以下、実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両用空調装置1は、内燃機関EG(換言すればエンジン)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(換言すれば商用電源)から供給された電力を、車両に搭載されたバッテリ81に充電可能なプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、EV運転モードは、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力がエンジンEGから出力される走行用の駆動力よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、EV運転モードは、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(すなわちモータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードである。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、HV運転モードは、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、HV運転モードは、駆動力比が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードである。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、バッテリ81から供給される電力による車室内の空調に加えて、車両走行前の車両停車時に外部電源から供給される電力によって車室内の空調(例えば、プレ空調)を実行可能に構成されている。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(換言すればインストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内には、空気が流れる空気通路が形成されている。
ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(換言すれば車室内空気)と外気(換言すれば車室外空気)とを切替導入する内外気切替部としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、内気導入口21および外気導入口22が形成されている。内気導入口21は、ケーシング31内に内気を導入させる。外気導入口22は、ケーシング31内に外気を導入させる。
さらに、内外気切替箱20の内部には、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。内外気切替ドア23は、吸込口モードを切り替える吸込口モード切替部であり、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整する。
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変更する風量割合変更部(換言すれば内外気切替部)を構成する。換言すれば、内外気切替ドア23は、空気通路に導入される内気および外気に対する外気の比率(以下、外気率と言う。)を調整する外気率調整部である。
より具体的には、内外気切替ドア23は、電動アクチュエータ62によって駆動される。この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、全内気モード、全外気モードおよび内外気混入モードがある。
内気モードでは、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内の空気通路へ内気を導入する。外気モードでは、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内の空気通路へ外気を導入する。
内外気混入モードでは、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、ケーシング31内の空気通路への内気と外気の導入比率を連続的に変化させる。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風部である送風機32(換言すればブロア)が配置されている。この送風機32は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(換言すれば送風能力)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更部を構成している。
送風機32のファンは、遠心多翼ファン(例えばシロッコファン)である。ファンは、空気通路に配置されており、内気導入口21からの内気、および外気導入口22からの外気を空気通路に送風する。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、空気通路の全域に亘って配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒(換言すれば熱媒体)と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却部(換言すれば熱交換部)として機能する。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
ここで、本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要な構成について説明すると、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その回転数が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更部を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された外気とを熱交換させることにより、圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させて凝縮させる室外熱交換器(換言すれば放熱器)である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(換言すれば送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧部である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却除湿する冷却用熱交換器として機能する。
以上が本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要構成の説明であり、以下、室内空調ユニット30の説明に戻る。ケーシング31内の空気通路において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用通路33およびバイパス通路34が並列に形成されている。加熱用通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。
