図1(a)〜(c)は、本発明の物品受容装置として利用可能なプリント装置1000の外観図である。図1(a)は斜視図、同図(b)は側面図、同図(c)は正面図をそれぞれ示している。プリント装置1000は、主にプリンタ部1と、プリンタ部1を支持する脚部2と、プリンタ部1の排出口1aから排出されたプリント媒体を受容する受容部3で構成されている。
プリンタ部1にはロール状に保持されたプリント媒体W、プリント媒体Wに対し画像をプリント可能なプリントヘッド、プリントされたページごとにプリント媒体Wを切断するカッタなどが備えられている。プリントヘッドによって所定の画像がプリントされた領域のプリント媒体Wは、プリント動作の進行に伴って排出口1aより徐々に排出され、自重によって排出口1aよりZ方向に垂れ下がる。そして、カッタが画像の後端部を切断すると、切断されたプリント媒体Wは受容部3にて受容される。
以下、本発明の特徴的な構成である受容部3について詳しく説明する。
図2は、受容部3においてプリント媒体Wを受容するシート保持構成100の概略図である。柔軟性を有する受容シート40は、Y方向の両端が、X方向に延在するトップロッド20およびリアロッド30のそれぞれによって支持されている。トップロッド20のX方向の両端には第1係合手段21が取り付けられており、リアロッド30のX方向の両端には第2係合手段31が取り付けられている。シート保持構成100全体の位置や姿勢は、これら第1係合手段21と第2係合手段31を、それぞれプリント装置1000のどの位置に係合させるかによって変更することができる。なお、受容シート40については、薄く柔軟性のあるシート形態であればその材質は特に限定されるものではなく、布のほかプラスチックシートや金属シートなど、様々な形態を採用することができる。
図3(a)〜(d)は、リアロッド30の両端に配置された2つの第2係合手段31と、トップロッド20の両端に配置された2つの第1係合手段21の詳細図である。図3(a)および(b)は、図2において破線円Aおよび破線円Bで囲った領域の拡大図であり、正面(-Y方向)から見たときの左側の第2係合手段31と右側の第2係合手段31をそれぞれ示している。リアロッド30は受容シート40の袋形状40aの中を通され、その両端にはリアロッド保持部材51が配されている。リアロッド保持部材51に取り付けられているフック51aは、装置内に配備された複数の取り付け箇所に取り付け可能になっている。取り付け箇所については後に詳しく説明する。
一方、図3(c)および(d)は、図2において破線円Cおよび破線円Dで囲った領域の拡大図であり、正面(-Y方向)から見たときの左側の第1係合手段21と右側の第1係合手段21をそれぞれ示している。トップロッド20には、受容シート40の端部あるいは中腹が巻きつけられるようにして固定され、その両端に配された第1係合手段21は、プリント装置1000に対し回動可能なサイドロッド10に連結可能になっている。
再度図1(a)〜(c)を参照する。サイドロッド10はプリント装置1000においてX方向の両側に配置されており、片方の端部は脚部2に固定されたサイドロッド角度保持手段60に支持された状態でYZ平面内を回動可能になっている。また、サイドロッド10のもう一方の端部には、トップロッド20の第1係合手段が係合可能なジョイント部12が配備されている。
図4は、トップロッド20とサイドロッド10の連結状態を示す上面図である。サイドロッド10は、サイドロッド支持部材61を介してその片側がサイドロッド角度保持部材60に接続され、もう片側はトップロッド20の両端に配備された第1係合手段21に連結されている。
図5(a)〜(d)は、サイドロッド10およびサイドロッド角度保持部材60の詳細図である。図5(a)はサイドロッド10およびサイドロッド角度保持部材60の断面図、図5(b)〜(c)は同図(a)において破線円E〜Gで囲った領域の拡大図である。
図5(a)を参照するに、サイドロッド10は、中空の第1サイドロッド10aと、同じく中空であって第1サイドロッド10aの内側から、第1サイドロッド10aの延在方向に出し入れ可能な第2サイドロッド10bを有している。サイドロッド支持部材61と連結されているのは第1サイドロッド10aであり、トップロッド20の第1係合手段21に接続可能であるのは第2サイドロッド10bである。第2サイドロッド10bの先端にはトップロッド20を装着可能なU字型のジョイント部12が取り付けられている。
図5(b)を参照する。サイドロッド角度保持手段60は、脚部2に取り付けられたベース部材130、サイドロッド10を回転支持するためのサイドロッド支持部材61、サイドロッド支持部材61の回転を規制するための回転止めレバー70を有している。サイドロッド支持部材61は、ベース部材130に取り付けられ、回転軸61bを中心にYZ平面で回転可能になっている。回転止めレバー70は、回転軸70bを中心にしてYZ平面で回転可能であるが、引っ張りばね72が回転止めレバー70の右端部をZ方向に付勢しており、回転止めレバー70の左端部に設けられた凸部70aはサイドロッド支持部材61に向けて付勢されている。このため、回転止めレバー70の凸部70aがサイドロッド支持部材61に形成された凹部61aと係合し、その位置すなわちその角度で、サイドロッド10が保持されるようになっている。以下、図5(a)のように、回転止めレバー70の凸部70aがサイドロッド支持部材61の凹部61aと係合して得られるサイドロッド10の角度を第1の角度とする。第1の角度の保持は、引っ張りばね72の付勢力に抗してサイドロッド支持部材61を回動させれば解除可能である。一方、サイドロッド10がその自重によってほぼ水平な位置に配置して得られる角度を第2の角度とする。
