JP6558421B2 - セルロースシート - Google Patents

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本発明は、耐水性セルロース繊維及びその製造方法、セルロースシート及びその製造方法に関する。
セルロース繊維はヒドロキシ基を有するため、親水性を有するが、紙等のセルロースシートを製造する場合や、そのシートを使用する際にはその親水性が問題となる場合がある。例えば、親水性が高いと、セルロース繊維の水系スラリーからシートを形成する際、湿紙の強度が十分でなく、搾水のためのプレスを行う際、湿紙が崩れる場合がある、また湿潤状態で紙の強度が低下する傾向にある。
そこで、湿潤状態での強度低下を抑制するために、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン又はそれらの誘導体を湿潤紙力増強剤として添加することがある(特許文献1〜4)。この方法では、前記湿潤紙力増強剤を介してパルプ繊維間が架橋されることで、強度低下が抑制できるとされている。
また、湿潤状態での強度低下を抑制する方法として、セルロース繊維を化学修飾する方法が知られている。例えば、セルロース繊維にニトロキシラジカルと臭化ナトリウムとを添加した後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加し、セルロース繊維のヒドロキシ基をアルデヒド基に酸化した後、繊維間結合物質を加えてシート化する方法が開示されている(特許文献5)。シート製造工程で加熱されることにより、アルデヒド基を起点として、セルロース間の架橋反応、またはセルロースと繊維間結合物質間の架橋反応が起こり、強度低下を抑制できるとされている。
特開2010−024608号公報 特開2003−239198号公報 特開2010−063418号公報 特開2003−023880号公報 特開2006−241601号公報
特許文献1〜4に記載の方法では、湿潤紙力の発現には紙の乾燥工程が必須である。しかし、セルロース繊維の水系スラリーからシートを形成する際には、まだ加熱されていないため、湿潤紙力は発現していない。そのため、シート化の過程で搾水のためにプレス処理をした際にシートが崩れ易い傾向にあった。また、得られるセルロースシートは再湿潤した際にヤング率が低くなる傾向にあった。
特許文献5に記載の方法では、特許文献1〜4に記載の方法と同様に紙の乾燥工程が必須であるため、シート形成時には湿潤紙力が発現しない、また、触媒を用いた酸化反応でアルデヒド基を導入するが、酸化が進み過ぎるとアルデヒド基がカルボキシ基まで変換されてしまうため、湿潤紙力向上効果は限定的な置換基量範囲でしか発現しないという難点があった。
本発明は、加熱工程を経なくても耐水化されており、また、湿潤状態での引張強度及びヤング率が共に高いセルロースシートを作製できる耐水性セルロース繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、湿潤状態での強度及びヤング率が共に高いセルロースシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]平均繊維長が2.0mm以下及び平均繊維幅が50μm以下のセルロース繊維であって、セルロース分子のヒドロキシ基の少なくとも一部にリン酸基が導入され、該リン酸基にアルミニウムイオンが結合している、耐水性セルロース繊維。
[2][1]に記載の耐水性セルロース繊維を含有する、セルロースシート。
[3]セルロース繊維にリン酸基を導入してリン酸変性セルロース繊維を得るリン酸基導入工程と、前記リン酸変性セルロース繊維を、平均繊維長が2.0mm以下及び平均繊維幅が50μm以下になるようにフィブリル化処理又は微細化処理して機械処理リン酸変性セルロース繊維を得る機械処理工程と、前記機械処理リン酸変性セルロース繊維にアルミニウムイオンを結合させるアルミニウムイオン結合工程とを有する耐水性セルロース繊維の製造方法。
[4]前記リン酸基導入工程では、リン酸変性セルロース繊維におけるリン酸基導入量を0.1〜3.8mmol/gにする、[3]に記載の耐水性セルロース繊維の製造方法。
[5][3]又は[4]に記載の耐水性セルロース繊維の製造方法により製造した耐水性セルロース繊維を抄紙する抄紙工程を有する、セルロースシートの製造方法。
本発明によれば、加熱工程を経なくても耐水化されており、また、湿潤状態での引張強度及びヤング率が共に高いセルロースシートを作製できる耐水性セルロース繊維及びその製造方法を提供できる。
本発明のセルロースシートは、湿潤状態での強度及びヤング率が共に高い。
本発明のセルロースシートの製造方法によれば、上記の効果を有するセルロースシートを容易に製造できる。
<耐水性セルロース繊維及びその製造方法>
(耐水性セルロース繊維)
