JP6564623B2 - 鉄筋コンクリート構造物の補強方法および補強構造 - Google Patents
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内空側の鉄筋を補強する公知技術としては、構造物の内空側に高強度繊維を貼り付ける方法や、内空側のかぶり部分のコンクリートをはつり、追加鉄筋を配設する方法等が知られている。
例えば、特許文献1には、RC構造物にその内面側から外面側に向けて形成されたスリットと、スリット内に配置された、複数の貫通孔を有する高強度繊維製の補強部材と、補強部材が配置された前記スリット内に充填された充填材と、を有するRC構造物の補強構造が開示されている。
また、地山側の鉄筋を補強する公知技術として、内空側に増壁を配置し、荷重分担を図る方法が知られている。
(1)側壁の内空側に高強度繊維を貼り付ける方法や増壁を設ける方法は、いずれも補強部分が側壁内空側の空間を占有するため、地下構造物の供用空間が狭くなる。また、例えば地下鉄構内などでは建築限界を侵してしまう場合がある。
(2)側壁の内空側に追加鉄筋を配設する方法は、はつり作業により既設構造物に大きなダメージを与える場合がある。
(3)上記いずれの工法も施工規模が大きく、施工コストが高い。
(4)老朽化により地山側の鉄筋が腐食している場合など、構造物への外力の条件によっては、内空側の鉄筋補強だけで足りず、地山側鉄筋を直接補強することが必要または効果的な場合がある。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記収容孔を、前記他方の面側であって、前記他方の面側の鉄筋より前記一方の面側に設けることを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記複数の導入孔の径が、いずれも前記収容孔の径より大きいことを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明のうち何れかにおいて、前記補強部を、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、鋼線、鋼より線のうち何れかからなる基材に、充填材を充填して構築するか、または引張強度をもつ充填材を充填して構築することを特徴とする。
また、本願の第5発明は、鉄筋コンクリート構造物の補強構造であって、前記鉄筋コンクリート構造物の壁面は、一方の面および他方の面を有するものであり、前記鉄筋コンクリート構造物の壁面の前記一方の面から前記他方の面側に延伸する、互いに隔離する複数の導入孔と、前記複数の導入孔を連通する略一直線状の収容孔と、少なくとも前記収容孔の内部に設ける補強部と、を少なくとも有することを特徴とする。
(1)地山側の鉄筋を側壁の内部から直接補強することができる。
(2)増壁と異なり、補強後に側壁の内空側の空間を侵さない点で有益である。
(3)最小限の穿孔で施工できるため、既設構造物に与えるダメージが小さい。
(4)従来の工法と比較して、施工性が良く施工コストの低減も期待できる。
<1>前提条件
本実施例に係る発明は、既設の地下構造物Aの側壁の地山側鉄筋a1を、内空側から補強する補強構造に関するものである。
地下構造物AとしてRC構造のボックスカルバートを例にして説明する。
地下構造物の側壁において、壁厚の中心線より内側を「内空側」、中心線より外側を「地山側」と定義する。地山側鉄筋a1を補強する区間を補強区間Rと定義する。
本実施例に係る補強構造は、地下構造物Aの側壁内に形成される構造体であって、2つの導入孔10と、これを連通する収容孔20とで形成される倒H字状の空間に、充填材32を充填してなる。2つの導入孔10と収容孔20の内部には基材31を配設する。
導入孔10は、地下構造物Aの側壁に、地山側に向けて壁面直角方向に設ける孔である。
導入孔10は、側壁の地山側であって、少なくとも地山側鉄筋a1より内空側の深さまで穿孔する。
導入孔10は、地山側の壁面まで貫通するように設けても良いし、一部まで穿孔して有底状態となるように設けても良い。
図1では、導入孔10は、補強区間Rの上端部側に穿孔する上方導入孔11と、補強区間Rの下端部側に穿孔する下方導入孔12と、からなる。下方導入孔12は、上方導入孔11の開口の直下から穿孔する。
収容孔20は、地下構造物Aの側壁の内部に垂直方向に設ける孔であって、上方導入孔11から下方導入孔12まで連通する孔である。 収容孔20の長さは地山側鉄筋a1の補強区間Rに対応する。
収容孔20は、側壁内部の地山側であって、地山側鉄筋a1より内空側に設けるものとする。当該条件を満たす範囲で、収容孔20を形成する開始位置は、導入孔10の先端部分に限らず導入孔の途上部分としてもよい。
収容孔20の径は、上方導入孔11、下方導入孔12それぞれの径より小径とする。
補強部30は、コンクリート構造物の地山側の鉄筋を補強するための部分である。
本実施例では、補強部30は、収容孔20内に収容する基材31と、収容孔20および各導入孔11,12に充填する充填材32とで構築する。
各部の詳細について、以下説明する。
基材31は、収容孔20内に配設する部材である。
基材31は、所定の引張強さと可撓性を有する素材を採用する。
本実施例では、基材31として、収容孔20内に配設する炭素繊維基材を採用する。但しこれに限られず、アラミド繊維、ガラス繊維、鋼線、鋼より線等の公知の基材を採用することができる。
