つぎに図1から図6を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池セルを収容した燃料電池モジュールについて説明する。図1は本発明の一実施形態による燃料電池モジュールを含む固体酸化物形燃料電池装置を示す全体構成概略である。図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えており、燃料電池モジュール2と補機ユニット4とは固体酸化物形燃料電池装置1の内部に並設される。
燃料電池モジュール2は、モジュール容器8を備え、このモジュール容器8の外部には、断熱材7、板状断熱材1000の順に配置されている。モジュール容器8の内部は密閉空間であり、モジュール容器8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガス(以下では適宜「発電用空気」又は「空気」と呼ぶ。)とにより発電反応を行う燃料電池セル12が配置されている。この例では、燃料電池セル集合体14は、128本の燃料電池セルユニット16を有する。燃料電池セル集合体14は、複数の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のモジュール容器8の発電室10の上方には、燃焼部としての燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の空気とが燃焼し、排気ガス(言い換えると燃焼ガス)を生成するようになっている。また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを生成する改質器120が配置され、上記した残余ガスの燃焼熱によって改質器120を改質反応が可能な温度となるように加熱している。
さらに、図1に示すようにモジュール容器8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外部へ発散するのを抑制している。断熱材7の外部には、板状断熱材1000が配置され、燃料電池モジュール2の外表面を板状断熱材1000と固定部材(図示せず)とで構成されており、板状断熱材1000は端部を固定部材1004(図2、3を参照)によって固定され燃料電池モジュール2を形成している。
また、モジュール容器8の上方には、蒸発器140が断熱材7内に設けられている。蒸発器140は、供給された水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって、水を蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気と原燃料ガスとの混合ガス(以下では「燃料ガス」と呼ぶこともある。)をモジュール容器8内の改質器120に供給する。
図2は、本発明の実施形態による燃料電池モジュール1002の全体斜視図である。さらに、図3と図4は板状断熱材1000と固定部材1004とで構成される燃料電池モジュール2の簡易分解図を示している。また、図5は図2におけるX―X断面に沿った上面視部分断面図である。図2、図4、図5に示すように燃料電池モジュール2、1002は、その外表面が板状断熱材1000と固定部材1004とで構成されており、領域Aは二つの板状断熱材1000が接触する箇所で、領域Bは三つの板状断熱材1000が接触する箇所の角部を示している。
ここで、図3、4を参照しながら、燃料電池モジュール1002の構成に関して説明する。図3に示すように、上下面、左右、正背面の6面全面にヒュームドシリカを含有するブロック状の断熱材1001が配置されており、その内部にはモジュール容器1016が収納されている。さらに、断熱材1001の外表面において、下面を除いた全面に板状断熱材1000が周囲を覆うように設けられている。下面に配置された断熱材1001の表面側には、金属板によって構成され端部が上方に折り曲げられたトレー1010が配置されており、トレー1010は図3に示すように底面の周囲4辺が折り曲げられて立ち上がり、底面全体を覆うように形成されている。なお、本実施形態では下面に板状断熱材1000を設置していないが、これに限るものではない。
つぎに、図4に示すように、板状断熱材1000は8つの固定部材1004によって板状断熱材1000同士が固定される。それぞれの固定部材1004は二つの板状断熱材1000が接触する箇所の領域Aと、三つの板状断熱材1000が接触する個所の領域Bとを覆うように設けられており、複数の板状断熱材1000を固定している。さらに、図2を参照すると、燃料電池モジュール1002の一側面には燃料供給配管1003、発電用空気導入管1005、温度センサ1006、点火装置1020が板状断熱材1000と断熱材1001とを貫通して側面から燃料電池モジュール1002の内部へと挿入されており、上面からは水添脱硫器用水素取出管1009がモジュール容器1002の上方に突出している。
ところで、一般的に断熱材は脆く、燃料電池モジュール1002の組み立ての際などに割れや欠けが発生しやすく、割れや欠けが生じた断熱材は、通常と比較して断熱性能が低下し、発生した微小な粉塵が補機ユニット4(図1参照)に侵入し内部を構成する電子部品のショートや電子部品の放熱妨害を引き起こしてしまう。このため、従来では断熱材1000をモジュール容器1016の表面に配置し、その後断熱材1000の外表面に金属製のカバー部材で覆い、断熱材1000の保護や補強を行っていた。しかしながら、断熱材1000とカバー部材との接触による断熱材1000の破損のリスクや、モジュール容器1016を覆うほどの金属製のカバー部材による重量化が懸念される。
そこで、本発明において図3に示すように、断熱材1000aの周囲を形状保持シート1000bによって保護しながら断熱材1000aの強度を向上させた板状形状の板状断熱材1000(図5参照)を、断熱材1001の下面を除いた全ての表面に貼り付けるように配置されている。さらに、図4に示すように、これらの板状断熱材1000は各々が端部で接触し、その接触領域を覆うように配置された断面形状がL字の固定部材1004によってモジュール容器1016に固定されている。すなわち、板状断熱材1000は形状保持シート1000bによって十分な強度が付与されて板状形状が保持できるため、最外表面に設置して燃料電池モジュール1002として形成することが可能であり、さらに断熱材の割れや欠けによって発生した粉塵が補機ユニット4(図1参照)へ悪影響を及ぼすリスクを低減することが可能となる。
また、形状保持シート1000bによって断熱材1000aが保護されているため、断熱材を保護するための金属製のカバー部材が不要となり、モジュール容器2の外表面として用い、板状断熱材1000とモジュール容器1016との間には強度的に不安のある複数の断熱材1001を配置することができる。すなわち、モジュール容器1016を囲む断熱材を全て形状保持シート1000bによって保護する必要はなく、断熱材を2層または多層に構成して最外層の断熱材を形状保持シート1000bによって覆うことで、最小限の形状保持シート1000bでコストを抑えながら構成することができる。これによって、断熱性能を高めるために、厚みが増えてサイズが大きくなった断熱材を形状保持シート1000bによって被覆せずとも、内部に断熱材1001を別途配置させればよく、断熱材1001の表面に貼り付けるように外表面に配置して固定することができ、従来通りの断熱性能を確保しながら組み立て性向上と軽量化を計ることができる。
また、形状保持シート1000bは熱伝導性の低いガラスクロスを用いている。ガラスクロスの最高使用温度はおよそ550℃で燃料電池装置の作動温度よりも低いものであるが、板状断熱材1000とモジュール容器1016の間には被覆シート1000bに覆われていない断熱材1001を内側に配置しているため、燃料電池モジュール1002が高温で運転されることによって被覆シートが劣化や損傷することはない。
ところで、複数の断熱材によってモジュール容器1016を包囲した場合には、それぞれの断熱材の接触箇所Aは隙間ができやすいため内部の熱が逃げやすく、一体的に形成された断熱材に比べて断熱性能が低くなる。しかし、本件発明の実施形態によれば、図5を参照すると、板状断熱材1000のそれぞれが接触する領域Aにおいて、形状保持シート1000bに包まれた断熱材1000aは固定部材1004によってそれぞれの接触面を圧迫する方向に圧力が働く(図5の太字実線矢印)。具体的には、二つの板状断熱材1000が接触する領域Aにおいて、L字の固定部材1004が板状断熱材1000をモジュール容器1016方向に圧迫するように力が働く(太字実線矢印)。そのため、板状断熱材1000の断熱材1000aは、図5の一点鎖線矢印に示すように、圧迫方向から逃れるように長手方向に延出しようとするため、図5の黒字太線に示すように、状断熱材1000の端部は押しつぶされて密着している。以上のことから、二つの板状断熱材1000の接触箇所を示す領域Aでは、固定部材1004による長手方向に延出しようとする力(一点鎖線矢印)が働くことで、断熱材1000の端部が押しつぶされて密着するため、隙間ができやすい断熱材の合わせ面からの放熱を抑制することができる。
図2に示すように、3つの板状断熱材1000が接触する燃料電池モジュールの角部の領域Bでは、特に隙間ができやすく、熱を放出しやすい。しかしながら本件発明の実施形態によれば、燃料電池モジュールの角部の領域Bには固定部材1004の3つが重なる部分であり、板状断熱材1000に大きな圧力がかかる。そのため、板状断熱材1000の端部を確実に押しつぶすことが可能になり、最も放熱が生じやすい角部の領域Bにおいても、断熱性能が低下することはない。
上述したように、それぞれの板状断熱材1000は一辺に渡って領域Aにおいて接触するが(図2の領域A参照)、断面形状がL字の固定部材1004は線状形状に形成されているため、二つの板状断熱材1000を一辺に渡って密着させている(図5の黒字太線を参照)。さらに、領域Aにおいて、一つの固定部材1004で二つの板状断熱材1000を均等に圧迫されるため(図5の太字実線矢印を参照)、部分的に断熱性能が異なることなく、最低限の固定部材1004で一辺に渡って均一な断熱性能を発揮できる。なお、本実施例においては燃料電池モジュール2の底面以外に設けた板状断熱材1000を固定部材1004によって固定しており、全体的にモジュール容器1016方向に向かう圧力を均等にしているが、部分的に固定部材を設けても良い。
