<遊技機の構造>
図1は前扉を閉めた状態を示すスロットマシンの正面図、図2は前扉を開いた状態を示すスロットマシンの正面図を示す。なお、以下の説明において、上、下、左又は右の方向は、特に断らない限り、スロットマシンに対向している遊技者から見た方向を指すものとする。
図1及び図2中、100はスロットマシンを示すもので、このスロットマシン100は、スロットマシン筐体120と、このスロットマシン筐体120の前面片側にヒンジ等により開閉可能に取り付けられた前扉130とを備えている。前扉130は、それぞれ独立に開閉可能な上扉130Uと下扉130Lとを備えている。
前記前扉130の前面の右上隅には、ゲーム表示部131を設けている。遊技者はゲーム表示部131を通してリールユニット203の3つのリールを見ることができる。
上扉130Uの上面の右側に、遊技者がメダルを投入するためのメダル投入口132を設け、メダル投入口132の左側には、メダル投入口132から投入され、詰まってしまったメダルをスロットマシン100外に強制的に排出するためのリジェクトボタン133を設けている。
上扉130Uの上面の左側にはゲームを開始するためのスタートスイッチ134を設け、スタートスイッチ134とメダル投入口132の間に、3つのリールのそれぞれに対応して3つのストップボタン140を設けている。
上扉130Uの中央には液晶パネルLCD1を設け、下扉130Lにはほぼその全面にわたって液晶パネルLCD2を設けている。
下扉130Lの上面の中央、すなわち、ストップボタン140の上、ベットスイッチBETとメダル投入口132の間には、操作部としてのスイッチ(十字キーユニット)SWを設けている。スイッチSWは、例えばカーソルを上下左右に動かすカーソルキー(スイッチ)や操作の確定ボタン・キャンセルボタンなどを含む。
スロットマシン100の左右端にはそれぞれ電飾DRU、DRL、DLU、DLLを設けている。すなわち、上扉130Uの左端に電飾DLUを設け、右端に電飾DRUを設けるとともに、下扉130Lの左端に電飾DLLを設け、右端に電飾DRLを設けている。電飾DRU、DRL、DLU、DLLは、それぞれその内部に発光素子(LED)を備えている。
スロットマシン筐体120の内部には、図2に示すように、その内底面に固定され、内部に複数のメダルを貯留して、貯留したメダルを下扉130Lの前面下部に設けた払出し口に1枚ずつ払い出すためのホッパ装置121が設置されている。このホッパ装置121の上部には、上方に向けて開口し、内部に多数のメダルを貯留するホッパタンク122を備えている。スロットマシン筐体120の内部には、上扉130Uを閉めたときにゲーム表示部131が来る位置に三個のリールからなるリールユニット203が設置されている。リールユニット203は、外周面に複数種類の図柄が配列されている3つのリール(第1リール〜第3リール)を備えている。ゲーム表示部131には開口部が設けられていて、それを通して遊技者が前記リールユニット203の各回転リールの図柄を見ることができるようになっている。ホッパ装置121の左側には電源部205を設けている。
図2に示すように、下扉130Lの背面にはメダル(コイン)セレクタ1が、下扉130L上面のメダル投入口132の下部に取り付けられている。このメダルセレクタ1は、メダル投入口132から投入されたメダルの通過を検出しながら、当該メダルをホッパ装置121に向かって転動させ、外径が所定寸法と違う異径メダルや、鉄又は鉄合金で作製された不正メダルを選別して排除するとともに、1ゲームあたりに投入可能な所定枚数以上のメダルを選別して排除するための装置である。
また、メダルセレクタ1の下側には、図2に示すように、その下部側を覆って下扉130L下部の払出し口に連通する導出路136を設けている。メダルセレクタ1により振り分けられたメダルは、この導出路136を介して払出し口から遊技者に返却される。
スロットマシン筐体120の内部、リールユニット203の下側にはメイン基板10が取り付けられている。メイン基板10には、遊技に関する内部設定(例えば、複数の抽選テーブルのどれを使用するか)を行うための設定変更スイッチSSWを設けている。上扉130Uの背面中央下部にはサブ基板20が取り付けられている。
スロットマシン筐体120の内部の左上隅には低音スピーカSPLを設けるとともに、下扉130Lの下部には標準的な音域をカバーする2つのスピーカSPを設けている。
図3はスロットマシン100の機能ブロック図を示す。
この図において電源系統についての表示は省略されている。図3では示していないが、スロットマシンは商用電源(AC100V)から直流電源(+5Vなど)を発生するための電源部(図2の電源部205)を備える。
スロットマシン100は、その主要な処理装置としてメイン基板10とこれからコマンドを受けて動作するサブ基板20とを備える。メイン基板10やサブ基板を含む基板は、外部から接触不能となるようにケース内部に収容され、これら基板を取り外す際に痕跡が残るように封印処理が施されている。具体的には、メイン基板10とサブ基板20はカシメにより一体となり取り付けられるとともに、メイン基板10とサブ基板20の全体を覆う一体のケースによりカバーされている。
メイン基板10は、遊技者の操作を受けて内部抽選を行ったり、回胴の回転・停止やメダルの払い出しなどの処理(遊技処理)を行うためのものである。メイン基板10は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPUと、前記プログラムを記憶する記憶手段であるROMおよび処理結果などを一時的に記憶するRAMを含む。
サブ基板20は、メイン基板10からコマンド信号を受けて内部抽選の結果を報知したり各種演出を行うためのものである。サブ基板20は、前記コマンド信号に応じた予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPUと、前記プログラムを記憶する記憶手段であるROMおよび処理結果などを一時的に記憶するRAMを含む。コマンドの流れはメイン基板10からサブ基板20への一方のみであり、逆にサブ基板20からメイン基板10へコマンド等が出されることはない。
以下、メイン基板とサブ基板について詳しく説明する。
<メイン基板>
メイン基板10には、ベットスイッチBET、スタートスイッチ134、ストップボタン140、リール(回胴)ユニット203、設定変更スイッチSSW、ホッパ駆動部80、ホッパ81及びホッパ81から払い出されたメダルの枚数を数えるためのメダル検出部82(これらは前述のホッパ装置121を構成する)が接続されている。
メイン基板10には、さらに、メダルセレクタ1のメダルセンサS1及びS2が接続されている。