空気通路において、加熱用通路33およびバイパス通路34の空気流れ下流側には、加熱用通路33およびバイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)を熱媒体として蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器(換言すれば空気加熱部)である。エンジンEGは、冷却水を加熱する冷却水加熱部(換言すれば熱媒体加熱部)である。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(換言すれば冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。冷却水ポンプ40aは、ヒータコア36を流れる冷却水の流量を調整する流量調整部である。
PTCヒータ37は、PTC素子(換言すれば正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱部としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、複数(本実施形態では、3本)のPTC素子37a、37b、37cから構成されている。各PTC素子37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側はスイッチ素子を介して、グランド側へ接続されている。スイッチ素子は各PTC素子の通電状態(換言すればON状態)と非通電状態(換言すればOFF状態)とを切り替えるものである。スイッチ素子の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
空調制御装置50は、各PTC素子37a、37b、37cの通電状態と非通電状態とを独立に切り替えるようにスイッチ素子の作動を制御することによって、通電状態となり加熱能力を発揮するPTC素子の本数を切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用通路33を通過する空気およびバイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、空気通路における蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用通路33およびバイパス通路34の入口側に、加熱用通路33およびバイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。
エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(換言すれば、車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整部を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39は、共通の電動アクチュエータ63によって駆動される共通の回転軸と、その共通の回転軸に連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。
この吹出口24〜26としては、具体的に、フェイス吹出口24、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26が設けられている。
フェイス吹出口24は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す上半身側吹出口である。フット吹出口25は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出す足元側吹出口である。デフロスタ吹出口26は、車両前面窓ガラスWの内側面に向けて空調風を吹き出す窓ガラス側吹出口である。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モードドア(換言すれば吹出口モード切替部)を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
吹出口モードとしては、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、およびフットデフロスタモードがある。図面では、フェイスモードをFACEと略記し、フットモードをFOOTと略記し、バイレベルモードをB/Lと略記する。
フェイスモードでは、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。バイレベルモードでは、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す。フットモードでは、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出す。フットデフロスタモードでは、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出す。
乗員が、図2に示す操作パネル60のデフロスタスイッチ60cをマニュアル操作することによって、デフロスタモードとすることもできる。デフロスタモードでは、デフロスタ吹出口26を全開してデフロスタ吹出口26から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出す。
本実施形態の車両用空調装置1は、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱部である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
車両用空調装置1は、図2に示すシート空調装置90を備えている。シート空調装置90は、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱部である。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱部である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26から吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
車両用空調装置1は、シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータを備えていてもよい。シート送風装置は、座席の内側から乗員に向けて空気を送風する送風部である。ステアリングヒータは、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリング加熱部である。膝輻射ヒータは、輻射熱の熱源となる熱源光を乗員の膝に向けて照射する暖房部である。シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータの作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御できる。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50(換言すれば空調制御部)、駆動力制御装置70(換言すれば駆動力制御部)および電力制御装置71(換言すれば電力制御部)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(換言すればインジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABoutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、PTCヒータ37、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
