JP6558553B1 - 接着用組成物、および施工方法 - Google Patents

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【課題】 本発明は、コンクリート、モルタルの打継ぎにおいて、上塗材の重ね塗りを必要とせずに、乾燥、湿潤、油潤した様々な下地に対して優れた打継性能(優れた強度)を発現する、従来と比較して格段に汎用性が高いコンクリート、モルタル打継ぎに好適な接着用組成物を提供することを目的とする。【解決手段】 3級アミノ基を有するアクリル系モノマーを1〜30質量%含むモノマーから形成され、ガラス転移温度が−20〜50℃であるアクリル系ポリマーと、エポキシ系ポリマーと、中和剤と、有機溶剤と、水とを含有する、接着用組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、建築用途で使用する接着剤、特に既設のコンクリート、モルタル下地(以下、単に「下地」という。) に、新しいコンクリート、モルタルを打継ぐ用途に好適な接着剤に関する。
一般に下地に新しいコンクリートやモルタルを打ち継ぐ場合、接着面積や投錨効果を増大する目的で、該下地の表面を粗面にする。この方法は短期においてはある程度の効果は期待できるが、元々コンクリートやモルタルには接着性がないためいずれは剥離に至る。そこで、従来から、この剥離を防止するために予め下地にプライマー組成物を塗布してから打ち継ぐ方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂と液状クロロプレン重合体を主成分とするA剤と、ポリアミド樹脂を主成分とするB剤とを混合して成るプライマーが開示されている。
特許文献2には、エポキシ樹脂と、ポリアミン系硬化剤と、ポリサルファイドポリマーと、3級アミン化合物とを含有するプライマーが開示されている。
特許文献3には、エポキシ樹脂と、水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬化性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成る打ち継ぎ用接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献4には、アクリル・スチレン樹脂やエチレン・酢酸ビニル樹脂等のエマルジョン系接着剤の利用が開示されている。
特許文献5には、特定量のカルボキシル基含有重合性単量体(A)、特定量のアルコキシシラン基含有重合性単量体(B)、特定量のアミド基含有重合性単量体(C)、および前記単量体(A)〜(C)のいずれか1種以上と共重合可能な他の重合性単量体(D)を少なくとも共重合させて得られる共重合体を含む、プライマー用ラテックスが記載され、セメント硬化物にモルタル組成物を表面に付着させる際、前記ラテックスを利用する旨開示されている。
さらに特許文献6には、被着体に、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、末端アミノ化アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴムと、溶剤とを含有する塗り床用プライマー組成物を塗布し、該プライマー組成物が乾燥後、エポキシ系組成物で構成される上塗材を塗布することを特徴とする塗り床材の施工方法が開示されている。
特開昭51−053538号公報 特開2000−345101号公報 特開2009−263424号公報 特開昭62−206169号公報 特開2015−098514号公報 特開平02−140276号公報
鉱物油やグリースを多量に使用する金属加工工場や植物油を多量に使用する食品工場のような場所では、下地が長期にわたり油脂類に晒され、油脂類が下地のかなり深部にまで浸透している場合がある。下地表面をサンダー処理等によって清浄にしても、内部に浸透した油脂類を完全には除去することはできない。特許文献1に記載されるプライマーは、油脂類の浸透した下地(以下、油潤面という)に適用するために提案されたものである。
一方、下地の中には長期にわたり水に晒され、水が下地のかなり深部まで浸透している場合もある。あるいは、打継ぎの前に下地表面の劣化した脆弱層や汚れを高圧水によって洗浄・除去することも多く、この場合洗浄水が下地の内部に浸透してしまう。特許文献2〜4に記載されるプライマーは、水の浸透した下地(以下、湿潤面という)に適用するために提案されたものである。
特許文献1に記載される油潤面用のプライマーは、湿潤面には適用できないという問題があった。
特許文献2〜4に記載される湿潤面用のプライマーは油潤面には適用できないという問題があった。
また、特許文献5に記載されるラテックスは、セメント硬化物の表面にモルタル組成物を付着させた後の水中における接着性や低温での接着性の向上を目指して提案されたものである。しかし、特許文献5に記載されるラテックスは油潤面には適用できないという問題があった。
なお、特許文献6に記載されるプライマーは、湿潤面にも油潤面にも適用できることが示唆されてはいる。しかし、特許文献6に記載されるプライマーは、上塗材とセットで使用されるものである。しかも接着の対象である被着体の対向する両面に、プライマーと上塗材とをそれぞれ1セットずつ塗布する必要があり、施工後の状態は、被着体/プライマー/上塗材/上塗材/プライマー/被着体となる。つまり、特許文献6に記載されるプライマーは、上塗材にとっての下塗材という意であり、施工には2種類の塗材を必要とするという問題があった。
