以下に、本発明の一実施形態の物体検出装置100について、図1〜図12を参照して説明する。
図1には、物体検出装置100の概略的構成がブロック図にて示されている。
物体検出装置100は、一例として、移動体としての自動車に搭載され、光を出射し、物体(例えば先行車両、停車車両、障害物、歩行者等)からの反射光(散乱光)を受光して該物体までの距離を測定する走査型レーザレーダである。物体検出装置100は、例えば自動車のバッテリ(蓄電池)から電力の供給を受ける。
物体検出装置100は、図1に示されるように、光源としてのLD(レーザダイオード)、LD駆動部12、投光光学系20、受光光学系30、検出系40、同期系50などを備えている。
LDは、端面発光レーザとも呼ばれ、LD駆動部12により駆動され、レーザ光を出射する。LD駆動部12は、自動車のECU(エンジンコントロールユニット)から出力されるLD駆動信号(矩形パルス信号)を用いてLDを点灯(発光)させる。LD駆動部12は、一例として、LDに電流を供給可能に接続されたコンデンサ、該コンデンサとLDとの間の導通/非導通を切り替えるためのトランジスタ、該コンデンサを充電可能な充電手段等を含む。
図2(A)には、投光光学系20、同期系50が模式的に示されている。図2(B)には、受光光学系30が模式的に示されている。以下では、図2(A)等に示されるZ軸方向を鉛直方向とするXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
投光光学系20は、図2(A)に示されるように、LDからの光の光路上に配置されたカップリングレンズ22と、該カップリングレンズ22を介した光の光路上に配置された反射ミラー24と、該反射ミラー24で反射された光の光路上に配置された偏向器としての回転ミラー26と、を含む。ここでは、装置を小型化するために、カップリングレンズ22と回転ミラー26との間の光路上に反射ミラー24を設けて光路を折り返している。
そこで、LDから出射された光は、カップリングレンズ22により所定のビームプロファイルの光に整形された後、反射ミラー24で反射され、回転ミラー26でZ軸周りに偏向される。
回転ミラー26でZ軸周りの所定の偏向範囲に偏向された光が投光光学系20から投射された光、すなわち物体検出装置100から射出された光である。
回転ミラー26は、回転軸(Z軸)周りに複数の反射面を有し、反射ミラー24からの光を回転軸周りに回転しながら反射(偏向)することで該光により上記偏向範囲に対応する有効走査領域を水平な1軸方向(ここではY軸方向)に1次元走査する。ここでは、偏向範囲、有効走査領域は、物体検出装置100の+X側である。以下では、回転ミラー26の回転方向を「ミラー回転方向」とも呼ぶ。
回転ミラー26は、図2(A)から分かるように、反射面を2面(対向する2つの面)有しているが、これに限らず、1面でも3面以上でも良い。また、少なくとも2つの反射面を設け、回転ミラーの回転軸に対して異なった角度で傾けて配置して、走査・検出する領域をZ軸方向に切り替えることも可能である。
すなわち、LD、LD駆動部12及び投光光学系20を含んで、光により有効走査領域を走査する光走査系200が構成されている(図1参照)。
受光光学系30は、図2(B)に示されるように、投光光学系20から投射され有効走査領域内にある物体で反射(散乱)された光を反射する回転ミラー26と、該回転ミラー26からの光を反射する反射ミラー24と、該反射ミラー24からの光の光路上に配置され、該光を後述する時間計測用PD42に結像させる結像光学系と、を含む。
図2(C)には、LDから反射ミラー24までの光路と、反射ミラー24から時間計測用PD42までの光路が示されている。
図2(C)から分かるように、投光光学系20と受光光学系30は、Z軸方向に重なるように配置されており、回転ミラー26と反射ミラー24は、投光光学系20と受光光学系30で共通となっている。これにより、物体上におけるLDの照射範囲と時間計測用PD42の受光可能範囲の相対的な位置ずれを小さくでき、安定した物体検出を実現できる。
検出系40は、図2(B)及び図1に示されるように、投光光学系20から投射され有効走査領域内にある物体で反射(散乱)された光を受光光学系30を介して受光する時間計測用PD42(フォトダイオード)と、該時間計測用PD42の受光信号(出力信号)を検出するPD出力検出部44と、LD駆動信号の立ち上がりタイミングとPD出力検出部44での受光信号の検出タイミングとの時間差から物体までの距離を算出する測定制御部46と、を含む。
そこで、投光光学系20から投射され物体で反射(散乱)された光は、回転ミラー26、反射ミラー24を介して結像光学系に導かれ、該結像光学系により時間計測PD42に集光する(図2(B)参照)。図2(B)では、装置を小型化するために、回転ミラー26と結像光学系との間に反射ミラー24を設けて光路を折り返している。ここでは、結像光学系は2枚のレンズ(結像レンズ)で構成されているが、1枚のレンズとしても良いし、3枚以上のレンズとしても良いし、ミラー光学系を用いても良い。
