JP6551164B2 - 光触媒塗装体 - Google Patents

光触媒塗装体 Download PDF

Info

Publication number
JP6551164B2
JP6551164B2 JP2015215272A JP2015215272A JP6551164B2 JP 6551164 B2 JP6551164 B2 JP 6551164B2 JP 2015215272 A JP2015215272 A JP 2015215272A JP 2015215272 A JP2015215272 A JP 2015215272A JP 6551164 B2 JP6551164 B2 JP 6551164B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
particles
photocatalyst
δno
particle
surface layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015215272A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017081807A (ja
Inventor
島井 曜
曜 島井
寛之 藤井
寛之 藤井
翔太朗 金子
翔太朗 金子
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toto Ltd
Original Assignee
Toto Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toto Ltd filed Critical Toto Ltd
Priority to JP2015215272A priority Critical patent/JP6551164B2/ja
Publication of JP2017081807A publication Critical patent/JP2017081807A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6551164B2 publication Critical patent/JP6551164B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Surface Treatment Of Glass (AREA)
  • Catalysts (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)
  • Exhaust Gas Treatment By Means Of Catalyst (AREA)

Description

本発明は、高い透明性を有し、かつ窒素酸化物(NO)除去性能に優れた光触媒塗装体に関する。
光触媒の一種である二酸化チタン(TiO2)は、光のエネルギーにより励起電子と正孔を生成する。生成された励起電子と正孔は、光触媒表面において、酸素と水分の存在下で、O 、O、・OH(・は不対電子を示しラジカル種であることを意味する)等の活性酸素種を生成する。この活性酸素種が有するラジカルな性質を利用して、大気中の窒素酸化物(NO)を酸化反応に供し、無害な反応物に変化させるNO除去(大気浄化)技術が知られている。
窒素酸化物が活性酸素種による酸化反応を受ける過程では、例えば一酸化窒素(NO)が酸化を受け、二酸化窒素(NO)が中間生成物として生成される。この二酸化窒素が更に酸化を受け、硝酸イオン(NO )が最終生成物として生成される。光触媒塗装体を用いた窒素酸化物の除去技術として、NOガスを光触媒塗装体内に存在する光触媒粒子と接触させ、NOガスをNO まで酸化させ、これを水洗する方法が知られている。このため、窒素酸化物の除去性能を高めるには、活性酸素種とNOあるいはNOとを共存させることが必要である。ところが、NOは化学的に比較的安定した化合物(ガス)であるので、生成された二酸化窒素は反応の系外に脱離するおそれがある。そのため、活性酸素種による酸化反応の効率が低下し、結果的にNO除去性能が低下するおそれがある。中間生成物であるNOの離脱を防止するために、光触媒粒子とともにNO吸着粒子を添加した光触媒層が提案されている。
WO98/15600号公報(特許文献1)には、光触媒と、耐アルカリ性付与剤としてのジルコニウム化合物および/または錫化合物と、光触媒固着剤としての金属の酸化物または水酸化物を含む光触媒層を有する光触媒担持構造体が開示されている。ジルコニウム化合物および/または錫化合物は、ジルコニウムおよび/または錫の酸化物、水酸化物などであることが記載されている。ジルコニウム化合物および/または錫化合物の含有量が、光触媒層全体に対して金属酸化物に換算して2〜10重量%であることが記載されている。
WO99/29424号公報(特許文献2)には、大気中の窒素酸化物を削減する技術が開示されている。すなわち、光照射により二酸化チタンから生成される活性酸素種を用いて一酸化窒素を酸化し、二酸化窒素(中間生成物)を得る。この二酸化窒素を、Al、ZnO、SnOおよびSnOから選ばれる少なくとも1種の金属化合物と化学的に結合させることにより保持し、活性酸素種を用いて酸化し、硝酸(最終生成物)を得る。上記金属酸化物により二酸化窒素を保持し、反応系外に離脱するのを抑制することにより、酸化反応の効率低下、ひいてはNO削減効率の低下が抑制される。
WO95/15816号公報(特許文献3)には、光触媒粒子としてのTiOと、光触媒粒子の間隙に充填される粒子としてのSnOとを含む光触媒層を有する多機能材が記載されている。この多機能材は、防臭性、耐摩耗性または抗菌性を有することが記載されている。
WO2011/118780号公報(特許文献4)には、10質量%の光触媒性酸化チタン粒子と、55質量%のシリカ粒子と、10質量%(酸化ジルコニウム換算量)の炭酸ジルコニウム化合物粒子と、25質量%のSnOとを含む光触媒層を備えてなる光触媒塗装体が開示されている。この光触媒塗装体は、特に空気中のNOを除去するに際し、NO除去量を高めつつ、NO等の中間生成物の生成を抑制できると報告されている。
しかしながら、NOからNOへの酸化反応の効率が高く、かつ、生成されたNOの反応系外への脱離を抑制しながら、NOからNO への酸化反応の効率の高い、優れたNO除去技術が依然求められている。
他方、ガラスなどの透明な基材に表面層を設ける場合においては、表面層に高い透明性が求められる。このような透明性を確保するために、例えば表面層の厚さを薄くすると、光触媒作用を十分に発現させることが困難である場合があった。
本発明者の知る限りでは、高い透明性を確保しつつ、優れたNO除去性能を有する、すなわち、NOからNOへの酸化反応の効率が高く、かつ、生成されたNOの反応系外への脱離を抑制しながら、NOからNO への酸化反応の効率の高い、表面層を備えた光触媒塗装体は未だ実現されていない。
WO98/15600号公報 WO99/29424号公報 WO95/15816号公報 WO2011/118780号公報
本発明者らは、今般、主に光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、および二酸化窒素吸着粒子からなる粒子成分を主に含んでなる表面層を備えてなる光触媒塗装体が、高い透明性を有するとともに、優れたNO除去性能を有するとの知見を得た。より詳細には、光触媒粒子を粒子成分全体の40質量%以上含み、かつ、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子を光触媒粒子に対する含有比(SnO粒子/光触媒粒子)で0.1以上含む表面層は、ΔNOを増大させるとの知見を得た。また、SnO粒子/光触媒粒子を1.5未満とし、第3の粒子成分として、ZrO粒子および/またはAl粒子を含む表面層は、ΔNOを増大させるとの知見を得た。さらに、主にこれら3つの粒子からなる粒子成分を含む表面層は、光触媒活性を発現する厚さであっても高い透明性を確保できるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
従って、本発明は、高い透明性を確保しつつ、優れたNO除去性能を有する、すなわち、NOからNOへの酸化反応の効率が高く、かつ、生成されたNOの反応系外への脱離を抑制しながら、NOからNO への酸化反応の効率の高い、表面層を備えた光触媒塗装体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明による光触媒塗装体は、
基材と、当該基材の表面に設けられ、主に粒子成分を含んでなる表面層とを少なくとも備えてなる光触媒塗装体であって、
