5はS11の処理の次に、図5のS22の処理と同様に、モータ71を停止する指示を、制御部2を介してモータ71に送信する(S12)。CPU5は、モータ71を制御して、シート35を搬送ローラ91によって第1速度で搬送する処理を開始させる(S13)。モータ71は、CPU5からの駆動開始指示に応じて、スルーアップ制御によって徐々にモータ71の回転速度を増加させる。モータ71は、スルーアップに必要な所定のステップ数の駆動後に搬送ローラ91及び92の各々を周速が第1速度Haとなる回転速度で回転させる。シート35は、搬送ローラ92によって排紙口10Bから筐体10の外部に排出され、排紙トレイ18に配置される。CPU5は以上で、画像読取処理を終了する。
シート35に設定された画像読取領域を第1読取部93によって下側から読み取る処理は、上記の画像読取処理と同様の処理によって別途実行される。第1読取部93関する処理において、第2読取部94の範囲R1、読取位置P1、位置P1U、P1Dは各々、第1読取部93の範囲R2、読取位置P2、位置P2U、P2Dに対応する。
シート35の四方に対して個別にマージン量が設定可能である場合には、次のような処理が実行される。S1では、シート35の四方に対して個別に設定された4つのマージン量が各々取得される。S24では、シート35の先端側のマージン量について、判断が実行される。S5、S26、及びS27では、シート35の先端側のマージン量に基づき、開始位置が決定される。S6、S25、S28では、主走査方向の一端側と他端側のマージン量に基づき、主走査方向の、画像読取範囲が設定される。S8、及びS30では、シート35の後端側のマージン量に基づき、終了位置が決定される。
搬送ローラ91及び従動ローラ95は、搬送ローラの一例である。第1読取部93及び第2読取部94は、本発明の読取部の一例である。図2のRAM6の出力バッファ9は、本発明の記憶部の一例である。第2センサ82は、本発明の検知部の一例である、モータ71は、本発明のモータの一例である。制御部2は、本発明の制御部の一例である。図4のS1の処理は、本発明の取得処理の一例である。図5のS24の処理は、本発明の判断処理の一例である。図4のS2の処理は、本発明の第1搬送制御処理の一例である。図5のS22及び23の処理は、本発明の第2搬送制御処理の一例である。S25の処理は、本発明の第1生成制御処理の一例である。S26及びS29の処理は、本発明の第1出力制御処理の一例である。S27及びS28の処理は、本発明の第2生成制御処理の一例である。S28の次のS29は、本発明の第2出力制御処理の一例である。S4の処理は、本発明の搬送モード処理の一例である。S5及びS6の処理は、本発明の第3生成制御処理の一例である。S7の処理は、本発明の第3出力制御処理の一例である。
画像読取装置1は、原稿供給時と、読取処理実行時とで搬送速度が変更される場合と、マージン量が設定される場合とを考慮した処理を実行可能である。具体的には、画像読取装置1は、搬送モードが第1モードである場合に、第1速度から第2速度に確実に減速された状態で、第2速度で等速搬送しながら、画像データを生成できる。画像読取装置1は、第2搬送制御処理に応じて、読取部による画像データの生成処理を開始させるので、他の処理(例えば、モータ71のスルーダウン制御)の影響で生成処理の開始が遅延する可能性を低減できる。画像読取装置1は、シート35の先端が開始位置に到達したことに応じて、出力処理を開始させるので、他の処理(例えば、モータ71のスルーダウン制御)の影響で、シート35の先端が開始位置に到達してから、出力処理が開始されるまでの期間が長くなる可能性を低減できる。画像読取装置1は、生成された画像データの画質が悪くなる可能性を低減できる。
シート35が同じサイズで、マージン量が負の場合と、マージン量が正の場合とで、シート35の先端が減速位置CPから読取位置に到達するまでの搬送距離を比較すると、マージン量が負の場合の方が、マージン量が正の場合よりも、搬送距離が長い。マージン量が0又は負の場合、マージン量が正の場合に比べ、他の処理(例えば、モータ71のスルーダウン制御)の影響で生成処理の開始が遅延する可能性を低い。マージン量が0又は負の場合、マージン量が正の場合に比べ、他の処理(例えば、モータ71のスルーダウン制御)の影響でシート35の先端が開始位置に到達してから、出力処理が開始されるまでの期間が長くなる可能性を低い。したがって、マージン量が正の場合を基準に、減速位置CPが設定されれば、マージン量が負の場合には、搬送速度が第1速度から第2速度に変更され、搬送ローラが等速で駆動されるのに十分な搬送距離がある。したがって、画像読取装置1は、マージン量が0又は負の場合に(S24:NO)、生成処理を開始することに応じて、画像データを出力しても問題がない。画像読取装置1は、搬送モードが第1モードである場合に、マージン量を正の値である場合と、マージン量が負の場合である場合とを考慮して、読取処理を安定的に実行可能である。
