以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の自動車用タイヤ(全体不図示)のトレッド部2の展開図である。図1に示されるように、本実施形態の自動車用タイヤは、トレッド部2に、タイヤ赤道CLから第1トレッド接地端TE1までの第1トレッド半部21と、タイヤ赤道CLから第1トレッド接地端TE1と反対側のトレッド接地端である第2トレッド接地端TE2までの第2トレッド半部22とを有している。
「トレッド接地端」TE1、TE2は、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態のときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、180kPaである。
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。タイヤが乗用車用の場合には、前記荷重の88%に相当する荷重である。
レーシングカート用タイヤの前輪用タイヤでは、「第1トレッド接地端」TE1及び「第2トレッド接地端」TE2とは、例えば、リム幅が4.5インチのリムに装着され、空気圧が100kPa、負荷荷重が0.45kNの条件下で測定されたトレッド接地端である。レーシングカート用タイヤの後輪用タイヤでは、例えば、「第1トレッド接地端」TE1及び「第2トレッド接地端」TE2は、リム幅が6.5インチのリムに装着され、空気圧が100kPa、負荷荷重が0.65kNの条件下で測定されたトレッド接地端である。以下、本願では、特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、この状態で測定された値である。例えば、トレッド接地幅TWは、第1トレッド接地端TE1と第2トレッド接地端TE2とのタイヤ軸方向の距離で定められる。
トレッド部2には、第1傾斜溝3と、第2傾斜溝4とが設けられている。第1傾斜溝3は、第2トレッド半部22から傾斜しながら第1トレッド接地端TE1にのびる。第2傾斜溝4は、第1トレッド半部21から第1傾斜溝3とは逆向きに傾斜しながら第2トレッド接地端TE2にのびる。このような第1傾斜溝3及び第2傾斜溝4によって、トレッド部2には回転方向Rが指定されうる。第1傾斜溝3及び第2傾斜溝4によって、トレッド部2の排水性能が高められ、優れたウエット性能が得られる。ウエット路面でのコーナリング性能をより一層高める観点から、第1傾斜溝3及び第2傾斜溝4は、タイヤ周方向に対して10゜〜90゜の角度で傾斜するのが望ましい。
第1傾斜溝3と、第2傾斜溝4とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。従って、第1傾斜溝3と第2傾斜溝4とがタイヤ周方向に分散されて配置される。これにより、トレッド部2の剛性が高められ、グリップ性能及び操縦安定性能が向上する。本実施形態では、第2傾斜溝4は、第1傾斜溝3に対してタイヤ周方向に第1傾斜溝3の1/2ピッチの長さ分ずれて配置されている。これにより、タイヤ周方向でのトレッド部2の剛性の分布が均一化され、操縦安定性能が向上する。
第1傾斜溝3の先端部3a及び第2傾斜溝4の先端部4aは、角部が丸められている。これにより、先端部3a及び先端部4aの周辺部での応力集中が緩和される。
第1傾斜溝3の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの1%〜25%が望ましい。第1傾斜溝3の溝幅がトレッド接地幅TWの1%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、第1傾斜溝3の溝幅がトレッド接地幅TWの25%を超える場合、トレッド部2の実接地面積が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。第1傾斜溝3の溝幅がトレッド接地幅TWの1%〜25に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい第1傾斜溝3の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの8%である。第2傾斜溝4の溝幅についても、第1傾斜溝3の溝幅と同様である。
第1傾斜溝3の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの55%〜85%が望ましい。第1傾斜溝3の深さがトレッドゴム厚さの55%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、第1傾斜溝3の深さがトレッドゴム厚さの85%を超える場合、トレッド部2の実接地面積が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。第1傾斜溝3の深さがトレッドゴム厚さの55%〜85に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい第1傾斜溝3の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの70%である。第2傾斜溝4の深さについても、第1傾斜溝3の深さと同様である。
