以下に図面を用いて本発明に係る実施形態につき詳細に説明する。なお、以下では、主として、乗用型車両の左右車輪が走行用モータとして油圧モータで駆動される構成を説明するが、走行用モータは電動モータ等、他のモータとしてもよい。以下では左右の主駆動輪としての車輪が後側に配置され、キャスタ輪が前側に配置された場合を説明するが、駆動輪としての車輪が前側でキャスタ輪が後側でもよい。
以下で述べる形状、個数、部品の配置関係等は、説明のための例示であって、乗用型車両の仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略もしくは簡略化する。
図1から図8Cは、実施形態に係る乗用型車両を示している。以下では、乗用型車両10は、車両10と記載する。図1は、車両10の斜視図である。図2は、車両10を上方から見て、左右車輪の間の中央を中心として急旋回する場合におけるキャスタ輪の外接円を示す図である。図3は、車両10の特徴構成を示すブロック図である。図4(a)は、車両10において、左車輪用及び右車輪用の動力発生ユニット26,27とエンジン14との動力伝達構造を上側から見た図であり、(b)は(a)の矢印A方向に見た図である。図5は、車両10において、左車輪用及び右車輪用の動力発生ユニット26,27の油圧回路を示す図である。
車両10は、芝刈に適した自走型のオフロード用車両である。車両10は、左車輪12及び右車輪13と、キャスタ輪15,16と、芝刈機18と、加速度センサ50と、左右2つの斜板アクチュエータ41,42(図3、図4)と、制御装置であるコントローラ60(図3)とを備える。
左車輪12及び右車輪13は、車体であるメインフレーム20の後側の左右両側に支持される後輪であり、かつ主駆動輪である。メインフレーム20は、鋼材等の金属により、梁構造等に形成される。メインフレーム20は、左右両端で略前後方向に伸びる側板部20a、20bと、左右両側の側板部20a、20bを連結する連結部20cとを含む。左右の側板部20a、20bの後端部の間で、上側には運転者が座る運転席21が固定される。
メインフレーム20における運転席21の周辺部において、左右両側に左右の操縦レバー22,23が支持されている。具体的には、メインフレーム20において、運転席21の前側フロアから突き出るように左右の操縦レバー22,23が支持されている。各操縦レバー22,23の先端部は、運転者が掴んで左車輪12及び右車輪13の回転方向及び回転速度を指示するために用いられる。各操縦レバー22,23は、略L字形であり、上端部に左右方向に伸びる把持部24が形成される。把持部24は、運転者に掴まれて操作される。各操縦レバー22,23は、下端部において、左右方向に沿う軸を中心として前後に揺動可能である。
左車輪12及び右車輪13は、メインフレーム20の側板部20a、20bの左右方向外端より外側にはみ出している。各車輪12,13の上側は、車輪カバー25で少なくとも一部が覆われており、車輪カバー25の左右方向内側端部は側板部20a、20bに固定されている。
左右の2つのキャスタ輪15,16は、メインフレーム20の前端部に支持される操向輪であり、かつ前輪である。左車輪12及び右車輪13は、2個の走行用モータである後述の左油圧モータ30(図5)及び右油圧モータ31(図5)により、それぞれ独立に走行駆動される。これにより、各キャスタ輪15,16は、車両10の前後方向において、左車輪12及び右車輪13に対し前後方向に離れて設けられる。各キャスタ輪15,16は、鉛直方向(図1の上下方向)の軸を中心として360度以上の自由回転が可能である。なお、キャスタ輪は、車両に2つ配置される構成に限定するものではなく、1つのみ、または3つ以上が車両に配置されてもよい。以下では、左車輪12及び右車輪13は、左右車輪12,13と記載する場合がある。
図5に示すように、左車輪12及び右車輪13は、トランスミッション11によって回転方向及び回転速度について、それぞれ独立して駆動可能である。トランスミッション11は、左右の動力発生ユニット26,27を含む。トランスミッション11には、駆動源としてのエンジン14の動力が入力され、左右車輪12,13の駆動軸に、左右の油圧ポンプ32,33の出力が減速歯車機構26b、27bを介して出力される。これにより、トランスミッション11は、エンジン14からの動力を受けて、左車輪12及び右車輪13を、回転方向及び回転速度についてそれぞれ独立して駆動可能に構成する。左右の、固定容積型の油圧モータ30,31は、それぞれ左右の動力発生ユニット26,27を構成する。左右の油圧モータ30,31は、左車輪12及び右車輪13の駆動軸に、それぞれ連結される。各動力発生ユニット26,27は、車輪用の動力を発生させるもので、ケース26a、27aと、その内側の油圧回路28,29とを含む。各油圧回路28,29は、斜板式可変容量型の油圧ポンプ32,33と、油圧ポンプ32,33から圧油が供給されて駆動される油圧モータ30,31と、油圧ポンプ32,33及び油圧モータ30,31を接続する油路34とを有する。油圧モータ30,31は、例えば固定容積型である。油圧ポンプ32,33の駆動軸32a,33aには従動プーリ35がそれぞれ固定されており、後述の動力源としてのエンジン14によりベルト36を介して駆動される。前記油圧ポンプ32,33は前記トランスミッション11の入力部として機能する。