ここで、断熱材1001、1000aはヒュームドシリカを含有するものである。ヒュームドシリカを含有する断熱材は一般的に脆く、断熱性能が良いが親水性が強いため内部に水分を蓄えてしまう。断熱材の補強の観点から断熱材の外表面に金属性の筐体で覆うことが知られているが、内部に蓄えた水分が運転環境下によって蒸発し、その水分が金属筐体と断熱材の間で結露と蒸発を繰り返して断熱材が劣化してしまうという問題があった。そこで、本発明によれば、ヒュームドシリカを含有する断熱材1001、1000aは、固定部材1004が設けられている箇所を除いてモジュール容器1016の最外表面を構成しているため、断熱材1001、1000aの内部に蓄えた水分は蒸発すると共に燃料電池モジュール2の外方に放出され、水蒸気の凝縮によって発生する水による断熱材1001、1000aの劣化を防止することができる。
以上のことから、本発明の実施形態によれば、板状断熱材1000と固定部材1004とによって燃料電池モジュール最外表面を構成するため、つまり燃料電池モジュールの筐体を形成することができるため、断熱材を保護するための金属製のカバーが不要となり、低コスト化や軽量化を計ることが可能となる。さらに、板状断熱材1000は強度が高く、断熱材1001に貼り付けるようにモジュール容器1016に組み付けて最外面が構成できるため断熱材の破損のリスクを低くしつつ燃料電池モジュール1002の組み立てが可能となる。それに加えて、固定部材1004によって領域Aまたは領域Bの放熱を抑えながら板状断熱材1000を固定することができるため、別途複数の部材によって断熱性能を強化する必要がなく、軽量化と組み立て性向上を実現できる。
つぎに、図6を参照しながら、燃料電池モジュール1002の側面から内部に挿入され、燃料電池セル1018の上部に配置された点火装置1020について説明する。図6は図2のY−Yの断面図を示している。
図6に示すように、燃料電池モジュール1002のモジュール容器1016の発電室1019の上方には燃焼室1014が形成され、この燃焼室1014で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の空気とを燃焼させており、燃焼の際には点火装置1020によって残余のガスに着火して燃焼させている。なお、本実施例では点火装置1020は点火ヒーターを用いているが、点火プラグ等によって着火してもよい。
また、図6は点火装置1020が設置されたモジュール容器1016の部分断面図を示している。点火装置1020は板状断熱材1000と断熱材1001を貫通し、モジュール容器1016の側壁からモジュール内部に挿入されており、点火装置1020の先端は燃焼室1014に位置するように配置されている。なお、ここでは改質器は図示しない。
ここで、点火装置1020の先端は燃焼室1014に位置するように設けられているため、常に燃焼室1014の高温の燃焼熱を受け続けることとなる。その一方で、図2、4に示すように点火装置1020は板状断熱材1000と断熱材1001を貫通してモジュール容器1016内部へと挿入されるため、周囲を断熱材で覆われることとなり、自身に蓄えた燃焼室1014からの熱を放熱しにくく、点火装置1020などの電子部品は熱劣化の促進や破損に至ってしまう。そのため、本実施形態において、点火装置1020がモジュール容器1016の内部の熱によって劣化・破損する事を防止する目的で、点火装置1020と板状断熱材1000の外表面とを接続する放熱部材1022を設けている。
放熱部材1022は伝熱性を有する金属板で構成されており、この金属板は一方が点火装置1020と接触し、他方が板状断熱材1000の外表面と接続され、それぞれが固定されている。このように構成することで、点火装置1020に蓄えた熱量が熱伝導によって放熱部材1022に伝わり、板状断熱材1000の外表面側へと伝熱していき、放熱部材1022と板状断熱材1000外方の空気とで熱交換を行う(図6の点線矢印)。そのため、断熱材に囲まれている点火装置1020から放熱させることができ、蓄熱による点火装置1020の劣化や故障を防止することができる。なお、板状断熱材1000の大きさや接触面積を変化することによって放熱量を調整することができ、最低限の熱量を点火装置1020から放熱させて燃料電池モジュール10022の熱効率を維持することができる。また、本実施形態では点火装置1020について言及したが、モジュール容器1016を貫通して内部から熱を受ける電子部品に適用することも可能である。
(第1実施例)
次に、図7〜図24を参照して、本発明の第1実施例を説明する。
図7は、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図8は、図7のIII−III線に沿った断面図であり、図9は、モジュール容器及び空気通路カバーの分解斜視図である。
図7及び図8に示すように、燃料電池モジュール2は、断熱材7で覆われたモジュール容器8の内部に設けられた燃料電池セル集合体12及び改質器120を有すると共に、モジュール容器8の外部で且つ断熱材7内に設けられた蒸発器140を有する。
まず、モジュール容器8は、図9に示すように、略矩形の天板8a,底板8c,これらの長手方向(図7の左右方向)に延びる辺同士を連結する対向する一対の側板8bからなる筒状体と、この筒状体の長手方向の両端部の2つの対向する開口部を塞ぎ、天板8a及び底板8cの幅方向(図8の左右方向)に延びる辺同士を連結する閉鎖側板8d,8eからなる。
モジュール容器8は、空気通路カバー160によって天板8a及び側板8bが覆われている。空気通路カバー160は、天板160aと、対向する一対の側板160bとを有する。天板160aの略中央部分には、排気管171を貫通させるための開口部167が設けられている。天板160aと天板8aとの間、及び、側板160bと側板8bとの間は、所定の距離だけ離間した状態となっている。これにより、モジュール容器8の外側と断熱材7との間、具体的にはモジュール容器8の天板8a及び側板8bと、空気通路カバー160の天板160a及び側板160bとの間には、酸化剤ガス供給通路としての空気通路161a,161bが形成されている(図8参照)。
モジュール容器8の側板8bの下部には、複数の貫通孔である吹出口8fが設けられている(図9参照)。発電用空気は、空気通路カバー160の天板160aのうち、モジュール容器8の閉鎖側板8e側の略中央部に設けられた発電用空気導入管74から流路方向調整部164を介して空気通路161a内に供給される(図7、図9参照)。そして、発電用空気は、空気通路161a,161bを通って、吹出口8fから燃料電池セル集合体12に向けて発電室10内に噴射される(図8、図9参照)。
また、空気通路161a,161bの内部には、熱交換促進部材としての板状のオフセットフィンであるプレートフィン162,163が設けられている(図8参照)。プレートフィン162は、モジュール容器8の天板8aと空気通路カバー160の天板160aの間で長手方向及び幅方向に延びるように水平方向に設けられ、プレートフィン163は、モジュール容器8の側板8bと空気通路カバー160の側板160bとの間であって、且つ、燃料電池セルユニット16よりも上方の位置に長手方向及び鉛直方向に延びるように設けられている。
空気通路161a,161bを流れる発電用空気は、特にプレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の内側のモジュール容器8内(具体的には天板8a,側板8bに沿って設けられた排気通路)を通過する排気ガスとの間で熱交換を行い、加熱されることとなる。このようなことから、空気通路161a,161bにおいてプレートフィン162,163が設けられた部分は、熱交換器(熱交換部)として機能する。なお、プレートフィン162が設けられた部分が主たる熱交換器部分を構成し、プレートフィン163が設けられた部分が従たる熱交換器部分を構成する。
次に、蒸発器140は、モジュール容器8の天板8a上で水平方向に延びるように固定されている。また、蒸発器140とモジュール容器8との間には、これらの隙間を埋めるように断熱材7の一部分7aが配置されている(図7及び図8参照)。
具体的には、蒸発器140は、長手方向(図7の左右方向)の一側端側に、水及び原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい)を供給する燃料供給配管63と、排気ガスを排出するための排気ガス排出管82(図8参照)とが連結され、長手方向の他側端側に、排気管171の上端部が連結されている。排気管171は、空気通路カバー160の天板160aに形成された開口部167を貫通して下方へ延び、モジュール容器8の天板8a上に形成された排気口111に連結されている。排気口111は、モジュール容器8内の燃焼室18で生成された排気ガスをモジュール容器8の外へ排出する開口部であり、モジュール容器8の上面視略矩形の天板8aのほぼ中央部に形成されている。
また、蒸発器140は、図7及び図8に示すように、上面視で略矩形の蒸発器ケース141を有している。この蒸発器ケース141は、2つの高さの低い有底矩形筒状の上側ケース142と下側ケース143とを、これらの間に中間板144を挟んだ状態で接合して形成されている。
したがって、蒸発器ケース141は、上下方向に二層構造となっており、下層部分には、排気管171から供給された排気ガスが通過する排気通路部140Aが形成され、上層部分には、燃料供給配管63から供給された水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発部140Bと、蒸発部140Bで生成された水蒸気と燃料供給配管63から供給された原燃料ガスとを混合させる混合部140Cが設けられている。
蒸発部140B及び混合部140Cは、複数の連通孔(スリット)が設けられた仕切り板により蒸発器140を仕切った空間にて形成されている。また、蒸発部140B内には、アルミナボール(図示せず)が充填されている。