第1傾斜溝3は、第1センター部31と第1ショルダー部32とを有する。第1センター部31は、第2トレッド半部22からタイヤ周方向に対する角度θ1を漸減させながら第1トレッド半部21にのびる。第1ショルダー部32は、第1センター部31に連なりタイヤ周方向に対する角度θ3を漸増させながら第1トレッド接地端TE1にのびる。このような第1傾斜溝3は、コーナリング時の自動車用タイヤに付与されるスリップ角に応じて踏面部の水を円滑に排出し、ウエット性能を高める。ウエット性能をより一層高める観点から、上記角度θ1は20゜〜60゜が望ましい。
第1ショルダー部32のタイヤ周方向の溝幅は、タイヤ周長の0.5%〜2.0%が望ましい。上記第1ショルダー部32の溝幅がタイヤ周長の0.5%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記第1ショルダー部32の溝幅がタイヤ周長の2.0%を超える場合、第1トレッド接地端TE1の近傍でトレッド部2の実接地面積が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。上記第1ショルダー部32の溝幅がタイヤ周長の0.5%〜2.0%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記第1ショルダー部32の溝幅は、例えば、タイヤ周長の0.9%である。
第2傾斜溝4は、第2センター部41と第2ショルダー部42とを有する。第2センター部41は、第1トレッド半部21からタイヤ周方向に対する角度θ2を漸減させながら第2トレッド半部22にのびる。第2ショルダー部42は、第2センター部41に連なりタイヤ周方向に対する角度θ4を漸増させながら第2トレッド接地端TE2にのびる。このような第2傾斜溝4は、コーナリング時の自動車用タイヤに付与されるスリップ角に応じて踏面部の水を円滑に排出し、ウエット性能を高める。ウエット性能をより一層高める観点から、上記角度θ2は20゜〜60゜が望ましい。
第2ショルダー部42のタイヤ周方向の溝幅は、タイヤ周長の0.5%〜2.0%が望ましい。上記第2ショルダー部42の溝幅がタイヤ周長の0.5%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記第2ショルダー部42の溝幅がタイヤ周長の2.0%を超える場合、第2トレッド接地端TE2の近傍でトレッド部2の実接地面積が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。上記第2ショルダー部42の溝幅がタイヤ周長の0.5%〜2.0%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記第2ショルダー部42の溝幅は、例えば、タイヤ周長の0.9%である。
トレッド部2は、第1サイプ5をさらに有する。第1サイプ5は、第1ショルダー部32からタイヤ軸方向に沿って内方にのび、第2傾斜溝4に連通する。本実施形態の第1サイプ5は、タイヤ軸方向の内側に位置する第2傾斜溝4を貫通しながらタイヤ軸方向に沿ってさらにのび、タイヤ軸方向の外側に位置する第2傾斜溝4に連通する。第1サイプ5が発生するエッジ効果によって、自動車用タイヤのウエット路面でのトラクション性能及びブレーキ性能が向上する。
第1サイプ5の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの1%〜5%が望ましい。第1サイプ5の溝幅がトレッド接地幅TWの1%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、第1サイプ5の溝幅がトレッド接地幅TWの5%を超える場合、トレッド部2の実接地面積が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。第1サイプ5の溝幅がトレッド接地幅TWの1%〜5%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい第1サイプ5の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの2%である。
第1サイプ5の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの20%〜85%が望ましい。第1サイプ5の深さがトレッドゴム厚さの20%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、第1サイプ5の深さがトレッドゴム厚さの85%を超える場合、トレッド部2の剛性が低下し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。第1サイプ5の深さがトレッドゴム厚さの20%〜85%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい第1サイプ5の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの40%である。
第1サイプ5のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、0゜〜45゜が望ましい。上記第1サイプ5の角度が0゜未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記第1サイプ5の角度が45゜を超える場合、後述する第1センターブロック11の面積と第1ショルダーブロック13の面積とが不均一となり、耐摩耗性能が低下するおそれがある。上記第1サイプ5の角度が0゜〜45゜に設定されることにより、排水性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記第1サイプ5の角度は、例えば、0゜である。
