JP6578793B2 - オスコネクタ用アダプタ及びアダプタ付きオスコネクタ - Google Patents

Description

本発明は、オスコネクタに装着して使用されるアダプタに関する。また、本発明は、アダプタ付きオスコネクタに関する。

血液透析、血液濾過、心臓外科的手術等では、患者から導出した血液に所定の処理を施して患者に戻すために、ポンプ等の機械的外力を利用して血液を体外で循環させる体外循環回路が構成される。体外循環回路では、血液が流れるチューブを接続するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる連結部が用いられる。

血液循環中にオスコネクタとメスコネクタとが意図せずに分離すると、ポンプ等で強制的に流されている血液が漏出し、最悪の場合には失血により患者が死亡するという重大事故が発生しうる。

このような重大事故の発生を防止するために、連結部に、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態を維持するためのロック機構が用いられる。例えば、特許文献１〜３には、レバーロック式オスコネクタが記載されている。このオスコネクタは、オス部材と弾性的に揺動可能なロックレバーとを備える。ロックレバーの先端には、メスコネクタに係合可能な爪が設けられている。オスコネクタのオス部材をメスコネクタに挿入した状態で、爪をメスコネクタに係合（ロック）させることにより、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態が維持される。

更に、オスコネクタとメスコネクタとが意図せずに分離したとしても血液が外界に漏出しない機構がオスコネクタ及びメスコネクタに設けられる。特許文献４，５には、オスコネクタのオス部材に装着されるカバーが記載されている。カバーは、ゴム等の弾性材料からなる。カバーの頂部には、直線状のスリット（切り込み）が形成されている。オスコネクタがメスコネクタに接続されていない初期状態では、オス部材はカバー内に収納され、オス部材に設けられた流路の先端側の開口はカバーで覆われる。オスコネクタをメスコネクタに接続するとき、カバーがオス部材の長手方向に圧縮変形され、オス部材の先端がカバーのスリットを貫通してメスコネクタに挿入される。オス部材とメスコネクタとが連通し、これらの間で血液を流すことができる。この状態で、意図せずにオスコネクタがメスコネクタから分離されると、カバーは直ちに初期状態に復帰し、スリットは閉じられ、カバーはオス部材の開口を覆う。従って、血液がオス部材からカバー外に漏れ出ることはない。

ところで、体外循環回路に血液を循環させるのに先だって、当該回路を構成する流路内に液体（例えば生理食塩水、以下「プライミング液」という）を導入し、当該流路内に存在していた空気を外界に排出する、「プライミング」と呼ばれる作業が行われる。体外循環回路中に空気が存在した状態で血液の循環を開始すると、空気が患者の血管内に流入して、重篤な健康被害が発生しうるからである。

プライミング作業は、体外循環回路中の空気が患者に流入するのを防ぐため、体外循環回路を形成する前に、即ち、連結部を構成するオスコネクタとメスコネクタとを分離した状態で、行う。この状態で、オスコネクタを構成するオス部材内の流路をプライミング液で満たす必要がある。

特開２００４−０００４８３号公報 国際公開第２０１３／１５４０５０号パンフレット 特開２０１５−０７３６６４号公報 特開２０１２−２５４１４２号公報 特開２０１３−１６５８３０号公報 特開２０１３−２５２１６５号公報

しかしながら、オス部材に上記のカバーが設けられている場合、オスコネクタがメスコネクタに接続される前の初期状態ではカバーがオス部材の先端側の開口を覆っている。この状態では、オス部材の流路内にプライミング液を導入することは困難である。従って、カバー付きのオスコネクタに対するプライミング液の導入を可能にすることが望まれる。

また、プライミング液の導入作業は簡単であることが望まれる。更に、プライミング液を導入する際にオス部材の流路内に細菌等が混入しないことも望まれる。

本発明は、カバー付きのレバーロック式オスコネクタにプライミング液を簡単且つ衛生的に導入することを目的とする。

本発明のアダプタは、オスコネクタに対して着脱可能である。前記オスコネクタは、流路が形成された棒状のオス部材と、前記オス部材に対向して配されたロックレバーと、前記ロックレバーから前記オス部材に向かって突出した爪と、前記オス部材を収納するカバーとを備える。前記爪が前記オス部材から離れるように前記ロックレバーは弾性的に揺動可能である。前記カバーは、前記オス部材の長手方向に沿って弾性的に圧縮変形可能な外周壁と、前記外周壁の一端に設けられた頭部とを備え、前記外周壁が圧縮変形したとき前記オス部材の先端が前記頭部から突出するように構成されている。前記アダプタは第１端部と第２端部とを備える。前記アダプタには、前記アダプタを貫通し且つ前記第１端部と前記第２端部とを連通させる貫通孔が設けられている。前記第１端部は、前記貫通孔が設けられた中空の筒状部を備える。前記筒状部の外周面に、第１突起と、前記第１突起に対して前記筒状部の基端側の第２突起とが設けられている。前記アダプタは、前記オスコネクタの前記爪が前記第１突起に係合した第１位置と、前記オスコネクタの前記爪が前記第２突起に係合した第２位置とで、前記オスコネクタに接続することができる。前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記オス部材の前記流路は前記カバーにより封止される。前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記アダプタが前記カバーの前記外周壁を圧縮変形させ、前記オス部材の前記流路は前記アダプタの前記貫通孔と連通する。前記アダプタの前記第２端部は、前記第１端部と対称に構成されている。

本発明のアダプタ付きオスコネクタは、上記の本発明のアダプタと前記オスコネクタとを備える。

本発明のアダプタは、カバー付きのレバーロック式オスコネクタに対して、第１位置及び第２位置の２通りの位置で接続することができる。アダプタを第１位置から第２位置に移動させるという簡単な操作を行うだけで、オスコネクタに対するプライミング液の導入が可能な状態になる。

アダプタを第１位置でオスコネクタに接続した状態で保管しておき、その後、プライミング作業を行う直前に、アダプタを第２位置に移動させる。このようにすることで、プライミング液を導入する際にオス部材の流路内に細菌等が混入する可能性が低減する。従って、オスコネクタにプライミング液を衛生的に導入することができる。

図１は、本発明のアダプタに適合した一実施形態にかかるオスコネクタ及びこれに接続されるネジロック型コネクタの分解斜視図である。 図２Ａは、オスコネクタを構成するコネクタ本体の上方から見た斜視図である。 図２Ｂは、コネクタ本体の下方から見た斜視図である。 図２Ｃは、コネクタ本体の正面図である。 図２Ｄは、コネクタ本体の側面図である。 図２Ｅは、コネクタ本体の平面図である。 図２Ｆは、図２Ｄの２Ｆ−２Ｆ線を含む上下方向面で切断されたコネクタ本体の断面図である。 図２Ｇは、図２Ｃの２Ｇ−２Ｇ線を含む上下方向面で切断されたコネクタ本体の断面図である。 図３Ａは、図１に示したオスコネクタを構成するカバーの上方から見た斜視図である。 図３Ｂは、カバーの下方から見た斜視図である。 図３Ｃは、カバーの断面図である。 図４Ａは、図１に示したオスコネクタの上方から見た斜視図である。 図４Ｂは、オスコネクタの断面図である。 図４Ｃは、オスコネクタの別の断面図である。 図５Ａは、図１に示したルアー本体の斜視図である。図５Ｂはルアー本体の断面図である。 図６Ａは、図１に示したロックナットの上方から見た斜視図、図６Ｂはロックナットの下方から見た斜視図、図６Ｃはロックナットの平面図、図６Ｄはロックナットの断面図である。 図７Ａは、ネジロック型コネクタの上方から見た斜視図、図７Ｂはネジロック型コネクタの断面図である。 図８Ａは、オスコネクタとネジロック型コネクタとを接続した状態を示した側面図である。 図８Ｂは、オスコネクタとネジロック型コネクタとを接続した状態を示した断面図である。 図９Ａは、オスコネクタに接続されるメスコネクタの斜視図である。 図９Ｂは、メスコネクタの断面図である。 図１０は、接続する直前のオスコネクタ及びメスコネクタを示した斜視図である。 図１１Ａは、オスコネクタとメスコネクタとが接続された状態を示した斜視図である。 図１１Ｂは、オスコネクタとメスコネクタとが接続された状態を示した断面図である。 図１２Ａは、本発明の実施形態１にかかるアダプタの第１端部側から見た斜視図である。 図１２Ｂは、本発明の実施形態１にかかるアダプタの第２端部側から見た斜視図である。 図１２Ｃは、本発明の実施形態１にかかるアダプタの側面図である。 図１２Ｄは、本発明の実施形態１にかかるアダプタの断面斜視図である。 図１３は、オスコネクタに接続する直前の本発明の実施形態１にかかるアダプタを示した斜視図である。 図１４Ａは、第１位置でオスコネクタに装着された本発明の実施形態１にかかるアダプタの斜視図である。 図１４Ｂは、図１４Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの断面図である。 図１４Ｃは、図１４Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの別の断面図である。 図１５は、本発明の実施形態１にかかるアダプタが第１位置で装着されたオスコネクタに体外循環回路を構成するチューブを接続した状態を示した斜視図である。 図１６Ａは、体外循環回路を構成するチューブを接続したオスコネクタに、本発明の実施形態１にかかるアダプタが第２位置で装着された状態を示した斜視図である。 図１６Ｂは、図１６Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの断面図である。 図１６Ｃは、図１６Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの別の断面図である。 図１７Ａは、プライミング時に本発明の実施形態１にかかるアダプタに取り付けられるドレーンコネクタの斜視図である。図１７Ｂは、ドレーンコネクタの断面図である。 図１８Ａは、本発明の実施形態１にかかるアダプタを用いたオスコネクタの第１プライミング方法を説明する斜視図である。 図１８Ｂは、図１８Ａの断面図である。 図１９は、本発明の実施形態１にかかるアダプタを用いたオスコネクタの第２プライミング方法を実施する直前の状態を示した斜視図である。 図２０Ａは、本発明の実施形態２にかかるアダプタを用いたオスコネクタの第２プライミング方法を説明する斜視図である。 図２０Ｂは、図２０Ａの断面図である。 図２１Ａは、本発明の実施形態２にかかるアダプタの斜視図である。 図２１Ｂは、本発明の実施形態２にかかるアダプタの側面図である。 図２１Ｃは、本発明の実施形態２にかかるアダプタの断面斜視図である。 図２２は、オスコネクタに接続する直前の本発明の実施形態２にかかるアダプタを示した斜視図である。 図２３Ａは、第１位置でオスコネクタに装着された本発明の実施形態２にかかるアダプタの斜視図である。 図２３Ｂは、図２３Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの断面図である。 図２３Ｃは、図２３Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの別の断面図である。 図２４は、本発明の実施形態２にかかるアダプタが第１位置で装着されたオスコネクタに体外循環回路を構成するチューブを接続した状態を示した斜視図である。 図２５Ａは、体外循環回路を構成するチューブを接続したオスコネクタに、本発明の実施形態２にかかるアダプタが第２位置で装着された状態を示した斜視図である。 図２５Ｂは、図２５Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの断面図である。 図２５Ｃは、図２５Ａに示したアダプタ及びオスコネクタの別の断面図である。

上述したように、カバー付きのレバーロック式オスコネクタでは、初期状態ではカバーがオス部材の流路の開口を塞いでいる。カバーがオス部材の開口を塞いでいる限り、オス部材の流路内にプライミング液を導入することは困難である。