耐水性セルロース繊維は、セルロース分子のヒドロキシ基の少なくとも一部にリン酸基が導入され、該リン酸基にアルミニウムイオンが結合しているセルロース繊維である。すなわち、該耐水性セルロース繊維は、リン酸基を有するセルロース繊維のアルミニウム塩である。
[繊維幅]
耐水性セルロース繊維の平均繊維幅は、平均繊維幅が50μm以下のセルロースである。耐水性セルロース繊維の平均繊維幅は2nm〜40μmが好ましく、2nm〜30μmがより好ましい。耐水性セルロース繊維の平均繊維幅が前記上限値を超えると、該耐水性セルロースから得られるセルロースシートの引張強度及びヤング率が低くなる。一方、耐水性セルロース繊維の平均繊維幅が前記下限値未満であると、もはや繊維とは言えず、溶解している。
耐水性セルロース繊維の平均繊維幅は、例えば、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用い、繊維幅(Width)を測定することにより求めることができる。また、繊維の幅に応じて走査型電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を用いて測定することもできる。
[繊維長]
耐水性セルロース繊維の平均繊維長は2.0mm以下であり、1.5mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがより好ましい。耐水性セルロース繊維の平均繊維長が前記上限値以下であれば、乾燥状態でのセルロースシートの引張強度及びヤング率をより高くすることができ、湿潤状態でのセルロースシートの引張強度及びヤング率もより高くなる。
平均繊維長は、例えば、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用い、長さ加重平均繊維長を測定することにより求めることができる。また、繊維の長さに応じて走査型顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を用いて測定することもできる。
(耐水性セルロース繊維の製造方法)
本発明の耐水性セルロース繊維の製造方法は、少なくともリン酸基導入工程と機械処理工程とアルミニウムイオン結合工程とを有する。
[リン酸基導入工程]
リン酸基導入工程は、セルロース繊維原料にリン酸基を導入してリン酸変性セルロース繊維を得る工程である。
リン酸基導入工程において使用されるセルロース繊維原料は、セルロースI型結晶を有する。例えば、通常の製紙用途で用いられるパルプが用いられるが特に限定されない。
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプから選ばれる。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、などが挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしては、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプは上記1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。
セルロース繊維にリン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維原料を、リン酸基を含む化合物またはその塩により処理する方法が挙げられる。
リン酸基を含む化合物またはその塩による処理では、セルロース分子におけるヒドロキシ基の少なくとも一部にリン酸基を含む化合物またはその塩が脱水反応して、リン酸基を形成する。
リン酸基を含む化合物としては、リン酸、メタリン酸、ポリリン酸などが挙げられる。
リン酸基を含む化合物との塩としては、リン酸、メタリン酸、ポリリン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アルカリ塩などが挙げられる。
リン酸基を含む化合物またはその塩は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記の中でも、低コストで扱い易く、リン酸基の導入効率が高まることから、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
セルロース繊維原料に対するリン酸基を含む化合物またはその塩の質量割合は、セルロース繊維100質量部に対してリン酸基を含む化合物またはその塩が、リン元素量として0.2〜200質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましく、2〜50質量部がさらに好ましい。リン酸基を含む化合物またはその塩の割合が前記下限値以上であれば、リン酸基導入率が高くなる。しかし、前記上限値を超えても、リン酸基導入率向上の効果は頭打ちとなり、無駄にリン酸基を含む化合物またはその塩を使用するだけである。
