以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。本発明は、物品を収容する収容空間を有し、上部開口から収容された物品の出し入れを可能とする下容器と、下容器にヒンジ機構を介して回動可能に連結され、下容器の上記開口を開閉する上蓋とを備えた蓋付き容器に関するものである。
図1〜図11は、本発明の一実施形態である蓋付き容器1の外観構成ないしは内部構造を示している。なお、本実施形態では、蓋付き容器1を薬液供給具に適用した例について説明している。薬液供給具は、水洗トイレの貯水タンクの上部に設けられた給水受皿上に、給水受皿の中央に形成された流し孔を塞ぐように設置して使用されるものである。薬液供給具は、内部に固形薬剤が収容され、給水管から給水受皿に給水される水の一部を内部に導入することで、固形薬剤(図示せず)を溶解し、溶解した薬剤を水とともに薬液として流し孔から貯水タンク内に供給する。これにより、フラッシュ時に貯水タンクから便器に薬液が排出されるので、便器を洗浄することができる。
蓋付き容器1は、下容器2と、下容器2の上部開口20を閉塞可能な上蓋3と、上蓋3を下容器2に対して回動可能に連結するヒンジ機構4と、上蓋3及び下容器2の間に設けられ、上蓋3を開く方向に付勢するばね部材8とを備えている。さらに、蓋付き容器1は、下容器2及び上蓋3に設けられ、閉じた状態の上蓋3を下容器2との係合により固定する固定手段5と、下容器2又は上蓋3に設けられ、下容器2及び上蓋3の係合を解除する操作部6と、上蓋3が下容器2に対して所定角度を超えて開くことを規制するストッパー手段9とをさらに備えている。
下容器2は、本実施形態では、図12〜図17に示すように、合成樹脂製であって、上部が開口した底の深い椀状のものであり、平面的に見た平面視形状が横長の楕円形状である。この下容器2は、上側に位置する上側部分2Aと下側に位置する下側部分2Bとが一体に連なった形状であり、上側部分2Aが下側部分2Bよりも長手方向外側へ大きく張り出した形状である。
下容器2の底壁部10は、平面視円形状に形成されており、その中央に、薬液を給水受皿の流し孔に導出するための排水口11が形成されている。また、底壁部10の下面には、排水口11の周囲から下方に突出する複数(図示例では3つ)の板状の長脚12が設けられている。この長脚12は、排水口11から導出される薬液を下方に案内するとともに、流し孔に挿入して薬液供給具1を給水受皿上に取り付けるためのものである。
底壁部10の下面の各長脚12の外側(後述する各取水口13の下部)には、下方に突き出す小突起14が複数(図示例では6つ)設けられている。各小突起14は、突出長さが約1mm程度であり、蓋付き容器1を給水受皿上に設置したときに、各小突起14が給水受皿と当接する。これにより、給水受皿と底壁部10との間にスペースが確保されて、給水管より給水受皿に供給される水の一部が当該スペースを通って流し孔にスムーズに流れる。そのうえ、各取水口13と給水受皿との間にもスペースが確保されて各取水口13から下容器2内への水の導入がスムーズに行われる。なお、この小突起14は、複数であることが好ましいが、全ての取水口13に設ける必要はない。
底壁部10の上面には、排水口11から放射状に延びる複数(図示例では6つ)の導水路15が設けられている。また、底壁部10の下面には、各導水路15と個別に対応する位置に、給水受皿に供給される水の一部を下容器2内に導入するための複数(図示例では6つ)の取水口13が形成されている。各導水路15の上面からは、両側縁に沿って延びる一対の支持壁16が突き出ており、各支持壁16上に固形薬剤が支持される。給水受皿に供給された水は、主に各取水口13から下容器2内に導入され、各導水路15を通過する際に固形薬剤の底面と接触する。その際、固形薬剤から薬剤の溶出が略均一に行われて、薬液が排水口11から導出される。
隣接する導水路15の間の径方向内側に位置する部分には、補助排水口17が形成されている。この各補助排水口17は、排水口11による水の導出を補助する役割を果たす。