トレッド部2は、第2サイプ6をさらに有する。第2サイプ6は、第2ショルダー部42からタイヤ軸方向に沿って内方にのび、第1傾斜溝3に連通する。本実施形態の第2サイプ6は、タイヤ軸方向の内側に位置する第1傾斜溝3を貫通しながらタイヤ軸方向に沿ってさらにのび、タイヤ軸方向の外側に位置する第1傾斜溝3に連通する。第2サイプ6が発生するエッジ効果によって、自動車用タイヤのウエット路面でのトラクション性能及びブレーキ性能が向上する。
第2サイプ6の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの1%〜5%が望ましい。第2サイプ6の溝幅がトレッド接地幅TWの1%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、第2サイプ6の溝幅がトレッド接地幅TWの5%を超える場合、トレッド部2の実接地面積が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。第2サイプ6の溝幅がトレッド接地幅TWの1%〜5%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい第2サイプ6の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの2%である。
第2サイプ6の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの20%〜85%が望ましい。第2サイプ6の深さがトレッドゴム厚さの20%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、第2サイプ6の深さがトレッドゴム厚さの85%を超える場合、トレッド部2の剛性が低下し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。第2サイプ6の深さがトレッドゴム厚さの20%〜85%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい第2サイプ6の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの40%である。
第2サイプ6のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、0゜〜45゜が望ましい。上記第2サイプ6の角度が0゜未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記第2サイプ6の角度が45゜を超える場合、後述する第2センターブロック12の面積と第2ショルダーブロック14の面積とが不均一となり、耐摩耗性能が低下するおそれがある。上記第2サイプ6の角度が0゜〜45゜に設定されることにより、排水性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記第2サイプ6の角度は、例えば、0゜である。
図2は、第1トレッド半部21を示している。第1トレッド半部21は、第1センターブロック11と、第1ショルダーブロック13とを有する。
第1センターブロック11は、タイヤ周方向に隣り合う第1傾斜溝3と、該第1傾斜溝3にタイヤ軸方向に隣り合う第2傾斜溝4と、タイヤ周方向に隣り合う第1サイプ5と、第2サイプ6とによって区画されている。第1センターブロック11の一部の領域は、第2トレッド半部22に連なって、第2傾斜溝4及び第2サイプ6によって区画されている。第1センターブロック11は、第2トレッド半部22からのびる第2サイプ6によってタイヤ周方向に分割されている。すなわち、第1センターブロック11は、先着側ブロック11aと後着側ブロック11bとに分割される。
後着側ブロック11bのタイヤ軸方向の幅は、例えば、トレッド接地幅TWの5%〜20%が望ましい。上記後着側ブロック11bの幅がトレッド接地幅TWの5%未満の場合、後着側ブロック11bのタイヤ軸方向の剛性が不足して、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。一方、上記後着側ブロック11bの幅がトレッド接地幅TWの20%を超える場合、第1傾斜溝3の溝幅が小さくなり、排水性能が低下する。上記後着側ブロック11bの幅がトレッド接地幅TWの5%〜20%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記後着側ブロック11bの幅は、例えば、トレッド接地幅TWの10%である。
第1ショルダーブロック13は、タイヤ周方向に隣り合う第1傾斜溝3と、第1トレッド接地端TE1と、第1サイプ5とによって区画されている。第1ショルダーブロック13には、第1細溝7が設けられている。第1ショルダーブロック13は、第1細溝7によってタイヤ周方向に分割されている。すなわち、第1ショルダーブロック13は、先着側ブロック13aと後着側ブロック13bとに分割される。
第1細溝7は、第1トレッド接地端TE1からタイヤ軸方向に沿って内方にのび、第1傾斜溝3に連通する。第1細溝7が発生するエッジ効果によって、自動車用タイヤのウエット路面でのトラクション性能及びブレーキ性能が向上する。