加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択する。具体的には50〜250℃であることが好ましく、100〜170℃であることがより好ましいが、特に限定されない。また、加熱には減圧乾燥機を用いてもよい。
リン酸基導入工程で使用するリン酸基を含む化合物またはその塩を含む薬液は、尿素をさらに含むことが好ましい。尿素によりセルロースが膨潤し、薬液の浸透性をより高めることができる。
リン酸基導入工程では、リン酸変性セルロース繊維におけるリン酸基導入量を0.1〜3.8mmol/gにすることが好ましく、0.50〜3.8mmol/gにすることがより好ましい。リン酸基導入量が前記下限値以上であれば、セルロースシートの耐水性をより向上させることができる。
ここで、リン酸基の繊維原料への導入量については、TAPPI T237 cm−08(2008)を応用して算出できる。具体的には、繊維原料に導入された酸性基の導入量をより広範囲まで算出可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液を、水酸化ナトリウム1.60gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液に変更し、さらに置換基導入前後の繊維における算出値の差を実質的な置換基導入量とした以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じて算出する。
また、当該酸性基導入量算出方法は、基本的には1価の酸性基(カルボキシ基)の導入量算出方法であることから、多価の酸性基であるリン酸基の導入量の算出については、前記1価の酸性基の導入量として得られた置換基導入量を、リン酸基の酸価数で除した数値を、リン酸の基の導入量とする。
リン酸基の導入量は、リン酸基を含む化合物またはその塩の添加量、尿素添加量、反応温度、反応時間によって調整することができる。適性な範囲において、リン酸基を含む化合物またはその塩、尿素の添加量を多くする程、また、反応温度が高温で、反応時間が長いほどリン酸基導入量が多くなる。
リン酸変性セルロース繊維には、必要に応じて、アルカリ処理を施してもよい。
アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸変性セルロース繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。
無機アルカリ化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルアミン(アニリン)、ジフェニルアミン、およびトリフェニルアミン等が挙げられる。
アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
アルカリ処理を施すことで、後段の機械処理工程に必要なエネルギー量が削減される。
[機械処理工程]
機械処理工程は、リン酸変性セルロース繊維を、平均繊維長が2.0mm以下及び平均繊維幅が50μm以下になるようにフィブリル化処理又は微細化処理して機械処理リン酸変性セルロース繊維を得る工程である。
ここで、フィブリル化とは、繊維をほぐし、さらに毛羽立たせることである。微細化とは、繊維を細かく粉砕又は切断することである。本明細書では、フィブリル化処理及び微細化処理のことを総称して、「機械処理」ということがある。
機械処理により繊維表面に露出したリン酸基を増やすことで、後述するアルミニウムイオン結合工程の効果が高まる。
機械処理前にリン酸変性セルロース繊維は水で希釈されて、セルロース濃度が0.1〜10質量%の分散液にされることが好ましい。リン酸変性セルロース繊維分散液のセルロース濃度は、0.2〜5質量%であることがより好ましく、0.3〜4質量%であることがさらに好ましい。リン酸変性セルロース繊維のセルロース濃度が前記下限値以上であれば、フィブリル化効率又は微細化効率が高くなり、前記上限値以下であれば、処理中の粘度の上昇を防ぐことができる。
機械処理の工程では、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。粉砕装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなどが挙げられる。
機械処理の工程に供試するリン酸変性セルロース繊維のリン酸基は、一価の陽イオンで中和されていることが好ましい。一価の陽イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどが挙げられる。リン酸基がこれらのイオンで中和されている場合、浸透圧効果や荷電反発効果により、機械処理の効率が高まる。
[アルミニウムイオン結合工程]
