上記のようなガスタービンにおいて、燃焼負荷指令パラメータを用いて燃焼器の運転設定を行う場合、ガスタービンの内部の状態によっては、燃焼負荷指令パラメータの値が実際のタービン入口の燃焼ガス温度からずれた値となることがある。例えばコールド起動時のように定常運転時よりもガスタービンの内部温度が低い状態の場合である。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することが可能なガスタービン運転制御方法、ガスタービン運転制御装置、及びガスタービンを提供することを目的とする。
本発明の第1態様に従えば、ガスタービンの運転を制御するガスタービン運転制御方法であって、前記ガスタービンの負荷に基づいて、燃焼負荷指令パラメータを算出するステップと、前記ガスタービンの圧縮機の効率に基づいた圧縮機補正値、前記ガスタービンのタービンの効率に基づいたタービン補正値及び前記ガスタービンの冷却空気量に基づいた冷却空気量補正値の少なくとも1つに基づいて補正値を算出するステップと、算出した補正値に基づいて前記燃焼負荷指令パラメータを補正し、補正後燃焼負荷指令パラメータを算出するステップと、を有することを特徴とするガスタービン運転制御方法が提供される。
本発明によれば、圧縮機補正値、タービン補正値及び冷却空気量補正値の少なくとも1つに基づいて補正値を算出し、当該補正値に基づいて燃焼負荷指令パラメータを補正して補正後燃焼負荷指令パラメータを算出するため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
例えば、ガスタービンにおいて、コールド起動時と定常運転時とで燃焼器の運転設定が同一の場合、タービン入口の燃焼ガス温度は同様の値となる。しかしながら、コールド起動時は、定常運転時に比べて圧縮機及びタービンの効率(要素効率)が低くなる。そのため、コールド起動時は、例えば燃焼器の運転設定を定常運転時と同一とした場合、定常運転時よりも発電機の出力が低くなる。また、コールド起動時には、冷却装置からの冷却空気量が多くなり、発電機の出力が低くなる場合もある。燃焼負荷指令パラメータの値は、発電機の出力等に基づいて算出され、発電機の出力に応じた大きさとなる。したがって、コールド起動時に算出される燃焼負荷指令パラメータの値は、定常運転時の値、つまり実際のタービン入口の燃焼ガス温度よりも低い値となってしまう。この場合、補正値に基づいて燃焼負荷指令パラメータを補正して補正後燃焼負荷指令パラメータを算出することにより、ガスタービンの運転状態に応じて補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記補正値は、定常状態で運転している状態との要素性能差で生じるずれを補正する値であってもよい。
本発明によれば、補正値が定常状態で運転している状態との要素性能差で生じるずれを補正する値であるため、定常状態とは異なる場合、例えばガスタービンのコールド起動時であっても、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に求めることができる。
本発明の第1態様において、前記補正値は、運転開始時が最も大きく、その後減少してもよい。
要素性能差は、ガスタービンの運転開始時から時間の経過に伴って減少することとなる。そこで、本発明では、補正値が、運転開始時が最も大きく、その後減少することとした。これにより、要素性能差の減少に対応して補正値が減少するため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記補正値を算出するステップは、運転開始の条件に基づいて、初期補正値を算出するステップと、前記ガスタービンの運転開始からの経過時間に基づいて、減算値を算出するステップと、前記初期補正値から前記減算値を減算して前記補正値を算出するステップとを有してもよい。
本発明によれば、ガスタービンの運転開始時の条件に基づいて補正値を算出することにより、圧縮機及びタービンの効率や、冷却空気量の値から直接補正量を算出する場合に比べて、効率的に補正値を算出することができる。また、このように設定した補正値をガスタービンの運転開始からの時間経過に伴って減算していくため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度かつ効率的に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記経過時間は、単位時間毎に、その時点での前記圧縮機の圧力比に対応する係数を単位時間に乗算した値を合計した値であってもよい。
圧縮機の圧力比が高いほど、単位時間当たりに圧縮機に流入する空気の流量が大きくなるため、定常状態に到達するまでの時間が短縮されることになる。そこで、本発明によれば、単位時間毎の圧力比に応じて補正値を減算するため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記初期補正値は、ガスタービンの温度に基づいて算出される値であってもよい。
