しかしながら、上記魚体の頭部切断装置によれば、頭部の切断位置決めを行う手段として回転ブラシからなる魚体押し戻し手段を用い、回転ブラシの先端によって魚体の胴部表面を引っ掻くようにしてこの魚体を尾部側に向かって移動させることにより、その胸ヒレを線状体等からなる係止部材に係止させるように構成しているものであるから、回転ブラシの回転力では小型の魚体を移動させることができても、重量の大きいブリ等の大型魚を尾部側に向かって移動させることが困難であり、大型魚の頭部位置決め手段として採用することができない。
一方、上記回転ブラシ以外の別な魚体押し戻し手段として、上記搬送手段における頭部の載置用コンベアの上流側に、この頭部載置用コンベアに沿って下流側に行くに従って頭部載置用コンベアに向かって徐々に接近するように傾斜した傾斜ガイド板からなる手段も知られている。そして、このような手段によれば、魚体の頭部先端を傾斜ガイド板の傾斜面に当接させた状態にして搬送手段により魚体を搬送することにより、魚体全体を上記傾斜ガイド板によって搬送手段上を尾部側に向かって押し動かし、その胸ヒレを上記係止手段に係止させた状態にして下流側に配設した円形カッタにより頭部を切断することができるが、頭部の大小によって胸ヒレがその付け根まで係止部材に係止した状態となったり、或いは、胸ヒレの一部が係止部材に係止した状態となったりして、頭部の切断位置を正確に設定することができなくなるといった問題点がある。
さらに、上記回転ブラシや傾斜板からなる魚体押し戻し手段によって魚体をその尾部側に向かって移動させて胸ヒレを係止手段に係止せる際に、搬送手段上で魚体の頭部が尾部側に対して搬送方向に妄動して円形カッタに対する頭部の切断位置が変化し、頭部の切断が正確に行えなくなる。
また、コンベアからなる搬送手段によって搬送しながらその下流側において円形カッタにより頭部を切断するものであるから、頭部がその鰓の後方部を背部側から腹部側に向かって直線状に切断され、鰓に接した背部の最前端の肉部や、「かま」と称される腹部の最前端に肉部が頭部と共に切断されて歩留りが悪くなるといった問題点がある。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ブリ等の大型魚の頭部の切断位置を頭部の大小にかかわらず正確に位置決めすることができ、且つ歩留りよく切断することができる大型魚の頭部切断装置を提供するにある。
上記目的を達成するために本発明の大型魚の頭部切断装置は、請求項1に記載したように、大型魚の供給終端部側に配設され、大型魚の頭部の先端口部を受止する枠状のストッパー部材と、大型魚の供給始端部側に配設され、大型魚を横臥状態に載置して上記ストッパ部材に向かって滑動させる供給ガイド部材と、この供給ガイド部材の供給終端側の上方に配設された弾性的に上下動可能な板状の胸ヒレ係止部材と、この胸ヒレ係止部材と上記ストッパー部材との間における胸ヒレ係止部材側近傍部上方に配設され刃先が大型魚の鰓に沿って円弧状に湾曲しているヘッドカッタと、ヘッドカッタの上下動手段と、上記ストッパー部材に受止された大型魚の頭部の先端口部を押圧してストッパー部材からの頭部の受止を解くヘッドプッシャを備えたエアシリンダと、このエアシリンダを上記ヘッドカッタの下方に向かって移動させて上記ヘッドプッシャにより大型魚を押し戻し、その胸ヒレを上記胸ヒレ係止部材に係止させる押し戻し手段とを備えていることを特徴とする。
このように構成した大型魚の頭部切断装置において、請求項2に係る発明は、上記供給ガイド部材は、供給始端部側から供給終端部側に向かうに従って下方に緩傾斜し、且つ、互いにその対向面間の間隔を徐々に離間させている一対のガイドバーからなることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、上記胸ヒレ係止部材は、大型魚の胸ヒレ部分の厚みよりも低い高さ位置にその長さ方向を大型魚の胴部上を直交する方向に向けて水平状に配した長方形状の薄板からなり、その一端部は上下回動自在に軸支されていると共にスプリング力によって常時下方に復元するように付勢されていることを特徴とする。