そこで、本発明者は、ダミー部材をオスコネクタに装着してプライミング作業を行うことを検討した。ダミー部材は、オス部材の外径より大きな内径を有する中空の筒状部材であって、オスコネクタのロックレバーに設けられた爪を係合させることができる突起がその外周面に設けられている。オスコネクタのオス部材をダミー部材に挿入し、爪をダミー部材の突起に係合させる。オス部材にダミー部材を装着すると、メスコネクタを接続したときと同様にダミー部材はカバーを圧縮変形させ、オス部材がカバーを貫通する。かくして、オス部材とダミー部材とが連通する。この状態で、オス部材からダミー部材へプライミング液を流すことが可能である。

このようなダミー部材を、オスコネクタとは別に予め準備しておく。プライミング作業を行う際には、最初に、ダミー部材をオスコネクタに装着する。次いで、オス部材内にプライミング液を導入する。その後、オスコネクタからダミー部材を取り外し、代わりにメスコネクタをオスコネクタに接続するのである。

ところが、この方法は、（１）オスコネクタとは別にダミー部材を準備しておき、プライミング作業前にダミー部材をオスコネクタに装着する必要があるので、ダミー部材の保管や装着に関する作業が煩雑である、（２）プライミング作業前にオスコネクタにダミー部材を装着することによってダミー部材を介して細菌がオス部材の流路内に混入する可能性がある、という課題があることが判明した。

この課題に対して、本発明者は、ダミー部材をオスコネクタに装着した状態で（即ち、オス部材とダミー部材とを連通させた状態で）滅菌処理し包装することを検討した。病院等の医療機関では、体外血液循環を行う際に、包装を破いてダミー部材が装着されたオスコネクタを取り出し、プライミング作業を行う。その後、オスコネクタからダミー部材を取り外し、代わりにメスコネクタをオスコネクタに接続するのである。この方法であれば、ダミー部材はオスコネクタに装着され且つ滅菌された状態で医療機関に納入されるので、上記の２つの課題が解消できる。

ところが、ダミー部材をオスコネクタに装着すると、カバーが圧縮変形される。この状態で長時間放置されると、カバーが永久変形してしまい、カバーの初期状態に復帰するための弾性復元力が低下する。このため、オスコネクタがメスコネクタから分離したときに、カバーが初期状態に復帰せず、オス部材の流路の開口がカバーで塞がれないという事態が起こりうる。これでは、血液循環中にオスコネクタがメスコネクタから意図せずに分離したときに、血液が外界に漏出するのを防止するというカバーの作用が発揮できない。

本発明者は、更に鋭意検討し、カバー付きのレバーロック式オスコネクタに２通りの位置で装着可能なアダプタを見出して本発明を完成させた。

即ち、本発明のアダプタは、オスコネクタに対して着脱可能である。前記オスコネクタは、流路が形成された棒状のオス部材と、前記オス部材に対向して配されたロックレバーと、前記ロックレバーから前記オス部材に向かって突出した爪と、前記オス部材を収納するカバーとを備える。前記爪が前記オス部材から離れるように前記ロックレバーは弾性的に揺動可能である。前記カバーは、前記オス部材の長手方向に沿って弾性的に圧縮変形可能な外周壁と、前記外周壁の一端に設けられた頭部とを備え、前記外周壁が圧縮変形したとき前記オス部材の先端が前記頭部から突出するように構成されている。前記アダプタは第１端部と第２端部とを備える。前記アダプタには、前記アダプタを貫通し且つ前記第１端部と前記第２端部とを連通させる貫通孔が設けられている。前記第１端部は、前記貫通孔が設けられた中空の筒状部を備える。前記筒状部の外周面に、第１突起と、前記第１突起に対して前記筒状部の基端側の第２突起とが設けられている。前記アダプタは、前記オスコネクタの前記爪が前記第１突起に係合した第１位置と、前記オスコネクタの前記爪が前記第２突起に係合した第２位置とで、前記オスコネクタに接続することができる。前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記オス部材の前記流路は前記カバーにより封止される。前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記アダプタが前記カバーの前記外周壁を圧縮変形させ、前記オス部材の前記流路は前記アダプタの前記貫通孔と連通する。前記アダプタの前記第２端部は、前記第１端部と対称に構成されている。

前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記筒状部と前記カバーとの間に液密なシールが形成されることが好ましい。これにより、プライミング作業中に、アダプタとカバーとの間からプライミング液が漏れ出るのを防ぐことができる。

前記筒状部は、前記貫通孔を取り囲む環状リブを備えうる。この場合、前記液密なシールは、前記環状リブの先端と前記カバーの前記頭部とが当接することにより形成されることが好ましい。これにより、環状リブと頭部とが小さな面積で当接する。従って、アダプタとカバーとの間のシール性が向上する。

前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記カバーの前記外周壁は実質的に圧縮変形されていないことが好ましい。更には、アダプタが第１位置にあるとき、アダプタとカバーとは離間していることが好ましい。これにより、アダプタを第１位置でオスコネクタに接続した状態で長期間放置しても、カバーの外周壁の弾性復元力は低下しない。

アダプタは、前記筒状部の基端に、前記第１突起及び前記第２突起より半径方向に突出した拡径部を更に備えうる。これにより、拡径部がオスコネクタ（特にそのフードの先端）に当接することによって、アダプタがオスコネクタ（特にフード）内に必要以上に挿入されるのを防止することができる。これは、アダプタがカバーを過大に変形させて破損させてしまうのを防止するのに有利である。

上記において、前記オスコネクタは、前記オス部材を取り囲む筒状のフードを更に備えうる。この場合、前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記拡径部は、前記フードの先端に当接してもよい。これにより、アダプタを第２位置よりも深くフード内に挿入することができない。従って、カバーの破損を確実に防止できる。

前記第１突起及び前記第２突起は、周方向に連続する環状の突起でありうる。これにより、オスコネクタに対するアダプタの回転方向の位置に関わらず、オスコネクタの爪を第１突起及び第２突起に係合させることができる。

前記第２突起は、その前記第１突起側の端縁に、前記第１突起に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面を備えうる。これにより、アダプタをオスコネクタに対して単に押し込むだけで、アダプタを第１位置から第２位置へ容易に移動させることができる。

前記アダプタの前記第２端部は、前記第１端部と対称に構成されている。これにより、アダプタを介して２つのオスコネクタを第１位置及び第２位置で接続することができる。その結果、当該２つのオスコネクタに対して同時にプライミング液を導入することができる。

本発明のアダプタ付きオスコネクタは、上記の本発明のアダプタと前記オスコネクタとを備える。

前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続された状態で滅菌され包装されていることが好ましい。これにより、プライミング作業を行う直前までアダプタ及びオスコネクタの衛生状態を良好に維持するすることができる。病院等の医療機関では、包装を破いてアダプタを第２位置に移動させるだけで、オスコネクタに対してプライミング液を導入できる。従って、医療機関でのプライミング作業の負担が軽減される。また、アダプタをオスコネクタとは別に保管しておく必要がないので、医療機関での備品管理の負担も軽減される。

以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。

本発明のアダプタは、オスコネクタに対して着脱可能である。オスコネクタは、体外循環回路を構成するチューブに接続される。

本発明のアダプタを説明する前に、当該アダプタに適合したオスコネクタ及びこれとチューブとの接続構造について説明する。

図１は、一実施形態にかかるオスコネクタ１及びネジロック型コネクタ６の分解斜視図である。オスコネクタ１は、コネクタ本体２とカバー４とを備える。ネジロック型コネクタ６は、ルアー本体７及びロックナット８を備える。ネジロック型コネクタ６は、体外循環回路を構成する柔軟なチューブ９の先端に設けられる。オスコネクタ１は、ネジロック型コネクタ６に分離可能に接続される。

以下に各部を順に説明する。
１．オスコネクタ
１．１．コネクタ本体
オスコネクタ１を構成するコネクタ本体２を説明する。図２Ａはコネクタ本体２の上方から見た斜視図、図２Ｂはコネクタ本体２の下方から見た斜視図である。図２Ｃ、図２Ｄ、図２Ｅは、順にコネクタ本体２の正面図、側面図、平面図である。図２Ｆは、図２Ｄの２Ｆ−２Ｆ線を含む上下方向面で切断されたコネクタ本体２の断面図である。図２Ｇは、図２Ｃの２Ｇ−２Ｇ線を含む上下方向面で切断されたコネクタ本体２の断面図である。図２Ｆ及び図２Ｇにおいて、一点鎖線２ａは、コネクタ本体２の中心軸である。中心軸２ａは、オスコネクタ１（図１参照）の中心軸でもある。

以下の説明の便宜のため、中心軸２ａに平行な方向を「上下方向」、中心軸２ａに垂直な平面に平行な方向を「水平方向」、中心軸２ａに直交する方向を「半径方向」または「径方向」、中心軸２ａ周りに回転する方向を「周方向」という。半径方向において、中心軸２ａに近い側を「内側」、中心軸２ａから遠い側を「外側」という。「上」及び「下」は、図２Ｆ及び図２Ｇに基づいて定義する。但し、「上下方向」及び「水平方向」は、オスコネクタ１の実際の使用時の向きを意味するものではない。

図２Ｆ及び図２Ｇに示されているように、コネクタ本体２は、オス部材としてのオスルアー１０を備える。オスルアー１０は、中心軸２ａと同軸に、中心軸２ａに沿って延びた棒状の部材である。オスルアー１０の外周面（側面）は、本実施形態では、先端１０ａの近傍の、メスコネクタ（後述するセプタム８１０）に挿入される部分では外径が中心軸２ａ方向において一定である円筒面であり、基端部１３の近傍の部分では先端１０ａに近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面（円錐面）である。但し、オスルアー１０の外周面の形状はこれに限定されず、任意に選択することができる。例えば、オスルアー１０の外周面は、外径が基端部１３から先端１０ａまで一定である円筒面であってもよい。あるいは、オスルアー１０の外周面は、基端部１３から先端１０ａに近づくにしたがって外径が徐々に小さくなる滑らかな曲面であってもよい。

オスルアー１０内には、中心軸２ａに沿って流路１１が形成されている。流路１１は、オスルアー１０の先端１０ａには開口していない。オスルアー１０の外周面の先端１０ａの近傍の位置に、流路１１と連通する２つの横孔１２が形成されている。各横孔１２は、半径方向にオスルアー１０を貫通し、オスルアー１０の外周面上で開口している。なお、横孔１２の数は２つである必要はなく、１つ又は３つ以上であってもよい。

オスルアー１０の基端部１３からベース１５が外向きに突出している。ベース１５は、水平方向に平行な平板状の部材である。図２Ｅから理解できるように、中心軸２ａに沿って見たとき、ベース１５は、長軸１５ａ及び短軸１５ｂを有する略楕円形状を有している。

筒状部１７がベース１５から下方に向かって突出している。筒状部１７は、中心軸２ａと同軸の略円筒形状を有し、オスルアー１０の流路１１と連通する流路が形成されている。筒状部１７の内周面１７ａは、ベース１５から離れるにしたがって内径が大きくなるメステーパ面（例えば６％テーパ面）である。筒状部１７の外周面には、雄ネジ１８が形成されている。

フード２０が、ベース１５の外側端縁から、オスルアー１０と同じ側に立設されている。フード２０は、オスルアー１０を取り囲む中空の筒形状を有する。フード２０は、上方に向かって開口している。開口２１を取り囲むフード２０の先端（上端）２０ａは、中心軸２ａと同軸の円形である。フード２０の先端２０ａは、オスルアー１０の先端１０ａより高い位置にある。