メダルセレクタ1には、メダルを計数するためのメダルセンサS1及びS2を設けている。メダルセンサS1及びS2は、メダルセレクタ1に設けられた図示しないメダル通路の下流側(出口近傍)に取り付けられている(メダル通路の上流側はメダル投入口132に連通している)。2つのメダルセンサS1とS2は、メダルの進行方向に沿って所定間隔を空けて並べて設けている。メダルセンサS1、S2は、例えば、互いに対向した発光部と受光部とを有して断面コ字状に形成され、その検出光軸をメダル通路内に上方から臨ませて位置するフォトインタラプタである。各フォトインタラプタにより、途中で阻止されずに送られてきたメダルの通過が検出される。なお、フォトインタラプタを2つ隣接させたのは、メダル枚数を検出するだけでなく、メダルの通過が正常か否かを監視するためである。すなわち、フォトインタラプタを2つ隣接させて設けることにより、メダルの通過速度や通過方向を検出することができ、これによりメダル枚数だけでなく、逆方向に移動する不正行為を感知することができる。
リールユニット203は、3つの回胴40a〜40cと、これらをそれぞれ回転させるステッピングモータ155a〜155cと、それらの位置をそれぞれ検出する回胴位置検出器(インデックスセンサ)159a〜159cとを備える(なお、ステッピングモータ155a〜155cを単にモータ155あるいはモータと記すことがある)。
回胴制御手段1300は、回胴40a〜40cそれぞれが1回転する毎にインデックスセンサ159で検出される基準位置信号に基づいて、回胴40の基準位置(図示しないインデックスによって特定されるコマ)からの回転角度を求める(ステップモータの回転軸の回転ステップ数をカウントする)ことによって、現在の回胴40の回転状態を監視することができるようになっている。すなわち、メイン基板10は、回胴40の基準位置からの回転角度を求めることにより、ストップボタン140の作動時における回胴40の位置を得ることができる。
なお、以下の説明において、任意のひとつ又は複数の回胴を示すときは符号40を使用し、3つの回胴をそれぞれ区別して示すときは符号40a〜40cを使用することにする。
ホッパ駆動部80は、ホッパ81の図示しない回転ディスクを回転駆動して、メイン基板10によって指示された払出数のメダルを払い出す動作を行う。遊技機は、メダルを1枚払い出す毎に作動するメダル検出部82を備えており、メイン基板10は、メダル検出部82からの入力信号に基づいてホッパ81から実際に払い出されたメダルの数を管理することができる。
投入受付部(投入受付手段)1050は、メダルセレクタ1のメダルセンサS1とS2の出力を受け、遊技毎にメダルの投入を受け付けて、規定投入数に相当するメダルが投入されたことに基づいて、スタートスイッチ134に対する第1回胴〜第3回胴の回転開始操作を許可する処理を行う。なお、スタートスイッチ134の押下操作が、第1回胴〜第3回胴の回転を開始させる契機となっているとともに、内部抽選を実行する契機となっている。また、遊技状態に応じて規定投入数を設定し、通常状態およびボーナス成立状態では規定投入数を3枚に設定し、ボーナス状態では規定投入数を1枚に設定する。
メダルが投入されると、遊技状態に応じた規定投入数を限度として、投入されたメダルを投入状態に設定する。あるいは、遊技機にメダルがクレジットされた状態で、ベットスイッチBETが押下されると、遊技状態に応じた規定投入数を限度して、クレジットされたメダルを投入状態に設定する。メダルの投入を受け付けるかどうかは、メイン基板10が制御する。スタートスイッチ134が押下され各回胴の回転が開始した時点(遊技開始時点)から3つのストップボタン140が押下され各回胴の回転が停止した時点(入賞した場合はメダル払い出しが完了した時点)(遊技終了時点)の間であって、メダルの投入を受け付ける状態になっていないときは(許可されていないときは)、メダルを投入してもメダルセンサS1、S2でカウントされず、そのまま返却される。同様に、メイン基板10は、メダルの投入を受け付ける状態か否かに応じて、ベットスイッチBETの有効/無効を制御する。また、前記遊技終了時点から前記遊技開始時点までの間でベットスイッチBETは有効となるが、これ以外の期間においては(BETスイッチの押下が許可されていないときは)、ベットスイッチBETを押下しても、それは無視される。
メイン基板10は、乱数発生手段1100を内蔵する。乱数発生手段1100は、抽選用の乱数値を発生させる手段である。乱数値は、例えば、インクリメントカウンタ(所定のカウント範囲を循環するように数値をカウントするカウンタ)のカウント値に基づいて発生させることができる。なお本実施形態において「乱数値」には、数学的な意味でランダムに発生する値のみならず、その発生自体は規則的であっても、その取得タイミング等が不規則であるために実質的に乱数として機能しうる値も含まれる。
内部抽選手段1200は、遊技者がスタートスイッチ134からのスタート信号に基づいて、役の当否を決定する内部抽選を行う。すなわち、メイン基板10のメモリ(図示せず)に記憶されている抽選テーブル(図示せず)を選択する抽選テーブル選択処理、乱数発生手段1100から得た乱数の当選を判定する乱数判定処理、当選の判定結果で大当たりなどに当選したときにその旨のフラグを設定する抽選フラグ設定処理などを行う。
抽選テーブル選択処理では、図示しない記憶手段(ROM)に格納されている複数の抽選テーブル(図示せず)のうち、いずれの抽選テーブルを用いて内部抽選を行うかを決定する。抽選テーブルでは、複数の乱数値(例えば、0〜65535の65536個の乱数値)のそれぞれに対して、リプレイ、小役(ベル、チェリー)、レギュラーボーナス(RB:ボーナス)、およびビッグボーナス(BB:ボーナス)などの各種の役が対応づけられている。また、遊技状態として、通常状態、ボーナス成立状態、およびボーナス状態が設定可能とされ、さらにリプレイの抽選状態として、リプレイ無抽選状態、リプレイ低確率状態、リプレイ高確率状態が設定可能とされる。
抽選テーブル選択処理により、抽選の内容は所定の範囲内で設定可能(当選の確率を高くしたり低くしたりできる)であり、遊技機が設置されるホールなどにおいて店側により設定作業が行われる。この設定作業で使用するスイッチが設定変更スイッチSSWである。
通常の遊技機は、BB,RB、小役等の抽選確率の異なる複数(例えば6つ)の抽選テーブルを予め備える。遊技機の抽選では、それら複数の抽選テーブルの中から1つが設定され、この設定された抽選テーブルに基づいて抽選による当たり/ハズレの判定がなされる。複数の抽選テーブルのうちどれを使用するかに関する設定を変更することを、設定の変更(以下、「設定変更」と記す)と称している。
従来、例えばスロットマシンのような遊技機では、設定値(通常1〜6)を変更する場合、遊技機の扉を開け、メイン基板10に設けられた設定変更スイッチSSWのキースイッチに設定変更キーを挿入して当該キースイッチをオンにした状態で遊技機の電源を投入して設定変更可能な状態にし、設定変更スイッチSSWの設定変更ボタン(押ボタン)を1回押下するごとに、7セグメント表示器などに表示される設定値がインクリメントされて1〜6までの値を循環的に変化させ、所望する設定値が表示器に表示されたところでスタートスイッチを操作することで、所望する設定値を確定させている。