本発明によれば、ガスタービンの温度に基づいて初期補正値を設定するため、初期補正値を高精度に設定することができる。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記初期補正値は、ガスタービンのロータの温度に相関する温度に基づいて算出される値であってもよい。
本発明によれば、ガスタービンのロータの温度に基づいて初期補正値を設定するため、初期補正値を高精度に設定することができる。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記圧縮機補正値は、前記圧縮機の温度に基づいて算出される値であってもよい。
本発明によれば、圧縮機補正値が圧縮機の温度に基づいて算出された値であるため、補正値を高精度に算出することができる。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記圧縮機補正値は、前記圧縮機の動翼の先端と前記動翼を取り囲むケーシングとのクリアランスに応じて変動する値であってもよい。
本発明によれば、圧縮機補正値が圧縮機の動翼の先端と動翼を取り囲むケーシングとのクリアランスに応じて変動する値であるため、補正値を高精度に算出することができる。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記タービン補正値は、前記タービンの動翼の先端と前記動翼を取り囲むケーシングとのクリアランスに応じて変動する値であってもよい。
本発明によれば、タービン補正値がタービンの動翼の先端と動翼を取り囲むケーシングとのクリアランスに応じて変動する値であるため、補正値を高精度に算出することができる。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第1態様において、前記冷却空気量補正値は、前記ガスタービン内部のクリアランス及び冷却空気温度に応じて変動する値であってもよい。
本発明によれば、冷却空気量補正値がガスタービン内部のクリアランス及び冷却空気温度に応じて変動する値であるため、補正値を高精度に算出することができる。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の第2態様に従えば、ガスタービンの運転を制御するガスタービン運転制御装置であって、前記ガスタービンの負荷を取得する負荷取得部と、前記ガスタービンの負荷に基づいて、燃焼負荷指令パラメータを算出する基準パラメータ算出部と、前記ガスタービンの圧縮機の効率、前記ガスタービンのタービンの効率及び前記ガスタービンの冷却空気量の少なくとも1つに対応する前記ガスタービンの状態の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報に基づいて、前記ガスタービンの圧縮機の効率に基づいた圧縮機補正値、前記ガスタービンのタービンの効率に基づいたタービン補正値及び前記ガスタービンの冷却空気量に基づいた冷却空気量補正値の少なくとも1つを算出し、算出した値に基づいて補正値を算出する補正値算出部と、算出した補正値に基づいて前記燃焼負荷指令パラメータを補正し、補正後燃焼負荷指令パラメータを算出する補正後燃焼負荷指令パラメータ算出部と、を有することを特徴とするガスタービン運転制御装置が提供される。
本発明によれば、圧縮機補正値、タービン補正値及び冷却空気量補正値の少なくとも1つに基づいて補正値を算出し、当該補正値に基づいて燃焼負荷指令パラメータを補正して補正後燃焼負荷指令パラメータを算出するため、定常状態とは異なる運転開始時等の場合においても補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に求めることができる。
本発明の第3態様に従えば、本発明の第2態様に従うガスタービン運転制御装置を有することを特徴とするガスタービンが提供される。
本発明によれば、燃焼負荷指令パラメータを高精度に求めることが可能なガスタービン運転制御装置を有するため、動作安定性に優れたガスタービンを得ることができる。
本発明によれば、ガスタービンの運転状態に応じて燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することが可能となる。
以下、本発明に係るガスタービン運転制御方法、ガスタービン運転制御装置、及びガスタービンの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1及び図2は、本実施形態に係るガスタービン100の一例を示す図である。図2は、圧縮機11及びタービン13の内部構成を模式的に示しており、一部の構成(段数など)を省略して示している。図1及び図2に示すように、ガスタービン100は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13と、制御装置(ガスタービン運転制御装置)30と、タービン冷却機構40とを備えている。圧縮機11は、空気を取り込んで圧縮し、高温高圧の圧縮空気とする。燃焼器12は、この圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼させる。タービン13は、圧縮空気の燃焼により発生した高温高圧の燃焼ガスによってロータ15及び駆動軸16を回転させ、これにより発電機14を駆動する。また、ガスタービン100には、TCAクーラ17と、TCAフィルタ18とがTCAライン19を介して設けられている。