また、排気通路部140Aは、同様に複数の連通孔を有する2つの仕切り板により排気ガスの上流側から下流側にかけて3つの空間に仕切られている。そして、2番目の空間に燃焼触媒(図示せず)が充填されている。すなわち、本第1実施例の蒸発器140は、燃焼触媒器を含んでいる。
このような蒸発器140では、蒸発部140B内の水と排気通路部140Aを通過する排気ガスとの間で熱交換が行われ、排気ガスの熱により蒸発部140B内の水が蒸発して、水蒸気が生成されることとなる。また、混合部140C内の混合ガスと排気通路部140Aを通過する排気ガスとの間で熱交換が行われ、排気ガスの熱により混合ガスが昇温されることとなる。
更に、図7に示すように、混合部140Cには、改質器120に混合ガスを供給するための混合ガス供給管112が接続されている。この混合ガス供給管112は、排気管171の内部を通過するように配置されており、一端が中間板144に形成された開口144aに連結され、他端が改質器120の天面に形成された混合ガス供給口120aに連結されている。混合ガス供給管112は、排気通路部140A内,排気管171内を通過してモジュール容器8内まで鉛直下方に延び、そこで略90°屈曲されて天板8aに沿って水平方向に延びた後、下方へ略90°屈曲されて改質器120に連結されている。
次に、改質器120は、燃焼室18の上方でモジュール容器8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置され、モジュール容器8の天板8aとの間に排気ガス誘導部材130を介して所定距離隔てられて状態で、天板8aに対して固定されている。改質器120は、上面視で外形略矩形であるが、中央部に貫通孔120bが形成された環状構造体であり、上側ケース121と下側ケース122とが接合された筐体を有している。この貫通孔120bは、天板8aに形成された排気口111と上面視で重なるように位置し、好ましくは、貫通孔120bの中央位置に排気口111が形成される。
改質器120の長手方向の一端側(モジュール容器8の閉鎖側板8e側)では、上側ケース121に設けられた混合ガス供給口120aに混合ガス供給管112が連結されており、他端側(閉鎖側板8d側)では、燃料ガス供給管64が下側ケース122に、脱硫器36まで延びる水添脱硫器用水素取出管65が上側ケース121にそれぞれ連結されている。したがって、改質器120は、混合ガス供給管112から混合ガス(つまり水蒸気が混合された原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい))を受け取り、内部で混合ガスを改質し、燃料ガス供給管64及び水添脱硫器用水素取出管65から改質後のガス(即ち、燃料ガス)を排出するように構成されている。
改質器120は、その内部空間が2つの仕切り板123a,123bによって3つの空間に仕切られることにより、改質器120内に、混合ガス供給管112からの混合ガスを受入れる混合ガス受入部120Aと、混合ガスを改質するための改質触媒(図示せず)が充填された改質部120Bと、改質部120Bを通過したガスを排出するガス排出部120Cと、が形成されている(図7参照)。改質部120Bは、仕切り板123a,123bに挟まれた空間であり、この空間に改質触媒が保持されている。混合ガス及び改質後の燃料ガスは、仕切り板123a,123bに設けられた複数の連通孔(スリット)を通って移動可能となっている。また、改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
混合ガス受入部120Aには、蒸発器140から混合ガス供給管112を介して供給された混合ガスが混合ガス供給口120aを通して噴出される。この混合ガスは、混合ガス受入部120A内で拡張されて噴出速度が低下し、仕切り板123aを通過して改質部120Bに供給される。
改質部120Bでは、低速で移動する混合ガスが改質触媒により燃料ガスに改質され、この燃料ガスが仕切り板123bを通過してガス排出部120Cに供給される。
ガス排出部120Cでは、燃料ガスが燃料ガス供給管64、及び、水添脱硫器用水素取出管65へ排出される。
燃料ガス供給通路としての燃料ガス供給管64は、モジュール容器8内を閉鎖側板8dに沿って下方へ延び、底板8c付近で略90°屈曲されて水平方向に延びて、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内へ入り、更にマニホールド66内で逆側の閉鎖側板8e付近まで水平方向に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、燃料ガスがマニホールド66内に供給される。このマニホールド66の上方には、燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。また、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
排気ガス誘導部材130は、改質器120と天板8aとの間でモジュール容器8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置されている。排気ガス誘導部材130は、上下方向に所定距離だけ離間された下部誘導板131及び上部誘導板132と、これらの長手方向の両端辺が取り付けられる連結板133,134とを備えている(図7,図8参照)。上部誘導板132は、幅方向の両端部が下方に向けて折り曲げられ、下部誘導板131に連結されている。連結板133,134は、上端部が天板8aに連結され、下端部が改質器120に連結されており、これにより、排気ガス誘導部材130及び改質器120を天板8aに固定している。
下部誘導板131は、幅方向(図8の左右方向)の中央部が下方に向けて突出する凸状段部131aが形成されている。一方、上部誘導板132は、下部誘導板131と同様に、幅方向の中央部が下方に向けて凹状となるように凹部132aが形成されている。凸状段部131aと凹部132aは、上下方向で並行して長手方向に延びている。混合ガス供給管112は、モジュール容器8内でこの凹部132a内を水平方向に延びた後、閉鎖側板8e付近で下方に向けて屈曲し、上部誘導板132及び下部誘導板131を貫通して、改質器120に連結されている。
排気ガス誘導部材130は、上部誘導板132、下部誘導板131、連結板133,134によって、断熱層として機能する内部空間であるガス溜135が形成されている。このガス溜135は、燃焼室18と流体連通している。すなわち、上部誘導板132、下部誘導板131、連結板133,134は、所定の隙間を形成するように連結されており、気密的には連結されていない。ガス溜135には、運転中に燃焼室18から排気ガスが流入したり、停止時に外部から空気が流入したりすることが可能となっているが、総じてガス溜135の内外間のガスの移動は緩やかである。
上部誘導板132は、天板8aと所定の上下方向距離を隔てて配置されており、上部誘導板132と天板8aとの間には、長手方向及び幅方向に沿って水平方向に延びる排気通路172が形成されている。この排気通路172は、モジュール容器8の天板8aを挟んで空気通路161aと並設されており、排気通路172内には、空気通路161a,161b内のプレートフィン162,163と同様なプレートフィン175が配置されている。このプレートフィン175は、プレートフィン162と上面視で略同一箇所に設けられており、天板8aを挟んで上下方向に対向している。空気通路161a及び排気通路172のうち、プレートフィン162,175が設けられた部分において、空気通路161aを流れる発電用空気と排気通路172を流れる排気ガスとの間で効率的な熱交換が行われて、排気ガスの熱により発電用空気が昇温されることとなる。
また、改質器120は、モジュール容器8の側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されており、改質器120と側板8bとの間には、排気ガスを下方から上方へ通過させる排気通路173が形成されている。また、排気ガス誘導部材130も側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されており、排気通路173は、排気ガス誘導部材130と側板8bとの間の通路を含んで天板8aまで延びている。排気通路173は、天板8aと側板8bとの角部に位置する排気ガス導入口172aで排気通路172と連通している。この排気ガス導入口172aは、モジュール容器8内で長手方向に延びている。
さらに、下部誘導板131は、改質器120の上側ケース121の天面から所定の上下方向距離を隔てて配置されており、下部誘導板131と上側ケース121との間、及び、改質器120の貫通孔120bは、貫通孔120bを下方から上方へ向けて通過した排気ガスを通過させる排気通路174を形成している。この排気通路174は、改質器120の上方で排気通路173と合流する。
次に、図10を参照して、燃料電池セルユニット16について説明する。図10は、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図10に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い細管である。このため、マニホールド66(図7参照)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(図7参照)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に、図11を参照して、燃料電池セルスタック14について説明する。図11は、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図11に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。