空調制御装置50の入力側には、内気センサ51、外気センサ52、日射センサ53、吐出温度センサ54、吐出圧力センサ55、蒸発器温度センサ56、冷却水温度センサ58、および窓表面湿度センサ59等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
内気センサ51は、車室内温度Trを検出する内気温度検出部である。外気センサ52は、外気温Tamを検出する外気温度検出部である。日射センサ53は、車室内の日射量Tsを検出する日射量検出部である。
吐出温度センサ54は、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度検出部である。吐出圧力センサ55は、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力検出部である。
蒸発器温度センサ56は、蒸発器15からの吹出空気温度TE(以下、蒸発器温度と言う。)を検出する蒸発器温度検出部である。冷却水温度センサ58は、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出部である。
本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出部を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出部を採用してもよい。
窓表面湿度センサ59は、窓近傍湿度を検出する湿度検出部である。窓近傍湿度は、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度である。
空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチは、空調ユニット30の作動を手動設定するための手動操作部である。
操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、エアコンスイッチ60a、オートスイッチ、吸込口モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ60b、デフロスタスイッチ60c、風量設定スイッチ60d、車室内温度設定スイッチ60e、エコノミースイッチ60f、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部60g等が設けられている。
エアコンスイッチ60aは、乗員の操作によって圧縮機11の起動および停止を切り替える圧縮機作動設定部である。エアコンスイッチ60aには、エアコンスイッチ60aの操作状況に応じて点灯・消灯するエアコンインジケータが設けられている。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定部である。
吹出口モード切替スイッチ60bは、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードおよびフットデフロスタモードを切り替える吹出口モード切替部である。デフロスタスイッチ60cは、乗員の操作によってデフロスタモードを設定するデフロスタモード設定部である。
フットデフロスタモードおよびデフロスタモードでは、残余の吹出口モードに比べて窓の防曇性が高くなる。吹出口モード切替スイッチ60bおよびデフロスタスイッチ60cは、空調ユニット30による窓の防曇性を向上させる指令を空調制御装置50に出力するための防曇操作部である。
風量設定スイッチ60dは、送風機32の送風量を手動設定するための風量設定部である。車室内温度設定スイッチ60eは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定部である。
エコノミースイッチ60fは、環境への負荷の低減を優先させるスイッチである。エコノミースイッチ60fを投入することにより、車両用空調装置1の作動モードが、空調の省動力化を優先させるエコノミーモードに設定される。エコノミースイッチ60fは省動力優先モード設定部である。
また、エコノミースイッチ60fを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。なお、駆動力制御装置70では、空調制御装置50からのエンジンEGの作動を要求する要求信号を受信すると、エンジンEGの作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジンEGの作動を制御する。
さらに、空調制御装置50は、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う電力制御装置71が電気的に接続されている。本実施形態の空調制御装置50には、電力制御装置71から出力される出力信号(例えば、空調用に使用を許可する空調使用許可電力を示すデータ等)が入力される。
ここで、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(例えば、ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、送風部である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風能力制御部50aを構成している。空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御部50bを構成している。
空調制御装置50のうち、吸込口モードの切り替えを制御する構成が吸込口モード切替部50cを構成している。空調制御装置50のうち、吹出口モードの切り替えを制御する構成が吹出口モード切替部50dを構成している。
空調制御装置50における駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成が、要求信号出力部を構成している。駆動力制御装置70における空調制御装置50と制御信号の送受信を行うと共に、要求信号出力部等からの出力信号に応じてエンジンEGの作動の要否を決定する構成(換言すれば作動要否決定部)が、信号通信部を構成している。
次に、図3〜図10により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図3は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器にバッテリ81や外部電源等から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。なお、図3〜図10中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現部を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58の検出信号や、外部電源からの電力の供給状態を示す電力状態信号等を読み込む。なお、電力状態信号が、外部電源から車両に電力を供給可能な状態(プラグイン状態)を示す場合には、外部電源フラグがONされ、外部電源から車両に電力を供給できない状態(プラグアウト状態)を示す場合には、外部電源フラグがOFFされる。