さらに、請求項4に係る発明は、上記ヘッドプッシャは大型魚の頭部の先端口部を挿嵌させる大きさを有する筒状体からなり、このヘッドプッシャをストッパー部材に向けているエアシリンダのロッドの先端に固着している特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、大型魚の上記押し戻し手段は、長さ方向の中央部に上記ヘッドプッシャを備えたエアシリンダを固着してなる可動フレームと、この可動フレームの両端部にそのピストンロッドの先端を連結していて可動フレームをヘッドプッシャ側に向かって移動させる一対のエアシリンダとからなることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、大型魚の頭部がストッパー部材に受止された際に、それを感知してヘッドプッシャを備えたエアシリンダに信号を発するセンサーを備えていることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、大型魚の供給始端部側に供給ガイド部材を配設しているので、この供給ガイド部材上に大型魚をその頭部を供給方向に向け且つ横臥状態にして投入すれば、大型魚を供給ガイド部材上で滑動させながら供給終端部側に配設しているストッパー部材に向かって円滑に供給することができ、その頭部の先端口部をストッパー部材に挿嵌させた状態で受止させて頭部を妄動させることなく大型魚を所定の位置に正確に保持した状態で一旦停止させておくことができる。
また、上記供給ガイド部材の供給終端側の上方に弾性的に上下動可能な板状の胸ヒレ係止部材を配設しているので、大型魚が上記供給ガイド部材上をストッパー部材に向かって滑動中に、上向きになっているその胴部を上記胸ヒレ係止部材の下面に摺接させてこの胸ヒレ係止部材を上方に押し上げながら大型魚の胸ヒレをこの係止部材からストッパー部材側に通過させた位置に設けることができる。
さらに、胸ヒレ係止部材と上記ストッパー部材との間における胸ヒレ係止部材側近傍部上方に、刃先が大型魚の鰓に沿って円弧状に湾曲しているヘッドカッタを上下動可能に配設していると共に、上記ストッパー部材に受止された大型魚の頭部の先端口部を押圧してストッパー部材からの頭部の受止を解くヘッドプッシャを備えたエアシリンダと、このエアシリンダを上記ヘッドカッタの下方に向かって移動させて上記ヘッドプッシャにより大型魚を押し戻し、その胸ヒレを上記胸ヒレ係止部材に係止させる押し戻し手段とを備えているので、先端口部をストッパー部材に受止されている重量の大きい大型魚をヘッドプッシャを備えたエアシリンダの作動によって確実に押し戻して胸ヒレを係止部材の近傍位置まで瞬時に移動させることができると共に、この移動に引き続いて押し戻し手段の作動によりヘッドプッシャを備えたエアシリンダを急速に胸ヒレ係止部材側に大きく移動させて大型魚の胸ヒレをその付け根まで係止部材に係止させることができる。
この際、頭部が比較的小さい大型魚の場合において、押し戻し手段の作動終了時に胸ヒレがその付け根まで完全に係止部材に係止していない状態となっても、押し戻し時に圧縮しているヘッドプッシャを備えたエアシリンダの復元力により、大型魚を押圧してその胸ヒレを付け根が確実に係止部材に係止するように押動させることができ、また、頭部が比較的大きい大型魚の場合においては、押し戻し手段の作動によりその胸ヒレが付け根まで係止部材に必要以上の押付力でもって係止した状態となっても、上記エアシリンダがエアクッションの機能を奏してヘッドプッシャを僅かに後退させながらその押付力を吸収し、大型魚の頭部を常に正確な切断位置に位置決めすることができ、この状態を保持しながらヘッドカッタの下動により頭部を正確に切断することができる。