タービン冷却機構40は、抽気配管41、42、43と、流量調整弁41a、42a、43aと、冷却空気状態計測器41b、42b、43bとを有する。抽気配管41、42、43は、一方の端部が圧縮機11に接続し、他方の端部がタービン13に接続されている。抽気配管41は、抽気配管42よりも高圧の圧縮空気、燃焼ガスが流れる位置に接続されている。抽気配管42は、抽気配管43よりも高圧の圧縮空気、燃焼ガスが流れる位置に接続されている。流量調整弁41aは、抽気配管41に設けられている。流量調整弁42aは、抽気配管42に設けられている。流量調整弁43aは、抽気配管43に設けられている。流量調整弁41a、42a、43aは、圧縮機11からタービン13に向けた圧縮空気の流量を調整する。タービン冷却機構40は、圧縮機11から抽気した圧縮空気をタービン13に供給し、タービン13の静翼、翼環、ケーシング等を通過させることで、通過する領域の部品を冷却する。タービン冷却機構40からタービン13に供給された圧縮空気は、フィルム空気、シール空気として燃焼ガスが流れる流路に排出されたり、より低圧な領域の冷却空気として別の領域に供給されたりする。冷却空気状態計測器41b、42b、43bは、抽気配管41、42、43を流れる圧縮空気の流量及び温度をそれぞれ計測し、計測結果を制御装置30に送る。
上記のように構成されたガスタービン100を起動させる場合、発電機14を電動機として使用することでロータ15が回転する。ロータ15の回転により、圧縮機11では、空気取入口21から空気が取り込まれ、入口案内翼23、複数の静翼24と動翼25を通過して圧縮され、高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器12では、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、高温・高圧の燃焼ガスを生じる。タービン13では、燃焼器12で生成された燃焼ガスが複数の静翼27と動翼28を通過し、ロータ15を回転させる。ロータ15の回転が所定回転数となると、発電機14における電動機としての機能を停止し、ロータ15の回転力により発電機14を駆動して発電が開始される。
圧縮機11は、空気取入口21と、圧縮機車室(ケーシング)22とを有している。空気取入口21には、吸気温度計21aと、吸気流量計21bと、吸気圧力計21cとが設けられている。吸気温度計21aは、空気取入口21から圧縮機車室22に流入する大気の温度を計測し、計測結果を制御装置30に送る。吸気流量計21bは、空気取入口21から圧縮機車室22に流入する大気の流量を計測し、計測結果を制御装置30に送る。吸気圧力計21cは、空気取入口21から圧縮機車室22に流入する大気の圧力を計測し、計測結果を制御装置30に送る。圧縮機車室22内には、入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)23と、複数の静翼24と複数の動翼25とが配置されている。入口案内翼23は、圧縮機車室22のうち空気の流動方向(ロータ15の軸方向)の上流側に配置されている。入口案内翼23には、開度コントローラ23a(図2参照)が接続されている。開度コントローラ23aは、制御装置30によって入口案内翼23の開度を調整する。静翼24及び動翼25は、空気の流動方向に交互に配設されている。圧縮機11は、空気取入口21から取り込まれた空気を複数の静翼24と複数の動翼25を通して圧縮することで、高温・高圧の圧縮空気を生成する。
また、圧縮機11には、動翼25の先端部25aと圧縮機車室22の内壁との間のクリアランスを計測する計測器46が設けられている。計測器46としては、ガスタービン100の起動前のクリアランスを測定可能な接触型のセンサであってもよいし、ガスタービン100の運転中におけるクリアランスを測定可能な非接触のセンサであってもよい。計測器46の計測結果は、制御装置30に送られる。
また、圧縮機11には、燃焼器12及びタービン13に対して圧縮空気をバイパスするためのタービンバイパスライン11aが設けられている。タービンバイパスライン11aは、圧縮機11の出口側からタービン13の出口側に亘って設けられ、圧縮機11の出口圧力を調整する。タービンバイパスライン11aには、流量調整弁11b及び流量計測器11cが設けられている。この流量計測器11cは、タービンバイパスライン11aを流れる圧縮空気の流量を計測し、計測結果を制御装置30に送る。流量調整弁11bは、制御装置30の制御に基づいて、タービンバイパスライン11aの流量を調整する。
燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された高温・高圧の圧縮空気に対して燃料を供給し、燃焼させることで、燃焼ガスを生成する。燃焼器12は、燃料供給部12Lから分岐するメイン燃料供給ライン12aと、パイロット燃料供給ライン12bと、トップハット燃料供給ライン12cとを有している。各ラインには、それぞれ流量制御弁12d、12e、12fが設けられている。流量制御弁12d、12e、12fの開閉のタイミングや開度等は、例えば制御装置30によって制御される。流量制御弁12d、12e、12fの開度が調整されることにより、メイン燃料供給ライン12a、パイロット燃料供給ライン12b及びトップハット燃料供給ライン12cの各ラインから燃焼器12に供給される燃料の比率が調整される。