フード２０の側壁には、一対の切り欠き２３が設けられている。切り欠き２３は、フード２０を半径方向に貫通する穴（開口）である。一対の切り欠き２３は、中心軸２ａ（またはオスルアー１０）を挟んで長軸１５ａ（図２Ｅ参照）方向に対向している。切り欠き２３は、逆「Ｕ」字形状を有し（図２Ｄ参照）、その下端はベース１５に達している。一方、切り欠き２３は、フード２０の先端２０ａには達していない。

図２Ｆに最もよく示されているように、一対のロックレバー（以下、単に「レバー」という）３０が、中心軸２ａを挟んで長軸１５ａ（図２Ｅ参照）方向に対向している。レバー３０は、中心軸２ａと略平行に伸びた短冊状の部材である。レバー３０はベース１５の外側端縁に接続されている。レバー３０は、ベース１５に対してオスルアー１０と同じ側（上側）に配された係止部３１と、ベース１５に対してオスルアー１０とは反対側（下側）に配された操作部３５とを備える。係止部３１と操作部３５との間の、ベース１５が接続されたレバー３０の部分を、レバー基部３９という。係止部３１はオスルアー１０に対向し、操作部３５は筒状部１７に対向する。

係止部３１は、フード２０に形成された切り欠き２３内に配置されている。換言すれば、係止部３１は、フード２０を半径方向に貫通する逆「Ｕ」字形状のスリット２３で囲まれている（図２Ｄ参照）。

係止部３１のオスルアー１０に対向する側の面（内側面）から、爪３２がオスルアー１０に向かって突出している。爪３２は、傾斜面３２ａと、係合面３２ｂとを備える。傾斜面３２ａは、ベース１５から離れるにしたがってオスルアー１０から遠ざかるように傾斜している。係合面３２ｂは、傾斜面３２ａよりもベース１５側に配置され、水平面に略平行な平面である。図２Ｅに示されているように、上方から見たとき、爪３２の頂部（オスルアー１０に最も近い部分）は、フード２０の開口２１を取り囲む先端２０ａよりオスルアー１０側に突出している。

後述するように、オスコネクタ１がメスコネクタ８００に接続されたとき、爪３２はメスコネクタ８００に係合する（後述する図１１Ｂ参照）。レバー３０は、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とが接続された状態を維持する「レバー式ロック機構」として機能する。即ち、オスコネクタ１は、レバーロック式オスコネクタである。

２つのレバー３０が中心軸２ａ（即ち、オスルアー１０）に対して対称位置に配されているので、２つの爪３２をメスコネクタ８００に、中心軸２ａに対して対称位置で係合させることができる。従って、メスコネクタ８００を安定的に保持することができるので、レバー式ロック機構の信頼性が向上する。爪３２がメスコネクタ８００に係合した状態を「ロック状態」という。

レバー３０は、その上端（係止部３１）から下端（操作部３５）までの全部分が実質的に剛体と見なしうる程度の機械的強度を有する。これに対して、オスルアー１０の基端部１３とレバー３０とをつなぐベース１５の機械的強度は相対的に低い。従って、図２Ｆに示すように、操作部３５のに中心軸２ａに向かって力Ｆを印加すると、ベース１５が弾性的に曲げ変形して、係止部３１及びこれに形成された爪３２がオスルアー１０から離れるように（矢印Ａの向きに）レバー３０を揺動（または回動）させることができる。

図２Ｂ及び図２Ｇに示されているように、ベース１５を上下方向に貫通する一対の孔１６が、ベース１５に形成されている。孔１６は、略楕円形状を有するベース１５の短軸１５ｂ（図２Ｅ参照）上に配置されている。

図２Ａに示されているように、ベース１５より上側のコネクタ本体２の外周面の概略形状は、フード２０の先端２０ａでの円形と、ベース１５の位置での略楕円形とをなめらにつなぐ曲面である。当該曲面は、フード２０の外周面及びレバー３０の外周面によって構成されている。

コネクタ本体２は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。コネクタ本体２は、このような樹脂材料を用いて射出成形法等により一部品として一体的に作成することができる。

１．２．カバー
オスコネクタ１を構成するカバー４を説明する。図３Ａはカバー４の上方から見た斜視図、図３Ｂはカバー４の下方から見た斜視図、図３Ｃはカバー４の断面図である。カバー４は、上から下に、頭部４１、外周壁４５、基部４８をこの順に備える。図３Ｃに示されているように、カバー４は、上下方向に貫通した略筒形状を有している。

カバー４は、ゴム弾性（または可撓性）を有する軟質の材料（いわゆるエラストマー）を用いて一部品として一体的に成形されている。カバー４の材料は、制限はないが、例えば、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。

図３Ｃに示されているように、頭部４１には、上下方向に貫通した貫通孔４２が形成されている。貫通孔４２の内周面は、コネクタ本体２のオスルアー１０の外周面に密着するように、オスルアー１０の外周面に沿った形状を有することが好ましい。本実施形態では、貫通孔４２の内周面は、その内径が上下方向において一定である円筒面である。貫通孔４２の内径は、コネクタ本体２のオスルアー１０の外径と同じかこれよりわずかに小さいことが好ましい。

図３Ａに示されているように、頭部４１の上面４３の中央の円形の領域に、上方に向かってドーム状に突出した凸部４４が設けられている。凸部４４の中心に貫通孔４２が開口している。凸部４４を取り囲む頭部４１の上面４３は、水平方向に平行な環状の平坦面である。

外周壁４５は、カバー４に上下方向の圧縮力が印加されたときに、その上下方向寸法が短縮するように弾性的に圧縮変形する（後述する図１１Ｂ参照）。図３Ｃに示されているように、外周壁４５は、頭部４１の貫通孔４２より大きな内径を有する。カバー４がコネクタ本体２に装着されたとき、外周壁４５は、オスルアー１０から半径方向に離間する（後述する図４Ｂ、図４Ｃ参照）。このため、外周壁４５が上下方向に圧縮変形したとき外周壁４５の内周面がオスルアー１０に衝突する可能性が低くなる。これは、外周壁４５の上下方向の圧縮変形量を拡大するのに有利である。

また、外周壁４５には、頭部４１から遠ざかるにしたがって外径及び内径が大きくなるテーパ状（円錐状）部分と、外径及び内径が上下方向において一定である円筒状部分とが上下方向に交互に配置されている。このため、外周壁４５は、全体として、頭部４１側で細い円錐形状を有している。この形状は、カバー４に上下方向の圧縮力が印加されたとき、テーパ状部分がその下の円筒状部分に陥入するように外周壁４５が変形することを可能にする（後述する図１１Ｂ参照）。これは、外周壁４５の上下方向の圧縮変形量を拡大するのに有利である。

外周壁４５の外周面に、上下方向に延びたリブ状突起４６が設けられている。リブ状突起４６は、外周壁４５から外向きに突出し、外周壁４５の厚さ（半径方向の寸法）を局所的に拡大する。リブ状突起４６は、カバー４に上下方向の圧縮力が印加されたときに、外周壁４５が座屈変形するのを防止する。

基部４８は、平坦な底面４８ａを有する。底面４８ａから、下方に向かって一対の固定突起４９が突出している。固定突起４９の外側面からは外側に向かって固定爪４９ａが突出している。固定突起４９及び固定爪４９ａは、カバー４をコネクタ本体２に固定するために使用される。

１．３．オスコネクタの組立
図１に示したように、カバー４は、コネクタ本体２の上方から、フード２０内に挿入される。図４Ａは、コネクタ本体２にカバー４が装着されたオスコネクタ１の上方から見た斜視図、図４Ｂは、中心軸２ａ及び長軸１５ａ（図２Ｅ参照）を含む面に沿ったオスコネクタ１の断面図、図４Ｃは、中心軸２ａ及び短軸１５ｂ（図２Ｅ参照）を含む面に沿ったオスコネクタ１の断面図である。

図４Ｃに示されているように、カバー４の固定突起４９がコネクタ本体２のベース１５に設けられた孔１６に挿入されている。固定爪４９ａは、孔１６を通り抜けてベース１５の下面に係合している。カバー４の底面４８ａは、ベース１５の上面に密着している（図４Ｂ参照）。

カバー４の頭部４１の貫通孔４２内にオスルアー１０の先端１０ａ及びその近傍部分が挿入されている。オスルアー１０の先端１０ａは、頭部４１の貫通孔４２内に露出している。貫通孔４２の内周面は、オスルアー１０の外周面の外形状に応じて適宜変形しながら当該外周面に密着している。オスルアー１０の横孔１２の開口は、貫通孔４２の内周面によって液密に塞がれている。

カバー４の外周壁４５は、オスルアー１０から半径方向に離間している。このため、カバー４とコネクタ本体２との間に、液密な空間が形成されている。また、外周壁４５は、フード２０及びレバー３０のいずれからも半径方向に離間している。

本発明では、図４Ａ〜図４Ｃに示したように、レバー３０に実質的に外力が作用しておらず、且つ、カバー４が上下方向に圧縮変形していない状態を、オスコネクタ１の「初期状態」という。また、初期状態でのカバー４の形状を「初期形状」という。

２．ネジロック型コネクタ
２．１．ルアー本体
ネジロック型コネクタ６を構成するルアー本体７を説明する。図５Ａはルアー本体７の斜視図、図５Ｂはルアー本体７の断面図である。

ルアー本体７は、その長手方向に沿った貫通孔（流路）７１が形成された、全体として略円筒形状を有する。ルアー本体７は、オスルアー７２、筒状部７５、接続部７９を、上から下にこの順に備える。

オスルアー７２の外周面７２ａは、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるオステーパ面（例えば６％テーパ面）である。筒状部７５の外周面は、外径が上下方向において一定である円筒面である。筒状部７５の外周面から一対の凸部７６が外側に向かって突出している。オスルアー７２と筒状部７５との境界には、周方向に連続する環状突起７７が設けられている。環状突起７７は、オスルアー７２及び筒状部７５より大きな外径を有する。

ルアー本体７は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。ルアー本体７は、これらの樹脂材料を用いて射出成形法等により一部品として一体的に作成することができる。

２．２．ロックナット
ネジロック型コネクタ６を構成するロックナット８を説明する。図６Ａはロックナット８の上方から見た斜視図、図６Ｂはロックナット８の下方から見た斜視図、図６Ｃはロックナット８の平面図、図６Ｄはロックナット８の断面図である。ロックナット８は、全体として中空の略円筒形状を有する。

ロックナット８の外周面は、外径が異なる２つの円筒面で構成される。上側の外径が相対的に大きな円筒面から、複数のリブ８３が外向きに突出している。リブ８３は上下方向に沿って延びている。本実施形態では、ロックナット８の外周面は２つの円筒面で構成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、上端から下端まで単一の円筒面で構成されていてもよい。あるいは、外周面が、円筒面以外の面（例えば多角柱面）を含んでいてもよい。リブ８３は省略しうる。

ロックナット８の内周面には、その上端から略中央までの領域に雌ネジ８８が形成されている。ロックナット８の内周面の、雌ネジ８８より下側の部分は、内径が一定である円筒面８５である。円筒面８５から、周方向に延びた位置規制突起８７が突出している。位置規制突起８７を一対の案内路８６が横切っている。案内路８６は上下方向に延びている。案内路８６は、位置規制突起８７を周方向に分断している。

ロックナット８は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。ロックナット８は、これらの樹脂材料を用いて射出成形法等により一部品として一体的に作成することができる。