各油圧ポンプ32,33は、回転によって可動斜板の傾転角度及び向きを変化させる左調節軸である左斜板操作軸32b及び右調節軸である右斜板操作軸33bと、斜板操作軸32b、33bと、斜板操作レバー32c、33cとを含む。斜板操作レバー32c、33cは、斜板操作軸32b、33bに連結される。左斜板操作軸32bは、左油圧ポンプ32の圧油吐出量を調節する。右斜板操作軸33bは、右油圧ポンプ33の圧油吐出量を調節する。
左右2つの斜板アクチュエータ41,42は、左右の対応する側の斜板操作レバー32c、33cを駆動するものであり、後述の制御装置であるコントローラ60によって駆動が制御される。斜板アクチュエータ41,42は、例えば対応する側の斜板操作レバー32c、33cを回動するピストンンシリンダ機構、またはモータを含む。
また、車両10は、揺動角度検出部である左右2つのレバーポテンショメータ38,39を備える。左レバーポテンショメータ38は、左の操縦レバー22の揺動角度位置を検出し、右レバーポテンショメータ39は、右の操縦レバー23の揺動角度位置を検出する。各レバーポテンショメータ38,39の検出信号は、後述するコントローラ60(図3)に送信される。
左右の操縦レバー22,23は、図4の中立位置を中心として、前進を指示する領域の最大変位位置Fmaxから、後進を指示する領域の最大変位位置Rmaxまでの間で変位可能である。左右のレバーポテンショメータ38,39は、左右の操縦レバー22,23の軸Sの付近に配置される。
コントローラ60は、操縦レバー22,23の前後方向の揺動に応じて、斜板操作軸32b、33b(図5)を回転させる。具体的には、後述のように、コントローラ60は、左右のレバーポテンショメータ38,39からの検出信号に応じて、左右の斜板アクチュエータ41,42の駆動を制御して左右の斜板操作レバー32c、33cを駆動する。斜板操作レバー32c、33cの回転により斜板操作軸32b、33bが回転する。そして、油圧ポンプ32,33の可動斜板の傾転角度及び向きが変化する。可動斜板の傾転角度の変更によって、油圧ポンプ32,33の吐出量が変化する。操縦レバー22,23が大きく前または後に倒れることで、油圧ポンプ32,33の吐出量が大きくなる。左油圧モータ30は左油圧ポンプ32からの圧油供給で駆動される。右油圧モータ31は右油圧ポンプ33からの圧油供給で駆動される。操縦レバー22,23が中立状態より前側に倒れることで油圧ポンプ32,33は油圧モータ30,31を一方側に回転させるように吐出方向が規定される。操縦レバー22,23が中立状態より後側に倒れることで油圧ポンプ32,33は油圧モータ30,31を他方側に回転させるように吐出方向が規定される。中立状態は、操縦レバー22,23が運転者に掴まれない状態で自動的に復帰する位置にあり油の吐出がない状態である。油圧モータ30,31の回転方向について、一方側は車輪12,13の前進方向の回転に対応し、他方側は車輪12,13の後進方向の回転に対応する。
例えば左右の操縦レバー22,23が前側に倒された場合には、コントローラ60はレバーポテンショメータ38,39からの検出信号に応じて、斜板アクチュエータ41,42の制御により斜板操作レバー32c、33cを一方向に駆動する。これにより、左右の油圧ポンプ32,33の吐出量が変更され、各油圧ポンプ32,33の吐出量が前進側で大きくなるように、各油圧ポンプ32,33の可動斜板を傾転させる。左右の操縦レバー22,23が後側に倒された場合には、コントローラ60は、斜板アクチュエータ41,42の制御により斜板操作レバー32c、33cを他方向に駆動する。これにより、左右の油圧ポンプ32,33の吐出量が変更され、各油圧ポンプ32,33の吐出量が後進側で大きくなるように、各油圧ポンプ32,33の可動斜板を傾転させる。このように、コントローラ60は、左右のレバーポテンショメータ38,39の検出信号に応じて左右の斜板アクチュエータ41,42の駆動を制御して左右の油圧ポンプ32,33の可動斜板を傾転させ、油圧ポンプ32,33の吐出量を変更させる。
さらに、コントローラ60は、急旋回がされ、かつ、不安定旋回がされていると判定せれたときに、後述のように、左右の斜板アクチュエータ41,42の駆動を制御する。これにより、左右の油圧ポンプ32,33の可動斜板の傾転角度をほぼ中立状態に近づけることにより各油圧ポンプ32,33の吐出量をゼロに近づけ、これによって、車両の旋回速度を抑制する。または左右の油圧ポンプ32,33の可動斜板の傾転角度をほぼ中立状態とすることにより各油圧ポンプ32,33の吐出量を実質的にゼロとし、これによって車両の旋回速度を抑制する。具体的には、旋回速度を低下させるか、または旋回速度を0とする。可動斜板の傾転角度がほぼ中立状態にある場合とは、可動斜板がほぼ中立位置にある状態である。このときには油圧モータ30,31が駆動されない。