前記粒子成分は、主に第1の粒子成分、第2の粒子成分、および第3の粒子成分からなり、
前記第1の粒子成分は、光触媒粒子であり、
前記第2の粒子成分は、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子であり、
前記第3の粒子成分は、二酸化窒素吸着粒子であり、
前記二酸化窒素吸着粒子は、ZrO粒子および/またはAl粒子であり、
前記光触媒粒子の含有量が、前記粒子成分の合計に対して40質量%以上であり、
前記光触媒粒子の含有量に対する前記4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量の比(4価の正方晶からなる酸化スズ粒子/光触媒粒子)が、0.1以上1.5未満であることを特徴とする。
本発明による光触媒塗装体は、NOを高い反応効率でNOに酸化することができ、かつ、生成されたNOの反応系外への脱離を抑制しつつ、NOを高い反応効率でNO に酸化することができ、全体として優れたNO除去性能を有する。また、本発明による光触媒塗装体は、高い透明性を有する。
(a)二酸化窒素吸着粒子としてZrO粒子を含む光触媒塗装体における、TiO粒子の含有量に対するSnO粒子の含有量の比(SnO/TiO)と、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)との関係を示す。(b)図1(a)の点線枠内の拡大図である。 二酸化窒素吸着粒子としてAl粒子を含む光触媒塗装体における、TiO粒子の含有量に対するSnO粒子の含有量の比(SnO/TiO)と、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)との関係を示す。
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、基材と、表面層とを備えてなる。表面層は、基材の表面に設けられてなる。
表面層
表面層は、主として粒子成分を含んでなる。
粒子成分
本発明において、粒子成分は、主に第1の粒子成分、第2の粒子成分、および第3の粒子成分からなる。第1の粒子成分は、光触媒粒子であり、第2の粒子成分は、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子であり、第3の粒子成分は、二酸化窒素吸着粒子である。ここで、主に第1の粒子成分、第2の粒子成分、および第3の粒子成分からなる、とは、透明性や窒素酸化物(NO)除去性能などの本発明の効果を阻害しない範囲において、これら3種の粒子成分以外の粒子成分が含まれてもよいことを意味する。本発明の好ましい態様によれば、表面層に含まれる粒子成分を100質量%としたときに、第1、第2および第3の粒子成分は合計で90質量%以上含まれる。より好ましくは、第1、第2および第3の粒子成分は合計で95質量%以上、さらにより好ましくは98質量%以上含まれる。
窒素酸化物(NO )除去メカニズム
本発明による光触媒塗装体が備えてなる表面層に含まれる光触媒粒子が有する光触媒活性を利用したNO酸化機序について説明する。まず、NOガスが光触媒粒子と接触すると、光励起により光触媒粒子表面に生成された活性酸素種により、NOがNOに酸化される。ここで、NOがNOに酸化される反応を第1反応という。第1反応は、式:NO→NOで示される。次いで、第1反応で生成されたNOが酸化されNO が生成される。ここで、NOがNO に酸化される反応を第2反応という。第2反応は、式:NO→NO で示される。つまり、NOは2段階の反応を経て無害なNO に酸化される。なお、第2反応で生成されたNO は例えば水洗により回収することができる。
ところが、第1反応で生成されるNOは、第2反応に付される前に、表面層60から脱離して系外に放出されやすい性質を有する。すなわち、NOが無害なNO にまで酸化される前の段階で、外気に放出されてしまう。そのため、外気中に含まれる窒素酸化物を十分に除去することができていない。
そこで、従来より、第1反応で生成されたNOを層内に留めるために、NO吸着粒子を用いることが検討されてきた。本発明者らの行った実験によれば、NO吸着粒子を用いることで、NOの脱離はやや抑制されるものの、光触媒塗装体において、表面層に光触媒粒子とNO吸着粒子とを配置するだけでは、その効果は十分ではないことが確認された。また、NO吸着粒子の量を増やしても、NOの脱離を十分に抑制することはできないことが確認された。
NOx除去性能を高めるためには、NOの酸化反応の効率をより高めつつ、NOガスの系外への脱離を抑制することが求められる。
ここで、本発明において、NO除去性能を表す指標として、窒素酸化物の除去量(ΔNO)を定義する。窒素酸化物の除去量は、式:ΔNO(μmol)=ΔNO(μmol)−ΔNO(μmol)により求められる。ΔNOとは、第1反応:NO→NOによる酸化反応で除去されたNOガスの量である。また、第1反応の式:NO→NOにより、NOガス除去量から、生成した中間生成物であるNOガスの量が求められる。ΔNOとは、第1反応により生成されたNOガスが表面層の内から外へ脱離(脱着)した量である。ΔNOにより、第1反応により除去されたNOガスの量、および第1反応により生成されたNOガスのうち第2反応に付されずに、すなわち最終生成物であるNO へ酸化されずに反応系から脱離したNOガスの量、すなわち反応全体にわたるNO除去性能を評価することが可能となる。ΔNOが大きいほど、NO除去性能が高いことを表している。また、本発明において、第1反応により除去されたNOガスの量に対する表面層(反応系)からのNOガスの脱離量の割合(%)をΔNO/ΔNOで表す。ΔNO/ΔNOが小さいほど、NOガスの系外への脱離量が小さいことを表している。
本発明にあっては、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子と光触媒粒子とを共存させ、さらに、光触媒粒子を粒子成分全体の40質量%以上含ませ、かつ、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子を光触媒粒子に対する含有比(SnO粒子/光触媒粒子)で0.1以上含ませることにより、特異的な電荷分離効果が発揮され、第1反応(NO→NO)が促進される。なお、特異的な電荷分離効果の原理は不明であるが、光触媒反応で一般に定義される電荷分離効果とは相違し、第1反応(NO→NO)の促進に寄与する電荷分離効果であると考えられる。この効果は、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子を含有する場合のみ発現する。本明細書において、異なる複数の粒子、例えば第1の粒子と、第1の粒子とは異なる第2の粒子と、が「共存」する、とは、第1の粒子と第2の粒子とが近接して配置される態様を指す。具体的には、第1の粒子及び第2の粒子が接して配置される態様が挙げられる。
本発明者らの行った実験によれば、光触媒粒子と4価の正方晶からなる酸化スズ粒子とを含む場合と、光触媒粒子と4価の正方晶以外の価数、結晶相を含む酸化スズ粒子とを含む場合と、の対比において、有機物の分解性能の指標であるメチレンブルー分解試験では両者に差異が認められなかった。一方、前者の場合においてのみ、NO除去反応における第一反応の促進効果が認められた。すなわち、いずれの酸化スズ粒子を含有する場合でも、光触媒反応で一般に定義される電荷分離効果を示すことが確認された。一方、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子を含有することによってのみ、特異的な電荷分離効果が発現されることが確認された。
第1反応が促進され、NOガスの生成量が増えると、第2反応に付される前にNOガスが系外に脱離してしまう傾向が高くなる場合がある。本発明による光触媒塗装体は、光触媒粒子および4価の正方晶からなる酸化スズ粒子に加えて、SnO粒子/光触媒粒子を1.5未満とし、第三の粒子成分として二酸化窒素吸着粒子をさらに含んでいる。そのため、生成されたNOガスの系内での滞留時間を長くすることができる。よって、NOガスをより確実に第2反応に付すことができ、トータルでのNO除去量を増加させることができる。つまり、粒子成分全体に対して特定量の4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の存在により、第1反応によるNOガスの除去量を増加させることができる。また、粒子成分全体に対して特定量の二酸化窒素吸着粒子が存在することにより、第1反応により生成されたNOガスの表面層からの脱離量を低減させることができる。これにより、第1反応により生成されたNOガスの量に対する表面層からのNOガスの脱離量の割合(%)が低減され、本発明による光触媒塗装体は、全体として優れたNO除去性能を有する。