なお、サイドロッド支持部材61の側に複数の凹部61aを設けておけば、サイドロッド10の角度は、上記2つの角度に限らずさらに多くの位置で調整することが出来る。引っ張りばね72の付勢力は、サイドロッド10の重量や所望の保持角度に応じて、適正に調整されればよい。
次に、サイドロッド10の伸縮構造について説明する。第2のサイドロッド10bは、図5(a)のように第1のサイドロッド10aの中に収納されている収縮状態と、第1のサイドロッド10aより進出した伸張状態をとることができる。第2サイドロッド10bの最もサイドロッド支持部材61に近い端部には、第1のサイドロッド10aに対する係合位置を決めるための位置保持レバー81が取り付けられている。収縮状態において、位置保持レバー81は、第1のサイドロッド10aのサイドロッド保持部材61近傍に設けられた第1位置保持レバーフォロワ84に係合するようになっている。一方、伸張状態において、位置保持レバー81は、第1のサイドロッド10aのサイドロッド保持部材61から離れた位置に設けられた第2位置保持レバーフォロワ85に係合するようになっている。
図5(c)は、収縮状態における位置保持レバー81と第1位置保持レバーフォロワ84との係合状態を示す図である。当該図は、図5(a)において破線円Fで囲った領域の拡大図である。第2のサイドロッド10bの端部に固定されているレバーホルダ82には、位置保持レバー81が取り付けられている。位置保持レバー81は、軸81bを回転軸としてサイドロッド10の延在方向と垂直な平面で回転可能になっているが、圧縮ばね83によって、第1サイドロッド10aの側面に設けられた第1位置保持レバーフォロワ84に向けて付勢されている。そして、第2サイドロッド10bの回転位置保持レバー81側に設けられた位置保持部81aと、第1サイドロッド10a側に設けられた位置保持部84aとが係合することにより、収縮状態が保持されるようになっている。このような収縮状態から伸張状態に移行させるとき、ユーザは位置保持レバー81すなわち第2サイドロッド10bを、圧縮ばね83の付勢力に抗して回転させ、係合を解除させた後、第2サイドロッド10bを第1サイドロッド10aから伸張させる。
図5(d)は、伸張状態において、位置保持レバー81が係合する第2位置保持レバーフォロワ85を示す図である。当該図は、図5(a)において破線円Gで囲った領域の拡大図である。第2位置保持レバーフォロワ85および位置保持部85aは第2位置保持レバーフォロワ84および位置保持部84aと同等の形状を有している。つまり、第2サイドロッド10bを伸張した後、回転軸81bを中心にこれを回転することにより、第2サイドロッド10bの位置保持部81aと第1サイドロッド10aの位置保持部84aを圧縮ばね83を介して係合させ、伸張状態を実現することができる。
このように、ユーザは、回転軸81bを中心とした回転と第1サイドロッド10aに対する第2サイドロッド10bの出し入れを行うことにより、収縮状態と伸張状態を切り替えることが出来る。なお、第1のサイドロッド10aの側に複数の位置保持レバーフォロワを設けておけば、サイドロッド10全体の長さを更に多くの段階で調整することが出来る。圧縮ばね83の付勢力は、サイドロッド10の重量や長さに応じて、適正に調整されればよい。
以上説明したように、本実施形態のサイドロッド10は、その長さおよび角度を少なくとも2段階ずつで切り替えることが可能になっている。結果、サイドロッド10の長さおよび設置角度に応じてトップロッド20の位置および受容シート40の姿勢を様々に調整することが出来る。
次に、リアロッド30の設置位置について詳しく説明する。再度図1(a)を参照するに、本実施形態のリアロッド30は、両側の脚部2それぞれに固定されたリアロッドホルダ33、プリンタ部1の前面に設けられた上位穴91および下位穴92の3箇所に装着することができるようになっている。
図6(a)〜(c)は、リアロッドホルダ33、上位穴91および下位穴92の拡大図である。図6(a)は、図1(a)において破線円Hで囲った領域の拡大図である。リアロッドホルダ33には、図3(a)および(b)で示したリアロッド保持部材51を接合可能な底位穴51aが形成されている。底位穴51aにリアロッド保持部材51を接合することにより、リアロッド30を図1(a)のようにプリント装置1000の底部後方で保持する姿勢が実現される。
一方、図6(b)および(c)は、図1(c)において破線円IおよびJで囲ったそれぞれの領域の拡大図である。プリンタ部1の前面には、リアロッド30の両端に取り付けられたリアロッド保持部材51に対応する位置およびX方向の間隔で、フック51aを引っ掛けるための上位穴91と下位穴92が形成されている。左右2つのフック51aを上位穴91に引っ掛けることにより、リアロッド30をプリンタ部1の排出口1aのほぼ直下に配置することが出来る。また、左右2つのフック51aを下位穴92に引っ掛けることにより、リアロッド30をプリンタ部1の排出口1aよりもある程度Z方向に下がった位置に配置することが出来る。なお、脚部2のY方向に複数のリアロッドホルダ33を設けたり、プリンタ部1の正面にフック51aを引っ掛けるための穴を更に多く設けたりしても良い。
以下、トップロッド20およびリアロッド30のそれぞれを、以上説明した様々な位置に設置した場合に実現されるシート保持構成100のポジションについて説明する。
