以下、本発明の第1実施形態にかかる給電装置について部分的に参考例を交えつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる給電装置について部分的に参考例を交えつつ示す図である。本実施形態の給電装置1は、車体60とスライドドア50を有する車両5において、車体60とスライドドア50との間に配索されるワイヤハーネス110を介して電気的に接続する装置である。尚、この図1では、図中右側が車両5の前側に相当し、図中左側が車両5の後側に相当し、図中上側が車両5の外側に相当し、図中下側が車両5の内側に相当する。また、図中上下方向が本実施形態におけるX方向であり、図中左右方向が本実施形態におけるY方向であり、紙面に対する垂直方向がZ方向である。
給電装置1では、車体60に設けられた不図示の電源からスライドドア50に設けられた不図示の電気機器へとワイヤハーネス110を介して電力が供給される。また、この給電装置1では、車体60に設けられた不図示の制御手段とスライドドア50に設けられた不図示の電気機器との間でワイヤハーネス110を介して電気信号の授受も行われる。給電装置1は、ワイヤハーネス110、コルゲートチューブ120、湾曲規制部材130、ドア側保持部140、及び車体側保持部150を備えている。
ワイヤハーネス110は、複数本の電線111が束ねられてなり、樹脂製の可撓性チューブであるコルゲートチューブ120に、ワイヤハーネス110における車体60とスライドドア50との間の部分が通されている。湾曲規制部材130は、コルゲートチューブ120の内面と、ワイヤハーネス110との間に、ワイヤハーネス110を周方向に囲んでワイヤハーネス110に沿うように配置される。湾曲規制部材130については、後で詳細に説明する。
コルゲートチューブ120におけるスライドドア50側の一端がドア側保持部140に、車両5の上下方向であるZ方向を揺動軸方向としてXY平面上で揺動自在に保持されている。ドア側保持部140は、スライドドア50に固定されている。ドア側保持部140に設けられたZ方向に沿ったドア側揺動軸141は、スライドドア50と平行でかつスライドドア50の開閉方向D11(車両5の前後方向であるY方向)と直交する軸となっている。コルゲートチューブ120におけるスライドドア50側の一端は、ドア側保持部140によってドア側揺動軸141回りに揺動自在に保持されている。ドア側保持部140によるコルゲートチューブ120の保持により、ワイヤハーネス110は、そのスライドドア50側の一部がドア側揺動軸141回りにXY平面上で揺動自在に保持されている。ワイヤハーネス110におけるスライドドア50側は、コルゲートチューブ120のスライドドア50側の一端から出ている。さらに、ワイヤハーネス110は、ドア側保持部140の内部の不図示の通路を通ってこのドア側保持部140からも出た後に、スライドドア50の電気機器へと延びている。
他方、コルゲートチューブ120における車体60側の一端が車体側保持部150に、車両5の上下方向であるZ方向を揺動軸方向としてXY平面上で揺動自在に保持されている。車体側保持部150は、車体60に固定されている。車体側保持部150に設けられたZ方向に沿った車体側揺動軸151は、スライドドア50と平行かつスライドドア50の開閉方向D11と直交する軸となっている。コルゲートチューブ120における車体60側の一端は、車体側保持部150によって車体側揺動軸151回りに揺動自在に保持されている。車体側保持部150によるコルゲートチューブ120の保持により、ワイヤハーネス110は、その車体60側の一部が車体側揺動軸151回りにXY平面上で揺動自在に保持されている。ワイヤハーネス110における車体60側は、コルゲートチューブ120の車体60側の一端から出て、さらに、車体側保持部150の内部の不図示の通路を通ってこの車体側保持部150からも出た後に、車体60における不図示の電源や制御手段へと延びている。
スライドドア50の全閉時には、図1に示されているように、車体側保持部150に対してドア側保持部140が車両5の前方側に位置している。そして、コルゲートチューブ120、即ち、その内部のワイヤハーネス110は、車体側保持部150とドア側保持部140との間で略直線状態に延びている。
スライドドア50が車両5の後方へと向かう開方向D111に開かれるときには、その当初の段階で、コルゲートチューブ120のスライドドア50側の一端が次のように揺動する。即ち、この一端が、スライドドア50から離れるとともに開方向D111とは逆方向に車両5の前方側へと向かうようにXY平面上で揺動する。ここで、この揺動に関する構成については、まず参考例を説明する。この参考例においては、ドア側保持部140には、このような揺動を促すべくコイルバネが設けられている。このコイルバネは、コルゲートチューブ120のスライドドア50側の一端を、スライドドア50から離すとともにスライドドア50の開方向D111とは逆方向に向かわせる付勢方向D12に付勢する。以下、特に断らない限り、揺動に関する構成については参考例を採用したものを実施形態と呼んで説明を行う。