さらに、このヘッドカッタの刃先は大型魚の鰓に沿って円弧状に湾曲しているので、鰓に接した背部の最前端の肉部や、「かま」と称される腹部の最前端に肉部が胴部側に残した状態となるように頭部を歩留りよく切断することができる。
請求項2に係る発明によれば、上記供給ガイド部材は、供給始端部側から供給終端部側に向かうに従って下方に緩傾斜し、且つ、互いにその対向面間の間隔を徐々に離間させている一対のガイドバーからなるので、横臥した大型魚の胴部をこの一対のガイドバー間上に跨がらせた状態にし、且つ、大型魚の頭部先端と尾部とを結ぶ線がガイドバー間の中間部に位置させた状態を保持させながらこの供給ガイド部材上に投入、供給される全ての大型魚を妄動させることなく常に一定の姿勢でもって正確にストッパー部材側に向かって送り込むことができ、ストッパー部材にその先端口部を挿嵌、保持させた状態にすることができる。
その上、大型魚を上記ヘッドプッシャを備えたエアシリンダ及び押し戻し手段によって押し戻した際に、大型魚が押し戻し方向に対して徐々に対向面間の間隔が狭くなっている供給ガイド部材の上記一対のガイドバーにより、大型魚が供給された際の軌跡上を正確に、且つ、持ち上げられるようにして押し戻されてその胴部上面を胸ヒレ係止部材の下面に積極的に押し付けながらこの係止部材に大型魚の胸ヒレを円滑且つ確実に係止させることができる。
また、請求項3に係る発明によれば、上記胸ヒレ係止部材は、大型魚の胸ヒレ部分の厚みよりも低い高さ位置にその長さ方向を大型魚の胴部上を直交する方向に向けて水平状に配した長方形状の薄板からなり、その一端部は上下回動自在に軸支されていると共にスプリング力によって常時下方に復元するように付勢されているので、大型魚の供給時及び押し戻し時に胸ヒレ係止部材を大型魚の胴部上に押し付けて、上記押し戻し手段により大型魚がこの胸ヒレ係止部材側に向かって押し戻された時に、その胸ヒレを確実に胸ヒレ係止部材に係止させることができる。
請求項4に係る発明によれば、上記ヘッドプッシャは大型魚の頭部の先端口部を挿嵌させる大きさを有する筒状体からなるので、このヘッドプッシャにより大型魚の口部を保持させて頭部を妄動させることなく、ヘッドカッタの下方にまで正確に押し戻すことができると共に、ヘッドカッタによる頭部切断時においてもその頭部を切断位置に正確に保持しながら大型魚の頭部を歩留りよく切断処理することができる。
請求項5に係る発明によれば、大型魚の頭部がストッパー部材に受止された際に、それを感知してヘッドプッシャを備えたエアシリンダに信号を発するセンサーを備えているので、大型魚の供給からその頭部切断に至るまでの自動化を図ることができ、大型魚の頭部を順次能率よく切断することができる。
本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、図1〜図4において、機台1はその上面を大型魚Aの供給始端部側となる後端から供給終端部側となる前端に向かって下方に緩やかに傾斜させてあり、供給終端部側である前部上面に、供給始端部側である後端側から頭部A1を前端側に向けて供給される大型魚Aの頭部A1の先端口部a1を挿嵌状態となるように受け入れて受止する正面矩形枠状のストッパー部材2を配設、固定している一方、大型魚Aの供給終端部側である後部上面に、大型魚Aを横臥状態に載置して上記ストッパー部材2に向かって滑動させながら供給するガイド部材3を配設している。
機台1の上面後半部における幅方向の中央部は、上下方向に貫通した平面矩形状の空間部に形成されていて、この空間部を大型魚Aの胴部A2を下方に落下させる胴部排出口12に形成していると共にこの胴部排出口12を、上面に上記ガイド部材3を配設、固定している大型魚Aの載置用台板13によって閉止している。また、胴部排出口12の下方には胴部A2を次の処理工程に向かって搬送するコンベア等の搬送手段(図示せず)が設けられている。
