JP6578728B2 - 高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建設機械、産業機械などの構造用部材に使用する高強度鋼板とその製造方法に関するもので、特に、高い降伏強度と引張強度、かつ、靭性及び溶接性に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法に関するものである。
建設機械の一例であるクレーンのブームは、近年の建設対象物の高層化に伴い、より長尺化、大型化が進んでいる。そのため、ブーム自体の軽量化及び吊上げ運搬容量の拡大を図るために、素材となる鋼板に対し、より高い降伏強度と引張強度が求められている。
鋼板が高強度化することにより、部材板厚を薄肉化でき、軽量化が可能となる他、薄肉化せずに高強度鋼板を適用することで、吊上げ運搬容量を拡大することもできる。また、部材や部位ごとに板厚を最適化し、軽量化と吊上げ運搬容量の最適化を図ることも可能である。
このような方法を採用するにあたり、鋼板に求められる機械的特性は、第一に、降伏強度、引張強度、伸びといった機械的性質である。具体例として、引張強度が980MPa級の鋼板では、降伏強度が960MPa以上、引張強度が980MPa以上、全伸びが12%以上などと規格されている。また、氷点下での使用環境も想定されるため、氷点下における高い靱性が求められる。
これまでは、高強度化のために、鋼板にTiやNbなどを多量に添加し、これの析出強化を活用していた。例えば、特許文献1〜3に記載の鋼板では、いずれも、Tiの析出強化を活用するために、Ti添加量を多くしているが、析出強化を十分に活用するため、0.12%以上のTi添加と、Tiの溶体化のため、1250℃以上のスラブの高温加熱が必須となっている。
しかし、多量のTi添加と析出強化を活用した高強度鋼板では、低温での靱性に劣る場合があり、構造用部材としては適さない。また、スラブの高温加熱を必要とする場合、高温加熱に対応した加熱炉が限られる他、高温加熱する製造機会を特別に設ける必要があるなど、製造コスト増大の問題がある。
そこで、析出強化ではなく、組織強化を活用する高強度鋼板として、熱間圧延後、鋼板を再加熱し急冷する焼入れ処理(RQ処理)を行い、それを焼戻すことで、靱性を改善する方法が採用される場合がある。また、圧延後、直ちに急冷(DQ処理)することで、再加熱後の焼入れを省略する直接焼入れ方法が適用される場合もある。
例えば、特許文献4〜6に記載の鋼板は、RQ処理鋼の例であり、成分組成とRQ処理条件を組み合わせることを特徴とする。特許文献7及び8は、DQ処理鋼の例である。いずれも、成分組成と加熱−圧延−冷却-熱処理条件の組み合わせを特徴とし、多くの場合、焼入れ処理後、焼戻し処理が行われる。
なお、焼戻し処理が適用される場合、多くは、Ac1点以下の温度で適用されるのが一般的であり、温度条件としては、特許文献5では570〜720℃、特許文献9では、650℃以下などと開示されている。
しかし、組織強化を活用する方法においても、特許文献4、7、及び、8に記載の鋼板では、強度が低く、建設機械用途として適さない。また、特許文献5に記載の鋼板では、通常、1回の焼入れ工程に対して2回の焼入れ工程を必要としており、工程が多いため製造コストが高いという問題がある。
さらに、特許文献6に記載の鋼板では、強度は十分ではあるものの、合金添加量が多く高コストである。さらに、溶接時の熱影響部の硬さと関係する、炭素等量(Ceq)、及び、溶接割れし易さの指標である、溶接割れ感受性組成(Pcm)が高く、部材製造時の溶接性に劣る問題がある。
特開平07−138638号公報 特開平05−230529号公報 特開平05−271865号公報 特開平06−145787号公報 特開平06−346144号公報 特許第4174041号公報 特開平10−195532号公報 特開2000−319726号公報
本発明は、従来技術が抱える問題に鑑み、高い降伏強度(以下「YP」ということがある。)と引張強度(以下「TS」ということがある。)を有し、かつ、靱性及び溶接性に優れる高強度熱延鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、成分組成、及び、熱延条件と後熱処理条件を最適化すれば、YPが960MPa以上、TSが980MPa以上、かつ、−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギー(以下「吸収エネルギー」ということがある。)が47J以上で、溶接性に優れる高強度熱延鋼板を得ることができることを知見し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]成分組成が、質量%で、
C :0.12%超、0.20%未満、
Si:0.25%以上、0.50%以下、
Mn:0.50%以上、1.20%未満、
P :0.0005%以上、0.020%以下、
S :0.0005%以上、0.010%以下、
Al:0.01%以上、0.07%以下、
N :0.0005%以上、0.0060%以下、
Nb:0.01%以上、0.04%以下、
Ti:0.005%以上、0.030%以下、
B :0.0005%以上、0.002%以下、
Cu:0.10%以上、0.40%以下、
Ni:0.10%以上、0.40%以下、
Cr:0.60%超、1.20%以下、
Mo:0.10%以上、0.40%以下、かつ、