同期系50は、図2(A)及び図1に示されるように、LDから出射されカップリングレンズ22を介して反射ミラー24で反射された光であって回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で再び反射された光の光路上に配置された同期レンズ52と、該同期レンズ52を介した光の光路上に配置された同期検知用PD54と、該同期検知用PD54の出力信号を検出するPD出力検出部56と、を含む。
詳述すると、反射ミラー24は、上記偏向範囲に対して回転ミラー26の回転方向上流側に配置され、回転ミラー26で上記偏向範囲の上流側に偏向された光が入射される。そして、回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で反射された光が同期レンズ52を介して同期検知用PD54に入射される。
なお、反射ミラー24は、上記偏向範囲に対して回転ミラー26の回転方向下流側に配置されても良い。そして、回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で反射された光の光路上に同期系50が配置されても良い。
回転ミラー26の回転により、該回転ミラー26の反射面で反射された光が同期検知用PD54で受光される度に同期検知用PD54から信号が出力される。すなわち、同期検知用PD54からは定期的に信号(同期信号)が出力されることになる(図5参照)。
このように回転ミラー26からの光を同期検知用PD54に照射するための同期点灯を行うことで、同期検知用PD54での受光タイミングから、回転ミラー26の回転タイミングを得ることが可能となる。
そこで、LDを同期点灯してから所定時間経過後にLDをパルス点灯することで有効走査領域を光走査することができる。すなわち、同期検知用PD54に光が照射されるタイミングの前後期間にLDをパルス点灯することで有効走査領域を光走査することができる。
ここで、時間計測や同期検知に用いる光検出器としては、上述したPD(Photo Diode)の他、APD(Avalanche Photo Diode)、ガイガーモードAPDであるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等を用いることが可能である。APDやSPADは、PDに対して感度が高いため、検出精度や検出距離の点で有利である。
図3には、検出系40、同期系50におけるPD出力検出部の一例が示されている。PD出力検出部での動作としては、受光信号の信号増幅及び受光信号のタイミング検出の2つの動作がある。受光信号の信号増幅についてはアンプなどの信号増幅器を用いて増幅し、受光信号のタイミング検出についてはコンパレータなどの比較器を用いて、PDからの受光信号の一定出力(スレッシュレベル)以上となる立ち上り波形部を検出する。すなわち、PD出力検出部は、受光信号をコンパレータを用いて2値化した論理信号として得ることができる。
PD出力検出部56は、同期検知用PD54の受光信号(立ち上がり波形部)を検出すると同期信号(上記2値化した論理信号)をECUに出力する。
ECUは、PD出力検出部56からの同期信号に基づいてLD駆動信号を生成し、該LD駆動信号をLD駆動部12及び測定制御部46に出力する。
すなわち、LD駆動信号は、同期信号に対して遅延したパルス点灯信号(周期的なパルス信号)である(図5参照)。
PD出力検出部44は、時間計測用PD42の受光信号(立ち上がり波形部)を検出すると検出信号(矩形パルス信号)を測定制御部46に出力する。
測定制御部46は、例えば、ECUからのLD駆動信号の立ち上がりタイミングとPD出力検出部44からの検出信号の立ち上がりタイミングとの時間差を求め、該時間差を距離に変換することで物体までの往復距離を算出し、その算出結果をECUに測定信号として出力する。
ECUは、測定制御部46からの測定信号に基づいて例えば自動車の操舵制御、速度制御等を行う。自動車の速度制御としては、例えば自動ブレーキ(オートブレーキ)が挙げられる。
ここで、LD駆動部12は、回転ミラー26によって有効走査領域が走査されるとき、LDを駆動して、図4(A)に示されるようなパルス光(以下では「射出光パルス」とも称する)を射出させる。そして、LDから射出され物体で反射(散乱)されたパルス光(以下では「反射光パルス」とも称する)が時間計測用PD42(図4(A)では光検出器としてPDの代わりにAPDを用いている)で検出される。
LDが射出光パルスを射出してから、APDで反射光パルスを検出するまでの時間tを計測することで、物体までの距離を算出することが可能である。時間計測に関しては、例えば、図4(B)に示されるように、射出光パルスをPD等の光検出器で検出して2値化した矩形パルスとし、反射光パルスをPD出力検出部で2値化した矩形パルスとし、両矩形パルスの立ち上がりタイミングの時間差tを時間計測回路で計測しても良いし、射出光パルス、反射光パルスの波形をA/D変換してデジタルデータに変換し、LDの出力信号とAPDの出力信号を相関演算することで、時間tを計測することも可能である。