タービン13は、タービン車室(ケーシング)26と、複数の静翼27及び動翼28とを有している。静翼27及び動翼28は、燃焼ガスの流動方向(ロータ15の軸方向)に交互に配置されている。タービン車室26のうち燃焼ガスの流動方向の下流側には、排気車室及び排気室が設けられている。タービン13は、燃焼器12からの燃焼ガスにより駆動し、同軸上に連結された発電機14を駆動する。発電機14には、電力計14aが取り付けられている。この電力計14aは、発電機14の発電電力(発電機出力)を計測し、計測結果を制御装置30に送る。
また、タービン13には、動翼28の先端部28aとタービン車室26の内壁との間のクリアランスを計測する計測器47が設けられている。計測器47としては、上記の計測器46と同様に、ガスタービン100の起動前のクリアランスを測定可能な接触型のセンサであってもよいし、ガスタービン100の運転中におけるクリアランスを測定可能な非接触のセンサであってもよい。計測器47の計測結果は、制御装置30に送られる。
タービン車室26のうち、静翼27の先端部27aとロータ15の外周面との間には、ディスクキャビティ26aと呼ばれる空間が形成されている。ディスクキャビティ26aには、温度計測部48が設けられている。温度計測部48は、ディスクキャビティ26aの雰囲気温度を計測する。温度計測部48の計測結果は、制御装置30に送られる。
制御装置30は、ガスタービン100の動作を統括的に制御する。例えば、制御装置30は、燃焼器12の運転を制御する。制御装置30は、燃焼器12の運転において、例えばメイン燃料供給ライン12a、パイロット燃料供給ライン12b及びトップハット燃料供給ライン12cの各ラインから燃焼器12に供給される燃料の比率を調整する。この場合、各ラインに設けられた流量制御弁12d、12e、12fの開度指令値を算出する。
制御装置30は、流量制御弁12d、12e、12fの開度指令値を算出するため、燃焼負荷指令パラメータ(CLCSO)という値を用いる。燃焼負荷指令パラメータは、燃焼器12からタービン13に流入する燃焼ガスの温度(タービン入口の燃焼ガス温度:T1T)を無次元化した値であり、タービン入口の燃焼ガス温度に対応した値である。制御装置30は、燃焼負荷指令パラメータを用いて、全燃料ガスの流量に対するメイン燃料ガスの流量比(メイン比)、パイロット燃料ガスの流量比(パイロット比)及びトップハット燃料ガスの流量比(トップハット比)を算出する。そして、制御装置30は、算出結果に基づいて燃料ガスの流量を算出し、これにより流量制御弁12d、12e、12fの開度指令値を算出する。
図3は、制御装置30の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置30は、燃焼負荷指令パラメータの算出に関する構成として、負荷取得部31と、基準パラメータ算出部32と、情報取得部33と、補正値算出部34と、補正後パラメータ算出部35とを有している。また、制御装置30は、流量制御弁12d、12e、12fの開度指令値を算出するための指令値算出部36を有している。
負荷取得部31は、ガスタービン100の負荷を取得する。ガスタービン100の負荷としては、例えば電力計14aの計測値(発電機14の出力値)が挙げられる。また、負荷取得部31は、電力計14aの計測値の他、燃焼負荷指令パラメータの算出に用いられる各種の値を取得する。このような値として、負荷取得部31は、例えば吸気温度計21a、吸気流量計21b、吸気圧力計21c及び流量計測器11cの各出力値や、開度コントローラ23aによる入口案内翼23の開度の値を取得する。
基準パラメータ算出部32は、負荷取得部31によって取得した負荷(発電機14の出力)等に基づいて、燃焼負荷指令パラメータを算出する。ここで、燃焼負荷指令パラメータを算出する手順を説明する。以下の説明では、タービン入口の燃焼ガス温度が第1温度Taである場合に対応する燃焼負荷指令パラメータを0%とし、タービン入口の燃焼ガス温度が第1温度Taよりも高温の第2温度Tbである場合の燃焼負荷指令パラメータを100%とする。なお、第1温度Taとしては、例えば700℃程度に設定することができる。また、第2温度Tbとしては、例えば1600℃程度に設定することができる。なお、第1温度Ta及び第2温度Tbの設定値については、上記に限定するものではなく、例えばガスタービン100毎に異なる値に設定することができる。
燃焼負荷指令パラメータCLCSOは、以下の式1で表すことができる。
CLCSO=100×(発電機の出力値−Pa)/(Pb−Pa) …(式1)
但し、Paは第1温度Taにおける発電機14の出力値であり、Pbは第2温度Tbにおける発電機14の出力値である。
制御装置30は、まず、Pa及びPbを設定する。なお、Tb℃は、ガスタービン100の設計において燃焼器12やタービン13の耐熱性などから定めた最高燃焼ガス温度(上限値)であり、この温度を超えないように温度調節されることから、温調MWとも称する。これらのPa及びPbは設計時等において予め求めておくことができる。