残部:鉄及び不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、面積率で50%以上の焼戻しマルテンサイトを含む組織とし、さらに、
下記(1)式、(2)式、及び、(3)式で定義する値が、それぞれ、
free−Ti:0.0001%以上、
Ceq:0.50%以上、0.60%未満、及び、
Pcm:0.25%以上、0.30%以下
であり、
(i-1)降伏強度が960MPa以上で、引張強度が980MPa以上であり、
(i-2)−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギーが47J以上であり、かつ、
(i-3)板厚が3.5mm以上、10mm以下である
ことを特徴とする高強度熱延鋼板。
free−Ti=Ti−3.417×N ・・・(1)
Ti、及び、Nは、それぞれの元素の質量%
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5
+Mo/4+V/14 ・・・(2)
C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれの元素の質量%
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20
+Mo/15+V/10+5B ・・・(3)
C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及び、Bは、それぞれの元素の質量%
[2]前記成分組成が、さらに、質量%で、
V :0.001%以上、0.10%以下、
Ca:0.0005%以上、0.0040%以下、
Mg:0.0005%以上、0.0040%以下、
REM:0.0005%以上、0.0040%以下
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする前記[1]に記載の高強度熱延鋼板。
[3]前記[1]又は[2]に記載の高強度熱延鋼板を製造する製造方法であって、
(ii-1)前記[1]又は[2]に記載の成分組成のスラブを1160℃以上、1240℃未満に加熱し、
(ii-2)仕上げ圧延入側温度が950℃以上、1100℃未満、かつ、仕上げ圧延出側温度が880℃以上、940℃未満となる熱間圧延を行い、
(ii-3)熱延鋼板を、550℃以上、650℃未満で、コイル状に巻き取り、200℃以下まで冷却し、その後、
(ii-4)平板に成形し、所定の長さに切断し、次いで、
(ii-5)880℃以上、940℃未満に再加熱して焼入れし、
(ii-6)400℃以上、550℃未満で焼戻す
ことを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、降伏強度と引張強度が高く、かつ、溶接性及び靱性に優れる高強度熱延鋼板とその製造方法を提供することができる。
以下、本発明について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板(以下「本発明鋼板」ということがある。)は、成分組成が、質量%で、
C :0.12%超、0.20%未満、
Si:0.25%以上、0.50%以下、
Mn:0.50%以上、1.20%未満、
P :0.0005%以上、0.020%以下、
S :0.0005%以上、0.010%以下、
Al:0.01%以上、0.07%以下、
N :0.0005%以上、0.0060%以下、
Nb:0.01%以上、0.04%以下、
Ti:0.005%以上、0.030%以下、
B :0.0005%以上、0.002%以下、
Cu:0.10%以上、0.40%以下、
Ni:0.10%以上、0.40%以下、
Cr:0.60%超、1.20%以下、
Mo:0.10%以上、0.40%以下、かつ、
残部:鉄及び不可避的不純物からなり、
ミクロ組織が、面積率で50%以上の焼戻しマルテンサイトを含む組織とし、さらに、
下記(1)式、(2)式、及び、(3)式で定義する値が、それぞれ、
free−Ti:0.0001%以上、
Ceq:0.50%以上、0.60%未満、及び、
Pcm:0.25%以上、0.30%以下
であり、
(i-1)降伏強度が960MPa以上で、引張強度が980MPa以上であり、
(i-2)−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギーが47J以上であり、かつ、
(i-3)板厚が3.5mm以上、10mm以下である
ことを特徴とする高強度熱延鋼板。
free−Ti=Ti−3.417×N ・・・(1)
Ti、及び、Nは、それぞれの元素の質量%
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5
+Mo/4+V/14 ・・・(2)
C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれの元素の質量%
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20
+Mo/15+V/10+5B ・・・(3)
C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及び、Bは、それぞれの元素の質量%
また、本発明鋼板の成分組成は、さらに、質量%で、
V :0.001%以上、0.10%以下、
Ca:0.0005%以上、0.0040%以下、
Mg:0.0005%以上、0.0040%以下、
REM:0.0005%以上、0.0040%以下