本発明による光触媒塗装体は、上述したように、第1反応により多くのNOガスを酸化することができ、すなわち多くのNOを生成することができる。そのため、第2反応の性能の向上を実現するためには、生成したNOを高い効率で吸着することが必要とされる。本発明による光触媒塗装体は、ΔNO/ΔNOを低減させることができる。つまり、第1反応により生成されたNOが表面層(反応系)外に放出されるのを抑制し、効率良く保持することができる。
本発明による好ましい態様によれば、光触媒粒子の含有量に対する前記SnO粒子の含有量の比(SnO粒子/光触媒粒子)の下限値は0.5以上である。また、SnO粒子/光触媒粒子の上限値は、1.4以下である。SnO粒子/光触媒粒子の下限値または上限値がこの範囲にあることで、表面層が粒子成分として、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子(ZrO粒子またはAl粒子)のみを含む光触媒塗装体と、表面層が粒子成分として、光触媒粒子、SiO粒子、及び二酸化窒素吸着粒子のみを含む光触媒塗装体のΔNOを、それぞれΔNO(Sn)、ΔNO(Si)としたとき、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)の値を、1.0より大きく、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上に上昇させることができる。また、表面層が粒子成分として、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子のみを含む光触媒塗装体と、表面層が粒子成分として、光触媒粒子、SiO粒子、及び二酸化窒素吸着粒子のみを含む光触媒塗装体のΔNOを、それぞれΔNO(Sn)、ΔNO(Si)としたとき、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)の値を、1.0より大きく、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上に上昇させることができる。なお、後者の光触媒塗装体は、前者の光触媒塗装体において、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の換わりにSiO粒子を含むものである。
本発明の好ましい態様によれば、表面層に含まれる複数の光触媒粒子の少なくとも一部は、二酸化窒素吸着粒子と接して配置されてなる。光触媒粒子と二酸化窒素吸着粒子とを接して配置することにより、光触媒粒子からのNOガスの脱着をより効果的に抑制するとともに、二酸化窒素吸着粒子に吸着されたNOガスを第2反応に付し、光触媒粒子の光触媒活性により引き続き酸化することができる。その結果、NOを無害なNO にまでより確実に酸化することができる。また、二酸化窒素吸着粒子に一旦吸着したNOが脱着して表面層外に放出されることをより効果的に抑制することができる。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒塗装体は、表面層において、光触媒粒子と、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子と、二酸化窒素吸着粒子とを含む領域以外に、二酸化窒素吸着粒子を含む領域をさらに有する。これにより、第1反応により生成されたNOガスの表面層からの脱離量をさらに低減させることができる。また、第1反応により生成されたNOガスの量に対する表面層からのNOガスの脱離量の割合(%)をさらに低減させることができる。その結果、本発明による光触媒塗装体は、全体として優れたNO除去性能(ΔNO)を有する。
本発明の好ましい態様によれば、表面層は、例えば第1被膜と第2被膜とを含んでなる。第2被膜は、基材と第1被膜との間に設けられてなる。この態様において、第1被膜または第2被膜のいずれか一方が、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子を含む。第1被膜または第2被膜のいずれか他方が、二酸化窒素吸着粒子をさらに含む。二酸化窒素吸着粒子を含む被膜と、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子を含む被膜と、を別々に設けることにより、表面層において、いずれか他方の被膜に含まれる二酸化窒素吸着粒子の表面積を大きくすることができる。そのため、より多くの二酸化窒素を吸着することができる。その結果、光触媒塗装体のNO除去性能をより高めることができる。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子は、第1被膜に含まれ、二酸化窒素吸着粒子は、第2被膜に含まれる。表面層の上側に位置する第1被膜に光触媒粒子を配置することにより、光触媒粒子が光を効率的に獲得することができる。これにより、光触媒塗装体の光触媒活性を高めることができる。
本発明において、第1被膜が主として粒子成分を含むことが好ましい。これにより、表面層に外気が通過する空隙を設けることが可能となるため、表面層に含まれる光触媒粒子や二酸化窒素吸着粒子が、外気と接触し易くなる。このため、光触媒粒子を、外気に含まれるNOと効率的に接触させることができ、結果的に、第1反応および/または第2反応の性能を向上させることができる。
第1の粒子成分(光触媒粒子)
本発明による光触媒塗装体の表面層に含まれる光触媒粒子は、抗菌機能、脱臭機能、有害ガス除去機能、親水性機能などの光触媒機能を発揮するのに十分なバンド・ギャップを有する半導体粒子である。
本発明において、光触媒粒子の好ましい例としては、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどの酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステンなど金属酸化物の粒子が挙げられる。光触媒粒子は、より好ましくは酸化チタン粒子であり、さらにより好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。
本発明において、光触媒粒子は、10nm以上100nm以下の平均粒子径を有することが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。平均粒子径がこの範囲にあることで、光触媒活性が高くなる。さらに、表面層内に光触媒粒子間の空隙を形成する場合に、光触媒活性を高めるために好適な空隙径に制御し易くなるとの利点が得られる。ここで、平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出されるものを意味する。
本発明において、光触媒粒子の形状としては真球が好ましく、略円形や楕円形でもよい。この場合の光触媒粒子の平均粒子径は、(長径+短径)/2として略算出される。
本発明において、光触媒粒子の含有量は、表面層全体に含まれる粒子成分(例えば、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子)の合計の濃度を100質量%としたとき、40質量%以上である。あるいは、表面層が第1被膜および第2被膜を含む場合において、各被膜に含まれる固形分の濃度を100質量%としたとき、いずれかの被膜、好ましくは第1被膜における光触媒粒子の含有量は40質量%以上である。光触媒粒子の含有量がこの範囲にあることで、例えば空気中のNOを除去するに際し、第1反応を高めつつ、さらに、第2反応をも高めることができる。また、基材に有機物が含有されている場合でも優れた光触媒耐蝕性が発揮される。
第2の粒子成分(4価の正方晶からなる酸化スズ粒子)
本発明による光触媒塗装体の表面層に含まれる4価の正方晶からなる酸化スズ粒子は、光触媒粒子と共存することで、光触媒塗装体の有機物分解性能およびNO除去性能の双方を向上する。4価の正方晶からなる酸化スズを含有することで、とりわけNO酸化反応の効率が向上する。
4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の結晶子サイズは、例えば、1nm以上4nm以下であることが好ましい。結晶子サイズがこの範囲にあることで、光触媒粒子と4価の正方晶からなる酸化スズ粒子との接触確率が増加し、電荷分離効果を高めることができる。なお、結晶子サイズは、例えば、X線回折におけるバックグランドを除くパターンフィッティング処理後に、2θ=25〜28°付近の(110)面の回折ピークを利用してシェラー式により算出される。