上記載置用台板13は、その後端部を機台1の後端部下面にその長さ方向を幅方向に向けて支持されている軸15に上下方向に回動自在に取り付けていると共に、その前部下面と機台1の後端下方部とをエアシリンダ16によって連結して、このエアシリンダ16のピストンロッドを収縮させることによって上記載置用台板13を上記軸15を支点として下方に回動させて胴部と排出口12を開き、ピストンロッドを伸長させることによって載置用台板13を上方に回動させて排出口12を閉止するように構成している。
上記正面矩形枠状に形成されたストッパー部材2は、大型魚Aの頭部A1における目の部分を全面的に囲繞し得る前後幅を有していると共に開口している前端から後端に向かってその内周面を徐々に拡開する方向に外側に傾斜させていて、その内周面で大型魚Aの頭部A1の前部周面を大型魚Aがそれ以上前進できないように挿嵌させた状態にして受止するように形成している。
一方、上記大型魚Aの載置用台板13の上面に配設した上記ガイド部材3は、左右一対のガイドバー3a、3bからなり、これらのガイドバー3a、3bは機台1の上面と同様に、大型魚Aの供給始端部側から供給終端部側に向かうに従って下方に緩傾斜していると共に互いにその対向面間の間隔を後端部から前端に向かって徐々に離間させている。
詳しくは、これらのガイドバー3a、3bは細長い丸棒からなり、その後端部から全体をへ字状となるように屈折させてこの屈折部から前端に至る直状部分を大型魚Aの供給方向に対して前端に向かうに従って互いに離間する方向に同一傾斜角度でもって傾斜させてあり、ガイドバー3a、3bの対向面間の中央部を通る前後方向の仮想線上に大型魚Aの胴部A2における背部と腹部との間の幅方向の中央部が重なるようにして大型魚Aをその背部下面を一方のガイドバー3a上に、腹部下面を他方のガイドバー3b上に載せて上記ストッパー部材2の中心に向かって滑動させながら供給するように構成している。
さらに、これらの左右一対のガイドバー3a、3bの後端部は、上記屈折部から後端に行くに従って互いに対向面が離間するように傾斜させて対向面間を後方に向かって拡開させてあり、機台1の後端側からガイドバー3a、3b上への大型魚Aの供給が円滑且つ正確に行えるように形成している。
なお、ガイドバー3a、3bはその前後端部にそれぞれ前後一対の支持杆3c、3dの先端を固着させていると共にこれらの支持杆3c、3dの基端部を上記載置用台板13の左右端部に固着して、これらの支持杆3c、3dによって大型魚Aを前方に向かって供給可能な状態に保持されている。
また、これらの左右一対のガイドバー3a、3bからなる上記ガイド部材3の前端、即ち、このガイド部材3によって上記ストッパー部材2側に大型魚Aを送り込む供給終端側の前方において、その前方部上方には、大型魚Aの供給方向に対して直角に横切るように大型魚Aの胸ヒレ係止部材4が弾性的に上下動可能に配設されている。
具体的にはこの胸ヒレ係止部材4は、横臥した大型魚Aの胸ヒレ部分の胴部A2の厚みよりも低い高さ位置にその長さ方向を大型魚Aの胴部A2上を直交する方向に向けて水平状に配した長方形状の金属製薄板からなり、図3に示すように、その一端部に突片4aを上方に向かって突設していてこの突片4aを軸4bによって上下回動自在に支持させていると共に突片4aの上端に一体に固着した連結片4cをスプリング10によって張引してこの胸ヒレ係止部材4をスプリング力により上記突片4aを支持した軸4bを中心にして常時下方に付勢している。なお、胸ヒレ係止部材4は、水平状から下方に傾斜するのを適宜なストッパー機構によって阻止されてあり、水平状態から上方側で上下動自在となっている。