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法(以下「本発明方法」ということがある。)は、本発明鋼板を製造する製造方法であって、
(ii-1)本発明鋼板の成分組成のスラブを1160℃以上、1240℃未満に加熱し、
(ii-2)仕上げ圧延入側温度が950℃以上、1100℃未満、かつ、仕上げ圧延出側温度が880℃以上、940℃未満となる熱間圧延を行い、
(ii-3)熱延鋼板を、550℃以上、650℃未満で、コイル状に巻き取り、200℃以下まで冷却し、その後、
(ii-4)平板に成形し、所定の長さに切断し、次いで、
(ii-5)880℃以上、940℃未満に再加熱して焼入れし、
(ii-6)400℃以上、550℃未満で焼戻す
ことを特徴とする。
まず、本発明鋼板の成分組成の限定理由、及び、上記(1)式、(2)式、及び(3)式で算出する数値の限定理由について説明する。なお、「%」は「質量%」を意味する。
[成分組成]
C:0.12%超、0.20%未満
Cは、鋼板の強度を確保する元素であり、焼入れ時の強度(硬さ)に最も寄与する元素である。0.12%以下では、所要の強度が得られないので、Cは0.12%超とする。好ましくは0.13%以上である。一方、0.20%以上では、強度が過大になるとともに延性が低下し、また、溶接性や靱性が劣化するので、Cは0.20%未満とする。好ましくは0.17%以下である。
Si:0.25%以上、0.50%以下
Siは、脱酸材及び強化元素として、さらにアーク溶接時の溶接部形状改善に寄与する元素である。0.25%未満では添加効果が十分に発現しないので、Siは0.25%以上とする。好ましくは0.28%以上である。一方、0.50%を超えると、鋼板表面にSiスケール(欠陥)が多量に発生し、表面性状が低下するとともに、靱性が低下する懸念があるので、Siは0.50%以下とする。好ましくは0.45%以下である。
Mn:0.50%以上、1.20%未満
Mnは、主として焼入れ性を高めるとともに、鋼板強度を高める元素である。0.50%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Mnは0.50%以上とする。好ましくは0.70%以上である。一方、1.20%以上では、靱性及び溶接性が劣化するので、Mnは1.20%未満とする。好ましくは1.10%未満、より好ましくは1.0%未満である。
P:0.0005%以上、0.020%以下
Pは、鋼板強度の向上に寄与する元素であるが、延性及び靱性を阻害する元素でもある。少ないほど好ましいが、0.0005%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、Pは0.0005%以上とする。好ましくは0.0010%以上である。一方、0.020%を超えると、延性及び靱性が著しく低下するので、Pは0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下である。
S:0.0005%以上、0.010%以下
Sは、MnSを生成して、延性、溶接性、靱性を阻害する元素である。少ないほど好ましいが、0.0005%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、Sは0.0005%以上とする。好ましくは0.0007%以上である。一方、0.010%を超えると、延性、溶接性、及び、靱性が著しく低下するので、Sは0.010%以下とする。好ましくは0.004%以下である。
Al:0.01%以上、0.07%以下
Alは、脱酸材として機能する元素である。0.01%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Alは0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上である。一方、0.07%を超えると、靱性と溶接性が低下するので、Alは0.07%以下とする。好ましくは0.04%以下である。
N:0.0005%以上、0.0060%以下
Nは、鋼中でBNを形成して固溶Bを低減し、焼入れ性を阻害する元素である。少ないほど好ましいが、0.0005%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、Nは0.0005%以上とする。好ましくは0.0010%以上である。一方、0.0060%を超えると、焼入れ性が劣化するので、Nは0.0060%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。
Nb:0.01%以上、0.04%以下
Nbは、再結晶を抑制し、結晶粒粗大化を抑制する元素である。結晶粒の微細化は、降伏強度の向上及び靱性の向上に寄与する。0.01%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Nbは0.01%以上とする。好ましくは0.015%以上である。一方、0.04%を超えると、靱性及び延性が低下するうえ、スラブ加熱時に全量が溶体化しない懸念があるので、Nbは0.04%以下とする。好ましくは0.035%以下である。
Ti:0.005%以上、0.030%以下
Tiは、Nbと同様、再結晶を抑制し、結晶粒粗大化を抑制する元素である。また、高温でTiNを形成してNを固定し無害化し、BNの析出を抑制して固溶Bの確保に寄与する元素である。0.005%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Tiは0.005%以上とする。好ましくは0.010%以上である。一方、0.030%を超えると、靱性、溶接性、及び、延性が低下するので、Tiは0.030%以下とする。好ましくは0.025%以下である。