各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図7参照)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セルユニット16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図11では左端の奥側)に位置する燃料電池セルユニット16の空気極には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の内側電極端子86に接続され、上述したように、128本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に、図12及び図13を参照して、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュール内のガスの流れについて説明する。図12は、図7と同様の、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図13は、図8と同様の、図7のIII―III線に沿った断面図である。図12及び図13は、それぞれ、図7及び図8中にガスの流れを示す矢印を新たに付加した図であり、説明の便宜上、断熱材7を取り除いた状態の図を示している。図中、実線矢印は燃料ガスの流れ、破線矢印は発電用空気の流れ、一点鎖線矢印は排気ガスの流れを示す。
図12に示すように、水及び原燃料ガス(燃料ガス)は、蒸発器140の長手方向の一端側に連結された燃料供給配管63から蒸発器140の上層に設けられた蒸発部140B内に供給される。蒸発部140Bに供給された水は、蒸発器140の下層に設けられた排気通路部140Aを流れる排気ガスにより加熱され水蒸気となる。この水蒸気と、燃料供給配管63から供給された原燃料ガスとが、蒸発部140B内を下流方向に流れて行き、混合部140C内で混合される。混合部140C内の混合ガスは、下層の排気通路部140Aを流れる排気ガスにより加熱される。
混合部140C内で形成された混合ガス(燃料ガス)は、混合ガス供給管112を通って、モジュール容器8内の改質器120に供給される。混合ガス供給管112は、排気通路部140A,排気管171,及び排気通路172を順に通過しているため、これらの通路を流れる排気ガスにより、混合ガス供給管112内の混合ガスは更に加熱される。
混合ガスは、改質器120内の混合ガス受入部120A内に流入し、ここから仕切り板123aを通過して改質部120Bに流入する。混合ガスは、改質部120Bにおいて改質されて燃料ガスとなる。こうして生成された燃料ガスは、仕切り板123bを通過して、ガス排出部120Cに流入する。
更に、燃料ガスは、ガス排出部120Cから燃料ガス供給管64と水添脱硫器用水素取出管65とに分岐する。そして、燃料ガス供給管64に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給管64の水平部64aに設けられた燃料供給孔64bからマニホールド66内に供給され、マニホールド66から各燃料電池セルユニット16内に供給される。
また、図12及び図13に示すように、発電用空気は、発電用空気導入管74から空気通路161aに供給される。発電用空気は、空気通路161a,161b内において、プレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の下部のモジュール容器8内に形成された排気通路172,173を通過する排気ガスとの間で効率的な熱交換を行い、加熱されることとなる。特に、排気通路172内には、空気通路161aのプレートフィン162に対応してプレートフィン175が設けられているので、発電用空気は、プレートフィン162とプレートフィン175とを介して、排気ガスとより効率的な熱交換を行う。この後、発電用空気は、モジュール容器8の側板8bの下部に設けられた複数の吹出口8fから燃料電池セル集合体12に向けて発電室10内に噴射される。なお、本第1実施例では、燃料電池セル集合体12の側方部位には排気通路が形成されていないため、この部位において発電用空気と排気ガスとの間の熱交換は行われない。したがって、燃料電池セル集合体12の側方部位において、空気通路161b内の発電用空気に上下方向の温度勾配が生じ難くなっている。
また、発電室10内で発電に利用されなかった燃料ガスは、図13に示すように、燃焼室18で燃焼されて排気ガス(燃焼ガス)となり、モジュール容器8内を上昇していく。具体的には、排気ガスは、排気通路173と排気通路174とに分岐して、改質器120の外側面とモジュール容器8の側板8bとの間、及び、改質器120の貫通孔120bから改質器120と排気ガス誘導部材130との間をそれぞれ通過する。このとき、排気通路174を通過する排気ガスは、改質器120の貫通孔120bの上方に配置された凸状段部131aによって幅方向に二分され、排気ガス誘導部材130の下部に留まることなく排気通路173に向けて誘導され、排気通路173を流れる排気ガスに素早く合流される。
その後、排気ガスは、排気ガス導入口172aから排気通路172に流入する。排気通路172内では、排気ガスは、排気通路172を水平方向に流れていき、モジュール容器8の天板8aの中央に形成された排気口111から流出する。
なお、排気ガスが排気通路173を上方へ流れていく際に、空気通路161b内に設けられたプレートフィン163を介して、発電用空気と排気ガスとの間で熱交換が行われる。また、排気ガスが排気通路172を水平方向に流れていく際に、排気通路172内に設けられたプレートフィン175と、このプレートフィン175に対応して空気通路161a内に設けられたプレートフィン162とを介して、発電用空気と排気ガスとの間で効率的な熱交換が行われる。このようにして、排気ガスの熱により発電用空気が昇温される。
そして、排気口111から流出した排気ガスは、モジュール容器8の外部に設けられた排気管171を通過して蒸発器140の排気通路部140Aに流入し、排気通路部140Aを通過した後、蒸発器140から排気ガス排出管82へ排出される。排気ガスは、蒸発器140の排気通路部140Aを流れる際に、上述したように、蒸発器140の混合部140C内の混合ガス及び蒸発部140B内の水と熱交換を行う。
次に、図14〜図18を参照して、本第1実施例の改質器の作用について説明する。図14は、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールの上部の部分断面図であり、図15は、改質器の周囲を流れる排気ガスの説明図であり、図16及び図17は、それぞれ改質器及び排気ガス誘導部材の側面断面斜視図及び正面断面斜視図であり、図18は、改質器の貫通孔を流れる排気ガスの説明図である。
図14に示すように、発電室10内に供給された発電用空気は、上方へ向けて移動し(図14の破線矢印参照)、燃焼室18でオフガスを燃焼させて排気ガスとなる。改質器120に貫通孔120bが形成されていない場合には、排気ガスは、燃焼室18から、排気通路173(モジュール容器8の側板8bの内面に沿って延びる)のみを通って、モジュール容器8内の上部へ向けて移動することになる。この場合、発電用空気の流路分布は、燃料電池セル集合体12に対して、上面視幅方向の両端部付近に偏ったものとなり、中央部分の燃料電池セルユニット16への空気供給が十分でなくなり、この部分の燃料電池セルユニット16を劣化させてしまうおそれがあった。
そこで、本第1実施例では、改質器120に貫通孔120bを設けることにより、排気通路174(改質器120の貫通孔120bから改質器120と排気ガス誘導部材130との間に延びる)を形成している。これにより、本第1実施例では、排気ガスは、燃焼室18から、排気通路174と排気通路173とに分岐して、モジュール容器8内の上部へ向けて移動することができる(図15参照)。
また、本第1実施例では、特に、排気通路174と排気通路173を流れる排気ガスの流量比が所定値になるように、特定的には、排気通路173よりも排気通路174を流れる排気ガスの流量が大きくなるように、排気通路173の通路断面積,改質器120の上側での排気通路174の通路断面積,貫通孔120bの開口面積や角部R形状,後述する連結凹部等が寸法設計されている。これにより、改質器120と燃料電池セル集合体12との距離が接近していたとしても、排気ガスを確実に排気通路174へ流すことができる。このため、本第1実施例では、このような排気ガスの流れに伴い、発電用空気の流れは、上面視で燃料電池セル集合体12の幅方向の両端部付近に偏ることなく、中央部分へも流れるため、発電室10内での発電用空気の空気供給量のムラが抑制され、発電用空気の流れが均等化され易くなる。
また、本第1実施例では、改質器120は、その底面に衝突する排気ガスによって加熱された後、排気通路173を通過する排気ガスにより幅方向の側方から加熱されると共に、貫通孔120bを通過する排気ガスにより中央部からも加熱される。このように、第1実施例では、排気ガスによる改質器120の加熱を効率良く行うことができる。
また、本第1実施例では、上面視で改質器120の貫通孔120bとモジュール容器8の排気口111とが少なくとも部分的に重なり合うように形成されている。より好適には、上面視で排気口111は、貫通孔120bの点対称な位置である、貫通孔120bの長手方向及び幅方向の中央部に配置されている。また、上面視で排気口111及び貫通孔120bは、燃料電池セル集合体12の中央部分に配置されている。
仮に、排気口111が、上面視で貫通孔120bに対して幅方向にずれて配置されている場合には、貫通孔120bから排気口111への排気ガスの流れが、少なくとも幅方向において不均等又は非対称になる。そして、このような排気ガスの流れに伴って、発電用空気の流れも幅方向において不均等になる。しかしながら、本第1実施例では、排気口111と貫通孔120bが上面視でモジュール容器8の中央部分に配置され、且つ、互いに重なり合う構成となっているため、貫通孔120bから排気口111への排気ガスの流れが、少なくとも幅方向において均等になり、発電用空気の流れも幅方向において均等になる。なお、改質器120も上面視でモジュール容器8の中央位置に配置されている。これにより、発電用空気の流路分布の偏りが抑制されて、中央部分及び両端部付近を含んで略均等に燃料電池セルユニット16へ発電用空気を十分に供給することができるため、燃料電池セルユニット16の劣化を抑制することが可能となる。