アルミニウムイオン結合工程は、機械処理リン酸変性セルロース繊維のリン酸基にアルミニウムイオンを結合させる工程である。
具体的に、アルミニウムイオン結合工程では、機械処理リン酸変性セルロース繊維の水分散液に、水溶性のアルミニウム塩を添加する。水中では、アルミニウム塩からアルミニウムイオンが生成し、そのアルミニウムイオンが、機械処理リン酸変性セルロース繊維のリン酸基と反応して、リン酸基にアルミニウムイオンに結合させる。
リン酸基にアルミニウムイオンを結合させることにより、リン酸基を有するセルロース繊維のアルミニウム塩からなる耐水性セルロース繊維を得ることができる。
得られた耐水性セルロース繊維は、必要に応じて、脱水、乾燥してもよい。
アルミニウムイオン結合工程において、アルミニウムイオン源として使用されるアルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのなかでも、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムが好ましい。
アルミニウム塩は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
機械処理リン酸変性セルロース繊維のリン酸基に結合させるアルミニウムイオンの添加量は、リン酸変性セルロース繊維に導入されたリン酸基量P[mol]に対し、0.2P〜2.0P[mol]が好ましく、0.3P〜1.8P[mol]がより好ましい。
(作用効果)
セルロース分子のヒドロキシ基は、水分子と水素結合しやすいため、通常のセルロース繊維は耐水性が低い。本発明の耐水性セルロース繊維の耐水性が高い理由は明らかではないが、無機物質のリン酸アルミニウム(AlPO)は親水性が低く、水に対して不溶性である。したがって、リン酸アルミニウムと同様に、リン酸基にアルミニウムイオンが結合したリン酸変性セルロース繊維は親水性が低くなり、耐水性が高くなると推測される。
また、セルロースに導入されたリン酸基は2価のアニオン、アルミニウムイオンは3価のカチオンであるため、結合接点が多いことも有利であると考えられる。
耐水性が高い本発明の耐水性セルロース繊維から得られるセルロースシートは、湿潤しても引張強度が低下しにくいだけでなく、ヤング率も低下しにくい。これは、一般の湿潤紙力増強剤がセルロース繊維にランダムに結合するのに対し、本発明では、リン酸基が導入されたセルロース繊維表面が、機械的処理を受けやすくなっており、よりフィブリル化または微細化され、そこに集中して耐水性の高いリン酸アルミニウム構造が形成されるためと推測される。
本発明の耐水性セルロース繊維においては、耐水性を向上させるために、加熱によって湿潤紙力増強剤をセルロース繊維に反応させる必要がなく、また、導入可能な置換基量の幅が広いため、より大きな耐水性向上効果を得ることができる。
<セルロースシート及びその製造方法>
(セルロースシート)
本発明のセルロースシートは、耐水性セルロース繊維を含有するシートである。
セルロースシートには、耐水性セルロース繊維以外に、必要に応じて、填料、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤などの化学添加剤、糊、その他の繊維が含まれてもよい。
本発明のセルロースシートにおいては、湿潤状態でのヤング率残存率を容易に5%以上とすることができる。ヤング率は、JIS P8135に従って測定した値である。ヤング率残存率は、水で湿潤する前後のセルロースシートのヤング率を各々測定し、[(湿潤後のセルロースシートのヤング率)/(湿潤前のセルロースシートのヤング率)]×100%の式で求めた値である。
湿潤状態でのヤング率残存率が5%以上であれば、湿潤した際のヤング率低下が充分に抑制されている。
また、本発明のセルロースシートにおいては、湿潤状態での引張強度残存率を容易に15%以上とすることができる。引張強度は、JIS P8135に従って測定した値である。引張強度残存率は、水で湿潤する前後のセルロースシートのヤング率を各々測定し、[(湿潤後のセルロースシートの引張強度)/(湿潤前のセルロースシートの引張強度)]×100%の式で求めた値である。
湿潤状態での引張強度残存率が15%以上であれば、湿潤した際の引張強度低下が充分に抑制されている。
セルロースシートの密度は0.3〜1.3g/cmとすることが好ましい。セルロースシートの密度が前記範囲内にあれば、前記のヤング率残存率をより容易に5%以上にでき、引張強度残存率をより容易に15%以上にできる。
(セルロースシートの製造方法)
本発明のセルロースシートの製造方法は、上記耐水性セルロース繊維を抄紙する工程を有する。
具体的に抄紙工程では、耐水性セルロース繊維を含むスラリーを抄紙用ワイヤー上で脱水して湿潤シートを得た後、その湿潤シートを乾燥する。