２．３．ネジロック型コネクタの組立
図１に示したように、柔軟性を有するチューブ９をロックナット８に貫通させる。そして、チューブ９の上端に、ルアー本体７の接続部７９を挿入する。続いて、ロックナット８を上昇させる。ロックナット８の雌ネジ８８内にルアー本体７を挿入する。ルアー本体７の外周面から突出した凸部７６が、ロックナット８の内周面から突出した位置規制突起８７に衝突するかも知れない。この場合には、ロックナット８をルアー本体７に対してわずかに回転させる。ルアー本体７の凸部７６の周方向の位置とロックナット８の案内路８６の周方向の位置とが一致すると、凸部７６は案内路８６を通過することができる。かくして、図７Ａ及び図７Ｂに示すようにネジロック型コネクタ６を組み立てることができる。

図７Ｂに示されているように、ルアー本体７の環状突起７７と凸部７６との間に、ロックナット８の位置規制突起８７が位置している。位置規制突起８７が環状突起７７及び凸部７６に衝突するので、ロックナット８はルアー本体７に対して上側（オスルアー７２側）及び下側（接続部７９側）へ移動するのが制限される。但し、ロックナット８は、ルアー本体７の周りを自由に回転することができる。

３．オスコネクタとネジロック型コネクタとの接続
オスコネクタ１（図４Ａ〜図４Ｃ）とネジロック型コネクタ６（図７Ａ、図７Ｂ）との接続は、ルアー本体７のオスルアー７２をコネクタ本体２の筒状部１７に挿入し、ロックナット８の雌ネジ８８を筒状部１７の雄ネジ１８に螺合させることにより可能である。

図８Ａは、オスコネクタ１とネジロック型コネクタ６とを接続した状態を示した側面図、図８Ｂはその断面図である。

オスルアー７２の外周面７２ａと筒状部１７の内周面１７ａとは、径及びテーパ角度が同じテーパ面である。従って、図８Ｂに示されているように、外周面７２ａと内周面１７ａとは液密に密着する。かくして、チューブ９とオスルアー１０の流路１１とが連通される。

ロックナット８の雌ネジ８８と筒状部１７の雄ネジ１８とが螺合する。また、ロックナット８の位置規制突起８７とルアー本体７の環状突起７７とが係合する。このため、オスルアー７２と筒状部１７とは強固に接続される。オスコネクタ１（またはコネクタ本体２）とネジロック型コネクタ６（またはルアー本体７）との間に意図しない引っ張り力が作用しても、両者が分離されることはない。

図８Ａに示されているように、ロックナット８は一対の操作部３５間に配置される。ロックナット８の外周面に形成されたリブ８３を滑り止めとして使用してロックナット８を回転させて、雌ネジ８８を雄ネジ１８に螺合し、またはその螺合を緩めることができる。

４．メスコネクタ
オスコネクタ１は、メスコネクタに接続して使用される。メスコネクタの一例を図９Ａ、図９Ｂに示す。図９Ａはメスコネクタ８００の斜視図であり、図９Ｂはメスコネクタ８００の断面図である。

メスコネクタ８００は、円板状の隔壁部材（以下「セプタム」という）８１０と、セプタム８１０を上下方向に挟持し固定する基台８２０及びキャップ８３０とを備える。

セプタム８１０の中央には、セプタム８１０を上下方向に貫通する直線状のスリット（切り込み）８１１が形成されている。セプタム８１０の材料は、制限はないが、ゴム弾性を有する軟質の材料であることが好ましく、例えば、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。

基台８２０は、その上側に、略円筒形状を有する台座８２１を備える。台座８２１の外周面は円筒面である。台座８２１の外周面から、一対の係合爪８２２及び環状突起８２３が外側に向かって突出している。環状突起８２３は、係合爪８２２から下方にわずかに離間している。

台座８２１より下側には、台座２２１の内腔８２５と連通したオスルアー８２７と、オスルアー８２７と同軸の雌ネジ８２８とが設けられている。オスルアー８２７の外周面は、先端に近づくにしたがって（即ち、台座８２１から離れるにしたがって）外径が小さくなるオステーパ面（円錐面）である。

キャップ８３０は、円板形状を有する天板８３１と、天板８３１の外周端縁から下方に向かって延びた円筒形状を有する周囲壁８３５とを備える。天板８３１の中央には円形の開口（貫通孔）８３２が形成されている。周囲壁８３５には、一対の係合孔８３６が形成されている。係合孔８３６は、周囲壁８３５を半径方向に貫通する貫通孔である。

図９Ｂに示されているように、台座８２１の上端にセプタム８１０を載置し、セプタム８１０に上方からキャップ８３０をかぶせる。台座８２１に形成された係合爪８２２がキャップ８３０に形成された係合穴８３６内に嵌入することによって、キャップ８３０が係合爪８２２に係合される。かくして、キャップ８３０は基台８２０に固定される（図９Ａ参照）。セプタム８１０は、台座８２１の上端とキャップ８３０の天板８３１とによりその厚さ方向（即ち、上下方向）に挟持される。セプタム８１０のスリット８１１は、天板８３１に形成された開口８３２内に露出する。基台８２０に形成された環状突起８２３は、キャップ８３０の周囲壁８３５に対して下側に隣接する。環状突起８２３の頂面は、周囲壁８３５の外周面と略同一の円筒面を構成する。

スリット８１１が形成されたセプタム８１０を備えたメスコネクタ８００は、一般にニードルレスポートと呼ばれる（例えば特許文献６参照）。

５．オスコネクタとメスコネクタとの接続・分離及びその使用方法
オスコネクタ１とメスコネクタ８００とは体外循環回路の連結部を構成する。オスコネクタ１とメスコネクタ８００との接続は以下のようにして行うことができる。

最初に、図１０に示すように、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とを対向させる。図示していないが、メスコネクタ８００のオスルアー８２７には、柔軟なチューブが直接的に又は何らかの部材を介して間接的に接続されている。

図１０の状態から、メスコネクタ８００のキャップ８３０をオスコネクタ１のフード２０内に挿入し、押し込む。

キャップ８３０の天板８３１の外側の端縁８３０ａ（図９Ａ、図９Ｂ参照）が、レバー３０の爪３２の傾斜面３２ａ（図２Ｅ、図２Ｆ、図４Ａ、図４Ｂ参照）に当接する。メスコネクタ８００をフード２０内に更に押し込むと、端縁８３０ａは、爪３２がオスルアー１０から離れるようにレバー３０を弾性的に変位（揺動）させる。

これと並行して、オスルアー１０の先端１０ａ（図４Ａ参照）が、キャップ８３０の開口８３２内に露出したセプタム８１０（図９Ａ参照）に当接し、続いてセプタム８１０のスリット８１１内に進入する。これとほぼ同時に、カバー４の頭部４１がセプタム８１０又はキャップ８３０の天板８３１に当接する。オスルアー１０がセプタム８１０内に進入するにしたがって、カバー４は上下方向に圧縮され、外周壁４５がその上下方向寸法を縮小するように変形する。

レバー３０の爪３２は、キャップ８３０の周囲壁８３５及び環状突起８２３上を順に摺動する。爪３２が環状突起８２３を通過し終えると、コネクタ本体２のベース１５が弾性回復し、爪３２と環状突起８２３とが係合する（ロック状態）。かくして、オスコネクタ１とメスコネクタ８００との接続が完了する。図１１Ａは、この状態を示した斜視図、図１１Ｂはその断面図である。

図１１Ｂに示されているように、オスルアー１０がセプタム８１０のスリット８１１（図９Ａ、図９Ｂ参照）を貫通し、これによりセプタム８１０は台座８２１の内腔８２５に向かって変形している。オスルアー１０の横孔１２の開口は、台座８２１の内腔８２５内に露出している。従って、オスルアー１０の流路１１と台座８２１の内腔８２５とが連通する。この状態で、チューブ９から、ルアー本体７の流路７１、オスルアー１０の流路１１、台座８２１の内腔８２５、オスルアー８２７へ、またはこの逆に、液体を流すことができる。

カバー４は、上下方向の圧縮力を受け、特にその外周壁４５が、その上下方向寸法が縮小するように変形している。

オスコネクタ１とメスコネクタ８００との分離は、以下のようにして行う。一対の操作部３５に互いに接近する向きの力Ｆ（図２Ｆ参照）を印加して、レバー３０を回動させ、爪３２と環状突起８２３との係合を解除する。この状態でオスコネクタ１とメスコネクタ８００とを互いに離れる向きに引っ張ると、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とを分離させることができる（図１０参照）。セプタム８１０は、オスルアー１０が抜き去られると直ちに弾性回復し、スリット８１１は閉じられる。カバー４は、自身の弾性復元力によって伸張して初期状態に復帰し、頭部４２の内周面はオスルアー１０の横孔１２の開口を塞ぐ（図４Ｂ、図４Ｃ、図８Ｂ参照）。操作部３５への外力を解除すれば、レバー３０は初期状態に弾性的に復帰する。

血液を循環させる体外循環回路は、患者の静脈から血液を取り出す脱血ラインと、患者の静脈に血液を戻す返血ラインとを備えている。例えば血液透析を行う体外循環回路では、血液を、患者から脱血ラインを介してダイアライザー（透析器）に送り、ダイアライザーから返血ラインを介して患者に戻す。脱血ライン及び返血ラインのそれぞれで、上述したオスコネクタ１及びメスコネクタ８００からなる連結部が用いられる。例えば、脱血ライン及び返血ラインのいずれにおいても、チューブ９（図１、図１１Ａ参照）のオスコネクタ１とは反対側端は患者の静脈に接続されうる。メスコネクタ８００のオスルアー８２７（図１１Ａ参照）は図示しないチューブを介してダイアライザーに接続されうる。血液を循環させるためのポンプは、例えば脱血ラインを構成するチューブ９上に設けられうる。

上述したように、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とを接続すると（図１１Ａ、図１１Ｂ参照）、オスルアー１０の流路１１と台座８２１の内腔８２５とが連通する。従って、オスコネクタ１及びメスコネクタ８００を介して血液を流すことができる。

オスコネクタ１とメスコネクタ８００とを接続した状態では、オスコネクタ１の爪３２がメスコネクタ８００に係合している。従って、血液循環中に例えばオスコネクタ１及びメスコネクタ８００に両者を分離する向きの外力が加えられても、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とが意図せずに分離することはない。

また、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とが分離されると、オスコネクタ１のカバー４は直ちに初期状態に復帰してオスルアー１０の横孔１２を塞ぎ、また、メスコネクタ８００のセプタム８１０は直ちに初期状態に復帰してスリット８１１が閉じる。従って、血液循環中にオスコネクタ１とメスコネクタ８００とが意図せずに分離したとしても、オスコネクタ１及びメスコネクタ８００から血液が漏れ出る可能性は低い。

上述したように、体外循環回路に血液を循環させるのに先だって、当該回路内にプライミング液を導入し、回路内の空気を外界に排出するプライミング作業を行う必要がある。プライミング作業は、オスコネクタ１とメスコネクタ８００とを接続する前に行われる。図８Ｂから容易に理解できるように、メスコネクタ８００と接続していない初期状態では、オスコネクタ１のオスルアー１０の横孔１２はカバー４で塞がれている。従って、この状態では、チューブ９、ルアー本体７の流路７１、及びオスルアー１０の流路１１内にプライミング液を導入することはできない。オスコネクタ１とネジロック型コネクタ６とを分離すれば、チューブ９及びルアー本体７の流路７１内にプライミング液を導入することはできるが、オスルアー１０の流路１１内にプライミング液を導入することは依然としてできない。