また、本第1実施例では、改質器120の幅方向において、排気ガスの流量が対称(線対称)となるように、即ち、貫通孔120bを挟んで両側の排気通路173の流量が均等で流路分布の偏りがなくなるように、貫通孔120bは、上面視で改質器120を少なくとも幅方向に略等分に区分けするように線対称に形成されている。なお、本第1実施例では、貫通孔120bは、上面視で改質器120を長手方向にも略等分に区分けするように線対称に形成されている。
また、本第1実施例では、図16及び図17に示されているように、改質器120の貫通孔120bは、上面視略長円形であり、長手方向に延びるように形成されている。また、改質器120のハウジングは、上側ケース121及び下側ケース122からなる。上側ケース121及び下側ケース122の各々には、幅方向の両端部から貫通孔120bを連結するように内方へ窪んだ連結凹部121a,122aが形成されている。本第1実施例では、連結凹部121a,122aは、それぞれ長手方向に離間して2つずつ形成されている。
連結凹部122aは、燃焼室18から上昇してきた排気ガスが改質器120の下側ケース122の底面に衝突すると、この排気ガスを幅方向の両側、即ち、貫通孔120b(排気通路174)及びモジュール容器8の側板8bに沿った排気通路173に誘導する。これにより、本第1実施例では、排気通路173に排気ガスの流れが偏ることなく、貫通孔120bに排気ガスを積極的に供給することが可能となる。
また、連結凹部121a,122aは、改質器120の内部空間へ向けて突出している。具体的には、連結凹部121a,122aは、改質器120内の改質部120Bの流路を狭めるように内部空間へ向けて突出している。このため、混合ガスは、連結凹部121a,122aによる突出部分によって流路を変更しながら改質部120Bを流れるので、混合ガスと改質触媒との接触機会及び接触時間が増える。これにより、本第1実施例では、混合ガスの改質効率を向上させることができる。さらに、改質触媒は改質器120の周囲を流れる排気ガスにより所定温度まで昇温されるが、混合ガスと改質触媒との接触機会・接触時間が増えることにより、昇温した改質触媒によって混合ガスを効率良く加熱することができる。
また、本第1実施例では、上側ケース121及び下側ケース122は、同一の原ケース部材から形成されている。即ち、原ケース部材は、金属材料を所定の型を用いて成形(例えば、絞り加工)したものである。そして、同一の原ケース部材を加工することにより、上側ケース121と下側ケース122がそれぞれ形成される。このため、低コスト化と組み立て性の向上を両立することができる。また、改質器120のケースを1パーツ構成とすると、絞り加工では嵩高のケースを形成できないが、本第1実施例では、改質器120のケースを上側ケース121及び下側ケース122による2パーツ構成としているため、嵩高なケースを形成することができる。このため、容積を同一とした場合には、より底面積の小さな小型の改質器とすることができる。
上側ケース121と下側ケース122は、それぞれ外周側のフランジ部121b,122bと、貫通孔120bを形成する内周側のフランジ部121c,122cを有しており、これらフランジ部を重ね合せた状態で溶接固定されている。外周側のフランジ部121b,122bは、同一の幅を有しており、ケースの側方から容易に溶接作業を行うことが可能である。これに対して、内周側のフランジ部121c,122cが同一の幅を有していた場合には、これらフランジ部を側方から溶接作業を行うことは困難であり、組み立て性が悪い。このため、本第1実施例では、内周側のフランジ部121cは、フランジ部122cよりも幅が狭くなるように原ケース部材から加工されている(図17参照)。このため、フランジ部121c,122cは、これらフランジ部の段差を利用して上側から溶接作業を容易に行うことが可能となり、組み立て性を向上させることができる。
また、上側ケース121及び下側ケース122は、その内側面の角部(貫通孔120bの角部を含む)は、所定の曲率半径を有するR形状となるように湾曲形状とされている(図16及び図15の破線部A参照)。曲率半径は、1.0mm〜30mmが好ましい。このため、本第1実施例では、ガスが改質器120の内部を通過する際に、角部にガスが滞留することが防止されるので、容器内にデッドスペースがなくなり改質触媒に対して均一にガスを流通させ易くなる。
また、貫通孔120bの周面と下側ケース122の下面との接続部分又は角部は、貫通孔120bの周縁(連結凹部122aの部分も含む)にわたって、所定の曲率半径となるようにR形状に形成されている(図17の破線部A参照)。即ち、図18に示されているように、改質器120のケース断面は、改質器120の底面から貫通孔120bの周面(側面)にかけて、外側に向けて凸状となるR形状となっている。
貫通孔120bの周面と下側ケース122の底面との角部が所定の曲率半径の断面円弧状に形成されていることにより、下側ケース122に衝突した排気ガスは貫通孔120bに向けて誘導され易くなる。そして、このような排気ガスの流れに引っ張られて、発電用空気も貫通孔120bに向けて誘導される。しかしながら、曲率半径が大きくなり過ぎると、貫通孔120bへ誘導される発電用空気が多くなり過ぎて、改質器120の外周側を通過する発電用空気が少なくなり過ぎ、発電室10内での発電用空気の流路分布が不均等になってしまう。
このため、本第1実施例では、排気通路173と排気通路174での発電用空気の流量比が適宜な値になるように、角部の曲率半径が1.0mm〜30mmに設定されており、これにより、中央部分及び周縁部分に配置された燃料電池セルユニット16にそれぞれ十分な発電用空気を行き渡らせることができる。
次に、図14を参照して、本第1実施例の排気ガス誘導部材の作用について説明する。
本第1実施例では、蒸発器140をモジュール容器8の外部に配置しており、この配置により、モジュール容器8内で水の蒸発熱による局所的な温度低下(排気ガスの温度低下を含む)を防止し、排気ガスと発電用空気との熱交換をより効率的に行うように構成されている。したがって、本第1実施例では、燃料電池セルユニット16の側方部分で熱交換を行うことを回避して、モジュール容器8の天板8a付近の限定された部位のみで実質的な熱交換を行うことを可能としている。
このため、本第1実施例では、天板8aを挟んでその上下に空気通路161a,排気通路172が形成され、この部分で実質的な熱交換が行われるように構成されている。しかしながら、装置の小型化を図る場合には、天板8aの面積も小さくなるため、十分な熱交換を行うための面積が確保できなくなるおそれがある。そこで、本第1実施例では、排気通路172の入口と出口における排気ガスの温度差を可能な限り大きく維持することにより、高い熱交換効率を達成するように構成している。
このため、本第1実施例では、排気ガス誘導部材130を採用している。排気ガス誘導部材130は、貫通孔120bを通過して上昇してきた排気ガスを、貫通孔120bと向かい合うように下方に向けて突出する凸状段部131aに衝突させ、幅方向に方向付けて、速やかに排気ガス導入口172aに誘導する。これにより、排気ガスは、排気ガス誘導部材130の底面付近に滞留することなく、素早く排気ガス導入口172aに向けて誘導される。
排気ガス誘導部材130の上部には熱交換部として機能する排気通路172が形成されているため、排気ガス誘導部材130の上部の排気ガスは下部の排気ガスよりも低温である。したがって、排気通路174内で排気ガスが排気ガス誘導部材130の底面付近に滞留すると、排気ガス誘導部材130を介して排気通路172内の排気ガスとの間で熱交換が生じて、排気通路174内の排気ガスの温度が低下するおそれがある。また、排気通路174内の排気ガスは、改質器120の上面や排気ガス誘導部材130の下面を通して熱を奪われるおそれがある。しかしながら、本第1実施例では、排気ガス誘導部材130の底面に凸状段部131aを設けたことにより、改質器120の貫通孔120bを通過して上昇してきた高温の排気ガスを、排気ガス誘導部材130の底面付近に滞留させることなく、速やかに側方に誘導することができるので、高い温度を維持したまま排気ガス導入口172aに到達させることが可能となる。
また、排気通路172では、幅方向の両端部(排気通路172の入口である排気ガス導入口172a)から中央部(特に、排気通路172の出口である排気口111)に向けて排気ガスが流れる際に、発電用空気との熱交換が行われるため、排気ガス誘導部材130の凹部132a付近(図14の破線部A参照)での排気ガスの温度が最も低くなる。特に、凹部132aの長手方向の中央部分に配置された排気口111付近の温度が最も低くなる。一方、排気通路174では、改質器120の貫通孔120bの上方、即ち、排気ガス誘導部材130の凸状段部131a付近(図14の破線部B参照)の温度が最も高くなる。
最も温度が低い破線部Aの領域と最も温度が高い破線部Bの領域(図14参照)とは、排気ガス誘導部材130を介して上下に位置するため、直線的な離間距離は小さい。このため、これらの領域間で熱交換が行われてしまうと、排気ガスの入口温度が低下するおそれがある。そこで、本第1実施例では、排気ガス誘導部材130のケース部材内にガス溜135(ガス室)を形成し、このガス溜135を断熱材として機能させている。これにより、本第1実施例では、排気ガス誘導部材130の上下の空間(即ち、排気通路172と排気通路174)との間、特に図14の破線部A及びBの領域間の熱交換が遮断されるため、改質器120の貫通孔120bを通過して上昇してきた高温の排気ガスの温度低下が防止され、高温状態に維持したまま排気ガス導入口172aへ流出させて、排気ガスの入口温度を高温に維持することができる。
また、排気ガス誘導部材130が断熱材として機能するため、排気通路172内の排気ガスの熱が排気ガス誘導部材130によって奪われることが抑制され、排気通路172内の排気ガスと空気通路161a内の発電用空気との間の熱交換を促進させることができる。
さらに、排気通路172において、排気ガス誘導部材130の上部誘導板132が熱反射板として機能するため、上部誘導板132からの輻射熱を排気ガス及び空気に与えることができる。これにより、本第1実施例では、熱交換部でのより高い熱交換効率を達成することができる。
