JP6565189B2 - 圧力容器 - Google Patents
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Description
通常、圧力容器には金属製口金が設けられている。これらの口金はガス等の内容物の出入口を構成する目的で貫通孔があるものと、容器の支持をする目的のみで貫通孔がないものとがある。
特許文献2に記載されている口金はライナーの外側に設けられており、略円筒形状で、外周面から突出するフランジ部を備え、ライナーと外殻との間にフランジ部が挟み込まれて固定されている。
本発明者等は、圧力容器の繰返し使用を想定した過酷試験である内圧付加サイクル試験において、外殻の強度低下よりも先に、金属製口金に疲労による強度低下が生じる場合があることを知見した。
本発明は、圧力容器の金属製口金の、疲労による強度低下を抑制することを目的とする。
そして、かかる金属疲労が生じやすい部分を、弾性率が高い材料で補強することにより、金属製口金の疲労による強度低下を抑制できることを見出し、本発明に至った。
前記外殻が繊維強化樹脂からなることが好ましい。
前記補強層が、前記傾斜面の傾斜方向に沿う繊維を含む繊維強化樹脂層であることが好ましい。
図1、2は本発明に係る圧力容器の第1実施形態を示したもので、図1は全体を示す断面図、図2は口金付近の構造を示す断面図である。
図1、2に示す圧力容器は、樹脂製の容器本体(ライナー)1、金属製の口金2、樹脂製の外殻3、および補強層4を備える。
口金2の回転軸Xに平行な方向を軸方向、回転軸Xを中心とする回転方向を周方向とする。図2において、便宜的に、軸方向の外側(容器外方側)を上側、軸方向の内側(容器内方側)を下側とする。
容器本体1は中空で、略筒状のガス出入り部11が外方に向かって突出するように設けられている。該ガス出入り部11の外側に口金2が密着して設けられている。
本実施形態では、口金2の内周面の軸方向の中間部分に、内方に向かって突出する凸条22が設けられている。該凸条22の下面22a、該凸条22よりも下側の内周面21a、および口金2の下側の端面23は、容器本体1のガス出入り部11およびその周囲の外面と密着している。符号21bは凸条22の内周面、符号11aはガス出入り部11の内周面を示す。
貫通孔21の凸条22よりも上側の内周面21cには、雌螺子(図示略)が形成されており、ガス供給・取出用のバルブ等をねじ込んで取り付け可能となっている。
第2のフランジ部27は厚みが略均一な円環状ないし多角形環状である。第2のフランジ部27の上側における口金2の外径は、第2のフランジ部27の下側よりも小さい。
第1のフランジ部25と第2のフランジ部27との間の首部26を、軸方向に垂直な面で切断したときの、外面の断面形状は円形でもよく、多角形でもよい。
肩部25bは曲面加工されている。肩部25bにおける傾斜面25aと首部26の外面とのなす角度θは90〜135度が好ましく、90〜120度がより好ましい。該角度θが上記範囲の下限値以上であると空隙を生じることなく第1のフランジ部25上に外殻3を形成することができ、上限値以下であると第1のフランジ部25が外殻3を押す力を充分に分散させることができる。
外殻3は、口金2の第2のフランジ部27より下側を覆うように設けられ、容器本体1と外殻3との間に第1のフランジ部25および補強層4を挟み込むことによって、口金2を固定している。
補強層4は、例えば樹脂を含浸した繊維(補強繊維ともいう。)を配列させた後に樹脂を硬化して形成される、繊維強化樹脂層が好ましい。特に傾斜面25aの傾斜方向に沿う補強繊維を含む繊維強化樹脂層が好ましい。
傾斜面25aの傾斜方向とは、傾斜面25a内において、周方向に対して略垂直な方向を意味する。傾斜面25a内において周方向と前記補強繊維とのなす角度(絶対値)は60〜90度の範囲内が好ましく、85〜90度の範囲内がより好ましい。