B:0.0005%以上、0.002%以下
Bは、焼入れ性を著しく高める元素である。0.0005%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Bは0.0005%以上とする。好ましくは0.0007%以上である。一方、0.002%を超えると、添加効果が飽和し、また、靱性が低下するので、Bは0.002%以下とする。好ましくは0.0015%以下である。
Cu:0.10%以上、0.40%以下
Cuは、焼入れ性を高めて強度の向上に寄与する元素である。0.10%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Cuは0.10%以上とする。好ましくは0.20%以上である。一方、0.40%を超えると、靱性や溶接性が低下し、さらに、高温割れの懸念が高くなるので、Cuは0.40%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
Ni:0.10%以上、0.40%以下
Niは、焼入れ性を高め強度の向上に寄与するとともに、靱性の向上や、Cuによる粒界割れの抑制に寄与する元素である。0.10%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Niは0.10%以上とする。好ましくは0.20%以上である。一方、0.40%を超えると、高価な元素であることから鋼板価格が上昇するので、Niは0.40%以下とする。好ましくは0.35%以下である。
Cr:0.60%超、1.20%以下
Crは、焼入れ性を高め強度の向上に寄与するとともに、Cu、Niとの複合添加で耐食性の向上に寄与する元素である。また、焼戻し時の軟化を遅滞する作用をなす元素でもある。0.60%以下では、添加効果が十分に発現しないので、0.60%超とする。好ましくは0.80%以上である。一方、1.20%を超えると、溶接性や靱性が低下するので、Crは1.20%以下とする。好ましくは1.10%以下である。
Mo:0.10%以上、0.40%以下
Moは、焼入れ性を高め強度の向上に寄与するとともに、焼戻し時の軟化を遅滞する作用をなす元素である。0.10%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Moは0.10%以上とする。好ましくは0.15%以上である。一方、0.40%を超えると、高価な元素であることから鋼板価格が上昇するので、0.40%以下とする。好ましくは0.35%以下である。
本発明鋼板においては、鋼板の強度の向上に寄与するV、靱性の向上及び延性の低下の抑制に寄与するCa、Mg、及び、REMの1種又は2種以上を含有してもよい。
V:0.001%以上、0.10%以下
Vは、析出強化により強度の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Vは0.001%以上とする。好ましくは0.003%以上である。一方、0.10%を超えると、溶接性及び靱性が低下するので、Vは0.10%以下とする。好ましくは0.08%以下である。
Ca:0.0005%以上、0.0040%以下
Mg:0.0005%以上、0.0040%以下
REM:0.0005%以上、0.0040%以下
Ca、Mg、及び、REMは、非金属介在物を球状化して、靱性の向上及び延性の低下の抑制に寄与する元素である。Ca、Mg、及び、REMのいずれも、0.0005%未満では、添加効果が十分に発現しないので、いずれの元素も、0.0005%以上とする。好ましくは、いずれの元素も0.0008%以上である。
一方、いずれの元素も、0.0040%を超えると、介在物の粗大化と数の増加が顕著になり、靱性が低下するので、いずれの元素も0.0040%以下とする。好ましくは、いずれの元素も0.0035%以下である。
本発明鋼板の成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物である。なお、本発明鋼板は、上記元素の他、鋼原料から不可避的に混入する、Sn、As等を、本発明鋼板の特性を阻害しない範囲で、適宜の量を含有してもよい。
次に、本発明鋼板のミクロ組織と、組成特性及び機械特性を規定する指標について説明する。
[ミクロ組織]
ミクロ組織は、焼戻しマルテンサイトを主組織とする。即ち、ミクロ組織は、面積率で50%以上の焼戻しマルテンサイトを含む組織とする。焼入れままのマルテンサイトが主組織であると、靱性に劣る懸念があり、また、ベイナイトやフェライトが主組織であると、強度が不足する懸念がある。それ故、ミクロ組織の主組織は、強度と靱性に優れる焼戻しマルテンサイトである必要がある。
本発明鋼板では、上記成分組成と後述の製造条件を満足することにより、面積率で50%以上の焼戻しマルテンサイトを確保することができ、降伏強度960MPa以上、引張強度980MPa以上、及び、−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギー47J以上を実現することができる。
焼戻しマルテンサイトの面積率は、60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上である。
[組成指標]
free−Ti:0.0001%以上