本発明のアダプタは、オスコネクタ１に装着することにより、オスコネクタ１へのプライミング液の導入を容易にする。以下に、本発明のアダプタについて説明する。

（実施形態１）
１．アダプタの構成
図１２Ａは、本発明の実施形態１にかかるアダプタ１００の第１端部１０１側から見た斜視図である。図１２Ｂは、アダプタ１００の第２端部１０２側から見た斜視図である。図１２Ｃはアダプタ１００の側面図、図１２Ｄはアダプタ１００の断面斜視図である。図１２Ｄにおいて、一点鎖線１００ａは、第１端部１０１と第２端部１０２とを結ぶアダプタ１００の中心軸である。以下の説明の便宜のため、中心軸１００ａに直交する方向を「半径方向」または「径方向」、中心軸１００ａ周りに回転する方向を「周方向」という。半径方向において、中心軸１００ａに近い側を「内側」、中心軸１００ａから遠い側を「外側」という。

図１２Ｄに示されているように、アダプタ１００には、中心軸１００ａに沿ってアダプタ１００を貫通する貫通孔（流路）１０３が設けられている。貫通孔１０３は、アダプタ１００の第１端部１０１及び第２端部１０２で開口し、第１端部１０１と第２端部１０２とを連通させている。後述するように、アダプタ１００をオスコネクタ１に装着してオスコネクタ１に対するプライミング作業を行う際に、貫通孔１０３をプライミング液が流れる。

第１端部１０１には、中心軸１００ａと同軸の中空の筒状部１１０が設けられている。筒状部１１０内を貫通孔１０３が貫通している。筒状部１１０の外周面には、第１突起１１１及び第２突起１１２が設けられている。筒状部１１０の基端１１３には拡径部１０５が設けられている。

第１突起１１１及び第２突起１１２は、いずれも周方向に連続した環状の突起である。第１突起１１１は筒状部１１０の先端側に配置され、第２突起１１２は、第１突起１１１に対して筒状部１１０の基端１１３側（拡径部１０５側）に配置されている。第１突起１１１と第２突起１１２とは離間し、両者間に周方向に連続する環状の溝（凹部）が形成されている。また、第２突起１１２と拡径部１０５とは離間し、両者間に周方向に連続する環状の溝（凹部）が形成されている。第１突起１１１の外周面及び第２突起１１２の外周面は、中心軸１００ａと同軸且つ同一半径の円筒面である。第１突起１１１及び第２突起１１２の外径は、アダプタ１００が装着されるオスコネクタ１に接続されるメスコネクタ８００の外径（キャップ８３０の周囲壁８３５の外径及び環状突起８２３の外径、図９Ａ参照）と略同一である。

なお、第１突起１１１の外周面及び第２突起１１２の外周面は、円筒面である必要はない。例えば、中心軸１００ａを含む断面での第１突起１１１及び第２突起１１２の断面形状は、三角形、円弧などであってもよい。但し、第１突起１１１及び第２突起１１２は、周方向に連続する管状の突起であることが好ましい。これにより、後述するように、オスコネクタ１に対するアダプタ１００の回転方向の位置に関わらず、爪３２を第１突起１１１及び第２突起１１２に係合させることができる。

第２突起１１２の第１突起１１１側の端縁に、テーパ面１１２ａが形成されている。テーパ面１１２ａは、第１突起１１１に近づくにしたがって外径が小さくなる円錐面である。

拡径部１０５は、第１突起１１１及び第２突起１１２よりも半径方向に沿って外向きに突出している。拡径部１０５の外径は、好ましくは、オスコネクタ１のフード２０の先端２０ａ（図２Ａ参照）での外径と同じかこれよりわずかに大きい。本実施形態では、拡径部１０５は、略円板形状（いわゆるフランジ形状）を有しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、略楕円形状が半径方向に沿った１以上の切り欠きにより周方向に分断されていてもよい。中心軸１００ａに沿って見た拡径部１０５の形状は、本実施形態では円形であるが、これ以外の形状、例えば、略楕円形、三角形、矩形、六角形などであってもよい。更に、拡径部１０５は、基端１１３から半径方向に沿って突出した１以上の突起（例えば、板状突起、棒状突起、半球状突起）であってもよい。

図１２Ｄに示されているように、筒状部１１０の貫通孔１０３を規定する内周面は、筒状部１１０の基端１１３側から先端側に向かって、第１領域１１６、第２領域１１７、第３領域１１８を備える。第１領域１１６、第２領域１１７、第３領域１１８は、中心軸１００ａと同軸であり、内径はこの順に大きくなる。第２領域１１７の内径は、カバー４の頭部４１（図３Ａ参照）の外径より大きい。第１領域１１６の内径は、カバー４の頭部４１の外径より小さい。

本実施形態では、第１領域１１６の内周面は基端１１３側で内径が小さくなるテーパ面（円錐面）であり、第２領域１１７及び第３領域１１８の内周面は円筒面である。但し、本発明はこれに限定されない。例えば、第１領域１１６の内周面は円筒面であってもよく、第２領域１１７及び第３領域１１８の一方または両方の内周面は基端１１３側で内径が小さくなるテーパ面（円錐面）であってもよい。筒状部１１０の内周面が、第１領域１１６、第２領域１１７、第３領域１１８とは内径が異なる別の領域を有していてもよい。あるいは、第２領域１１７及び第３領域１１８の一方または両方が省略されてもよい。

第１領域１１６と第２領域１１７との間に、両者の内径差に基づく肩部１１９が形成されている。肩部１１９は、中心軸１００ａに垂直な平面である。肩部１１９から、周方向に連続する環状リブ１１９ａが、筒状部１１０の先端側に向かって突出している。環状リブ１１９ａは、肩部１１９の内周側端縁に沿った、中心軸１００ａと同軸の円筒状の突起である。環状リブ１１９ａは、第２領域１１７の内周面から半径方向に離間している。環状リブ１１９ａの内径は、オスルアー１０の外径より大きく、カバー４の頭部４１（図３Ａ参照）の外径より小さく、頭部４１から突出した凸部４４の外径と略同じか、これよりわずかに大きい。

アダプタ１００の第２端部１０２には、筒形状のオスルアー１２１と、オスルアー１２１を取り囲む外筒１２５とを有する。オスルアー１２１の外周面１２２は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面（いわゆるオステーパ面）である。オスルアー１２１内を貫通孔１０３が貫通している。外筒１２５のオスルアー１２１に対向する内周面には雌ネジ（螺合構造）１２６が形成されている。外筒１２５の外周面には、中心軸１００ａに平行に延びる複数のリブ１２７が設けられている。オスルアー１２１及び雌ネジ１２５は、ＩＳＯ５９４−２に規定されたロック式コネクタに準拠していてもよい。

アダプタ１００２は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。アダプタ１００は、このような樹脂材料を用いて射出成形法等により一部品として一体的に作成することができる。

本実施形態では、外筒１２５は拡径部１０５の第２端部１０２側の面に設けられているが、外筒１２５が拡径部１０５から中心軸１００ａ方向に離間していてもよい。この場合、オスルアー１２１も筒状部１１０の基端１１３から中心軸１００ａ方向に離間される。筒状部１１０の基端１１３とオスルアー１２１とは、貫通孔１０３が設けられた中空部材で連結される。

２．アダプタの使用方法
２．１．オスコネクタに対するアダプタの第１位置での接続
オスコネクタ１００に対するプライミング作業に先だって、アダプタ１００をオスコネクタ１に接続する。以下に、これを説明する。

最初に、図１３に示すように、アダプタ１００の第１端部１０１（筒状部１１０）をオスコネクタ１に対向させる。この段階では、オスコネクタ１にはネジロック型コネクタ６及びチューブ９は接続されていない。

図１３の状態から、第１端部１０１とオスコネクタ１とを接続する。即ち、アダプタ１００の筒状部１１０をオスコネクタ１のフード２０内に挿入し、押し込む。アダプタ１００の第１突起１１１の先端側の端縁１１１ａ（図１２Ａ参照）が、レバー３０の爪３２の傾斜面３２ａ（図２Ｅ、図２Ｆ、図４Ａ、図４Ｂ参照）に当接する。アダプタ１００をフード２０内に更に押し込と、端縁１１１ａは、爪３２がオスルアー１０から離れるようにレバー３０を弾性的に変位（揺動）させる。アダプタ１００をフード２０内に更に押し込むと、爪３２は、アダプタ１００の第１突起１１１上を摺動する。爪３２が第１突起１１１を通過し終えると、コネクタ本体２のベース１５が弾性回復し、爪３２は、アダプタ１００の第１突起１１１と第２突起１１２との間の周方向に連続した環状溝内に嵌入する。

図１４Ａは、この状態を示した斜視図である。図１４Ｂ及び図１４Ｃはその断面図である。図１４Ｂの断面は、図４Ｂの断面と同じであり、図１４Ｃの断面は、図４Ｃの断面と同じである。

図１４Ｂに示されているように、オスコネクタ１の爪３２は、アダプタ１００の第１突起１１１に係合している。このため、オスコネクタ１とアダプタ１００とを単に反対向きに引っ張っても、両者を分離することはできない。但し、一対の操作部３５に、互いに接近する向きの力Ｆ（図２Ｆ参照）を印加すれば、爪３２と第１突起１１１との係合が解除され、アダプタ１００をオスコネクタ１から分離することは可能である。本発明では、このように、爪３２が第１突起１１１に係合した状態でオスコネクタ１に接続されたアダプタ１００のオスコネクタ１に対する位置を「第１位置」という。

図１４Ｂ及び図１４Ｃに示されているように、カバー４の頭部４１は、アダプタ１００の第２領域１１７内に挿入されている。頭部４１の環状の上面４３は、環状リブ１１９ａから、上下方向に離間し且つ対向している。また、図１４Ｂに最もよく示されているように、カバー４の外周壁４５の外周面から突出したリブ状突起４６は、アダプタ１００の第３領域１１８内に収納されている。カバー４は、アダプタ１００と離間し、または、単に接触しているだけである。従って、カバー４は、アダプタ１００から実質的に力を受けていない。カバー４の形状は、初期状態（図４Ａ〜図４Ｃ参照）と実質的に同じである。オスルアー１０の横孔１２の開口は、カバー４の貫通孔４２の内周面によって塞がれている。オスルアー１０の流路１１は、カバー４の頭部４１によって封止されている。従って、オスルアー１０の流路１１とアダプタ１００の貫通孔１０３とは連通していない。

拡径部１０５は、フード２０の先端２０ａから上下方向に離間している。

アダプタ１００を第１位置でオスコネクタ１に接続した状態（図１４Ａ〜図１４Ｃ参照）で、オスコネクタ１及びアダプタ１００を滅菌し、包装する。この滅菌及び包装は、オスコネクタ１の製造販売業者が行うことができる。アダプタ１００が接続されたオスコネクタ１は、滅菌包装された状態で、病院等の医療機関に納品され保管される。滅菌処理及び包装は、制限はなく、従来のオスコネクタに対して一般的に施されているものと同じであってよい。

アダプタ１００が第１位置にあるとき、カバー４は、実質的に変形していない初期形状のままである。従って、アダプタ１００が第１位置で接続されたままでオスコネクタ１が長期間保存されても、カバー４の外周壁４５の弾性復元力は低下しない。

また、アダプタ１００が第１位置にあるとき、爪３２が第１突起１１１に係合している。従って、輸送時に振動や外力等が加えられても、オスコネクタ１とアダプタ１００とが分離する可能性は低い。

２．２．プライミングのための準備
医療機関で体外循環回路を形成する際に、オスコネクタ１及びアダプタ１００を収納する包装が破かれて、アダプタ１００が第１位置で接続されたオスコネクタ１（図１４Ａ〜図１４Ｃ参照）が取り出される。