本実施形態では、第1傾斜溝3を挟んで第2サイプ6と第1細溝7とが対向する位置に配置されている。これにより、第2サイプ6及び第1細溝7が相乗的に作用し、自動車用タイヤのウエット路面でのトラクション性能及びブレーキ性能がより一層向上する。
第1細溝7は、狭幅部71と、狭幅部71より溝幅が大きい拡幅部72とを有する。狭幅部71は、第1傾斜溝3に連通する。拡幅部72は、第1トレッド接地端TE1に連通する。接地面の先着側で狭幅部71が閉じることにより、第1ショルダーブロック13の剛性が高められる。一方、拡幅部72によって、第1トレッド接地端TE1の近傍での排水性能が高められる。
拡幅部72の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの1%〜15%が望ましい。拡幅部72の溝幅がトレッド接地幅TWの1%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、拡幅部72の溝幅がトレッド接地幅TWの25%を超える場合、第1ショルダーブロック13が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。拡幅部72の溝幅がトレッド接地幅TWの1%〜15%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい拡幅部72の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの4%である。
拡幅部72の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの55%〜85%が望ましい。拡幅部72の深さがトレッドゴム厚さの55%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、拡幅部72の深さがトレッドゴム厚さの85%を超える場合、第1ショルダーブロック13の剛性が低下し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。拡幅部72の深さがトレッドゴム厚さの55%〜85%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい拡幅部72の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの70%である。
拡幅部72のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、0゜〜45゜が望ましい。上記拡幅部72の角度が0゜未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記拡幅部72の角度が45゜を超える場合、先着側ブロック13aの面積と後着側ブロック13bの面積とが不均一となり、耐摩耗性能が低下するおそれがある。上記拡幅部72の角度が0゜〜45゜に設定されることにより、排水性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記拡幅部72の角度は、例えば、0゜である。
第1サイプ5は、第2傾斜溝4の第1トレッド半部21側の先端部4aに連通する。これにより、タイヤ赤道CL近傍での排水性能が高められる。
第1ショルダーブロック13において、先着側ブロック13aの踏面の面積Saと後着側ブロック13bの踏面の面積Sbとの差Sa−Sbの絶対値は、先着側ブロック13aの踏面の面積Saの20%以下が望ましい。このような第1ショルダーブロック13によって、先着側ブロック13a及び後着側ブロック13bの剛性が均一化され、操縦安定性能が向上する。
図3は、第2トレッド半部22を示している。第2トレッド半部22は、第2センターブロック12と、第2ショルダーブロック14とを有する。
第2センターブロック12は、タイヤ周方向に隣り合う第2傾斜溝4と、該第2傾斜溝4にタイヤ軸方向に隣り合う第1傾斜溝3と、タイヤ周方向に隣り合う第2サイプ6と、第1サイプ5とによって区画されている。第2センターブロック12の一部の領域は、第1トレッド半部21に連なって、第1傾斜溝3及び第1サイプ5によって区画されている。第2センターブロック12は、第1トレッド半部21からのびる第1サイプ5によってタイヤ周方向に分割されている。すなわち、第2センターブロック12は、先着側ブロック12aと後着側ブロック12bとに分割される。
後着側ブロック12bのタイヤ軸方向の幅は、例えば、トレッド接地幅TWの5%〜20%が望ましい。上記後着側ブロック12bの幅がトレッド接地幅TWの5%未満の場合、後着側ブロック12bのタイヤ軸方向の剛性が不足して、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。一方、上記後着側ブロック12bの幅がトレッド接地幅TWの20%を超える場合、第2傾斜溝4の溝幅が小さくなり、排水性能が低下する。上記後着側ブロック12bの幅がトレッド接地幅TWの5%〜20%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記後着側ブロック12bの幅は、例えば、トレッド接地幅TWの10%である。