また、図5の油圧回路28,29では、左右のそれぞれで、油圧ポンプ32,33及び油圧モータ30,31を接続する2つの主油路S1,S2にチャージ油路C1が接続される。チャージ油路C1は、各主油路S1,S2と油溜まりEとをチェック弁F1、F2を介して接続する。具体的には、左の動力発生ユニット26の油圧回路28は、第1油路である第1主油路S1、及び、第2油路である第2主油路S2を含む。第1主油路S1は、左油圧ポンプ32の2つのポートP1,P2のうち、一方のポートP1と、左油圧モータ30の2つのポートQ1,Q2のうち、一方のポートQ1とを接続する。第2主油路S2は、左油圧ポンプ32の2つのポートP1,P2のうち、他方のポートP2と、左油圧モータ30の2つのポートQ1,Q2のうち、他方のポートQ2とを接続する。一方、右の動力発生ユニット27の油圧回路29は、第3油路である第3主油路S3、及び、第4油路である第4主油路S4を含む。第3主油路S3は、右油圧ポンプ33の2つのポートP3,P4のうち、一方のポートP3と、右油圧モータ31の2つのポートQ3,Q4のうち、一方のポートQ3とを接続する。第4主油路S4は、右油圧ポンプ33の2つのポートP3,P4のうち、他方のポートP4と、右油圧モータ31の2つのポートQ3,Q4のうち、他方のポートQ4とを接続する。
チャージ油路C1は、各主油路S1,S2,S3,S4のうち、低圧側の主油路に油溜まりEから油が補充される。また、第1主油路S1及び第2主油路S2の両方と油溜まりEとの間にはバイパス弁28aが接続される。第3主油路S3及び第4主油路S4の両方と油溜まりEとの間にはバイパス弁29aが接続される。バイパス弁28a、29aは、手動により、主油路S1,S2,S3,S4と油溜まりEとの間の接続である開放及び遮断である閉鎖を切り替え可能に構成される。図5の例では、各バイパス弁28a、29aは、開放側に切り替えられた場合に、主油路S1,S2,S3,S4が絞りを介して油溜まりEに接続されるようにしているが、絞りは省略してもよい。
左右の油圧モータ30,31の出力軸には左右車輪12,13のそれぞれが、動力発生ユニット26,27を構成する減速歯車機構26b、27bを介して動力の伝達可能に連結される。後述するように、車両10は、左右の車輪12,13の独立制御により直進走行及び旋回走行が可能である。
エンジン14は、車両10において、運転席21(図1)の後側に配置される。図4に示すように、エンジン14は、鉛直方向(図4の紙面の表裏方向)に沿う駆動軸14aが鉛直方向を中心として回転する。駆動軸14aには駆動プーリ40が固定され、駆動プーリ40と、左右の動力発生ユニット26、27に設けられた2つの従動プーリ35とにベルト36が掛け渡される。駆動プーリ40及び2つの従動プーリ35は、軸プーリに相当する。これにより、エンジン14が駆動することで、駆動プーリ40、ベルト36、従動プーリ35を介して油圧ポンプ32,33が駆動される。操縦レバー22,23の操作により、油圧ポンプ32,33から圧油が吐出されて、油圧モータ30,31が回転する。また、車両10は、始動スイッチ(図示せず)がユーザによってオンされることで、エンジン14が予め設定された一定回転速度で運転されるように制御される。油圧ポンプ32,33の動力源として電動モータが設けられてもよい。
また、後述のように左右車輪12,13が互いに逆方向に同じ速度で回転することにより、車両10が左車輪12と右車輪13との中間に位置する旋回中心位置70(図2)の周りに急旋回することが可能である。
図1に戻って、芝刈機18は、メインフレーム20の長手方向中間部の下側に支持されている。芝刈機18は、前後方向において、キャスタ輪15,16及び左右車輪12,13の間に配置される。芝刈機18は、カバーであるモアデッキ19の内側に配置された芝刈回転工具である芝刈ブレード(図示せず)を含む。芝刈ブレードはモアデッキ19により上側を覆われる。芝刈ブレードは鉛直方向(図1の上下方向)に向いた軸の周りに回転する複数のブレード要素(図示せず)を有する。これにより、ブレード要素が回転して芝を破断して刈取り可能である。芝刈ブレードは、後述のコントローラ60(図3)により制御される芝刈駆動モータ(図示せず)によって回転駆動される。なお、エンジン14の駆動軸に固定された駆動プーリと、芝刈ブレードの駆動軸に固定された従動プーリとにベルトを掛け渡す等により、芝刈機を、エンジン14からの動力を受けて駆動可能な構成としてもよい。刈り取られた芝は、モアデッキ19の左右方向一方側(図1の左側)に設けられた図示しない排出口を通じて車両10の左右方向一方側に排出される。モアデッキ19に集草ダクトを接続し、集草ダクトに接続された集草タンクに、刈り取られた芝を収集することもできる。