各導水路15の周囲には、収容される固形薬剤の直径よりも僅かに大きい内径を有するリング状の周壁19が設けられている。周壁19の外方には、各補助排水口17と対応する位置に脱水口18が複数(図示例では6つ)形成されている。また、周壁19の上端部には、各脱水口18と対応する位置にスリット21が形成されている。各取水口13から過剰な量の水が下容器2内に導入された際には、余剰分の水は各スリット21を介して各脱水口18から導出されるので、周壁19内に水が過度に溜まることが防止される。
下容器2の側壁部22は、上側部分2Aが下側部分2Bよりも長手方向に長く形成されているため、その分だけ、上側部分2Aが下側部分2Bよりも長手方向外側へ大きく張り出した形状を有している。側壁部22の上側部分2Aと下側部分2Bとの境目、つまりは、長手方向外側へ張り出した部分の下面には、下向きに開口した揮散口23が形成されている。この揮散口23は、固形薬剤からの揮発性の香料を外部に発散させる役割を果たす。
側壁部22の上側部分2Aと下側部分2Bとの境目には、遮水壁24が一体に設けられている。この遮水壁24は、揮散口23を塞がないように上方に延び、本実施形態では、上方に向かって長手方向内側に傾斜している。遮水壁24の上端部は、少なくとも揮散口23よりも上方に位置している。これにより、揮散口23が鉛直方向下方を向くので、給水管から上蓋3に落下した水が、上蓋3の上面を伝って流れ落ちて揮散口23まで伝わった場合に、流れてきた水が揮散口23から下容器2内に流入することが防止され、給水受皿にそのまま落下する。その結果、下容器2内に収容された固形薬剤に給水管から上蓋3に落下した水が接触することを防止できる。また、給水管から直接、給水受皿に落下した水の一部が、給水受皿から跳ね上がって揮散口23に向けて飛散したとしても、飛散した水は、遮水壁24により下容器2内へ侵入することが阻止されて、遮水壁24を伝って給水受皿に落下するので、固形薬剤と接触することを防止できる。このように、揮散口23からの水の流入が遮断されることにより、その分、固形薬剤の計算外の溶解が抑えられ、適正量の固形薬剤の溶解が可能となる。
なお、遮水壁24は、必ずしも長手方向内側に傾斜している必要はなく、鉛直方向に起立していてもよく、また、長手方向外側に傾斜していてもよい。
側壁部22の上端部には、係合爪50が形成されている。係合爪50は、先端部が外側に向けて鉤状に曲げられている。この係合爪50は、後述する上蓋3に設けられた係合突起51とともに固定手段5を構成するものであり、本実施形態では、側壁部22の長手方向中央位置(側壁部22の長手方向に延びる部分の中央位置)に1箇所設けられている。
側壁部22の上側部分2Aの外壁面には、係合爪50と対応する位置、つまりは、側壁部22の長手方向中央位置に、操作部6が設けられている。この操作部6を指で内側に向けて押圧することにより、係合爪50が上蓋3の係合突起51から容易に抜け出て係合突起51との係合が外れる。このように、操作部6の押圧操作によって、下容器2と上蓋3との係合を容易に解除可能となっている。操作部6は、指の腹に合うように緩やかな凹曲面状に形成されている。
側壁部22の上端部には、係合爪50と対向する位置、つまりは、側壁部22の長手方向中央であって係合爪50と反対側の位置に、ヒンジ機構4を取り付けるためのヒンジ脱着部25が設けられている。ヒンジ機構4は、本実施形態では、上蓋3に一体に設けられており、ヒンジ機構4がヒンジ脱着部25に取り付けられることで、上蓋3が下容器2に回動可能に連結される。ヒンジ脱着部25は、本実施形態では、側壁部22の上端部に形成されたヒンジ機構4の一部分を挿入可能な有底のヒンジ挿入溝26と、側壁部22の上側部分2Aの外壁面に形成されたヒンジ挿入溝26と連通する一対の係止孔27とにより構成されている。なお、ヒンジ挿入溝26には、後述するばね部材8を構成する板ばね80も取り付けられる。