スライドドア50開放の初期段階における上記のような揺動により、その後のスライドドア50の開方向D111への移動中、即ち、スライドドア50の半開時には、コルゲートチューブ120の内部のワイヤハーネス110は次のように湾曲する。即ち、ワイヤハーネス110は、図1に示されているように、車体側保持部150からドア側保持部140へと、車両5の前方側に凸にXY平面上でU字形状を描いて車体60の外側へと向かうように許容方向D13に曲げられて湾曲する。
尚、以下では特に断らずに、コルゲートチューブ120の内部のワイヤハーネス110を単にワイヤハーネス110と呼ぶことがある。
上記のようなU字形状の湾曲は、例えばワイヤハーネス110をXY平面上でS字形状に湾曲させる場合等と比較して、コルゲートチューブ120やワイヤハーネス110に与える負担が少なくなる。
スライドドア50の開方向D111への移動中は、ワイヤハーネス110のU字形状におけるスライドドア50側の腕が、ドア側保持部140での付勢方向D12の付勢により車両5の前方側へと直線状に延ばされる。このときには、車体60側の腕は車両5の前方側へと直線状に延ばされる。これら各部の振る舞いと、後述する湾曲規制部材130の働きとにより、スライドドア50の移動中におけるワイヤハーネス110のXY平面上でのU字形状が整えられる。
スライドドア50が開方向D111に移動するにつれて、ワイヤハーネス110の、U字形状におけるスライドドア50側の腕が伸長し車体60側の腕が短縮する。そして、車体60側の腕がある程度短くなった段階で、ワイヤハーネス110の車体60側の一端が、車両5の後方側へと揺動方向D15に揺動する。その後は、この状態のまま、スライドドア50が開方向D111に移動して全開状態へと達する。
スライドドア50がこの全開状態から閉方向D112に閉じられる際には、ワイヤハーネス110は、上述したスライドドア50が開かれるときとは逆の動作を辿る。まず、その初期段階で、ワイヤハーネス110の車体60側の一端が上記の揺動方向D15とは逆方向に揺動することで、ワイヤハーネス110がXY平面上でU字形状となる。その後、スライドドア50が閉方向D112に移動を続けてU字形状におけるスライドドア50側の腕がある程度短くなった段階で、ワイヤハーネス110のスライドドア50側の一端が次のように揺動する。即ち、この段階で、ワイヤハーネス110のスライドドア50側の一端が、ドア側保持部140での付勢に抗して、その付勢方向D12とは逆側に、車両5の後方側へと揺動する。その後は、この状態のまま、スライドドア50が閉方向D112に移動して、ワイヤハーネス110が直線状態に延ばされつつ全閉状態へと達する。
ここで、車体60のフロアにおけるスライドドア50側の端部は、一段低くなって、搭乗者が搭乗時に足を掛けるステップ61となっている。スライドドア50の開閉時には、上記のようにU字形状となったワイヤハーネス110の車体60側の腕がXY平面上でステップ61の近傍を通る。
このとき、一般に、車両のスライドドアに取り付けられる給電装置の分野では、スライドドアの開閉時にワイヤハーネスが湾曲するときの車体側への膨らみについては抑えたいとの要望がある。そこで、本実施形態では、ワイヤハーネス110を車体60側へとこのように膨らませるような湾曲を規制するために、ワイヤハーネス110に沿うように配置される湾曲規制部材130が設けられている。この湾曲規制部材130は、ワイヤハーネス110について、XY平面上での湾曲に制限する。そして、湾曲規制部材130は、XY平面上で車体60の外側へとワイヤハーネス110を曲げるような許容方向D13には湾曲を許容する。他方、許容方向D13とは反対側で、車体60の内側へとワイヤハーネス110を曲げるような規制方向D16については、所定の限界状態以上の湾曲を規制する。
図2は、図1に示されている湾曲規制部材を示す斜視図である。
この湾曲規制部材130は、図1に示されているように、コルゲートチューブ120の内面と、ワイヤハーネス110との間に、ワイヤハーネス110を周方向に囲んでワイヤハーネス110に沿わされて、その湾曲を誘導するように配置される。湾曲規制部材130は、コルゲートチューブ120と略同じ長さを有している。図2では、湾曲規制部材130における右側の端部が車体60側であり、左側の端部がスライドドア50側となっている。
湾曲規制部材130は、ワイヤハーネス110に沿うように配列された複数の部材片131と、これら複数の部材片131を隣接するもの同士連結する連結部132と、を備えている。本実施形態では、複数の部材片131及び連結部132が、樹脂によって互いに一体に成型されている。図2には、図1に示されているXY平面上で許容方向D13へと曲げられてU字形状に湾曲したワイヤハーネス110に追随して、同様のU字形状に湾曲した湾曲規制部材130が示されている。連結部132は、ワイヤハーネス110がこのように湾曲したときにその湾曲形状の内側に位置するようにワイヤハーネス110に沿って配置される可撓性部材である。