耐水性セルロース繊維を含むスラリーは、得られるセルロースシートの坪量が、好ましくは5〜200g/m、より好ましくは10〜150g/mとなるように抄紙用ワイヤーに供給する。セルロースシートの坪量が前記下限値以上であると、得られた湿潤シートを抄紙用ワイヤーから容易に剥離でき、連続生産に適する。一方、セルロースシートの坪量が前記上限値以下であると、脱水時間を短縮でき、生産性を高くできる。
湿潤シートの乾燥方法としては特に制限されず、例えば、熱風乾燥炉に湿潤シートを供給し、熱風により加熱する方法、加熱させたドラムドライヤーに湿潤シートを巻き掛けて加熱する方法等を適用することができる。
上記抄紙工程は、通常の紙の製造で使用される抄紙機を用いることができる。抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機が挙げられる。
(作用効果)
本発明のセルロースシートは、耐水性セルロース繊維を有するものであるから、水で湿潤しても強度及びヤング率が維持されている。
本発明のセルロースシートの製造方法では、耐水性セルロース繊維を抄紙することによってセルロースシートを製造するから、加熱によって湿潤紙力増強剤をセルロース繊維に反応させる必要はないし、導入可能な置換基量の幅が広いため、より大きな耐水性を持つセルロースシートを得ることができる。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(製造例1)
未叩解針葉樹クラフトパルプ(王子製紙製)に、尿素、リン酸ナトリウム(リン原子とナトリウム原子のモル比Na/P=1.45)、水からなる薬液を含浸させた。次いで、圧搾し、余剰の薬液を搾り取って、薬液含浸パルプを得た。その薬液含浸パルプは、パルプ絶乾質量100質量部に対して95質量部の尿素、リン原子として40質量部のリン酸ナトリウム、120質量部の水を含んでいた。
上記薬液含浸パルプを150℃に加熱したオーブンで乾燥、加熱処理して、パルプのセルロース繊維にリン酸基を導入した。
リン酸基を導入したセルロース繊維を含む薬液含浸パルプに、イオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の薬液を十分に洗い流した。次いで、セルロース繊維濃度が2質量%となるようイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが11〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、リン酸変性セルロース繊維Aを得た。該リン酸変性セルロース繊維Aは、滴定法で求められるリン酸基の導入量が0.804mmol/gであった。
上記リン酸変性セルロース繊維Aを、セルロース濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、クリアランスを50μmに設定したシングルディスクリファイナーに5回通して機械処理リン酸変性セルロース繊維Aを得た。機械処理リン酸変性セルロース繊維Aの投影図から得られる長さ平均繊維長は1.22mm、平均繊維幅は27.4μmであった。
(製造例2)
前記製造例1と同様にしてリン酸基を導入したセルロース繊維を含む薬液含浸パルプを得た。
リン酸基を導入したセルロース繊維を含む薬液含浸パルプに、イオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の薬液を十分に洗い流した後、セルロース繊維濃度が2質量%となるようイオン交換水で希釈した。次いで、攪拌しながら、1N硫酸水溶液を少しずつ添加し、pHが2〜3のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の硫酸を十分に洗い流した後、セルロース繊維濃度が2質量%となるようイオン交換水で希釈した。次いで、攪拌しながら、1Nアンモニア水溶液を少しずつ添加して、pHが11〜12のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のアンモニアを十分に洗い流して、セルロース繊維Bを得た。該リン酸変性セルロース繊維Bは、滴定法で求められるリン酸基の導入量が0.804mmol/gであった。
上記リン酸変性セルロース繊維Bを、セルロース濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、クリアランスを50μmに設定したシングルディスクリファイナーに10回通して機械処理リン酸変性セルロース繊維Bを得た。機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの投影図から得られる長さ平均繊維長は0.98mm、平均繊維幅は26.3μmであった。
(製造例3)