また、排気ガス誘導部材130は、伝熱性を有する部材(例えば、金属材料等)で形成されており、それ自体が熱伝導させる。したがって、高温の排気ガスが排気ガス誘導部材130の凸状段部131aに衝突することにより凸状段部131aが加熱されると、凸状段部131aから排気ガス誘導部材130の他の部位への熱伝導を完全に遮断することはできない。このため、排気ガス誘導部材130の上面への熱伝導も生じ得る。そうすると、排気ガス誘導部材130の上面において、熱交換部を構成する排気通路172の上流側と下流側の温度差が縮小され、熱交換効率の向上に不利となる。
そこで、本第1実施例では、排気ガス誘導部材130の上面のうち排気ガスの温度が最も低くなる排気通路172の下流側の部位(即ち、幅方向の中央部分)に凹部132aを形成することにより、排気通路172内で排気ガスの本流部分が通過する部分(凹部132aが形成された部位以外の通路高さ位置であり、図14ではプレートフィン175が位置する高さ位置)と排気ガス誘導部材130の凹部132aの底面との間の距離を大きくしている。これにより、排気通路172の下流側の部位において、排気ガスと排気ガス誘導部材130との間で熱交換が起き難くなり、凸状段部131aから凹部132aへの熱伝導が抑制される。即ち、凹部132aが熱伝導により一旦昇温した後は、凹部132a付近で排気ガスとの熱交換が起き難いため、凹部132aの温度は低下し難くなる。これにより、本第1実施例では、熱交換部でのより高い熱交換効率を達成することができる。
また、混合ガス供給管112は、排気口111からモジュール容器8内を通って、改質器120へ配管されている。このため、混合ガス供給管112内の混合ガスをモジュール容器8内で予熱することができるが、この予熱により排気ガスの熱が奪われるため、熱交換効率の向上にとって不利となる。そこで、本第1実施例では、排気ガスの温度が最も低くなっている排気通路172の下流側にある排気ガス誘導部材130の凹部132a内に混合ガス供給管112を配置することにより、熱交換部での熱交換前の高温の排気ガスではなく、熱交換後の低温の排気ガスによって混合ガス供給管112を昇温させるように構成されている。これにより、排気ガスの熱が混合ガス供給管112によって過剰に奪われることが抑制され、混合ガスを予熱する効率(熱交換効率)を低減することができる。
次に、図19〜図24を参照して、本第1実施例の熱交換器の作用について説明する。図19は、本発明の第1実施例による固体酸化物形燃料電池装置の熱交換部の横断面図であり、図20は、モジュール容器の天板と排気管の接続部分の説明図であり、図21は、モジュール容器の天板上の発電用空気供給通路の説明図であり、図22は、モジュール容器の天板下の排気通路の説明図であり、図23は、プレートフィンの斜視図であり、図24は、空気通路カバーの側板とモジュール容器の側板との間に配置されたプレートフィンの説明図である。
図19に示すように、空気通路カバー160は、モジュール容器8に対して、長手方向の一端側(図19の右側)にやや偏った位置に取り付けられている。具体的には、モジュール容器8の長手方向の他端側では、水添脱硫器用水素取出管65が天板8aを貫通して上方に延びているが、空気通路カバー160は、水添脱硫器用水素取出管65を避けてモジュール容器8の長手方向の一端側にずらして配置されている。これにより、空気通路カバー160には、水添脱硫器用水素取出管65を貫通させるための貫通孔を設けることが不要になる。また、空気通路カバー160に貫通孔を設けた場合には、水添脱硫器用水素取出管65を貫通孔において溶接等により気密的に固定する必要があるが、このような複雑な加工工程も不要となる。
また、図19に示すように、空気通路カバー160の天板160aの一端側の端部中央部分には、開口部165が形成されており、この開口部165を覆うように流路方向調整部164が固定されている。発電用空気導入管74を流れてきた発電用空気は、流路方向調整部164を介して開口部165を通って空気通路161a内へ供給される。発電用空気導入管74は、少なくともその供給側端部が、空気通路カバー160の天板160aの長手方向に沿って水平に延びている(図9参照)。なお、本第1実施例では、発電用空気導入管74の供給側端部が天板160a又は天板8aと平行に延びているが、先端側が下がるように角度付けされていてもよい。
流路方向調整部164は、発電用空気導入管74を連結するための略半円形状の取付部164aと、上方に突出するように形成された凸状流路部164bとを有する流路部材であり、天板160aの開口部165を塞ぐように取り付けられている。凸状流路部164bは、取付部164aから発電用空気の進行方向に沿って徐々に略半円形状の断面が相似的に縮小するカバー部材であり、内部に空気流路を形成している。したがって、内部空気流路は、先端側ほど上面が低くなり且つ幅も狭くなる。また、凸状流路部164bの下部は、開口部165を介して空気通路161aと連通している。
天板160aの下に形成された空気通路161aは、幅方向寸法及び長手方向寸法は大きいが、通路の高さは低くなるように形成されている。このため、モジュール容器8の天板8aと空気通路カバー160の天板160aとの間の距離(通路の高さ)は、発電用空気導入管74の径寸法よりも小さいので、発電用空気導入管74を空気通路161aの高さ部分で空気通路カバー160に連結することは困難であり、仮に連結することができたとしても圧力損失が大きくなる。
また、発電用空気導入管74を上下方向に延びるように配置し、上方から開口部165を通して空気通路161a内に発電用空気を供給した場合には、発電用空気が空気通路161aの下面に衝突し、側方の通路空間に向けて分散し難くなる。このため、発電用空気を空気通路161aの全域にムラなく供給することが困難となり、局所的に熱交換効率が低下する部位が生じるため、全体として熱交換効率が低下してしまう。
そこで、本第1実施例では、発電用空気導入管74の供給側端部を、流路方向調整部164を介して空気通路カバー160の天板160aに連結している。このように構成することにより、流路方向調整部164を別部材として空気通路カバー160に組み付けることが可能となると共に、発電用空気導入管74を空気通路カバー160に連結する組み付け性が向上される。また、流路方向調整部164を空気通路カバー160に予め組み付けておき、その後、空気通路カバー160をモジュール容器8に組み付けることが可能である。
しかしながら、この構成では、発電用空気導入管74が空気通路161aの上方にずれて位置することになり、発電用空気導入管74と空気通路161a内の流路方向とは長手方向成分において略平行であるが、上下方向に離間することになる。このため、流路方向調整部164は、発電用空気導入管74の供給側端部から離れるに従って、内部流路高さが低くなるように形成されている。これにより、凸状流路部164bは、発電用空気導入管74から供給される発電用空気の流路方向を徐々に下方に向けて変更し、空気通路161aの流路方向に対して緩やかな角度に角度付けて空気通路161aへ発電用空気を送り出すことができる。
さらに、凸状流路部164bは、発電用空気導入管74の供給側端部から離れるに従って、内部流路高さが低くなることに加えて、内部流路幅が狭くなるように形成されている(図9参照)。したがって、凸状流路部164bは、進行方向に対して流路断面積が徐々に小さくなる。このため、発電用空気は、流路方向調整部164内で大きな抵抗を受けることなく、徐々に増速される。これにより、空気通路カバー160の長手方向の一端側から空気通路161aに供給された発電用空気は、空気通路カバー160の長手方向の他端側まで到達可能であり、空気通路161aの全域に発電用空気をムラなく供給することができる。
また、流路方向調整部164を用いない場合には、発電用空気導入管74から流路高さの低い空気通路161aへの流入面積が小さくなるため、上述のように、圧力損失が大きくなってしまうが、流路方向調整部164を用いることにより、大きな流入面積を確保することができる。このため、本第1実施例では、圧力損失を小さくして、空気通路161aにおいて、空気通路カバー160の長手方向の他端側まで発電用空気をスムーズに供給することができる。
また、空気通路161a内には、排気管171の両側にモジュール容器8の長手方向に沿って2つの空気分配部材166が略平行に配置されている(図20、図21参照)。プレートフィン162は、空気分配部材166に対して、空気通路161aの幅方向外側に配置されており、したがって、2つの空気分配部材166の間には、プレートフィン162のようなガスが移動する際の抵抗となる部材(排気管171を除く)が存在しない空間が形成される。
空気分配部材166は、空気通路カバー160の天板160aの長手方向の略全体の長さ範囲にわたって空気通路161aを区画するように延びる長尺部材である。空気分配部材166は、長手方向に離間して所定間隔で形成された多数の貫通孔を有し、この貫通孔により空気通路161aを幅方向に連通している(図19参照)。また、空気分配部材166は、天板8aと天板160aとを連結している(図20参照)。
図21に示すように、流路方向調整部164を介して供給された発電用空気は、空気通路カバー160の一端側(図21の右側)から他端側に向けて2つの空気分配部材166の間を流れる。2つの空気分配部材166の間は、プレートフィンのような物理的な抵抗がないため、流路方向調整部164によって流速を速められて空気通路161a内に供給された発電用空気は、空気通路カバー160の他端側まで到達可能である。そして、発電用空気は、空気分配部材166の貫通孔を通って幅方向へ移動する。
空気分配部材166の貫通孔を通過した発電用空気は、プレートフィン162,天板8a,排気通路172内のプレートフィン175を介して、排気ガスとの間で熱交換が行われ昇温される。その後、発電用空気は、空気通路161aの幅方向の両端部に到達し、空気通路161bを経由して、モジュール容器8の側板8bに形成された吹出口8fから発電室10内へ噴射される。
流路方向調整部164は、空気通路カバー160の天板160aの4つの端辺のうち、空気通路161bに連通する端辺(長手方向に延びる辺)とは異なる端辺(幅方向に延びる辺)に配置されている。このため、本第1実施例では、発電用空気を天板8a上の空気通路161a内で長手方向に沿って供給しつつ幅方向に供給することにより、その後、側板8b上の空気通路161bに対して長手方向において均等に発電用空気を供給することができる。