第2ショルダーブロック14は、タイヤ周方向に隣り合う第2傾斜溝4と、第2トレッド接地端TE2と、第2サイプ6とによって区画されている。第2ショルダーブロック14には、第2細溝8が設けられている。第2ショルダーブロック14は、第2細溝8によってタイヤ周方向に分割されている。すなわち、第2ショルダーブロック14は、先着側ブロック14aと後着側ブロック14bとに分割される。
第2細溝8は、第2トレッド接地端TE2からタイヤ軸方向に沿って内方にのび、第2傾斜溝4に連通する。第2細溝8が発生するエッジ効果によって、自動車用タイヤのウエット路面でのトラクション性能及びブレーキ性能が向上する。
本実施形態では、第2傾斜溝4を挟んで第1サイプ5と第2細溝8とが対向する位置に配置されている。これにより、第1サイプ5及び第2細溝8が相乗的に作用し、自動車用タイヤのウエット路面でのトラクション性能及びブレーキ性能がより一層向上する。
第2細溝8は、狭幅部81と、狭幅部81より溝幅が大きい拡幅部82とを有する。狭幅部81は、第2傾斜溝4に連通する。拡幅部82は、第2トレッド接地端TE2に連通する。接地面の先着側で狭幅部81が閉じることにより、第2ショルダーブロック14の剛性が高められる。一方、拡幅部82によって、第2トレッド接地端TE2の近傍での排水性能が高められる。
拡幅部82の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの1%〜15%が望ましい。拡幅部82の溝幅がトレッド接地幅TWの1%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、拡幅部82の溝幅がトレッド接地幅TWの25%を超える場合、第2ショルダーブロック14が小さくなり、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。拡幅部82の溝幅がトレッド接地幅TWの1%〜15%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい拡幅部82の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの4%である。
拡幅部82の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの55%〜85%が望ましい。拡幅部82の深さがトレッドゴム厚さの55%未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、拡幅部82の深さがトレッドゴム厚さの85%を超える場合、第2ショルダーブロック14の剛性が低下し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。拡幅部82の深さがトレッドゴム厚さの55%〜85%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい拡幅部82の深さは、例えば、トレッドゴム厚さの70%である。
拡幅部82のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、0゜〜45゜が望ましい。上記拡幅部82の角度が0゜未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記拡幅部82の角度が45゜を超える場合、先着側ブロック14aの面積と後着側ブロック14bの面積とが不均一となり、耐摩耗性能が低下するおそれがある。上記拡幅部82の角度が0゜〜45゜に設定されることにより、排水性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましい上記拡幅部82の角度は、例えば、0゜である。
第2サイプ6は、第1傾斜溝3の第2トレッド半部22側の先端部3aに連通する。これにより、タイヤ赤道CL近傍での排水性能が高められる。
第2ショルダーブロック14において、先着側ブロック14aの踏面の面積Saと後着側ブロック14bの踏面の面積Sbとの差Sa−Sbの絶対値は、先着側ブロック14aの踏面の面積Saの20%以下が望ましい。このような第2ショルダーブロック14によって、先着側ブロック14a及び後着側ブロック14bの剛性が均一化され、操縦安定性能が向上する。
図1に示されるように、本実施形態の自動車用タイヤでは、トレッド部2には、タイヤ周方向に連続する周方向溝が設けられていない。このような自動車用タイヤは、トレッド部2のタイヤ軸方向の剛性が大きいので、前輪装着時での舵角時の初期応答性能が高められ、後輪装着時でのコーナリング性能が高められる。
第1傾斜溝3は、第1トレッド接地端TE1を超えて、タイヤ軸方向の外方に延出されている。本実施形態では、第1トレッド接地端TE1の外側領域での第1ショルダーブロック13の回転方向Rの先着側端縁13cのタイヤ軸方向に対する角度は、その後着側端縁13dのタイヤ軸方向に対する角度と同じである。これにより、トレッド部2の排水性能が高められる。
上記先着側端縁13cの角度は、例えば、0゜〜45゜が望ましい。上記先着側端縁13cの角度が0゜未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記先着側端縁13cの角度が45゜を超える場合、第1ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の剛性が低下し、コーナリング性能が低下するおそれがある。上記先着側端縁13cの角度が0゜〜45゜に設定されることにより、排水性能及びコーナリング性能がバランスよく向上する。より望ましい上記先着側端縁13cの角度は、例えば、0゜である。