また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。従って、ステップS4は目標吹出温度決定部を構成している。
目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…F1
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(換言すれば内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するもので、車両用空調装置1に要求される空調負荷(空調熱負荷)として捉えることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、冷却水温度Tw等に基づいて算出する。
ステップS5の詳細については、図4のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS51では、ヒータコア流量に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、補正パラメータPWを決定して、ステップS52へ進む。
ヒータコア流量は、ヒータコア36を流れる冷却水の流量である。補正パラメータPWは、ヒータコア流量に応じてエアミックス開度SWを補正するために用いられるパラメータである。
具体的には、ヒータコア流量が小さいときは補正パラメータPWの値を大きくし、ヒータコア流量が大きいときは補正パラメータPWの値を小さくする。図4の例では、ヒータコア流量≦1.0L/minであれば補正パラメータPWの値を7とし、ヒータコア流量≧3.0L/minであれば補正パラメータPWの値を0とし、1.0L/min<ヒータコア流量<3.0L/minであればヒータコア流量が大きいほど補正パラメータPWの値を7〜0の範囲で小さくする。
すなわち、ヒータコア流量が小さければ、ヒータコア流量に応じてエアミックス開度SWを補正する必要性が高くなるため補正パラメータPWが7.0に設定される。ヒータコア流量が大きければ、ヒータコア流量に応じてエアミックス開度SWを補正する必要性が低いため補正パラメータPWが1.0に設定される。
続くステップS52では、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、ヒータコア通過割合を決定して、ステップS53へ進む。
ヒータコア通過割合は、室内空調ユニット30のケーシング31内の空気通路を通過する風量のうちヒータコア36を通過する風量(以下、ヒータコア風量と言う。)の割合を擬似的に算出した値である。
具体的には、冷却水温度Twが低いときはヒータコア通過割合の値を大きくし、冷却水温度Twが高いときはヒータコア通過割合の値を小さくする。図4の例では、Tw≦50℃であればヒータコア通過割合の値を1.0とし、Tw≧100℃であればヒータコア通過割合の値を0.5とし、50<Tw<100であれば冷却水温度Twが高いほどヒータコア通過割合の値を1.0〜0.5の範囲で小さくする。
続くステップS53では、前回のステップS6で決定したブロワ電圧とステップS52で決定したヒータコア通過割合とに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、ヒータコア風量係数CHを決定して、ステップS53へ進む。
ブロワ電圧は、送風機32の電動モータに印加する電圧である。ヒータコア風量係数CHは、ヒータコア風量に応じてエアミックス開度SWを補正するために用いられる係数である。
具体的には、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が小さいときはヒータコア風量係数CHの値を小さくし、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が大きいときはヒータコア風量係数CHの値を大きくする。
ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値は、ヒータコア風量の度合いを表している。すなわち、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が大きいほど、ヒータコア風量が多いと考えることができる。
図4の例では、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が4V以下であればヒータコア風量係数CHの値を1.0とし、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が12V以上であればヒータコア風量係数CHの値を3.0とし、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が4以上、12以下であれば、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が大きいほどヒータコア風量係数CHの値を1.0〜3.0の範囲で大きくする。
これにより、ヒータコア風量が大きい場合、ヒータコア風量係数CHが大きくなる。すなわち、ヒータコア風量が少なければ、風量に応じてエアミックス開度SWを補正する必要性が低いためヒータコア風量係数CHが1.0に設定される。ヒータコア風量が多ければ、風量に応じてエアミックス開度SWを補正する必要性が高くなるためヒータコア風量係数CHが3.0に設定される。
続くステップS54では、次の数式F2によりエアミックス開度SWを算出して、ステップS6へ進む。
SW=[{TAO−TE}/{(Tw−PW×CH)−TE}]×100(%)…F2
そして、決定されたエアミックス開度SWに応じてエアミックスドア39の開度が変更される。具体的には、エアミックス開度SWが0%に設定された場合、室内空調ユニット30のケーシング31内において蒸発器15通過後の空気の全量がバイパス通路34を流れるようにエアミックスドア39の開度が制御される。エアミックス開度SWが100%以上に設定された場合、室内空調ユニット30のケーシング31内において蒸発器15通過後の空気の全量が加熱用通路33を流れるようにエアミックスドア39の開度が制御される。エアミックス開度SWが0%超100%未満に設定された場合、蒸発器15通過後の空気がバイパス通路34および加熱用通路33を流れるように内外気切替ドア23の開度が制御される。
補正パラメータPWとヒータコア風量係数CHとの積PW×CHは、エアミックス開度SWを補正するために用いられる補正値である。この補正値PW×CHが大きいほど、数式F2の分母が小さくなるため、エアミックス開度SWが大きくなる側に補正される。
したがって、ヒータコア流量が小さい場合、エアミックス開度SWが大きくされてヒータコア風量の割合が大きくされるので、ヒータコア36での熱交換量が大きくなる。したがって、ヒータコア流量が小さい場合にヒータコア36の平均吹出空気温度を上昇させることができる。