側壁部22の上端部には、直方体状の第1ブロック体90が一体に設けられている。この第1ブロック体90は、上蓋3に設けられた第2ブロック体91とともにストッパー手段9を構成するものであり、側壁部22の外壁面から先端部が外側に突き出ている。第1ブロック体90は、側壁部22の長手方向中央であってヒンジ挿入溝26により内外に分断された側壁部22の外側部分の上端部のうち、矩形状に切り欠かれた部分に一体に設けられている。
側壁部22の一部分には、上端部から上方に突き出る板状の突起29が一体に設けられている。本実施形態では、この突起29の上端部が、上蓋3が閉じた状態つまりは上蓋3が下容器2の上部開口20を閉塞した状態において、ばね部材8としての板ばね80を折り返す(下方に折り曲げる)折り曲げ部7を構成している。突起29は、側壁部22の長手方向中央であってヒンジ挿入溝26により内外に分断された側壁部22の内側部分の上端部に一体に設けられている。なお、本実施形態では、側壁部22の上端部には、ほぼ一周に亘って延びる囲繞壁28が設けられており、突起29はこの囲繞壁28の上部に連なるように設けられている。また、囲繞壁28は、係合爪50とは連続しておらず、囲繞壁28の両端部と係合爪50との間には空間が存在している。
上蓋3は、図18〜図23に示すように、本実施形態では、下容器2の平面視形状に合わせて平面視楕円形状に形成されており、例えば合成樹脂により形成された底の浅い皿状のものである。上蓋3が下容器2の上部開口20を塞ぐことにより、給水管からの水が固形薬剤に直接かかることが防止される。なお、上蓋3は、合成樹脂に限らず、陶器、ガラスなどによっても形成することができる。また、上蓋3の形状についても、特に限定されるものではなく、上述した皿状以外に、椀状、笠状、平板状など、種々の形状を採用することができる。上蓋3には、1つ又は複数(図示例では5つ)の揮散口30が形成されており、固形薬剤からの揮発性の香料が揮散口30から発散される。
上蓋3の外側面には、ヒンジ機構4が一体に設けられている。本実施形態では、ヒンジ機構4は、上蓋3の長手方向中央位置に1箇所設けられている。ヒンジ機構4は、互いに間隔をあけて上蓋3に一体に設けられた左右一対の第1基部40と、第1基部40と一体に設けられた左右一対の軸部41と、軸部41と一体に設けられた左右一対の第2基部42と、各第2基部42を連結する平面視コ字状の連結部43とにより構成されている。第1基部40及び第2基部42が軸部41に向けて厚みが薄くなっていることで、薄肉の軸部41が形成されている。ヒンジ機構4は、連結部43が下容器2のヒンジ挿入溝26に挿入される。連結部43には、左右一対の係止部44が一体に設けられている。係止部44は、先端部が外側に向けて鉤状に曲げられている。連結部43が下容器2のヒンジ挿入溝26に挿入されるとき、各係止部44の先端部がヒンジ挿入溝26から係止孔27に入り込んで下容器2の側壁部22の外壁面に設けられた左右の段部2C(図3や図13に示す)に引っ掛かることで、ヒンジ機構4がヒンジ挿入溝26から抜け出ることが防止される。
上蓋3の内側面には、ヒンジ機構4と対向する位置に、内向き延びる係合突起51が一体に設けられている。この係合突起51は固定手段5を構成し、上蓋3が閉じたときに下容器2の係合爪50が係合することで、閉じた状態の上蓋3が下容器2に固定される。
上蓋3の内側面には、係合突起51と対向する位置から内側に、ばね部材8を構成する板ばね80を取り付けるための取付部31が一体に設けられている。取付部31は、板ばね80の外形に合わせて4つの板状部材を矩形枠状に連ねて形成されており、板ばね80の一端部を差し込み可能な差込口32が端部に開口している。取付部31は、上蓋3が閉じたときに、差込口32が鉛直方向下方を向くように、上蓋3の内側面に備えられている(図7を参照)。また、取付部31は、上蓋3が閉じたときに、下容器2のヒンジ脱着部25よりも内側(固形薬剤側)に位置するように、上蓋3の内側面に備えられている(図7を参照)。