未叩解針葉樹クラフトパルプ(王子製紙製)を濃度1質量%となるように、イオン交換水で希釈してスラリー状とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)と、臭化ナトリウムとを、それぞれパルプ質量の1.6質量%、10質量%添加し、15分間スリーワンモーターで攪拌した。
次いで、0.75M次亜塩素酸ナトリウム水溶液をパルプ1gに対して3.8mmol/g加え、反応を開始させた。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10程度に保った。その後、反応物をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、pH4.8に調整した酢酸バッファー中に、パルプ濃度が1質量%となるように添加した。
次いで、亜塩素酸ナトリウムをパルプ1gに対して0.2mmol/g量加え、48時間静置した。静置後の反応物をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄し、カルボン酸変性セルロース繊維を得た。該カルボン酸変性セルロース繊維は、滴定法で求められるカルボキシ基の導入量が1.17mmol/gであった。
上記カルボン酸変性セルロース繊維を、セルロース濃度が2質量%になるようイオン交換水で希釈した後、クリアランスを50μmに設定したシングルディスクリファイナーに5回通して機械処理カルボン酸変性セルロース繊維を得た。機械処理カルボン酸変性セルロース繊維の投影図から得られる長さ平均繊維長は0.97mm、平均繊維幅は27.0μmであった。
(実施例1)
製造例1で得た機械処理リン酸変性セルロース繊維Aを、セルロース濃度が0.2質量%になるようイオン交換水で希釈してスラリーを得た。そのスラリーを、得られるシート坪量が20g/m2になるように分取し、0.3質量%に希釈した硫酸アルミニウム水溶液を、硫酸アルミニウム添加量がセルロース繊維質量に対して8質量%になる割合で添加した。次いで、撹拌した後、プラスチックワイヤー(LL70E、日本フィルコン社製、濾過面積210mm×298mm)をろ材として用いて脱水し、抄紙して、機械処理リン酸変性セルロース繊維Aを含有する湿紙を得た。
得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分を吸い取った。さらに、湿紙を、新たな吸収紙の間に挟み、表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥して、セルロースシートを得た。
(実施例2)
機械処理リン酸変性セルロース繊維Aの代わりに機械処理リン酸変性セルロース繊維Bを用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースシートを得た。
(比較例1)
実施例2において、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bを含むスラリーに硫酸アルミニウム水溶液を添加しなかった以外は実施例2と同様の方法で湿紙を得た。得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分の吸い取りを試みた。しかし、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの湿紙を剥離できず、セルロースシートを得ることができなかった。
(比較例2)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、カチオン性凝結剤(荒川化学製 FS−614 0.03質量%水溶液)を、セルロース繊維質量に対して絶乾質量で500ppmの割合で添加した。それ以外の操作は実施例2と同様の方法で湿紙を得た。
得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分の吸い取りを試みた。しかし、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの湿紙を剥離できず、セルロースシートを得ることができなかった。
(比較例3)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.1M塩酸を、セルロース濃度0.2質量%のスラリーのpHが4になるまで添加した。それ以外の操作は実施例2と同様の方法で湿紙を得た。得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分の吸い取りを試みた。しかし、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの湿紙を剥離できず、セルロースシートを得ることができなかった。