図1、図2に示すように、加速度センサ50は、車両10の前端部において、メインフレーム20、またはメインフレーム20に固定された剛性の高い部材で、2つのキャスタ輪15,16の間の中央近くに配置される。加速度センサ50は、Gセンサと呼ばれるもので、旋回安定性に関係する物理量である旋回安定関係量として、車両10の左右方向の加速度を検出する。加速度センサ50は、旋回安定関係センサに相当する。
図6は、加速度センサ50の原理を示す図である。例えば、図6(a)に示すように、加速度センサ50は、ケース50aの内側に配置された錘50bと、錘50bの周囲の複数位置に結合されたバネ50cとを含み、錘50bが中立位置で釣り合って浮いた状態でケース50a内に支持される。このとき、錘50bの変位を検出することにより加速度を計測できる。例えば、図6(b)に示すように直交する3軸方向として、X,Y,Z方向を考えた場合に、錘50bが中立位置からX方向に変位したときの変位量を求める。これにより、X方向の加速度を検出できる。また、図6(c)(d)に示すように、錘50bが中立位置からY方向またはZ方向に変位したときの変位量を求める。この変位量に基づいて、Y方向またはZ方向の加速度を検出できる。加速度センサ50は、このような原理に基づく構成を有するもので、例えば加速度センサ50のX方向が車両10の左右方向に沿うように車両10に加速度センサ50が配置される。加速度センサ50には静電容量型、ピエゾ抵抗型、歪ゲージ検出型、ガス温度分布型等の半導体方式等が用いられてもよい。
このような加速度センサ50の検出値が過度に高い場合には、車両10の前端部が急激に左右に旋回している不安定旋回であると判定できる。加速度センサ50の検出信号は、コントローラ60(図3)に送信される。
図3に示すように、コントローラ60は、CPU等の演算部及びメモリ等の記憶部を含み、例えばマイクロコンピュータにより構成される。コントローラ60は、急旋回判定部61と、不安定旋回判定部62と、旋回速度抑制部63と、斜板アクチュエータ制御部64とを有する。急旋回判定部61は、左右のレバーポテンショメータ38,39の検出信号から車両10が急旋回中であるか否かを判定する。例えば、この検出信号から左右車輪12,13の回転方向及び回転角度が算出される。左右車輪12,13が同じ方向に回転し、かつ、左右車輪12,13の回転速度が異なる場合には、車両10は前側または後側に緩旋回中であると判定される。左右2つのレバーポテンショメータ38,39と、急旋回判定部61とによって、急旋回検知部37が構成される。急旋回検知部37は、車両10が急旋回していることを検知する。急旋回検知部37によって、次で説明する信地旋回、ゼロターン、及び信地旋回とゼロターンとの間の旋回のいずれかである、急旋回をしていることが検知される。そして、レバーポテンショメータ38,39からの左右各々の検出信号の値が高いほど旋回速度は高くなる。
例えば、左右車輪12,13の一方の車輪のみが回転する場合には、車両10が、左右車輪12,13の一方車輪の接地位置を中心として旋回する信地旋回と呼ばれる急旋回中であることが判定される。また、左右車輪12,13が逆方向に回転する場合には、より旋回半径が小さくなる急旋回中であると判定される。特に、左右車輪12,13が逆方向に回転し、かつ左右車輪12,13の回転速度の絶対値が同じである場合には、車両10が、左右車輪12,13の間の中央を中心として旋回するゼロターンまたは超信地旋回と呼ばれる急旋回中であると判定される。これにより、急旋回中であることが検知される。このような急旋回は後で図8B、図8Cを用いて説明する。
不安定旋回判定部62は、加速度センサ50の検出値が、加速度について予め設定された閾値以上であるときには不安定旋回であると判定する。斜板アクチュエータ制御部64は、左レバーポテンショメータ38の検出信号に応じて左斜板アクチュエータ41の駆動を制御して左油圧ポンプ32の可動斜板を傾転させる。また、斜板アクチュエータ制御部64は、右レバーポテンショメータ39の検出信号に応じて右斜板アクチュエータ42の駆動を制御して右油圧ポンプ33の可動斜板を傾転させる。
さらに、旋回速度抑制部63は、急旋回判定部61及び不安定旋回判定部62の判定結果に応じて、車両10において、急旋回がされ、かつ、不安定旋回であると判定されたときに、旋回速度を抑制する。具体的には、旋回速度抑制部63は、左斜板アクチュエータ41及び右斜板アクチュエータ42の駆動を制御して左油圧ポンプ32及び右油圧ポンプ33の斜板の傾転角度を中立状態に近づける。これにより、左油圧ポンプ32及び右油圧ポンプ33の吐出量をゼロに近づけることにより、車両10の旋回速度を低下させる。また、旋回速度抑制部63は、左油圧ポンプ32及び右油圧ポンプ33の斜板の傾転角度をほぼ中立状態とすることにより左油圧ポンプ32及び右油圧ポンプ33の吐出量を実質的にゼロとすることにより、旋回速度を0としてもよい。これにより、車両が停止される。コントローラ60の急旋回判定部61、不安定旋回判定部62等の各機能を実行する部分は、1つのコントローラが統合的に有してもよいが、複数のコントローラがケーブルで接続され、複数の機能が複数のコントローラで分けて実行されてもよい。