第2傾斜溝4は、第2トレッド接地端TE2を超えて、タイヤ軸方向の外方に延出されている。本実施形態では、第2トレッド接地端TE2の外側領域での第2ショルダーブロック14の回転方向Rの先着側端縁14cのタイヤ軸方向に対する角度は、その後着側端縁14dのタイヤ軸方向に対する角度と同じである。これにより、トレッド部2の排水性能が高められる。
上記先着側端縁14cの角度は、例えば、0゜〜45゜が望ましい。上記先着側端縁14cの角度が0゜未満の場合、排水性能が低下するおそれがある。一方、上記先着側端縁14cの角度が45゜を超える場合、第2ショルダーブロック14のタイヤ軸方向の剛性が低下し、コーナリング性能が低下するおそれがある。上記先着側端縁14cの角度が0゜〜45゜に設定されることにより、排水性能及びコーナリング性能がバランスよく向上する。より望ましい上記先着側端縁14cの角度は、例えば、0゜である。
トレッド部2は、一対のショルダー領域Sh、Sh、ショルダー領域Shのタイヤ軸方向内側に配される一対のミドル領域Mi、Mi、及び、ミドル領域Mi、Mi間に配されるセンター領域Ceに区分される。ショルダー領域Shは、各トレッド接地端TE1、TE2からタイヤ軸方向内側にトレッド接地幅TWの1/6の領域である。ミドル領域Miは、各ショルダー領域のタイヤ軸方向の内端からタイヤ軸方向内側にトレッド接地幅TWの1/6の領域である。
センター領域Ceのランド比は、例えば、30%〜80%が望ましい。「ランド比」とは、トレッド部2に設けられた全ての溝を埋めた状態で測定される表面積に対する実際の陸部の合計接地面積の割合である。センター領域Ceのランド比が30%未満の場合、センター領域Ceで各ブロックの踏面の面積が不足し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。一方、センター領域Ceのランド比が80%を超える場合、排水性能が低下するおそれがある。また、各ブロックの温まり性能が低下し、走行初期でのグリップ性能が十分に得られないおそれがある。センター領域Ceのランド比が30%〜80%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましいセンター領域Ceのランド比は、例えば、55%である。
ミドル領域Miのランド比は、例えば、50%〜80%が望ましい。ミドル領域Miのランド比が50%未満の場合、ミドル領域Miで各ブロックの踏面の面積が不足し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。一方、ミドル領域Miのランド比が80%を超える場合、排水性能が低下するおそれがある。また、各ブロックの温まり性能が低下し、走行初期でのグリップ性能が十分に得られないおそれがある。ミドル領域Miのランド比が50%〜80%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましいミドル領域Miのランド比は、例えば、65%である。
ショルダー領域Shのランド比は、例えば、50%〜90%が望ましい。ショルダー領域Shのランド比が50%未満の場合、ショルダー領域Shで各ブロックの踏面の面積が不足し、グリップ性能及び耐摩耗性能が低下するおそれがある。一方、ショルダー領域Shのランド比が90%を超える場合、排水性能が低下するおそれがある。また、各ブロックの温まり性能が低下し、走行初期でのグリップ性能が十分に得られないおそれがある。ショルダー領域Shのランド比が50%〜90%に設定されることにより、排水性能、グリップ性能及び耐摩耗性能がバランスよく向上する。より望ましいショルダー領域Shのランド比は、例えば、70%である。
図4は、図1のトレッド部2の変形例であるトレッド部2Aの展開図である。トレッド部2Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2の構成が採用されうる。トレッド部2Aでは、トレッド部2に対して、第1傾斜溝3及び第2傾斜溝4の形状が変更されている。より具体的には、トレッド部2Aでは、第1センター部31のタイヤ周方向に対する角度θ1及び第2センター部41のタイヤ周方向に対する角度θ2が変更されている。すなわち、トレッド部2Aでは、タイヤ赤道CLの近傍での上記角度θ1及びθ2が大きく設定されている。
図5は、図1のトレッド部2の別の変形例であるトレッド部2Bの展開図である。トレッド部2Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2等の構成が採用されうる。トレッド部2Bでは、トレッド部2に対して、第1傾斜溝3及び第2傾斜溝4の形状が変更されている。より具体的には、トレッド部2Bでは、タイヤ赤道CLでの上記角度θ1及び角度θ2が90゜である。また、第1センター部31の曲率半径及び第2センター部41の曲率半径が小さく設定されている。さらに、第1センター部31と第1ショルダー部32との間には、直線状に傾斜してのびる直線部33が設けられている。同様に、第2センター部41と第2ショルダー部42との間には、直線状に傾斜してのびる直線部43が設けられている。