乱数判定処理では、スタートスイッチ134からのスタート信号に基づいて、遊技毎に乱数発生手段(図示せず)から乱数値(抽選用乱数)を取得し、取得した乱数値について前記抽選テーブルを参照して役に当選したか否かを判定する。
抽選フラグ設定処理では、乱数判定処理の結果に基づいて、当選したと判定された役の抽選フラグを非当選状態(第1のフラグ状態、オフ状態)から当選状態(第2のフラグ状態、オン状態)に設定する。2種類以上の役が重複して当選した場合には、重複して当選した2種類以上の役のそれぞれに対応する抽選フラグが当選状態に設定される。抽選フラグの設定情報は、記憶手段(RAM)に格納される。
入賞するまで次回以降の遊技に当選状態を持ち越し可能な抽選フラグ(持越可能フラグ)と、入賞の如何に関わらず次回以降の遊技に当選状態を持ち越さずに非当選状態にリセットされる抽選フラグ(持越不可フラグ)とが用意されていることがある。この場合、前者の持越可能フラグが対応づけられる役としては、レギュラーボーナス(RB)およびビッグボーナス(BB)があり、それ以外の役(例えば、小役、リプレイ)は後者の持越不可フラグに対応づけられている。すなわち抽選フラグ設定処理では、内部抽選でレギュラーボーナスに当選すると、レギュラーボーナスの抽選フラグの当選状態を、レギュラーボーナスが入賞するまで持ち越す処理を行い、内部抽選でビッグボーナスに当選すると、ビッグボーナスの抽選フラグの当選状態を、ビッグボーナスが入賞するまで持ち越す処理を行う。このときメイン基板10は、内部抽選機能により、レギュラーボーナスやビッグボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技でも、レギュラーボーナスおよびビッグボーナス以外の役(小役およびリプレイ)についての当否を決定する内部抽選を行っている。すなわち抽選フラグ設定処理では、レギュラーボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技において、内部抽選で小役あるいはリプレイが当選した場合には、既に当選しているレギュラーボーナスの抽選フラグと内部抽選で当選した小役あるいはリプレイの抽選フラグとからなる2種類以上の役に対応する抽選フラグを当選状態に設定し、ビッグボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技において、内部抽選で小役あるいはリプレイが当選した場合には、既に当選しているビッグボーナスの抽選フラグと内部抽選で当選した小役あるいはリプレイの抽選フラグとからなる2種類以上の役に対応する抽選フラグを当選状態に設定する。
回胴制御手段1300は、遊技者がスタートスイッチ134の押下操作(回転開始操作)によるスタート信号に基づいて、第1回胴〜第3回胴をステッピングモータにより回転駆動して、第1回胴〜第3回胴の回転速度が所定速度(約80rpm:1分間あたり約80回転となる回転速度)に達した状態において回転中の回胴にそれぞれ対応する3つのストップボタン140の押下操作(停止操作)を許可する制御を行うとともに、ステッピングモータにより回転駆動されている第1回胴〜第3回胴を抽選フラグの設定状態(内部抽選の結果)に応じて停止させる制御を行う。
また、回胴制御手段1300は、3つのストップボタン140に対する押下操作(停止操作)が許可(有効化)された状態において、遊技者が3つのストップボタン140を押下することにより、その回胴停止信号に基づいて、リールユニット203のステッピングモータへの駆動パルス(モータ駆動信号)の供給を停止することにより、第1回胴〜第3回胴の各回胴を停止させる制御を行う。
すなわち、回胴制御手段1300は、3つのストップボタン140の各ボタンが押下される毎に、第1回胴〜第3回胴のうち押下されたボタンに対応する回胴の停止位置を決定して、決定された停止位置で回胴を停止させる制御を行っている。具体的には、記憶手段(ROM)に記憶されている停止制御テーブル(図示せず)を参照して3つのストップボタンの押下タイミングや押下順序等(停止操作の態様)に応じた第1回胴〜第3回胴の停止位置を決定し、決定された停止位置で第1回胴〜第3回胴を停止させる制御を行う。
ここで停止制御テーブルでは、ストップボタン140の作動時点における第1回胴〜第3回胴の位置(押下検出位置)と、第1回胴〜第3回胴の実際の停止位置(または押下検出位置からの滑りコマ数)との対応関係が設定されている。滑りコマ数とは、回胴停止時にゲーム表示部から視認できる特定の図柄を基準位置としたときのストップボタン140の操作から対応する回胴の回転停止までの間に当該基準位置を通過する図柄の数をいう。回胴制御手段1300は、各ストップボタン140の操作から190ms以内という条件下で各回胴を停止させるため、滑りコマ数は0以上4以下の範囲内となっている(ただし、80回転/分、図柄数=21個の条件において)。抽選フラグの設定状態に応じて、第1回胴〜第3回胴の停止位置を定めるための停止制御テーブルが用意されることもある。
前述のように、回胴制御手段1300は、回胴が1回転する毎にインデックスセンサ159で検出される基準位置信号に基づいて、回胴の基準位置(リールインデックスによって検出されるコマ)からの回転角度(ステップモータの回転軸の回転ステップ数)を求めることによって、現在の回胴の回転状態を監視することができるようになっている。すなわち、メイン基板10は、ストップボタン140の作動時における回胴の位置を、回胴の基準位置からの回転角度を求めることにより得ることができる。
回胴制御手段1300は、いわゆる引き込み処理と蹴飛ばし処理とを回胴を停止させる制御として行っている。引き込み処理とは、抽選フラグが当選状態に設定された役に対応する図柄が有効な入賞判定ライン上に停止するように(当選した役を入賞させることができるように)回胴を停止させる制御処理である。一方蹴飛ばし処理とは、抽選フラグが非当選状態に設定された役に対応する図柄が有効な入賞判定ライン上に停止しないように(当選していない役を入賞させることができないように)回胴を停止させる制御処理である。すなわち本実施形態の遊技機では、上記引き込み処理及び蹴飛ばし処理を実現させるべく、抽選フラグの設定状態、ストップボタン140の押下タイミング、押下順序、既に停止している回胴の停止位置(表示図柄の種類)などに応じて各回胴の停止位置が変化するように停止制御テーブルが設定されている。このように、メイン基板10は、抽選フラグが当選状態に設定された役の図柄を入賞の形態で停止可能にし、一方で抽選フラグが非当選状態に設定された役の図柄が入賞の形態で停止しないように第1回胴〜第3回胴を停止させる制御を行っている。