図7は、車両10において、直進走行の状態を示す略図である。図5では、左右車輪12,13及びキャスタ輪15,16の位置関係を示している。図5に示すように、左右の油圧モータ30,31(図5)により、左右車輪12,13の回転速度を一致させることで、車両10の直進走行が可能である。このとき、左右車輪12,13の地面に対する接地位置の移動速度である対地移動速度V1、V2は一致する。左右のキャスタ輪15,16には動力源は接続されておらず、キャスタ輪15,16は、左右車輪12,13の駆動による車両10の走行に伴って地面から従動的に回転される。一方、左右車輪12,13の回転速度差を発生させることで、車両10の旋回走行が可能である。
図8A、図8B、図8Cは、車両の旋回走行の3例を示している。図8A、図8B、図8Cでも、図7と同様に、左右車輪12,13及びキャスタ輪15,16の位置関係を示している。図8Aは、車両10において、前側への緩旋回走行の状態を示す略図である。図8Aでは、上から見たときに旋回中心位置70が、左右車輪12,13の車軸方向の延長線上で左右車輪12の外側にある。このとき、車両10は比較的緩やかに旋回する。
図8Bは、車両10において、左右車輪12,13の一方の車輪12を中心として前方へ急旋回する状態を示す略図である。図8Bでは、旋回中心位置70が、一方の車輪12の接地位置にある。このような旋回は信地旋回と呼ばれ、図8Aの場合よりも車両10が急に旋回する。
図8Cは、車両10において、左右車輪12,13の間の中央を中心として前方に急旋回する状態を示す略図である。図8Cでは、上から見たときに旋回中心位置70が左右車輪12,13の車軸方向の延長線上で左右車輪12,13の間の中央位置にある。また、左右車輪12,13の速度V1,V2の絶対値は同じであるが、一方の車輪12の速度V1の方向が、他方の車輪13の速度V2の方向とは逆である。この場合、車両10は、図8Bの場合よりもさらに急に旋回する。このような旋回は、超信地旋回、またはスピン旋回、または旋回半径が0となるのでゼロターン(ZTR)と呼ばれる。車両の旋回について、図8Bと図8Cとの間の急旋回もあり、その急旋回では、旋回中心が一方の車輪12の接地位置と左右車輪12,13の間の中央位置との間に位置する。また、急旋回の場合として、旋回中心が他方の車輪13の接地位置にある信地旋回の場合もある。
上記の車両10によれば、左右車輪12,13を左右の油圧モータ30,31により独立に走行駆動する構成において、不安定旋回を自動で抑制できる。例えば、図2のように車両がゼロターンで急旋回する場合において、旋回速度が低いときには、加速度センサ50で検出される左右方向の加速度が閾値より小さいので、急旋回が抑制されない。一方、ゼロターンで急旋回する場合において、旋回速度が過度に高いときには、加速度センサ50で検出される左右方向の加速度が閾値以上となる。この場合には、不安定旋回であると判定されるので、斜板アクチュエータ41,42の動作により車両が減速または停止される。これにより、旋回速度が抑制されるので、不安定旋回が自動で抑制される。さらに、旋回速度抑制部63により車両の旋回速度が緩やかに低下される構成では、車両が急に停止される構成と異なり、減速によって運転者に加わる衝撃を緩和することができる。また、旋回速度が抑制されることにより、運転者が周囲に存在する人または物を認識しやすくなるので安全性をより高めることができる。
また、左右車輪12,13の接地位置の間、または左右車輪12,13の一方の車輪の接地位置に旋回中心が位置する急旋回では、車両10の前端部が大きく左右方向に移動する。これにより実施形態のように、加速度センサ50が車両10の前端部に配置される場合には、旋回安定性の検出精度が高くなる。なお、加速度センサ50の配置位置は、車両10の前端部に配置される構成に限定せず、車両10において剛性の高い部材に配置されるのであれば、種々の位置に配置できる。例えば、加速度センサ50は、車両10の重心の付近に配置されてもよい。また、前輪が駆動輪であり、後輪がキャスタ輪である場合には、車両の後端部が大きく左右方向に移動するので、加速度センサを車両の後端部に配置することにより、旋回安定性の検出精度を高くできる。
また、上記では、旋回安定性に関係する旋回安定量を検出する旋回安定関係センサとして加速度センサ50を用いる場合を説明した。一方、旋回安定関係センサとして、加速度センサの代わりに角速度センサ51(図3)を用いることもできる。角速度センサ51は、車両の前端部において、図1の加速度センサ50の配置位置と同様の位置、または車両において、左右車輪12,13の間の中央位置に近い車両の後端部等の剛性の高い部材に配置することができる。角速度センサ51は、鉛直方向の軸周りの車両の角速度を検出する。角速度センサ51には、例えばジャイロセンサが用いられる。