図3は、図2に示されている湾曲規制部材を構成する複数の部材片のうちの1つを代表例として示す図である。図3(A)には、部材片131の斜視図が示されており、図3(B)には、図3(A)中のV11−V11断面を示す断面図が示されている。
複数の部材片131それぞれは、この図3に代表例が示されているように、ワイヤハーネス110を相互間に挟むように互いに対向する一対の対向壁1311と、それら一対の対向壁1311同士を繋ぐ結合壁1312と、を備えている。各部材片131は、これら3つの壁により、ワイヤハーネス110の長さ方向D17と交差する断面の形状が、図3に示されているように略C字状に形成されている。
一対の対向壁1311それぞれは、図3(A)に示されているように平面視で略T字状を有している。ワイヤハーネス110の長さ方向D17に延びたT字の横棒に対応する部分が幅広に形成され、長さ方向D17と交差してT字の縦棒に対応する部分が幅狭にかつ短めに形成されている。T字状の各対向壁1311における幅狭の部分の根本が結合壁1312に繋がっている。結合壁1312は、この幅狭の部分同士を繋いでいる。
また、一対の対向壁1311それぞれにおける、ワイヤハーネス110とは反対側の外面は、補強リブ1311aが格子状に組まれた凹凸形状となっている。また、この補強リブ1311aが設けられた外面の包絡形状は、コルゲートチューブ120の内面に沿った凸曲面となっている。そして、各対向壁1311における幅広の部分の、長さ方向D17の両端面1311bが、補強リブ1311aの側面形状そのままに概ね楔形の面となっている。
複数の部材片131は、各部材片131における対向壁1311の楔型の端面1311bが互いに対向するように、ワイヤハーネス110に沿って配列されている。
本実施形態では、一対の対向壁1311を繋ぐ結合壁1312が、ワイヤハーネス110の湾曲形状における内側、即ち、図2に示されているように許容方向D13への湾曲時における湾曲形状の内側に位置するように、複数の部材片131が配列されている。そして、互いに隣接する部材片131の結合壁1312同士を、連結部132が連結している。また、連結部132は、図3(A)に示されているように板状の部材であって、図2の許容方向D13とその逆方向との何れにも曲がることができる程度の厚みで薄く形成されている。さらに言えば、湾曲規制部材130は、この板状の連結部132が、図1に示されているXY平面と直交するように配置されている。これにより、この湾曲規制部材130の湾曲はXY平面上に制限され、その結果、ワイヤハーネス110の湾曲もXY平面上に制限されることとなる。
また、本実施形態では、湾曲規制部材130において図2中の右側の端部、即ち、車体60側の端部に位置する部材片131aが、図1に示されている車体側保持部150に、コルゲートチューブ120の端部と一緒に保持されている。他方、湾曲規制部材130において図2中の左側の端部、即ち、スライドドア50側の端部に位置する部材片131bは、図1に示されているドア側保持部140には保持されていない。これにより、この部材片131bは、湾曲規制部材130の湾曲に応じてドア側保持部140に対して接離できるようになっている。車体60側の部材片131aには、図2に示されているように、車体側保持部150にこの部材片131aを保持させるためのフランジ131a−1が設けられている。
図4は、湾曲規制部材における車体側の部材片が車体側保持部に保持されている様子を、図1中のV12−V12断面の模式的な断面図で表した図である。
車体側保持部150は、車体60に固定される固定部152と、この固定部152に、図1にも示されている車体側揺動軸151回りに揺動自在に支持されている揺動部153と、を備えている。揺動部153の内部には、ワイヤハーネス110が通される挿通孔153aが設けられており、この挿通孔153aが、スライドドア50側に開口している。そして、この揺動部153の開口153bにコルゲートチューブ120の車体60側の端部が固定されている。さらに、開口153bの奥側に、コルゲートチューブ120の車体60側の端部から露出した湾曲規制部材130における車体60側の部材片131aのフランジ131a−1が嵌合する嵌合溝153cが形成されている。この嵌合溝153cにフランジ131a−1が嵌合することで、湾曲規制部材130における車体60側の部材片131aが車体側保持部150にコルゲートチューブ120の端部と一緒に保持されている。尚、車体側保持部150に、揺動部153を図1に示されている揺動方向D15とは逆方向に付勢するコイルバネ等の付勢部材を設けてもよい。この付勢部材による付勢は、ワイヤハーネス110の車体60側を車両5の前方側へと直線状に延ばすことに対する補助の役割を果たす。