ヒータコア36の平均吹出空気温度とは、ヒータコア36の冷却水入口側部位における吹出空気温度とヒータコア36の冷却水出口側部位における吹出空気温度との平均値のことである。
また、ヒータコア風量が多い場合も、エアミックス開度SWが大きくされてヒータコア風量の割合が大きくされるので、ヒータコア36での熱交換量が大きくなる。したがって、ヒータコア風量が多い場合にヒータコア36の平均吹出空気温度を上昇させることができる。
ヒータコア風量の割合は、エアミックス開度SWに応じて変化する。しかしながら、ステップS52では、ヒータコア通過割合をエアミックス開度SWに基づいて算出せず、冷却水温度Twに基づいて擬似的に算出する。
その理由は、ステップS54においてヒータコア風量の割合に基づいてエアミックス開度SWを補正することから、ステップS52においてヒータコア風量の割合をエアミックス開度SWに基づいて算出すると循環参照を起こして制御が収束しなくなるからである。
目標吹出温度が50℃前後であると仮定した場合、定常状態では、冷却水温度Twが50℃であるとヒータコア風量の割合が100%となり、冷却水温度Twが100℃であるとヒータコア風量の割合が50%となる。したがって、ステップS52で冷却水温度Twに基づいて擬似的に算出されるヒータコア通過割合は大凡正しい値となる。
次のステップS6では、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加する電圧)を決定する。このステップS6の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。
図5に示すように、まず、ステップS61では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS62で、操作パネル60の風量設定スイッチ60dによってマニュアル設定された乗員の所望の風量となるブロワ電圧が決定されて、ステップS7に進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチ60dは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS61にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS63で、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮ブロワ電圧f(TAO)および暖機時上限ブロワ電圧f(水温)を決定する。
仮ブロワ電圧f(TAO)は、空調熱負荷に応じて決定される。仮ブロワ電圧f(TAO)は、ステップS6で最終的に決定されるブロワ電圧の候補値として用いられる。ブロワ電圧は、送風機32の電動モータに印加する送風機電圧である。
本実施形態における仮ブロワ電圧f(TAO)を決定する制御マップは、TAOに対する仮ブロワ電圧f(TAO)の値がバスタブ状の曲線を描くように構成されている。
すなわち、図5のステップS63に示すように、TAOの極低温域(本実施形態では、−20℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)では、送風機32の風量が最大風量付近となるように仮ブロワ電圧f(TAO)を高レベルに上昇させる。
また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて送風機32の送風量が減少するように、仮ブロワ電圧f(TAO)を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて、送風機32の風量が減少するように仮ブロワ電圧f(TAO)を減少させる。
そして、TAOが所定の中間温度域内(本実施形態では、10℃〜38℃)に入ると、送風機32の風量が低風量となるように仮ブロワ電圧f(TAO)を低レベルに低下させる。これにより、空調熱負荷に応じた基本ブロワ電圧が算出される。
すなわち、仮ブロワ電圧f(TAO)は、TAOに基づいて決定される値である。換言すれば、仮ブロワ電圧f(TAO)は、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam、日射量Tsに基づいて決定される値に基づいて決定されている。
暖機時上限ブロワ電圧f(水温)は、エンジンEGの暖機時(すなわち冷却水温度Twが低温の時)におけるブロワ電圧の上限値である。ブロワ電圧補正値f(窓近傍湿度)は、窓ガラスの曇り可能性に応じたブロワ電圧の補正値である。
具体的には、図5のステップS63に示すように、冷却水温度Twの低温域(本実施形態では、40℃以下)では、暖機時上限ブロワ電圧f(水温)を0にする。冷却水温度Twの極高温域(本実施形態では、65℃以上)では、暖機時上限ブロワ電圧f(水温)を11にする。冷却水温度Twが低温域から高温域へと上昇するにつれて暖機時上限ブロワ電圧f(水温)を0以上11以下の範囲で上昇させる。
これにより、冷却水温度Twが十分に上昇しておらずヒータコア36で空気を十分に加熱できない状態のときに吹出風量が高くなって乗員が寒気を感じることを防止できる。
続くステップS64では、前回のステップS8で決定された吹出口モードがフェイスモード、フットモードまたはバイレベルモードであるか否かを判定する。
吹出口モードがフットモードまたはバイレベルモードであると判定された場合、ステップS65へ進み、次の数式F3によりブロワ電圧を算出する。
ブロワ電圧=MIN{f(TAO),f(水温)}…F3
なお、数式F3のMIN{f(TAO),f(水温)}とは、f(TAO)およびf(水温)のうち小さい方の値を意味している。
これにより、吹出口モードがフットモードまたはバイレベルモードである場合、送風機32の送風能力が目標吹出温度TAOおよび冷却水温度Twに応じて適切に調整される。
一方、吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合、ステップS66へ進み、ブロワ電圧を仮ブロワ電圧f(TAO)に決定する。
これにより、吹出口モードがフェイスモードである場合、送風機32の送風能力が目標吹出温度TAOに応じて適切に調整される。すなわち、吹出口モードがフェイスモードである場合、冷却水温度Twに応じた風量制御を行わない。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。このステップS7の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。図6に示すように、まず、ステップS701では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS702〜S704で、マニュアルモードに応じた外気導入率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、マニュアル吸込口モードが全内気モード(換言すればRECモード)の場合、ステップS703で外気率を0%に決定し、マニュアル吸込口モードが全外気モード(換言すればFRSモード)の場合、ステップS704で外気率を100%に決定する。外気率は、内外気切替箱20からケーシング31内に導入される導入空気(すなわち外気および内気)に対して外気が占める比率である。