本実施形態の遊技機では、第1回胴〜第3回胴が、ストップボタン140が押下された時点から190ms以内に、押下されたストップボタンに対応する回転中の回胴を停止させる制御状態に設定されている。すなわち回転している各回胴の停止位置を決めるための停止制御テーブルでは、ストップボタン140の押下時点から各回胴が停止するまでに要するコマ数が0コマ〜4コマの範囲(所定の引き込み範囲)で設定されている。
入賞判定手段1400は、第1回胴〜第3回胴の停止態様に基づいて、役が入賞したか否かを判定する処理を行う。具体的には、記憶手段(ROM)に記憶されている入賞判定テーブルを参照しながら、第1回胴〜第3回胴の全てが停止した時点で入賞判定ライン上に表示されている図柄組合せが、予め定められた役の入賞の形態であるか否かを判定する。
入賞判定手段1400は、その判定結果に基づいて、入賞時処理を実行する。入賞時処理としては、例えば、小役が入賞した場合にはホッパ81を駆動してメダルの払出制御処理が行われるか、あるいはクレジットの増加され(規定の最大枚数例えば50枚まで増加され、それを超えた分だけ実際にメダル払い出される)、リプレイが入賞した場合にはリプレイ処理が行われ、ビッグボーナスやレギュラーボーナスが入賞した場合には遊技状態を移行させる遊技状態移行制御処理が行われる。
払出制御手段1500は、遊技結果に応じたメダルの払い出しに関する払出制御処理を行う。具体的には、小役が入賞した場合に、役毎に予め定められている配当に基づいて遊技におけるメダルの払出数を決定し、決定された払出数に相当するメダルを、ホッパ駆動部80でホッパ81を駆動して払い出させる。この際に、ホッパ81に内蔵される図示しないモータに電流が流れることになる。
メダルのクレジット(内部貯留)が許可されている場合には、ホッパ81によって実際にメダルの払い出しを行う代わりに、記憶手段(RAM)のクレジット記憶領域(図示省略)に記憶されているクレジット数(クレジットされたメダルの数)に対して払出数を加算するクレジット加算処理を行って仮想的にメダルを払い出す処理を行う。
リプレイ処理手段1600は、リプレイが入賞した場合に、次回の遊技に関して遊技者の所有するメダルの投入を要さずに前回の遊技と同じ準備状態に設定するリプレイ処理(再遊技処理)を行う。リプレイが入賞した場合には、遊技者の手持ちのメダル(クレジットメダルを含む)を使わずに前回の遊技と同じ規定投入数のメダルが自動的に投入状態に設定される自動投入処理が行われ、遊技機が前回の遊技と同じ入賞判定ラインを有効化した状態で次回の遊技における回転開始操作(遊技者によるスタートスイッチ134の押下操作)を待機する状態に設定される。
リプレイ処理手段1600は、所定条件下で内部抽選におけるリプレイの当選確率を変動させる制御を行うことがある。例えば、ストップボタン140の操作によって回胴を停止させた際に所定の出目が表示されるとリプレイの当選確率が変動する。リプレイの抽選状態として、リプレイが内部抽選の対象から除外されるリプレイ無抽選状態、リプレイの当選確率が約1/7.3に設定されるリプレイ低確率状態、およびリプレイの当選確率が約1/6に設定されるリプレイ高確率状態という複数種類の抽選状態を設定可能とされている。
エラー処理部1700は、図示しない扉開閉検知センサ、メダルセンサS1及びS2及びメダル検出部82の出力に基づき遊技機のエラー判定を行い、エラーと判定したときにその旨を報知するとともに、遊技機を所定の状態(例えば、操作を受け付けない状態)にする。
図示しない扉開閉検知センサは、前扉130(上扉130U、下扉130L)が閉じられたことを検知するセンサであり、例えばマイクロスイッチや接点などの電気的スイッチである。当該スイッチは前扉130(上扉130U、下扉130L)が閉じられたときに、前扉130(上扉130U、下扉130L)の裏側にスイッチの作用部が当接することでオン(又はオフ)になり、前扉130(上扉130U、下扉130L)が開放されると作用部が離れてオフ(又はオン)になるものである。扉開閉検知センサは、フォトインタラプタのような光学式のものでもよい。メダルセンサS1及びS2及びメダル検出部82については前述した。
エラー処理部1700は、具体的には次のような動作を行う。
・図示しない扉開閉検知センサの出力に基づき前扉130(上扉130U、下扉130L)の開放を検知したとき、エラー処理を行う。
・メダルセンサS1及びS2の出力に基づきメダルの逆流(センサS1とS2の検知順序が反対になったこと)、メダル滞留(センサS1とS2の検知時間が予め定められた閾値よりも長いこと)などを検知したとき、エラー処理を行う。
・メダル検出部82の出力に基づきメダル詰まり(メダル検出部82の検知時間が予め定められた閾値よりも長いこと)、ホッパーエンプティ(ホッパ駆動部80を動作させているにもかかわらずメダル検出部82がメダルを検知しない)などを検知したとき、エラー処理を行う。
エラー処理部1700は、上記のようにエラーと判定したときにその旨を報知するとともに、遊技機を所定の状態(エラー状態)にするが、この状態は図示しないリセットスイッチにより解除される。リセットスイッチは、例えば電源部205のパネルに設けられる。
なお、サブ基板20で生じるエラーもある。このエラーでは遊技不能状態にはならないが、サブ基板20自身の処理によりエラーが生じたことを液晶表示装置などにより報知することができる。当該エラーは例えば不正なコマンドを受信したとき(暗号化されたコマンドが正しく復号化できなかったときを含む)に発生し、当該エラーは上記リセットスイッチにより解除される(メイン基板10からサブ基板20へリセットコマンドが送られる)。
また、メイン基板10は、通常状態、ボーナス成立状態、およびボーナス状態の間で遊技状態を移行させる制御を行うことがある(遊技状態移行制御機能)。遊技状態の移行条件は、1の条件が定められていてもよいし、複数の条件が定められていてもよい。複数の条件が定められている場合には、複数の条件のうち1の条件が成立したこと、あるいは複数の条件の全てが成立したことに基づいて、遊技状態を他の遊技状態へ移行させることができる。
通常状態は、複数種類の遊技状態の中で初期状態に相当する遊技状態で、通常状態からはボーナス成立状態への移行が可能となっている。ボーナス成立状態は、内部抽選でビッグボーナスあるいはレギュラーボーナスに当選したことを契機として移行する遊技状態である。ボーナス成立状態では、通常状態における内部抽選でビッグボーナスが当選した場合、ビッグボーナスが入賞するまでビッグボーナスに対応する抽選フラグが当選状態に維持され、通常状態における内部抽選でレギュラーボーナスが当選した場合、レギュラーボーナスが入賞するまでレギュラーボーナスに対応する抽選フラグが当選状態に維持される。ボーナス状態では、ボーナス遊技によって払い出されたメダルの合計数により終了条件が成立したか否かを判断し、入賞したボーナスの種類に応じて予め定められた払出上限数を超えるメダルが払い出されると、ボーナス状態を終了させて、遊技状態を通常状態へ復帰させる。