体外循環回路の脱血ライン及び返血ラインを構成する柔軟なチューブ９の末端にはネジロック型コネクタ６（図７Ａ及び図７Ｂ参照）が取り付けられている。図１５に示すように、ネジロック型コネクタ６にオスコネクタ１を接続する。アダプタ１００は、オスコネクタ１に対して依然として第１位置にある。

次いで、アダプタ１００をオスコネクタ１に向かって押し込む。図１４Ｂに示されているように、アダプタ１００が第１位置にあるとき、アダプタ１００の第２突起１１２に設けられたテーパ面１１２ａ（図１２Ａ参照）が、レバー３０の爪３２の傾斜面３２ａ（図２Ｅ、図２Ｆ、図４Ａ、図４Ｂ参照）に対向している。アダプタ１００をフード２０内に押し込むと、テーパ面１１２ａは、爪３２がオスルアー１０から離れるようにレバー３０を弾性的に変位（揺動）させる。アダプタ１００をフード２０内に更に押し込むと、爪３２は、アダプタ１００の第２突起１１２上を摺動する。爪３２が第２突起１１２を通過し終えると、コネクタ本体２のベース１５が弾性回復し、爪３２は、アダプタ１００の第２突起１１２と拡径部１０５との間の周方向に連続した環状溝内に嵌入する。

図１６Ａは、この状態を示した斜視図である。図１６Ｂ及び図１６Ｃはその断面図である。図１６Ｂの断面は、図４Ｂ及び図１４Ｂの断面と同じであり、図１６Ｃの断面は、図４Ｃ及び図１４Ｃの断面と同じである。

図１６Ｂに示されているように、オスコネクタ１の爪３２は、アダプタ１００の第２突起１１２に係合している。従って、アダプタ１００が第１位置にあるときと同様に、オスコネクタ１とアダプタ１００とを単に反対向きに引っ張っても、両者を分離することはできない。本発明では、このように、爪３２が第２突起１１２に係合した状態でオスコネクタ１に接続されたアダプタ１００のオスコネクタ１に対する位置を「第２位置」という。

上述したように、第２突起１１２の第１突起１１１側の端縁にテーパ面１１２ａが形成されているので、作業者は、アダプタ１００をオスコネクタ１に対して単に押し込むだけで、爪３２が第１突起１１１に係合した状態（図１４Ａ〜図１４Ｃ参照）から第２突起１１２に係合した状態（図１６Ａ〜図１６Ｃ参照）へ容易に移行させることができる。

図１６Ｃに示されているように、カバー４の頭部４１の凸部４４がアダプタ１００の第１領域１１６内に嵌入している。アダプタ１００の肩部１１９から突出した環状リブ１１９ａが、頭部４１の上面４３に当接している。環状リブ１１９ａは上面４３を下方に押し、その結果、カバー４０の外周壁４５は上下方向に弾性的に圧縮変形されている。

カバー４の頭部４１が環状リブ１１９ａに当接した状態で、オスルアー１０は頭部４１を貫通し、第１領域１１６内に挿入される。オスルアー１０の先端１０ａは頭部４１より上に突出し、オスルアー１０の横孔１２は、第１領域１１６内に露出する。従って、オスルアー１０の流路１１と、アダプタ１００の貫通孔１０３とが連通する。

アダプタ１００の環状リブ１１９ａとカバー４の頭部４１の上面４３とは上下方向に圧接されて、両者間に液密なシールが形成される。環状リブ１１９ａの先端と頭部４１の上面４３との当接面積は極めて小さく、これは両者間のシール性を向上させる。

図１６Ｂ及び図１６Ｃに示されているように、アダプタ１００の第１突起１１１及び第２突起１１２は、オスコネクタ１のフード２０内に挿入されている。拡径部１０５は、フード２０よりも半径方向の外側に突出し、フード２０の先端２０ａに上下方向に当接している。従って、拡径部１０５は、アダプタ１００が第２位置よりも更に深くフード２０内に挿入されるのを防止している。これは、アダプタ１００がカバー４を必要以上に大きく変形させてカバー４が破損するのを防止するのに有利である。

２．３．プライミング
アダプタ１００を第２位置（図１６Ａ〜図１６Ｃ参照）に移動させたことにより、オスルアー１０の横孔１２が開放される。従って、オスコネクタ１にプライミング液を導入することができる。プライミング液の導入方法は任意である。

本実施形態１のプライミング作業では、図１７Ａ及び図１７Ｂに示すドレーンコネクタ１５０を用いることが好ましい。図１７Ａはドレーンコネクタ１５０の斜視図、図１７Ｂはその断面図である。

ドレーンコネクタ１５０は、中空の円筒形状を有する管状部１５１を備える。図１７Ａに示されているように、管状部１５１の外周面から、アーム１５５及びハンドル１５７が突出している。アーム１５５は、その一端（固定端）が管状部１５１に固定された片持ち支持構造を有している。アーム１５５と管状部１５１とで略三角形が形成されるように、アーム１５５は略「Ｌ」字状に屈曲され、アーム１５５の他端（自由端）１５５ａは、管状部１５１に接近している。ハンドル１５７は、略「Ｕ」字形状を有し、その両端が管状部１５１に固定されている。管状部１５１の両端には、それぞれ雄ネジ１５３ａ，１５３ｂが設けられている。

図１７Ｂに示されているように、管状部１５１には、その両端を繋ぐ貫通孔（流路）１５２が形成されている。貫通孔１５２の内周面の両端近傍部分には、管状部１５１の端に近づくにしたがって内径が大きくなるテーパ面（いわゆるメステーパ面）１５４ａ，１５４ｂが設けられている。

管状部１５１の一方の端に設けられた第１雄ネジ１５３ａ及び第１メステーパ面１５４ａと、他方の端に設けられた第２雄ネジ１５３ｂ及び第２メステーパ面１５４ｂとは、いずれもアダプタ１００に設けられた雌ネジ１２６及びオスルアー１２１の外周面（オステーパ面）１２２に適合する。例えば、雄ネジ１５３ａ，１５３ｂ及びメステーパ面１５４ａ，１５４ｂは、ＩＳＯ５９４−２に規定されたロック式コネクタに準拠していてもよい。

以下に、ドレーンコネクタ１５０を用いた代表的な２通りのプライミング方法を説明する。

［第１プライミング方法］
図１８Ａは第１プライミング方法を説明する斜視図、図１８Ｂはその断面図である。図１８Ａ及び図１８Ｂに示されているように、オスコネクタ１に第２位置で装着されたアダプタ１００（図１６Ａ〜図１６Ｃ参照）に、ドレーンコネクタ１５０（図１７Ａ及び図１７Ｂ参照）が取り付けられている。即ち、アダプタ１００のオスルアー１２１がドレーンコネクタ１５０の貫通孔１５２内に挿入され、アダプタ１００の雌ネジ１２６とドレーンコネクタ１５０の雄ネジ１５３ａとが螺合されている。ドレーンコネクタ１５０のメステーパ面１５４ａは、オスルアー１２１の外周面１２２に形成されたオステーパ面と、径及びテーパ角度が一致する。従って、オスルアー１２１とドレーンコネクタ１５０の管状部１５１とは液密に接続される。

ドレーンコネクタ１５０の、アダプタ１００に接続されていない側の端（雄ネジ１５３ｂ側の端）を下に向けて、ドレーンコネクタ１５０を、プライミング液を回収する容器に固定する。例えば、容器の上方に向いた開口を取り囲む壁の上端を、アーム１５５の自由端１５５ａと管状部１５１とで挟むようにして、容器の壁にドレーンコネクタ１５０を取り付けることができる。この状態で、チューブ９からプライミング液を導入する。プライミング液は、チューブ９、ルアー本体７の流路７１、オスルアー１０の流路１１、アダプタ１００の貫通孔１０３、ドレーンコネクタ１５０の貫通孔１５２を順に通って、容器内に流れ出る。プライミング液がこれらの部材に流入することにより、それ以前に存在していた空気はドレーンコネクタ１５０から外界に排出される。上述したように、アダプタ１００の環状リブ１１９ａとカバー４の上面４３との間に液密なシールが形成されているので（図１６Ｃ参照）、両者間からプライミング液が漏れ出ることはない。

チューブ９からドレーンコネクタ１５０までの内部がプライミング液で満たされると、チューブ９をクランプ（図示せず）等で押し潰してその流路を閉じる。そして、オスコネクタ１の一対の操作部３５に互いに接近する向きの力Ｆ（図２Ｆ参照）を印加して、レバー３０を回動させ、爪３２と第２突起１１２との係合を解除する。この状態でオスコネクタ１とアダプタ１００とを互いに離れる向きに引っ張ると、ドレーンコネクタ１５０が取り付けられたアダプタ１００をオスコネクタ１から分離させることができる。アダプタ１００が分離されると、カバー４は、自身の弾性復元力によって直ちに伸張して初期状態（図８Ｂ参照）に復帰し、頭部４２の内周面はオスルアー１０の横孔１２の開口を塞ぐ。従って、オスルアー１０の流路１１及び横孔１２内を満たすプライミング液が外界に漏れ出ることはない。操作部３５への外力を解除すれば、レバー３０は初期状態に弾性的に復帰する。

かくして、プライミング作業は終了する。上述したプライミング作業を、体外循環回路を構成する脱血ライン及び返血ラインのそれぞれについて行う。

その後、上述したように、オスコネクタ１をメスコネクタ８００に接続して（図１１Ａ、図１１Ｂ参照）体外循環回路を形成する。メスコネクタ８００及びこれに接続されたチューブは別途プライミング作業が完了している。

以上のように、オスコネクタ１にアダプタ１００を第２位置で接続した状態で、オスコネクタ１に対してプライミング液を導入することができる。

アダプタ１００は、オスコネクタ１に対して、第１位置及び第２位置の２通りの位置で接続することができる。病院等の医療機関には、アダプタ１００は第１位置でオスコネクタ１に接続され且つ滅菌された状態で納品される。医療機関では、プライミングを行う直前に、第１位置にあるアダプタ１００をオスコネクタ１に押し込んで第２位置に移動させる。アダプタ１００をオスコネクタ１に単に押し込むだけでプライミング可能な状態になる。オスコネクタ１にアダプタ１００を装着する作業は不要である。従って、操作は極めて簡単である。また、アダプタ１００をオスコネクタ１とは別に予め準備し保管しておく必要がない。

アダプタ１００は予めオスコネクタ１に第１位置で接続されているので、アダプタ１００をオスコネクタ１に装着することによってオスルアー１０の流路１１内に細菌が混入する可能性は極めて低い。

従って、アダプタ１００を用いることにより、カバー４付きのレバーロック式オスコネクタ１のオスルアー１０にプライミング液を簡単且つ衛生的に導入することができる。

また、アダプタ１００を第１位置でオスコネクタ１に接続しても、カバー４は実質的に変形していない初期状態のままである。従って、アダプタ１００を第１位置でオスコネクタ１に接続した状態で長期間放置しても、カバー４の外周壁４５の弾性復元力は低下しない。これは、体外循環中にオスコネクタ１がメスコネクタ８００から意図せずに分離したとしても、カバー４が直ちに初期状態に復帰してオスルアー１０の流路を閉じるというカバー４の機能を確保するのに有利である。

アダプタ１００の第２端部１０２に接続したドレーンコネクタ１５０を利用して、アダプタ１００及びオスコネクタ１を、プライミング液を排出する容器に安定的に固定することができる。

上記の第１プライミング方法では、ドレーンコネクタ１５０の雄ネジ１５３ａ側端をアダプタ１００に接続したが、雄ネジ１５３ｂ側端をアダプタ１００に接続してもよい。また、ドレーンコネクタ１５０を用いずに、アダプタ１００のオスルアー１２１からプライミング液を流出させてもよい。