(比較例4)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.3質量%に希釈した塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウム添加量がセルロース繊維質量に対して8質量%になる割合で添加した。それ以外の操作は実施例2と同様の方法で湿紙を得た。得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分の吸い取りを試みた。しかし、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの湿紙を剥離できず、セルロースシートを得ることができなかった。
(比較例5)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.3質量%に希釈した塩化マグネシウム水溶液を、塩化マグネシウム添加量がセルロース繊維質量に対して8質量%になる割合で添加した。それ以外の操作は実施例2と同様の方法で湿紙を得た。得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分の吸い取りを試みた。しかし、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの湿紙を剥離できず、セルロースシートを得ることができなかった。
(比較例6)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.3質量%に希釈した塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウム添加量がセルロース繊維質量に対して16質量%になる割合で添加した。それ以外の操作は実施例2と同様に抄紙してセルロースシートを得た。
(比較例7)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.3質量%に希釈した塩化マグネシウム水溶液を、塩化マグネシウム添加量がセルロース繊維質量に対して20質量%になる割合で添加した。それ以外の操作は実施例2と同様に抄紙してセルロースシートを得た。
(比較例8)
実施例2において、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.3質量%に希釈した湿潤紙力増強剤(荒川化学製 アラフィックス255)を、セルロース繊維質量に対して0.5質量%の割合で添加した。それ以外の操作は実施例2と同様の方法で湿紙を得た。得られた湿紙に吸収紙2枚を載せ、その吸収紙の上から、JIS P 8222に規定されたコーチロールを用いてロール掛けを行い、余剰の水分の吸い取りを試みた。しかし、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、機械処理リン酸変性セルロース繊維Bの湿紙を剥離できず、セルロースシートを得ることができなかった。
(比較例9)
機械処理リン酸変性セルロース繊維Aの代わりに、製造例3で得た機械処理カルボン酸変性セルロース繊維を用いた以外は実施例1と同様にしてセルロースシートを得た。
(比較例10)
実施例1において、機械処理リン酸変性セルロース繊維Aの代わりに、叩解セルロース繊維(王子製紙製 投影図から得られる長さ平均繊維長0.46mm、平均繊維幅24.7μm、未変性)を用い、硫酸アルミニウム水溶液を添加しなかった以外は実施例1と同様の方法で抄紙して、セルロースシートを得た。
(比較例11)
0.3質量%に希釈した硫酸アルミニウム水溶液を、セルロース繊維質量に対して8質量%の割合で添加した以外は比較例10と同様にして、セルロースシートを得た。
(比較例12)
硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、0.3質量%に希釈した湿潤紙力増強剤(荒川化学製 アラフィックス255)を、セルロース繊維質量に対して0.5質量%の割合で添加した以外は比較例10と同様にして、セルロースシートを得た。
<紙質の測定>
各実施例及び各比較例で得たシートの乾燥状態での引張強度及びヤング率を、JIS
P 8113に準拠して測定した。
各実施例及び各比較例で得たシートの湿潤状態での引張強度及びヤング率をJIS P
8135に準拠して測定した。
引張強度残存率を、[(湿潤後のセルロースシートの引張強度)/(湿潤前のセルロースシートの引張強度)]×100%の式より求めた。
ヤング率残存率を、[(湿潤後のセルロースシートのヤング率)/(湿潤前のセルロースシートのヤング率)]×100%の式より求めた。
乾燥状態でのセルロースシートの引張強度及びヤング率、湿潤状態でのセルロースシートの引張強度及びヤング率、引張強度残存率及びヤング率残存率を表1,2に示す。
Figure 0006558421
Figure 0006558421
機械処理リン酸変性セルロース繊維に硫酸アルミニウムを加えた実施例1,2では、得られたセルロースシートの引張強度残存率及びヤング率残存率が高く、すなわち湿潤紙力が高く、耐水性に優れていた。