図4から図6は、発電機14の出力値(MW)と燃焼負荷指令パラメータ(CLCSO:%)との関係を示すグラフである。図4はIGV開度を変化させた場合、図5は吸気温度を変化させた場合、図6はタービンバイパス比を変化させた場合の値を示している。各図において、横軸が発電機14の出力値を示し、縦軸が燃焼負荷指令パラメータの値を示している。
図4から図6に示すように、発電機14の出力値とCLCSOとの関係は、入口案内翼23の開度(IGV開度)、圧縮機11の吸気温度、タービンバイパス比によって異なっている。つまり、図4に示すように、発電機14の出力値が同一の場合、CLCSOの値はIGV開度が例えば0%の場合が最も大きく、100%の場合が最も小さい。また、図5に示すように、発電機14の出力値が同一の場合、CLCSOの値は圧縮機11の吸気温度が−10℃の場合よりも40℃の場合の方が大きい。また、図6に示すように、発電機14の出力値が同一の場合、CLCSOの値は、タービンバイパス比が0%の場合よりも10%の場合の方が大きい。また、図示を省略するが、発電機14の出力値とCLCSOとの関係は、大気圧比によっても異なる。このため、CLCSOを算出する場合、IGV開度、吸気温度、タービンバイパス比及び大気圧比を考慮した値とする必要がある。したがって、Pa及びPbの値は、IGV開度、吸気温度、タービンバイパス比及び大気圧比に応じたPbの値を予め設定しておく。
図7は、基準パラメータ算出部32において燃焼負荷指令パラメータを算出するロジックを示すブロック図である。図7に示すように、基準パラメータ算出部32は、関数発生器51、52と、除算器53、54、59と、乗算器55、56と、減算器57、58と、レート設定器60と、シグナルジェネレータ61とを有している。関数発生器51には、実測値の吸気温度と、IGV開度指令値と、除算器53で実測値の吸気流量(全体の圧縮空気量に相当)と実測値のタービンバイパス流量とを除算して求めたタービンバイパス比(タービンバイパス流量/吸気流量)とが入力される。関数発生器51は、入力された各値に基づいて、Pbの値を算出して出力する。即ち、関数発生器51は、IGV開度、吸気温度及びタービンバイパス比を考慮したPbの値を求める。
また、関数発生器52には、上記吸気温度と、上記IGV開度指令値と、上記タービンバイパス比とが入力される。関数発生器52は、入力された各値に基づいて、Paの値を算出する。即ち、関数発生器52は、IGV開度、吸気温度及びタービンバイパス比を考慮したPaの値を求める。
除算器54には、実測値の吸気圧力と、シグナルジェネレータ61で設定された標準大気圧とが入力される。除算器54は、吸気圧力を標準大気圧で除算し、除算結果である大気圧比(吸気圧力/標準大気圧)を出力する。乗算器55には、関数発生器51で求めたPbの値と、除算器54で求めた大気圧比とが入力される。乗算器55は、入力された各値同士を乗算し、乗算結果である、大気圧比をも考慮したPbの値を減算器57へ出力する。乗算器56には、関数発生器52で求めたPaの値と、除算器54で求めた大気圧比とが入力される。乗算器56は、入力された値同士を乗算し、乗算結果である、大気圧比をも考慮したPaの値を減算器57へ出力する。
減算器57には、乗算器55の出力であるPbの値と、乗算器56の出力であるPaの値とが入力される。減算器57は、Pbの値からPaの値を減算する(Pb−Pa:式1参照)。減算器58には、負荷取得部31によって取得された実測値の発電機14の出力値と、乗算器56で求めたPaの値とが入力される。減算器58は、発電機14の出力値からPaの値を減算する(発電機14の出力値−Pa:式1参照)。
除算器59には、減算器58の減算結果と減算器57の減算結果とが入力される。除算器59は、減算器58の減算結果を減算器57の減算結果で除算する(式1参照)。このような手順でCLCSOを算出することができる。なお、CLCSOをパーセントで表すには、除算器59の出力値に100を掛ければよい。レート設定器60では、発電機14の出力値の微小変動などによってCLCSOが微小変動することにより、流量制御弁12dなどが頻繁に開閉動作を繰り返すことがないようにするため、除算器59からの入力値を直ぐにCLCSOとして出力するのではなく、所定の増減レートに制限して出力する。このような手順で、CLCSOが算出される。
続いて、図3に示す情報取得部33、補正値算出部34及び補正後パラメータ算出部35は、基準パラメータ算出部32によって算出された燃焼負荷指令パラメータを補正する。燃焼負荷指令パラメータの値は、タービン入口の燃焼ガス温度を直接測定したものではなく、発電機14の出力値に基づいて算出されたものである。このため、燃焼負荷指令パラメータの値が実際のタービン入口の燃焼ガス温度からずれた値となることがある。本実施形態では、情報取得部33、補正値算出部34及び補正後パラメータ算出部35により、このような燃焼負荷指令パラメータのずれを補正することができる。