本発明は、コンクリート、モルタルの打継ぎにおいて、上塗材の重ね塗りを必要とせずに、乾燥、湿潤、油潤した様々な下地に対して優れた打継性能(優れた強度)を発現する、従来と比較して格段に汎用性が高いコンクリート、モルタル打継ぎに好適な接着用組成物を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題に鑑み成されたものであり、特定のアクリル系ポリマーと、エポキシ系ポリマーとを含有する、下記(1)〜(5)の接着用組成物に関し、さらに下記(6)〜(7)の施工方法に関する。
(1) 3級アミノ基を有するアクリル系モノマーを1〜30質量%含むモノマーから形成され、ガラス転移温度が−20〜50℃であるアクリル系ポリマーと、エポキシ系ポリマーと、中和剤と、有機溶剤と、水とを含有する、接着用組成物。
(2) 3級アミノ基を有するアクリル系モノマーを1〜30質量%含むモノマーから形成され、ガラス転移温度が−20〜50℃であるアクリル系ポリマーと、中和剤と、有機溶剤とを含有する、アクリル系ポリマー溶液、
エポキシ系ポリマーと、有機溶剤とを含有する、エポキシ系ポリマー溶液、
および水を含有する、前記(1)記載の接着用組成物。
(3) アクリル系ポリマー100質量部に対し、エポキシ系ポリマーを5〜50質量部含む、前記(1)または(2)に記載の接着用組成物。
(4) 有機溶剤と水とを合計で10〜60質量%含む、前記(1)〜(3)いずれかにに記載の接着用組成物。
(5) 有機溶剤と水との割合が、有機溶剤:水=30〜90:10〜70(質量比)である、前記(1)〜(4)いずれかに記載の接着用組成物。
(6) 既設の建築用下地に、前記(1)〜(5)いずれかに記載の接着用組成物を塗工した後、新しいコンクリートまたは新しいモルタルを打ち継ぐ施工方法。
(7) 既設の建築用下地に、新しいコンクリートまたは新しいモルタルに前記(1)〜(5)いずれかに記載の接着用組成物を混合した混合物を打ち継ぐ施工方法。
本発明により、乾燥、湿潤、油潤した様々な下地に対して優れた打継性能(優れた強度)を発現できるので、下地に合わせた接着剤の使い分けが不要となる。また、上塗材を重ね塗りする必要もないので、施工が簡便になり、作業効率が向上する。
本発明の接着用組成物は、前述の通り、アクリル系ポリマーとエポキシ系ポリマーと中和剤と有機溶剤と水とを含有し、様々な状態のコンクリートに対し優れた打継性能を発現できる。
<アクリル系ポリマー>
本発明におけるアクリル系ポリマーは、3級アミノ基を有するアクリル系モノマーを必須とするモノマーを重合してなるものである。3級アミノ基を有するアクリル系モノマーとしては、ジアルキルアミノ基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。アクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマーと中和剤と有機溶剤とを含むアクリル系ポリマー溶液の状態で、後述するエポキシ系ポリマー溶液と混合し、使用することが好適である。
本発明でいうモノマーとは、ラジカル重合し得るエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいう。また、アクリル系モノマーとは、アクリロイル基、および/またはメタクリロイル基を有するモノマーの略である。
従って、本発明でいうモノマーには、3級アミノ基を有するアクリル系モノマーの他に、3級アミノ基を有しないアクリル系モノマー、アクリル系モノマー以外のモノマーを含む。
3級アミノ基を有しないアクリル系モノマーおよびアクリル系モノマー以外のモノマーとしては、水酸基等の官能基を有しない(メタ)アクリレート系モノマー、芳香環を有するもの、水酸基を有するもの、カルボキシル基を有するもの、アミド基を有するもの、エポキシ基を有するもの、脂環構造を有するもの、(メタ)アクリル酸アルコキシエステル、ビニルエステルなどが挙げられる。モノマーは、2種類以上使用することが好ましい。
なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意であり、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタクリル酸の意である。
3級アミノ基を有するアクリル系モノマーとしては、公知の化合物を使用でき例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル等のような(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエステルが挙げられる。本発明では、後述するようにエポキシ系ポリマー溶液(B)と混合し水で希釈する際の相溶性、湿潤面および油潤面における接着強度のバランスからモノマー100質量%中に1〜30質量%であることが重要であり、5〜20質量%であることが好ましい。
水酸基等の官能基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとしては、公知の化合物を使用でき、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香環を有するモノマーとしては、公知の化合物を使用でき例えば、フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、公知の化合物を使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。