一方、ステップS701にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS705へ進み、ステップS4で算出した目標吹出温度TAOに基づいて、空調運転状態が冷房運転か暖房運転かを判定する。図6の例では、目標吹出温度TAOが25℃を上回っている場合、暖房運転と判定し、それ以外の場合、冷房運転と判定する。
ステップS705にて冷房運転と判定した場合、ステップS706へ進み、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、外気率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、TAOが低いときは外気率を小さくし、TAOが高いときは外気率を大きくする。図6の例では、TAO≦0℃であれば外気率を0%とし、TAO≧15℃であれば外気率を100%とし、0℃<TAO<15℃であればTAOが高いほど外気率を0〜100%の範囲で大きくする。
決定された外気率に応じて内外気切替ドア23の開度が変更される。具体的には、外気率が0%に設定された場合、吸込口モードが全内気モードとなるように内外気切替ドア23の開度が制御される。外気率が100%に設定された場合、吸込口モードが全外気モードとなるように内外気切替ドア23の開度が制御される。外気率が0%超100%未満に設定された場合、吸込口モードが内外気混入モードとなるように内外気切替ドア23の開度が制御される。
これにより、冷房負荷が高いほど内気の導入率を高くして冷房効率を高めることができる。
一方、ステップS705にて暖房運転と判定された場合、ステップS707へ進み、窓表面湿度センサ59で検出した窓近傍湿度に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、外気率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、窓近傍湿度が低いときは外気率を小さくし、窓近傍湿度が高いときは外気率を大きくする。図6の例では、窓近傍湿度≦70%であれば外気率を50%とし、窓近傍湿度≧85%であれば外気率を100%とし、50%<窓近傍湿度<85%であれば窓近傍湿度が高いほど外気率を50〜100%の範囲で大きくする。
これにより、窓近傍湿度が高いほど外気の導入率を高くして車室内空間の湿度を低下させ、ひいては窓曇りを抑制する。
次のステップS8では、吹出口モード、すなわちフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aの切替状態を決定する。このステップS8の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。
図7に示すように、まず、ステップS81では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS82で、マニュアルモードに応じた吹出口モードを決定してステップS9へ進む。
具体的には、マニュアル吹出口モードがフェイスモードの場合、フェイスモードに決定し、マニュアル吹出口モードがバイレベルモードの場合、バイレベルモードに決定し、マニュアル吹出口モードがフットモードの場合、フットモードに決定し、マニュアル吹出口モードがフットデフロスタモードの場合、フットデフロスタモードに決定し、マニュアル吸込口モードがデフロスタモードの場合、デフロスタモードに決定する。
一方、ステップS81にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS83へ進み、ステップS5で算出した補正パラメータPWに基づいて次の数式F4により閾値補正量αを算出する。
閾値補正量α=補正パラメータPW×1.0…F4
続くステップS84では、ステップS4で算出した目標吹出温度TAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定する。
本実施形態では、図7のステップS84に示すように、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。なお、図7のステップS84に示す制御マップでは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
バイレベルモードとフットモードとを切り替える閾値は、ステップS83で算出された閾値補正量αによって減少補正される。これにより、ヒータコア流量が小さいほど、バイレベルモードとフットモードとを切り替える閾値が小さくなる。すなわち、ヒータコア流量が小さいほどバイレベルモードの温度域が狭くなってフットモードの温度域が広くなるので、ヒータコア流量が小さいほどバイレベルモードからフットモードに切り替わりやすくなる。
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。なお、ステップS9における圧縮機回転数の決定は、図3のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
このステップS9の詳細については、図8のフローチャートを用いて説明する。図8に示すように、まず、ステップS91では、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
このステップS91の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS911では、ステップS4で決定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、仮の目標吹出温度f(TAO)を算出する。
図9の例では、TAO≦4℃であれば仮の目標吹出温度f(TAO)を1℃とし、TAO≧12℃であれば仮の目標吹出温度f(TAO)を10℃とし、4℃<TAO<12℃であればTAOが大きいほど仮の目標吹出温度f(TAO)を1〜10℃の範囲で大きくする。
続くステップS912では、ステップS4で決定した窓近傍湿度に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、防曇目標吹出温度f(窓近傍湿度)を算出する。
図9の例では、窓近傍湿度≦85%であれば防曇目標吹出温度f(窓近傍湿度)を10℃とし、窓近傍湿度≧95%であれば防曇目標吹出温度f(窓近傍湿度)を1℃とし、85%<窓近傍湿度<95%であれば窓近傍湿度が高いほど防曇目標吹出温度f(窓近傍湿度)を10〜1℃の範囲で小さくする。
続くステップS913では、仮の目標吹出温度f(TAO)および防曇目標吹出温度f(窓近傍湿度)のうち小さい方の値を目標吹出温度TEOとして決定する。これにより、窓近傍湿度が高い場合、目標吹出温度TEOを小さい値に決定して室内蒸発器26の除湿能力を高めることができる。
続くステップS92では、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。具体的には、目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))を算出し、偏差Enと偏差変化率Edotとを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。
続くステップS93では、今回の圧縮機回転数を次の数式F5により算出する。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}…F5