リールユニット203は、3つの回胴40a〜40cを備えるが、3つの回胴40a〜40cそれぞれにひとつづつステッピングモータ155a〜155cが取り付けられている。ステッピングモータ155は、回転子(ロータ)として歯車状の鉄心あるいは永久磁石を備え、固定子(ステータ)として複数の巻線(コイル)を備え、電流を流す巻線を切り替えることによって回転動作させるものである。すなわち、固定子の巻線に電流を流して磁力を発生させ、回転子を引きつけることで回転するものである。回転軸を指定された角度で停止させることが可能なことから、スロットマシンの回胴の回転駆動に使用されている。複数の巻線がひとつの相を構成する。相の数として、例えば、2つ(二相)、4つ(4相)、5つ(5相)のものもある。
ステッピングモータは、各相の巻線への電流の与え方を変えることにより、特性を変えることができる(励磁モードが変わる)。二相型については次の通りである。
・一相励磁
常に巻線一相のみに電流を流す。位置決め精度は良い。
・二相励磁
二相に電流を流す。一相励磁の約2倍の出力トルクが得られる。位置決め精度は良く、停止したときの静止トルクが大きいため、停止位置を確実に保持できる。
・一−二相励磁
一相と二相を交互に切り替えて電流を流す。一相励磁・二相励磁の場合のステップ角度の半分にすることができるので、滑らかな回転を得られる。
なお、ステッピングモータを「駆動する」とは、当該モータを上記励磁により回転させることとともに、所望の位置で停止させその位置を保持するために各相を励磁することも含むものとする。
スロットマシンの回胴40a〜40cの駆動に関して、例えば、4相の基本ステップ角度1.43度のステッピングモータを使用し、パルスの出力方法として一−二相励磁を採用している。
10CGは、サブ基板20へ送るコマンドを送信するコマンド送信部である。このコマンドには、当選役の情報に関するコマンド、メダル投入枚数やクレジット枚数(貯留枚数)の情報に関するコマンドなどがある。コマンド送信部10CGは、具体的には、メイン基板10に搭載されたROMに予め書き込まれたプログラムをCPUが実行することで実現される。コマンド送信については、後に説明を加える。
<サブ基板>
サブ基板20には、液晶パネルLCD1及びLCD2、LED(LED基板)202B及び202L、スピーカSP、低音スピーカSPL、ソレノイドSN、モータMU及びML、センサSENU及びSENL、スイッチSWが接続されている。LED202B、202Lは、データを取得し保持するラッチと電飾であるLEDを内蔵している(LEDは基板の外部に設けられることもある)。これらの構成要素は、サブ基板20により制御されるものであり、映像、光、音響、可動体の動作により演出を行う出力装置、あるいは、可動体の動作を検知するための入力装置または遊技者による操作を受け付ける入力装置である。
サブ基板20は、液晶パネルLCD1及びLCD2を制御するためのビデオコントローラ(VDC)、スピーカSP、低音スピーカSPLを駆動して音響を発生させるためのサウンドコントローラ、ソレノイドSN、モータMU及びMLを駆動するための駆動回路を内蔵している。
上述した液晶パネルなどの構成要素は、低音スピーカSPLを除き、スロットマシン筐体120に内蔵される機種固有ブロックBB、上扉130Uに対応して設けられる上扉ブロックBU、下扉130Lに対応して設けられる下扉ブロックBLの3つのいずれかに区別されて設けられる。
図3の例では、機種固有ブロックBBはソレノイドSN及びLED202Bを含み、上扉ブロックBUは、液晶パネルLCD1、モータMU及びこれによる可動体の動作を検知するセンサSENUを含み、下扉ブロックBLは、液晶パネルLCD2、スピーカSP、LED202L、モータML、これによる可動体の動作を検知するセンサSENL、カーソルキーなどのスイッチSWを含む。なお、液晶パネルLCD2全体がモータMLにより若干前後に移動可能に構成され、液晶パネルLCD2が前に出た状態で遊技者がこれを押すという操作が可能な場合がある。この場合、下扉ブロックBLのスイッチSWは液晶パネルLCD2の押下を検知するスイッチを含む。
<メイン基板からサブ基板へのコマンド伝送>
サブ基板20はメイン基板10からコマンドをうけ、これに従って演出等の処理を行う。コマンドの流れはメイン基板10からサブ基板20への一方のみであり、逆にサブ基板20からメイン基板10へコマンド等が出されることはない。
サブ基板20は、メイン基板10からのコマンドに従い、例えば、予め定められた画面を液晶パネルLCD1、LCD2に表示させるためのコマンド(表示コマンド、描画コマンド)を生成する。例えば、アニメーションなどにより演出を行う際には、多数のコマンドを連続的に次々と送信する。
図3において、20CRは、メイン基板10から受けたコマンドを受信するコマンド受信部である。コマンド受信部20CRは、具体的には、サブ基板20に搭載されたROMに予め書き込まれたプログラムをCPUが実行することで実現される。
上記コマンドとして、サブ基板20側のソフトウエアで当選内容を示唆する演出を行うためのものがある。例えば、下記ATのように、出玉を得るための示唆を液晶表示装置に表示して遊技者の操作の便宜の提供(アシスト)を図っている。当該示唆は常時出されるわけではなく、特定の場合に出される。
遊技機は、液晶表示装置、スピーカや表示ランプ等からなる演出表示装置を備える。この演出表示装置はサブ基板20により制御され、遊技者に入賞等を報知したり、いわゆるアシストタイム(AT)において、一定ゲーム間に特定の小役を台自体が何らかのアクションを伴ってユーザに教えたりするためのものである。(アシストタイム(AT):特定の小役が成立しても遊技者がリールの図柄を揃えないと払い戻しがない。小役による払い出しを確実にするために、ビッグボーナス終了後(もしくは成立時)あるいはその他の任意の契機にアシストタイムを抽選し、これに当選すると一定ゲーム間は特定の小役を揃えさせるための操作を何らかのアクションを伴って遊技者に教えるという機能)
コマンド受信部20CRは、メイン基板10から受けたコマンドを受信する。例えば、シリアルデータとして受けたコマンドを直列−並列変換器(シフトレジスタ)に入力し、一定のデータ(例えば8ビット)ごとに出力する。この出力されたデータがコマンドとしてサブ基板20のCPUに渡され、解釈・実行される。
次に、メイン基板10における遊技処理について図4を参照して説明を加える。
一般的に、遊技機において、メダルの投入(クレジットの投入)に始まり、払い出しが終了するまで(又はクレジット数の増加が終了するまで)が一遊技である。一遊技が終了するまでは次回の遊技に進めないという決まりがある。
先ず、規定枚数のメダルが投入されることでスタートスイッチ134が有効になり、図4の処理が開始される。