下記(1)式で定義するfree−Tiは、所要の機械特性(降伏強度、引張強度、吸収エネルギー)を得るうえで重要な指標であり、0.0001%以上確保する必要がある。
free−Ti=Ti−3.417×N ・・・・・(1)
Ti、及び、Nは、それぞれの元素の質量%
Tiは、前述したように、高温でTiNを形成してNを固定し無害化し、BNの析出を抑制し、固溶Bの確保に寄与する元素である。しかし、Ti量に対しN量が多いと、上記(1)式で計算されるfree−Tiが0%以下となる。この場合、Nが完全に無害化しないので、Bの添加効果が十分に発現せず、焼入れ性が低下する。
そのため、Ti量及びN量を個別に規定するだけでなく、0.0001%以上のfree−Tiを確保できるように、Ti量及びN量を関係付けて規定する必要がある。なお、free−Tiの上限は、Ti及びNの組成から定まるので、特に限定しない。
Ceq:0.50%以上、0.60%未満
下記(2)式で定義するCeqは、所要の機械特性(降伏強度、引張強度、吸収エネルギー)と、所要の靱性及び溶接性を両立させるために重要な指標であり、“0.50%以上、0.60%未満”とする必要がある。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5
+Mo/4+V/14 ・・・(2)
C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれの元素の質量%
Ceqは、炭素当量とも呼ばれ、溶接性の指標として知られている。Ceqが大きいほど、溶接時の熱影響部の硬化が大きくなり、溶接割れが起き易くなるので、Ceqは小さいほど好ましい。それ故、Ceqは0.60%未満とする。好ましくは0.59%以下である。
一方、Ceqが増加するほど、鋼板の強度が上昇する。本発明鋼板においては、ミクロ組織の主組織を焼戻しマルテンサイトとして、強度と靱性を両立させているが、焼戻しマルテンサイトは、焼入れままのマルテンサイトに比べ強度が低いので、焼戻し時の強度低下を見込んでCeqを設定し、所要の降伏強度と引張強度を確保する必要がある。そのため、Ceqは0.50%以上とする。好ましくは0.51%以上である。
Pcm:0.25%以上、0.30%以下
下記(3)式で定義するPcmは、Ceqと同じく、本発明鋼板において、所要の機械特性(降伏強度、引張強度、吸収エネルギー)と、靱性及び溶接性を両立させるために重要な指標であり、“0.25%以上、0.30%以下”とする必要がある。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20
+Mo/15+V/10+5B ・・・(3)
C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及び、Bは、それぞれの元素の質量%
Pcmは、溶接割れ感受性組成とも呼ばれ、溶接性の指標として知られている。Pcmが大きいほど、溶接部の割れ感受性が高まり、溶接性が低下するので、溶接施工時の板厚に応じた予熱条件が厳しくなる。それ故、Pcmは小さいほど好ましいので、0.30%以下とする。好ましくは0.29%以下である。
一方、Pcmは増加するほど、鋼板の強度が上昇するが、成分組成は、焼戻し時の強度低下を見込んだ成分組成である必要がある。そのため、Pcmは0.25%以上とする必要がある。好ましくは0.26%以上である。
[特性指標]
降伏強度(YP):960MPa
引張強度(TS):980MPa
降伏強度は960MPa以上とし、引張強度は980MPa以上とする。本発明鋼板では、上記成分組成と、後述する製造条件をともに満足することにより、降伏強度960MPa以上と引張強度980MPa以上を実現することができる。この強度レベルを確保することができれば、長尺化、大型化するクレーンのブームなどの、建設機械の部材に適した鋼板となり、部材板厚の薄肉化による軽量化や部材強度の向上による吊上げ運搬容量の拡大を図ることが可能となる。
なお、降伏強度については、引張試験において降伏点がある場合は、上降伏点の強度を降伏強度とし、降伏点がみられないラウンド型の応力−ひずみ曲線の場合は、0.2%耐力を降伏強度とする。
−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギー:47J以上
−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギーを47J以上とする。吸収エネルギーが大きいほど、脆性破壊に対する抵抗が高い。そして、脆性破壊が発生する否かの目安が、一般に、47Jである。鋼部材が47J以上の吸収エネルギーを備えていれば、鋼部材を使用する温度環境において、脆性破壊が発生し難い。
建設機械は、寒冷地での使用も想定されるので、本発明鋼板においては、−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギーを47J以上とする。−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギー47J以上は、上記成分組成と、後述する製造条件をともに満足することで実現することができる。
板厚:3.5mm以上、10mm以下
本発明鋼板の板厚は、3.5mm以上、10mm以下とする。板厚が3.5mm未満であると、建設機械の構造部材には不向きなので、板厚は3.5mm以上とする。一方、板厚が10mmを超えると、焼入れ・焼戻し効果が内部まで浸透しないので、板厚は10mm以下とする。