アミド基を有するモノマーとしては、公知の化合物を使用でき例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマーとしては、公知の化合物を使用でき例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂環構造を有するモノマーとしては、公知の化合物を使用でき例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシエステルとしては、公知の化合物を使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、公知の化合物を使用でき、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。
また、本発明においてモノマーは、接着力保持の点から、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−20〜50℃となるようにその種類と量とを選択することが重要であり、0〜40℃となるように選択することがより好ましい。
なお、本発明において、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、後述するように示差走査熱量計(DSC)によって求めることができる。
アクリル系ポリマーは、モノマーを有機溶剤中で重合開始剤を用いて重合することにより得ることができる。重合の際には分子量調節のために連鎖移動効果を有する化合物を使用することもできる。
有機溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、ケトン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素は、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン等の公知の化合物が挙げられる。
脂環族炭化水素は、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン、α−ピネン、ターピノーレン、リモネン等の公知の化合物が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベントナフサ等の公知の化合物が挙げられる。
エステルは、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等の公知の化合物が挙げられる。
アルコールは、例えばn−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の公知の化合物が挙げられる。
ケトンは、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の公知の化合物が挙げられる。ケトンは、連鎖移動の機能も有する。
本発明において有機溶剤は、上記の中で単独または2種類以上併用でき、接着用組成物の塗工性を考慮して有機溶剤を選択することができる。
アクリル系ポリマーを得る際に使用されるラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられる。
アゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物は、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
重合開始剤は、単独または2種類以上併用できる。
連鎖移動効果を有する化合物としては、上述のケトン系有機溶剤の他、チオール、粘着付与樹脂等が挙げられる。
チオールは、例えばメルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の公知の化合物が挙げられる。
粘着付与樹脂は、例えばロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。
連鎖移動効果を有する化合物は、単独または2種類以上併用できる。
アクリル系ポリマー中の3級アミノ基の中和に用いられる中和剤としては、塩酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などの無機酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸等の有機酸、臭化エチル、臭化ブチル、臭化ベンジル、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、沃化メチルなどのアルキルハライド又はアラルキルハライド、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルなどの無機酸エステル、エピクロヒドリン、エピブロムヒドリンなどのエピハロヒドリンなどが挙げられる。ギ酸や酢酸などの有機酸を使用することが好ましい。
中和剤の量は、接着用組成物の水による希釈し易さ、粘度、およびアクリル系ポリマーとエポキシ系ポリマーとの反応性の点から、3級アミノ基に対して、官能基数で50〜300%が好ましく、75〜200%がより好ましい。
<エポキシ系ポリマー>