コントローラ60の旋回速度抑制部63は、急旋回がされ、かつ、角速度センサ51の検出値が閾値以上であるときに、斜板アクチュエータ41,42の動作により車両を減速または停止することにより、旋回速度を抑制する。このような構成の場合も、加速度センサ50を用いる場合と同様に不安定旋回を自動で抑制できる。例えば、車両が急旋回する場合において、旋回速度が低いときには、角速度センサ51で検出される角速度が閾値より小さいので、急旋回が抑制されない。一方、急旋回する場合において、旋回速度が過度に高いときには、角速度センサ51で検出される角速度が閾値以上となるので、急旋回が抑制される。これにより、不安定旋回を自動で抑制できる。
図9は、実施形態の別例の車両10の特徴構成を示すブロック図である。図10は、図9に示す構成において、図4に対応する図である。図9、図10に示す構成では、図1から図8の構成において、斜板アクチュエータの代わりに、車両10が張力切換アクチュエータ46を備える。具体的には、図10に示すように、左右の斜板操作レバー32c、33cには、左右の対応する側の操縦レバー22,23の下端部が、それぞれリンク43を介して連結される。これにより、操縦レバー22,23が前後方向に揺動することで、斜板操作軸32b、33bが回転する。そして、油圧ポンプ32,33(図5参照)の可動斜板の傾転角度及び向きが変化する。
また、エンジン14の駆動軸14aに固定された駆動プーリ40と、油圧ポンプ32,33の従動軸に固定された従動プーリ35とにはベルト36が掛け渡される。そのベルト36は、駆動源の出力部とトランスミッション11の入力部との間に配置されるクラッチとして機能するべく、ベルト張力切替機構44が備えられ、これにより張力の有無が切り換えられる。ベルト張力切替機構44は、ベルト36を外周側から押圧する押圧プーリ45と、押圧プーリ45からベルト36に付与される押圧力の有無を切り替える張力切換アクチュエータ46とを含む。押圧プーリ45は、揺動板部47の一端(図10の左端)に支持される。揺動板部47は、メインフレーム20(図1)において、揺動板部47の中間部に位置する上下方向の軸を中心に揺動可能に支持される。張力切換アクチュエータ46は、シリンダ部材46aと、シリンダ部材46aに軸方向に変位可能に支持されたロッド46bと、シリンダ部材46aからのロッド46bの突出長さを変化させるリニア型のソレノイド(図示せず)とを含む。
ソレノイドは、シリンダ部材46aの内側でロッド46bの周囲に配置されており、ソレノイドへの通電によってロッド46bをシリンダ部材46aから突き出すように作動する。ロッド46bの先端部は、揺動板部47の他端部(図10の右端部)に結合される。揺動板部47にはバネ48が取り付けられており、バネ48は、押圧プーリ45をベルト36の外周面に押し付ける方向に弾力を付与する。これにより、ソレノイドが通電されることでロッド46bの突出長さが大きくなり、揺動板部47は、押圧プーリ45がベルト36から離れる方向に揺動する。このため、ベルト36の張力が0に近づいて、エンジン14から油圧ポンプ32,33(図5)への動力伝達が遮断または半伝達状態となるので、油圧ポンプ32,33の吐出量が0または低下する。このとき、エンジン14とトランスミッション11との間のクラッチでの動力伝達が切り、または半伝達状態となる。したがって、油圧モータ30,31の回転が停止または減速される。したがって、油圧モータ30,31に動力の伝達可能に連結された左右車輪12,13の回転も停止または減速される。この結果、車両10の走行が停止または減速され、車両10が旋回中である場合には旋回も停止または減速される。張力切換アクチュエータ46は、コントローラ60(図9)により駆動が制御され、クラッチを断接する。コントローラ60の旋回速度抑制部63(図3参照)は、急旋回がされ、かつ、加速度センサ50または角速度センサ51の検出値が閾値以上であるときに、張力切換アクチュエータ46の駆動を制御する。そしてベルト36の張力を0に近づける、または0とすることにより旋回速度を抑制する。ソレノイドに通電されない場合には、ベルト36に張力が発生し、エンジン14から油圧ポンプ32,33へ動力が伝達されるので、エンジン14とトランスミッション11との間のクラッチでの動力伝達が接続状態となる。その他の構成及び作用は、図1から図8Cの構成と同様である。
図11(a)は、実施形態の別例の車両10において、図4(a)に対応する図であり、図11(b)は図11(a)の矢印B方向に見た図である。図11、図12の車両10は、図1から図8の構成において、左の操縦レバー22の下端部の周辺部に配置された左のバックスイッチ75と、右の操縦レバー23の下端部の周辺部に配置された右のバックスイッチ76とを備える。左右のバックスイッチ75,76は、左右の操縦レバー22,23が下端部の左右方向の軸Sを中心として、後進を指示する領域(図11のR領域)に揺動されたか否かを検出する。そして、左右のバックスイッチ75,76は、左右の操縦レバー22,23が後進の指示領域に揺動されたことを検出した場合に、その検出信号をコントローラ60に送信する。例えば、バックスイッチ75,76の前端部が操縦レバー22,23の下端部の前端によって、下側に押された場合に、操縦レバー22,23が中立状態から後側に倒されて後進を指示されたことを検出する。コントローラ60は、左右のレバーポテンショメータ38,39だけでなく、バックスイッチ75,76の検出信号を補助的に用いることにより、より安定して車両が急旋回しているか否かを判定する。図11(a)では、左右のレバーポテンショメータ38,39の図示を省略する。