本発明において、表面層における4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量は、表面層における光触媒粒子の含有量に対する質量比(SnO粒子/光触媒粒子)で、0.1以上1.5未満である。4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量がこの範囲にあることにより、第1反応を効果的に促進することができる。
本発明において、表面層における4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量は、表面層全体に含まれる粒子成分(例えば、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子)の合計の濃度を100質量%としたとき、4質量%以上55質量%以下が好ましい。
第3の粒子成分(二酸化窒素吸着粒子)
本発明による光触媒塗装体の表面層に含まれる二酸化窒素吸着粒子は、第1反応により生成される二酸化窒素(ガス)に対する吸着性能が高い化合物の粒子である。二酸化窒素吸着粒子は、第1反応により生成されたNOが表面層(反応系)外に脱離するのを抑制し、効率良く保持することができる。このような粒子として、例えば、その表面に塩基性サイトを有する粒子が好適に挙げられる。二酸化窒素(ガス)は酸性であるため、その表面に塩基性サイトを有する粒子を含むことにより、表面層はより多くの二酸化窒素を吸着することができる。本発明の好ましい態様によれば、二酸化窒素吸着粒子は、ZrO粒子および/またはAl粒子である。
二酸化窒素吸着粒子の形状は、球状、またはアスペクト比が1より大きい楕円状、長方形、もしくは針状のいずれであってもよい。二酸化窒素吸着粒子は、表面層内において、略均一に分散して配置されていることが好ましい。
本発明において、表面層において、粒子成分は、主に第1の粒子成分である光触媒粒子、第2の粒子成分である4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、および第3の粒子成分である二酸化窒素吸着粒子からなる。また、粒子成分には、透明性や窒素酸化物(NO)除去性能など本発明の効果を阻害する可能性のある粒子成分は含まれない。つまり、表面層は、粒子成分として、シリカ粒子(SiO粒子)を含まない。シリカ粒子を含まないため、表面層のヘイズが高くなることを抑制することができる。そのため、本発明において、表面層は良好な透明性を有する。従って、本発明による光触媒塗装体は、基材としてガラスなどの透明なものを用いた場合であっても、基材の透明性を有効に利用することができる。なお、透明とは、波長400〜600nmの可視光透過率が70%以上であることを言う。
結着剤
本発明において、表面層は、結着剤を含んでもよい。表面層が、光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子を含む領域(例えば第1被膜)と、二酸化窒素吸着粒子を含む領域(例えば第2被膜)とを有する場合、二酸化窒素吸着粒子を含む領域に結着剤を含ませることにより、この領域と基材との密着性を高めることができる。その結果、表面層全体と基材との密着性を高めることができる。また、表面層が第1被膜および第2被膜を含む場合において、第1被膜が光触媒粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子、及び二酸化窒素吸着粒子を含み、第2被膜が二酸化窒素吸着粒子を含むとき、第2被膜に結着剤を含ませることにより、基材と第2被膜との密着性、および第2被膜と第1被膜との密着性を高めることができる。
本発明において、結着剤としては、無機ガラス質、熱可塑性樹脂、ハンダ等の熱可塑性材料、フッ素樹脂、シロキサン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性材料のいずれも使用可能であるが、アクリル−シリコーン樹脂、エポキシ−シリコーン樹脂、ポリエステル−シリコーン樹脂等のシリコーン変性樹脂が好ましい。また、結着剤の主成分の分散形態として、有機溶剤に溶解したものやエマルジョンとして水中分散したもののいずれも使用可能である。
本発明において、表面層の下側に基材に接するように二酸化窒素吸着粒子を含む領域が設けられている場合、この領域に含まれる固形分の濃度を100質量%としたとき、この領域に含まれる結着剤の含有量は、0質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは0質量%以上50質量%以下である。また、表面層が第1被膜および第2被膜を含む場合、第2被膜に含まれる固形分の濃度を100質量%としたとき、第2被膜に含まれる結着剤の含有量は、0質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは0質量%以上50質量%以下である。結着剤の含有量がこの範囲にあることで、表面層のNOガス等のNOガスの吸着性能を向上させることができる。また、基材に有機物が含有されている場合でも、表面層は基材に対して十分な密着性を発揮する。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒塗装体の表面のヘイズは5%以下である。本発明において、表面層は粒子成分としてシリカ粒子を実質的には含まないため、表面層のヘイズが高くなることを抑制することができる。そのため、表面層は良好な透明性を有する。従って、本発明による光触媒塗装体は、基材としてガラスなどの透明なものを用いた場合であっても、基材の透明性を有効に利用することができる。さらに、本発明において、表面層は優れたNO除去性能を有するため、透明な基材の上に、優れたNO除去性能を有する表面層を設けることが可能である。すなわち、基材の透明性を有効に利用することができ、光触媒塗装体全体として高い透明性を確保しつつ、優れたNO除去性能を発現することができる。なお、ヘイズに影響がない範囲で、表面層は、微量のシリカ粒子あるいはその他の粒子を含んでもよい。
基材
本発明において、基材はその上に表面層を形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、建物外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等といった外装材が挙げられる。
本発明においては、その表面が有機物質を含んでなる基材を好適に用いることができる。そのような基材としては、例えば、有機物を含む樹脂、有機物を含む樹脂を含有する塗装を表面に施した塗装体、有機物を含む樹脂を含有するフィルム等を表面に積層した積層体などが挙げられる。適用可能な基材を用途でいえば、金属塗装板、塩ビ鋼板等の金属積層板、窯業系化粧板、樹脂建材等の建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバ−及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガ−ドレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバ−、太陽熱温水器集熱カバ−、ビニ−ルハウス、車両用照明灯のカバ−、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバ−、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ−ド、換気扇等が挙げられる。特に本発明においては、基材として金属塗装板、金属積層板を利用した場合、基材を劣化・腐食させにくく好ましい。
従来、光触媒塗装体にあっては、光触媒粒子の光触媒活性による基材への影響を、例えば、シリコーン系樹脂からなる層などを基材と表面層との間に設けることで抑えることが一般的に行われてきた。本発明によれば、このような従来一般的に設けられてきたシリコーン系樹脂ではなく、有機材料からなる基材に直接光触媒粒子を含む表面層を設けることもできる。その結果、本発明は、その利用、適用範囲が大きく拡大されるとの点で有利となる。
本発明の好ましい態様によれば、基材はガラスである。本発明にあっては、表面層が高い透明性および優れたNO除去性能を有するため、ガラスなどの透明な基材の上に、優れたNO除去性能を有する表面層を設けることが可能である。すなわち、基材の透明性を有効に利用することができ、光触媒塗装体全体として高い透明性を確保しつつ、優れたNO除去性能を発現することができる。
<試験1>
二酸化窒素吸着粒子としてZrO粒子を含む光触媒塗装体を用いた試験
コーティング組成物の調製
(コーティング組成物a)