本発明において用いられるエポキシ系ポリマーは、平均して1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する液状又は固形状樹脂であれば何でも良く、更にこれらを混合したものでも良い。エポキシ系ポリマーは、エポキシ系ポリマーと有機溶剤とを含むエポキシ系ポリマー溶液の状態で、前述のアクリル系ポリマー溶液と混合し、使用することが好適である。
エポキシ系ポリマーは例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;
P−ヒドロキシ安息香酸の様なヒドロキシルカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;
フタル酸、テレフタル酸の様なポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル;
その他に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂更にはエポキシ化ポリオレフィン、脂環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エポキシ系ポリマー溶液に用いられる有機溶剤としては、アクリル系ポリマーの場合に例示したものが同様に例示できる。
<接着用組成物>
本発明の接着用組成物は、前述のアクリル系ポリマー溶液とエポキシ系ポリマー溶液とを混合し、水で希釈することによって得ることができる。水で希釈することによって、湿潤面にも新設のコンクリート等を強固に打ち継ぐことができる。
本発明の接着用組成物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、エポキシ系ポリマーを5〜50質量部含むことが好ましく、15〜25質量部がより好ましい。
有機溶剤および水の含有量は限定されないが、不揮発分を30質量%に調整したときに、25℃における粘度が100〜2000mPa・sとなるように、その量を調整することが好ましく、200〜800mPa・sがさらに好ましい。このような粘度の接着剤とするには、例えば、有機溶剤と水とを合計で10〜60質量%含むことが好ましく、有機溶剤と水との割合は、有機溶剤:水=20〜90:10〜70(質量比)であることが好ましい。
このような不揮発分および粘度を満たした接着用組成物は、塗工性が向上する。なお、粘度は、アクリル系ポリマー溶液とエポキシ系ポリマー溶液と水とを混合し60分後、25℃雰囲気下、BL型粘度計を使用して、#3ローター、回転数12rpmで回転開始1分後に測定した粘度である。
本発明の接着用組成物は、さらに任意成分として難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤を含むことができる。
本発明の接着用組成物は、既設のコンクリートや既設のモルタルに塗工し、新しいコンクリートや新しいモルタルを打ち継ぐ場合に使用できる。接着剤の塗工方法は、例えば刷毛やコテ、ロール、吹付等の公知の塗工方法を使用できる。接着剤の厚さは、コストと接着性能のバランスを考慮し10〜200μm程度が好ましい。
さらに、本発明の接着用組成物を新しいコンクリート中や新しいモルタル中に混合した接着剤含有コンクリート等を、既設のコンクリートや既設のモルタルに打ち継ぐこともできる。
打ち継いだものは、例えば建造物の柱および壁や床、屋外舗装道路および敷地、トンネル、橋等、様々な用途に使用できる。
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
<モノマー>
DM:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
DE:メタクリル酸ジエチルアミノエチル
St:スチレン
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート

<重合開始剤>
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル

<有機溶剤>
EC:エチルセロソルブ
BC:ブチルセロソルブ
IPA:イソプロピルアルコール
以下で使用する略号は以上のとおりである。
<不揮発分の測定>
試料溶液約1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥して、残分を秤量して残率計算をし、不揮発分(不揮発分濃度)とした。
<分子量(Mw)の測定>
質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定機器として、東ソー社製GPC「HPC−8020」を用いた。カラムは、東ソー社製SuperHM−MおよびSuperHM−Lを直列に2本連結したものを用いた。溶媒(溶離液)としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して、40℃にて測定した。なお、質量平均分子量(Mw)は、いずれもポリスチレンを標準とした換算値とした。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)による測定により決定した。ロボットDSC(示差走査熱量計、セイコーインスツルメンツ社製「RDC220」)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して、測定に使用した。