情報取得部33は、圧縮機11の効率、タービン13の効率及びタービン冷却機構40から供給される冷却空気量に対応するガスタービン100の状態の情報(状態情報)を取得して、補正値算出部34に出力する。当該情報は、ガスタービン100の出力、つまり発電機14の出力値に関係する情報である。なお、情報取得部33は、上記の各情報のすべてを取得する構成に限定するものではなく、少なくとも1つの情報を取得する構成であればよい。
圧縮機11の効率に対応する情報としては、例えば圧縮機11の温度や、圧縮機11の動翼25の先端部25aと圧縮機車室22とのクリアランス(チップクリアランス)の値等が挙げられる。圧縮機11の効率は、例えば圧縮機11の温度に応じて変動する。より具体的には、圧縮機11の効率は、圧縮機11のチップクリアランスの値等に応じて変動する。つまり、例えばガスタービン100をコールド起動させる場合には、ホット起動時や定常運転時に比べて圧縮機11の温度が低くなる。このように圧縮機11の温度が低い場合、チップクリアランスの値が大きくなり、圧縮機11の効率が相対的に低下するため、ガスタービン100の出力が低下する。一方、ホット起動時や定常運転時のように圧縮機11の温度が高い場合、当該チップクリアランスの値が小さくなり、圧縮機11の効率が相対的に上昇する。このため、ガスタービン100の出力が増加する。このため、情報取得部33は、圧縮機11の効率に対応する情報として、圧縮機11の温度及び圧縮機11のチップクリアランスの値等を取得する。
また、タービン13の効率に対応する情報としては、例えばタービン13の動翼28の先端部28aとタービン車室26とのチップクリアランスの値等が挙げられる。圧縮機11の場合と同様に、タービン13の効率は、タービン13の動翼28の先端部28aとタービン車室26とのクリアランス(チップクリアランス)の値に応じて変動する。
また、冷却空気量に対応する情報としては、例えばガスタービン100内部のクリアランス(例えば段間などのシール部分のクリアランス)や、冷却空気温度等が挙げられる。ガスタービン100内部のクリアランスは、圧縮機11およびタービン13の温度が低くなるにしたがって大きくなる。例えば、圧縮機11の温度が低い場合、圧縮機11の段間のクリアランスが大きくなる。このため、当該クリアランスからタービン冷却機構40に抽気される冷却空気量が多くなり、ガスタービン100の出力が低下する。一方、圧縮機11の温度が高い場合、圧縮機11の段間のクリアランスが小さくなる。このため、当該クリアランスからタービン冷却機構40に抽気される冷却空気量が少なくなり、ガスタービン100の出力が上昇する。また、冷却空気の温度が低くなる場合、冷却空気の質量流量が大きくなる。このため、冷却空気量が増加し、ガスタービン100の出力が低下する。一方、冷却空気の温度が高くなる場合、冷却空気の質量流量が小さくなる。このため、冷却空気量が減少し、ガスタービンの出力が上昇する。したがって、情報取得部33は、圧縮機11の効率及びタービン13の効率と共に、当該冷却空気量に対応する情報として、例えば冷却空気の流量についても取得する。なお、当該冷却空気量に対応する情報として、例えば圧縮機11およびタービン13の温度(ガスタービン100内部のクリアランスに対応)や、冷却空気の温度を取得してもよい。
補正値算出部34は、情報取得部33が取得した情報に基づいて、補正値を算出する。補正値算出部34は、図8に示すように、圧縮機補正値算出部34aと、タービン補正値算出部34bと、冷却空気量補正値算出部34cとを有している。圧縮機補正値算出部34aは、圧縮機11の効率に基づいた圧縮機補正値を算出する。タービン補正値算出部34bは、タービン13の効率に基づいたタービン補正値を算出する。冷却空気量補正値算出部34cは、冷却空気量に基づいた冷却空気量補正値を算出する。したがって、本実施形態において、補正値は、定常状態で運転している状態との要素性能差で生じる燃焼負荷指令パラメータのずれを補正する値となる。
圧縮機補正値は、圧縮機11の温度に基づいて算出され、動翼25の先端部25aと圧縮機車室22とのクリアランスに応じて変動する値である。タービン補正値は、タービン13の効率に基づいて算出され、タービン13の動翼28の先端28aとタービン車室26とのクリアランスに応じて変動する値である。冷却空気量補正値は、ガスタービン100内部のクリアランス及び圧縮機11からタービン冷却機構40に抽気される冷却空気温度に応じて変動する値である。
補正後パラメータ算出部35は、補正値算出部34で算出された補正値に基づいて燃焼負荷指令パラメータを補正し、補正後燃焼負荷指令パラメータを算出する。補正後燃焼負荷指令パラメータ(補正後CLCSO)は、以下の式2で表すことができる。なお、式2における「補正値」は、補正値算出部34で算出された補正値である。
補正後CLCSO=CLCSO+補正値 …(式2)
次に、燃焼負荷指令パラメータを補正する手順を説明する。図8は、燃焼負荷指令パラメータを補正するロジックを示すブロック図である。図8に示すように、補正値算出部34は、関数発生器62、65、66と、乗算器63と、加算器64とを有している。補正後パラメータ算出部35は、加算器67、68、69を有している。また、補正後CLCSOは、CLCSOに対して補正値(圧縮機補正値、タービン補正値及び冷却空気量補正値)を加えることによって算出される(式2参照)。ここで、補正値として、圧縮機補正値を算出する手順を例に挙げて説明する。なお、説明を省略するが、タービン補正値及び冷却空気量補正値についても同様の手順によって算出することができる。