なお、数式F5のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfおよびMAX回転数のうち小さい方の値を意味している。本例では、MAX回転数は10000rpmである。
これにより、窓近傍湿度が高い場合、圧縮機回転数を高くして、室内蒸発器26の除湿能力を高めることができる。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定したエアミックス開度SW、および冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
具体的には、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、エアミックス開度SWに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。
すなわち、エアミックス開度SWが小さくなることは、加熱用通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、エアミックス開度SWを予め定めた基準開度と比較して、エアミックス開度SWが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。
一方、エアミックス開度SWが第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。
具体的には、ヒータコア36で空気を十分に加熱できる程度に冷却水温度Twが高い場合、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定し、冷却水温度Twが低いほどPTCヒータ37の作動本数を増加させる。
電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(換言すればエンジンON要求信号)や、EV/HV運転モードの要求信号等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満たした場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
次に、ステップS12では、冷却水ポンプ40aの冷却水吐出能力(具体的には、冷却水ポンプ40aの回転数)を決定する。すなわち、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で循環する冷却水の流量を決定する。
このステップS12の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS121にて送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS122に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止させることを決定する。
一方、ステップS121にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、ステップS6で決定したブロワ電圧とステップS5で決定したヒータコア通過割合との積の値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、空調要求流量を決定する。空調要求流量は、空調のために最低限必要な冷却水流量である。空調要求流量は、空調を考慮して定められる冷却水流量の下限値である。
具体的には、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が小さいときは空調要求流量を大きくし、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が大きいときは空調要求流量を大きくする。すなわち、ヒータコア風量が小さいときは空調要求流量を大きくし、ヒータコア風量が大きいときは空調要求流量を大きくする。
図10の例では、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が6V以下であれば空調要求流量を1.0L/minとし、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が12V以上であれば空調要求流量を10.0とし、ブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が6V以上、12V以下であればブロワ電圧とヒータコア通過割合との積の値が大きいほど空調要求流量を1.0〜10.0L/minの範囲で大きくする。
そして、冷却水ポンプ40aから吐出される冷却水の流量が空調要求流量以上となるように冷却水ポンプ40aの冷却水吐出能力(具体的には、冷却水ポンプ40aの回転数)を決定する。
これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
図10のフローチャートでは図示を省略しているが、冷却水温度Twが低いエンジン暖機時には、冷却水ポンプ40aから吐出される冷却水の流量を小さくする。冷却水温度Twが極めて低いときは冷却水ポンプ40aを停止させる。これにより、エンジン暖機時にヒータコア流量を小さくしてヒータコア36での放熱量を小さくできるので、冷却水温度Twを速やかに上昇させてエンジンEGを早期に暖機でき、ひいては燃費を向上できる。
ヒータコア流量が小さい場合、ヒータコア36の吹出空気の温度分布が大きくなる。このとき、ヒータコア風量が多すぎると、ヒータコア36の吹出空気の温度分布がさらに大きくなって乗員が違和感を感じるレベルになる。
この点に鑑みて、ステップS123においてヒータコア風量が多いほど空調要求流量を大きくするので、ヒータコア風量が多いときにヒータコア流量を増加させることができる。そのため、乗員が違和感を感じるほどヒータコア36の吹出空気の温度分布が大きくなることを抑制できる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、仮のエアミックス開度Sdd、ステップS2で読み込んだ外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器12a、32、37、40a、61、62、63、64、90に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力部50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用通路33およびバイパス通路34へ流入する。
加熱用通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にてバイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
エンジン暖機時に燃費を向上するためにヒータコア流量を少なくすると、ヒータコア36の冷却水入口と冷却水出口との間で冷却水の温度差が大きくなり、ヒータコア36の平均吹出空気温度が低下する。
すなわち、ヒータコア流量が少ないと、ヒータコア36の冷却水が持つ熱量も少なくなるため、ヒータコア36の冷却水が空調風と熱交換している間にどんどん温度が下がっていき、ヒータコア36の冷却水出口に達するころには冷却水入口との温度差は無視できない程度まで拡大する。その結果、ヒータコア36の平均吹出空気温度が低下する。