図6は、図1のトレッド部2のさらに別の変形例であるトレッド部2Cの展開図である。トレッド部2Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2及び2B等の構成が採用されうる。トレッド部2Cでは、トレッド部2Bに対して、第1傾斜溝3及び第2傾斜溝4の形状及び配置が変更されている。より具体的には、トレッド部2Cでは、第1傾斜溝3の先端部3a及び第2傾斜溝4の先端部4aが回転方向Rの先着側にずれて配置されている。そして、第1サイプ5と第2傾斜溝4とは先端部4aで連通せず、第2サイプ6と第1傾斜溝3とは先端部3aで連通しない。
図7は、図1のトレッド部2のさらに別の変形例であるトレッド部2Dの展開図である。トレッド部2Dのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2及び2C等の構成が採用されうる。トレッド部2Dでは、第1傾斜溝3の先端部3a及び第2傾斜溝4の先端部4aが、角張った形状に形成されている。
図8は、図1のトレッド部2のさらに別の変形例であるトレッド部2Eの展開図である。トレッド部2Eのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2及び2D等の構成が採用されうる。トレッド部2Eでは、第1センター部31の曲率半径及び第2センター部41の曲率半径が大きく設定されている。
図9は、図1のトレッド部2のさらに別の変形例であるトレッド部2Fの展開図である。トレッド部2Eのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2及び2E等の構成が採用されうる。トレッド部2Fでは、第1傾斜溝3は第2トレッド半部22の側に延長されて、先端部3aが第2傾斜溝4に連通している。同様に、第2傾斜溝4は第1トレッド半部21の側に延長されて、先端部4aが第1傾斜溝3に連通している。
図10は、図1のトレッド部2のさらに別の変形例であるトレッド部2Gの展開図である。トレッド部2Gのうち、以下で説明されてない部分については、上述したトレッド部2及び2E等の構成が採用されうる。トレッド部2Gでは、第1傾斜溝3の第1センター部31の溝幅が先端部3aに向って漸減する。同様に、第2傾斜溝4の第2センター部41の溝幅が先端部4aに向って漸減する。
以上、本発明の自動車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
図1のトレッドパターンを有するレーシングカート用タイヤが、表1の仕様に基づき試作され、下記の条件で、排気量100ccの四輪レーシングカートの全輪に装着され、各種の性能がテストされた。テスト方法は、以下の通りである。
<前輪>
サイズ:10×4.50−5
リム:4.5
内圧:100kPa
<後輪>
サイズ:11×6.50−5
リム:6.5
内圧:100kPa
<トラクション性能及びブレーキ性能>
各テストタイヤが、下記の条件で、排気量100ccの四輪レーシングカートの全輪に装着された。そして、テストドライバーが、ドライアスファルト路面のテストコースを走行させ、このときのトラクション性能及びブレーキ性能に関する走行特性が、テストライダーの官能により評価された。結果は、実施例1を5.0とする5点法で表示されている。数値が大きいほど良好でグリップ性能が高いと評価できる。
<ウエットグリップ性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、水深5mmのウエットアスファルト路面を走行させ、このときのウエットグリップ力に関する走行特性がテストドライバーの官能により評価された。結果は、実施例1を5.0とする5点法で表示されている。数値が大きいほど良好で、ウエット性能及びグリップ性能が高いと評価できる。
<タイムトライアル>
テストドライバーが、上記テスト車両を、1周734mのアスファルト路面のテストコースを、水深5mmのウエット状態及びドライ状態で各7周走行させた。結果は、各状態での走行タイムの合計を下記の評価方法により点数化した5点法で表示されている。数値が大きいほど良好で、ウエット性能,グリップ性能及び操縦安定性能が高いと評価できる。
1.0:最速タイム+3.0秒以上
1.5:最速タイム+2.5秒以上、3.0秒未満
2.0:最速タイム+2.0秒以上、2.5秒未満
2.5:最速タイム+1.5秒以上、2.0秒未満
3.0:最速タイム+1.0秒以上、1.5秒未満
3.5:最速タイム+0.5秒以上、1.0秒未満
4.0:最速タイム+0.2秒以上、0.5秒未満
4.5:最速タイム+0.2秒未満
5.0:最速タイム
<耐摩耗性>
テストドライバーが、上記タイムトライアルの走行終了後、トレッド部の表面に生成された、ささくれ状の摩耗であるアブレージョン摩耗について観察した。結果は、摩耗状態を下記の評価方法により点数化した5点法で表示されている。数値が大きいほど良好である。
1:重大なアブレージョン摩耗が発生した。
2:中度なアブレージョン摩耗が発生した。
3:軽度なアブレージョン摩耗が発生した。
4:アブレージョン摩耗が発生する兆候が見られた。
5:アブレージョン摩耗が全く発生しなかった。
<総合性能>
総合性能は、トラクション性能、ブレーキ性能、ウエットグリップ性能、タイムトライアル及び耐摩耗性のテスト結果の平均値である。
テストの結果などが表1に示される。
表1から明らかなように、実施例の自動車用タイヤは、比較例に比べて各性能がバランスよく有意に向上していることが確認できた。