既に説明した図1(a)〜(c)は、サイドロッド10を第1の角度において収縮状態とし、リアロッド30をリアロッドホルダ33に取り付けた場合のポジションを示している。以下このようなポジションを後方排出ポジションと称する。後方排出ポジションにおいて、受容シート40はプリンタ部1の排出口1aよりも重力方向(Z方向)下方の位置で緩やかな凹形状を形成する。
このような後方排出ポジションは、受容シート40と排出口1aとの間に十分に広い空間が確保されるので、多数枚のプリント媒体を連続排出する場合に有効である。排出されるプリント媒体Wは、受容シート40の緩やかな凹形状に沿って誘導され、排出口よりも上流側の位置すなわちプリント装置1000後方にて回収される。
図7(a)〜(c)は、サイドロッド10を第2の角度において伸張状態とし、リアロッド30のフック51を上位穴91に取り付けた場合のポジションを示している。以下このようなポジションを第1前方排出ポジションと称する。第1前方排出ポジションにおいて、受容シート40はプリンタ部1の排出口1aの直下から前方下方(+Y+Z方向に)ほぼ一直線に延在する平面を形成する。
このような第1前方排出ポジションでは、プリント媒体Wが排出口1aより排出された直後から受容シート40によって支持され、前方下方に一直線に案内される。このため、プリント直後のプリント媒体Wが多少のカールを有していても、受容シート40はプリント面(上面)に接触することなく背面に接触し、これを支持しながら前方下方へと案内することが出来る。但し、このような第1前方排出ポジションでは、受容シート40が凹形状を有していないので、連続排出される多数枚のプリント媒体を一括して受容することは困難である。第1前方排出ポジションは、プリント面が傷つきやすい比較的大判の写真光沢用紙を1画像ずつ排出する場合に有効である。
図8(a)〜(c)は、サイドロッド10を第1の角度において伸張状態とし、リアロッド30のフック51を上位穴91に取り付けた場合のポジションを示している。以下このようなポジションを第2前方排出ポジションと称する。第2前方排出ポジションにおいて、受容シート40はプリンタ部1の排出口1aの直下からその前方(Y方向)にて袋状の凹形状を形成する。
このような第2前方排出ポジションでは、図1(a)〜(c)で説明した後方排出ポジションと同様、連続排出される多数のプリント媒体を受容シート40の凹形状の中に一括して受容することができる。但し、後方排出ポジションとは異なり、受容シート40は排出口1aの直下すなわち排出直後からプリント媒体Wを支持することができる。このため、プリント媒体がカールしやすい材質であったり小サイズであったりしても、後方排出ポジションに比べて擦過や落下に伴う傷が発生し難いという利点がある。さらに、受容箇所がプリント装置1000の前面の比較的高い位置なので、後方排出ポジションに比べ、ユーザが排出物を取り出しやすいという利点も有している。
図9(a)〜(c)は、サイドロッド10を第1の角度において伸張状態とし、リアロッド30のフック51を下位穴92に取り付けた場合のポジションを示している。以下このようなポジションを第3前方排出ポジションと称する。第3前方排出ポジションにおいて、受容シート40は第2前方排出ポジションと同様にプリンタ部1の排出口1aの前方(Y方向)にて袋状の凹形状を形成する。但し、第2前方排出ポジションとは異なり、排出口1aの直下すなわち排出直後ではなく、排出口1aから若干距離をおいた位置からプリント媒体Wのプリント面(表面)を支持する。このような第3の前方排出ポジションは、巻き癖の強いプリント媒体Wを排出する場合に有効なポジションである。
第2の前方排出ポジションの場合、排出されるプリント媒体Wの剛性が強くある程度の曲率を持って排出されるとき、排出口1aの直下で受容シート40に支持されるプリント媒体Wは、その位置でカールし排出口1aを塞いでしまうおそれが生じる。これに対し、図9(b)に示すような第3の前方排出ポジションであれば、プリント媒体Wは排出の直後に受容シート40に支持されることがない。このため、重力に従ってある程度Z方向に降下した後(W2)、排出口1aから十分に離れた位置で、そのプリント面(表面)が受容シート40に接触支持される。結果、排出口1aを塞ぐことなく、その下方において、プリント面(上面)を受容シート40に接触させながら徐々に排出される状態となる。逆に言えば、上記のような排出が実現出来るように、使用が想定されるプリント媒体Wのサイズやカールの強さに応じて、排出口1aと下位穴92との距離が設定されている。そして、本実施形態のように排出口1aに対しZ方向の距離が異なる複数の取り付け穴を予め配備しておけば、カールの程度やプリント媒体のサイズに併せて好適な受容位置を容易に調整することができる。
なお、以上では、代表的な4つのポジションについて説明したが、サイドロッド10の角度、サイドロッドの伸縮状態、およびリアロッドの取り付け位置のそれぞれを独立に変化させれば、さらに多くのポジションを実現することができる。すなわち、本実施形態によれば、トップロッド20およびリアロッド30のそれぞれを取り付け可能な位置を複数ずつ用意することにより、シート保持構成100のポジションを用途に応じて適切に設定することが可能となる。
次に、シート保持構成100において、トップロッド20とリアロッド30の間で保持する受容シート40の長さ(受容領域)を調整する構成について説明する。受容領域の長さが変更可能であれば、プリント媒体を受容する凹部領域の深さや広さ、また前方排出ポジションにおける受容シート40の傾斜角度などを好適に調整することができる。