次に、本発明方法について説明する。
本発明方法は、
(ii-1)本発明鋼板の成分組成のスラブを1160℃以上、1240℃未満に加熱し、
(ii-2)仕上げ圧延入側温度が950℃以上、1100℃未満、かつ、仕上げ圧延出側温度が880℃以上、940℃未満となる熱間圧延を行い、
(ii-3)熱延鋼板を、550℃以上、650℃未満で、コイル状に巻き取り、200℃以下まで冷却し、その後、
(ii-4)平板に成形し、所定の長さに切断し、次いで、
(ii-5)880℃以上、940℃未満に再加熱して焼入れ、
(ii-6)400℃以上、550℃未満で焼戻す
ことを特徴とする。
以下、本発明方法の工程条件について説明する。
[熱延、巻取条件]
スラブ加熱温度:1160℃以上、1240℃未満
本発明鋼板の成分組成の溶鋼を、常法により鋳造し、熱間圧延に供する鋼片(スラブ)とする。この鋼片は、鋼塊を鍛造又は圧延したものでもよいが、生産性の点から、連続鋳造で製造したものが好ましい。また、鋼片を薄スラブキャスターなどで製造したものでもよい。
通常、鋼片は、鋳造後に冷却し、再度加熱して熱間圧延に供する。この場合、鋼片の加熱温度は、1160℃以上、1240℃未満とする。
加熱温度が1160℃未満であると、TiやNbが十分に固溶せず、再結晶を抑制して結晶粒の粗大化を抑制する効果が発現しないので、加熱温度は1160℃以上とする。好ましくは1165℃以上である。
一方、鋼片を、1240℃以上に加熱すると、結晶粒径が粗大になって、強度が低下したり、スケール生成量が増加して歩留まりが低下し、また、加熱に必要な燃料コストが増大するので、加熱温度は1240℃未満とする。好ましくは、1230℃以下である。
仕上げ圧延入側温度:950℃以上、1100℃未満
1160℃以上、1240℃未満に加熱した鋼片(スラブ)を粗圧延後、仕上げ圧延に供する。その際、仕上げ圧延入側温度は、950℃以上、1100℃未満とする。仕上げ圧延入側温度は、後述する仕上げ圧延出側温度と同様に、低いほど、鋼板組織の結晶粒が微細になり、降伏強度や靱性の改善に効果があり、低いほど望ましいが、950℃未満であると、後述する仕上げ圧延出側温度が880℃未満となる懸念があるので、仕上げ圧延の入側温度は950℃以上とする。好ましくは960℃以上である。
なお、仕上げ圧延機の入側で待機している粗圧延後のスラブの温度は低下するので、温度低下を抑制するため、粗圧延後のスラブをカバーで覆うか、IHなどで加熱したりして、仕上げ圧延入側温度を950℃以上に維持する。
仕上げ圧延入側温度が1100℃以上であると、鋼板組織の結晶粒が微細化せず、降伏強度や靱性の改善に効果がないので、仕上げ圧延入側温度は1100℃未満とする。好ましくは1080℃以下である。
なお、鋼板温度は、複数段の仕上げ圧延ロールを通過するたびに低下するが、温度の低下分を見込んで、粗圧延後のスラブを高温に加熱するか、又は、圧延時の加工発熱による温度上昇で相殺する。
仕上げ圧延出側温度:880℃以上、940℃未満
仕上げ圧延出側温度は、仕上げ圧延入側温度と同様に、低いほど、鋼板組織の結晶粒が微細になり、降伏強度や靱性の改善に効果があり、低いほど望ましいが、仕上げ圧延出側温度が880℃未満であると、仕上げ圧延時の圧下荷重が上昇して、圧延機の圧下荷重上限に達することがあり、特に、広幅の鋼板の圧延で問題となるので、仕上げ圧延出側温度は880℃以上とする。
また、仕上げ圧延出側温度が880℃未満であると、二相域圧延となり、圧延荷重の変動が懸念されることからも、仕上げ圧延出側温度は880℃以上とする。
一方、仕上げ圧延出側温度が940℃以上であると、結晶粒が粗大になり、降伏強度や靱性が低下するとともに、スケールの生成量が増大して表面性状が低下するので、仕上げ圧延出側温度は940℃未満とする。好ましくは935℃以下である。
巻取温度:550℃以上、650℃未満
仕上げ圧延で圧延した、880℃以上、940℃未満の鋼板を、ランナウトテーブルで冷却し、550℃以上、650℃未満でコイル状に巻き取る。巻取温度が550℃未満では、鋼板の強度が高くなりすぎて、次工程のレベラーで平板に成形する工程で、圧下力が過大になって、成形できなくなるので、巻取温度は550℃以上とする。
一方、巻取温度が650℃以上では、スケールの生成量が増大することに加え、巻取後に内部酸化が起き、表面性状が低下するので、巻取温度は650℃未満とする。好ましくは645℃以下である。
巻取後の冷却温度:200℃以下
コイル状に巻き取った鋼板を200℃以下まで冷却する。冷却温度が200℃を超えると、変態が十分に完了しない懸念があるので、鋼板を200℃以下に冷却し、変態を十分に完了させる。室温中に放置するなどの方法で200℃以下まで冷却する。好ましくは190℃以下に冷却する。冷却速度は特に限定されない。
[冷却後の成形、熱処理条件]
200℃以下に冷却した鋼板を、レベラーに通板して、通常の条件で平板に成形し、所定の長さに切断する。次いで、切断した鋼板に対し熱処理(焼入れ、焼戻し)を施す。
焼入れのための再加熱温度:880℃、940℃未満
切断した鋼板を880℃以上、940℃未満に再加熱して、焼入れを施す。再加熱温度が880℃未満では、鋼板組織がオーステナイトの単一組織とならないので、再加熱温度は880℃以上とする。
一方、再加熱温度が940℃以上であると、オーステナイトの結晶粒が粗大化し、靱性が低下するので、再加熱温度は940℃未満とする。好ましくは935℃以下である。