次に、図2(A)〜図2(C)、図6(A)、図6(B)、図7(A)、図7(B)を用いて、有効走査領域における各走査位置での物体の最大検出距離(物体を検出可能な最大距離)について説明する。
図7(A)に示されるように、仮に各走査位置に向けて同じ発光強度のパルス光を射出すると、時間計測用PDでほぼ同じ受光光量が得られるため、有効走査領域の左側の端部である左走査端A´、中央部である走査中央B´、右側の端部である右走査端C´で最大検出距離はほぼ同じになる。
しかし、図2(A)に示される構成を有する光走査系200を用いた走査型レーザレーダである物体検出装置100では、後述する回転ミラー26、反射ミラー24、結像レンズ等での「けられ」の問題があるため、物体検出装置100からのパルス光(射出光パルス)の強度に有効走査領域内でばらつきが生じるため、図7(B)に示されるように、有効走査領域内(例えば左走査端A、D点、走査中央B、E点、右走査端C)で最大検出距離にばらつきが生じる。
物体検出装置100では、図6(A)に示されるように、有効走査領域の左側の端部である左走査端Aから、回転ミラーの反射面のミラー回転方向下流側の端部に入射する光ビームは、一部が回転ミラー、反射ミラー、結像レンズ等でけられ、他の一部が時間計測用PD42に導かれるため、該時間計測用PD42での受光光量が低下し、左走査端Aでの最大検出距離が短くなる(図7(B)参照)。この「けられ」は、特に、装置の小型化を図るために回転ミラーと結像光学系を近づけるほど顕著となる。
また、図6(B)に示されるように、有効走査領域の右側の端部である右走査端Cから、回転ミラーの反射面の回転方向上流側の端部に入射する光ビームも、一部が回転ミラー、反射ミラー、結像レンズ等でけられ、他の一部が時間計測用PD42に導かれるため、該時間計測用PD42での受光光量が低下し、右走査端Cでの最大検出距離が短くなる(図7(B)参照)。なお、図6(A)及び図6(B)では、反射ミラーの図示が省略され、結像光学系の1枚の結像レンズのみが図示され、回転ミラーとして4面のものが図示されている。
一方、有効走査領域の中央部である走査中央Bから、回転ミラーの反射面の中央部に入射する光ビームは、ほぼ全部が時間計測用PD42に導かれるため、該時間計測用PD42での受光光量はほとんど低下せず、走査中央Bでの最大検出距離が長くなる(図7(B)参照)。
結果として、最大検出距離は、有効走査領域の両端部(両走査端)で最小となり、有効走査領域の中央部(走査中央)で最大となる(図7(B)参照)。すなわち、最大検出距離は、有効走査領域の中央部から各端部にかけて徐々に小さくなる(図7(B)参照)。
以下に、図7(A)〜図9(C−3)を用いて、有効走査領域での最大検出距離における検出分解能について説明する。
先ず、比較例として、物体検出装置から有効走査領域の全範囲に所定の時間間隔すなわち所定の走査画角θでパルス光を射出して物体を検出する場合について説明する。
図8(A)に示されるように、走査中央において物体検出装置から物体までの検出距離が最大検出距離d1となる、走査画角θで隣接する2つの走査位置B1、B2と物体の位置との関係は、図8(D)のようになる。走査中央での最大検出距離d1は、有効走査領域内の最大検出距離の中で最大であるため、有効走査領域内において走査画角θで隣接する2つの走査位置の間隔の中で2つの走査位置B1、B2の間隔L1が最大となり、走査中央では検出分解能が最小となる。なお、図8(A)において「走査画角θ」は、走査位置B1の走査角β1と走査位置B2の走査角β2の差を意味する。
ここで、図8(D)に示される、走査中央において物体検出装置から物体までの検出距離が最大検出距離d1となる略等間隔で並ぶ3つの位置P1、P2、P3に着目する(ただし、P1とP3の距離はB1とB2の距離に等しい)。なお、図8(D)においてθが小さいとき、OP1=OP2=OP3と見做すことができる。物体が位置P1にあるときは走査位置B1で検出され、物体が位置P3にあるときは走査位置B2で検出され、物体が位置P2にあるときは検出されず検出漏れが起こる。図8(D)の場合は、図9(A)に示されるように、物体検出装置から有効走査領域にパルス光が一定のパルス周期T1で射出される。
次に、図8(B)に示されるように、左走査端において物体検出装置から物体までの検出距離が最大検出距離d2となる、走査画角θで隣接する2つの走査位置A1、A2と物体の位置との関係は、図8(E)のようになる。なお、図8(E)では、便宜上、左走査端を実際とは異なり走査中央の如く描いている。左走査端での最大検出距離d2は、有効走査領域内の最大検出距離の中で最小であるため、有効走査領域内において走査画角θで隣接する2つの走査位置の間隔の中で2つの走査位置A1、A2の間隔L2が最小となり、検出分解能が最大となる。なお、図8(B)において「走査画角θ」は、走査位置A1の走査角α1と走査位置A2の走査角α2の差を意味する。