本第1実施例では、モジュール容器8の外側から空気通路カバー160を組み付けて固定することにより、モジュール容器8外に空気通路161a,161bを容易に形成することができる(図9参照)。また、モジュール容器8の天板8a及び側板8b上に予めプレートフィン162,163を配置した後に、空気通路カバー160を配置することが可能であり、プレートフィン162,163の組み付け性も良好である。
また、モジュール容器8に対して空気通路カバー160を外部から機械溶接を適用し固定することが可能であるため、量産化を図ることができる。特に、本第1実施例では、空気通路カバー160が共に矩形状の天板160a及び側板160bを備えているため、外郭が直線的に形成されており、自動機械による溶接の適用が容易である。
このように、本第1実施例では、空気通路の形成のための作業性が良好となり、製造コストを低減することが可能である。
また、本第1実施例では、モジュール容器8内には排気通路のみを形成すればよくなるため、製造が容易になる。更に、モジュール容器8内に排気通路が位置するので、排気ガスがモジュール容器8外に漏洩することを防止することができる。一方、空気通路はモジュール容器8外に位置するが、空気通路の気密性が確保できなくなった場合でも、発電用空気がモジュール容器8外に漏洩するだけに留めることができる。
また、本第1実施例では、図20に示すように、モジュール容器8の天板8aの排気口111には排気管171が固定されている。このため、空気通路カバー160の開口部167に排気管171を挿入することにより、モジュール容器8に対して空気通路カバー160を位置決めすることができるので、良好な組付け性を確保することができる。
さらに、空気通路カバー160の開口部167には、その周縁部が上方へ突出するように湾曲されることにより環状部167aが形成されている。したがって、環状部167aの曲面に沿って排気管171を開口部167に容易に挿入することができる。
また、環状部167aと排気管171とを固定する際に、環状部167aが溶接を行う際の接続しろとなる。このため、本第1実施例では、環状部167aのような接続しろが無い場合と比べて、空気通路カバー160の開口部167と排気管171の周面とをより確実に溶接によって固定することができる。
このように、本第1実施例では、開口部167に上方へ突出する環状部167aを設けたことにより、空気通路カバー160をモジュール容器8に組み付ける際の作業性を向上させることができる。
本第1実施例では、上述のように、燃料電池セルユニット16の側方部分での熱交換を行うことを回避して、モジュール容器8の天板8a付近で実質的な熱交換を行うこととしている。この場合、天板8aの面積は燃料電池セルユニット16の側方の側板8bの面積よりも小さくなるため、十分な熱交換を行うための面積が確保できないおそれがある。しかしながら、本第1実施例では、小さな面積でも十分な熱交換を行うことができるように、上述の排気ガス誘導部材130に加えて、熱交換距離延長部材176を設けている。
図22に示すように、排気ガス誘導部材130の上部誘導板132上には、混合ガス供給管112及び凹部132aを挟んで幅方向の両側にプレートフィン175が配置されている。また、これらプレートフィン175の長手方向に延びる中央側の端辺に沿って、その内側に熱交換距離延長部材176が配置されている。2つの熱交換距離延長部材176は、長手方向に沿って略平行、且つ、排気口111に対して対称に配置されている。熱交換距離延長部材176は、その長さが天板8aの長手方向長さの略半分である長尺な板状部材であり、その下端部が上部誘導板132に固定されると共に、上端部が天板8aに当接されている(図20参照)。
排気通路173,174から排気ガス導入口172aを介して排気通路172へ供給された排気ガスは、天板8aの略中央部分に設けられた排気口111から排出される。したがって、熱交換距離延長部材176が無い場合には、排気ガスの流れは、排気ガス導入口172aから排気口111へ直接的に向かうようになり、排気通路172の一部に排気ガスの流れが偏ってしまい、排気ガスから十分な熱量をプレートフィン175に伝えることができない。その結果、排気ガスと発電用空気との間の熱交換を十分に行うことができない。
そこで、本第1実施例では、排気口111を挟んで2つの熱交換距離延長部材176を配置することにより、排気ガスを迂回させて排気口111へ導くように構成されている。具体的には、排気ガスは、排気ガス導入口172aからプレートフィン175を通過しつつ、排気通路172の幅方向の中央部に向けて移動する。ところが、排気口111の両側には長手方向に沿って熱交換距離延長部材176が配置されているので、排気ガスは、熱交換距離延長部材176に衝突し、その長手方向の一端側又は他端側に迂回して、2つの熱交換距離延長部材176の間の空間に到達し、さらにこの空間を通過して排気口111に到達する。このように、本第1実施例では、排気ガスに熱交換距離延長部材176を迂回させることにより、排気通路172において排気ガスが流れる距離が延長されると共に、排気通路172の全面で熱交換が可能となる。これにより、排気ガスから十分な熱量を空気通路161a内の発電用空気に伝えることが可能となり、その結果、排気ガスと発電用空気との間の熱交換効率を向上させることができる。
また、熱交換距離延長部材176は、その上端部が天板8aに当接されているので(図20参照)、排気ガスの熱を天板8aに直接的に伝導させて、空気通路161a内の発電用空気を昇温させることができる。
さらに、空気通路161aに供給された発電用空気は、排気管171の外周壁に衝突するため、排気管171の周囲付近は、空気密度が他の領域よりも高くなり(図20の破線部A参照)、排気管171は冷却される。一方、熱交換距離延長部材176の上端部は、排気管171(及び排気口111)付近の天板8aと当接している(図20、図22参照)。このため、熱交換距離延長部材176から温度が低下された排気管171への熱伝導が促進されるので、より効率的に空気通路161a内の発電用空気を昇温させることが可能である。
次に、図23に示すように、プレートフィン162,163,175は、矩形状の薄い金属板をプレス加工することにより形成されており、平面部200と、平面部200に所定間隔で形成され、平面部200の両面側に向けてそれぞれ突出する突出部202とを備えている。突出部202は、平面部200の一部を切り欠いて台形状に展伸させたものであり、傾斜部202aと天板部202bからなる。突出部202の傾斜部202aと天板部202bは、平面部200から離間しており、離間した部位に開口202cが形成されている。このように形成されたプレートフィンでは、平面部200の両側面に沿ってガスが流れる際に、ガスと平面部200とが直接的に熱交換を行う以外に、ガスが突出部202に衝突することにより、ガスと突出部202とが熱交換を行う。これにより、ガスとプレートフィンとの間で効率よく熱交換を行うことができる。
また、ガスと突出部202との衝突により、ガスの流路方向が変更される。具体的には、突出部202の傾斜部202aの外側面(開口202cと逆側の面)又は内側面(開口202c側の面)に衝突することにより、ガスの流路は側方へ変更される。これにより、ガスは、全体としては流路に沿った方向に流れるが、局所的には種々の方向に流れて互いに混じり合うため分散性が向上される。
また、図24に示すように、プレートフィン163は、モジュール容器8の側板8bと空気通路カバー160の側板160bに挟まれて配置されている。プレートフィン163は、側板8bとは突出部202の天板部202bで接触しているが、側板160bとは天板部202bに設けた突起部203を介して接触している。
突起部203は、天板部202bよりも接触面積が小さくなるように形成されており、例えば、天板部202bの一部を外方へ突出させることにより形成することができる。また、突起部203は、熱伝導性の良好なプレートフィンとは別部材とすることもできる。この場合、プレートフィンよりも熱伝導性の低い材料で形成すると好適である。
突起部203は、側板160b側のすべての突出部202の天板部202bに設けられてはおらず、少なくとも1つの天板部202bに設けられている。このため、側板160bに向けて突出する突出部202のうち、ほとんどの突出部202が側板160bと接触せず、1つ又は少数の突出部202のみが突起部203を介して側板160bと接触している。
このように、プレートフィン163は、接触面積が小さく、好ましくは熱伝導性が低い突起部203を介して、側板160bと接触している。このため、プレートフィン163から側板160bを介して外部の断熱材7へ熱を放散させること(熱損失)を抑制することが可能となり、排気通路173の排気ガスと空気通路161bの発電用空気との間の熱交換効率より向上させることができる。なお、プレートフィン162でも同様である。
(第2実施例)
つぎに、本発明にかかる固体酸化物形燃料電池装置1の第2実施例について、図25〜図29を参照しながら説明する。図25〜図29の(a)は第1実施例に記載の固体酸化物形燃料電池装置1を示し、(b)および(c)は第2実施例における固体酸化物形燃料電池装置を示している。なお、図25〜図29において、第1実施例と同じ機能を有する構成部品については、同一の番号を付与し、説明は省略する。
はじめに、第2実施例((b)及び(c))に記載の燃料電池モジュール2は第1実施例に対して、出力を抑えて燃料電池モジュールをコンパクトに形成して多用なニーズに応えることができるものである。例えば(b)の燃料電池モジュール2は燃料電池セルユニット16が6×13の合計78本のセルが配置されており、第1実施例よりもコンパクトに構成される(図26参照)。さらに、(c)に記載の燃料電池モジュール2は4×19の合計76本のセルが配置されており、(b)よりも燃料電池モジュール2を薄く構成することができる(図26参照)。
図25を参照すると、(a)に対して(b)及び(c)は幅方向(z方向)にコンパクトに形成されている。さらに(b)に対して、(c)の方が幅方向に小さく、奥行き方向(x方向)に長く形成されているため、同じ性能でありながら燃料電池モジュール2を薄く形成することができる。