このように端部の部材片131aが車体側保持部150に保持された湾曲規制部材130は、図1に示されているXY平面上での湾曲に制限されるとともに、XY平面上における許容方向D13には湾曲可能となる。そして、湾曲規制部材130は、その許容方向D13とは反対側で車体60の内側へと向かう規制方向D16については、後述する限界状態以上には湾曲不能となっている。
図5は、湾曲規制部材が、図1に示されている許容方向には湾曲可能で、その許容方向とは反対側の規制方向については、限界状態以上には湾曲不能となっている様子を示す図である。図5(A)には、湾曲規制部材130が許容方向D13には湾曲可能である様子が示されている。そして、図5(B)に、湾曲規制部材130が規制方向D16については、限界状態以上には湾曲不能となっている様子が示されている。
許容方向D13には、図5(A)に示されているように、複数の部材片131のうち湾曲箇所において隣接するもの同士が連結部132とは反対側で互いに離隔しつつ連結部132が曲がることで、湾曲規制部材130が湾曲可能となっている。これにより、ワイヤハーネス110は、この許容方向D13へと曲がるような湾曲が許容される。
他方、規制方向D16については、図5(B)に示されているように、複数の部材片131のうち湾曲箇所において隣接するもの同士が連結部132とは反対側で互いに当接することで、限界状態以上には湾曲規制部材130が湾曲不能となっている。この湾曲箇所において隣接するもの同士が互いに当接した状態が、規制方向D16への湾曲における限界状態で、湾曲規制部材130は、この限界状態以上に規制方向D16に湾曲することができない。これにより、ワイヤハーネス110は、規制方向D16については、湾曲規制部材130における限界状態以上に曲がるような湾曲が規制されることとなる。
本実施形態では、後述する車体側保持部150の近傍の一部を除いて、複数の部材片131の配列方向(即ち、ワイヤハーネス110の長さ方向D17)について、その中途を含む略全長に亘って、湾曲規制部材130が次のように構成されている。即ち、上記部分の略全長に亘って、図5(B)に示されているように、湾曲規制部材130が略直線状態にあるときに、隣接する部材片131同士が連結部132とは反対側で互いに当接するように構成されている。つまり、本実施形態では、車体側保持部150の近傍の一部を除く部分については、規制方向D16の限界状態が略直線状態に設定されている。これにより、ワイヤハーネス110において許容方向D13に湾曲する部分以外は略直線形状が維持される。
ここで、図1に示されているように、本実施形態では、規制方向D16について、車体側保持部150におけるワイヤハーネス110の端部のXY平面上での揺動範囲が次のような範囲となっている。即ち、この揺動範囲は、ワイヤハーネス110をスライドドア50の開閉方向D11と平行に向かせる一歩手前でワイヤハーネス110の端部が止まる範囲となっている。このため、本実施形態では、車体側保持部150の近傍の一部については、規制方向D16の湾曲に対する規制を若干緩めて、規制方向D16にある程度までは湾曲できるように湾曲規制部材130が構成されている。これにより、ワイヤハーネス110の車体側保持部150の近傍の一部を規制方向D16に若干湾曲させて、上記のように略直線形状が維持された部分を、スライドドア50の開閉方向D11と平行に向かせることができるようになっている。
図6は、湾曲規制部材において、車体側保持部の近傍の一部については、ワイヤハーネスの規制方向の湾曲に対する規制が若干緩められている様子を示す図である。図6(A)には、ワイヤハーネス110における車体側保持部150の近傍の一部が略直線状態にあるときの湾曲規制部材130が示されている。そして、図6(B)には、上記部分についてワイヤハーネス110が規制方向D16にある程度曲がるように湾曲したところで、湾曲規制部材130によってそれ以上の湾曲が規制される様子が示されている。
図6(A)に示されているように、湾曲規制部材130では、車体側保持部150の近傍の一部については、部材片131cの、ワイヤハーネス110の長さ方向D17の長さL11が、他の部分の部材片131の長さL12よりも若干短くなっている。その結果、車体側保持部150の近傍の一部については、湾曲規制部材130が略直線状態にあるときでも、部材片131c,131の相互間に間隙d11,d12が開いている。このため、この部分については、図6(B)に示されているように、隣接する部材片131c,131同士が連結部132の反対側で当接して上記の間隙d11,d12が閉じるまでは、連結部132が規制方向D16に曲がる。このように連結部132が曲がることで、湾曲規制部材130が規制方向D16にある程度は曲がるように湾曲することができる。これにより、車体側保持部150の近傍の一部については、ワイヤハーネス110の規制方向D16の湾曲に対する規制が若干緩められることとなる。この図6(B)に示されている状態が、湾曲規制部材130における車体側保持部150の近傍の一部についての限界状態となっている。