充填材32は、2つの導入孔10と収容孔20の内部に充填し、基材31を孔内に定着させる部材である。
本実施例では、充填材32として、無収縮モルタルを採用する。但しこれに限られず、コンクリート、有機系材料、セメント系無機系材など公知の材料を採用することができる。
引き続き、図面を参照しながら本実施例に係る補強方法について説明する。
本実施例に係る補強方法は、地下構造物Aの内空側を侵さずに地山側鉄筋a1を直接補強する技術である。
地下構造物Aの側壁に、内空側から上方導入孔11と下方導入孔12をコア抜きする。
上方導入孔11、下方導入孔12は、それぞれ補強区間Rの上端部、下端部に対応する位置から壁面直角方向に穿孔する。穿孔にはコアボーリングマシン等の公知の手段を用いる。
コア抜きの際には、既設の主筋および配力筋を避け、切断しないように穿孔する。
上方導入孔11および下方導入孔12の深さは、側壁の地山側であって、地山側鉄筋a1より内空側の位置までとする。
上方導入孔11の最奥部付近から垂直方向に収容孔20を穿孔し、下方導入孔12に到達させる。穿孔には上方導入孔11から差し入れたウォータージェット等の公知の手段を用いる。
収容孔20の径は、上方導入孔11および下方導入孔12よりも小径とする。
補強区間Rが長い場合、上方導入孔11と下方導入孔12の中間位置に中間導入孔(図示せず)を増設し、中間導入孔を利用して収容孔20を延伸させることもできる。
上方導入孔11から基材31を挿入し、収容孔20内におろして、基材31の先端を下方導入孔12まで到達させる。基材31の後端は上方導入孔11内に残す。
上方導入孔11から、収容孔20、下方導入孔12内へ充填材32を充填する。
充填材32の硬化によって基材31が収容孔20内に定着することで、上方導入孔11内から下方導入孔12内に及ぶ補強部30を有する補強構造が形成される。
上方導入孔11と下方導入孔12は収容孔20より大径であるため、前記収容孔20との連通部分に位置する、上方導入孔11内の充填材32と下方導入孔12内の充填材32が、収容孔20と基材31に対する機械的な定着部40として機能する。
このように、本実施例に係る補強方法および補強構造によれば、地山側の鉄筋を側壁の内部から直接補強するため、側壁の内空側の空間を侵すことなく作業が可能である。また、最小限の穿孔で施工できるため、既設構造物に与えるダメージが小さい点も有益である。
この場合、補強部30を構成する箇所である、収容孔20の全部に充填する充填材32、および、導入孔10のうち少なくとも前記収容孔20と近傍する箇所に充填する充填材32には、引張強度を有する液体(炭素繊維を混合したセメント系無機系材やエポキシ樹脂系の補修材など)を用いることが好ましい。
例えば、本発明における「他方の面側」は、地下構造物における「地山側」に限るものではなく、「他方の面側」は、ケーブルや管体などの構造物またはその他の建築物、放射線量の高い箇所などの障害の存在によって、作業員の立ち入りが困難な場所である箇所が含まれる。
さらに、本発明における「他方の面側」は、作業員の立ち入りが困難な場所であるに限られない。例えば、その他の従来工法に比べて本発明に係る工法がコストや工期の面で有利である場合などには、コンクリート構造物壁面の両面側とも作業員の立ち入りが可能な現場においても適用が可能である。
11 上方導入孔
12 下方導入孔
20 収容孔
30 補強部
31 基材
32 充填材
40 定着部
A 地下構造物
a1 地山側鉄筋
a2 内空側鉄筋
R 補強区間
Claims (5)
- 鉄筋コンクリート構造物の補強方法であって、
前記鉄筋コンクリート構造物の壁面は、一方の面および他方の面を有するものであり、
前記一方の面側から前記他方の面側に向けて穿孔してなる導入孔を、離隔して複数設ける工程と、
前記複数の導入孔が互いに連通するように穿孔してなる収容孔を設ける工程と、
少なくとも前記収容孔の内部に、補強部を設ける工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、
鉄筋コンクリート構造物の補強方法。 - 前記収容孔を、前記他方の面側であって、前記他方の面側の鉄筋より前記一方の面側に設けることを特徴とする、請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
- 前記複数の導入孔の径が、いずれも前記収容孔の径より大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
- 前記補強部を、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、鋼線、鋼より線のうち何れかからなる基材に、充填材を充填して構築するか、または引張強度をもつ充填材を充填して構築することを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
- 鉄筋コンクリート構造物の補強構造であって、
前記鉄筋コンクリート構造物の壁面は、一方の面および他方の面を有するものであり、
前記鉄筋コンクリート構造物の壁面の前記一方の面から前記他方の面側に延伸する、互いに隔離する複数の導入孔と、
前記複数の導入孔を連通する略一直線状の収容孔と、
少なくとも前記収容孔の内部に設ける補強部と、
を少なくとも有することを特徴とする、
鉄筋コンクリート構造物の補強構造。
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