各合成例で得られたアクリル重合体の溶液を、ポリエステル製の剥離性フィルム基材に塗工・乾燥し、乾燥したものを測定用試料として用いた。測定用試料10mgを上記示差走査熱量計にセットし、100℃の温度で5分間保持した後、液体窒素を用いて−120℃まで急冷した。その後、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃まで昇温してDSC測定を行った。得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg)(単位:℃)を決定した。
「合成例1」
St:48部、2EHA:22部、2HEA:20部、およびDM:10部を、BC:50部中で、AIBNを用いて重合し、質量平均分子量(Mw):15000、ガラス転移温度:20℃のアクリル系ポリマーを得、希釈用溶剤としてBC:15部、EC:40部、IPA:40部、および中和剤として酢酸:5部を加え、不揮発分:40%のアクリル系ポリマー溶液[A1]を得た。アクリル系ポリマー溶液[A1]は、約100部のアクリル系ポリマーに対して、BC:65部、EC:40部、IPA:40部、酢酸:5部を含む。
「合成例2〜9、13〜16」
モノマー種とその量、中和剤の種類とその量、有機溶剤の量を表1に示す通りに変更した以外は、合成例1と同様の方法で、質量平均分子量(Mw)が15000、ガラス転移温度が−25〜55℃のアクリル系ポリマーを含む、不揮発分が40%の溶液[A2]〜[A9]、[A13]〜[A16]を得た。
「合成例10、11」
AIBNの量を変えた以外は合成例1と同様にして、質量平均分子量(Mw)が30000と7500の不揮発分:40%のアクリル系ポリマー溶液[A10]と[A11]を得た。
「合成例12」
重合時の溶剤としてBC:30部、希釈剤としてEC:40部、IPA:40部、水:35部を用いた以外は、合成例1と同様にして、質量平均分子量(Mw):15000、ガラス転移温度:20℃のアクリル系ポリマーを含む、不揮発分が40%の溶液[A12]を得た。
なお、アクリル系ポリマーの溶液[A12]とアクリル系ポリマーの溶液[A1]とは、同じ組成・ガラス転移温度・質量平均分子量のアクリル系ポリマーを溶解している溶剤組成が異なるものである。
「実施例1」
合成例1記載のアクリル系ポリマー溶液100部(アクリル系ポリマーを約40部含む)に対して、エポキシポリマー溶液[B1]としてビスフェノールA型液状エポキシ系ポリマー(JER828 三菱化学(株)製 エポキシ当量184〜194)の不揮発分約70%のエチルセロソルブ溶液を20部(前記エポキシ系ポリマーを約14部含む)、および希釈剤として水60部を添加し、充分攪拌後、接着剤を得た。この接着剤の不揮発分は30%であった。
後述する方法に従い、乾燥面、湿潤面、油潤面のコンクリートの打継強度を評価した。
「実施例2〜11」
表2に示す通りアクリル系ポリマー溶液を変更した以外は実施例1と同様の方法で不揮発分が30%の接着剤を得、同様に評価した。
「実施例12〜14」
表2に示す通り、希釈剤を変更した以外は実施例1と同様の方法で不揮発分が30%の接着剤を得、同様に評価した。
「実施例15〜16」
エポキシポリマー溶液として、前記[B1]の代わりに、
実施例15ではエポキシポリマー溶液[B2]としてビスフェノールA型固体エポキシ系ポリマー(JER1002 三菱化学(株)製 エポキシ当量600〜700)の不揮発分約70%のエチルセロソルブ溶液)を、
実施例16ではフェノールノボラック型液状エポキシ系ポリマー(JER154 三菱化学(株)製 エポキシ当量176〜180)の不揮発分約70%のエチルセロソルブ溶液)を、
それぞれを用いた以外は、実施例1と同様にして不揮発分が30%の接着剤を得、同様に評価した。
「実施例17〜18」
表2に示す通り、混合するエポキシポリマー溶液[B1]の量と希釈剤の量を変更した以外は実施例1と同様の方法で不揮発分が30%の接着剤を得、同様に評価した。
「比較例1〜5」
表2に示す通りアクリル系ポリマー溶液及び希釈剤を変更した以外は実施例1と同様の方法で不揮発分が30%の接着剤を得、同様に評価した。
「比較例6」
ビスフェノールA型液状エポキシ系ポリマー(JER828、三菱化学(株)製):100部、クロロプレンゴム:90部、ノニルフェノール10部、キシレン樹脂:20部、及びメチルイソブチルケトン20部を混合して第1液を得た。
ポリアミドアミン樹脂(ラッカマイド TD−984、DIC(株)製):120部、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール5部、酸化亜鉛5部、重質炭酸カルシウム粉末50部、キシレン樹脂(ニカノール Y-100、フドー(株)製)20部、ジオクチルフタレート25部及びトルエン25部を混合して第2液を得た。
第1液と第2液とを混合し接着剤を得、実施例と同様に評価した。
「比較例7」
ビスフェノールA型液状エポキシ系ポリマー(JER828 三菱化学(株)製):100部、変性脂肪族ポリアミン樹脂(ラッカマイド WH-614(株)製):6部、液状ポリサルファイド(チオコールLP-3 東レ(株)製):10部、及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール:1部を混合し接着剤を得、実施例と同様に評価した。
「比較例8」