そこで、ステップS5では、ヒータコア流量が少ない場合、エアミックス開度SWを最大暖房側に補正することによってヒータコア風量の割合を高くするので、ヒータコア36での熱交換量を増加させることができ、ひいてはヒータコア36の平均吹出空気温度が低下することを抑制できる。そのため、エンジン暖機時に燃費を向上するためにヒータコア流量を少なくしても、乗員の快適性を確保できる。
ヒータコア流量が少ない場合にヒータコア風量が多いと、ヒータコア36で奪われる冷却水の熱量が多くなるので、ヒータコア36の冷却水入口と冷却水出口との間で冷却水の温度差が大きくなる。
そこで、ステップS5では、ヒータコア流量が少ない場合、ヒータコア風量が多いほどエアミックス開度SWを最大暖房側に大きく補正することによって、ヒータコア風量の割合を大幅に高くするので、ヒータコア36での熱交換量を大幅に増加させることができる。そのため、ヒータコア風量が多い場合であっても、ヒータコア36の平均吹出空気温度が低下することを抑制できる。
ヒータコア風量が多くなりすぎると、エアミックスドア39を最大暖房状態にしてもヒータコア36からの吹出空気(以下、ヒータコア吹出空気と言う。)の温度分布が大きくなってしまう。例えば、ヒータコア吹出空気の温度分布が5℃以上になると、乗員が吹出空気の温度差を感じるようになる。
そこで、ステップS12では、ヒータコア風量が多いほどヒータコア流量の下限値(具体的には空調要求流量)を増加させるので、ヒータコア風量が多いときにヒータコア流量が少なくなることを抑制できる。その結果、乗員が吹出空気の温度差を感じるほどヒータコア吹出空気の温度分布が大きくなることを抑制できる。
また、ヒータコア吹出空気の温度分布が大きくなっているときに吹出口モードがバイレベルモードであると、フェイス吹出口24から乗員の上半身に向けて空気が吹き出されるため、乗員が吹出空気の温度差を感じやすくなって乗員の違和感につながる。特にフェイス吹出口24として運転席側センターフェイス吹出口と助手席センターフェイス吹出口とが設けられている場合、運転席側センターフェイス吹出口と助手席センターフェイス吹出口とが隣り合って配置されているため、運転席側吹出空気と助手席側吹出空気との温度差を乗員が感じやすくなって乗員の違和感につながる。
そこで、ステップS8では、ヒータコア流量が少ない場合、バイレベルモードからフットモードに切り替わりやすくなるように切り替えの閾値を補正するので、ヒータコア流量が少ないためにヒータコア吹出空気の温度分布が大きくなっているときにフェイス吹出口24から空気を吹き出さずにフット吹出口25から乗員の足元に向けて空調風を吹き出すようにすることができ、ひいては乗員が吹出空気の温度差を感じにくくすることができる。
本実施形態では、ステップS5で説明したように、空調制御装置50は、目標吹出温度TAOおよび補正値PW×CHに基づいてエアミックスドア39の作動を制御する。そして、空調制御装置50は、ヒータコア36を流れる冷却水の流量が少ないほど加熱用通路33を流れる空気の風量割合が高い側に補正されるように補正値PW×CHを決定する。
これによると、ヒータコア流量が少ない場合、ヒータコア風量の割合が高くなるので、ヒータコア36での熱交換量を増加させることができ、ひいてヒータコア36の平均吹出空気温度が低下することを抑制できる。そのため、エンジン暖機時に燃費を向上するためにヒータコア流量を少なくしても、乗員の快適性を確保できる。
本実施形態では、ステップS5で説明したように、空調制御装置50は、ヒータコア36を流れる空気の風量が多いほど加熱用通路33を流れる空気の風量割合の高い側への補正量が大きくなるように補正値PW×CHを決定する。
これによると、ヒータコア風量が多い場合、ヒータコア風量の割合を大幅に高くするので、ヒータコア36での熱交換量を大幅に増加させることができる。そのため、ヒータコア風量が多いためにヒータコア36の冷却水入口と冷却水出口との間で冷却水の温度差が大きくなる場合であっても、ヒータコア36の平均吹出空気温度が低下することを抑制できる。
本実施形態では、ステップS5で説明したように、空調制御装置50は、ヒータコア36を流れる冷却水の流量が下限値以上になるように冷却水ポンプ40aの作動を制御する。そして、空調制御装置50は、加熱用通路33を流れる空気の流量が多いほど、ヒータコア36を流れる冷却水の流量の下限値を高くする。
これによると、ヒータコア風量が多い場合、乗員が吹出空気の温度差を感じるレベルまでヒータコア吹出空気の温度分布が大きくなることを抑制できるので、乗員の違和感を低減できる。
本実施形態では、ステップS5で説明したように、空調制御装置50は、目標吹出温度TAOが閾値を上回っている場合、目標吹出温度TAOが閾値を下回っている場合と比較して、フェイス吹出口24から吹き出される空気の風量割合が低くなりフット吹出口25から吹き出される空気の風量割合が高くなるように吹出風量割合調整部24a、25aの作動を制御する。そして、空調制御装置50は、ヒータコア36を流れる冷却水の流量が少ないほど、閾値を小さくする。
これによると、ヒータコア36を流れる冷却水の流量が少ない場合、フェイス吹出口24から乗員の上半身に向けて空気を吹き出すことを抑制し、フット吹出口25から乗員の足元に向けて空調風を吹き出すようにできるので、乗員が吹出空気の温度差を感じにくくすることができる。
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
(1)上記実施形態では、空調制御装置50は、ステップS5において補正パラメータPWの値をヒータコア流量に応じて線形的に変化させてエアミックスドア開度SWを補正するが、補正パラメータPWの値をヒータコア流量に応じて非線形的に変化させてもよい。
例えば、ヒータコア流量が多い場合、補正パラメータPWの値を0に決定し、ヒータコア流量が多い場合、補正パラメータPWの値を10に決定するという2段階の補正を行ってよい。
(2)上記実施形態では、ステップS12において、冷却水ポンプ40aの回転数を調整することによってヒータコア流量を調整するが、冷却水回路40に設けられた冷却水バルブの開度を調整することによってヒータコア流量を調整してもよい。冷却水バルブは、ヒータコア36を流れる冷却水の流量を調整する流量調整部である。
(3)上記実施形態では、エアミックスドアは回転可能な板状のドアであるが、エアミックスドアは、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
(4)上記実施形態では、ハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよい。
また、車両用空調装置1を、エンジンEGを備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用してもよい。この場合、冷却水を加熱するための冷却水加熱部として、例えばPTCヒータ等の電気ヒータを用いることができる。
また、車両用空調装置1を、走行用電動モータを備えることなく車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る自動車に適用してもよい。この場合、圧縮機11は、エンジンEGの駆動力によってエンジンベルトで駆動されるベルト駆動式圧縮機を用いることができる。