焼入れは、再加熱によって、鋼板温度が880℃以上、940℃未満に達した後、直ちに行うか、又は、生産性を著しく阻害しない範囲で、880℃以上、940℃未満に、所要の時間保持した後に行なう。
焼戻し温度:400℃以上、550℃未満
焼入れした鋼板を、400℃以上、550℃未満に再加熱して焼戻す。一般に、焼入れした鋼板を焼戻す場合、焼戻し温度の上昇とともに、降伏強度及び靱性が向上する。本発明鋼板においても同様で、400℃以上の焼戻しで、目的の降伏強度及び靱性を確保できるので、焼戻し温度は400℃以上とする。
一方、焼戻し温度が550℃以上になると、引張強度が低下するとともに、靱性が低下するので、焼戻し温度は550℃未満とする。好ましくは545℃以下である。
焼戻しは、再加熱によって鋼板温度が400℃以上、550℃未満に達した後、直ちに行うか、又は、生産性を著しく阻害しない範囲で、400℃以上、550℃未満に、所要の時間保持した後に行う。
以上説明したように、本発明方法により、降伏強度及び引張強度が高く、靱性及び溶接性に優れる本発明鋼板を製造することができる。本発明鋼板を、建設機械の構造部材などに適用すれば、建建設機械の軽量化を図ることができるし、また、例えば、大型クレーンのブームに適用すれば、ブーム自体の軽量化と、吊上げ運搬容量の拡大を図ることができる。
以下、本発明の高強度熱延鋼板及びその製造方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で、適当に変更を加えて実施することが可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
(実施例)
表1に示す成分組成を有する鋼を溶製し、表2に示す条件で熱間圧延と熱処理を行った。熱処理後、熱延鋼板の機械特性及び靱性を測定した。表3に測定結果を示す。
機械的特性は、降伏強度と引張強度、及び、全伸びを測定した。なお、試験片は、元厚ままで、板幅方向と平行の方向から、JIS5号引張試験片を採取し、室温での引張試験に供した。
吸収エネルギーは、−40℃でVノッチシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。なお、試験片は、き裂の進展方向が板幅方向と平行になるよう採取した。また、板厚が5mm及び10mmの鋼板は元厚ままで衝撃試験に供し、5mm超10mm未満の鋼板は表裏面を均等に減厚研削して5mm厚さに加工した後、衝撃試験に供し、3.5mm以上5mm未満の鋼板は表裏面を均等に減厚研削して3.3mm厚さに加工した後、衝撃試験に供した。
また、吸収エネルギーの測定値は、板厚が10mmのものはそのまま用い、板厚が5mmの測定値は、それを2倍して、10mm厚さでの吸収エネルギー相当に換算し、板厚が3.3mmの測定値は、それを3倍して、10mm厚さでの吸収エネルギー相当に換算した。表3に示す測定結果は、10mm厚さのもの、又は、10mm厚さでの吸収エネルギーに換算したものである。
Figure 0006578728
Figure 0006578728
Figure 0006578728
表1〜表3に示すように、成分組成及び製造条件が本発明の範囲内にある発明例(製造No.1、3、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24)においては、降伏強度が960MPa以上、引張強度が980MPa以上、−40℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上、さらに、ミクロ組織の主組織、即ち、50%以上が焼戻しマルテンサイトであり、溶接性にも優れている。
一方、成分組成は本発明の範囲内であるが、製造条件が本発明の範囲外である比較例(製造No.2、4、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25)においては、降伏強度、引張強度、吸収エネルギーの一つ又は二つ以上が本発明の範囲外である。さらに、製造No.5に示すように、表面性状が劣り、供用に値しないものがある。
製造No.2の比較例においては、スラブ加熱温度が本発明の範囲を下回り、また、製造No.23の比較例においては、焼入れ温度と焼戻し温度が本発明の範囲を上回り、これらの比較例では、降伏強度が不足し、かつ、吸収エネルギーが不足している。
製造No.4の比較例においては、コイルの冷却終了温度が本発明の範囲を上回っている。この場合、靱性が不足している。
製造No.5の比較例においては、巻取温度が本発明の範囲を上回っている。この場合、表面性状が劣化し、供用に値しない。
製造No.7の比較例においては、焼入れ温度が本発明の範囲を上回り、また、製造No.9の比較例においては、スラブ加熱温度、仕上げ圧延入側温度、仕上げ圧延出側温度のいずれもが本発明の範囲を上回り、また、製造No.17の比較例においては、仕上げ圧延入側温度が本発明の範囲を上回り、これらの比較例では、吸収エネルギーが不足している。
製造No.11の比較例においては、焼入れ温度が本発明の範囲を下回り、降伏強度と引張強度が不足している。
製造No.13の比較例においては、焼戻し温度が本発明の範囲を下回り、製造No.21の比較例においては、仕上げ圧延出側温度が本発明の範囲を上回り、また、製造No.25の比較例においては、焼戻し温度が本発明の範囲を上回り、これらの比較例では、降伏強度が不足している。
製造No.15の比較例においては、仕上げ圧延入側温度と仕上げ圧延出側温度が本発明の範囲を下回っている。この場合、仕上げ圧延時の圧下荷重の上昇と圧延荷重変動のため圧延が困難であり、安定製造できない。