補強層4と外殻3の補強繊維は同じであってもよく、異なっていてもよい。外殻3中の補強繊維は、特に強度に優れるものを用いることが好ましい。補強層4と外殻3の補強繊維が同じである場合、両者の補強繊維の方向を違えることによって、傾斜面25aの最大傾斜方向における弾性率が外殻3より高い補強層4を形成することができる。
補強層4と外殻3の樹脂は同じであってもよく、異なっていてもよい。
炭素繊維としては、ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN系)、レーヨン系等の種類が挙げられ、いずれの炭素繊維を用いてもよい。
特に高い弾性率が得られやすい点ではピッチ系が好ましく、高い強度が得られやすい点ではPAN系が好ましい。これらを組み合わせてもよい。
容器本体1は、1種の樹脂を用いた単層または複層で構成されていてもよく、2種以上の樹脂を用いた複合材料で構成されていてもよい。
本実施形態の圧力容器は、例えば、ブロー成形など公知の方法で製造された容器本体1のガス出入り部11に、口金2および補強層4を配し、フィラメントワインディング法またはテープワインディング法等の公知の方法によって外殻3を形成する方法で製造できる。
補強層4は、予め口金2に積層一体化されていてもよく、容器本体1に口金2を配した後に補強層4を積層して一体化してもよい。
特に、繊維を伸長可能な糸でつなぎとめたノンクリンプファブリック(NCF)を用いたプリプレグは、口金2の外面に密着させやすい点で好ましい。
肩部25bを覆うプリプレグは1層でもよく、2層以上でもよい。例えば、傾斜面25aの傾斜方向に沿う繊維を含むプリプレグの層(下層)の上に、さらに周方向に沿う繊維を含むプリプレグをリング状に積層することにより、下層が変形して口金から外れるのを防止することができる。
プリプレグは、予め補強層4の形状に対応して成形したものを、口金2の外面上に配置してもよい。
あるいは、口金2の周囲に、繊維が一方向に引き揃えられた長尺の第1のプリプレグを、繊維方向が口金2の軸方向となるように配し、第2のフランジ部27より下側において、該第1のプリプレグの上から、繊維方向が周方向である第2のプリプレグを巻き付けて第1のプリプレグを口金2に密着させ、硬化後に不要な部分を除去する方法でも、第1のフランジ部25の傾斜面25aの傾斜方向に沿う繊維を含む補強層4を形成することができる。
金属材料の疲労は、繰返し応力による金属材料表面の欠陥生成とその後の欠陥の進展によると考えられている。この欠陥生成には、金属表面の変位が大きく影響すると考えられる。
このため、金属材料の疲労を防止するためには、応力集中を下げるような構造が有効である。応力集中を避けると、局部的に応力が増加するのが防止され、金属表面の変位が大きくなるのが防止される。
口金2を覆う樹脂製の外殻3の弾性率は広い範囲を取りうる。例えば外殻3が繊維強化樹脂で構成される場合には、繊維の種類や構成によっても強度や弾性率が変化し得る。
口金2に密着している外殻3の弾性率が小さいほど、圧力容器に内圧が加えられたときの外殻3の変形が大きくなり、外殻3が内圧による負荷を受け持つ位置と、口金2が内圧による負荷を受け持つ位置とが異なってくる。本発明者等の研究の結果、外殻3が変形する前の状態で口金2にかかる応力より、外殻3が変形した後の方が、口金2に大きな応力が付加されることがわかった。特に第1のフランジ部25の傾斜面25aの基端である肩部25bに応力が集中しやすいことも判明した。
本発明では、かかる傾斜面25aの肩部25bを、外殻3よりも剛性が高い補強層4で補強することによって、口金2に付加される応力を低減した。これによって、口金2の表面の変位を、欠陥発生が生じる変位以下に抑えることが可能であり、金属製の口金2の、疲労による強度低下を抑制することができる。
上記実施形態では、外殻3を繊維強化樹脂で形成したが、これに限らず、圧力容器において公知の樹脂材料(補強繊維を含まない)を用いることができ、その場合にも、傾斜面25aの肩部25bに補強層4を積層一体化することにより、口金2の金属疲労を低減させる効果が得られる。高い強度が得られ易い点では、外殻3が繊維強化樹脂からなることが好ましい。