図10(a)〜(c)は、トップロッド20における受容シート40の取り付け構成を示す図である。図10(a)を参照するに、トップロッド20には、その延在方向(X方向)に3箇所の穴20aが空いており、受容シート40にも当該穴20aに対応する位置に同様の穴が形成されている。そして、これら穴に共通して貫通可能な軸101bとトップロッド20の周囲に結合可能なC型形状101aとを備えた固定部材101(図10(b)参照)が、受容シート40を巻き込んでトップロッド20に接合する構成になっている(図10(c)参照)。図10(a)では、受容シート40を固定する前の状態のトップロッド20と、固定した後の状態のトップロッド20を、並列して示している。固定箇所に対しリアロッド30とは反対の位置にある受容シート40の余長部102は、固定部材101を覆い隠すのに用いられる。そして、リアロッド30から固定部材101によって固定された位置までの受容シート40の領域が、受容領域となる。以下、受容領域の長さ(受容長)を変更するための機構の例をいくつか説明する。
図11(a)および(b)は、トップロッド20において受容シート40を所望の量だけ巻きつけることが可能な巻き取り手段110の構成を示す図である。図11(a)を参照するに、巻取り手段110は、主に、ロッド係合部材111と、回転クラッチ112と、固定クラッチ113と、圧縮ばね116と、リリースボタン115と、ハウジング114とで構成されている。ロッド係合部材111は、トップロッド20の周囲に固定されており、その一部には凸部111aが形成されている。ロッド係合部材111の凸部111aと係合する回転クラッチ112は、当該係合とは反対の側に鋸歯状部112aを有し、トップロッド20と同軸で回転可能になっている。鋸歯状部112aと対向する位置には、鋸歯状部112aと噛み合う鋸歯状部113aを持つ固定クラッチ113が配備されている。回転クラッチ112の鋸歯状部112aは、圧縮ばね116によって固定クラッチ113の方向に付勢され、固定クラッチ113の鋸歯状部113aと噛み合っている。但し、圧縮ばね116の付勢力に抗して、ユーザがリリースボタン115を−X方向に押圧すると、回転クラッチ112は固定クラッチ113から離間される仕組みになっている。ハウジング114は、ロッド係合部材111には固定されておらず固定クラッチ113には固定されている状態で、これら機構を覆い保護している。すなわち、本構成において、トップロッド20、ロッド係合部材111および回転クラッチ112は一体的に回転し、ハウジング114および固定クラッチ113は、上記回転とは独立して一体的に回転する。図では、各機構をハウジング114から外した状態と、各機構をハウジング114によって覆った状態を並列して示している。なお、トップロッド20の第1連結手段として、第2サイドロッド10bの先端に設けられたU字型のジョイント部12と接合するのは、ハウジング114の外周囲である。
図11(b)は、回転クラッチ112と固定クラッチ113の係合部の拡大図である。トップロッド20をサイドロッド10のジョイント部12で係合させた状態で、ユーザが図のR方向すなわち受容シートを巻き取る方向に回転させると、トップロッド20に結合されているロッド係合部材111および回転クラッチ112はこの回転に連動する。しかし、ジョイント部12に係合されているハウジング114およびこれと一体化されている固定クラッチ113は連動しない。このため、回転クラッチ112の鋸歯状部112aは、圧縮ばね116に抗してテーパ面140に沿って進み、固定クラッチ113の鋸歯状部113aとの離間および結合を繰り返しながら、Y方向に回転する。つまり、ユーザは、ある程度の負荷を感知しながら受容シート40をトップロッド20に巻きつけることが出来る。
一方、何らかの外力によってトップロッド20に対し−R方向への力が作用しても、回転クラッチ112の鋸歯状部112aはストッパ面150に当接し、−R方向の回転は阻止される。すなわち、ユーザが、トップロッド20をR方向に回転させて受容シート40の受容長を所望の長さに調整した後、受容シート40の凹部にプリント媒体が多数受容されても、その荷重によってトップロッド20の巻取り量が大きく変わることは無い。すなわち、本実施形態によれば、排出される物品を受容するための受容シートの受容長を用途に応じて適切に設定しつつも、使用中においては調整された受容長を維持することができる。なお、改めて受容長を調整したい場合には、リリースボタン115を押圧すれば、回転クラッチ112は固定クラッチ113から完全に離脱され、−R方向への回転も可能となる。なお、上述したような巻取り手段については、左右2つの第1係合手段に設けられていても良いが、どちらか一方の第1係合手段に配されている形態であっても構わない。
図11(b)ではR方向への回転のみを可能とする構成を説明したが、鋸歯状部112aと鋸歯状部113aの係合部におけるテーパ面140の傾斜とストッパ面150の関係を逆転すれば、−R方向への回転のみを許可することもできる。この場合、トップロッド20に対する巻取り方向を逆転させれば、上記と同様の効果を得ることが出来る。例えば巻き付け方向をR方向(+X方向から見て時計回り)とすると、受容シート40の表面は内側向きにトップロッド20に巻きつけられる。この場合、受容シート40の表面に沿って進行してきたプリント媒体の先端はトップロッド20の巻き付け周囲に当接し、そこで進行が妨げられる。つまり、このような形態は短尺のプリント媒体を多数排出する場合に有効である。一方、巻き付け方向を−R方向(+X方向から見て反時計回り)とすると、受容シート40の表面は外側向きにトップロッド20に巻きつけられる。この場合、受容シート40の表面に沿って進行してきたプリント媒体の先端はトップロッド20の巻き付け周囲に沿って滑らかに進行する。つまり、このような形態は、長尺のプリント媒体を排出する場合に有効である。