この胸ヒレ係止部材4と上記ストッパー部材2との間における胸ヒレ係止部材側寄り部分の上方には、大型魚Aのヘッドカッタ5が上下動自在に配設されている。このヘッドカッタ5の下端刃先は、大型魚Aの鰓a2に沿うように円弧状に湾曲した刃先中央部5aと、この円弧状の刃先中央部5aの両端部から互いに離間する方向に延長した直状の刃先部5b、5cとからなり、一方の直状の刃先部5bによって大型魚Aにおける鰓a2に接した背部の最前端の肉部を、他方の直状の刃先部5cによって「かま」と称される腹部の最前端の肉部をそれぞれ頭部A1から分離させて胴部A2側に残すように頭部A1を切断するように構成している。
ヘッドカッタ5の上下動手段6は、図3に示すように、上記ストッパー部材2と胸ヒレ係止部材4との間における機台1の両側部に上下動自在に支持された左右一対の垂直なロッド6a、6aと、これらのロッド6a、6aの上端部間に架設状態にしてその両端部をロッド6a、6aの上端に連結し、長さ方向の中央部下面に上記ヘッドカッタ5の上端を取り付けている上側水平杆6bと、機台1の上面から下方に突出している上記ロッド6a、6aの下端間に連結している下側水平杆6cと、この下側水平杆6cの下面中央部と機台1の底面上に設置した駆動モータ6dの回転軸とを連結したクランク機構6eとからなり、駆動モータ6dの回転軸を一回転させることによって上記上側水平杆6bの下面に取り付けているヘッドカッタ5を上下方向に一回、往復動させるように構成している。
さらに、大型魚Aの頭部A1の前端部を挿嵌させた状態にして受止する上記ストッパー部材2の後方側における機台1の前端上面に、ストッパー部材2に挿嵌、受止される大型魚Aの頭部A1におけるストッパー部材2から前方に突出した先端口部a1を押圧して大型魚Aを後方に向かって僅かに押し戻し、ストッパー部材2から頭部A1の挿嵌状態の受止を解くヘッドプッシャ7を備えたエアシリンダ8(以下、このエアシリンダを第1エアシリンダとする)と、この第1エアシリンダ8を上記ヘッドカッタ5の下方に向かって移動させて上記ヘッドプッシャ7を介して大型魚をその頭部A1が上記ストッパー部材2から後方に離れて大型魚Aの胸ヒレa3を上記胸ヒレ係止部材4に係止させるまで押し戻す押し戻し手段9とを配設している。
上記ヘッドプッシャ7は、大型魚Aの頭部A1の先端口部a1を挿嵌させた状態に受け入れてその状態に保持する大きさを有する筒状部材からなり、この筒状部材の開口端を上記ストッパー部材2の中心部に向けた状態にして第1エアシリンダ8におけるストッパー部材2側に向けているピストンロッドの先端に固着している。
上記押し戻し手段9は、図1、図4に示すように、長さ方向の中央部の後面に上記ヘッドプッシャ7を備えた第1エアシリンダ8を固着している機台1の幅方向に長い可動フレーム9aと、機台1の両側端部上に配設されてそのピストンロッドの先端を上記可動フレーム9aの両端部に連結している左右一対のエアシリンダ9b、9b(以下、このエアシリンダを第2エアシリンダとする)とからなり、この第2エアシリンダ9b、9bをそのピストンロッドが収縮する方向に作動させることによって上記ヘッドプッシャ7を備えたエアシリンダ8をストッパー部材2側に向かって移動させるように構成している。
また、上記ヘッドカッタ5の下方の機台1の上面にはこのヘッドカッタ5の刃先よりも一回り大きく、且つ、この刃先と相似形に形成された固定枠11が配設されてあり、この固定枠11を配設している機台1の上面前半部が上下方向に向かって全面的に貫通した空間部に形成されていて、この空間部を通じて上記固定枠11の内周面に接するようにしてヘッドカッタ5を上下動させて大型魚Aの頭部A1を切断するように構成していると共に、この空間部を切断された大型魚Aの頭部A1の排出口14に形成してあり、この排出口14の下方には切断された頭部A1を外部に導出する傾斜シュート17が設けられている。
なお、図示していないが機台1の上面一側部に、大型魚Aの頭部A1がストッパー部材2に受止された際に、それを感知してヘッドプッシャ7を備えた上記第1エアシリンダ8に信号を発するセンサーを備えている。