ここで、図8(E)に示される、左走査端において物体検出装置から物体までの検出距離が最大検出距離となる隣接する2つの位置P4、P5に着目する(ただし、P4とP5の距離はA1とA2の距離に等しい)。なお、図8(E)においてθが小さいとき、OP4=OP5と見做すことができる。物体が位置P4にあるときは走査位置A1で検出され、物体が位置P5にあるときは走査位置A2で検出され、検出漏れは起こらない。図8(E)の場合も、図9(A)に示されるように、物体検出装置から有効走査領域にパルス光が一定のパルス周期T1で射出される。
右走査端についても、有効走査領域での最大検出距離における検出分解能について左走査端の場合と同様の議論が成立するため、説明を割愛する。
以上のように、比較例の場合、すなわち物体検出装置から有効走査領域の全範囲に所定の時間間隔すなわち所定の走査画角θでパルス光を射出して物体を検出する場合には、有効走査領域の最大検出距離における検出分解能にばらつきが生じることがわかる。
ところで、図8(C)に示されるように、走査中央において物体検出装置から物体までの検出距離が最大検出距離d1となる、走査画角θ´(<θ)で(等間隔で)並ぶ3つの走査位置B1´、B2´、B3´と物体の位置との関係は、図8(F)のようになる。なお、図8(C)において「走査画角θ´」は、走査位置B1´の走査角β1´と走査位置B2´の走査角β2´の差、及び走査位置B2´の走査角β2´と走査位置B3´の走査角β3´の差を意味する。
ここで、図8(F)に示される、走査中央において物体検出装置から物体までの検出距離が最大検出距離d1となる等間隔で並ぶ3つの位置P6、P7、P8に着目する(ただし、P6とP8の距離はB1´とB3´の距離に等しい)。なお、図8(F)においてθが小さいとき、OP6=OP7=OP8と見做すことができる。物体が位置P6にあるときは走査位置B1´で検出され、物体が位置P8にあるときは走査位置B3´で検出され、物体が位置P7にあるときはB2´で検出されるため、位置P6、位置P8では勿論のこと、P7の位置でも検出漏れは起こらない。
《実施例1》
そこで、本実施形態の実施例1では、光走査系200は、左側の走査端において隣接する2つの走査位置間(例えば走査位置A1、A2間)の走査画角及び右側の走査端において隣接する2つの走査位置間の走査画角がθとなり、かつ走査中央において隣接する2つの走査位置間(例えば走査位置B1´、B2´間、走査位置B2´、B3´間)の走査画角がθ´(<θ)となるようにLDの発光タイミングを制御(設定)する。
詳述すると、光走査系200は、図9(B)に示されるように、LDの発光間隔(以下では単に「発光間隔」とも呼ぶ)、すなわちLDの駆動信号(駆動パルス)のパルス周期(以下では単に「パルス周期」とも呼ぶ)を、走査中央Bを走査するときに、各走査端を走査するときよりも短くする。すなわち、左走査端A、右走査端Cを走査するときのLDの発光間隔をT1、走査中央Bを走査するときの発光間隔をT2とすると、T1>T2が成立する。なお、発光間隔T1、T2は、検出対象である物体を考慮して決定することが好ましい。
より詳しくは、LD駆動部12は、発光間隔(パルス周期)を走査中央Bから左走査端A、右走査端Cそれぞれにかけて徐々に長くする(図9(C−3)、図9(C−2)、図9(C−1)参照)。
なお、図9(C−1)には左走査端A、右走査端Cでの発光間隔T1が示され、図9(C−3)には走査中央Bでの発光間隔T2が示され、図9(C−2)には左走査端よりのD点(図7(B)参照)、右走査端寄りのE点(図7(B)参照)での発光間隔が示されている。そして、T1>T3>T2が成立している。
以上のように、実施例1によれば、有効走査領域の各走査位置の最大検出距離に応じて発光間隔を制御することで、有効走査領域における検出分解能のばらつきを抑制できる。
具体的には、走査中央でのパルス周期を相対的に短くすることで最大検出距離での物体の検出漏れを抑制できる。さらに、各走査端でのパルス周期を相対的に長くすることでLDの長寿命化や消費電力の低減を図ることができる。
《実施例2》
本実施形態の実施例2では、物体を検出可能な最大距離(最大検出距離)において隣接する2つの走査位置の間隔(走査位置の隣接間隔)が有効走査領域の全範囲で略一定となるように、LDの発光タイミングを制御する。
すなわち、実施例2では、図8(B)に示される左走査端において隣接する2つの走査位置A1、A2の間隔L2と、図8(F)に示される走査中央において隣接する2つの走査位置B1´、B2´の間隔であり、かつB2´、B3´の間隔であるL3が略同一となるように発光間隔(パルス周期)を制御する。
実施例2において、左走査端A及び右走査端Cでの最大検出距離をd2、任意の測定点(走査位置)での最大検出距離をdn、左走査端A及び右走査端Cにおける隣接する2つの測定点間のパルス周期をt(d2)とすると、有効走査領域において隣接する任意の2つの測定点間のパルス周期tは、次の(1)式で算出することができる。
t=(d2/dn)×t(d2)…(1)
例えば、左走査端A及び右走査端Cでの最大検出距離d2が50[m]、走査中央Bでの最大検出距離d1が100[m]、左走査端の測定点A1、A2間のパルス周期t(d2)が40[us]であるとき、走査中央の測定点B1、B2間のパルス周期tは、20[us]となる。