上記実施形態では、補強層4を首部26の上端から傾斜面25aの下端まで設けたが、少なくとも、内圧付加時の応力が集中しやすい肩部25bを覆うように設けることにより、口金2の金属疲労を低減させる効果を得ることができる。
[実験例]
<例1〜7、例11〜17>
図2、3に示す構造の圧力容器において、内圧が付加された状態で口金2にかかる応力をシミュレーション解析で求めた。例1、例11は、図3に示すように補強層が設けられていない比較例であり、例2〜7、例12〜17は図2に示すように補強層4が設けられた実施例である。図3において図2と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
補強層4は一方向に配列された補強繊維束を含む繊維強化複合材料を、繊維方向が傾斜面25aの最大傾斜方向となるように積層した。即ち、傾斜面25a内において周方向と補強繊維とのなす角度は90度である。
補強層4の厚み、補強層4の繊維方向の弾性率、口金2の材質を表1、2に示す通りに変えたときの、口金2の肩部25bにかかる応力(口金肩部応力)、口金2の下側の端面23にかかる応力(口金下部応力)、補強層4にかかる応力(補強層応力)を求めた。結果を表1、2に示す。表1は口金2がアルミ製の場合であり、表2は口金2がSUS製の場合である。
例えば、例4は厚さ1mmの補強層の弾性率が384GPaである例、例7は厚さ2mmの補強層の弾性率が384GPaである例である。
肩部における傾斜面と首部の外面とのなす角度θ:114.7度。
容器本体の内圧:20MPa。
アルミ製口金の弾性率:70GPa(等方性)。
SUS製口金の弾性率:210GPa(等方性)。
ポリエチレン製容器本体の弾性率:1GPa(等方性)。
繊維強化樹脂からなる外殻の弾性率:70GPa(便宜的に等方性とした)。
繊維強化樹脂からなる補強層の弾性率:異方性を有し、周方向おける弾性率(EX)を5GPaとし、層内でかつ周方向に垂直な方向、即ち、傾斜面25a上においてはその最大傾斜方向及び首部26上においては口金の軸方向における弾性率(EY)を表1、2に示す通りに変更した。
口金2と補強層4との接触面は一体化された状態であり、それ以外の部材どうしの接触面は密着しているが一体化されていない状態とした。
補強層を設けた例2〜7、例12〜17は、補強層が無い例1、例11と比べて、口金の肩部にかかる応力が効果的に低減され、肩部の金属疲労による強度低下を抑制できることがわかる。
なお、例1〜7または例11〜17において、口金の下部にかかる応力はあまり変化せず、例2〜7、例12〜17では、内圧付加時に口金にかかる応力は、口金の下部より肩部の方が小さくなった。
例2と例5、例3と例6、例4と例7とをそれぞれ比べると、補強層の弾性率(EY)が同じである場合、補強層の厚さが大きい方が口金の肩部にかかる応力を低減する効果が大きい。
2 口金
3 外殻
4 補強層
11 ガス出入り部
21 貫通孔
22 凸条
23 口金の下側(軸方向内側)の端面
24 口金の上側(軸方向外側)の端面
25 第1のフランジ部
25a 傾斜面
25b 肩部(傾斜面の軸方向外側の端部)
26 首部
27 第2のフランジ部
Claims (3)
- 樹脂製の容器本体と、
該容器本体の外側に設けられた金属製の口金と、
前記口金の外面の一部と前記容器本体の外面を覆う樹脂製の外殻とを備え、
前記口金の前記外殻で覆われた部分には、口金外径が略同一である首部と、前記口金の軸方向外側から内側に向かう方向に口金外径が漸次拡大する傾斜面が存在し、前記傾斜面は、前記首部より軸方向内側に位置しており、
少なくとも前記傾斜面から前記首部に立ち上がる屈曲部に、前記傾斜面の最大傾斜方向における弾性率が前記外殻よりも高い補強層が積層一体化されていることを特徴とする圧力容器。
- 前記外殻が繊維強化樹脂からなる、請求項1記載の圧力容器。
- 前記補強層が、前記傾斜面の傾斜方向に沿う繊維を含む繊維強化樹脂層である、請求項1または2に記載の圧力容器。
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