このように、本実施形態では、湾曲規制部材130において、許容方向D13及び規制方向D16の何れにも湾曲していない略直線状態で、複数の部材片131の相互間の間隔が配列方向(長さ方向D17)に異なっている。即ち、図5(B)に示されているように、車体側保持部150の近傍の一部を除く略全長に亘る部分では、略直線状態での部材片131の間隔は略ゼロとなっており、車体側保持部150の近傍の一部では、図6(A)に示されているような間隙d11,d12が開く。その結果、湾曲規制部材130では、車体側保持部150の近傍の一部と、その他の部分と、の2箇所において、規制方向D16の湾曲に対する限界状態が上記のように異なることとなっている。
以上に説明した第1実施形態の湾曲規制部材130は、上記の許容方向D13には湾曲可能である。一方、その反対側となる規制方向D16には、複数の部材片131のうち湾曲箇所において隣接するもの同士が連結部132とは反対側で互いに当接することで湾曲不能となっている。そして、給電装置1では、ワイヤハーネス110の湾曲を規制したい所望の方向に、湾曲規制部材130が湾曲不能となるように、この湾曲規制部材130がワイヤハーネス110に沿うように配置されている。これにより、ワイヤハーネス110について、その所望の方向を規制方向D16として、湾曲を規制することができる。その結果、スライドドア50の開閉時に、車体60の近傍においてワイヤハーネス110が次のような好ましい位置に配される。
図7は、スライドドアの開閉時に、車体の近傍においてワイヤハーネスが好ましい位置に配される様子を、図1中のV13−V13断面の断面図で表した図である。
上述したようにスライドドア50の開閉時に略U字形状となるワイヤハーネス110の、U字における車体60側の腕に相当する部分は、車体60の内側へと向かう規制方向D16の湾曲が湾曲規制部材130によって規制される。このように湾曲が規制されたワイヤハーネス110は、図7に示されているように、コルゲートチューブ120や湾曲規制部材130とともに、車体60におけるステップ61よりも若干外側に位置することとなる。このように、本実施形態では、スライドドア50の開閉時における車体60の内側のステップ61側へのワイヤハーネス110が膨みが抑えられることとなる。
また、本実施形態では、湾曲規制部材130をなす複数の部材片131では、湾曲規制部材130の少なくとも中途においては、湾曲規制部材130が略直線状態にあるときに、隣接するもの同士が連結部132とは反対側で互いに当接している。
給電装置1では、ワイヤハーネス110において、スライドドア50の開閉時にステップ61に近づくのは、その中途となる。本実施形態の湾曲規制部材130によれば、このワイヤハーネス110の中途に沿った部分について、規制方向D16への湾曲を殆どゼロに抑えることができるので、上記のようなワイヤハーネス110の膨らみを殆ど無くすことができる。
また、本実施形態では、湾曲規制部材130において、許容方向D13及び規制方向D16の何れにも湾曲していない略直線状態で、複数の部材片131の相互間の間隔が、車体側保持部150の近傍の一部と、それ以外の部分と、で異なるように設定されている。これにより、湾曲規制部材130における規制方向D16の湾曲に対する限界状態が、複数の部材片131の配列方向について、上記の2箇所で異なることとなっている。これにより、規制方向D16に各限界状態まで湾曲規制部材130が湾曲したときの形状は、単純な直線形状や円弧形状ではなく、各箇所での間隔に応じた、図1に示されているような形状となる。このように、本実施形態では、規制方向D16に各限界状態まで湾曲規制部材130が湾曲したときの形状を、上記のように給電装置1におけるワイヤハーネス110の設置状況に応じた所望の形状とすることができる。
このように限界状態まで湾曲したときの形状については、複数の部材片131の相互間の間隔をどのように設定するかに応じて、設計段階で任意の形状とすることができる。例えば、規制方向D16に湾曲させる力がワイヤハーネス110に掛かる際にワイヤハーネス110にとらせたい形状(本実施形態では、図1に示されている形状)に応じて、設計段階において所望の間隔を設定することができる。このように設計段階での部材片131の相互間の間隔の設定により、上記の規制方向D16に各限界状態まで湾曲したときの形状を所望の形状とすることができる。
また、本実施形態の湾曲規制部材130では、複数の部材片131と連結部132とが、互いに一体に成型されている。これにより、湾曲規制部材130の組立て作業等が不要であり、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の湾曲規制部材130では、複数の部材片131それぞれが、ワイヤハーネス110を相互間に挟んで互いに対向する一対の対向壁1311と、それら一対の対向壁1311同士を繋ぐ結合壁1312と、を備えている。その結果、各部材片131は、ワイヤハーネス110の長さ方向D17と交差する断面の形状が略C字状の部材となっている。これにより、例えば略C字状の断面形状を有する各部材片131をワイヤハーネス110に被せるようにして湾曲規制部材130をワイヤハーネス110に容易に沿わせることができる。