結果として、実施例2では、有効走査領域の全範囲において検出対象の物体の検出分解能をほぼ均一にすることができ、物体の検出漏れをより抑制することができる。
次に、図10(A)〜図10(C)を用いて、有効走査領域におけるLDの発光タイミングの他の制御方法について説明する。
図10(A)は、比較例、すなわち有効走査領域の全範囲においてパルス光を所定のパルス周期T1で射出したときのタイミング図である。図10(B)は、本実施形態の実施例1、すなわち有効走査領域の各走査位置の最大検出距離に応じてパルス光の発光タイミングを制御したときのタイミング図である。
前述した実施例1、2のように物体の検出漏れを抑制する条件(検出分解能のばらつきを抑制する条件)では、各走査端でパルス周期が最大となり、かつ走査中央でパルス周期が最小となる。このとき、駆動パルス(LD駆動信号)のデューティ(パルス幅/パルス周期)がLD点灯の制約条件である許容限度を超えると、LDが破損し、もしくはLDの寿命が低下する。特に、有効走査領域において走査中央では、最大検出距離が最大となるため、駆動パルスのパルス幅をある程度大きくする必要があり、上記許容限度との兼ね合いを考慮する必要がある。
《実施例3》
そこで、本実施形態の実施例3では、物体の検出漏れを抑制する条件で制御する場合(図10(B)の発光タイミングの場合)であって、少なくとも走査中央において駆動パルスのデューティが上記許容限度を超える場合には、図10(B)に示されるLDの発光タイミングを、図10(C)に示されるように、複数の走査に分割して制御する。図10(C)には、図10(B)に示されるLDの発光タイミングを2つの走査1、2に分割(走査分割)した例が示されている。ここでは2つの走査に分割しているが、2つに限定されるものではなく、特に、高分解能が要求されるような場合には、更に多くの走査に分割しても良い。
以下に、実施例3におけるLDの発光タイミングの制御方法のメリットについて説明する。
例えば、走査中央で所望の検出距離を得るためにLDの出力から30[ns]のパルス幅が必要であり、かつ使用するLDのデューティの制約条件から20[us]以上のパルス周期でLDを点灯させる必要がある場合、通常は、図10(A)に示されるように、有効走査領域の全範囲でパルス周期を一定(例えば20[us])にする。
しかし、左走査端A及び右走査端Cでは最大検出距離が短く測定点(走査位置)の隣接間隔が短いため物体の検出漏れが発生し難いが、走査中央Bでは物体の最大検出距離が長く測定点(走査位置)の隣接間隔が長いため物体の位置によっては検出漏れが発生するおそれがある。
そこで、物体の検出漏れを抑制するために、図10(B)に示されるように、走査中央Bでの測定点を増やすべく走査中央Bでのパルス周期を上記許容限度以下(例えば10[us])とする必要があるが、LDの破損や寿命低下といった問題が起きる。
そこで、実施例3では、図10(C)に示されるように、有効走査領域におけるLDの発光タイミングを2つの走査1、2に分けて制御している。すなわち、2つの走査1、2では、走査間で異なる測定点でLDを発光させている。詳しくは、走査間で交互のタイミングでLDを発光させている。
この場合、各走査において走査中央B及び各走査端を含む有効走査領域の全範囲でパルス周期を例えば20[us]以上としつつ測定点数を増やすことができるため、上記問題(LDの破損や寿命低下)の発生を抑制しつつ物体の検出漏れを抑制できる。また、各走査において各走査端では、さらにパルス周期を長くできるため、LDの破損や短寿命化をより抑制できる。
なお、実施例3では、2つの走査1、2間で、パルス幅及びパルス周期を等しくしているが(図10(C)参照)、パルス幅及びパルス周期の少なくとも一方を走査間で異ならせても良い。また、2つの走査1、2間の発光タイミングのずれ幅は、図10(C)に示されるものに限定されず、適宜変更可能である。
ところで、例えば各走査端のように最大検出距離が短くLDのデューティを低く抑えることが可能な位置では、走査毎に全測定点でLDを発光させて物体を検出し、走査中央のように最大検出距離が長くLDのディーティを高くする必要がある位置では、全測定点を複数の走査に分割してパルス光を射出する制御を行っても良い。
図11(A)は、比較例において、有効走査領域の全範囲においてパルス光を所定のパルス周期T1で射出したときのタイミング図である。図11(B)は、本実施形態の実施例1、2において、有効走査領域の各走査位置の最大検出距離に応じてLDの発光タイミングを制御したとき(パルス周期が各走査端で最大、走査中央で最小となるように制御したとき)のタイミング図である。
《実施例4》
本実施形態の実施例4では、物体の検出漏れを抑制する条件で制御する場合(図11(B)の発光タイミングの場合)であって、走査中央でLDのデューティが上記許容限度を超え、かつ各走査端でLDのデューティが上記許容限度以下である場合に、図11(B)に示されるLDの発光タイミングを、図11(C)に示されるように、走査中央Bにおいて2つの走査1、2に分割し、かつ各走査端において2つの走査間で重複させる。すなわち、走査中央Bでは走査間で異なる測定点(走査位置)でLDを発光させ、各走査端では走査間で同一の測定点(走査位置)でLDを発光させる。