次に、このように構成した大型魚の頭部切断装置の作用を説明すると、機台1の後部上面に配設しているガイド部材3上に、大型魚Aをその頭部A1を前方に向け、且つ、背部をガイド部材3における一方のガイドバー3a側に向けた横臥状態にして適宜の送り込み力でもって供給する。なお、この大型魚Aのガイド部材3上への送り込み(供給)は、作業員によって行ってもよく、或いは、作業員によることなく機台1における後端に沿って機台1の前後方向に対して直交する方向に走行するコンベアを配設し、このコンベアによって搬送される大型魚Aを順次、上記ガイド部材3上に押し込み手段等によって供給してもよい。
上記ガイド部材3を構成している左右一対のガイドバー3a、3bは、これらのガイドバー3a、3bの対向面間の中央を通る前後方向の仮想線上を大型魚Aの胴部A2の幅方向の中央部が重なるようにして大型魚Aを前方に向かって供給できるように並設していると共に後端部から前端に向かって下方に傾斜してあり、さらに、これらのガイドバー3a、3bは上記仮想線に対して後端部から前端に向かうに従って互いに離間する方向に傾斜しているので、このガイド部材3上に大型魚Aが横臥状態にして投入するように供給されると、その胴部A2が背部側を一方のガイドバー3a上に、腹部側を他方のガイドバー3b上に載せてこれらのガイドバー3a、3b間に跨がらせた状態でその胴部A2の幅方向の中央部をガイドバー3a、3b間の上記仮想線上に位置させながらストッパー部材2側に向かってガイド部材3上を滑りながら送り込まれる。
このように大型魚Aがガイド部材3上を滑動しながらストッパー部材2に向かって供給されると、この供給途上において大型魚Aの胴部A2の前部が胸ヒレ係止部材4を通過中に、上向きとなった胴部A2の上面を胸ヒレ係止部材4の下面に摺接させながらこの胸ヒレ係止部材4をスプリング10の力に抗して押し上げ、この状態を維持しながら大型魚Aの胸ヒレa3を有する胴部A2の前部が胸ヒレ係止部材4を通過して頭部A1の前部がストッパー部材2内に進入し、図5〜図7に示すように、その先端口部a1をストッパー部材2から前方に突出した状態となるようにストッパー部材2に挿嵌、受止されて,大型魚Aがその頭部A1を頭部落下口12の上方においてその位置で停止、保持される。この状態においては、大型魚Aの胴部A2の後部がガイドバー3a、3b間に保持されている一方、先端口部a1がヘッドプッシャ7に近接させた状態で対向している。
大型魚Aの頭部A1がストッパー部材2に受止されると、センサーによってその受止を感知され、上記ピストンロッドの先端に上記ヘッドプッシャ7を取り付けている第1エアシリンダ8が作動してそのピストンロッドの伸長によりヘッドプッシャ7を大型魚Aの先端口部a1に向かって移動させ、このヘッドプッシャ7の開口部内に先端口部a1を挿入、嵌合させて大型魚Aの頭部A1が左右に妄動するのを阻止しながら図8〜図10に示すようにさらに大型魚Aを後退する方向に押し戻してストッパー部材2からの大型魚Aの頭部A1の受止を解き、胸ヒレa3が係止部材4の近傍位置にまで後退させた状態で第1エアシリンダ8の作動を停止させる。
この第1エアシリンダ8の作動停止後に、この停止に連動して押し戻し手段9の左右の第2エアシリンダ9b、9bが作動してそのピストンロッドを収縮させることにより、上記第1エアシリンダ8を装着している可動フレーム9aを図11、図12に示すように、大型魚A側に向かって移動させ、上記第1エアシリンダ8に設けているヘッドプッシャ7により大型魚Aを押し戻してこの大型魚Aの胸ヒレa3を付け根まで係止部材4に係止させる。
この際、第2エアシリンダ9b、9bの作動による第1エアシリンダ8の後退は、大型魚Aの頭部A1の大小にかかわらず、常に一定位置となるように設定されていて頭部A1が比較的小さい大型魚の場合には、押し戻し手段9の作動終了時において胸ヒレa3がその付け根まで完全に係止部材4に係止していない状態となる場合が生じるが、この場合には、押し戻し時に圧縮されていた第1エアシリンダ8がその復元力により伸長して大型魚Aを僅かに押し戻しその胸ヒレa3の付け根を係止部材4に確実に係止させる。