［第２プライミング方法］
図１９は、第２プライミング方法を実施する直前の状態を示した斜視図である。第２プライミング方法では、図１６Ａ〜図１６Ｃに示したアダプタ１００を第２位置で接続したオスコネクタ１を２組用意する。以下の説明で参照する図では、ドレーンコネクタ１５０の両側に配された部材を区別するために、雄ネジ１５３ｂ側の部材を示す符号には「’」（ダッシュ）を付してある。「’」付きの符号が付された部材は、「’」なしで同じ符号が付された部材と同じである。

例えば、オスコネクタ１及びこれに接続されたチューブ９は体外循環回路の脱血ラインを構成し、オスコネクタ１’及びこれに接続されたチューブ９’は体外循環回路の返血ラインを構成するものであってもよい。

次いで、図２０Ａに示すように、ドレーンコネクタ１５０の雄ネジ１５３ａ側端にオスコネクタ１が接続されたアダプタ１００を接続し、ドレーンコネクタ１５０の雄ネジ１５３ｂ側端にオスコネクタ１’が接続されたアダプタ１００’を接続する。図２０Ｂは、図２０Ａの断面図である。ドレーンコネクタ１５０に設けられた雄ネジ１５３ａ及びメステーパ面１５４ａは、アダプタ１００の雌ネジ１２６及びオステーパ面１２２に適合し、ドレーンコネクタ１５０に設けられた雄ネジ１５３ｂ及びメステーパ面１５４ｂは、アダプタ１００’の雌ネジ１２６’及びオステーパ面１２２’に適合する。従って、オスルアー１２１とドレーンコネクタ１５０とオスルアー１２１’とが液密に接続される。

この状態で、チューブ９からプライミング液を導入する。プライミング液は、チューブ９、ルアー本体７の流路７１、オスルアー１０の流路１１、アダプタ１００の貫通孔１０３、ドレーンコネクタ１５０の貫通孔１５２、アダプタ１００’の貫通孔１０３’、オスルアー１０’の流路１１’、ルアー本体７’の流路７１’、チューブ９’を順に通って、チューブ９’の末端（図示せず）から外界に流出する。プライミング液がこれらの部材に流入することにより、それ以前に存在していた空気はチューブ９’の末端から外界に排出される。

一方のチューブ９から他方のチューブ９’までの内部がプライミング液で満たされると、チューブ９，９’をクランプ（図示せず）等で押し潰してその流路を閉じる。そして、オスコネクタ１の一対の操作部３５に互いに接近する向きの力Ｆ（図２Ｆ参照）を印加して、レバー３０を回動させ、爪３２と第２突起１１２との係合（図１６Ｂ参照）を解除する。この状態でオスコネクタ１とアダプタ１００とを互いに離れる向きに引っ張ると、ドレーンコネクタ１５０が取り付けられたアダプタ１００をオスコネクタ１から分離させることができる。アダプタ１００が分離されると、カバー４は、自身の弾性復元力によって直ちに伸張して初期状態（図８Ｂ参照）に復帰し、頭部４２の内周面はオスルアー１０の横孔１２の開口を塞ぐ。従って、オスルアー１０の流路１１及び横孔１２内を満たすプライミング液が外界に漏れ出ることはない。操作部３５への外力を解除すれば、レバー３０は初期状態に弾性的に復帰する。同様にして、アダプタ１００’をオスコネクタ１’から分離する。

かくして、プライミング作業は終了する。

その後、上述したように、オスコネクタ１，１’をそれぞれ別のメスコネクタ８００に接続して（図１１Ａ、図１１Ｂ参照）体外循環回路を形成する。メスコネクタ８００及びこれに接続されたチューブは別途プライミング作業が完了している。

第１プライミング方法と同様に、本第２プライミング方法でも、アダプタ１００を用いることにより、カバー４付きのレバーロック式オスコネクタ１のオスルアー１０にプライミング液を簡単且つ衛生的に導入することができる。また、アダプタ１００を第１位置でオスコネクタ１に装着した状態で長期間放置しても、カバー４の外周壁４５の弾性復元力は低下しないから、カバー４の機能を確保することができる。

更に、第２プライミング方法では、ドレーンコネクタ１５０を介してオスコネクタ１とオスコネクタ１’とを連通させる。従って、例えば脱血ラインを構成するオスコネクタ１及び返血ラインを構成するオスコネクタ１’に対して、同時にプライミング液を導入することができる。従って、プライミング作業を効率よく行うことができる。

上記の第１及び第２のプライミング方法では、アダプタ１００（１００’）を第１位置から第２位置に移動させた後に、アダプタ１００（１００’）にドレーンコネクタ１５０を接続した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、アダプタ１００（１００’）が第１位置ある状態（図１５参照）でアダプタ１００（１００’）にドレーンコネクタ１５０を接続し、その後、アダプタ１００（１００’）を第２位置に移動させてもよい。

（実施形態２）
１．アダプタの構成
図２１Ａは、本発明の実施形態２にかかるアダプタ２００の斜視図である。図２１Ｂは、アダプタ２００の側面図、図２１Ｃはアダプタ２００の断面斜視図である。図２１Ｃにおいて、一点鎖線２００ａは、第１端部２０１と第２端部２０２とを結ぶアダプタ２００の中心軸である。以下の説明の便宜のため、中心軸２００ａに直交する方向を「半径方向」または「径方向」、中心軸２００ａ周りに回転する方向を「周方向」という。半径方向において、中心軸２００ａに近い側を「内側」、中心軸２００ａから遠い側を「外側」という。

図２１Ｃに示されているように、実施形態１のアダプタ１００と同様に、アダプタ２００には、中心軸２００ａに沿ってアダプタ２００を貫通する貫通孔（流路）２０３が設けられている。貫通孔２０３は、アダプタ２００の第１端部２０１及び第２端部２０２で開口し、第１端部２０１と第２端部２０２とを連通させている。

本実施形態２のアダプタ２００は、実施形態１のアダプタ１００（図１２Ａ〜図１２Ｄ）において、拡径部１０５に対して第２端部１０２側の構成を、第１端部１０１側の構成と同じにしたものに相当する。即ち、本実施形態２のアダプタ２００では、第１端部２０１及び第２端部２０２は、実施形態１のアダプタ１００の第１端部１０１と同じ構成を有している。アダプタ２００は、中央の拡径部１０５に対して対称である。本実施形態２のアダプタ２００において、実施形態１のアダプタ１００を構成する要素と同じ要素には同一の符号を付してそれらについての詳細な説明を省略する。但し、拡径部１０５に対して第１端部２０１側の要素と第２端部２０２側の要素とを区別するために、第２端部２０２側の要素を示す符号には「’」（ダッシュ）を付してある。「’」付きの符号が付された要素は、「’」なしで同じ符号が付された要素と同じである。

アダプタ２００は、実施形態１のアダプタ１００と同じ材料を用いて、射出成形法等により一部品として一体的に作成することができる。

２．アダプタの使用方法
２．１．オスコネクタに対するアダプタの第１位置での接続
本実施形態では、アダプタ２００の両端部２０１，２０２に、オスコネクタ１をそれぞれ接続する。図２２は、接続する直前の状態を示した斜視図である。以下の説明で参照する図において、アダプタ２００の両側に配された部材を区別するために、第２端部２０２側の部材を示す符号には「’」（ダッシュ）を付してある。「’」付きの符号が付された部材は、「’」なしで同じ符号が付された部材と同じである。図２２に示すように、この段階では、オスコネクタ１，１’にはネジロック型コネクタ６及びチューブ９は接続されていない。

図２２の状態から、実施形態１と同様に、第１端部２０１とオスコネクタ１とを接続し、第２端部２０２とオスコネクタ１’とを接続する。図２３Ａは、接続後の状態を示した斜視図である。図２３Ｂ及び図２３Ｃはその断面図である。図２３Ｂの断面は、図４Ｂの断面と同じであり、図２３Ｃの断面は、図４Ｃの断面と同じである。図２３Ａ〜図２３Ｃに示した第１端部２０１とオスコネクタ１との接続状態及び第２端部２０１とオスコネクタ１’との接続状態は、いずれも実施形態１で説明した第１端部１０１とオスコネクタ１との第１位置での接続状態（図１４Ａ〜図１４Ｃ）と同じである。即ち、オスコネクタ１，１’の爪３２，３２’が、アダプタ２００の第１突起１１１，１１１’に係合している。オスルアー１０，１０’の流路１１，１１’は、カバー４，４’の頭部４１，４１’によって封止されている。

アダプタ２００の両端にオスコネクタ１，１’を第１位置で接続した状態（図２３Ａ〜図２３Ｃ参照）で、オスコネクタ１，１’及びアダプタ２００を滅菌し、包装する。この滅菌及び包装は、オスコネクタ１，１’の製造販売業者が行うことができる。アダプタ２００を介して連結されたオスコネクタ１，１’は、滅菌包装された状態で、病院等の医療機関に納品され保管される。

実施形態１でのアダプタ１００の第１位置でのオスコネクタ１に対する接続に関する説明は、本実施形態２においても同様に適用される。

２．２．プライミング
医療機関で体外循環回路を形成する際に、オスコネクタ１，１’及びアダプタ２００を収納する包装が破かれて、アダプタ２００が第１位置で接続されたオスコネクタ１，１’（図２３Ａ〜図２３Ｃ参照）が取り出される。

図２４に示すように、オスコネクタ１，１’に、チューブ９，９’の末端に取り付けられたネジロック型コネクタ６，６’を接続する。例えば、チューブ９は体外循環回路の脱血ラインを構成し、チューブ９’は体外循環回路の返血ラインを構成するものであってもよい。アダプタ２００は、オスコネクタ１，１’に対して依然として第１位置にある。

次いで、アダプタ２００をオスコネクタ１，１’に向かって押し込む。具体的には、オスコネクタ１とオスコネクタ１’とを把持して、互いに相手方に向かう力を加える。実施形態１で説明したのと同様に、レバー３０，３０’は弾性的に変位（揺動）して、爪３２，３２’は、アダプタ２００の第２突起１１２，１１２’と拡径部１０５との間の周方向に連続した環状溝内に嵌入する。

図２５Ａは、この状態を示した斜視図である。図２５Ｂ及び図２５Ｃはその断面図である。図２５Ｂの断面は、図４Ｂ及び図２３Ｂの断面と同じであり、図２５Ｃの断面は、図４Ｃ及び図２３Ｃの断面と同じである。図２５Ａ〜図２５Ｃに示した第１端部２０１とオスコネクタ１との接続状態及び第２端部２０２とオスコネクタ１’との接続状態は、実施形態１で説明した第１端部１０１とオスコネクタ１との第２位置での接続状態（図１６Ａ〜図１６Ｃ）と同じである。即ち、オスコネクタ１，１’の爪３２，３２’が、アダプタ２００の第２突起１１２，１１２’に係合している。カバー４０，４０’の外周壁４５，４５’は上下方向に弾性的に圧縮変形されている。オスルアー１０，１０’の流路１１，１１’と、アダプタ２００の貫通孔２０３とが連通している。アダプタ２００の環状リブ１１９ａ，１１９ａ’とカバー４，４’の頭部４１，４１’の上面との間に液密なシールが形成されている。

実施形態１でのアダプタ１００の第２位置でのオスコネクタ１に対する接続に関する説明は、本実施形態２においても同様に適用される。

アダプタ２００を第２位置（図２５Ａ〜図２５Ｃ参照）に移動させたことにより、オスルアー１０，１０’の横孔１２，１２’が開放される。従って、オスコネクタ１，１’にプライミング液を導入することができる。