詳述すると、各走査端のように物体の最大検出距離が短くパルス幅を短くできる位置ではLDのデューティの制約条件にかかり難いため、図11(C)の各走査端では、図11(B)の各走査端と同様に走査毎に全測定点(同一の測定点)でLDを発光させて物体の検出を行うことで、各測定点での検出光量を上げることができ、ひいては検出精度、検出分解能を向上させることができる。一方、走査中央のように物体の最大検出距離が長くパルス幅を長くする必要がある位置ではLDのデューティの制約条件にかかり易いため、図11(B)に示される走査中央BのLDの発光タイミングを、図11(C)に示される走査中央のように、2つの走査1、2に分割して制御する。
以下に、実施例4におけるLDの発光タイミングの制御方法のメリットについて説明する。
例えば、走査中央で所望の最大検出距離を得るために、LDの出力から30[ns]のパルス幅が必要な場合であって、LDのデューティの制約条件から20[us]以上のパルス周期でLDを発光させる必要がある場合、通常は、図11(A)に示されるように、有効走査領域の全範囲でパルス周期が一定になるようにLDの発光タイミングを制御する。
しかし、左走査端A及び右走査端Cでは物体の最大検出距離が短く測定点の隣接間隔が短いため物体の検出漏れは発生し難いが、走査中央Bでは物体の最大検出距離が長く測定点の隣接間隔が長いため、物体の位置によっては検出漏れが起きるおそれがある。
そこで、物体の検出漏れを抑制すべく、図11(B)のようにパルス周期を短く(例えば10[us])する必要があるが、LDの破損や寿命低下といった問題が懸念される。
そこで、実施例4では、図11(C)に示されるように、有効走査領域の走査中央BにおけるLDの発光タイミングを2つの走査に分け、各走査端におけるLDの発光タイミングを重複させることで、各走査における走査中央B、各走査端を含む有効走査領域の全範囲でパルス周期を20[us]以上としつつ走査中央Bでの測定点数を増やすことができるため、上記問題の発生を抑制しつつ物体の検出漏れを抑制することができる。
このとき、左走査A及び右走査端Cでは、走査毎に全測定点でLDを発光させても該LDのデューティの制約条件にかかり難いため、パルス周期を例えば10[us]とする。一方、走査中央Bでは、デューティの制約条件からパルス周期を10[us]とすることができないため、全測定点を2つの走査1、2に分けて各走査におけるパルス周期を例えば20[us]とする。
例えば、図7(B)において、各走査で、左走査端A及び右走査端Cでは全測定点でLDを発光させ、走査中央Bを含む有効走査領域のその他の範囲では全測定点を2つの走査1、2に分けて交互のタイミングでLDを発光させる。
なお、各走査端に加えて、左走査端AからD点までの間や、D点から走査中央Bまでの間や、走査中央BからE点までの間や、E点から右走査端Cまでの間でも、全測定点でLDを発光させても良い。
図12には、物体検出装置100を備えるセンシング装置1000が示されている。センシング装置1000は、移動体に搭載され、物体検出装置100に加えて、該物体検出装置100に電気的に接続された監視制御装置300を備えている。物体検出装置100は、車両のバンパー付近やバックミラーの近傍に取り付けられる。監視制御装置300は、物体検出装置100での検出結果に基づいて、物体の形状や大きさの推定、物体の位置情報の算出、移動情報の算出、物体の種類の認識等の処理を行って、危険の有無を判断する。そして、危険有りと判断した場合には、アラーム等の警報を発して移動体の操縦者に注意を促したり、ハンドルを切って危険を回避する指令を移動体の操舵制御部に出したり、制動をかけるための指令を移動体のECUに出す。なお、センシング装置1000は、例えば車両のバッテリから電力の供給を受ける。
なお、監視制御装置300は、物体検出装置100と一体的に設けられても良いし、物体検出装置100とは別体に設けられても良い。また、監視制御装置300は、ECUが行う制御の少なくとも一部を行っても良い。
以上説明した本実施形態の物体検出装置100は、LD(光源)、該LDを駆動するLD駆動部及びLDからの光を偏向する回転ミラー(偏向器)を含み、少なくとも1回の走査において有効走査領域(走査領域)内の複数の走査位置(測定点)でLDを発光させる光走査系と、該光走査系から射出され物体で反射された光を検出する検出系と、を備え、走査中央(走査領域の中央部)において隣接する2つの走査位置の走査角の差は、走査端(走査領域の端部)において隣接する2つの走査位置の走査角の差よりも小さい。
この場合、仮に有効走査領域の全範囲において隣接する2つの走査位置の走査角の差を一定(均一)にする場合に比べて、走査中央と走査端の検出分解能の差を小さくすることができる。
この結果、有効走査領域における検出分解能のばらつきを抑制できる。これにより、有効走査領域における物体の検出漏れを抑制できる。