ステップS1において、スタートスイッチ134が操作されることにより、スタートスイッチ134がONとなる。そして、次のステップS2に進む。
ステップS2において、メイン基板10により抽選処理が行われる。そして、次のステップS3に進む。
ステップS3において、第1リール〜第3リールの回転が開始する。そして、次のステップS4に進む。
ステップS4において、ストップボタン140が操作されることにより、ストップボタン140がONとなる。そして、次のステップS5に進む。
ステップS5において、第1リール〜第3リールのうち押下されたストップボタン140に対応するリールについて回転停止処理が行われる。そして、次のステップS6に進む。
ステップS6において、三個のリールに対応するストップボタン140の操作が行われたか否かが判定される。そして、三個のリールに対応する3つのストップボタン140すべての操作が行われたと判定された場合、次のステップS7に進む。
ステップS7において、抽選フラグ成立中に当該抽選フラグに対応する入賞図柄が有効入賞ライン上に揃ったか否か、すなわち、入賞が確定したか否かが判定される。そして、入賞が確定したと判定された場合、次のステップS8に進む。なお、入賞が確定しなかったときは、抽選フラグが成立していてもメダルの払い出しは行われない。
ステップS8において、入賞図柄に相当するメダルが払い出される。
メダルの投入からステップS8の実行完了までが、一遊技である。ステップS8の待機処理が終了すると、処理はフローチャートの最初に戻る。言い換えれば、次の遊技が可能な状態になる(次遊技へ移行する)。
図5は、発明の実施の形態に係るサブ基板、スレーブ基板(中継基板)及びLED、ソレノイド、モータなどの演出デバイス、センサ(フォトセンサやスイッチなど)の接続を示すブロック図である。図5は、図3のブロック図のうちで演出デバイス及びスレーブ基板に係る接続系統を抜き出したものである。少なくとも、サブ基板20とスレーブ基板206BU、206BLを接続するハーネスHBU、HBLは、図5の左下に示すように、デジタル信号が伝播するデータ線と、当該デジタル信号を取得(ラッチ)するタイミングを指定するクロック信号が伝播するクロック線とを含み、これらの間の通信方式はクロック同期式シリアル通信である。図5において、図3のものと同一又は相当部分については同じ符号を付している。
図5の各要素のうち、スレーブ基板206BU、206BLはICなどのハードウエアで実現されるものであるが、I2C送受信処理部207、スレーブ基板206BBの送受信処理部208はそこに搭載されたROMに予め書き込まれたプログラムをCPUが実行することで実現される。送信処理部209T、210T、受信処理部209R、210RはICなどのハードウエア又はソフトウエアのどちらかで実現される。
なお、図5においてサブ基板20が上扉ブロックBUに含まれているが、これは一例である。例えば、サブ基板20が下扉ブロックBLに含まれるようにしてもよいし、機種固有ブロックBB、上扉ブロックBU、下扉ブロックBLとは別個独立して設けるようにしてもよい。
発明の実施の形態に係る遊技機では、サブ基板20から役物・電飾等の演出デバイスを制御するスレーブ基板(中継基板)への制御通信方式として、I2C(Inter-Integrated Circuit)やクロック同期式シリアル通信を用いている。制御対象の役物・電飾等のデバイスが増加するのに伴い、サブ基板からスレーブ基板に対してシリアル通信で接続し、各々のスレーブ基板においてシリアル−パラレル変換(直列−並列変換)を行い、各々のスレーブ基板から役物・電飾等のデバイスに接続するようにしている。
すなわち、発明の実施の形態に係る遊技機では、サブ基板20と機種固有ブロックBBの間の通信方式はI2Cを使用している。機種ごとに機種固有ブロックBBの電気部材の構成が変わるため、汎用性のある双方向通信を採用している。サブ基板20と上扉ブロックBUの間の通信方式は同期シリアルを使用している。リールユニット203を交換する際に同時に交換対象となるため、上扉ブロックBU専用のハーネスHBUを備えている。サブ基板20と下扉ブロックBLの間の通信方式は同期シリアルを使用している。残存する共通部分であるため、下扉ブロックBL専用のハーネスHBLを備えている。
BBは、遊技機の機種ごとに固有の機種固有ブロックである。BLは、各筐体に共通して用いられる下扉ブロック(第1ブロック)である。BUは、交換可能な上扉ブロック(第2ブロック)である。
機種固有ブロックBB、下扉ブロックBL、上扉ブロックBUは、それぞれ、スレーブ基板(機種固有中継基板)206BB、スレーブ基板(第1中継基板)206BL、スレーブ基板(第2中継基板)206BUを含む。スレーブ基板206BBはCPUを内蔵し、スレーブ基板206BL、BUよりも柔軟で高度な処理(例えば、スレーブ基板206BBについて予めアドレスが定められ、受けたメッセージが自分宛かどうか判断し、自分宛の場合それを受信する、データ送信するときにサブ基板20にその旨をリクエストする)が可能である。スレーブ基板206BL、BUは、通信する相手(サブ基板20の送信処理部209T、210T、受信処理部209R、210R)との通信手順が予め定められた一定のものであり、柔軟性は不要である。このため専用ICでスレーブ基板206BL、BUを構成することができる。
J11はサブ基板20の機種固有入出力端である。これには1本のデータ線と1本のクロック線を含む(他の端子についても同じ)。
J21、J22は第1出力端、J31は第1入力端である。J41、J42は第2出力端、J51は第2入力端である。
ハーネス(機種固有ハーネス)HBBは、機種固有入出力端J11をスレーブ基板206BBに接続している。
ハーネスHBLは、第1出力端J21、J22及び第1入力端J31をスレーブ基板206BLに接続している。
ハーネスHBUは、第2出力端J41、J42及び第2入力端J51をスレーブ基板206BUに接続している。
送信処理部209Tは、第1出力端J21、J21からスレーブ基板206BLに送信するシリアル信号を生成する。
受信処理部209Rは、第1入力端J31でスレーブ基板206BLから受けたシリアル信号をパラレル信号に変換する。変換されたパラレル信号はサブ基板20で所定の処理を受ける。
送信処理部210Tは、第2出力端J41、J42からスレーブ基板206BUに送信するシリアル信号を生成する。
受信処理部210Rは、第2入力端J51でスレーブ基板206BUから受けたシリアル信号をパラレル信号に変換する。変換されたパラレル信号はサブ基板20で所定の処理を受ける。
スレーブ基板206BBの送受信処理部208は、I2C送受信処理部207からのアドレスに従い受信処理及び送信処理を行う。図5ではスレーブ基板206BBはひとつしか示していないが、同じハーネスHBB(これから分岐された信号線を含む)に複数のスレーブ基板206BBを接続することができる。スレーブ基板206BBの識別にはアドレスが使用される。