図9は、燃焼負荷指令パラメータを補正する手順を示すフローチャートである。図9は、図8に示すロジックを順序立てて説明するものである。以下、図8及び図9に従って燃焼負荷指令パラメータを補正する手順を説明する。まず、ガスタービン100を起動させる前に、タービン13のディスクキャビティ26aに配置された温度計測部48により、ディスクキャビティ26aの温度(DCT:disk cavity temperature)を測定する(ステップS10)。当該DCTは、ロータ15の温度に相関する温度であり、ガスタービン100の運転開始の条件として用いられる。温度計測部48の計測結果は、制御装置30に送られる。
関数発生器62には、DCTの結果が入力される。関数発生器62は、入力値に基づいて、圧縮機11が定格速度に到達する時点から圧縮機11の効率が定常運転時の効率に到達するまでの時間(静定時間:初期補正値)を算出し(ステップS20)、算出結果を加算器64に出力する。図10は、DCTと静定時間との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸はDCTの値を示し、縦軸は静定時間の値を示す。静定時間は、定常運転時の効率に到達する時刻を0とする。したがって、静定時間は負の値として算出される。静定時間の絶対値が大きいほど、定常運転時の効率に到達するまでに時間が掛かることになる。図10のグラフに示すような関係については、予め実験やシミュレーションなどによって求めておく。なお、タービン補正値及び冷却空気量補正値を算出する場合には、タービン13の効率及び冷却空気量のそれぞれが定常運転時の値に到達するまでの静定時間とDCTとの関係を予め求めておく。なお、DCTに代えて、タービン13の温度を測定した場合の測定値を用いてもよい。
静定時間を算出した後、ガスタービン100を起動させる。ガスタービン100の起動後、補正値算出部34は、起動時からの経過時間に応じて静定時間の値を補正する(ステップS30)。ステップS30では、乗算器63に対して、起動時からの単位経過時間と、圧縮機11の圧力比とが入力される。乗算器63は、圧縮機11の圧力比に対応する係数を単位経過時間に乗じた値(減算値)を算出し、加算器64に出力する。加算器64には、関数発生器62の出力値と、乗算器63の出力値とが入力される。加算器64は、入力値である算出結果を静定時間に加算し、加算結果を関数発生器65に出力する。単位経過時間及び係数は共に正の値として算出される。加算器64では、負の値である静定時間に正の値が加算されるため、単位時間が経過するごとに、静定時間の絶対値が小さくなる。
図11は、圧縮機の圧力比と係数との関係を示すグラフである。グラフの横軸は圧縮機の圧力比であり、グラフの縦軸は係数である。圧力比が大きい場合、圧縮機11内の温度はより早く温度上昇するため、より早く定常状態に到達することになる。したがって、図11のグラフに示すように、圧力比が大きいほど係数が大きくなっている。図11のグラフに示すような関係については、予め実験やシミュレーションなどによって求めておく。
静定時間を補正した後、関数発生器65には、加算器64の出力値が入力される。関数発生器65は、入力された値に基づいて圧縮機11の要素性能低下量を算出し(ステップS40)、関数発生器66に出力する。図12は、静定時間と要素性能低下量との関係を示すグラフである。グラフの横軸は静定時間(補正後の静定時間に対応)を示し、縦軸は要素性能低下量△ηcを示す。図12に示すように、要素性能低下量△ηcは、負の値として算出され、絶対値が大きいほど圧縮機11の要素性能の低下量が大きいことを示している。なお、図12の横軸に示す時間t0は、運転開始時における値である。図12に示すように、要素性能低下量△ηcの絶対値は、運転開始時で最も大きな値となり、その後静定時間が0に近づくにつれて減少する。そして、要素性能低下量△ηcの絶対値は、静定時間が0となる時点、つまり、定常運転に到達した時点で0になる。図12のグラフに示すような関係については、予め実験やシミュレーションなどによって求めておく。
要素性能低下量を算出した後、関数発生器66には、関数発生器65の出力値である要素性能低下量が入力される。関数発生器66は、当該要素性能低下量に基づいて補正値(圧縮機補正値)を算出する(ステップS50)。ステップS50では、まず、要素性能低下量の絶対値に基づいて発電機14の出力低下量を算出する。そして、算出した出力低下量をCLCSOの補正値に換算する。
このときの換算式は、例えば式3に示すようになる。
補正値=100×(発電機の出力低下量)/(Pb−Pa) …(式3)
但し、Paは第1温度Taにおける発電機14の出力値であり、Pbは第2温度Tbにおける発電機14の出力値である。このようにして、補正値(圧縮機補正値)が算出される。