画像読取装置1は、減速位置CPまで第1速度で搬送し、一旦停止後、第2速度での搬送を開始する。画像読取装置1は、一旦停止せずに徐々に減速する場合に比べ、減速位置CPまでの搬送時間が短い。したがって、画像読取装置1は、単位時間当たりのシート35の読取処理数を増やせる。減速位置CPは、読取位置P1からマージン量の上限値だけ上流の位置P1Uよりも上流側に配置されている。位置P1Uと減速位置CPとの間の距離は、画像読取装置1が、減速位置CPにおいて一旦停止し(S22)、第2速度での搬送を開始してから(S23)、位置P1Uにおいてシート35の先端が第2速度で安定して等速搬送されるのに要する距離を考慮して設定されるのが好ましい。このようにすれば、生成処理は第2速度に減速された後に実行される。画像読取装置1は、搬送速度が不安定な状態で画像が読み取られることを抑制できる。
画像読取装置1は、第2モードでは一定の第1速度で原稿を搬送するので、シート35の先端が第2読取部94に到達したことに応じて、生成処理及び出力処理を開始させても、搬送速度が不安定になることはない。画像読取装置1は、第1モードと、第2モードとを使い分けることによって、処理速度と、画質とのバランスを最適化できる。
本発明の画像読取装置、画像読取プログラム及び画像読取装置の制御方法は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(A)から(C)までの変形が適宜加えられてもよい。
(A)画像読取装置1の構成は適宜変更してよい。例えば、第1読取部93及び第2読取部94の画像データ出力先は、制御部2に備えられたRAM6の出力バッファ9であるが、第1読取部93及び第2読取部94の画像データ出力先は、制御部2に設けられていなくてもよい。モータ71はステッピングモータ以外でもよい。画像読取装置1は、第1読取部93及び第2読取部94のいずれかのみを備えてもよい。第2センサ82は、原稿を検知可能なセンサであればよい。
第1読取部93及び第2読取部94は、CIS21A、21Bのみを備え、CIS22A、21Bによって読み取られたアナログの画像をデジタルの画像データに変換するための回路を、制御部2等に別途備えていてもよい。
(B)画像読取プログラムは、画像読取装置1がプログラムを実行するまでに、画像読取装置1の記憶装置に記憶されればよい。したがって、画像読取プログラムの取得方法、取得経路及び画像読取プログラムを記憶する機器の各々は適宜変更されてよい。画像読取装置1のプロセッサが実行する情報処理プログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
(C)画像読取処理の各ステップは、CPU5によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。上記処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。上記実施形態の画像読取処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。画像読取装置1のCPU5からの指令に基づき、画像読取装置1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上記実施形態の機能が実現される場合も本開示の範囲に含まれる。例えば、照合情報処理に以下の(C−1)から(C−4)の変更が適宜加えられてもよい。
(C−1)画像読取装置1は、搬送モードとして第1モードのみを実行可能でもよい。画像読取装置1は、搬送モードとして、第1モード及び第2モード以外の他のモードを備実行可能でもよい。搬送モードは、読取解像度とは別に設定されてもよい。
(C−2)画像読取装置1は、シート35の先端側のマージン量が0又は負の値である場合に、マージン量が正の値であるときと同じ順序で処理(S25、S26、S29)を実行してもよい。
(C−3)画像読取装置1は、S22及びS23において、搬送速度を第1速度から第2速度に変更可能であればよい。搬送ローラ91による搬送速度を変更する際に、モータ71を一旦停止させなくてもよい。
(C−4)減速位置及び読取位置は、適宜変更されてよい。例えば、第2センサが配置された位置における原稿を検知可能な光学センサである場合、減速位置は、第2センサ82が配置された位置であってもよい。マージン量は、原稿の表面と裏面とで個別の値が設定されてもよい。その場合、CPU5は、読取対象となる面のマージン量に基づき第1読取部93及び第2読取部94を制御すればよい。