硫酸アルミニウムを添加しなかった比較例1では、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、セルロースシートを得ることができなかった。リン酸変性セルロース繊維のリン酸基はアンモニウム塩となっており、親水性が強いためと考えられる。
硫酸アルミニウムの代わりにカチオン性凝結剤を添加した比較例2では、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、セルロースシートを得ることができなかった。リン酸変性セルロース繊維のリン酸基は有機アンモニウム塩となっており、親水性が強く、また、カチオン性凝結剤はその分子量が大きいため、十分にリン酸基と相互作用できないと推察される。
硫酸アルミニウムの代わりにスラリーpHが4になるまで塩酸を添加した比較例3では、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、セルロースシートを得ることができなかった。硫酸アルミニウムの添加によってスラリーpHは低下しているが、スラリーpHを低下させるのみでは依然として親水性が強いためと考えられる。
硫酸アルミニウムの代わりに、塩化カルシウムを繊維質量に対して8質量%添加した比較例4では、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、セルロースシートを得ることができなかった。
硫酸アルミニウムの代わりに、塩化マグネシウムを繊維質量に対して8質量%添加した比較例5では、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、セルロースシートを得ることができなかった。
硫酸アルミニウムの代わりに、塩化カルシウムを繊維質量に対して16質量%添加した比較例6では、得られたセルロースシートの引張強度残存率及びヤング率残存率が共に低かった。
硫酸アルミニウムの代わりに、塩化マグネシウムを繊維質量に対して20質量%添加した比較例7では、得られたセルロースシートの引張強度残存率及びヤング率残存率が共に低かった。
硫酸アルミニウムの代わりに、湿潤紙力増強剤を繊維質量に対して0.5質量%添加した比較例8では、コーチロールの圧力により、湿紙が崩れ、吸収紙に密着してしまい、セルロースシートを得ることができなかった。湿紙を得るまでに乾燥、加熱工程を経ていないため湿潤紙力増強効果が得られていないためと考えられる。
リン酸変性セルロース繊維の代わりにカルボン酸変性セルロース繊維を用いた比較例9では、得られたセルロースシートの引張強度残存率及びヤング率残存率が共に低かった。
リン酸変性されていないセルロース繊維を用いた比較例10〜12では、得られたセルロースシートの引張強度残存率及びヤング率残存率が共に低かった。
上記のように、実施例1,2のセルロースシートは、引張強度残存率が高いだけでなく、ヤング率残存率も高く、湿潤紙力に優れていた。湿潤状態でのヤング率の維持は、湿潤紙力増強剤の添加では得られない効果であった。
リン酸アルミニウム(AlPO)は水に溶けない不溶性の物質であり、この物質と類似の構造がセルロース繊維表面に形成されると、親水性が低くなると推測される。また、セルロースに導入されたリン酸基は2価の陰イオン、アルミニウムイオンは3価の陽イオンであるから、電荷的接点が多い。そのため、リン酸基にアルミニウムイオンが結合したリン酸変性セルロース繊維は親水性が低くなり、耐水性が高くなると推測される。
また、耐水性が高いセルロース繊維から作製したことでセルロースシートの耐水性が高くなったものと推測される。
これに対し、リン酸カルシウム(Ca(PO)、リン酸マグネシウム(Mg(PO)、酢酸アルミニウム(Al(COO))は、わずかであるが水に溶解する。また、リン酸アルミニウムと比較して、電荷的接点が少ない。そのため、リン酸基にカルシウムイオンが結合した場合、リン酸基にマグネシウムイオンが結合した場合、カルボキシ基にアルミニウムイオンが結合した場合にはいずれも、親水性が低くならず、耐水性が低くなると推測される。また、耐水性が低いセルロース繊維から作製したことでセルロースシートの耐水性が低くなったものと推測される。

Claims (2)

  1. 平均繊維長が2.0mm以下及び平均繊維幅が50μm以下のセルロース繊維であって、セルロース分子のヒドロキシ基の少なくとも一部がリン酸基にされ、該リン酸基にアルミニウムイオンが結合している耐水性セルロース繊維を含有し、坪量が5〜200g/mである、セルロースシート。
  2. 前記セルロース繊維におけるリン酸基導入量が0.1〜3.8mmol/gである、請求項1記載のセルロースシート。
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