粒子成分として、TiO粒子、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子(以下、単にSnO粒子と称する場合もある)、およびZrO粒子を表1に示す割合で混合した。TiO粒子として、アナターゼ型チタニア水分散体を用いた。TiO粒子の平均粒子径は40nmであった。SnO粒子として、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子水分散体を用いた。SnO粒子の平均粒子径は8nmであった。ZrO粒子として、非晶質ジルコニア粒子水分散体を用いた。ZrO粒子の平均粒子径は20nmであった。これら粒子成分に、0.3質量%の界面活性剤、および溶媒として水を添加し混合してコーティング組成物a1〜a19を調製した。コーティング組成物a1〜a19の固形分濃度はいずれも5.5質量%とした。
(コーティング組成物b)
SnO粒子のかわりにSiO粒子を用いた以外は、コーティング組成物aの調製方法と同様の方法で、粒子成分を表2に示す割合で含むコーティング組成物b1〜b19を調製した。SiO粒子として、水分散型コロイダルシリカを用いた。SiO粒子の平均粒子径は10nmであった。
光触媒塗装体の作製
基材として、50mm×100mm×2mmのガラス板を酸化セリウム製のガラス用研磨剤で研磨したものを用いた。この基材の表面に、各種コーティング組成物aを、ローラーを用いて適用した。塗着量は15g/m2とした。その後、室温で1日以上乾燥させて、表面層が粒子成分として、TiO粒子、4価の正方晶からなるSnO粒子、およびZrO粒子のみを含む光触媒塗装体の試料A−1〜A−19を作製した。また、コーティング組成物aのかわりにコーティング組成物bを用いた以外は、試料A−1〜A−19の作製方法と同様の方法で、表面層が粒子成分として、TiO粒子、SiO粒子、およびZrO粒子のみを含む光触媒塗装体の試料B−1〜B−19を作製した。
評価
<NO除去性能>
試料A−1〜A−19及び試料B−1〜B−19について、NO除去性能を評価した。まず、これら試料に前処理として1mW/cmのBLB光を5hr以上照射した。次いで、前処理した試料を蒸留水に2時間浸漬し、110℃にて30分以上乾燥させた。そして、JIS R1701−1に記載の方法により試験を行い、第1反応で除去したNOガス量[ΔNO(μmol)]、第1反応で生成したNOガスの光触媒塗装体からの脱着量[ΔNO(μmol)]、さらに、ΔNOとΔNOの差からトータルのNO除去性能[ΔNO(μmol)]を求めた。結果は表1及び表2に示されるとおりであった。
SnO粒子を含む試料A−1〜A−19において、第1反応で除去したNOガス量をΔNO(Sn)とする。SiO粒子を含む試料B−1〜B−19において、第1反応で除去したNOガス量をΔNO(Si)とする。ΔNO(Si)に対するΔNO(Sn)の比である[ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)]により、SiO粒子の換わりにSnO粒子を含む場合における第1反応の効率の向上を評価した。また、SnO粒子を含む試料A−1〜A−19において、ΔNOとΔNOの差から算出されるトータルのNO除去性能をΔNO(Sn)とする。SiO粒子を含む試料B−1〜B−19において、ΔNOとΔNOの差から算出されるトータルのNO除去性能をΔNO(Si)とする。ΔNO(Si)に対するΔNO(Sn)の比である[ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)]により、SiO粒子の換わりにSnO粒子を含む場合におけるトータルのNO除去効率の向上を評価した。結果は表3に示されるとおりであった。また、TiO粒子の含有量に対するSnO粒子の含有量の比(SnO/TiO)と、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)との関係を図1(a)及び図1(b)に示す。図1(b)は、図1(a)の点線枠内の拡大図である。
表3に示すように、粒子成分の合計に対するTiO粒子の含有量が40質量%以上である場合、SnO粒子を含む試料A−12〜A−19のΔNOが、SiO粒子を含む試料B−12〜B−19のΔNOよりも大きいこと、つまり、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)が1より大きいことが確認された。従って、TiO粒子の含有量が40質量%以上である場合、SiO粒子をSnO粒子に置き換えることにより、第1反応の効率が向上することが確認された。さらに、TiO粒子の含有量に対するSnO粒子の含有量の比(SnO/TiO)が0.1以上1.5未満である場合、試料A−13〜A−19のΔNOが、SnO粒子の換わりにSiO粒子を含む試料B−13〜B−19のΔNOに比べておおよそ2倍以上大きいこと、つまり、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)がおおよそ2以上であることが確認された。
一方、TiO粒子の含有量が10質量%または25質量%と少ない場合、SnO粒子を含む試料A−1〜A−11のΔNOは、SiO粒子を含む試料B−1〜B−11のΔNOに比べて大きい(つまり、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)が1より大きい)場合もあれば、小さい(ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)が1より小さい)場合もあることが確認された。従って、TiO粒子の含有量が10質量%または25質量%と少ない場合、SiO粒子をSnO粒子に置き換えても、第1反応の効率が向上するとの効果を安定的に得ることができないことが確認された。また、図1(a)及び図1(b)にも示すように、TiO粒子の含有量が10質量%または25質量%と少ない場合は、SnO粒子の相対量を増やしても、すなわちSnO/TiOを高めても、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)が1より大きい場合と小さい場合があることが確認された。従って、TiO粒子の含有量が10質量%または25質量%と少ない場合、SnO粒子の相対量を増やしても、第1反応の効率が向上するとの効果を必ずしも得ることができないことが確認された。
さらに、表3に示すように、試料A−13〜A−19のΔNO(Sn)/ΔNO(Si)は1.0より大きかった。従って、TiO粒子の含有量が40質量%以上であり、かつ、SnO/TiOが0.1以上1.5未満である場合、SiO粒子をSnO粒子に置き換えることにより、トータルのNO除去性能であるΔNOが向上することが確認された。
<透明性>
試料A−1〜A−19及び試料B−1〜B−19について、透明性を評価した。具体的には、ヘイズ計(BYK Gardner製 haze-gard plus)を用いて、表面層のヘイズ(%)を測定した。結果を表1及び表2に示す。表1に示すように、SiO粒子を含まない試料A−1〜A−19はいずれもヘイズが5.0%以下と小さく、目視による外観評価は良好であった。また、表3に示すように、試料A−1〜A−19におけるSnO粒子をSiO粒子に置き換えたことによるヘイズへの影響[ヘイズ(Sn/Si)]は、いずれも1.0以下であり、SiO粒子の換わりにSnO粒子を用いることにより、ヘイズが低下することが確認された。なお、試料B−1〜B−19のうち、ヘイズが10%を超えた試料については、表面層が白く濁っていることが目視で確認された。以上より、表面層において、粒子成分が主に、TiO粒子、4価の正方晶からなるSnO粒子、およびZrO粒子からなることにより、光触媒塗装体のヘイズを低くできることが確認された。
Figure 0006551164
Figure 0006551164
Figure 0006551164
<試験2>
二酸化窒素吸着粒子としてAl粒子を含む光触媒塗装体を用いた試験
コーティング組成物の調製
(コーティング組成物c)
粒子成分として、TiO粒子、SnO粒子、およびAl粒子を表4に示す割合で混合した。TiO粒子、SnO粒子として、試験1と同様のものを用いた。Al粒子として、非晶質アルミナ粒子水分散体を用いた。Al粒子の平均粒子径は30nmであった。これら粒子成分に、0.3質量%の界面活性剤、および溶媒として水を添加し混合してコーティング組成物c1〜c6を調製した。コーティング組成物c1〜c6の固形分濃度はいずれも5.5質量%とした。
(コーティング組成物d)
SnO粒子のかわりにSiO粒子を用いた以外は、コーティング組成物cの調製方法と同様の方法で、粒子成分を表5に示す割合で含むコーティング組成物d1〜d6を調製した。SiO粒子として、試験1と同様のものを用いた。
光触媒塗装体の作製