図6は、スレーブ基板206BB、206BL、206BUの説明図である。
LEDを駆動するスレーブ基板206BL、206BBはLEDドライバIC01を備えている。LEDドライバIC01はサブ基板20からシリアル信号及びクロックを受け、クロックに基づきシリアル信号からデータを取得し、このデータのデコード結果に基づき、接続されている複数のLEDを所定のパターンで点滅させる。例えば、特定のLEDを点灯させるとともに、そのデューティ比を所定の値に設定して輝度を調整する。
モータを駆動するスレーブ基板206BL、206BUはモータ制御回路IC02を備えている。モータ制御回路IC02はサブ基板20からシリアル信号及びクロックを受け、クロックに基づきシリアル信号からデータを取得し、このデータのデコード結果に基づき、接続されているモータの巻線を所定のパターンで励磁する。例えば、巻線を順次励磁してモータを回転させるとともに、励磁周波数を変えることで回転速度を調整する。モータ制御回路IC02の出力にはモータ駆動に必要な電流を巻線に流すためのモータドライバDRVが接続されている。
センサ(スイッチ)を含むスレーブ基板206BL、206BUは、複数のセンサの入力信号を並列から直列に変換するための並列−直列変換器IC3を備えている。並列−直列変換器IC3はサブ基板20からクロックを受ける。並列−直列変換器IC3は所定間隔で複数のセンサの出力を取り込み、クロックに基づきセンサのデータをシリアル信号に変換してサブ基板20へ送っている。このシリアルデータをサブ基板20の受信処理部209R、210Rが受け、直列−並列変換を行ってサブ基板20のCPUに渡す。
発明の実施の形態においては、スレーブ基板206BUのモータ制御回路IC2用のクロック(第1クロック)と、スレーブ基板206BLのモータ制御回路IC2用のクロック(第2クロック)とで周波数(クロック数)を異ならせている。例えば、第1クロックの周波数f1=1.4Mbpsであるのに対し、第2クロックの周波数f2=1.0Mbpsとしている。これは、クロックに起因する外部放射ノイズを抑制するためである。
発明の実施の形態に係る遊技機において、下扉ブロックに液晶パネルLCD2を追加した等により通信路が増加し、従来の遊技機よりも外部放射ノイズが増大し、とりわけピークノイズが増加している。外部放射ノイズは、他の機器に影響を与え兼ねないため、その軽減が求められていた。
発明の実施の形態においては次のような手段により、放射ノイズのピークを抑制している。
(1)複数のスレーブ基板の一部についてクロックの周波数を異ならせる。これにより放射ノイズが分散し、そのピークを下げることができる(図10及びその説明参照)。好ましくは、伝送速度が速い標準のクロック(第1クロックの周波数f1=1.4Mbps)よりも遅いクロック(第2クロックの周波数f2=1.0Mbps)を追加採用する。一部のクロックについて周波数を下げることによりハーネスからの放射ノイズを抑制できる(周波数を上げるとハーネスの長さとクロックの波長の比が大きくなるので放射ノイズが大きくなる)。
(2)第2クロックの周波数f2は第1クロックの周波数f1よりも低い。より低い周波数の第2クロックを、より消費電流の大きなスレーブ基板(電子回路)に割り当てる。例えば、モータの駆動回路を含む電子回路(モータ制御回路IC2、モータドライバDRV)に割り当てる。消費電流が大きいと放射ノイズが大きくなるので、そのクロックの周波数を下げることで放射ノイズのピークを効果的に下げることができる。
(3)第2クロックの周波数f2は第1クロックの周波数f1よりも低い。より低い周波数の第2クロックを、ノイズを放射する可能性の高い、より長いハーネスの方に割り当てる。長さの異なるハーネスに同じクロックを通したときの放射ノイズを比較すると、長いハーネスの方がより多くのノイズを放射する(ハーネスの長さとクロックの波長の比が大きく電波を放射しやすいため)。長いハーネスのクロックの周波数を下げることにより外部放射ノイズのピークを効果的に下げることができる。
(4)第2クロックの周波数f2と第1クロックの周波数f1を、一方の周波数が他方の周波数の整数倍にはならないように定める。整数倍であるとクロックの高調波が重なりピークが高くなるので、これを避ける。
図7は、上記(1)〜(3)の説明図である。図7は、図5及び図6から説明に必要な部分を抜き出したものである。図7ではスレーブ基板206BU、206BLのクロックの配線のみを示し、他の配線は省略している。
図中、L1はハーネス(第1ハーネス)HBUの長さを示し、L2はハーネス(第2ハーネス)HBLの長さを示す。発明の実施の形態ではL1<L2である。ハーネスHBUはサブ基板20と同じ上扉ブロックに設けられ近い距離にあるのに対し、ハーネスHBLは別の下扉ブロックにあるので遠く、ハーネスが長くなる。
発明の実施の形態に係る遊技機については、図7に示すようにスレーブ基板(第2スレーブ基板)206BLのモータ制御回路IC2Lについて、周波数の異なるクロックを使用する。すなわち、標準のクロック(第1クロックの周波数f1=1.4Mbps)よりも遅いクロック(第2クロックの周波数f2=1.0Mbps)を適用する。このことにより、上記(1)〜(3)を実現できる。
周波数を異ならせ、放射ノイズが分散し、そのピークを下げることができるとともに、一部のクロックについてその周波数を下げるので、ハーネスの長さとクロックの波長の比が小さくなり、(1)のように放射ノイズのピークを下げることができる。
より低い周波数f2のクロックを、LEDドライバなどよりも消費電流の大きなモータ制御回路に割り当てるので、(2)のように放射ノイズのピークを下げることができる。ステッピングモータの駆動パルスは頻繁に変化するので、ソレノイドなどよりも放射ノイズが多くなる。この点からも、より低い周波数f2のクロックをモータ制御回路に適用することには意義がある。
より低い周波数f2のクロックを、より長いハーネスHBLの方に割り当てるので、ハーネスの長さとクロックの波長の比が小さくなり、(3)のように放射ノイズのピークを下げることができる。
なお、LEDドライバIC1Lに起因する放射ノイズは比較的少なく、ピーク抑制の観点からは第2クロックf2を使用する必要性は低いこと、データ伝送の観点からはクロックの周波数が高いことが好ましいことから、図7においてスレーブ基板(第2スレーブ基板)206BLのLEDドライバIC1Lには第1クロックf1を適用している。このように同じスレーブ基板について異なるクロックを適用するようにしてもよい。
図8は、送信処理部209Tの内部ブロック図を示す。送信処理部210Tについては図示を省略する。送信処理部209Tは、互いに異なる周波数f1、f2のクロックを発生するためにクロック発生器を2つ備えている。符号2101a〜2103a、2112aはスレーブ基板206BLのLEDドライバIC1Lのシリアル信号を生成する回路、及び、これを受信するためのクロックを生成して出力する回路である。符号2101b〜2103b、2112bはスレーブ基板206BLのモータ制御回路IC2Lのシリアル信号を生成する回路、及び、これを受信するためのクロックを生成して出力する回路である