ここで、本実施形態では、図1を参照して説明したように、スライドドア50の開放の初期段階で、ワイヤハーネス110が速やかにU字形状に形作られる。このようなU字形状の形成は、スライドドア50から離れるとともに開方向D111とは逆方向に車両5の前方側へと向かうようにワイヤハーネス110の揺動を促がすことで行われる。そのために、ワイヤハーネス110の揺動に関する参考例では、スライドドア50から離すとともにスライドドア50の開方向D111とは逆方向に向かわせるようにワイヤハーネス110を付勢するコイルバネがドア側保持部140に設けられている。しかしながら、この参考例に対し、本発明にかかる第1実施形態では、スライドドア50の開放の初期段階で、上記のようにワイヤハーネス110の揺動を促す構造が、コイルバネを用いない後述の別構造となっている。
図8は、スライドドアが開かれるときにワイヤハーネスの揺動を、コイルバネを用いて促す参考例の構造と、それに対する第1実施形態の構造と、を示す模式図である。図8(A)には、参考例の給電装置1で採用されているドア側保持部140の構造を表す模式図が示されている。また、図8(B)には、第1実施形態のドア側保持部140’の構造を表す模式図が示されている。尚、図8(B)では、図8(A)に示されている参考例のドア側保持部140と同様の構成要素については、図8(A)と同じ符号が付されている。
まず、参考例のドア側保持部140は、図8(A)に示されているように、スライドドア50に固定される固定部142と、この固定部142に、図1にも示されているドア側揺動軸141回りに揺動自在に支持されている揺動部143と、を備えている。ワイヤハーネス110を覆うコルゲートチューブ120のスライドドア50側の端部が揺動部143に固定されることで、ワイヤハーネス110のスライドドア50側が揺動部143に保持されている。そして、ドア側揺動軸141回りにはコイルバネ144が設けられている。このコイルバネ144によって、揺動部143、即ち、ワイヤハーネス110を、スライドドア50から離れるとともに開方向D111とは逆方向に車両5の前方側へと向かわせるような付勢方向D12に付勢されている。このコイルバネ144により、付勢方向D12にワイヤハーネス110の揺動が促される。
これに対し、図8(B)に示されている第1実施形態のドア側保持部140’では、上記のような付勢のためのコイルバネは設けられていない。その代わりに、ワイヤハーネス110のドア側揺動軸141回りの位置を規制する規制部145が設けられている。この規制部145は、スライドドア50の全閉時に、ドア側揺動軸141回りにおけるスライドドア50の開方向D111の前方側の位置を次のように規制する。即ち、規制部145は、この位置を、ワイヤハーネス110とスライドドア50とがドア側揺動軸141回りに所定角度以上の鋭角θをなすように規制する。この位置規制は、スライドドア50が閉方向D112に閉じられるときの、ワイヤハーネス110の揺動方向D18への揺動を、ワイヤハーネス110とスライドドア50とが上記の鋭角θをなす位置で規制部145が留めることで行われる。
この第1実施形態のドア側保持部140’では、スライドドア50の全閉時には、ワイヤハーネス110とスライドドア50とがドア側揺動軸141回りに上記の鋭角θをなしており、ワイヤハーネス110がスライドドア50に対してある程度傾いた状態となっている。これにより、ワイヤハーネス110は、スライドドア50が開かれるときには、スライドドア50に対する傾き角が開く方向D19に速やかに揺動して、車体60側からスライドドア50側にかけて略U字状に湾曲した形状となる。このような形状となったワイヤハーネス110では、スライドドア50の移動中、上記の湾曲規制部材130による規制と相俟って、U字の一方の腕に相当する車体60側の部分における直線形状が良好に保たれる。その結果、スライドドア50の移動中、車体60側へと膨らむようなワイヤハーネス110の湾曲を一層規制することができる。
また、この第1実施形態のドア側保持部140’では、スライドドア50が開かれるときにおける上記のようなワイヤハーネス110の速やかな揺動が、上記の規制部145における規制によって促される。このため、ワイヤハーネス110をこのように揺動させるための付勢バネ等が不要であり、その構造の簡単化を図ることができる。