試験1と同様の基材、コーティング組成物c1〜c6を用い、試験1と同様の方法で、表面層が粒子成分として、TiO粒子、4価の正方晶からなるSnO粒子、およびAl粒子のみを含む光触媒塗装体の試料C−1〜C−6を作製した。また、コーティング組成物cのかわりにコーティング組成物dを用いた以外は、試料C−1〜C−6の作製方法と同様の方法で、表面層が粒子成分として、TiO粒子、SiO粒子、およびAl粒子のみを含む光触媒塗装体の試料D−1〜D−6を作製した。
評価
<NO除去性能>
試料C−1〜C−6及び試料D−1〜D−6について、試験1と同様の方法で、NO除去性能を評価した。結果は表4及び表5に示されるとおりであった。
SnO粒子を含む試料C−1〜C−6において、第1反応で除去したNOガス量をΔNO(Sn)とする。SiO粒子を含む試料D−1〜D−6において、第1反応で除去したNOガス量をΔNO(Si)とする。ΔNO(Si)に対するΔNO(Sn)の比である[ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)により、SiO粒子の換わりにSnO粒子を含む場合における第1反応の効率の向上を評価した。また、SnO粒子を含む試料C−1〜C−6において、ΔNOとΔNOの差から算出されるトータルのNO除去性能をΔNO(Sn)とする。SiO粒子を含む試料D−1〜D−6において、ΔNOとΔNOの差から算出されるトータルのNO除去性能をΔNO(Si)とする。ΔNO(Si)に対するΔNO(Sn)の比である[ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)]により、SiO粒子の換わりにSnO粒子を含む場合におけるトータルのNO除去効率の向上を評価した。結果は表6に示されるとおりであった。また、TiO粒子の含有量に対するSnO粒子の含有量の比(SnO/TiO)と、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)との関係を図2に示す。
表6に示すように、粒子成分の合計に対するTiO粒子の含有量が40質量%であり、かつ、TiO粒子の含有量に対するSnO粒子の含有量の比(SnO/TiO)が0.1以上1.5未満である場合、SnO粒子を含む試料C4〜C6のΔNOが、SnO粒子の換わりにSiO粒子を含む試料D4〜D6のΔNOに比べて2倍より大きいこと、つまり、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)が2を超えることが確認された。従って、TiO粒子の含有量が40質量%以上であり、かつ、SnO/TiOが0.1以上1.5未満である場合、SiO粒子をSnO粒子に置き換えることにより、第1反応の効率が2倍を超えて向上することが確認された。
一方、TiO粒子の含有量が25質量%と少なく、かつ、場合によってはSnO/TiOが0.1以上1.5未満の範囲内にない場合、SnO粒子を含む試料C−1〜C−3のΔNOは、SiO粒子を含む試料D−1〜D−3のΔNOに比べると大きい(つまり、ΔNO(Sn)/ΔNO(Si)が1より大きい)が、試料C4〜C6のΔNO(Sn)/ΔNO(Si)に比べると、第1反応の効率が向上するとの効果を十分に得ることができないことが確認された。
さらに、表6に示すように、試料C4〜C6のΔNO(Sn)/ΔNO(Si)は1.0より大きかった。従って、TiO粒子の含有量が40質量%以上であり、かつ、SnO/TiOが0.1以上1.5未満である場合、SiO粒子をSnO粒子に置き換えることにより、トータルのNO除去性能であるΔNOが向上することが確認された。
<透明性>
試料C−1〜C−6及び試料D−1〜D−6について、試験1と同様の方法で、透明性を評価した。結果を表4及び表5に示す。表4に示すように、SiO粒子を含まない試料C−1〜C−6はいずれもヘイズが5.0%以下と小さく、目視による外観評価は良好であった。また、表6に示すように、試料C−1〜C−6におけるSnO粒子をSiO粒子に置き換えたことによるヘイズへの影響[ヘイズ(Sn/Si)]は、いずれも1.0以下であり、SiO粒子の換わりにSnO粒子を用いることにより、ヘイズが低下することが確認された。なお、試料D−1〜D−6のうち、ヘイズが10%を超えた試料については、表面層が白く濁っていることが目視で確認された。以上より、表面層において、粒子成分が主に、TiO粒子、4価の正方晶からなるSnO粒子、およびAl粒子からなることにより、光触媒塗装体のヘイズを低くできることが確認された。
Figure 0006551164
Figure 0006551164
Figure 0006551164
<試験3>
酸化スズ粒子の試験
コーティング組成物の調製
(コーティング組成物e1)
酸化スズ粒子として、4価の正方晶であるSnO粒子以外に2価の正方晶であるSnO粒子、2価の正方晶の水和物(正方晶)である3SnO・HO粒子をさらに含む混合物(混晶1)を用いた以外はコーティング組成物1と同様にして、コーティング組成物e1を調製した。粒子成分の割合は表7に示す通りとした。前記の酸化スズ粒子は、塩化スズ(II)(和光純薬工業製、一級試薬)の1mass%水溶液を1N水酸化ナトリウム水溶液で中和して精製した沈殿をデカンテーションで分離し、イオン交換水による洗浄を繰り返した後、110℃で乾燥させて得たものである。
(コーティング組成物e2)
酸化スズ粒子として、4価の正方晶であるSnO粒子以外に2価の正方晶であるSnO粒子をさらに含む混合物(混晶2)を用いた以外はコーティング組成物e1と同様にして、コーティング組成物e2を調製した。粒子成分の割合は表7に示す通りとした。前記の酸化スズ粒子は、塩化スズ(II)(和光純薬工業製、一級試薬)の1mass%水溶液を1N水酸化ナトリウム水溶液で中和して精製した沈殿をデカンテーションで分離し、イオン交換水による洗浄を繰り返した後、25℃で乾燥させて得たものである。
光触媒塗装体の作製
試験1と同様の基材、コーティング組成物e1、e2を用い、試験1と同様の方法で、表面層が粒子成分として、TiO粒子、酸化スズ粒子、およびZrO粒子のみを含む光触媒塗装体の試料E−1、E−2を作製した。
評価
<光触媒作用による有機物分解性能>
試料E−1、E−2及び試験1で作製した試料A−15について、光触媒作用による有機物分解性能として、メチレンブルーの分解性能を評価した。JIS R1701−2に記載の方法で前処理し、測定を行って、分解活性指数を求めた。結果を表7に示す。表7に示すように、酸化スズ粒子が、正方晶のみからなるSnO粒子である試料A−15、混晶である試料E−1、E−2のいずれも、光照射による有機物分解性能は同等であることが確認された。
<NO除去性能>
試料A−15、E−1、E−2について、試験1と同様の方法で、NO除去性能を評価した。結果を表7に示す。表7に示すように、4価の正方晶のみからなるSnO粒子をTiO粒子とともに含む試料A−15によれば、第1反応が大きく促進されることが確認された。すなわち、有機物の分解性能については、いずれの酸化スズ粒子であっても同等の性能を示すが、NOの除去性能については、酸化スズ粒子が4価の正方晶のみからなるSnO粒子である場合において、顕著な性能を示すことが確認された。
Figure 0006551164
<試験4>
第3の粒子成分(二酸化窒素吸着粒子)の試験
コーティング組成物の調製
(コーティング組成物f)
ZrO粒子の換わりにSiO粒子を用いた以外は、コーティング組成物1の調製方法と同様の方法で、粒子成分を表8に示す割合で含むコーティング組成物f1を調製した。SiO粒子として、試験1と同様のものを用いた。
光触媒塗装体の作製
試験1と同様の基材、コーティング組成物f1を用い、試験1と同様の方法で、表面層が粒子成分として、TiO粒子、4価の正方晶からなるSnO粒子、およびSiO粒子のみを含む光触媒塗装体の試料F−1を作製した。
評価
<NO除去性能>
試料F−1、及び試験1で作製した試料A−15について、試験1と同様の方法で、NO除去性能を評価した。結果を表8に示す。表8に示すように、試料A−15と試料F−1とを比べると、両者のSnO/TiOは同じであり、ΔNOはほぼ同等の高い値となった。一方で、ZrO粒子を含まない試料F−1は、ZrO粒子を含む試料A−15に対して、ΔNOが小さく、トータルのNO除去性能を高めることができないことが確認された。
<透明性>
試料A−15、及び試料F−1について、試験1と同様の方法で、透明性を評価した。結果を表8に示す。表8に示すように、SiO粒子を含まない試料A−15はヘイズが非常に小さく、目視による外観評価は良好であった。一方、SiO粒子を含む試料F−1は、ヘイズが10%以上と大きく、表面層が白く濁っていることが目視で確認された。
Figure 0006551164