また、特にワンウェイクラッチとする必要がない場合には、鋸歯状部112aと鋸歯状部113aの係合部を、逆傾斜のテーパ面を交互に配する構成としても良い。このようにすれば、ユーザは、トップロッドの正逆回転によって受容長を容易に微調整することが出来る。無論、圧縮ばね116の圧縮力を変更することにより、操作時の負荷を調整することも可能である。
図12(a)〜(c)は、受容長を変更する機構の別例を説明するための図である。図12(a)はプリント装置1000の斜視図であり、図12(b)は、同図(a)において破線円Kで囲った領域の拡大図である。両図を参照するに、本例において、受容シート40のX方向の両端には、閉じた紐部200aが所定のピッチで複数形成されている。一方、第2サイドロッド10bの先端に取り付けられているジョイント部12には、紐部200aを引っ掛けることが可能な鉤12bが形成されている。このような構成であれば、ユーザは所望の受容長を実現可能な位置の紐部200aを鉤12bに引っ掛けることにより、受容領域の長さを容易に調整することができる。
受容長を十分に短くしたい場合は、受容シート40の中腹にある紐部200aを鉤12bに引っ掛けることになるので、受容シート40の先端がトップロッド20からはみ出して垂れ下がってしまうことが想定される。このような場合でも、図12(c)に示すように受容シートを折り畳み、複数箇所の紐部200aを鉤12bに同時に引っ掛けるようにすれば、受容シート40の先端の垂れ下がりやこれに伴う汚れを回避することが出来る。
図13(a)〜(c)は、受容領域の長さを変更する機構の更に別例を示す図である。図13(a)はプリント装置1000の斜視図であり、図13(b)は、同図(a)において破線円Lで囲った領域の拡大図である。両図を参照するに、本例において、受容シート40のX方向の両端には、面ファスナ200bが受容シートの端側部に沿って貼り付けられている。一方、トップロッド20において、X方向の面ファスナ200bに対応する位置には、面ファスナ200bと着脱可能な固定面ファスナ200cが配備されている。このような構成であれば、ユーザは所望の受容長を実現可能な位置で面ファスナ200bを固定面ファスナ200cに貼り付けることにより、受容領域の長さを容易に調整することが出来る。本例の場合も、図13(c)に示すように受容シートを折り畳んだ状態で面ファスナ200bと固定面ファスナ200cを貼り付ければ、受容シート40の先端の垂れ下がりやこれに伴う汚れを回避することが出来る。
以上、図10(a)〜図13(c)を用いて説明した構成を採用すれば、トップロッド20とリアロッド30の間で保持する受容長を、多段階に容易に調整することが出来る。結果、プリント媒体を受容する凹部領域の深さや広さ、また前方排出ポジションにおける受容シート40の傾斜角度などを、プリント媒体のサイズや排出量またユーザの使い勝手に応じて、適切に調整することができる。なお、以上では、受容シート40をトップロッド20に巻きつけることによって受容長を調整したが、図10(a)〜図13(c)を用いて説明した構成をリアロッド30の側に備えたり、トップロッド20とリアロッド30の両方の側に備えたりしても良い。
図14(a)〜(c)は、図9(a)〜(c)で示した第3前方排出ポジションにおいて、図10(a)〜(c)で説明したクラッチ機構を用いて受容長を短くした状態を示している。受容長が短くなった分、トップロッド20とリアロッド30の間の受領領域は、上昇勾配を有するほぼ平滑な面になっている。ここでは、A4横サイズで切断された巻き癖を有するプリント媒体Wが、連続して排出される状態を示している。
一方、図15は、このような状態において、定型サイズよりも十分に長尺のプリント媒体がカールした状態で排出された場合の受容状態を示している。排出口1aから排出されたプリント媒体Wは、比較的平面の受容シート40に沿って支持され、トップロッド20を越えた後の領域は、自重によってZ方向に垂れ下がる。そして、画像の後端でプリント媒体が切断されると、プリント媒体はトップロッド20に支持された状態でその前方はZ方向に垂れ下がり、後方は受容シート40に接触した状態で受容される。
図7(a)〜(c)で示した第1前方排出ポジションは、比較的大判の写真光沢用紙を1画像ずつ排出する場合に有効であると説明したが、プリント媒体Wの後端を切断した時点で、プリント媒体Wが平滑な受容シート40に沿って滑り落ちてしまうおそれがある。これに対し、本例のように、トップロッド20を頂点としてその前後でプリント媒体が釣り下がったり勾配斜面で支持されたりする形態であれば、プリント媒体はY方向にも−Y方向にも滑ることなく、受容部3にて確実に受容される。
一方で、図14(b)のようにプリント媒体が比較的小さく、その排出方向の長さが排出口1aと下位穴92との距離よりも短い場合、カールしながら排出されるプリント媒体の先端は、プリンタ部1の前面に向かって排出される(W3)。そして、その先端がプリンタ部1の前面や受容シート40に当接する前にプリント媒体が切断されると、プリント媒体は反転しながら落下し、プリント面が受容シート40に接触する状態で受容される(W4)。この際、排出口1aの直下にカールしたプリント媒体に沿ってこれを誘導するための排出ガイド1bや、ガイドに沿って誘導されてきたプリント媒体の先端を引っ掛けるための凹部302を予め配備しておけば、上記反転および落下は更にスムーズに行われる。