以上で、本発明の第1実施形態の説明を、その参考例も含めて終了し、次に、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態では、湾曲規制部材が、上述した第1実施形態の湾曲規制部材130と異なっている。他方、給電装置の構造等は、第1実施形態の給電装置1と同等である。そこで、以下では、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点である湾曲規制部材に注目して説明を行い、給電装置の構造等といった第1実施形態との同一点については説明を割愛する。
図9は、本発明の第2実施形態にかかる湾曲規制部材を示す図である。尚、この図9では、ワイヤハーネスや、スライドドアの開閉に伴うワイヤハーネスの変形にかかる各種方向等は、第1実施形態と同様であり、図1〜図8までに示されているものと同じ符号が付されている。また、図9の説明では、第1実施形態と同等なスライドドア等の各種構成要素を、特に図番を断らずに参照する。これは、後で参照する図10についても同様である。
第2実施形態の湾曲規制部材230は、第1実施形態と同様に、コルゲートチューブ120の内面と、ワイヤハーネス110との間に、ワイヤハーネス110を周方向に囲むように設けられている。湾曲規制部材230は、コルゲートチューブ120と略同じ長さを有している。図9では、湾曲規制部材230における右側の端部が車体60側であり、左側の端部がスライドドア50側となっている。
湾曲規制部材230は、ワイヤハーネス110に沿って配列された複数の部材片231と、これら複数の部材片231を隣接するもの同士連結する連結部232と、を備えている。本実施形態でも、複数の部材片231及び連結部232が、樹脂によって互いに一体に成型されている。図9には、図1にも示されているXY平面上で許容方向D13に曲げられてU字形状に湾曲したワイヤハーネス110に追随して、同様のU字形状に湾曲した湾曲規制部材230が示されている。連結部232は、ワイヤハーネス110がこのように湾曲したときにその湾曲形状における内側、即ち、図9に示されているように許容方向D13への湾曲時における湾曲形状の内側に位置するように、ワイヤハーネス110に沿って配置される可撓性部材である。
図10は、図9に示されている湾曲規制部材を構成する複数の部材片のうちの1つを代表例として示す図である。図10(A)には、部材片231の斜視図が示されており、図10(B)には、図10(A)中のV21−V21断面を示す断面図が示されている。
複数の部材片231それぞれは、この図10に代表例が示されているように、ワイヤハーネス110を相互間に挟んで互いに対向する一対の対向壁2311と、それら一対の対向壁2311同士を繋ぐ結合壁2312と、を備えている。各部材片231は、これら3つの壁により、ワイヤハーネス110の長さ方向D17と交差する断面の形状が、図10に示されているように略C字状に形成されている。
一対の対向壁2311の内の一方の対向壁2311aは、図10(A)に示されているように、ワイヤハーネス110の長さ方向D17に幅狭で、かつ薄肉に形成された矩形板となっている。これに対し、他方の対向壁2311bは、長さ方向D17に幅広で、かつ肉厚に形成された矩形板となっている。上記の一方の対向壁2311aは、他方の対向壁2311bにおける長さ方向D17の略中央部に対向している。
結合壁2312は、一方の対向壁2311aにおける図中下辺と、他方の対向壁2311bにおける図中下辺と、を繋いでいる。この結合壁2312は、図10(A)において上方から見下ろしたときの平面視で概ねT字状を有している。ワイヤハーネス110の長さ方向D17に延びたT字の横棒に対応する部分が幅広に形成され、長さ方向D17と交差してT字の縦棒に対応する部分が幅狭にかつ短めに形成されている。結合壁2312における幅狭の部分が上記の一方の対向壁2311aにおける図中下辺に繋がり、結合壁2312における幅広の部分が他方の対向壁2311bにおける図中下辺に繋がっている。
本実施形態では、複数の部材片231は、各部材片231において幅広肉厚の対向壁2311bから結合壁2312における幅広部分にかけて一連に繋がった逆L字形状の端面2313が互いに対向するように、ワイヤハーネス110に沿って配列されている。
本実施形態では、一対の対向壁2311のうちの幅狭薄肉の対向壁2311aが、図9に示されている湾曲規制部材230の湾曲形状における内側となるように、複数の部材片231が配列されている。そして、互いに隣接する部材片231における幅狭薄肉の対向壁2311a同士を、連結部232が連結している。また、連結部232は、図10(A)に示されているように板状の部材であって、図9の許容方向D13とその逆方向との何れにも撓むことができる程度の厚みで薄く形成されている。本実施形態では、連結部232は、幅狭薄肉の対向壁2311aと同厚に形成されている。