Claims (6)

  1. 基材と、当該基材の表面に設けられ、主に粒子成分を含んでなる表面層とを少なくとも備えてなる光触媒塗装体であって、
    前記粒子成分は、主に第1の粒子成分、第2の粒子成分、および第3の粒子成分からなり、
    前記第1の粒子成分は、光触媒粒子であり、
    前記第2の粒子成分は、4価の正方晶からなる酸化スズ粒子であり、
    前記第3の粒子成分は、二酸化窒素吸着粒子であり、
    前記二酸化窒素吸着粒子は、ZrO粒子および/またはAl粒子であり、
    前記光触媒粒子の含有量が、前記粒子成分の合計に対して40質量%以上であり、
    前記光触媒粒子の含有量に対する前記4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量の比(4価の正方晶からなる酸化スズ粒子/光触媒粒子)が、0.1以上1.5未満である、光触媒塗装体。
  2. 前記光触媒粒子の含有量に対する前記4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量の比(4価の正方晶からなる酸化スズ粒子/光触媒粒子)が、0.5以上である、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  3. その表面のヘイズが5%以下である、請求項1または2に記載の光触媒塗装体。
  4. 前記基材がガラスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  5. 前記光触媒粒子の含有量に対する前記4価の正方晶からなる酸化スズ粒子の含有量の比(4価の正方晶からなる酸化スズ粒子/光触媒粒子)が、1.4以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  6. 前記光触媒粒子は、TiO粒子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
JP2015215272A 2015-10-30 2015-10-30 光触媒塗装体 Active JP6551164B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015215272A JP6551164B2 (ja) 2015-10-30 2015-10-30 光触媒塗装体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015215272A JP6551164B2 (ja) 2015-10-30 2015-10-30 光触媒塗装体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017081807A JP2017081807A (ja) 2017-05-18
JP6551164B2 true JP6551164B2 (ja) 2019-07-31