また、車両10は、エンジン14のスロットル弁の開度を機械的または電気的に調整するスロットルアクチュエータ78を備える。スロットルアクチュエータ78は、スロットル弁の回動軸(図示せず)に固定されたモータ(図示せず)を含む。コントローラ60(図3参照)は、始動スイッチ(図示せず)がユーザによりオンされることで、エンジン14を予め設定された一定回転速度で運転するように、スロットルアクチュエータ78のモータを制御する。コントローラ60は、始動スイッチがユーザによりオフされることで、スロットル弁を閉鎖させるようにスロットルアクチュエータ78を制御する。
また、コントローラ60の旋回速度抑制部63(図3)は、急旋回がされ、かつ、加速度センサ50(図3)または角速度センサ51(図3)の検出値が閾値以上であるときに、スロットルアクチュエータ78の駆動を制御する。そして、スロットル弁を閉鎖状態に近づける、または閉鎖することにより車両の旋回を減速または停止させ、旋回速度を抑制する。その他の構成及び作用は、図1から図8Cの構成と同様である。なお、バックスイッチ75,76は、図1から図8Cの構成、または図9、図10の構成に用いることもできる。
図12は、実施形態の別例の車両10において、図5に対応する図である。図12の車両10は、図1から図8の構成において、左右のバイパスアクチュエータ79,80を備える。左右のバイパスアクチュエータ79,80は、左右それぞれの動力発生ユニット26,27の油圧回路28,29の主油路S1,S2,S3,S4と油溜まりEとの間に接続されたバイパス弁28a、29aを同時に開閉駆動する。バイパス弁28a、29aは、開放状態、すなわち主油路S1,S2,S3,S4と油溜まりEとの接続状態で、主油路S1,S2,S3,S4の油を油溜まりEに排出させる。一方、バイパス弁28a、29aは、閉鎖状態、すなわち主油路S1,S2,S3,S4と油溜まりEとの遮断状態で、主油路S1,S2,S3,S4に油を循環させる。例えば、左のバイパスアクチュエータ79は、左のバイパス弁28aの閉鎖及び開放を電気的に切り替える左ソレノイドを含み、右のバイパスアクチュエータ80は、右のバイパス弁29aの閉鎖及び開放を電気的に切り替える右ソレノイドを含む。各バイパスアクチュエータ79,80は、コントローラ60(図3参照)により制御される。そして、コントローラ60は、左右のバイパスアクチュエータ79,80の駆動を制御して左右のバイパス弁28a、29aを同時に開放状態とすることにより、油圧ポンプ32,33の駆動中でも油圧モータ30,31への油の供給を停止する。これにより、油圧モータ30,31が空回り状態となるので、車両10の旋回が停止される。なお、このときには、油圧ポンプ32,33は急停止されず、惰性で停止されるので、車両10も惰性で停止される。その他の構成及び作用は、図1から図8Cの構成と同様である。なお、図12の構成でも、図10、図11の構成と同様に、補助的にバックスイッチを設けることもできる。
図13は、実施形態の別例の車両10において、図5に対応する図である。車両10では、旋回安定関係センサとして、第1圧力センサ81、第2圧力センサ82、第3圧力センサ83、及び第4圧力センサ84を備える。第1圧力センサ81は、左油圧ポンプ32の一方のポートP1と、左油圧モータ30の一方のポートQ1とを接続する第1主油路S1の圧力を検出する。第2圧力センサ82は、左油圧ポンプ32の他方のポートP2と、左油圧モータ30の他方のポートQ2とを接続する第2主油路S2の圧力を検出する。
また、第3圧力センサ83は、右油圧ポンプ33の一方のポートP3と、右油圧モータ31の一方のポートQ3とを接続する第3主油路S3の圧力を検出する。さらに、第4圧力センサ84は、右油圧ポンプ33の他方のポートP4と、右油圧モータ31の他方のポートQ4とを接続する第4主油路S4の圧力を検出する。各圧力センサ81,82,83,84の検出信号は、コントローラ60(図3)に送信される。そして、コントローラ60の旋回速度抑制部63(図3)は、急旋回がされ、かつ、各圧力センサ81,82,83,84の中の少なくとも1つの圧力センサの検出値の絶対値が閾値以上であるときに、旋回速度を抑制する。具体的には、旋回速度を低下させるか、または0とする。
図14(a)は、図13に示す構成において、左操縦レバー22(図4)の操作量と第1主油路S1及び第2主油路S2の圧力検出値との関係を用いて旋回速度を抑制するための条件の2つを示す図である。図14(b)は、図13に示す構成において、右操縦レバー23の操作量と第3主油路S3及び第4主油路S4の圧力検出値との関係を用いて旋回速度を抑制するための条件の2つを示す図である。