また、本実施形態でも、湾曲規制部材230において図9中の右側の端部、即ち、車体60側の端部に位置する部材片231aが、図1に示されている車体側保持部150に、コルゲートチューブ120の端部と一緒に保持されている。他方、湾曲規制部材230において図2中の左側の端部、即ち、スライドドア50側の端部に位置する部材片231bは、図1に示されているドア側保持部140には保持されていない。車体60側の部材片231aには、図9に示されているように、車体側保持部150にこの部材片231aを保持させるためのフランジ231a−1が設けられている。このフランジ231a−1の保持構造は、図4に示されている第1実施形態での保持構造と同等である。
この第2実施形態の湾曲規制部材230も、第1実施形態の湾曲規制部材130と同様に、許容方向D13には湾曲可能で、その許容方向D13とは反対側の規制方向D16については、限界状態以上には湾曲不能となっている。この湾曲不能状態は、ワイヤハーネス110が規制方向D16に曲がるように湾曲しようとしたときに、隣接する部材片231における逆L字形状の端面2313同士が当接することで生じるようになっている。そして、この第2実施形態の湾曲規制部材230も、第1実施形態の湾曲規制部材130と同様に、車体60側の一部と、その他の部分と、の2箇所で、部材片231の間隔が異なっており互いに異なる限界状態が設定されている。
そして、この湾曲規制部材230を、第1実施形態の湾曲規制部材130に替えて図1の給電装置1に適用しても、車体60の内側へと向かって膨らむ規制方向D16の湾曲を規制することができる。
尚、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の給電装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態では、本発明にいう湾曲規制部材の一例として、ワイヤハーネス110とともにコルゲートチューブ120に収められることで、ワイヤハーネス110の湾曲を誘導する湾曲規制部材130,230が例示されている。しかしながら、本発明にいう湾曲規制部材はこれに限るものではなく、例えば、結束紐やタイラップあるいはテープ等でワイヤハーネスに固定されることで、ワイヤハーネスの湾曲を誘導するもの等であってもよい。この場合は、コルゲートチューブを用いずに給電装置を構成してもよい。
また、前述した実施形態では、本発明にいう湾曲規制部材の一例として、複数の部材片131,231が、薄板状の連結部132,232で隣接するもの同士連結された湾曲規制部材130,230が例示されている。しかしながら、本発明にいう湾曲規制部材は、これに限るものではなく、連結部の形状については例えば棒状等であってもよく、その具体的な形状を問うものではない。
また、前述した実施形態では、本発明にいう湾曲規制部材の一例として、複数の部材片131,231と、連結部132,232と、が樹脂で一体に成型された湾曲規制部材130,230が例示されている。しかしながら、本発明にいう湾曲規制部材は、これに限るものではなく、例えば、樹脂製の複数の部材片と、金属板バネからなる可撓性の連結部とが、ネジ止め、接着固定、あるいはインサート成形等によって連結されたもの等であってもよい。
また、前述した実施形態では、本発明にいう湾曲規制部材の一例として、車体60側の一部と、その他の部分と、の2箇所で、部材片231の間隔が異なって規制方向D16の湾曲に対する限界状態が異なった湾曲規制部材130,230が例示されている。しかしながら、本発明にいう湾曲規制部材は、これに限るものではなく、例えばその全長に亘って部材片231の間隔が同一で1つの限界状態が設定されたものであってもよく、あるいは、3箇所以上で異なった限界状態が設定されたもの等であってもよい。ただし、部材片の間隔を異ならせて設定することで、湾曲規制部材、つまりは、ワイヤハーネスにおける規制方向の湾曲形状を任意の形状にできる点は上述したとおりである。
また、前述した実施形態では、規制方向D16の湾曲に対する限界状態を異ならせる手法の一例として、図6に示されているように、複数の部材片131の、配列方向の長さを異ならせて部材片131の間隔を異ならせる手法が例示されている。しかしながら、上記の限界状態を異ならせる手法は、これに限るものではなく、部材片の長さは同一とし、その間隔を異ならせる手法等であってもよい。何れの手法であっても、設計段階において、湾曲規制部材における上記2箇所以上での限界状態を適宜に設定することで、上記の規制方向への湾曲規制部材の湾曲形状を所望の形状とすることができる。
また、前述した実施形態では、本発明にいう部材片の一例として、一対の対向壁と結合壁とを備える断面が略C字形状となった部材片131,231が例示されている。しかしながら、本発明にいう部材片は、これに限るものではなく、例えば、断面が略L字形状となった部材片等であってもよい。本発明にいう部材片は、ワイヤハーネスが許容された許容方向へ湾曲するときには、隣接するもの同士が離隔し、ワイヤハーネスが規制方向へ湾曲しようとすると互いに当接するような形状であれば、その具体的な形状を問うものではない。