また、隣接する2つの走査位置の走査角の差は、走査中央から走査端にかけて徐々に大きくなるため、有効走査領域の全範囲において検出分解能のばらつきを抑制できる。
なお、隣接する2つの走査位置の走査角の差を、走査中央でのみ、走査端を含む他の部分よりも小さくし、該他の部分の全範囲で均一としても良い。
また、物体を検出可能な最大距離における走査位置の隣接間隔が略一定である場合には、有効走査領域の全範囲において検出分解能を略均一にできる。
また、光走査系は、有効走査領域に対する複数回の走査において複数の走査位置で光源を発光させ、少なくとも走査領域の中央部を走査するとき、相前後する走査間で異なる走査位置で光源を発光させる場合には、少なくとも走査中央が走査されるときにLDの発光間隔を小さくせずに隣接する2つの走査位置の走査角の差を小さくでき、ひいてはLDの破損や短寿命化を抑制しつつ検出分解能のばらつき抑制できる。
なお、走査中央に代えて又は加えて、走査端や、走査端と走査中央との間の領域が走査されるときのLDの発光タイミングを相前後する走査間で異ならせても良い。
また、走査中央が走査されるときのLDの発光間隔(パルス周期)が相前後する走査間で略同一である場合には、制御を簡素化することができる。
また、光走査系は、走査領域外でLDを発光させたときの該LDからの光を受光する同期検知用PD54(受光素子)を更に含み、光走査系は、同期検知用PD54の出力信号(同期信号)に基づいて、走査領域に対する走査開始タイミングを決定する。
この場合、例えば回転ミラー26の回転角度位置を検出するためのロータリーエンコーダ等が不要なので、コストアップを抑制でき、かつ装置を小型化(特に薄型化)することができる。
また、物体検出装置100と、該物体検出装置100の出力に基づいて、物体情報(物体の有無、物体の位置、及び物体の移動速度の少なくとも1つ)を求める監視制御装置300と、を備えるセンシング装置1000によれば、物体情報を安定して取得することができる。
また、センシング装置1000は移動体に搭載され、監視制御装置300は物体の位置情報及び移動情報の少なくとも一方に基づいて危険の有無を判断するため、例えば移動体の操縦制御系、速度制御系等に危険回避のための有効な情報を提供することができる。
また、物体検出装置100と、該物体検出装置100が搭載される移動体と、を備える移動体装置は、衝突安全性に優れる。
また、センシング装置1000と、該センシング装置1000が搭載される移動体と、を備える移動体装置は、衝突安全性に優れる。
また、本実施形態の物体検出方法は、少なくとも1回の走査において走査領域内の複数の走査位置でLD(光源)を発光させて光走査する工程と、走査位置でLDから射出され物体で反射された光を検出する工程と、を含み、光走査する工程では、走査中央(走査領域の中央部)において隣接する2つの走査位置の走査角の差が、走査端(走査領域の端部)において隣接する2つの走査位置の走査角の差よりも小さくなるようにLDの発光タイミングを制御する。
この場合、仮に有効走査領域の全範囲において隣接する2つの走査位置の走査角の差を一定(均一)にする場合に比べて、走査中央と走査端の検出分解能の差を小さくすることができる。
この結果、有効走査領域における検出分解能のばらつきを抑制できる。これにより、有効走査領域における物体の検出漏れを抑制できる。
また、光走査する工程では、隣接する2つの走査位置の走査角の差が、走査中央から走査端にかけて徐々に大きくなるようにLDの発光タイミングを制御するため、有効走査領域の全範囲において検出分解能のばらつきを抑制できる。
また、光走査する工程において物体を検出可能な最大距離における走査位置の隣接間隔が略一定となるようにLDの発光タイミングを制御する場合には、有効走査領域の全範囲において検出分解能を略均一にできる。
また、光走査する工程において走査領域に対する複数回の走査において複数の走査位置でLDを発光させ、少なくとも走査領域の中央部を走査するとき、相前後する走査間で異なる走査位置で前記光源を発光させる場合には、走査中央が走査されるときにLDの発光間隔を小さくせずに隣接する2つの走査位置の走査角の差を小さくでき、ひいてはLDの破損や短寿命化を抑制しつつ検出分解能のばらつき抑制できる。
また、光走査する工程において少なくとも前記走査領域の中央部が走査されるときの前記光源の発光間隔が、相前後する走査間で略同一となるようにLDの発光タイミングを制御する場合には、制御を簡素化することができる。
また、本実施形態の物体検出方法は、有効走査領域外でLDを発光させ、該LDからの光を受光する工程と、該受光する工程での受光タイミングに基づいて、有効走査領域に対する走査開始タイミングを決定する工程と、を更に含む。
この場合、例えば回転ミラー26の回転角度位置を検出するためのロータリーエンコーダ等が不要であり、簡易な手法により走査開始タイミングを決定できる。