ここで、例えば受容シート40がほぼ水平な平面であると、先行して排出されたプリント媒体ほど下流方向(+Y方向)に移動しやすく、後続して排出されるプリント媒体との間で積載位置にずれが生じることがある。これに対し、本例のように、受容シート40を+Y方向に上昇勾配を有する平面としておけば、1枚目のプリント媒体の+Y方向への移動を抑制することが出来る。
また、本例においては、トップロッド20に巻き取られている受容シート40が、排出されたプリント媒体の重量によって若干引き出されるようになっている。そして、この際、平面形状から重力方向において下向きに撓んだ湾曲形状(凹形状、見方を変えれば下向きに凸形状)となるように受容面が変形するようになっている。このため、新たにプリント媒体が排出されると、そのカールした面に緩みを持った受容シート40が接触し易くなり、所定の位置で整然と積載することが可能となる。
この際、1枚目のプリント媒体が排出されるまでは受容シート40をほぼ平滑にしておき、1枚目のプリント媒体が排出された以降は受容シート40にある程度の緩みを持たせるための方法としては、以下のものも採用することも出来る。
例えば、受容シート40の材質を柔軟で伸縮性のあるポリエステルなどの繊維とする方法がある。このような受容シートであれば、排出されたプリント媒体の落下に伴い受容シート40が伸びた状態でこれに接触し、所定の位置でプリント媒体を積載することができる。
また、受容シート40上に既に排出されたプリント媒体が存在するか否かを検出するセンサを用意し、センサの検出結果に応じて受容シート40の保持状態をより積極的に変更することもできる。図16(a)および(b)は、受容シート40上に排出済みのプリント媒体が存在するか否かを検出するセンサの設置状態を示す斜視図および断面図である。センサ301は、プリンタ部1前面の排出口1aより下方に配備された透過型光学センサであり、受容シート40に形成された切り欠け穴300を介して、受容シート40上にプリント媒体が存在するか否かを検出する。
図17(a)および(b)は、プリント装置1000に備えられたCPU303が、センサ301の検出結果に基づいて、受容シート40の姿勢を変更する方法を説明するためのブロック図およびフローチャートである。本例では、サイドロッド角度保持手段60にサイドロッド10の角度を変更可能な駆動モータ302が備えられており、CPU303が、センサ301の検出結果に応じて駆動モータ302を駆動制御して、サイドロッド10の角度を調整するものとする。
以下、図17(b)のフローチャートに沿って説明する。プリント装置1000が電源ONされ本処理が開始されると、CPU303はまず、ステップS1にて、受容シート40の姿勢を緩みのない平滑状態にリセットする。
続くステップS2において、CPU303は電源がOFFにされたか否かを確認する。電源がOFFで無い場合、CPU303はステップS3に進み、検出センサの検出結果に基づいて受容シート40上にプリント媒体が存在するか否かを判断する。プリント媒体は存在しないと判断した場合はステップS2に戻り、プリント媒体が存在すると判断するまで、ステップS2およびS3を繰り返す。
ステップS3にてプリント媒体が存在すると判断すると、CPU303はステップS4に進み、駆動モータ302を正方向に所定量回転する。これに伴い、サイドロッド10は回動し、トップロッド20とリアロッド30の間で形成されていた平滑面は湾曲した凹形状(下向きに凸)の状態で緩む。結果、排出されたプリント媒体のカールした面は、緩みを持った受容シート40によって支持され、所定の位置で保持される。
更にCPU303はステップS5に進み、電源がOFFにされたか否かを確認する。電源がOFFで無い場合、CPU303はステップS6に進み、検出センサの検出結果に基づいて受容シート40上にプリント媒体が存在するか否かを判断する。プリント媒体はまだ存在すると判断した場合はステップS5に戻り、プリント媒体が存在しないと判断されるまで、ステップS5およびS6を繰り返す。
ユーザがプリント媒体を回収するなどして、センサ301が受容シート40上にプリント媒体が存在しないことを検知すると、CPU303はステップS7に進み、駆動モータ302を逆方向に回転させる。これに伴い、サイドロッド10は反対方向に回動し、トップロッド20とリアロッド30の間にある受容シート40は再び平滑な上昇勾配面を形成する。その後、CPU303は再びステップS2に戻る。
一方、ステップS2やステップS5において電源OFFが確認された場合は、本処理を終了する。ステップS2で電源OFFが確認された場合、受容シート40は次の電源ONまで平滑面を有するポジションを維持することになり、ステップS5で電源OFFが確認された場合、受容シート40は次の電源ONまで緩みを持ったポジションを維持することになる。但し、次の電源ON時には、ステップS1にて平滑面を有するポジションにリセットされるので、どちらの状態で電源がOFFされても上記処理は滞りなく行うことが出来る。
なお、ステップS1においては、例えば駆動モータ302とサイドロッド10との間の駆動伝達経路の途中にトルクリミッタを配置した上で、駆動モータを逆方向に駆動する方法などを採用すればよい。このようにすれば、駆動モータに負荷をかけることなく、ポジションリセットを行うことが出来る。また、図16及び17では、プリント媒体の有無に応じて受容シート40のポジションを切り替える構成で説明したが、例えばプリント媒体の積載枚数や重量を計測し、その計測結果に応じてサイドロッド10を徐々に回動させる構成としても良い。このようにすれば、積載されたプリント媒体の最上位をほぼ一定の高さに維持するなどして、さらに安定した積載が可能となる。