例えば、図14(a)の斜線部αの領域は、左操縦レバー22の操作量が最大値Max付近の所定量以上に、前進回転に対応する前側Fに操作され、かつ、左油圧ポンプ32側の第1主油路S1の圧力が最大値Max付近の所定値以上である条件を示す。図14(a)の斜線部βの領域は、左操縦レバー22の操作量が最大値Max付近の所定量以上に、後進回転に対応する後側Rに操作され、かつ、左油圧ポンプ32側の第2主油路S2の圧力が最大値Max付近の所定値以上である条件を示す。
また、図14(b)の斜線部γの領域は、右操縦レバー23の操作量が最大値Max付近の所定量以上に、前進回転に対応する前側Fに操作され、かつ、右油圧ポンプ33側の第2主油路S3の圧力が最大値Max付近の所定値以上である条件を示す。図14(b)の斜線部δの領域は、右操縦レバー23の操作量が最大値Max付近の所定量以上に、後進回転に対応する後側Rに操作され、かつ、右油圧ポンプ33側の第4主油路S4の圧力が最大値Max付近の所定値以上である条件を示す。
例えば、矢印C1で示す2つの条件の組み合わせでは、第1主油路S1の圧力が高く、かつ左操縦レバー22が前側に大きく操作され、さらに、第4主油路S4の圧力が高く、かつ右操縦レバー23が後側に大きく操作されることを意味する。この組み合わせが成立する場合には、車両10が左側にゼロターンまたはゼロターンに近い状態で急旋回し、かつ、高速である。このときには、コントローラ60(図3)は急旋回がされ、かつ、不安定旋回であると判定して、斜板アクチュエータ41,42(図3)により旋回速度を抑制する。
一方、矢印C2で示す2つの条件の組み合わせでは、第2主油路S1の圧力が高く、かつ左操縦レバー22が後側に大きく操作され、さらに、第3主油路S3の圧力が高く、かつ右操縦レバー23が前側に大きく操作されることを意味する。この組み合わせが成立する場合には、車両が右側にゼロターンまたはゼロターンに近い状態で急旋回し、かつ、高速である。このときも、コントローラは急旋回がされ、かつ、不安定旋回であると判定して、斜板アクチュエータにより旋回速度を抑制する。その他の構成及び作用は、図1から図8Cの構成と同様である。なお、図1から図12の各例の構成において、不安定旋回量を検知するセンサとして、図13、図14の構成のように圧力センサ81,82,83,84を用いることもできる。なお、図13の構成でも、図11の構成と同様に、補助的にバックスイッチ75,76を設けることもできる。なお、図14では、ゼロターンまたはゼロターンに近い状態で急旋回し、かつ、高速である場合の条件の組み合わせを示している。一方、図14の条件の組み合わせが成立しない場合でも、旋回速度抑制部63は、急旋回がされ、かつ、各圧力センサ81,82,83,84の中の少なくとも1つの圧力センサの検出値の絶対値が閾値以上であるときに旋回速度を抑制する構成としてもよい。図13の構成は、斜板アクチュエータ41,42により旋回速度を抑制する構成に限定せず、図9〜12に示した各例の構成における旋回速度を抑制する構成と組み合わせることもできる。
図15は、実施形態の別例の車両10において、(a)は図4(a)に対応する図であり、(b)は(a)の矢印C方向に見た図である。図15に示す車両10では、図1から図8Cの構成において、加速度センサ50(図3)及び角速度センサ51(図3)のいずれも設けられていない。その代わりに、車両10は、第1旋回安定関係量として、左操縦レバー22の左レバー中立位置を中心とする左レバー揺動角度を用い、第2旋回安定関係量として、右操縦レバー23の右レバー中立位置を中心とする右レバー揺動角度を用いる。そして、コントローラ60が有する旋回速度抑制部63は、左レバー揺動角度及び右レバー揺動角度の少なくとも一方が閾値以上であり、かつ急旋回判定部61の判定結果により急旋回がされていると判定されたときには、旋回速度を抑制する。具体的には、旋回速度抑制部63は、左右の斜板アクチュエータ41,42の駆動を制御することにより旋回速度を抑制する。例えば、各レバーポテンショメータ38,39の検出値から、図15(b)に示すように左レバー揺動角度及び右レバー揺動角度の両方がレバー中立位置に近い矢印A1または矢印A2の範囲内にある場合には、信地旋回またはゼロターン等の急旋回は許可される。一方、左レバー揺動角度及び右レバー揺動角度の少なくとも一方がレバー中立位置から遠い範囲である矢印A3または矢印A4の範囲内にある場合には、急旋回は制限される。このとき、斜板アクチュエータ41,42の駆動が制御され、左油圧ポンプ32及び右油圧ポンプ33の斜板の傾転角度を中立状態に近づける、または中立状態とすることにより旋回速度が抑制される。図15に示す範囲A1,A2は急旋回許可範囲であり、範囲A3,A4は急旋回制限範囲である。上記構成によれば、加速度センサ50及び角速度センサ51のいずれも設ける必要がないので、コスト低減を図れる。その他の構成及び作用は、図1から図8Cの構成と同様である。図15の構成は、斜板アクチュエータ41,42により旋回速度を抑制する構成に限定せず、図9〜12に示した各例の構成における旋回速度を抑制する構成と組み合わせることもできる。