プライミング作業は、実施形態１で説明した第２プライミング方法と同様に行うことができる。即ち、図２５Ａ〜図２５Ｃの状態において、チューブ９からプライミング液を導入する。プライミング液は、チューブ９、ルアー本体７の流路７１、オスルアー１０の流路１１、アダプタ２００の貫通孔２０３、オスルアー１０’の流路１１’、ルアー本体７’の流路７１’、チューブ９’を順に通って、チューブ９’の末端（図示せず）から外界に流出する。プライミング液がこれらの部材に流入することにより、それ以前に存在していた空気はチューブ９’の末端から外界に排出される。

一方のチューブ９から他方のチューブ９’までの内部がプライミング液で満たされると、チューブ９，９’をクランプ（図示せず)）等で押し潰してその流路を閉じる。そして、実施形態１と同様に、オスコネクタ１，１’をアダプタ２００からそれぞれ分離する。アダプタ２００が分離されると、カバー４，４’は、自身の弾性復元力によって直ちに伸張して初期状態（図８Ｂ参照）に復帰し、オスルアー１０，１０’の横孔１２，１２’の開口を塞ぐ。従って、オスルアー１０，１０’からプライミング液が外界に漏れ出ることはない。

かくして、プライミング作業は終了する。

その後、実施形態１と同様に、オスコネクタ１，１’をそれぞれ別のメスコネクタ８００に接続して（図１１Ａ、図１１Ｂ参照）体外循環回路を形成する。メスコネクタ８００及びこれに接続されたチューブは別途プライミング作業が完了している。

実施形態１と同様に、本実施形態２でも、アダプタ２００を用いることにより、カバー４，４’付きのレバーロック式オスコネクタ１，１’のオスルアー１０，１０’にプライミング液を簡単且つ衛生的に導入することができる。また、アダプタ２００を第１位置でオスコネクタ１，１’に装着した状態で長期間放置しても、カバー４，４’の外周壁４５，４５’の弾性復元力は低下しないから、カバー４，４’の機能を確保することができる。

更に、アダプタ２００を介してオスコネクタ１とオスコネクタ１’とを連通させる。従って、例えば脱血ラインを構成するオスコネクタ１及び返血ラインを構成するオスコネクタ１’に対して、同時にプライミング液を導入することができる。従って、プライミング作業を効率よく行うことができる。実施形態１の第２プライミング方法を行うためには、２つのアダプタ１００，１００’とドレーンコネクタ１５０が必要であり、更に、アダプタ１００，１００’とドレーンコネクタ１５０とを接続する作業が必要である。これに対して、本実施形態２ではアダプタ２００という単一の部品だけで、簡単な作業手順で、２つのオスコネクタ１，１’に対して同時にプライミング液を導入することができる。

上記の実施形態２では、アダプタ２００の両端にオスコネクタ１，１’を接続した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、アダプタ２００の第１端部２０１にオスコネクタ１を接続し、第２端部２０２にはオスコネクタ１’を接続しない状態で、実施形態１の第１プライミング方法と同様にしてオスコネクタ１に対してプライミングを行うことができる。

上記の実施形態２のアダプタ２００では、第１端部２０１の筒状部１１０の基端１１３と第２端部２０２の筒状部１１０’の基端１１３’とが一致し、第１端部２０１と第２端部２０２とに共通する単一の拡径部１０５が設けられていた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、筒状部１１０の基端１１３と筒状部１１０’の基端１１３’とが中心軸２００ａ方向に離間していてもよい。この場合、基端１１３と基端１１３’とは、貫通孔２０３が設けられた中空部材で連結される。基端１１３及び基端１１３’の各位置に拡径部（第１拡径部及び第２拡径部）１０５が設けられる。第１拡径部１０５を含む第１端部２０１と第２拡径部１０５を含む第２端部２０２とは対称に構成される。

上記の実施形態１，２は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態１，２に限定されず、適宜変更することができる。

アダプタ１００，２００が第２位置にあるときに、アダプタ１００，２００の筒状部１１０とカバー４との間に液密なシールがどのように形成されるかは、任意に変更可能である。

例えば、アダプタ１００，２００の肩部１１９（１１９’）から突出した環状リブ１１９ａ（１１９’）を省略することができる。この場合にも、アダプタ１００，２００が第２位置にあるときに肩部１１９（１１９’）がカバー４の頭部４１に直接圧接されることにより、両者間に液密なシールを形成することが可能である。

カバー４の頭部４１に水平方向に平行な上面４３が形成されていなくてもよい。頭部４１の上方を向いた面が球面や円錐面等であっても、このような面と筒状部１１０との間に液密なシールを形成することは可能である。

上記の実施形態では、アダプタ１００，２００をオスコネクタ１に第１位置及び第２位置で接続したときに、カバー４の頭部４１が筒状部１１０の第２領域１１７及び第３領域１１８内に挿入されたが、この第２領域１１７及び第３領域１１８を省略してもよい。この場合、アダプタ１００，２００が第２位置にあるとき、筒状部１１０の先端とカバー４の頭部４１との間で液密なシールが形成される。

アダプタ１００，２００の拡径部１０５を省略してもよい。

アダプタ１００，２００の第２突起１１２のテーパ面１１２ａを省略してもよい。テーパ面１１２ａが形成されていなくても、爪３２が傾斜面３２ａを備えていれば、アダプタ１００，２００をオスコネクタ１に向かって押し込むだけで、アダプタ１００，２００を第１位置から第２位置に移動させることができる。

アダプタ１００の外筒１２５の内周面に設けられた雌ネジ１２６を省略してもよい。更に、外筒１２５を省略してもよい。第２端部１０２にオスルアー１２１が設けられていれば、当該オスルアー１２１のオステーパ面１２２とドレーンコネクタ１５０のメステーパ面１５４ａ，１５４ｂとを液密に接続することができる。

オスコネクタ１の構成は、上記の実施形態に限定されない。本発明のアダプタは、メスコネクタに係合する爪が設けられたレバーを備える任意のレバーロック式オスコネクタに適用可能である。

例えば、オスコネクタのフード２０は、特許文献１に記載されたような、内径及び外径が中心軸２ａ方向において一定である円筒形状を有していてもよい。爪３２が設けられたレバー３０の数は２つである必要はなく、例えば特許文献２，３に記載されたように１つであってもよい。

オスルアー１０の流路１１は、特許文献１に記載されているように、オスルアー１０の先端１０ａで上方に向かって開口していてもよい。

カバー４の頭部４１に設けられた貫通孔４２は、初期状態においてオスルアー１０の先端１０ａを露出させるように開口している必要はない。例えば、特許文献４，５に記載されているように、貫通孔４２がマイナス字（「−」）状のスリット（切り込み）であってもよい。この場合、オスルアー１０が貫通孔４２を貫通していない初期状態では、貫通孔４２を構成するスリットは閉じられる。

カバー４の外周壁４５は、オスルアー１０の長手方向に沿って弾性的に圧縮変形可能であれば、その形状は任意である。例えば、外周壁４５は、特許文献４に記載されたような蛇腹形状を有していてもよい。

上記の実施形態では、オスコネクタが、血液の体外循環回路に用いられる場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明のアダプタが接続されるオスコネクタは、体外循環回路以外の、例えば輸液を行う際に用いられる輸液セットを構成するオスコネクタであってもよい。

本発明の利用分野は、制限はなく、医療において、カバー付きのレバーロック式オスコネクタにプライミング液を導入する必要がある任意の分野に利用することができる。特に、体外血液循環や輸液等の、患者の血管に何らかの液体（血液、輸液など）を注入する必要がある分野に好ましく利用することができる。

１ オスコネクタ
２ コネクタ本体
１０ オスルアー（オス部材）
１１ オスルアーの流路
２０ フード
３０ レバー（ロックレバー）
３２ 爪
４ カバー
４１ 頭部
４５ 外周壁
１００，２００ アダプタ
１０１，２０１ 第１端部
１０２，２０２ 第２端部
１０３，２０３ アダプタの貫通孔
１０５ 拡径部
１１０，１１０’ 筒状部
１１１，１１１’ 第１突起
１１２，１１２’ 第２突起
１１２ａ テーパ面
１１３，１１３’ 筒状部の基端
１１９ａ 環状リブ
１２１ アダプタのオスルアー
１２２ オスルアーの外周面（オステーパ面）
１２５ 外筒
１２６ 雌ネジ（螺合構造）

Claims (10)

1. オスコネクタに対して着脱可能なアダプタであって、
   前記オスコネクタは、流路が形成された棒状のオス部材と、前記オス部材に対向して配されたロックレバーと、前記ロックレバーから前記オス部材に向かって突出した爪と、前記オス部材を収納するカバーとを備え、
   前記爪が前記オス部材から離れるように前記ロックレバーは弾性的に揺動可能であり、
   前記カバーは、前記オス部材の長手方向に沿って弾性的に圧縮変形可能な外周壁と、前記外周壁の一端に設けられた頭部とを備え、前記外周壁が圧縮変形したとき前記オス部材の先端が前記頭部から突出するように構成され、
   前記アダプタは第１端部と第２端部とを備え、
   前記アダプタには、前記アダプタを貫通し且つ前記第１端部と前記第２端部とを連通させる貫通孔が設けられており、
   前記第１端部は、前記貫通孔が設けられた中空の筒状部を備え、
   前記筒状部の外周面に、第１突起と、前記第１突起に対して前記筒状部の基端側の第２突起とが設けられており、
   前記アダプタは、前記オスコネクタの前記爪が前記第１突起に係合した第１位置と、前記オスコネクタの前記爪が前記第２突起に係合した第２位置とで、前記オスコネクタに接続することができ、
   前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記オス部材の前記流路は前記カバーにより封止され、
   前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記アダプタが前記カバーの前記外周壁を圧縮変形させ、前記オス部材の前記流路は前記アダプタの前記貫通孔と連通し、
   前記アダプタの前記第２端部は、前記第１端部と対称に構成されていることを特徴とするアダプタ。
2. 前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記筒状部と前記カバーとの間に液密なシールが形成される請求項１に記載のアダプタ。
3. 前記筒状部は、前記貫通孔を取り囲む環状リブを備え、
   前記液密なシールは、前記環状リブの先端と前記カバーの前記頭部とが当接することにより形成される請求項２に記載のアダプタ。
4. 前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記カバーの前記外周壁は実質的に圧縮変形されていない請求項１〜３のいずれか一項に記載のアダプタ。
5. 前記筒状部の基端に、前記第１突起及び前記第２突起より半径方向に突出した拡径部を更に備える請求項１〜４のいずれか一項に記載のアダプタ。
6. 前記オスコネクタは、前記オス部材を取り囲む筒状のフードを更に備え、
   前記アダプタが前記第２位置で前記オスコネクタに接続されているとき、前記拡径部は、前記フードの先端に当接する請求項５に記載のアダプタ。
7. 前記第１突起及び前記第２突起は、周方向に連続する環状の突起である請求項１〜６のいずれか一項に記載のアダプタ。
8. 前記第２突起は、その前記第１突起側の端縁に、前記第１突起に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面を備える請求項１〜７のいずれか一項に記載のアダプタ。
9. 請求項１〜８のいずれか一項に記載のアダプタと前記オスコネクタとを備えたアダプタ付きオスコネクタ。
10. 前記アダプタが前記第１位置で前記オスコネクタに接続された状態で滅菌され包装されている請求項９に記載のアダプタ付きオスコネクタ。

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