上蓋3の左右一対の第1基部40の間には、ストッパー手段9を構成する直方体状の第2ブロック体91が一体に設けられている。第2ブロック体91は、上蓋3の外側面から水平に突き出ており、上蓋3が閉じた状態では、下容器2の第1ブロック体90の直上に配置される。そして、第2ブロック体91は、上蓋3がヒンジ機構4により回動して開いたときつまりは上蓋3が下容器2の上部開口20を開放したときに、下容器2の第1ブロック体90に突き当たることで、上蓋3がこれ以上開くことを規制する(図11を参照)。
上蓋3が開く最大角度としては、上部開口20から下容器2内の物品を取り出しやすいあるいは下容器2内に物品を収容しやすいとの観点からは、大きければ大きいほどよい。しかしながら、上蓋3が開きすぎると、ヒンジ機構4が下容器2のヒンジ脱着部25から外れやすくなる、ばね部材8を構成する板ばね80が上蓋3の取付部31から外れやすくなるなどの問題に加え、蓋付き容器1が薬液供給具として用いられる場合には、上蓋3が開いた後にヒンジ機構4の弾性力や板ばね80の弾性力により上蓋3が勢いよく戻ってくることに伴い上蓋3の内側面に付着している薬液が飛散するなどの問題が生じるおそれがある。そのため、上蓋3が開く最大角度としては、70°〜90°が好ましく、本実施形態では90°である。
なお、上記最大角度は、平面視における上蓋3の中心を通りかつヒンジ機構4の回転軸(本実施形態では両軸部41を結ぶ線)と直交する線(本実施形態では短軸)と、平面視における下容器2の中心を通りかつヒンジ機構4の回転軸(本実施形態では両軸部41を結ぶ線)と直交する線(本実施形態では長軸)とのなす角度で定義される。また、本実施形態では、上蓋3が閉じたときに互いに接する第1ブロック体90及び第2ブロック体91の表面同士がなす角度が、上記最大角度に一致する(図10を参照)。
ばね部材8は、本実施形態では、板ばね80により構成されている。板ばね80は、所定の長さ、幅及び厚みを有しており、一端部が上蓋3の取付部31に差し込まれ、他端部が下容器2のヒンジ脱着部25に差し込まれることで、上蓋3及び下容器2の間に着脱自在に介装される。
上蓋3が開いた状態では、板ばね80は、少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の屈曲部81(以下、「第1屈曲部81」という。)を有するよう略L字状に折れ曲がった状態で上蓋3及び下容器2の間に介装されている(図11を参照)。そして、上蓋3が閉じた状態では、板ばね80は、折り曲げ部7(突起29の上端部)で折り返されて新たに屈曲部82(以下、「第2屈曲部82」という。)を形成しながら折り畳まれる(図7を参照)。上蓋3は、閉じた状態では、固定手段5により板ばね80の復元力に抗して下容器2に固定されているが、操作部6の押圧操作により固定手段5による固定が解除されると、板ばね80の復元力により上部開口20を開放する方向に付勢される。これにより、上蓋3をワンプッシュで自動的に開けることができる。
また、上蓋3が閉じた状態では、板ばね80は折り曲げ部7(突起29の上端部)により折り返されて、第2屈曲部82が上側に向けて突き出すとともに第1屈曲部81が下側に向けて突き出す姿勢となり、第1屈曲部81が折り曲げ部7よりも下方に位置した状態で蓋付き容器1内に保持される(図7を参照)。第1屈曲部81が折り曲げ部7よりも下方に位置していると、上蓋3が閉じた際に第1屈曲部81が下容器2の内側に張り出すことが抑制されて、板ばね80がコンパクトに折り畳まれる。これにより、板ばね80が下容器2内に収容された物品(本実施形態では固形薬剤)と接触することを防止できる。ここで、折り曲げ部7で折り返された板ばね80を下容器2の内壁面に沿わせて、第1屈曲部81をできる限り鉛直方向下向きに突き出た姿勢にして折り曲げ部7からより下方に位置させると、板ばね80がよりコンパクトに折り畳まれて、下容器2内の物品(固形薬剤)との接触をより効果的に防止することができる。そのためには、本実施形態のように、下容器2の側壁部22の上端部に突起29を設けて、折り曲げ部7の高さ位置を適切な高さまで高くすることが好ましい。