また、頭部A1が比較的大きい大型魚Aの場合においては、押し戻し手段9の作動終了時において胸ヒレa3の付け根まで係止部材4に必要以上の押付力でもって係止した状態となっても、上記第1エアシリンダ8のピストンロッドが後退してエアクッションの機能を奏してヘッドプッシャ7を僅かに後退させながらその押付力を吸収して係止力を正常にし、大型魚Aの頭部A1を常に正確な切断位置に位置決めする。
なお、大型魚Aを上記ヘッドプッシャ7を備えた第1エアシリンダ8及び押し戻し手段9によって押し戻した際に、大型魚Aが押し戻し方向に対して徐々に対向面間の間隔が狭くなっているガイド部材3の左右一対のガイドバー3a、3bにより、供給時における軌跡上を正確に、且つ、持ち上げられるようにして押し戻されてその胴部A2上面を胸ヒレ係止部材4の下面に積極的に押し付けながらこの係止部材4にその胸ヒレa3を円滑且つ確実に係止させることができる。
このように、押し戻し手段9の作動によって係止部材4に対する大型魚Aの胸ヒレa3の係止が行われ、大型魚Aの頭部A1が頭部排出口12の上方に位置した状態にして押し戻し手段9の作動が停止するとこの停止に連動してヘッドカッタ5の上下動手段6が作動し、ヘッドカッタ5の降下によって大型魚Aの頭部A1が切断される。
具体的には、図3において、上下動手段6の駆動モータ6dが作動してその回転軸を半回転させると、クランク機構6eによって下側水平杆6cが下動し、この下動によって下側水平杆6cの両端部に連結しているロッド6a、6aを介してこれらのロッド6a、6aの上端間に固定している上側水平杆6bが一体に下動し、この上側水平杆6bの下面中央部に下方に向けて取り付けているヘッドカッタ5も一体に下動してその下端刃先によって図14〜図17に示すように大型魚Aの頭部A1が切断される。また、切断時において、頭部A1がその鰓a2の外周部をヘッドカッタ5の刃先よりも一回り大きく、且つ、この刃先と相似形に形成された固定枠11上に支持されているので、この固定枠11の内周面に沿って下動するヘッドカッタ5 により頭部を正確に切断することができる。
さらに、ヘッドカッタ5の下端刃先は、上記のように、大型魚Aの鰓a2に沿うように円弧状に湾曲した刃先中央部5aと、この円弧状の刃先中央部5aの両端部から互いに離間する方向に延長した直状の刃先部5b、5cとからなるので、円弧状に湾曲した刃先中央部5aによって頭部A1が鰓a2に沿って切断されると共に上記直状の刃先部5b、5cによって大型魚Aにおける鰓a2に接した背部の最前端の肉部と、「かま」と称される腹部の最前端の肉部とを胴部A2側に残すようにして頭部A1を切断することができる。なお、図22には頭部A1が切断され、腹部を開いた大型魚Aの胴部A2を示す。
頭部A1の切断後、ヘッドカッタ5は上記駆動モータ6dの回転軸の引き続いて行われる半回転によって元の位置まで上昇、復帰すると共に、押し戻し手段9、ヘッドプッシャ7も元の位置(状態)に復帰して次の大型魚Aの頭部切断に備えると共に、切断された頭部A1は図17〜図20に示すように排出口14を通じて下方のシュート17上に落下し、このシュート17を通じて外部に排出される一方、頭部A1が切断された胴部A2は、ヘッドカッタ5の上動に連動して作動するエアシリンダ16のピストンロッドの収縮により図21に示すように上面にガイド部材3を配設している胴部載置用台板13が下方に傾動して胴部排出口12を開放させると同時に、胴部A2は前端に向かって下向きに傾斜した胴部載置用台板13上のガイド部材3上を滑りながら排出口12から落下し、次の処理工程に搬送される。
胴部A2の排出後、胴部載置台板13はエアシリンダ16のピストンロッドの伸長によって元の位置まで復帰して排出口14を閉止し、次の大型魚Aの頭部切断に備える。