ところで、燃料電池セルユニット16の作動温度は700〜1000度と非常に高温の状態で作動し、その排気ガスを使って改質器120の加熱を行うことができる。すなわち、別途外部から改質器120を加熱するための熱を与える必要がなく、高い発電効率を得ることができるという利点を有する。しかし、上述のように、燃料電池セルユニット16の総数を減らして小型化することによって、発電熱や燃焼熱が小さくなることに起因する問題が生じる。すなわち、燃料電池セルユニット16の発熱量や燃料電池セルユニット16の上部での燃焼量が小さくなることによって、熱自立性を担保させるための熱量が不足してしまうばかりか、昇温不足による改質不良を招いてしまう。その熱量不足を燃料電池セルユニット16上部の燃焼熱を大きくして補おうとすると、燃料電池セルユニット16の長手方向に温度ムラが生じてしまい、燃料電池セルユニット16の発電性能に支障をきたしてしまう。
さらに、装置が小型化すると流路長や流路径が縮小してしまい、熱交換距離の短縮や、熱交換通路を流れるガスの流速が増大することによる熱交換時間の短縮など、発電用空気と排気ガスとの熱交換性能が低下し、熱量不足の要因の一つとなる。加えて、発電用空気の流速が増大することによって、燃料電池セルユニット16への発電用空気の供給ムラや、着火不良を招いてしまう。また、マニホールド66も同様に小型化することから、マニホールド66の内部空間も小さくなり、燃料ガスが十分に分散せずに燃料電池セルユニット16に偏って供給される恐れがある。以上のことから、コンパクトな燃料電池モジュールにおいて、装置の小型化に伴い発生する種々の問題を解消することが求められる。
ここで、図25に示す第1実施例(a)、第2実施例(b)及び(c)において、燃料供給配管63は傾斜して蒸発器140へと配設されることによって水が蒸発器140内に流入しやすくすることができる。そのため、蒸発器140の入口側の圧力が上昇した場合においても、傾斜によって水が蒸発器140へ流れ落ちやすくなるため、安定的に蒸発器140に水・燃料供給することが可能となる。
さらに、発電用空気を供給するための発電用空気導入管74が、一側面から空気通路カバー160の天板106aに配設され、発電用空気がモジュール容器8の天板8aに吹き付けられるように構成されている。また、モジュール容器8の下方では、複数の燃料電池セルユニット16に電気的に接続されたバスバー252がモジュール容器8の外部に引き出されており、電気の取り出しを行う。
図26は図25に記載のx方向から見たモジュール容器8の断面図を示している。(a)は第1実施例の断面図を示しており、(b1)、(b2)及び(c)は第2実施例の断面図を示している。さらに、(b2)は(b1)に対して、排気側のプレートフィン175の配置箇所を拡大したものであって、(c)はプレートフィン163の配置箇所を拡大されている。
一般的に、燃料電池装置をコンパクトにしようとすると、排気ガスと発電用空気の熱交換距離も同時に小さくなるため、排ガスの熱を有効利用できずに熱利用率が低下してしまう恐れがある。そのため、図26の(b2)に示す第2実施例では、プレートフィン175の配置面積を(b1)に対して拡大することによって、熱交換距離が短くなっても、プレートフィン175によって熱交換を促進させているため、排気ガスと発電用空気との熱交換量は低下しない。
また、図26の(c)において、モジュール容器の天面の幅方向(図25のx方向)が小さいため、モジュール容器8の天板8aでの熱交換距離が非常に小さくなる。その場合、プレートフィン163の設置距離を大きくする(設置箇所を増やす)ことによって、熱交換距離が短くなっても、熱交換量は低下しない。
このように、小型化によって熱交換距離が小さくなったとしても、プレートフィン162、163、175によって熱交換性能が低下することを防ぐことができる。なお、熱交換距離が短くなった分をプレートフィン等の熱交換促進部材の配置箇所や配置距離によって補えばよいため、この配置方法に限るものではない。
ところで、マニホールド66の内部の燃料ガス供給管64およびマニホールド66の天面は、支持板260によってマニホールド内部に支持される。ここで、燃料ガスはマニホールド66の内部において、燃料ガス供給管64からマニホールド66の底面に吹き付けるように噴出されるため、支持板262がマニホールド66の内部のガス分散の障壁となってしまう。これは、特に図26の(c)に示されるように、モジュール容器8自体がコンパクトに形成されることによってマニホールド66の内部空間が小さくなり、燃料ガスの分散を阻害することとなる。従って、本実施例2によれば、図26の(c)に示すようなコンパクトな燃料電池モジュール2でも確実にマニホールド66の内部において、支持板262はガス通過領域の確保と、燃料ガス供給管64およびマニホールド66の天面の支持との両立を実現することができる。
ところで、図26に示すように、蒸発器140は、上面視で略矩形の蒸発器ケース141を有している。この蒸発器ケース141は、2つの高さの低い有底矩形筒状の上側ケース142と下側ケース143とを、これらの間に中間板144を挟んだ状態で接合して形成されている。これらの接合面には、蒸発器用ヒーター250が接合面に沿って配置されており、3つの部材の接合面から効率よく蒸発器140全体を昇温させることができる。なお、蒸発器140の天面と蒸発器用ヒーター250との高さを揃えることで平坦面を形成することができるため、蒸発器140の外周に配置される断熱材7の底面への特段の加工を不必要とすることができる。
なお、図示しないが、第1実施例(a)に記載の燃料電池モジュールを、第2実施例(b)、(c)に記載の燃料電池モジュールに小型化、コンパクト化するに際し、これに起因して変動する内部ガスの流動を調整するために、あるいはこれに起因して変動する熱量や温度分布を調整するために、流路長や流路径、各構成部品の間隔や形状等を適宜修正、変更して用いることも好ましい。
図27は、空気通路カバー160の記載を省略した燃料電池モジュール2の斜視図を示している。図27の第1実施例(a)及び、第2実施例(b)、(c)において、発電用空気導入管74から供給された空気は空気分散部材254とモジュール容器8の天板8aとの間に形成される空気流入室256に流入する。空気流入室256に供給された空気は、天板8aと接触することによって分散し、空気分散部材254に設けられた通過穴258からプレートフィン162、163と接触しながら、吹出口8fから燃料電池セルユニット16へと供給される。ここで、空気分散部材254に設けられた通過穴258は空気流入室256に流入してきた空気をプレートフィン162に任意の量で供給すればよいため、穴の数や大きさはこれに限るものではなく、モジュール容器8のサイズによって自由に構成してよい。
また、図27の第1実施例の斜視図(a)に対して、第2実施例(b)及び(c)では、モジュール容器の大きさが異なるため、発電用空気と排気ガスとの熱交換距離が異なり、第2実施例(b)及び(c)のようにコンパクトにした場合には、十分に熱交換できないことが考えられる。そのため、図27の(b)及び(c)に示すようにプレートフィン162、163の配置や、大きさを変えることによって、発電用空気と排気ガスとの熱交換量をコントロールすることができる。すなわち、図27の(c)では、モジュール容器8の天板8aのz方向が短くなってしまうが、y方向のプレートフィン163の距離を伸ばすことによって総合的な熱交換効率に差が生じないように構成することができる。
さらに、図27を参照すると、吹出口8fがモジュール容器8の側板8bに設けられており、吹出口8fからモジュール容器8の内部に配置された燃料電池セルユニット16へと発電用空気が供給されることとなる。本第2実施例によれば、図27の(b)及び(c)のように異なる大きさのモジュール容器においても、穴の配置場所、穴の数または、穴の大きさによって発電用空気の流量を調整し、供給ムラ等を防止することができる。
図28は第1実施例(a)と第2実施例((b)及び(c))における燃料電池モジュール2の斜視図を示している。第1実施例の図28の(a)は発電用空気導入管74をモジュール容器8の天板8aから一側面に配設している。さらに、図28(b)及び(c)を参照すると、発電用空気導入管74をモジュール容器8の天板8aからそのまま上方に突出させている。
本第2実施例((b)及び(c))においても、第1実施例(a)と同様に、燃料電池モジュール容器を板状に形状を保持する形状保持シートに被覆された複数の板状断熱材1000により覆い、複数の板状断熱材1000が互いに接触する部分は、固定部材1004によりモジュール容器に固定することができる。このように、モジュール容器の形状、サイズが異なった場合であっても本件発明を適用することができ、とくにモジュール容器の軽量化又は小型化を進めた場合に軽量性および作業性向上の観点で有益である。
ここで、図28の(a)、(b)及び(c)に共通して、板状断熱材1000や内部に設けられた断熱材7よりも内部に設けられた構成部品(例えば熱電対等)と燃料電池モジュール2の天面との平坦性を確保するための抑え部材260である。なお、抑え部材260の配置箇所や形状はこれに限るものではない。
図29は、図28のx方向から見た断面図である。なお、図29の(a)、(b)及び(c)において、それぞれ蒸発器140の断面図が異なるように断面を示している。第1実施例(a)、第2実施例(b)及び(c)は、蒸発器140が設置されたモジュール容器8を断熱材7、7a及び板状断熱材1000によって覆い、固定部材1004によって、モジュール容器8に固定されている。燃料電池モジュール2の下方からは電力を取り出すためのバスバー252が配置されている。
ところで、上述したように、モジュール容器8の内部では発電用空気の流速が増大傾向であるため、燃料電池セルユニット16への空気供給ムラや、長手方向の温度ムラや、着火不良(火移り不良)などが生じてしまう。そのため、図26に示す上支持板100を大きくすることによって、発電用空気の流れを乱して流速を低下させることも好ましい。さらに、図示はしないが、燃料電池モジュール2の起動時間を長くして、すなわち種々のガスの供給量や流速を抑えることによって、起動時の温度ムラや着火性を安定させることも好ましい。