板ばね80の材質は、特に限定されるものではなく、天然ゴム又は合成ゴムのゴム素材、ステンレスなどの金属素材を用いることができる。ただし、上蓋3が閉じた状態が長期間維持されると、その間、板ばね80は折り畳まれた状態で保持されるので、板ばね80に曲がりクセ(弾性的歪み)がつくおそれがある。板ばね80に曲がりクセがつくと、上蓋3が開く時に板ばね80の付勢力(弾性力)が低下している結果、上蓋3が所定の角度まで開かなくなるおそれがある。そのため、板ばね80の曲がりクセを抑えるために、板ばね80の材質としては、曲がりクセのつきにくいシリコンゴムを用いることが好ましい。
また、板ばね80の曲がりクセは、板ばね80の硬度、厚み、幅が大きく影響する。そのため、シリコンゴムの中でも、板ばね80の曲がりクセを効果的に抑えることができるように硬度、厚み、幅を適宜設定することが好ましい。例えば、シリコンゴムの硬度としては、ショアA硬度で50°〜80°を好ましく例示することができ、本実施形態では70°である。シリコンゴムのショアA硬度は、JIS K6253によって硬度計(デュロメータ タイプA)を用いて測定することができる。また、シリコンゴムの厚みとしては、1.0mm〜2.0mmを好ましく例示することができ、本実施形態では1.5mmである。また、シリコンゴムの幅としては、大きいほど曲がりクセがつきにくいため好ましく、蓋付き容器1の設計に応じて上限を適宜することができるが、3mm〜6mmが好ましく、4〜5mmを特に好ましく例示することができ、本実施形態では5mmである。
また、上蓋3が開く角度を大きくするためには、板ばね80の長さを長くする必要があるが、板ばね80の長さが長すぎると、上蓋3が閉じた状態において板ばね80が折り畳まれたときに、第1屈曲部81が内側に大きく張り出して下容器2内の物品(固形薬剤)と接触するおそれがある。そのため、板ばね80の長さとしては、20mm〜30mmが好ましく、本実施形態では26mmである。
板ばね80は、例えば押し出し成型やプレス成型で形成することができるが、クセ付きを抑制する観点からプレス成型で形成することが好ましい。
上記構成の蓋付き容器1において、内部の物品を出し入れする場合、下容器2の操作部6を指で押圧操作することで、固定手段5による固定が解除されて上蓋3が下容器2に対して回動可能となる。これにより、上蓋3がばね部材8の付勢により自動的に開くので、下容器2の上部開口20が開放され、上部開口20を介して内部の物品の出し入れが可能になる。その後、上蓋3を閉じれば、内部に物品を収容することができる。
以上のように、上記構成の蓋付き容器1では、上蓋3をワンプッシュで自動的に開けることができるので、下容器2に対する物品の出し入れを容易に行うことができる。特に、蓋付き容器1を薬液供給具として用いる場合、薬液供給具の使用に伴い、内部の固形薬剤が全て溶解してなくなった場合には、下容器2を一方の手で持ちながら操作部6を指で押圧操作することで、上蓋3が自動的に開いて下容器2の上部開口20が開放される。よって、他方の手で新たな固形薬剤を持って下容器2内にセットすれば、固形薬剤の取り付けが完了するので、固形薬剤の取り付け作業を容易に行うことができ、取り付け作業に面倒な手間をかけずに済ませることができる。また、上蓋3がある程度大きな角度開くので、使用者が固形薬剤の交換時において上蓋3に触れる回数が少なくなり、使用者の手に薬液が付着して汚れるおそれを低減することができる。
また、上蓋3が閉じた状態では、板ばね80が折り曲げ部7により折り返されていて、第1屈曲部81が折り曲げ部7よりも下方に位置していることで、板ばね80がコンパクトに折り畳まれて第1屈曲部81が内側に張り出すことが抑制されている。よって、蓋付き容器1内における板ばね80の収容スペースを省スペース化できるうえ、板ばね80が下容器2内に収容された物品(本実施形態では固形薬剤)と接触することを防止することができる。