以上説明したように、1枚目のプリント媒体が排出されるまでは受容シート40をほぼ平滑にしておき、1枚目のプリント媒体が排出された以降は受容シート40にある程度の緩みを持たせることにより、複数のプリント媒体を整然と積載することが可能となる。
次に、トップロッド20とサイドロッド10の結合構成について詳しく説明する。図18(a)〜(f)は、トップロッド20の第1係合手段21と、サイドロッド10のジョイント部12の結合状態を示す図である。図18(a)および(b)は、図4において破線円MおよびNで囲った領域の拡大図であり、正面(-Y方向)から見たときの左側の結合箇所と右側の結合箇所をそれぞれ示している。左右どちらにおいても、U字型のジョイント部12に対し、ハウジング114の外周囲が嵌め込まれる形で両者は結合する。ジョイント部12において、U字型の両側面には同型の長穴部12aがX方向に延在するように対向して形成されている。そして、第1係合手段21をジョイント部12に結合する際、ハウジング114に取り付けられている2つの突起部21aが、長穴部12aに挿入され嵌め込まれるようになっている。
図18(c)および(d)は、同図(a)および(b)それぞれを、ジョイント部12のU字底面に向かって見た図である。突起部21aのX方向の形状について詳しく説明すると、突起部21aは、トップロッド20の幅方向(X方向)においてその外側の面にストレート形状21bを、内側の面に円弧形状21cを有している。このため、第1係合手段21は、穴部12aの長さに対応する範囲でX方向に移動可能であり、突起部21aを中心としたP方向への回転も可能になっている。このような構成では、トップロッド20をサイドロッド10に装着した状態において、突起部21aの外側の面に形成されたストレート形状21bと長穴部12aの内壁とが、トップロッド20の軸方向に対向している。このため、片側のサイドロッド10にX方向の負荷が加えられても、当該負荷をトップロッド20を介したもう一方のサイドロッド10との間で分散させることができる。
また、上記構成を採用すれば、連結部に過度な負荷をかけることなく、ジョイント部12に対するトップロッド20の着脱を左右で独立して行うことができる。例えば、ユーザ操作の観点から見ると、長尺のトップロッド20をサイドロッド10に装着するとき、2つの第1係合手段21を片方ずつ順番にジョイント部12に装着するのが自然である。この際、片側の第1係合手段21を装着しもう片側の第1係合手段21を装着するタイミングにおいて、トップロッド20の姿勢はX軸に対し傾く。この場合であっても、上記構成であれば、第1係合手段21の突起部21aをジョイント部12の長穴部12a内のいずれかの部分に対応させることができ、その後長穴部12a内で突起部21aをスライドさせながらトップロッド20の姿勢を整えることができる。また、ジョイント部12の長穴部12aが突起部21aに対向できないほどトップロッド20が傾けられた場合には、円弧形状21cが長穴部12aの内壁を転がり、第1係合手段21はジョイント部12から簡単に外れるようになっている。すなわち、本構成によれば、サイドロッド10に対するトップドット20の着脱を、破損のおそれが無い状態で無理なく行うことが出来るようになっている。この際、ジョイント部12が、第2のサイドロッド10bに対して回転可能に取り付けられていれば、操作性を一層向上させることができる。
図18(e)は同図(a)を+X方向から見た場合の断面図、図18(f)は同図(b)を−X方向から見た場合の断面図である。ここでは、突起部21aのYZ平面における形状について詳しく説明する。図18(e)を参照するに、装置正面に向かって右端部に位置する第1係合手段21の突起部21aは、サイドロッド10の長穴部12aに当接する面が円弧形状21dになっている。このため、第1係合手段21に所定量以上の回転負荷がかかったとき、突起部21aの円弧形状21dがサイドロッド10の長穴部12aの面を転がり、第1係合手段21はジョイント部12から簡単に外れてしまう。すなわち、例えば、図11(a)および(b)で説明した巻き取り手段110において、ユーザが巻取り方向を誤ってトップロッド20を−R方向に回転させようとした場合でも、両者の結合部分に余分な負荷がかかったり破損したりするおそれは無い。
一方、図18(f)を参照するに、装置正面に向かって左端部に位置する第1係合手段21の突起部21aでは、サイドロッド10の長穴部12aに当接する面がストレート面形状21eを有している。このため、トップロッド20に対しYZ平面で回転する力が作用しても、面間で発生する抗力によって左端部に位置する第1係合手段21はジョイント部12から容易に外れることはない。
以下、トップロッド20にある程度の傾きが存在しても突起部21aを長穴部12aの接合が可能であることを活用した、受容部3のポジションの変形例について説明する。
図19(a)および(b)は、2つのサイドロッド10の姿勢をそれぞれに独立に設定する場合の受容部3のポジションを示す図である。図19(a)は、図9(a)で示した第3前方排出ポジションと同様、両方のサイドロッド1を第1の角度において伸張状態とした状態を示している。一方、図19(b)は、上記第3前方排出ポジションにおいて、一方のサイドロッド1は第1の角度において伸張状態とし、もう一方のサイドロッド1は第2の角度において伸張状態とした場合を示している。例えば、図19(a)に示す第3前方排出ポジションにおいて、数枚のプリント媒体Wを受容シート40に排出した後、これを取り出す際、手前のトップロッド20によってプリント媒体が取り出しにくい場合がある。このような場合、片側のサイドロッド10のみを第1の角度から第2の角度に変更すると、図19(b)に示すように、受容シート40の内側が大きく開かれ、ユーザは容易にプリント物を取り出すことができるようになる。