圧縮機補正値を算出した後、補正値算出部34は、算出された補正値が0であるか否かを判断する(ステップS60)。補正値が0である場合(ステップS60のYes)、ガスタービン100が定常運転に到達しており、燃焼負荷指令パラメータの補正が不要であるとして、補正値の算出処理を終了させる。補正値が0でない場合(ステップS60のNo)、補正値算出部34は、関数発生器66の演算結果である圧縮機補正値を加算器67へ出力する。加算器67には、関数発生器66の出力値が入力される。加算器67は、当該圧縮機補正値を燃焼負荷指令パラメータCLCSOに加算する(ステップS70)。その後、ステップS30以降の処理を繰り返し行わせる。
また、加算器68、69には、上記と同様の手順によって算出されたタービン補正値及び冷却空気量補正値が入力される。加算器68、69は、タービン補正値及び冷却空気量補正値を燃焼負荷指令パラメータCLCSO(圧縮機補正値が加算されている場合を含む)に加算する。これにより、補正後燃焼負荷指令パラメータが算出される。補正後パラメータ算出部35は、算出した補正後燃焼負荷指令パラメータを指令値算出部36へ出力する。指令値算出部36は、補正後燃焼負荷指令パラメータに基づいて流量制御弁12d、12e、12fの開度指令値を算出する。なお、制御装置30は、補正後燃焼負荷指令パラメータに基づいて他の制御を行ってもよい。
以上のように、本実施形態によれば、制御装置30が圧縮機補正値、タービン補正値及び冷却空気補正値の少なくとも1つの補正値を算出し、当該補正値に基づいて燃焼負荷指令パラメータを補正して補正後燃焼負荷指令パラメータを算出するため、ガスタービン100の運転状態に応じて補正後燃焼負荷指令パラメータが高精度に算出される。本実施形態では、制御装置30が圧縮機補正値、タービン補正値及び冷却空気補正値の3つを補正値として算出しているため、高精度に補正後燃焼負荷指令パラメータを算出できる。なお、制御装置30が圧縮機補正値、タービン補正値及び冷却空気補正値のうち1つ又は2つを補正値として算出する構成であっても、十分高精度に補正後燃焼負荷指令パラメータを算出できる。
上記の補正値は、ガスタービン100が定常状態で運転している状態との要素性能差で生じるずれを補正する値であるため、定常状態とは異なる場合、例えばガスタービン100のコールド起動時であっても、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に求めることができる。
また、要素性能差は、ガスタービン100の運転開始時(例、定格速度運転到達時)から時間の経過に伴って減少することとなる。そこで、本実施形態では、補正値が、運転開始時が最も大きく、その後減少することとした。これにより、要素性能差の減少に対応して補正値が減少するため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
また、補正値を算出する際、ガスタービン100の運転開始時の条件に基づいて補正値を算出することにより、圧縮機11及びタービン13の効率や、冷却空気量の値から直接補正量を算出する場合に比べて、効率的に補正値を算出することができる。また、このように設定した補正値をガスタービン100の運転開始からの時間経過に伴って減算していくため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度かつ効率的に算出することができる。
また、圧縮機11の圧力比が高いほど、圧縮機11内の温度はより早く温度上昇するため、定常状態に到達するまでの時間が短縮されることになる。そこで、本実施形態では、単位時間毎の圧縮機11の圧力比に応じて補正値を減算するため、補正後燃焼負荷指令パラメータを高精度に算出することができる。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、静定時間を算出する場合に、DCTの計測結果を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、タービン13のロータ15の温度に相関する温度であれば、他の部位における計測結果を用いてもよい。例えば、ロータ15の温度を直接計測してもよい。
また、上記実施形態では、要素性能差がガスタービン100の運転開始時(例、定格速度運転到達時)から時間の経過に伴って減少することを用いて、静定時間と要素性能低下量との関係から補正量を求める場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、圧縮機11及びタービン13の効率や、冷却空気量に対応する値をリアルタイムで測定し、この測定結果を用いて補正量を求めるようにしてもよい。この場合、例えば計測器46によって圧縮機11のチップクリアランスの値をリアルタイムで計測してもよいし、計測器47によってタービン13のチップクリアランスの値をリアルタイムで測定してもよい。また、圧縮機11の段間のクリアランス又はタービン冷却機構40の冷却空気量をリアルタイムで測定可能な測定部を設け、これらの値をリアルタイムで測定してもよい。この場合、情報取得部33が当該リアルタイムの値を取得し、補正値算出部34が当該リアルタイムの値に基づいて補正値を算出し、当該補正値に基づいて補正後パラメータ算出部35が補正後燃焼負荷指令パラメータを算出する。このため、補正後燃焼負荷指令パラメータをより高精度に求めることができる。