なお、上記実施形態の物体検出装置の構成は、適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、光源として、単一のLDを用いているが、これに限られない。例えば、複数のLDが1次元又は2次元に配列されたLDアレイ、VCSEL(面発光レーザ)、VCSELが1次元又は2次元に配列されたVCSELアレイ、半導体レーザ以外のレーザ、レーザ以外の光源などを用いても良い。複数のLDが1次元配列されたLDアレイとしては、複数のLDが積層されたスタック型のLDアレイや複数のLDが横に並べられたLDアレイが挙げられる。
また、投光光学系は、カップリングレンズを有していなくても良いし、他のレンズを有していても良い。
また、投光光学系、受光光学系は、反射ミラーを有していなくても良い。すなわち、LDからの光を、光路を折り返さずに回転ミラーに入射させても良い。
また、受光光学系は、受光レンズを有していなくも良いし、他の光学素子(例えば集光ミラー)を有していても良い。
また、偏向器として、回転ミラーに代えて、例えば、ポリゴンミラー(回転多面鏡)、ガルバノミラー、MEMSミラー等の他のミラーを用いても良い。
また、同期系は、同期レンズを有していなくも良いし、他の光学素子(例えば集光ミラー)を有していても良い。
また、上記実施形態では、物体検出装置が搭載される移動体として自動車を例に説明したが、該移動体は、自動車以外の車両、航空機、船舶等であっても良い。
また、以上の説明で用いた具体的な数値、形状などは、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なことは言うまでもない。
以上の説明から明らかなように、上記実施形態の物体検出装置、センシング装置、移動体装置、物体検出方法は、物体までの距離を測定する所謂Time of Flight(TOF)法を用いた技術であり、移動体におけるセンシングの他、モーションキャプチャ技術、測距計、3次元形状計測技術などの産業分野などで幅広く用いることができる。すなわち、本発明の物体検出装置は、必ずしも移動体に搭載されなくても良い。
以下に、発明者が上記実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
走行中の車両の前方の物体の有無や、その物体までの距離を検出する車載装置として、レーザレーダがある。レーザレーダ用の光学系としては様々なものが知られているが、特許文献1〜4に開示されているように、光源から射出されたレーザ光を回転ミラーで走査し、物体で反射もしくは散乱された光を再度、回転ミラーを介して光検出器で検出することで、所望の範囲の物体の有無やその物体までの距離を検出できる。
このように、レーザ光と、光検出器で検出できる検出可能領域の両方を走査する走査型レーザレーダは、検出が必要な部分のみにレーザ光を集中できるので、検出精度や検出距離の点で有利であり、また、光検出器で検出可能な領域も最小限にすることができるため、光検出器のコスト的にも有利である。
所望の角度範囲(有効走査領域)で光走査を実施して、物体を検出する方法として、特許文献5に記載のように、ロータリーエンコーダを用いる方式がある。ロータリーエンコーダは回転方向の角度位置を検出可能であるため、ロータリーエンコーダからの信号に基づいて制御すれば、有効走査領域の角度位置を高精度に決めることができる。ロータリーエンコーダは、一般にスリットパターンが刻まれたコードホイールと、そのスリットパターンを読み取るセンサで構成されているが、ロータリーエンコーダを用いた方式では、回転ミラーの回転軸にコードホイールを取り付け、さらにそれを読み取るためのセンサを設ける必要があり、コストアップになるばかりか、特に回転軸方向(高さ方向)に装置が大型化するため車載対応等の要望を満足することができないという問題がある。
有効走査領域の角度位置を高精度に決めるための別の方法として、例えば特許文献6に記載のように、同期PDを用いる方式がある。同期PDを用いる方式は、回転ミラーの回転方向上流側に同期PDを設け、その同期PDで信号を検出してからある一定タイミング後に光走査を開始するものである。この方式を用いても、有効走査領域の角度位置を決めることができる。この方式は、ロータリーエンコーダが必要でなくなるため、回転ミラーの回転軸方向に装置を小型化でき、また部品点数を削減できることから、信頼性を向上できる。
しかし、この方式では、物体検出装置の小型化を図るために光偏向器と受光光学系の配置を可能な限り近づけて配置すると、受光光学系側の端部で光偏向器に入射する光ビームを反射ミラーや結像レンズ等の受光光学系のけられのため受光光量が低下し、物体検出距離が短くなる。反対に受光光学系と反対側の端部では回転ミラーに入射する光ビームのけられのために受光光量が低下し、物体検出距離が短くなる。したがって、物体検出可能距離は有効走査領域の両端部で最小となり、略中央部で最大となる。
よって、有効走査領域内で等しい時間間隔でパルス光を射出すると、各走査位置の最大検出距離における検出分解能は、有効走査領域の両端部で最大となり、略中央部で最小となるため、略中央部では物体の検出漏れが起こる可能性があり、反対に両端部では過剰な分解能となる可能性がある。
そこで、発明者は、以上のような問題に対処するために、上記実施形態を発案した。