製造No.19の比較例においては、スラブ加熱温度が本発明の範囲を下回り、かつ焼戻し温度が本発明の範囲を上回り、降伏強度、引張強度、吸収エネルギーのいずれもが不足している。
製造No.26、28〜33、35、36の比較例は、成分組成が本発明の範囲外の鋼(表1中、鋼No.M〜W、参照)を用いた比較例である。これらは、製造条件が本発明の範囲を満たしていても、降伏強度、引張強度、吸収エネルギー、溶接性、焼戻しマルテンサイト分率の一つ又は二つ以上が本発明の範囲外である。
以上、発明例及び比較例より、本発明によれば、高い降伏強度及び引張強度を有し、かつ、靱性及び溶接性に優れた高強度熱延鋼板を提供できることが明らかである。
本発明によれば、降伏強度と引張強度が高く、かつ、靱性及び溶接性に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法を提供することができる。本発明の高強度熱延鋼板を建設機械の構造部材などに適用すれば、建設機械の軽量化を図ることができる。例えば、大型クレーンのブームに適用すれば、ブーム自体の軽量化と、吊上げ運搬容量の拡大を図ることができ、作業効率が顕著に向上する。また、優れた溶接性により、部材製作コストの低減が可能となる。また、高い靱性により、低温環境で使用する場合の建設機械の信頼性が向上する。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。

Claims (3)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C :0.12%超、0.20%未満、
    Si:0.25%以上、0.50%以下、
    Mn:0.50%以上、1.20%未満、
    P :0.0005%以上、0.020%以下、
    S :0.0005%以上、0.010%以下、
    Al:0.01%以上、0.07%以下、
    N :0.0005%以上、0.0060%以下、
    Nb:0.01%以上、0.04%以下、
    Ti:0.005%以上、0.030%以下、
    B :0.0005%以上、0.002%以下、
    Cu:0.10%以上、0.40%以下、
    Ni:0.10%以上、0.40%以下、
    Cr:0.60%超、1.20%以下、
    Mo:0.10%以上、0.40%以下を含み
    さらに
    Mg:0.0005%以上、0.0040%以下、および
    REM:0.0005%以上、0.0040%以下、
    の1種又は2種を含み、かつ、
    残部:鉄及び不可避的不純物からなり、
    ミクロ組織が、面積率で50%以上の焼戻しマルテンサイトを含む組織とし、さらに、
    下記(1)式、(2)式、及び、(3)式で定義する値が、それぞれ、
    free−Ti:0.0001%以上、
    Ceq:0.50%以上、0.60%未満、及び、
    Pcm:0.25%以上、0.30%以下
    であり、
    (i-1)降伏強度が960MPa以上で、引張強度が980MPa以上であり、
    (i-2)−40℃でのVノッチシャルピー吸収エネルギーが47J以上であり、かつ、
    (i-3)板厚が3.5mm以上、10mm以下である
    ことを特徴とする高強度熱延鋼板。
    free−Ti=Ti−3.417×N ・・・(1)
    Ti、及び、Nは、それぞれの元素の質量%
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5
    +Mo/4+V/14 ・・・(2)
    C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれの元素の質量%
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20
    +Mo/15+V/10+5B ・・・(3)
    C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及び、Bは、それぞれの元素の質量%
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    V :0.001%以上、0.10%以下、
    Ca:0.0005%以上、0.0040%以下
    1種又は2種を含有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の高強度熱延鋼板を製造する製造方法であって、
    (ii-1)請求項1又は2に記載の成分組成のスラブを1160℃以上、1240℃未満に加熱し、
    (ii-2)仕上げ圧延入側温度が950℃以上、1100℃未満、かつ、仕上げ圧延出側温度が880℃以上、940℃未満となる熱間圧延を行い、
    (ii-3)熱延鋼板を、550℃以上、650℃未満で、コイル状に巻き取り、200℃以下まで冷却し、その後、
    (ii-4)平板に成形し、所定の長さに切断し、次いで、
    (ii-5)880℃以上、940℃未満に再加熱して焼入れし、
    (ii-6)400℃以上、550℃未満で焼戻す
    ことを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
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