Family

ID=58713950

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015215272A Active JP6551164B2 (ja) 2015-10-30 2015-10-30 光触媒塗装体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6551164B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7247999B2 (ja) * 2020-10-29 2023-03-29 Toto株式会社 光触媒塗装体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017081807A (ja) 2017-05-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4092714B1 (ja) 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液
JP5784481B2 (ja) コーティング組成物およびその使用
JP5742837B2 (ja) 光触媒塗装体および光触媒コーティング液
TWI418404B (zh) Visible light reactive photocatalyst coating material, coating treatment and allergen deactivation method
WO2012014877A1 (ja) 光触媒塗装体および光触媒コーティング液
JP4933568B2 (ja) 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液
JP2012250134A (ja) 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液
JP6352526B2 (ja) 光触媒機能性フィルム及びこの製造方法
EP2974793A1 (en) Titanium oxide liquid dispersion, titanium oxide liquid coating, and photocatalyst coating film
JP2001179091A (ja) 空気浄化用光触媒フィルター
JP6551164B2 (ja) 光触媒塗装体
JP6593108B2 (ja) 光触媒塗装体
JP2009119462A (ja) 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液
JPH11309379A (ja) 光触媒性親水性部材、及び光触媒性親水性コ−ティング組成物
JP2001096168A (ja) 光触媒コーティング及びこのコーティングを有する物品
JP4381558B2 (ja) 可視光励起可能な光触媒性組成物及び光触媒性薄膜並びにそれらの製造方法
JP2006198465A (ja) 光触媒およびその製造方法
JP6662139B2 (ja) 光触媒塗装体
JP7247999B2 (ja) 光触媒塗装体
JPH11100526A (ja) 光触媒性親水性部材、及び光触媒性親水性コ−ティング組成物
JP2017080726A (ja) 光触媒塗装体
JP2010149005A (ja) 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液
JP4897781B2 (ja) 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液
JP2005066481A (ja) 貼付用光触媒
JP2000086933A (ja) 光触媒性親水性部材、及び、光触媒性親水性コ−ティング組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180828

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190412

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190604

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190617

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6551164

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150