2101a、2101bは、スレーブ基板へ送信するデータを受け入れるデータレジスタ(コマンドレジスタ)である。データレジスタ2101a、2101bは、データを受けたらすぐに送信データレジスタ2102a、2102bへ送る。データレジスタ2101a、2101bはひとつの単位のデータを一時的に蓄えるものである。なお、データの内容は公知であるので、送信されるデータがどのようなものであるかについての説明は省略する。
2102a、2102bは、受け入れた順番で複数のデータを記憶するとともに、受け入れた順番に従って出力する送信データレジスタである。
2103a、2103bは、送信データレジスタ2102a、2102bからデータの出力を受けてこれをスレーブ基板へ送信する送信用シフトレジスタである。送信用シフトレジスタ2103a、2103bは、送信すべきデータをパラレルからシリアルへ変換する。
2111は、クロックの基準となる基準信号を発生する発振器である。
2112a、2112bは、基準信号に基づきクロック同期式シリアル通信のためのクロックを発生するクロック発生器である。送信用シフトレジスタ2103a、2103bは、クロック発生器2112a、2112bの出力に基づきデータを送信する。クロック発生器2112bのクロックはスレーブ基板206BU、206BLに対しても供給されるが、クロック発生器2112aのクロックはスレーブ基板206BLに対してのみ供給される。受信側のスレーブ基板206BU、206BLでは、クロック発生器2112a、2112bのクロックに基づきシリアル信号を受信する。
クロック発生器2112aは、発振器2111の出力を分周して周波数(クロック数)f1のクロックを発生する。クロック発生器2112bは、同じく周波数(クロック数)f2のクロックを発生する。ここでf1>f2である。例えば、f1=1.4Mbps、f2=1.0Mbpsである。
発振器2111は、例えば一定周期Tcの基準信号を発生する。クロック発生器2112a、2112bは、図示しないが内部に基準信号の周期Tcを計数するカウンタを備え、その計数値が所定値になったときにその出力(クロック)を反転させる。クロック周期CPは出力を反転させる間隔(クロックの周期)を指定する数値(パラメータ)である。例えば、基準信号の周期を計数し、この値がCPになったときに出力を反転させる。このとき、(クロックの周期)=2×CP×Tcである。図8において、クロック発生器2112a、2112bでCPは異なる。違いは周波数の差に相当する。
図9は、クロック発生器2112a、2112bそれぞれに発振器2111a、2111bを設けたものである。図8に代えて図9の構成を採用することもできる。図8では発振器2111がひとつであるため、上述のように第1クロックと第2クロックの周波数f1、f2はいずれも基準信号の周波数の整数倍という関係があったが、図9のように構成し、クロック発生器2112a、2112bの周波数が整数比でないように設定することで、第1クロックと第2クロックの周波数f1、f2を任意に設定することができる。
例えば、第2クロックの周波数f2と第1クロックの周波数f1を、一方の周波数が他方の周波数の整数倍にはならないように定めることで、クロックの高調波同士が重なることがなくなり、前記(4)のようにピークが高くならないようにできる。
発明の実施の形態によれば、サブ基板から複数のスレーブ基板へのクロック同期式シリアル通信において、それらのクロックの周期を異ならせる。この結果、クロックに起因する放射ノイズのピークが分散化され、ピークノイズを低減することができる。
これについて図10を参照して説明する。
クロックが一種類の場合は、その放射ノイズの周波数スペクトルは図10(a)のようになる。すなわち、特定の周波数f1に集中してノイズが現れる。例えば1.4Mbps通信の場合、その周波数(図示しない高調波を含めるとその倍数にあたる周波数)に放射ノイズのピークが発生する。
これに対し、複数のクロックをもち、それらの周波数f1、f2が互いに異なる(f2<f1)場合は、その放射ノイズの周波数スペクトルは図10(b)のようになる。すなわち、周波数f1よりも低い周波数(図の左)にスペクトルが現れる。図10(b)のようにスペクトルが複数に分散するとそのピークエネルギーは、図10(a)の一点に集中する場合に比べて小さくなる。(図10(a)のPeak1)>(図10(b)のPeak2)である。よって、発明の実施の形態によれば、放射ノイズのピークを低減することができる。
クロック同期式シリアル通信は、クロックのエッジに合わせてデータを0又は1に確定するため、クロックとシリアル信号の間でその関係が保存されているのであれば、上述のように複数のクロック周波数を用いても問題なく通信可能である。
周波数f2と周波数f1は、一方の周波数が他方の周波数の整数倍にはならないように定められている。上記例ではf1=1.4Mbps、f2=1.0Mbpsであり、両者の関係は整数比にはならない。仮に整数倍であると、例えばf1=1.4Mbps、f2=0.7Mbpsであるとf2の第1次高調波は1.4Mbpsとなり、これがf1の基本波と重なり、ピークが高くなってしまう。
参考までに実測例を図11及び図12に示す。図11は上周波数1400、下周波数1400(改善前:クロックの周波数がいずれも1.4Mbps)を示す。図12は上周波数1400、下周波数1000(改善後:f1=1.4Mbps、f2=1.0Mbps)を示す。
図11及び図12において、太線は電気用品安全法による規定値である。グラフの○枠内がノイズのピークを示し(ピーク先端をドットで示し、その周波数をグラフ下の表に示している)、グラフ下の表の○枠内はピークの数値(db(μV))を示す。L1、L2は測定のフェーズ(垂直成分、水平成分)を示す。
図11の改善前では少なくとも2箇所でピークが規定値(太線)を超えている。すなわち、図11では 13.54MHzと16.55MHzの2箇所に大きなピークが存在し、それぞれ59.8db(μV)と60.9db(μV)、及び、63.7db(μV)と62.1db(μV)であり、規定値=60db(μV)を超えている。
これに対し、図12の改善後ではいずれのピークも規定値(太線)を超えていない。最大のピークは16.56MHzであるが、フェーズ1で57.2db(μV)、フェーズ2で56.5db(μV)であり、いずれも規定値=60db(μV)よりも低い。
発明の実施の形態に係る遊技機によれば、図12に示すようにノイズのピークが下がり、規定値(太線)内に納まっているのが確認できる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。