メチルメタクリレート(MMA)396質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)577質量部、メタアクリル酸(MAA)20 質量部、アクリルアミド(AAm)2質量部、およびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5質量部を、ノニオン性乳化剤の存在下に、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いて乳化重合した後、アンモニア水を用いてpHを8に調整し、不揮発分が約46%の接着剤を得、実施例と同様に評価した。
[強度評価]
300mm×300mm×60mmのコンクリート平板の300mm×300mmの表面をサンダー処理によって表面の脆弱部を除去し、乾燥コンクリート下地とした。
<乾燥面>
前記乾燥コンクリート下地に、接着剤を溶液の状態で150g/m2になるよう刷毛を使用して塗工した。20℃雰囲気下にて1時間乾燥させた後、金鏝を用いてモルタルを10mm厚で施工し、打継を行ったサンプルを20℃雰囲気にて28日間養生させ、モルタル表面をサンドペーパー#80にて十分に研磨し、40mm×40mmの鋼製治具をエポキシ系接着剤にて接着し、接着剤硬化後にダイヤモンドカッターにて鋼製治具の周囲にコンクリート平板に達する切込みを入れ建研式付着力試験器にて接着力を測定し、以下に示す基準にて評価する。
○:全面コンクリートまたはモルタル破断となり、コンクリートとモルタル間の接着剤の界面剥離、凝集破壊なく良好
△:コンクリートと接着剤の界面の露出が5%未満で実用下限
×:コンクリートと接着剤の界面の露出が5%以上である、または接着剤層の凝集破壊のため実用不可
<湿潤面>
前記乾燥コンクリート下地を、水中に48時間浸漬し、ウエスで表面をふき取った後、乾燥面の場合と同様に、接着剤を塗工した後、モルタルを施工し、評価した。
<油潤面>
前記乾燥コンクリート下地を、油中(植物油:動物油=1:1(質量比)に48時間浸漬し、ウエスで表面をふき取った後、乾燥面の場合と同様に、接着剤を塗工した後、モルタルを施工し、評価した。
Figure 0006558553
Figure 0006558553
表2の実施例から、本発明の接着剤は、乾燥、湿潤、油潤面において優れた接着性能を発現することが分かる。
それに対して、比較例1に示すように3級アミノ基を有するアクリル系モノマーが少ない(0.5質量%)と水との相溶性が低下することで湿潤面での接着性が劣り、比較例2に示すように3級アミノ基を有するアクリル系モノマーが多い(40質量%)と油との相溶性が低下することで油潤面での接着性が劣る。比較例3に示すように、アクリル系ポリマーのガラス転移温度が低い(Tg:−25℃)と接着剤としての弾性が小さいので、乾燥面、湿潤面、油潤面のいずれの場合も接着性能が劣る。比較例4に示すように、アクリル系ポリマーのガラス転移温度が高い(Tg:55℃)と接着剤の粘性が小さいので、乾燥、面、湿潤面、油潤面のいずれの場合も接着性能が劣る。比較例5は、接着剤が水を含有していないので、湿潤面に対しての接着剤の濡れ性が低く、コンクリートに対しての投錨性が弱いため接着性が劣る。
比較例6は、水との親和性が低い樹脂を含むことで湿潤面に対しての接着剤の濡れ性が低く、コンクリートに対しての投錨性が弱いため接着性が劣る。比較例7は、水との親和性を高めたため油との相応性が低く油潤面での接着性が劣る。比較例8の接着剤は、油との親和性が低いので、油潤面に対しての濡れ性が低く、コンクリートに対しての投錨性が弱いため接着性が劣る。
本発明の接着用組成物は、コンクリートやモルタルの打継に使用できる他、床、屋根、ベランダ、外壁等の補修の際の下塗剤としても利用できる。

Claims (8)

  1. 3級アミノ基を有するアクリル系モノマーを1〜30質量%含むモノマーから形成され、ガラス転移温度が−20〜50℃であるアクリル系ポリマーと、エポキシ系ポリマーと、中和剤と、有機溶剤と、水とを含有し、コンクリートまたはモルタルの打継ぎに用いられる、接着用組成物。
  2. 前記モノマーが、さらに、官能基を有しない(メタ)アクリル系モノマー、芳香環を有するモノマー、および水酸基を有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の接着用組成物。
  3. アクリル系ポリマー100質量部に対し、エポキシ系ポリマーを5〜50質量部含む、請求項1または2記載の接着用組成物。
  4. 有機溶剤と水とを合計で10〜60質量%含む、請求項1〜3いずれか1項に記載の接着用組成物。
  5. 有機溶剤と水との割合が、有機溶剤:水=30〜90:10〜70(質量比)である、請求項1〜4いずれか1項に記載の接着用組成物。
  6. 3級アミノ基を有するアクリル系モノマーを1〜30質量%含むモノマーから形成され、ガラス転移温度が−20〜50℃であるアクリル系ポリマーと、中和剤と、有機溶剤とを混合してアクリル系ポリマー溶液を得る工程、ならびに、
    エポキシ系ポリマーと、有機溶剤とを含有する、エポキシ系ポリマー溶液、該アクリル系ポリマー溶液、および、水を混合する工程を含む、請求項1〜5いずれか1項に記載の接着用組成物の製造方法。
  7. 建築用下地に、請求項1〜いずれか1項に記載の接着用組成物を塗工した後、コンクリートまたは新しいモルタルを打ち継ぐ施工方法。
  8. コンクリートまたはモルタルに請求項1〜いずれか1項に記載の接着用組成物を混合した混合物を、建築用下地に打ち継ぐ施工方法。
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