サイドロッド10を第1の角度から第2の角度に移行する際、トップロッド20はX軸に対し徐々に傾き、サイドロッド10の先端に位置する2つのジョイント部12の距離も徐々に大きくなる。但しこの間、第1係合手段の突起部21aはジョイント部12の長穴部12aの中で徐々に回転および移動することができるので、両者の係合を維持したまま図19(b)のポジションに移行することが出来る。
また、以上では排出されたプリント媒体を受容シートから取り出すときに図19(b)の姿勢に移行させる形態で説明したが、比較的小サイズのプリント媒体を連続排出する際などは、プリント動作時の段階から図19(b)のポジションを採用しても良い。この場合、連続プリントの最中であっても、排出されたプリント媒体を受容シート40から適宜排出することが出来る。
次に、受容シート40に尾根形状を形成する例について説明する。本明細書において尾根形状とは、プリント媒体の排出方向(Y方向)に直線的に延びる尾根(山の稜線)のような凸状の部分的な膨らみである。この尾根形状を形成するように、柔軟性を有する受容シート40に意図的に凹凸を設ける。このような尾根形状が受容シート40に形成されていると、コシが弱く受容シート40の形状に追従しやすいプリント媒体であっても、受容シート40との接触面積をなるべく小さくし、両者の間の摺動抵抗を抑え、プリント媒体を目的の方向に誘導することができる。なお、このような尾根形状すなわち山と谷を顕著に形成するためには、受容シート40の材質を柔軟で伸縮性のあるポリエステルなどの繊維とすることが好ましい。
図20は、尾根形状を形成するために、リアロッド30に取り付ける突起部120を示す図である。また、図21(a)および(b)は、突起部120をリアロッド30に対し等間隔に4つ取り付けた場合の受容領域を示す斜視図および上面図である。
受容シート40において、リアロッド30側では突起部120が取り付けられた4箇所の位置で凸形状が形成され、トップロッド20側では固定部材101が取り付けられた3箇所の位置で固定される。これにより、突起部120と固定部材101を結ぶ線で受容シートが固定支持され、他の領域では受容シート40の自重によって、Z方向に垂れ下がった状態となる。結果、図21(b)に示すように、プリント媒体の排出の方向とは交差する方向に延在する尾根形状120aが形成される。このため、リアロッド30側から排出される場合であっても、トップロッド20側から排出される場合であっても、排出されたプリント媒体の面は尾根形状120aの線上で支持されることになり、摺動抵抗が抑えられた状態でY方向への進行が促される。
図22(a)および(b)は、突起部120をリアロッド30に対し等間隔に4つ取り付け、且つトップロッド20側では、リアロッド30の突起部120に対向する4箇所に固定部材101を取り付けた場合の斜視図および上面図である。本構成の場合も、図21の場合と同様、尾根形状120a以外の領域は受容シート40の自重によって、Z方向に垂れ下がった状態となる。結果、図22(b)に示すように、受容シート40には突起部120から固定部材101に向かうほぼ平行な4つの尾根形状120aが形成される。すなわち、本構成においても、排出されたプリント媒体の面はY方向に延在する尾根形状120aの線上で支持され、摺動抵抗が抑えられた状態でY方向への進行が促される。
なお、突起部120の大きさや数については特に限定されるものではなく、受容シートの材質や形成したい尾根形状に応じて調整されれば良い。また、図23に示すように、複数の突起形状が一体的に形成されたリアロッド30を採用しても良い。
図24(a)および(b)は、ループ状の紐を備えることにより尾根形状を形成する例を示す図である。本例では、受容シート40のY方向の両端部に、ループ紐121がX方向に所定の間隔で予め縫い付けられており、これらループ紐121のループにトップロッド20およびリアロッド30がそれぞれ通された状態になっている。図ではトップロッド20側のループ紐121の取り付け位置と、リアロッド30側のループ紐121の取り付け位置が、X方向において一致している場合を示している。結果、受容シート40にはY方向にほぼ平行に延在する尾根形状120aが形成され、図22(a)および(b)と同等の効果を得ることが出来る。
このような尾根形状は、受容シート40の巻取りによって受容長を短くし、例えば図14(a)〜(c)に示したように、トップロッド20とリアロッド30の間に平滑な受容領域を形成した場合も有効に機能する。この場合、突起部120と固定部材101の間には張力が発生し、尾根形状120aはこの張力の向きに沿った直線状に形成される。そして、受容シート40に対するプリント媒体の接触面積や摺動抵抗は更に低く抑えられ、プリント媒体は尾根形状120aに沿って直線的に導かれることになる。結果、図14(a)〜(c)のように上昇勾配を有する平滑な受容領域とした場合において、プリント媒体を所望の方向に誘導することができる。
なお、以上ではプリント装置でプリント処理された媒体を受容する形態を例に説明してきたが、本発明において排出物の用途や材質は特に限定されるものではない。排出口から排出される平板やシートなどを受容する形態であれば、本発明の物品受容装置は有効に機能する。