加えて、下容器2の側壁部22の上端部に突起29が設けられていて、突起29の上端部が折り曲げ部7となっていることで、板ばね80は、折り曲げ部7で折り返された部分が下容器2の内壁面(突起29の内側面)を沿うように延び、これにより、第1屈曲部81が折り返し部7からより下方に位置した状態で保持される。よって、板ばね80がさらにコンパクトに折り畳まれて第1屈曲部81が内側に張り出すことを大幅に抑制できるので、板ばね80の収容スペースをさらに省スペース化でき、板ばね80と下容器2内の物品(本実施形態では固形薬剤)との接触をより効果的に防止することができる。
また、上蓋3の内側面に設けられた取付部31の差込口32が、上蓋3が閉じた状態において下方を向いているとともにヒンジ挿入溝26より内方側に位置しているので、より効果的に板ばね80の第1屈曲部81を折り曲げ部7より下方に位置させて板ばね80をコンパクトに折り畳むことができる。よって、板ばね80の収容スペースのさらなる省スペース化、及び、板ばね80と下容器2内の物品(本実施形態では固形薬剤)との接触の防止を実現することができる。
また、下容器2にストッパー手段9が設けられ、上蓋3が下容器2に対して所定角度(本実施形態では90°)以上開くことが規制されているので、ヒンジ機構4が下容器2のヒンジ脱着部25から外れたり、ばね部材8を構成する板ばね80が上蓋3の取付部31から外れたりするなどの問題が生じるのを防止できる。加えて、蓋付き容器1が薬液供給具として用いられる場合には、上蓋3が開いた後にヒンジ機構4の弾性力や板ばね80の弾性力により上蓋3が勢いよく戻ってくることで上蓋3の内側面に付着している薬液が飛散するなどの問題が生じることを防止できる。
また、板ばね80がシリコンゴムにより形成されていることで、上蓋3の閉じた状態が長期間維持されることに伴い、板ばね80も長期間、折り畳まれた状態が保持されたとしても、板ばね80に曲がりクセ(弾性的歪み)がつくことを抑制することができる。よって、上蓋3が開けられた時に、板ばね80の付勢力(弾性力)が低下することを防止でき、上蓋3を所定の角度まで開くように付勢することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、ばね部材8として板ばね80を用いているが、必ずしも板状である必要はなく、丸棒状など種々の形状のものであってもよい。また、ばね部材8としてはコイルばねなどを用いることもできる。
また、上記実施形態では、下容器2の側壁部22に突起29を設けているが、必ずしも突起29を設ける必要はない。なお、この場合には、下容器2の側壁部22の上端部が折り曲げ部7を構成する。
また、上記実施形態では、ヒンジ機構4として2点で連結されたヒンジ構造が用いられているが、上蓋3を下容器2に対して回動可能に連結できるものであれば、例えば三点ヒンジやバタフライヒンジなど、種々のタイプのヒンジを用いることができる。
また、上記実施形態では、上蓋3と下容器2とを固定する固定手段5として、係合爪50及び係合突起51の係合を用いているが、係合方法はこれに限られるものではなく、種々の方法を採用することができる。
また、上記実施形態では、蓋付き容器1を薬液供給具に適用した例について説明しているが、例えば蓋付き容器1は、物品の収容空間を有する下容器2内に例えばガムや飴玉、タブレット、錠剤、ウェットティッシュなどの物品を収容し、常時は下容器2の上部開口20を上蓋3で閉じ、使用に際してヒンジ機構4を基点にばね部材8により上蓋3を自動的に開けることで、上部開口20を通じて下容器2内の物品を取り出せるようにした物品収容器に適用することもできる。よって、下容器2及び上蓋3が平面視における形状は、上記実施形態では楕円形状に形成されているが、円形状や多角形状など、種々の形状に形成することができる。